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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104023
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61M25/09 514
A61M25/09 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008022
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】上津原 才司
(72)【発明者】
【氏名】今村 勝
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267AA41
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB16
4C267CC09
4C267DD01
4C267EE03
4C267FF03
4C267GG21
4C267GG36
4C267HH03
4C267HH04
4C267HH08
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】血管の内壁面に及ぼす負荷を抑えつつ、慢性完全閉塞病変部等を貫通しやすくする。
【解決手段】前後方向に延びるとともに弾性変形可能に形成されたワイヤ本体11と、ワイヤ本体の前端部に取付けられるとともに前方に向けて尖るチップ部材12と、チップ部材を径方向の外側から囲う第1可撓管体13と、を備え、第1可撓管体の前端部は、チップ部材の前端部より前方に位置している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びるとともに弾性変形可能に形成されたワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体の前端部に取付けられるとともに前方に向けて尖るチップ部材と、
前記チップ部材を径方向の外側から囲う第1可撓管体と、を備え、
前記第1可撓管体の前端部は、前記チップ部材の前端部より前方に位置している、ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記第1可撓管体は、前後方向に延びるコイルばねとなっている、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記第1可撓管体の前端部は、前方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている、請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記ワイヤ本体は、
前後方向に延びる第2可撓管体と、
前記チップ部材の後方に設けられ、前記チップ部材との間で、前記第2可撓管体を前後方向に挟む支持体と、を備え、
前記第2可撓管体の内側に、前後方向に延びるとともに、前端縁が前記チップ部材に固着された操作ワイヤが設けられている、請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、ガイドワイヤが知られている。一般に、ガイドワイヤは、血管内に挿入され、血管内の慢性完全閉塞病変部等を貫いた状態で、バルーンやステントを慢性完全閉塞病変部等に案内するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガイドワイヤでは、血管の内壁面に及ぼす負荷を抑えつつ、慢性完全閉塞病変部等を貫通しやすくすることに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、血管の内壁面に及ぼす負荷を抑えつつ、慢性完全閉塞病変部等を貫通しやすくすることができるガイドワイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るガイドワイヤは、前後方向に延びるとともに弾性変形可能に形成されたワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の前端部に取付けられるとともに前方に向けて尖るチップ部材と、前記チップ部材を径方向の外側から囲う第1可撓管体と、を備え、前記第1可撓管体の前端部は、前記チップ部材の前端部より前方に位置している。
【0007】
血管内の慢性完全閉塞病変部等をガイドワイヤにより貫通する際、ガイドワイヤを、血管内に進入させ、慢性完全閉塞病変部等に到達させるまでは、第1可撓管体によりチップ部材を覆っておくことで、血管の内壁面に及ぼされる負荷を抑え、ガイドワイヤの前端部が慢性完全閉塞病変部等に到達したときに、第1可撓管体の前端部が、慢性完全閉塞病変部等により後方に押し込まれ、第1可撓管体が後方に圧縮変形し、前方に向けて尖ったチップ部材が露出されることとなり、このチップ部材を慢性完全閉塞病変部等に押し当てることができる。
これにより、血管の内壁面に及ぼす負荷を抑えつつ、慢性完全閉塞病変部等を貫通しやすくすることができる。
【0008】
前記第1可撓管体は、前後方向に延びるコイルばねとなってもよい。
【0009】
