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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104037
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】半導体発光素子及び半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20240726BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20240726BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240726BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240726BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
H01L33/38
H01L33/62
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L23/02 F
H01L21/88 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008044
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中田 克弥
(72)【発明者】
【氏名】柴田 康之
(72)【発明者】
【氏名】小川 昭雄
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB14
4M104BB36
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD34
4M104DD78
4M104DD96
4M104FF13
4M104GG04
5F033GG02
5F033HH07
5F033HH08
5F033HH13
5F033HH18
5F033HH23
5F033MM08
5F033MM13
5F033PP19
5F033RR04
5F033VV07
5F142AA51
5F142BA32
5F142CB22
5F142CD02
5F142CD18
5F142CD44
5F142CD47
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA08
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA74
5F241CA76
5F241CA85
5F241CA92
5F241CA93
5F241CB11
5F241CB15
5F241CB22
5F241CB23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温、高湿度及び腐食性ガス等の厳しい環境下においても高い信頼性を有する半導体発光素子及び発光装置を提供する。
【解決手段】第1半導体層12、発光層13及び第2半導体層14が順次積層され、分離溝によって分離された発光機能部15Mを有する発光機能半導体層と、分離溝の底面の第1電極21と、第2半導体層14上の第2電極23と、発光機能部15M、分離溝、第1及び第2電極を覆う第1絶縁膜25と、開口を介して第2電極23に接続され、発光機能部15M及び分離溝の全体を覆う接続パッド電極26と、発光機能部15M及び第1電極21の全体を囲む環状凹部と、環状凹部の底面から露出する第1半導体層と非導電性接触により接触して第1半導体層12に環状に立設され、発光機能部15M及び第1電極21の全体を囲む環状の封止電極壁29と、を有する。環状の封止電極壁29は、第1電極21と電気的に接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の素子基板と、
前記素子基板上に設けられ、各々が、第1半導体層、発光層及び第2半導体層が順次積層された積層半導体層からなり、前記第1半導体層が露出する底面を有する分離溝によって分離された少なくとも1つの発光機能部を有する発光機能半導体層と、
前記分離溝の底面上に設けられた少なくとも1つの第1電極と、
前記発光機能部の前記第2半導体層上に設けられた第2電極と、
前記少なくとも1つの発光機能部、前記分離溝、前記第1電極及び前記第2電極を覆い、前記第2電極の一部が露出する開口を有する第1絶縁膜と、
前記開口を介して前記第2電極に電気的に接続され、前記少なくとも1つの発光機能部及び前記分離溝の全体を覆う接続パッド電極と、
前記少なくとも1つの発光機能部及び前記少なくとも1つの第1電極の全体を囲み、前記第1半導体層が露出する底面を有する環状凹部と、
前記環状凹部の前記底面から露出する前記第1半導体層と非導電性接触により接触して前記露出する前記第1半導体層に環状に立設され、前記少なくとも1つの発光機能部及び前記第1電極の全体を囲む環状の封止電極壁と、を有し、
前記環状の封止電極壁は、前記第1電極の一端に直接接触して前記第1電極と電気的に接続されている半導体発光素子。
【請求項2】
前記環状凹部の外周に環状の前記積層半導体層である枠部を有し、
前記環状の封止電極壁は、前記環状凹部の底面から枠部に乗り上げて枠部の上面を被覆する環状の枠部電極層を有し、
前記枠部電極層は、前記枠部の上面において、前記発光機能部上の前記第2電極及び前記接続パッド電極と同一の層厚を有する請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記環状の封止電極壁は、前記発光機能部上の前記第2電極及び前記接続パッド電極と同一の層からなるとともに同一の層厚を有する封止電極層と、前記封止電極層上に設けられた封止パッド電極とからなる請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1絶縁膜を覆い、前記環状の封止電極壁と前記接続パッド電極との間の領域に設けられた第2絶縁膜を有する請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記接続パッド電極及び前記封止電極壁の上面は同一面上にある請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
所定方向に延在するメサ形状の複数の前記発光機能部と、当該複数の発光機能部に沿って延在する複数の前記第1電極とを有し、
前記環状の封止電極壁は、当該複数の第1電極の各々の一端に直接接触して電気的に接続されている請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の前記封止電極壁に対応した環形状を有する封止載置配線を有し、前記封止電極壁と前記封止載置配線とが接合部材によって気密接合された配線基板と、を有する半導体発光装置。
【請求項8】
前記接合部材は、前記封止載置配線上に設けられたバリアメタル層と、前記バリアメタル層上に設けられた接合材とからなる請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記封止載置配線は、前記封止電極壁の幅よりも外周方向に延在する余幅部を有する請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記配線基板の上面から前記半導体発光素子の外表面を覆う保護膜を有する請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記保護膜は、有機保護膜、無機保護膜、誘電体多層膜及び反射防止膜の少なくとも1つを含む請求項10に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光装置、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子及び該半導体発光素子を有する半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)及びレーザダイオード(LD)などの半導体発光素子が広く使用され、さらに高出力化や短波長化などについての研究開発が活発に進められている。特に紫外半導体発光素子、例えば、高い殺菌能力を有する深紫外光を出射する半導体発光素子について、高出力化及び長寿命化が一層求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光半導体素子と、光半導体素子が実装される実装基板と、シールリングと実装基板の間を封止する封止部と、を備え、封止の信頼性を保ちつつ、封止にかかる部品点数を減らして製造コストを低減させる光半導体装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、半導体素子を支持基板に実装する際に、接続部材の一部が溶融し、溶融した金属が、堰堤膜に形成された開口内に止まることにより、電極間の短絡の発生を防止することができる半導体装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、発光領域に、切欠き領域で囲まれた複数のメサ状活性領域を形成し、各メサ状活性領域を取り囲む切欠き領域に一方の電極を形成し、各メサ状活性領域の上に他方の電極を形成することにより発光領域のあらゆる位置に低抵抗で効率的に電流を供給することができる半導体発光装置が開示されている。
【0006】
しかし、半導体発光素子、特に深紫外半導体発光素子等の短波長発光素子は高温、高湿度等の環境によって劣化し易いという課題があった。特に、AlGaN系の発光素子において、発光波長が360nm(GaNのバンドギャップ3.4eVに相当)未満の短波長の場合に、通電時にp型半導体層の高温、高湿度等の耐環境性能が低下する課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-93136号公報
【特許文献2】特開2005-150386号公報
【特許文献3】特開2005-322847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、高温、高湿度環境及び腐食性ガス環境等の厳しい環境下においても高い信頼性を有する半導体発光素子及び半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1実施形態による半導体発光素子は、
透光性の素子基板と、
前記素子基板上に設けられ、各々が、第1半導体層、発光層及び第2半導体層が順次積層された積層半導体層からなり、前記第1半導体層が露出する底面を有する分離溝によって分離された少なくとも1つの発光機能部を有する発光機能半導体層と、
前記分離溝の底面上に設けられた少なくとも1つの第1電極と、
前記発光機能部の前記第2半導体層上に設けられた第2電極と、
前記少なくとも1つの発光機能部、前記分離溝、前記第1電極及び前記第2電極を覆い、前記第2電極の一部が露出する開口を有する第1絶縁膜と、
前記開口を介して前記第2電極に電気的に接続され、前記少なくとも1つの発光機能部及び前記分離溝の全体を覆う接続パッド電極と、
前記少なくとも1つの発光機能部及び前記少なくとも1つの第1電極の全体を囲み、前記第1半導体層が露出する底面を有する環状凹部と、
前記環状凹部の前記底面から露出する前記第1半導体層と非導電性接触により接触して前記露出する前記第1半導体層に環状に立設され、前記少なくとも1つの発光機能部及び前記第1電極の全体を囲む環状の封止電極壁と、を有し、
前記環状の封止電極壁は、前記第1電極の一端に直接接触して前記第1電極と電気的に接続されている。
【0010】
本発明の他の実施形態による半導体発光装置は、
上記半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の前記封止電極壁に対応した環形状を有する封止載置配線を有し、前記封止電極壁と前記封止載置配線とが接合部材によって気密接合された配線基板と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の第1の実施形態による半導体発光装置を上面側(光出射面側)から見た場合を模式的に示す上面図である。
図1B図1Aに示す方向Vから見たときの半導体発光装置の側面を模式的に示す図である。
図1C】半導体発光装置の裏面を模式的に示す図である。
図2図1Aに示す線A-Aに沿った半導体発光装置の断面を模式的に示す断面図である。
図3A】半導体発光素子10A及び配線基板40の接合面側から半導体発光素子を見た場合の素子上面を模式的に示す図である。
図3B図3Aに示す中心線CXに沿った半導体発光素子の断面を示す断面図である。
図3C図3Aに示す線C-Cに沿った半導体発光素子の断面を示す断面図である。
図3D図3Aに示す線D-Dに沿った半導体発光素子の断面を示す断面図である。
図4A】配線基板を接合面側から見た場合の上面を模式的に示す図である。
図4B図4Aに示す中心線CXに沿った配線基板の断面を示す断面図である。
図5A】第1の実施形態の半導体発光装置の製造方法のステップS0~S3を示す断面図である。
図5B】第1の実施形態の半導体発光装置の製造方法のステップS4~S7を示す断面図である。
図5C】第1の実施形態の半導体発光装置の製造方法のステップS8~S9を示す断面図である。
図5D】第1の実施形態の半導体発光装置の製造方法のステップS10を示す断面図である。
図6】半導体発光装置の実施例1(EMB1)の耐湿性試験結果を示すグラフである。
図7A】比較例1(CMP1)の半導体発光装置を上方(光出射面側)から見た場合を模式的に示す上面図である。
図7B図7Aに示す方向Vから見たときの比較例1の半導体発光装置の側面を模式的に示す図である。
図7C】比較例1の半導体発光装置の耐湿性試験結果を示すグラフである。
図8A】第1の実施形態の変形例1の半導体発光素子の素子上面を模式的に示す図である。
図8B】変形例1の半導体発光素子が配線基板に接合されて形成された変形例1の半導体発光装置の中心線CXに沿った断面を示す断面図である。
図9】ステップS8-2及びステップS8-3を示す断面図である。
図10A】第1の実施形態の製造方法の変形例(変形例2)の接合準備ステップ(S10-2)を示す断面図である。
図10B】変形例2のパッド電極接合ステップ(S11-2)を示す断面図である。
図10C】変形例2の封止電極壁接合ステップ(S11-3)を示す断面図である。
図11A】第2の実施形態の半導体発光装置を光出射面側から見た場合を模式的に示す上面図である。
図11B図11Aに示す方向Vから見たときの半導体発光装置の側面を模式的に示す図である。
図11C図11Aに示す線A-Aに沿った断面を模式的に示す断面図である。
図12A】接合面側から半導体発光素子を見た場合の素子上面を模式的に示す図である。
図12B図12Aに示す中心線CXに沿った半導体発光素子60Aの断面を示す断面図である。
図12C図12Aに示す線C-Cに沿った断面を示す断面図である。
図12D図12Aに示す線D-Dに沿った断面を示す断面図である。
図13A】第3の実施形態の半導体発光装置を光出射面側から見た場合を模式的に示す上面図である。
図13B図13Aに示す方向Vから見たときの半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。
図13C図13Aに示す線A-Aに沿った断面を模式的に示す断面図である。
図14A】第4の実施形態の半導体発光装置における配線基板の接合面(素子実装面)を模式的に示す上面図である。
図14B】半導体発光素子及び保護素子が実装された半導体発光装置の上面を模式的に示す図である。