第1可撓管体が、前後方向に延びるコイルばねとなっているので、簡易な構成で前述の作用効果が確実に奏功される。
【0010】
前記第1可撓管体の前端部は、前方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びてもよい。
【0011】
第1可撓管体の前端部が、前方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びているので、チップ部材の露出を抑えることが可能になり、血管の内壁面に及ぼす負荷を確実に抑えることができるとともに、血管内に進入させやすくすることができる。
【0012】
前記ワイヤ本体は、前後方向に延びる第2可撓管体と、前記チップ部材の後方に設けられ、前記チップ部材との間で、前記第2可撓管体を前後方向に挟む支持体と、を備え、前記第2可撓管体の内側に、前後方向に延びるとともに、前端縁が前記チップ部材に固着された操作ワイヤが設けられてもよい。
【0013】
操作ワイヤを後方に引くと、例えば、第2可撓管体がコイルばねの場合に第2可撓管体に偏心荷重が生じたとき、あるいは、第2可撓管体および操作ワイヤそれぞれの中心軸線が互いに一致していない場合等には、第2可撓管体が圧縮変形しつつ特定の方向に曲がることとなり、操作ワイヤを操作して、ガイドワイヤを曲げながら、血管分岐部において血管を選択して目的の血管に進入させることができる。これにより、ガイドワイヤを血管に沿わせながら慢性完全閉塞病変部等に到達させる際の、医師の操作感覚に対する依存を低減することができるとともに、ガイドワイヤを血管に対して抜き差して、体外でガイドワイヤの前端部の曲率を微調整する必要を無くすことができる。
なお、操作ワイヤを後方に引いたときに、第2可撓管体を特定の方向に曲げる設計は、例えば、第2可撓管体および操作ワイヤそれぞれの中心軸線の偏心量、偏心方向、傾斜角度等を調整したり、あるいは第2可撓管体がコイルばねの場合に、圧縮荷重が加えられた第2可撓管体に生ずる荷重の偏心量、偏心方向等を調整したりすること等によって行うことができる。後者の調整は、例えば、コイルばねの巻き数(線材の両端部の相対的な周方向位置)、コイルばねのピッチ角、コイルばねのピッチ、素線径(線材の直径)、線間隙間、コイル外径、コイルばねの両端部の支持態様(例えば線材の両端部の傾き)等のばね形状を調整することで行うことができる。
さらに、操作ワイヤを後方に引き切ると、チップ部材が後方に移動して、第2可撓管体が支持体との間で前後方向に圧縮変形することで、第2可撓管体の曲げ剛性が高くなる。したがって、ガイドワイヤを血管内に挿入した状態で、操作ワイヤを操作することで、第2可撓管体の曲げ剛性を変化させることができる。
これにより、ガイドワイヤにより慢性完全閉塞病変部等を貫通する際、ガイドワイヤを、血管内に進入させ、血管内の慢性完全閉塞病変部等に到達させるまでは、第2可撓管体の曲げ剛性を低くしておき、ガイドワイヤを慢性完全閉塞病変部等に突き刺して、ガイドワイヤにより慢性完全閉塞病変部等を貫通するときに、操作ワイヤを後方に引き切って第2可撓管体の曲げ剛性を高くし、慢性完全閉塞病変部等の貫通後は、操作ワイヤの操作を解除して第2可撓管体の曲げ剛性を元の低い状態に戻すことができる。したがって、慢性完全閉塞病変部等を貫通するために、曲げ剛性の異なるガイドワイヤを血管等に対して抜き差しして交換し使い分ける必要を無くすことができる。
以上より、手術時間を短縮させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、血管の内壁面に及ぼす負荷を抑えつつ、慢性完全閉塞病変部等を貫通しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態のガイドワイヤの縦断面図である。
図2図1において、一部の操作ワイヤを後方に引き、可撓管体を曲げ変形させた状態を示す図である。
図3図1において、ガイドワイヤの前端部が慢性完全閉塞病変部等に到達したときの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ガイドワイヤの一実施形態を、図1図3を参照しながら説明する。
ガイドワイヤ1は、ワイヤ本体11と、チップ部材12と、第1可撓管体13と、を備えている。
ワイヤ本体11、チップ部材12、および第1可撓管体13は、例えば金属材料等で形成されている。なお、ワイヤ本体11、チップ部材12、および第1可撓管体13を形成する材質は、適宜変更してもよい。
ワイヤ本体11および第1可撓管体13はそれぞれ、弾性変形可能に形成されている。ワイヤ本体11および第1可撓管体13は、共通軸と同軸に配設されている。
【0017】
以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿うチップ部材12側を前側といい、これとは反対側を後側といい、中心軸線Oに沿う方向を前後方向という。前後方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、前後方向から見て、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
ワイヤ本体11は、第2可撓管体15と、支持体14と、を備えている。
なお、第2可撓管体15および支持体14は、一体に形成されてもよい。
【0019】