図15A】第4の実施形態の半導体発光装置の上面図である。
図15B】第4の実施形態の半導体発光装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
【0013】
(1)半導体発光装置の構造
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10を上方(光出射面側)から見た場合(上面視ともいう)を模式的に示す上面図である。図1Bは、図1Aに示す方向Vから見たときの半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。また、図1Cは、半導体発光装置10の裏面を模式的に示す図である。
【0014】
また、図2は、図1Aに示す線A-Aに沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。半導体発光素子10Aの構造について以下に詳細に説明する。
【0015】
図1A図1C及び図2に示すように、半導体発光装置10は、矩形板状の配線基板40と、配線基板40に接合された半導体発光素子10Aとを有している。半導体発光素子10Aは矩形板形状を有し、一方の主面側に透光性の素子基板11が設けられ、他方の主面側に半導体発光機能部15Mが設けられている。半導体発光構造層12の放射光は素子基板11を経て素子基板11の裏面から出射される(出射光LE)。
【0016】
より具体的には、半導体発光素子10Aが配線基板40に接合部材によって接合され、半導体発光素子10Aの全周にわたって気密接合されている。また、発光機能部15Mには素子電極が設けられ、配線基板40の配線と電気的に接続されている。
【0017】
以下に、図1A図1C及び図2を参照しつつ半導体発光装置10についてより詳細に説明する。
(半導体発光素子)
図3Aは、半導体発光素子10A及び配線基板40の接合面側から半導体発光素子10Aを見た場合の素子上面を模式的に示す図である。なお、図2の半導体発光素子10Aとは上下が反転して示されている。また、半導体発光素子10Aは、中心線CXに関して対称な矩形形状の構造を有しており、図3Aにおいては、中心線CXより上側半分を示している。
【0018】
また、図3Bは、図3Aに示す中心線CXに沿った半導体発光素子10Aの断面を示す断面図である。図3C及び図3Dは、それぞれ図3Aに示す線C-C及び線D-Dに沿った半導体発光素子10Aの断面を示す断面図である。
【0019】
図3A及び図3Bに示すように、半導体発光素子10Aは、互いに垂直な4つの側面(x方向及びy方向に沿った側面)を有する矩形板形状を有する。また、半導体発光素子10Aは、分離溝12Gによって互いに分離された発光領域である複数の発光機能部15Mを有している。具体的には、複数の発光機能部15Mの各々はメサ形状を有している。なお、以下においては、発光機能部15Mが複数設けられた場合について説明するが、少なくとも1つの発光機能部15Mが設けられていればよい。
【0020】
本明細書において、複数の発光機能部15M及び分離溝12G部分の半導体層からなる半導体層全体を発光機能半導体層12Lと称する(図5Aを参照)。複数の発光機能部15Mは、発光機能半導体層12Lの対向する一対の辺に直交する方向(y方向)に延在している。換言すれば、複数の発光機能部15Mは、当該一対の辺と平行に延在している。
【0021】
図3Bに示すように、半導体発光素子10Aは透光性を有する素子基板11を有している。素子基板11には、窒化アルミニウム(AlN)、サファイヤなどの基板を用いることができる。
【0022】
メサ形状の発光機能部15Mは、窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)系半導体層からなり、例えば有機金属気相成長法(MOCVD法)によって形成することができる。なお、結晶成長法はMOCVD法に限らず、分子線エピタキシー法(MBE法)などを用いることもできる。
【0023】
発光機能部15Mは、n型半導体層12(第1の半導体層)、発光層13及びp型半導体層14(第2の半導体層)がこの順で素子基板11上に成長されて形成されている。n型半導体層12は、例えばシリコン(Si)をドープしたAlGaN層である。
【0024】
発光層13は、例えば、AlGaN層をバリア層、バリア層よりもバンドギャップの小なるAlGaN層をウエル層とした多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有している。発光層13は、例えば、265nmの深紫外光を放射するが、発光波長はこれに限定されない。
【0025】
p型半導体層14は、例えば、マグネシウム(Mg)をドープしたAlGaN層と、当該AlGaN層上にMgをドープしたコンタクト層からなる。
【0026】
なお、発光機能部15Mのn型半導体層12(第1の半導体層)及びp型半導体層14(第2の半導体層)は、上記した組成に限定されない。また、n型半導体層12及びp型半導体層14は、それぞれ単一層ではなく複数の層から構成されていてもよく、また、アンドープ層(i層)を含んでいてもよい。
【0027】
図3Bに示すように、発光機能部15Mの間の分離溝12Gの底面にはn型半導体層12が露出している。複数の分離溝12Gの底面において露出しているn型半導体層12上にnオーミック電極21Aが形成されている。
【0028】
また、nオーミック電極21A上には、nオーミック電極21Aに沿ってn補助電極21Bが形成され、nオーミック電極21A及びn補助電極21Bによってn電極21(第1電極)が構成されている。
【0029】
図3Aに示すように、複数のn電極21は、発光機能部15Mに沿って延在し、発光機能部15Mに平行な短冊状に形成されている。
【0030】
より具体的には、nオーミック電極21Aは、n型半導体層12上にチタン(Ti)、アルミニウム(Al)をこの順で形成したオーミック電極として形成されている。なお、Ti/Al層に限らず、Ti/Rh、又はTi/Au等のn型半導体層12とオーミック接触が形成される材料によって形成してもよい。
【0031】
nオーミック電極21A上のn補助電極21Bは、Ti、Ni、Auをこの順で形成したTi/Ni/Au電極として形成されている。
【0032】
発光機能部15Mのメサ上層のp型半導体層14上には、pオーミック電極23Aが形成され、pオーミック電極23A上にはp補助電極23Bが形成されている。pオーミック電極23A及びp補助電極23Bによってp電極23(第2電極)が構成されている。
【0033】
図3Aに示すように、p電極23は発光機能部15Mの頂部において発光機能部15Mに沿って延在し、複数のp電極23は発光機能部15Mに平行な短冊状に形成されている。すなわち、p電極23によってp接続領域RPが形成されている。
【0034】
また、メサ形状の発光機能部15Mにより発光領域REが画定されている。発光機能部15Mからp電極23の方向に放射された光及び発光機能部15Mの側方から放射された光はp電極23によって反射され、素子基板11の方向に放射される。
【0035】
より具体的には、pオーミック電極23Aは、p型半導体層14上にニッケル(Ni)、Auをこの順で形成したNi/Au電極として形成されている。なお、pオーミック電極23Aの材料はNi/Auに限らず、Ni/プラチナ(Pt)/Au、Ni/パラジウム(Pd)/Auなどでもよく、p型半導体層14とはオーミック接触が形成されるが、n型半導体層12とはショットキー接触となる材料で形成される。さらに、発光層13から放射される光に対して高い反射率を有する金属が好ましい。
【0036】
pオーミック電極23A上のp補助電極23Bは、Ti、Ni、Auをこの順で形成したTi/Ni/Au電極として形成されている。
【0037】
なお、pオーミック電極23Aを透明導電体とし、その上に光反射層を含む層が設けられていてもよい。具体的には、発光波長が380nm以上の長波長の場合にpオーミック電極23Aとしてインジウム錫酸化物(ITO)膜を用い、反射層及び保護層としてNi/Ag/Ti/Ni/Au層が設けられていてもよい。
【0038】
メサ形状の発光機能部15M及びp電極23は、SiO2からなる第1絶縁膜25によって側壁及び上面が覆われ絶縁及び保護されている。第1絶縁膜25上には、pパッド電極(第2パッド電極)26が形成されている。
【0039】
pパッド電極26は、第1絶縁膜25の開口部を介してp電極23(すなわち、p補助電極23B及びpオーミック電極23A)に電気的に接続されている。すなわち、p電極23はオーミック電極に電気的に接続された接続パッド電極である。
【0040】
また、pパッド電極26は、第1絶縁膜25を介してメサ形状の発光機能部15Mの上面及び側壁を覆い、複数の発光機能部15Mからなる発光領域全体を覆うように形成されている。
【0041】
pパッド電極26は、具体的には、Ti、Ni、Auをこの順で形成したTi/Ni/Au電極として形成されているが、これに限らない。n電極21との密着性及び導電率の高い電極層であればよく、バリアメタル層などを含んでいてもよい。例えば、Ti/Al/Ti-(タングステン)W/Au、Ti/Al/Rh/Auなどとすることもできる。
【0042】
図3Bに示すように、n型半導体層12の周縁部には発光機能部15Mのn型半導体層12の上面から窪んで環状凹部12Dが設けられている。環状凹部12Dは、複数の発光機能部15M及び複数のn電極21の全体を囲むように設けられている。また、本実施形態において、環状凹部12Dの深さは分離溝12Gの深さと同一である。言い換えれば、環状凹部12Dの底面と分離溝12Gの底面は連続する平坦面となっている。
【0043】
n型半導体層12の環状凹部12Dの底面上には、pオーミック電極23Aと同じ金属層からなるショットキー金属層(以下、ショットキー層23Sという。)が形成されている。ショットキー層23Sは、n型半導体層12とショットキー接触(SC)を形成し、非導電性の接触が形成されている。したがって、n型半導体層12とショットキー層23Sとの間では電流は流れない。
【0044】
ショットキー層23S上には、n補助電極21Bと同じ金属層からなる環状の補助電極21Sが形成されている。また、補助電極21S上には、pパッド電極26と同じ金属層からなる環状のパッド金属層26Sが形成されている。パッド金属層26S上には、環状のnパッド電極(第1パッド電極)28が形成されている。
【0045】
nパッド電極28、補助電極21S、パッド金属層26S及びショットキー層23Sは互いに密着して環状(矩形環状)に形成されている。すなわち、n型半導体層12の周縁部のうち発光機能部15Mに垂直な辺及び平行な辺に沿って環状のショットキー層23Sが形成されている。
【0046】
また、図3Aに示すように、nパッド電極28、補助電極21S、パッド金属層26S及びショットキー層23Sは、n型半導体層12の周縁部に設けられて全体として複数の発光機能部15M及び複数のn電極21の全体を囲み、気密性を有する環状の電極層として形成されている。
【0047】
すなわち、nパッド電極28、補助電極21S、パッド金属層26S及びショットキー層23Sは、全体として環状の封止電極壁29として機能する。ここで、nパッド電極28は、封止パッド電極として機能する。また、封止電極壁29は、複数のn電極21に電気的に接続されている一方、n型半導体層12とは絶縁されている。
【0048】
より詳細には、図3C図3A、線C-Cに沿った断面)に示すように、n電極21が形成されていない領域ではショットキー層23S(すなわち、封止電極壁29)はn電極21とは電気的に接続されておらず(非導通)、n型半導体層12とは電気的に分離されている。
【0049】
一方、図3D図3A、線D-Dに沿った断面)に示すように、ショットキー層23S(すなわち、封止電極壁29)はn型半導体層12とオーミック接触(OC)しているn電極21と電気的に接続されている。より詳細には、ショットキー層23Sはn電極21の一端部と直接接触して、n電極21と電気的に接続されている。また、同様に、ショットキー層23Sはn電極21のもう一方の端部と直接接触して、n電極21と電気的に接続されている。なお、ショットキー層23Sはn電極21の少なくとも一方の端部と直接接触して、n電極21と電気的に接続されていればよい。
【0050】
すなわち、封止電極壁29は、ショットキー接触によってn型半導体層12とは非導通であるが、n電極21とは直接接触して、電気的に接続されている。したがって、発光機能部15Mに沿って延在している複数のn電極21の各々に均一に電流が流れるので、面内均一性の高い発光が得られる。
【0051】
換言すれば、図3A及び図1Aに示すように、封止電極壁29は、n型半導体層12の周縁部に、複数の発光機能部15M及び複数のn電極21の全体を囲んで立設され、内部の空間を封止する閉じた矩形環状の封止電極壁として形成されている。さらに、封止電極壁29は、n電極21に直接接続された電極として機能する。また、封止電極壁29の外周縁に露出するパッド金属層26S及びnパッド電極28の露出電極部を負電位とすることで環境ガスによる金属腐食やウィスカー(金属結晶枝)の発生を抑制できる。
【0052】
なお、封止電極壁29の上面視(すなわち、半導体発光素子10Aに垂直な方向から見たとき)における形状は矩形環状に限らず、閉じた環状の封止電極壁として形成されていればよい。例えば、封止電極壁29は円環形状を有していてもよい。
【0053】
封止電極壁29のnパッド電極28は、配線基板40に接合され、配線基板40に実装する際のアノード電極として用いられる。nパッド電極28(カソード電極)はpパッド電極26(アノード電極)とともに、配線基板40に接合及び実装する際の電極として用いられる。したがって、nパッド電極28はpパッド電極26と略同じ高さを有するように形成されていることが好ましい。
【0054】
nパッド電極28は、具体的には、Ti、Ni、Auをこの順で形成したTi/Ni/Au電極として形成されているが、これに限らない。パッド金属層26Sとの密着性及び導電性、また接合材との接合性の高い電極層であればよい。例えば、pパッド電極26と同様に、Ti/Al/Ti-W/Au、Ti/Al/Rh/Auなどとすることもできる。
【0055】
(配線基板)
図4Aは、配線基板40を接合面側から見た場合の上面を模式的に示す図である。配線基板40は、配線基板40の中心線CXに関して対称な構造を有しており、図4Aにおいては、中心線CXより上側半分を示している。また、図4Bは、図4Aに示す中心線CXに沿った配線基板40の断面を示す断面図である。
【0056】
図4Bに示すように、配線基板(サブマウント)40は、高熱伝導性及び光反射性を有する絶縁性のセラミックからなる支持基板41を有している。支持基板41の上面(接合面)上には第1載置配線42及び第2載置配線43が設けられ、裏面(実装面)上には第1実装電極44及び第2実装電極45が設けられている。
【0057】
支持基板41には、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(SiN)、アルミナ(Al23)などの基板を用いることができる。
【0058】
第1載置配線42及び第2載置配線43は、支持基板41を貫通する第1ビア配線46A及び第2ビア配線46Bによってそれぞれ第1実装電極44及び第2実装電極45に電気的に接続されている。
【0059】
図4Aに示すように、第1載置配線42は、半導体発光素子10Aのnパッド電極28に対向する位置及び大きさで配線基板40の周縁部に環状に設けられている。また、第2載置配線43は、半導体発光素子10Aのpパッド電極26に対向する位置及び大きさで設けられている。
【0060】