第2可撓管体15は、外側コイルばね21と、内側コイルばね22と、を備え、前後方向に延びている。
なお、第2可撓管体15は、外側コイルばね21、および内側コイルばね22のうちのいずれか一方のみを有してもよく、また、コイルばねに限らず、周方向および前後方向に連続して延びる管状に形成されてもよい。
【0020】
外側コイルばね21、および内側コイルばね22を形成する線材の直径は、全長にわたって同じになっている。前後方向から見た外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの外形形状、およびその大きさは、前後方向の全長にわたって同じになっている。
なお、外側コイルばね21、および内側コイルばね22を形成する線材の直径は、全長にわたって同じになっていなくてもよく、また、前後方向から見た外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの外形形状、およびその大きさは、前後方向の全長にわたって同じになっていなくてもよい。例えば、外側コイルばね21、および内側コイルばね22の各外径は、前方に向かうに従い小さくなっていてもよい。
【0021】
外側コイルばね21の外径は、血管V(図3参照)内に挿入可能な大きさとなっている(例えば0.2mm以上1.0mm以下)。内側コイルばね22は、外側コイルばね21内に挿入され、かつ外側コイルばね21と逆巻きとなっている。
外側コイルばね21、および内側コイルばね22は、チップ部材12および支持体14により前後方向に挟まれて支持されている。外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの前端部は、前後方向の同じ位置に位置している。外側コイルばね21の後端部は、内側コイルばね22の後端部より後方に位置している。
なお、外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの前端部の前後方向の位置関係、並びに外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの後端部の前後方向の位置関係は、図示の例に限らず適宜変更してもよい。
【0022】
外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの曲げ剛性は、前後方向の同じ位置では互いに同等になっている。外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれにおいて、後端部の曲げ剛性は、後端部より前方に位置する部分の曲げ剛性よりも高くなっている。外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの前後方向のばね定数は、互いに同じになっている。
なお、外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの曲げ剛性を、例えば、前後方向の同じ位置で互いに異ならせたり、前後方向の全長にわたって同じにしたりする等、適宜変更してもよい。外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの前後方向のばね定数を、互いに異ならせてもよい。
【0023】
支持体14は、チップ部材12の後方に設けられ、チップ部材12との間で、第2可撓管体15を前後方向に挟んでいる。支持体14に、外側コイルばね21および内側コイルばね22それぞれの後端部が固定されている。支持体14は、前後方向に延びる棒状に形成されている。支持体14は、中心軸線Oと同軸に配設されている。図示の例では、支持体14には、後述する操作ワイヤ16が、前後方向に移動可能に挿通された挿通孔14aが形成されている。挿通孔14aは、中心軸線Oと同軸に配設されている。操作ワイヤ16は、支持体14を前後方向に貫いている。
【0024】
支持体14は、前部と中部と後部とが前方から後方に向けてこの順に連ねられて構成されている。支持体14のうち、前部の外径が最も小さく、後部の外径が最も大きくなっている。支持体14の前部は、内側コイルばね22の後端部内に嵌合されている。支持体14の前部の外周面に、内側コイルばね22の後端部が、例えばろう付け、若しくははんだ付け等により固着されている。支持体14の中部は、外側コイルばね21の後端部内に嵌合されている。支持体14の中部の外周面に、外側コイルばね21の後端部が、例えばろう付け、若しくははんだ付け等により固着されている。
【0025】
支持体14の後部、および外側コイルばね21それぞれの、前後方向から見た外形形状、およびその大きさは、互いに同じになっている。
なお、前後方向から見た支持体14の後部および外側コイルばね21それぞれの外形形状、およびその大きさを、互いに異ならせてもよい。この場合、前後方向から見て、外側コイルばね21は、支持体14の後部の外周面から径方向の外側に張り出していないことが好ましい。
【0026】
チップ部材12は、前後方向に延びる棒状に形成され、ワイヤ本体11の前端部に取付けられるとともに、ワイヤ本体11の前端部から前方に突出している。チップ部材12の前部12cは、例えば円錐形状等に形成され、前方に向けて尖っている。チップ部材12は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0027】