また、第1ビア配線46Aは、半導体発光装置10Aのnパッド電極28が接合される接合領域RJの外側に設けられている。また、第2ビア配線46Bは、n電極21に対向した位置に設けられている。
【0061】
本実施形態において、第1実装電極44及び第2実装電極45は、回路基板等(図示しない)に半導体発光装置10Aを実装する際のそれぞれアノード及びカソードとして用いられる。
【0062】
第1載置配線42、第2載置配線43、第1実装電極44及び第2実装電極45は、銅(Cu)、Ni,Auがこの順で積層されて形成されたCu/Ni/Au層からなる。また、第1実装電極46A及び第2ビア配線46BはCuによって形成されている。
【0063】
第1載置配線42及び第2載置配線43上には、それぞれ第2接合部材47B及び第2接合部材47Bが載置され、半導体発光素子10Aとの接合がなされる。第1載置配線42は、接合により半導体発光素子10Aを封止する封止載置配線として機能する。
【0064】
より具体的には、第1載置配線42上には、環状に第1接合部材47Aが設けられている。また、第2載置配線43上には、複数の発光機能部15Mの各々に対応した位置に第2接合部材47Bが設けられている。
【0065】
第2接合部材47B及び第1接合部材47Aは、例えば金錫合金(Au-22wt%Sn)を用いることができる。
【0066】
(2)半導体発光装置の製造方法
図面を参照して半導体発光装置10の製造方法について以下に説明する。図5A図5Dは、製造方法の各ステップS0~S11を示す断面図である。
【0067】
(S0)エピタキシャルウエハの準備
素子基板11上に窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)系結晶からなる発光半導体積層構造が形成されているエピタキシャルウエハ10Eを用意する。具体的には、エピタキシャルウエハ10Eは、n型半導体層12、発光層13及びp型半導体層14が順次結晶成長され、発光機能を有する半導体積層構造を有する。ここで、素子基板11には窒化アルミニウム(AlN)を用いた。また、結晶成長法として有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いた。
なお、以下においては、特に示した場合を除いて、エピタキシャルウエハ10Eのうち半導体発光素子10Aの1単位について説明する。
【0068】
(S1)発光領域の形成
発光領域(発光機能部15M)となる短冊状の部分を覆うレジストマスクをエピタキシャルウエハ10E上に形成した。次に、RIE(リアクティブ・イオン・エッチング)法、ICP(誘導結合プラズマ)法等のドライエッチングによってレジストマスクの開口部の半導体層をn型半導体層12が露出するまでエッチングした。
【0069】
続いて、洗浄によりレジストマスクを除去した。なお、以下の各工程において、適宜なされるレジストマスクの洗浄除去については説明を省略する。
この工程により、メサ状の発光機能部15Mの間に溝12Gと、エピタキシャルウエハ10Eの外周部に複数の発光機能部15Mを囲む段差状の環状凹部12D(段差底部)とを形成した。なお、発光機能部15M(メサ)の高さはHMであった。
【0070】
(S2)nオーミック電極の形成
フォトリソグラフィ法を用いて、溝12Gの底部及び環状凹部12Dにnオーミック電極21Aを形成する部分が露出したレジストマスクを形成した。続いて、EB(電子ビーム蒸着)法などでチタン(Ti、層厚10nm)及びアルミ(Al、層厚190nm)を順次蒸着した。
【0071】
続いて、熱処理(シンタリング)を行って密着性を向上させ、また、オーミック接触を形成した。以上により、nオーミック電極21Aを形成した。
なお、電極金属はTi/Alに限らない。例えば、Ti/Rh(ロジウム)などを用いることができる。
【0072】
(S3)pオーミック電極及びショットキー層の形成
発光機能部15Mに沿って発光機能部15Mのp型半導体層14上にpオーミック電極23Aを形成する部分が露出したレジストマスクを形成した。続いて、EB装置を用いてニッケル(Ni、層厚20nm)、金(Au、層厚180nm)を順次蒸着し、Ni/Au層を形成した。
【0073】
また、同時に、nオーミック電極21Aの外側で、n型半導体層12の環状凹部12Dの底面上に複数の発光機能部15M及びnオーミック電極21Aの全体を囲み、n型半導体層12に垂直な中心軸CZを中心とする矩形環状のNi/Au層を形成した。
【0074】
続いて、熱処理(シンタリング)を行って密着性を向上させた。また、発光機能部15Mのp型半導体層14とpオーミック電極23Aとのオーミック接触を形成した。
【0075】
一方、n型半導体層12の環状凹部12Dの底面上に形成された矩形環状のNi/Au層(ショットキー層23S)は、n型半導体層12に密着して形成されるが、n型半導体層12とはショットキー接触しているショットキー層である。
なお、電極金属はNi/Auに限らない。例えば、Ni/Pd(パラジウム)/Au、又はNi/Pt(プラチナ)/Auなどを用いることができる。
【0076】
(S4)補助電極の形成
nオーミック電極21A、pオーミック電極23A及びショットキー層23Sが露出したレジストマスクを形成した。続いて、EB法などでTi、Ni及びAuを順次蒸着した。
【0077】
以上により、nオーミック電極21A上にn補助電極21B、pオーミック電極23A上にp補助電極23B及びショットキー層23S上に補助電極21Sを形成した。
【0078】
n補助電極21B、p補助電極23B及び補助電極21Sは下地層に密着して形成された。また、n補助電極21B、p補助電極23B及び補助電極21Sは、それぞれpパッド電極26、nパッド電極28及びパッド金属層26Sから給電された電力が各半導体層に均一に供給されるように機能する。
なお、n補助電極21B、p補助電極23B及び補助電極21Sの最終層にTi又はNi層を設けると、これらの上に形成される絶縁膜(SiO2)との密着力が向上する。
【0079】
(S5)絶縁膜の形成
スパッタ装置を用いてSiO2を全面に堆積させ、絶縁膜25(第1絶縁膜25)を形成した。
【0080】
(S6)接続領域の形成
pパッド電極26との接続領域であるp接続領域RP及びパッド金属層26Sとの接続領域であるn接続領域RNが開口したレジストマスクを形成した。続いて、バッファ―ドフッ酸でp接続領域RP及びn接続領域RNのSiO2を除去した。
最後に洗浄して、p接続領域RP及びn接続領域RNを形成した。
【0081】
(S7)パッド電極の形成
p接続領域RP及びn接続領域RNの各々が別々に含まれ且つ離間するように開口したレジストマスクを形成した。EB装置を用いてTi,Ni,Au及びTiを順次成膜し、p接続領域RP及びn接続領域RN上にそれぞれpパッド電極26及びパッド金属層26Sを形成した。
【0082】
(S8)nパッド電極の形成
パッド金属層26Sの頂面が開口したレジストマスクを形成した。続いて、EB装置を用いてTi(層厚10nm),Ni(層厚300nm),Auを順次成膜し、nパッド電極28を形成した。
【0083】
以上までの工程で、発光機能部15Mの上面にpオーミック電極23A及びp補助電極23Bが積層されたp電極23(第2電極)とpパッド電極26が形成され、分離溝12Gと環状凹部12Dの上面にnオーミック電極21A及びn補助電極21Bが積層されたn電極21(第1電極)が形成された。さらに、環状凹部12Dの外縁上面にショットキー層23S、補助電極21S、パッド金属層26S及びnパッド電極28が互いに密着して形成された矩形環状の封止電極壁29が形成された。
【0084】
なお、nパッド電極28の下地層、すなわち補助電極21S、パッド金属層26S及びショットキー層23Sの総厚HMを発光機能部15Mの厚さ(メサ高さ)と同一にした。当該下地層は、発光機能部15M上のpオーミック電極23A、p補助電極23B及びpパッド電極26と同一のプロセスで形成され、同一の層構造及び層厚を有している。したがって、nパッド電極28の層厚HEをHMと同一とし(HE=HM)、nパッド電極28の上面とpパッド電極26の上面とが同一の高さである(すなわち、同一面上にある)ようにした。
【0085】
換言すれば、nパッド電極28は、nパッド電極28の上面の高さがpパッド電極26の上面の高さと一致する層厚で成膜した。すなわち、封止電極壁29は、封止電極壁29の高さがpパッド電極26の上面の高さと一致するように形成された。
【0086】
(S9)個片化
以上のように形成した複数の半導体発光素子10Aを含むウエハを、レーザーダイシングDCによって個々の半導体発光素子10Aに個片化した。
【0087】
(S10)半導体発光素子と配線基板との接合
配線基板(サブマウント)40は、窒化アルミ(AlN)セラミック基板を支持基板41として有し、支持基板41の表面にCu/Ni/Au層からなる第1載置配線42及び第2載置配線43を、裏面にCu/Ni/Au層からなる第2実装電極45及び第1実装電極44を設けた。また、第1載置配線42及び第2載置配線43と第1実装電極44及び第2実装電極45とをそれぞれ電気的に接続する第1実装電極46A及び第2ビア配線46Bを設けた。
【0088】
まず、第1載置配線42及び第2載置配線43上にそれぞれ第1接合部材47A及び第2接合部材47Bを配した。具体的には、フォトリソグラフィ法を用い、EB又は抵抗加熱により金錫合金(Au-22wt%Sn)を第2接合部材47B及び第1接合部材47Aとして蒸着した。なお、第1接合部材47Aは第1載置配線42に対応する環状に蒸着した。
【0089】
次に、減圧及び窒素雰囲気下において、半導体発光素子10Aのnパッド電極28(封止電極壁29)及びpパッド電極26と、第1接合部材47A及び第2接合部材47B、及び、第1載置配線42及び第2載置配線43との位置を合わせて押圧しつつ300℃まで加熱して接合部材を溶融・固化して半導体発光素子10Aを配線基板40に接合した。
【0090】
なお、図5Dに示すように、溶融の際の第2接合部材47Bの余剰分は発光機能部15M間の谷部に流れ込むので、電極間の短絡が防止される。また、第1載置配線42はnパッド電極28の幅WMよりも外周方向に延在する余幅部WOを有し、溶融の際、第1接合部材47Aの余剰分は余幅部WOに濡れ広がるので電極間の短絡が防止される。
【0091】
以上のステップにより、図2に示した半導体発光装置10が製造された。
【0092】
半導体発光装置10においては、気密性を有する環状の封止電極壁29が配線基板40の第1載置配線42と第1接合部材47Aによって気密接合されている。すなわち、半導体発光素子10Aと配線基板40との間は第1接合部材47Aによって連続的に全周にわたって気密接合され、封止電極壁29の内部は気密空間ASとなっている。したがって、外部のガスや湿度等の外部環境に対する高い耐性を有する半導体発光装置10が得られる。
【0093】
特に、半導体発光素子10Aの駆動時にn型半導体層12及び素子基板11、さらに接合部材47及び封止電極壁29を含む接合部は負電位となる。よって、半導体発光装置10においては、n型半導体層12及び素子基板11が外部環境に露出していても、酸素、水蒸気、窒素酸化物、硫黄酸化物などの腐食性雰囲気ガスとの反応が防止され、高い耐腐食性及び耐湿性が得られる。
【0094】
また、腐食性雰囲気ガスに腐食(劣化)され易い半導体発光素子10Aのp型半導体層14も、第1絶縁膜25に加え封止電極壁29による2重の封止によって高い耐腐食性及び耐湿性が得られる。
【0095】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の半導体発光装置10は、少なくとも1つの発光機能部15M及びn電極21の全体を囲み、気密性を有する環状の封止電極壁29が設けられている。環状の封止電極壁29は、封止電極壁29に対応する環形状を有する配線基板40の第1載置配線42と気密接合され、封止電極壁29の内部は気密空間ASとなっている。したがって、外部環境に対する高い耐性を有する半導体発光装置10が得られる。
【0096】
(3)耐湿性試験
上記のように製造した第1の実施形態の半導体発光装置10及び比較例の半導体発光装置について耐湿性試験を行った。図6は、半導体発光装置10の実施例1(EMB1)の耐湿性試験結果を示すグラフである。
【0097】
また、図7Aは、比較例1(CMP1)の半導体発光装置を上方(光出射面側)から見た場合を模式的に示す上面図である。図7Bは、図7Aに示す方向Vから見たときの比較例1の半導体発光装置の側面を模式的に示す図である。また、図7Cは、比較例1の半導体発光装置の耐湿性試験結果を示すグラフである。
【0098】
図7A及び図7Bに示すように、比較例1の半導体発光装置は、nパッド電極(第1パッド電極)28Cが半導体発光装置の対向する2辺に沿って一対のみ設けられ、支持基板41上の第1載置配線42に接合されている点において実施例1の半導体発光装置10と異なっている。その他の点については半導体発光装置10と同様である。すなわち、比較例1の半導体発光装置は、nパッド電極28Cの接合領域以外は開口OPとなっており、開口OPを介して外部環境に暴露している。
【0099】
耐湿性試験は、温度60℃、湿度90%の環境で、一定電流440mAを印加して行った。初期出力P0(駆動時間T=0hr)は、実施例1の半導体発光装置10及び比較例1の半導体発光装置ともにP0=56mWであった。
【0100】
図6に示すように、実施例1の半導体発光装置10では、光出力維持率(%)は、駆動時間Tが1000時間経過時においても91%であり、90%以上を維持した。なお、光出力維持率(%)は、初期出力P0に対する所定時間経過後の光出力Pの比率P/P0(%)として算出した。
【0101】
一方、比較例1の半導体発光装置では、図7Cに示すように、駆動時間T=20(hr)でP/P0=50%、駆動時間T=100(hr)でP/P0=10%と大きく劣化した。
【0102】
すなわち、実施例1の半導体発光装置10の寿命劣化は、半導体発光素子をガラスキャップで封止した封止構造の場合と同等で、エージングと通電劣化によるものであった。本実施形態の半導体発光装置10は、高い耐環境特性を有することが確認された。
【0103】
(4)変形例1
図8Aは、上記した第1の実施形態の変形例1の半導体発光素子50Aの素子上面を模式的に示す図である。半導体発光素子50Aは、中心線CXに関して対称な矩形形状の構造を有しており、図8Aにおいては、中心線CXより上側半分を示している。
【0104】
また、図8Bは、変形例1の半導体発光素子50Aが配線基板40に接合されて形成された変形例1の半導体発光装置50の中心線CXに沿った断面を示す断面図である。
【0105】
変形例1の半導体発光素子50Aにおいては、第1絶縁膜25を覆い、環状の封止電極壁29とpパッド電極26との間の領域を被覆する第2絶縁膜51が設けられている。第2絶縁膜51は、例えばSiO2からなる。SiO2等の絶縁膜は溶融状態のAuSn接合部材を弾く。したがって、接合工程において電極間の短絡発生を防止することができる。また、SiO2膜はガスを遮断するので、半導体発光装置の耐候性をさらに向上することができる。
【0106】
第2絶縁膜51は、上記したnパッド電極形成ステップ(S8)の後に、以下のステップS8-2及びステップS8-3を追加することで形成することができる。図9は、ステップS8-2及びステップS8-3を示す断面図である。
【0107】
すなわち、ステップS8-2(SiO2膜の形成)において、スパッタ装置によりSiO2膜を素子全面に形成する。例えば、膜厚400nmとすることができる。
【0108】
次に、ステップS8-3(電極パッドの露出口の形成)において、SiO2膜からpパッド電極26及びnパッド電極28が露出した開口を形成する。