チップ部材12の後端部に、径方向の外側に向けて突出したフランジ部12bが形成されている。チップ部材12の後端面に、後方に向けて突出した円柱状の突起12aが形成されている。突起12aは、中心軸線Oと同軸に配設されている。突起12aは、内側コイルばね22の前端部内に挿入されている。フランジ部12bの後面に、外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの前端部が突き当てられている。フランジ部12bの後面、および突起12aの外周面に、外側コイルばね21、および内側コイルばね22それぞれの前端部が、例えばろう付け、若しくははんだ付け等により固着されている。
【0028】
前後方向から見たフランジ部12bおよび外側コイルばね21それぞれの外形形状、およびその大きさは、互いに同じになっている。
なお、前後方向から見たフランジ部12bおよび外側コイルばね21それぞれの外形形状、およびその大きさを、互いに異ならせてもよい。この場合、前後方向から見て、外側コイルばね21は、フランジ部12bから径方向の外側に張り出していないことが好ましい。
【0029】
第1可撓管体13は、チップ部材12を径方向の外側から囲っている。第1可撓管体13の前端部は、チップ部材12の前端部より前方に位置している。第1可撓管体13は、前後方向に延びるコイルばねとなっている。第1可撓管体13の後端部は、チップ部材12のフランジ部12bの前面に突き当てられている。
なお、第1可撓管体13は、コイルばねに限らず、周方向および前後方向に連続して延びる管状に形成されてもよい。
【0030】
第1可撓管体13のうち、前端部を含む前部分13aは、前方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている。第1可撓管体13の前部分13aの内側に、前方に向けて尖るチップ部材12の前部12cが挿入されている。第1可撓管体13の後部分13bの内側に、チップ部材12の後部12dが挿入されている。チップ部材12の後部12dは、前後方向に真直ぐ延びている。第1可撓管体13の後部分13bは、チップ部材12に、例えばろう付け、若しくははんだ付け等により固着されてもよい。
【0031】
第1可撓管体13を形成する線材の直径は、全長にわたって同じになっている。なお、第1可撓管体13を形成する線材の直径は、全長にわたって同じになっていなくてもよい。
【0032】
第2可撓管体15の内側に、前後方向に延びるとともに、前端縁がチップ部材12に固着された操作ワイヤ16が設けられている。操作ワイヤ16の前端縁は、チップ部材12の突起12aの後端面に、例えばろう付け、若しくは加締め等により固着されている。
操作ワイヤ16は、弾性変形可能に形成されている。操作ワイヤ16は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。図示の例では、操作ワイヤ16は、2つ設けられ、中心軸線Oを径方向に挟む両側に1つずつ設けられている。
なお、操作ワイヤ16は、周方向に間隔をあけて3つ以上設けられてもよいし、1つ設けられてもよい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によるガイドワイヤ1によれば、血管V内の慢性完全閉塞病変部等Xを貫通する際、血管V内に進入させ、慢性完全閉塞病変部等Xに到達させるまでは、図1および図2に示されるように、第1可撓管体13によりチップ部材12を覆っておくことで、血管Vの内壁面に及ぼされる負荷を抑え、ガイドワイヤ1の前端部が慢性完全閉塞病変部等Xに到達したときに、図3に示されるように、第1可撓管体13の前端部が、慢性完全閉塞病変部等Xにより後方に押し込まれ、第1可撓管体13が後方に圧縮変形し、前方に向けて尖ったチップ部材12が露出されて穿通性が向上し、このチップ部材12を慢性完全閉塞病変部等Xに押し当てることができる。
これにより、血管Vの内壁面に及ぼす負荷を抑えつつ、慢性完全閉塞病変部等Xを貫通しやすくすることができる。
【0034】
第1可撓管体13が、前後方向に延びるコイルばねとなっているので、簡易な構成で前述の作用効果が確実に奏功される。
【0035】
第1可撓管体13の前端部が、前方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びているので、チップ部材12の露出を抑えることが可能になり、血管Vの内壁面に及ぼす負荷を確実に抑えることができるとともに、血管V内に進入させやすくすることができる。
【0036】
操作ワイヤ16を後方に引くと、例えば、第2可撓管体15に偏心荷重が生じたとき、あるいは、第2可撓管体15および操作ワイヤ16それぞれの中心軸線が互いに一致していない場合等には、第2可撓管体15が圧縮変形しつつ特定の方向に曲がることとなる。
図示の例では、複数の操作ワイヤ16のうちの一部を後方に引くと、図2に示されるように、チップ部材12が、前後方向に対して傾いた状態で後方に移動することで、第2可撓管体15の前端部が、後方に引かれた操作ワイヤ16側に向けて曲げられることとなり、操作ワイヤ16を操作して、ガイドワイヤ1を曲げながら、血管分岐部において血管を選択して目的の血管に進入させることができる。これにより、ガイドワイヤ1を血管Vに沿わせながら慢性完全閉塞病変部等Xに到達させる際の、医師の操作感覚に対する依存を低減することができるとともに、ガイドワイヤを血管に対して抜き差して、体外でガイドワイヤの前端部の曲率を微調整する必要を無くすことができる。
【0037】
さらに、図3に示されるように、例えば、操作ワイヤ16を後方に引き切ったり、複数の操作ワイヤ16を全て後方に引いたりすると、チップ部材12が後方に移動して、第2可撓管体15が支持体14との間で前後方向に圧縮変形することで、第2可撓管体15の曲げ剛性が高くなる。したがって、ガイドワイヤ1を血管V内に挿入した状態で、操作ワイヤ16を操作することで、第2可撓管体15の曲げ剛性を変化させることができる。
【0038】
これにより、ガイドワイヤ1により慢性完全閉塞病変部等Xを貫通する際、ガイドワイヤ1を、血管V内に進入させ、血管V内の慢性完全閉塞病変部等Xに到達させるまでは、第2可撓管体15の曲げ剛性を低くしておき、ガイドワイヤ1を慢性完全閉塞病変部等Xに突き刺して、ガイドワイヤ1により慢性完全閉塞病変部等Xを貫通するときに、操作ワイヤ16を後方に引き切る等して第2可撓管体15の曲げ剛性を高くし、慢性完全閉塞病変部等Xの貫通後は、操作ワイヤ16の操作を解除して第2可撓管体15の曲げ剛性を元の低い状態に戻すことができる。したがって、慢性完全閉塞病変部等Xを貫通するために、曲げ剛性の異なるガイドワイヤを血管等に対して抜き差しして交換し使い分ける必要を無くすことができる。
【0039】
以上より、手術時間を短縮させることができる。
【0040】
第2可撓管体15が、外側コイルばね21と、外側コイルばね21内に挿入され、かつ外側コイルばね21と逆巻きの内側コイルばね22と、を備えているので、第2可撓管体15の中心軸線O回りに沿う両方向のねじり剛性を高め、かつ同等にすることができる。
これにより、例えば、支持体14に加えた中心軸線O回りのねじり力を、第2可撓管体15を介してチップ部材12に伝えやすくすることができ、また、操作ワイヤ16を操作したときに、第2可撓管体15が中心軸線O回りにねじり変形して回転せず、チップ部材12のみが中心軸線O回りに回転するのを抑制することができ、また、操作ワイヤ16を操作したときに、第2可撓管体15が、例えばねじり変形しつつ曲げ変形する等の予期しない形状に柔軟に変形するのを抑制すること等ができる。
【0041】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、複数の操作ワイヤ16を全て後方に引いたときに、第2可撓管体15に偏心荷重を生じさせることにより、第2可撓管体15を圧縮変形させつつ特定の方向に曲げてもよい。
この設計は、例えば、圧縮荷重が加えられた第2可撓管体15に生ずる荷重の偏心量、偏心方向等を調整することで行うことができる。この調整は、例えば、コイルばねの巻き数(線材の両端部の相対的な周方向位置)、コイルばねのピッチ角、コイルばねのピッチ、素線径(線材の直径)、線間隙間、コイル外径、コイルばねの両端部の支持態様(例えば線材の両端部の傾き)等のばね形状を調整することで行うことができる。
【0043】
操作ワイヤ16を中心軸線Oと同軸に1つ設け、この操作ワイヤ16を後方に引いたときに、第2可撓管体15に偏心荷重を生じさせることにより、第2可撓管体15を圧縮変形させつつ特定の方向に曲げてもよい。
【0044】
操作ワイヤ16を、中心軸線Oと一致させないように1つ設けてもよい。
この場合、操作ワイヤ16を後方に引いたときに、第2可撓管体15を特定の方向に曲げる設計は、例えば、第2可撓管体15および操作ワイヤ16それぞれの中心軸線の偏心量、偏心方向、傾斜角度等を調整することで行うことができる。
【0045】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0046】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
前後方向に延びるとともに弾性変形可能に形成されたワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体の前端部に取付けられるとともに前方に向けて尖るチップ部材と、
前記チップ部材を径方向の外側から囲う第1可撓管体と、を備え、
前記第1可撓管体の前端部は、前記チップ部材の前端部より前方に位置している、ガイドワイヤ。
<2>
前記第1可撓管体は、前後方向に延びるコイルばねとなっている、前記<1>に記載のガイドワイヤ。
<3>
前記第1可撓管体の前端部は、前方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びている、前記<1>または<2>に記載のガイドワイヤ。
<4>
前記ワイヤ本体は、
前後方向に延びる第2可撓管体と、
前記チップ部材の後方に設けられ、前記チップ部材との間で、前記第2可撓管体を前後方向に挟む支持体と、を備え、
前記第2可撓管体の内側に、前後方向に延びるとともに、前端縁が前記チップ部材に固着された操作ワイヤが設けられている、前記<1>から<3>のいずれか1つに記載のガイドワイヤ。
【符号の説明】
【0047】
1 ガイドワイヤ
11 ワイヤ本体
12 チップ部材
13 第1可撓管体
14 支持体
15 第2可撓管体
16 操作ワイヤ
図1
図2
図3