【0109】
本変形例1によれば、さらに耐環境性に優れた半導体発光装置を提供することができる。
【0110】
(5)変形例2
図10A図10Cは、上記した第1の実施形態の製造方法の変形例(変形例2)を示す断面図である。なお、n型半導体層12に垂直な中心軸CZに関して右側半分を示している。
【0111】
上記した半導体発光素子と配線基板との接合ステップ(S10)に代わり、2段階の接合ステップが行われる。まず、図10Aに示すように、接合準備ステップ(S10-2)において、第1載置配線42はnパッド電極28の幅WMよりも外周方向に延在する余幅部WOを有している。また、第1接合部材47Aは余幅部WO内に配置される。
【0112】
また、第1接合部材47Aとして、バリアメタル層47A1及び金錫(Au-22wt%Sn)接合材47A2をこの順で積層する。第2接合部材47Bも同時に形成し、バリアメタル層47B1及び金錫(Au-22wt%Sn)接合材47B2をこの順で積層する。
【0113】
バリアメタルとして、プラチナ(Pt)の他、チタン-タングステン(TiW)などの金属を用いることができる。また、バリアメタルの替わりに、第1接合部材47Aのバリアメタル層47A1に金錫(Au-26wt%Sn)を、第2接合部材47Bのバリアメタル層47B1に金錫(Au-20wt%Sn)を用いることもできる。
【0114】
次に、図10Bに示すように、パッド電極接合ステップ(S11-2)において、減圧、280℃予熱、窒素雰囲気下において、半導体発光素子10Aのpパッド電極26と、配線基板40の第2載置配線43上に形成された第2接合部材47Bの位置を合わせて押圧する。
【0115】
次に、加熱ツールHT側を330℃までパルス加熱して第2接合部材47Bを溶融・固化して半導体発光素子10Aを配線基板40に接合する。このとき、第2接合部材47Bの余剰分は発光機能部15M間の谷部に流れ込むので、電極間の短絡が防止される。また、第1接合部材47Aは溶融温度に達しないので接合されない。
【0116】
このとき、バリアメタル層47A1を挿入することで、第1載置配線42及び第2載置配線43(Cu/Ni/Au層)の最上層のAuが金錫接合材に吸収され、第1接合部材47Aの金錫接合材47A2が不意に溶融することを防止できる。
【0117】
続いて、封止電極壁接合ステップ(S11-3)において、半導体発光素子10Aのpパッド電極26と、配線基板40の第2載置配線43とが接合された半導体発光装置を、図10Cに示すように、レーザー接合装置LJ又はRF加熱装置RFにセットし、減圧、窒素雰囲気下で280℃に予熱する。
【0118】
次に、レーザー光加熱又はRF加熱によって第1接合部材47Aを溶融するまで加熱(例えば330℃)して、溶融した第1接合部材47Aを第1載置配線42及びnパッド電極(第1パッド電極)28間へ流入させて半導体発光素子10Aを配線基板40に接合する。これにより、第1載置配線42と封止電極壁29との接合がなされる。
【0119】
このとき、第1接合部材47Aは、毛細管現象で隙間に流入するので、内部に濡れ広がることなく接合することができる。また、局所加熱であるので、接合済の第2接合部材47Bは溶融しない。
【0120】
第1載置配線42及び第2載置配線43には、バリアメタル層が設けられているので、金錫接合材47A2及び47B2の加熱の際に、第1載置配線42及び第2載置配線43(Cu/Ni/Au層)の最上層のAuが金錫接合材に吸収され、接合性、気密性が低下することを防止できる。
【0121】
[第2の実施形態]
以下に図面を参照して本発明の第2の実施形態による半導体発光素子60Aを有する半導体発光装置60について説明する。
【0122】
図11Aは、第2の実施形態の半導体発光装置60を上方(光出射面側)から見た場合を模式的に示す上面図である。図11Bは、図11Aに示す方向Vから見たときの半導体発光装置60の側面を模式的に示す図である。また、図11Cは、図11Aに示す線A-Aに沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0123】
図11A図11Cに示すように、半導体発光装置60は、矩形板状の配線基板40と、配線基板40に接合された半導体発光素子60Aとを有している。第1の実施形態の半導体発光装置10と同様に、半導体発光素子60Aは矩形板形状を有し、配線基板40との接合面側に複数の半導体発光機能部15Mが設けられている。
【0124】
第2の実施形態の半導体発光装置60は、半導体発光素子60Aが周縁端部に、配線基板40との接合面側に突出した矩形環状の枠部15Fを有している点において第1の実施形態の半導体発光素子10Aと異なっている。なお、本実施形態の配線基板40は第1の実施形態の配線基板40と同一である。以下に図12A図12Dを参照して詳細に説明する。
【0125】
図12Aは、半導体発光素子60A及び配線基板40の接合面側から半導体発光素子60Aを見た場合の素子上面を模式的に示す図である。なお、図11Cの半導体発光素子60Aとは上下が反転して示されている。また、半導体発光素子60Aは、中心線CXに関して対称な矩形形状の構造を有しており、図12Aにおいては、中心線CXより上側半分を示している。
【0126】
また、図12Bは、中心線CXに沿った半導体発光素子60Aの断面を示す断面図である。図12C及び図12Dは、それぞれ図12Aに示す線C-C及び線D-Dに沿った断面を示す断面図である。
【0127】
図12A及び図12Bに示すように、n型半導体層12の周縁部には環状凹部12Dが設けられている。本実施形態において、環状凹部12Dは矩形環状の溝として形成され、環状凹部12Dの外周側に矩形環状の枠部15Fが形成されている。
【0128】
環状凹部12Dは分離溝12Gと同一の深さを有し、したがって、枠部15Fは半導体発光機能部15Mと同一の高さを有する。また、環状凹部12Dの底面から枠部15Fの側面の覆い、枠部15Fに乗り上げて枠部15Fの上面の少なくとも一部を被覆するように、ショットキー層23S、p補助電極23B及びpパッド電極26からなる封止電極層27が形成されている。
【0129】
封止電極層27は、枠部15Fに沿った矩形環形状を有し、環状凹部12Dの底面及び枠部15Fに密着して形成されている。また、封止電極層27においてはショットキー層23Sがn型半導体層12にショットキー接触しているので封止電極層27とn型半導体層12との間で通電されない。
【0130】
枠部15F及び封止電極層27は、複数の発光機能部12M及びn電極21の全体を囲み、気密性を有する環状の封止電極壁29として機能する。封止電極層27の厚さは、p型半導体層14上の電極層であるp電極23及びpパッド電極26の総厚と同一であるので、封止電極層27は半導体発光機能部15M上のpパッド電極26と同一の高さを有する。
【0131】
すなわち、封止電極層27の上面と半導体発光機能部15M上のpパッド電極26の上面は同一面上にある。したがって、配線基板40に半導体発光素子60Aを容易に平行に接合でき、接合安定性が高く、接合密着性及び封止性に優れている。
【0132】
半導体発光装置60においては、気密性を有する環状の封止電極壁29が配線基板40の第1載置配線42と第1接合部材47Aによって気密接合されている。すなわち、半導体発光素子10Aと配線基板40との間は第1接合部材47Aによって連続的に全周にわたって気密接合され、封止電極壁29の内部は気密空間ASとなっている。したがって、外部のガスや湿度等の外部環境に対する高い耐性を有する半導体発光装置10が得られる。
【0133】
また、図12C及び図12Aに示すように、n電極21が形成されていない領域ではショットキー層23S(すなわち、封止電極壁29)はn電極21とは電気的に接続されていない(非導通)。
【0134】
一方、図12D及び図12Aに示すように、n電極21が形成されている領域では、ショットキー層23S(すなわち、封止電極壁29)は、n電極21の両端部においてn電極21と直接接触して電気的に接続されている。また、枠部15Fのp型半導体層14は通電によっても正電位とならないので腐食されない。
【0135】
したがって、発光機能部12Mに沿って延在している複数のn電極21の各々に均一に電流が流れるので、面内均一性の高い発光が得られる。
【0136】
[第3の実施形態]
以下に図面を参照して本発明の第3の実施形態による半導体発光装置70について説明する。図13Aは、半導体発光装置70を上面から見た場合(上面視)を模式的に示す上面図である。図13Bは、図13Aに示す方向Vから見たときの半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。また、図13Cは、図13Aに示す線A-Aに沿った断面を模式的に示す断面図である。
【0137】
半導体発光装置70は、上記した第1の実施形態による半導体発光装置10の半導体発光素子10Aを覆う保護膜71を有している。より具体的には、半導体発光装置70は、配線基板40と、配線基板40に接合された半導体発光素子10Aとを有する。
【0138】
保護膜71は、配線基板40の上面から半導体発光素子10Aに至って形成されている。すなわち、保護膜71は、配線基板40の第1載置配線42(封止部配線)、第1接合部材47A(封止接合部材)及び半導体発光素子10Aの露出した表面である露出外表面の全体を覆っている。
【0139】
半導体発光装置70は、第1及び第2の実施形態による半導体発光装置10、60と同様に、半導体発光素子10Aと配線基板40との間は第1接合部材47Aによって連続的に全周にわたって気密接合されている。したがって、保護膜71が途切れることなく装置の外表面を覆うことが可能である。
【0140】
本実施形態による半導体発光装置70によれば、さらに外部環境に対する高い耐性を有する半導体発光装置を提供することができる。
(保護膜の種類)
保護膜71は、単層又は複層の保護膜、指向特性を制御する誘電体多層膜、光取り出し効率を向上する反射防止膜などを採用することができる。以下に詳細に説明する。
【0141】
(1)フッ素樹脂膜(有機保護膜):
フッ素樹脂膜は、抵抗加熱蒸着、EB(電子線)蒸着、スパッタによって成膜することができる。このような物理蒸着法を用いることで、半導体発光装置70の予熱温度を100℃~300℃とすることができる。したがって、接合部を損傷することなくフッ素樹脂を成膜することができる。また、ピンホールの発生も抑えられる。なお、フッ素樹脂としてはテトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルコキシビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを選択することができる。フッ素樹脂は、化学物質に不活性でかつガス透過性が極めて低いので保護膜として最適である。
【0142】
(2)誘電体膜(無機保護膜):
誘電体膜は、EB蒸着、ALD(Atomic layer deposition)法で成膜することができる。特にALD法は細かな凹凸部も確実に成膜できるので好ましい。これらの物理蒸着法を用いることで、発光装置の予熱温度を100℃~300℃とすることができるので、接合部を損傷することなく誘電体膜を成膜できる。また、ピンホールの発生も抑えられる。誘電体膜としては、酸化ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)などを選択できる 。無機物質の膜は、ガス透過性がないので好ましい。
【0143】
(3)誘電体多層膜(指向特性制御):
誘電体多層膜は、上述の誘電体成膜法で形成することができる。例えば、発光素子から出射する光が垂直入射する場合の透過率が50%程度になるような誘電体多層膜とした場合、指向特性を扁平化(ワイド配光化)することができる。なお、このような膜は、酸化ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)などの屈折率の異なる2種以上の膜を数ペア~数十ペア積層することで得られる 。
【0144】
(4)反射防止膜(光出力向上):
反射防止膜は、上述の誘電体成膜法で形成することができる。例えば、発光素子から出射する光が反射しないような層構成で形成する。例えば、酸化ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)などの屈折率の異なる物質を反射光が小さくなるような膜厚で積層することで得られる 。
【0145】
[第4の実施形態]
以下に図面を参照して本発明の第4の実施形態による半導体発光装置80について説明する。図14Aは、半導体発光装置80の配線基板80Aの接合面(素子実装面)を模式的に示す上面図である。図14Bは、配線基板80A上に半導体発光素子10Aが実装された半導体発光装置80を模式的に示す上面図である。
【0146】
図14Aに示すように、配線基板80Aは、支持基板81、第1載置配線82(カソード)及び第2載置配線83(アノード)、及び、第1ビア配線86A及び第2ビア配線86Bを有している。
【0147】
図14Bに示すように、半導体発光素子10A及び保護素子88が第1載置配線82及び第2載置配線83に接合されて実装されている。
【0148】
半導体発光素子10Aは、環状の封止電極壁29が接合部材によって第1載置配線82に接合され、配線基板80A上に気密封止されている。すなわち、発光素子と配線基板との接合により発光装置としての気密構造が形成されているので配線基板の大きさに制約がなく、配線基板を大型化することができる。
【0149】
配線基板の大型化により、支持基板81である高熱伝導性セラミックによって、駆動時に発生する熱の放熱性を向上することができる。放熱性が向上することで、発光素子及び接合部材の温度が低減されるので耐腐食性が向上する。
【0150】
また、配線基板の大型化により、支持基板81上に他の素子を載置するスペースを確保でき、また、配線の引き回しが可能になる。したがって、保護素子や駆動素子を搭載することが可能である。
【0151】
保護素子88としては、静電破壊から半導体発光素子10Aを保護するツェナーダイオード(ZD)、バリスタ、チップコンデンサなどを用いることができる。また、半導体発光素子10Aの点灯や出力を制御する駆動素子としてシステムICなどを用いることができる。
【0152】
[第5の実施形態]
図15A及び図15Bは、本発明の第4の実施形態による半導体発光装置90のそれぞれ上面図及び側面図である。
【0153】
図14A及び図14Bに示したように、半導体発光素子10A及び保護素子88の搭載領域に離間して、当該搭載領域を囲む基板枠縁金属層89を設け、キャップ封止した半導体発光装置90を構成することができる。
【0154】
半導体発光装置90は、基板枠縁金属層89に接合部材87によって接合された半球ドーム状の透光性キャップ(ガラスキャップ)91を有している。
【0155】
また、配線基板80Aの支持基板81の裏面には、それぞれ第1ビア配線86A及び第2ビア配線86Bを介して第1載置配線82及び第2載置配線83に接続された第1実装電極84(カソード)及び第2実装電極85(アノード)が設けられ、通電により半導体発光素子10Aを駆動することができる。
【0156】
半導体発光装置90は、半導体発光素子10A及び保護素子88が透光性キャップ91によって封止された2重封止構造を有している。したがって、半導体発光装置90は、さらに厳しい高温、高湿度。腐食性ガス環境下においても高い信頼性を確保することができる。
【0157】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、上記した半導体層の構成、結晶系、材料その他は例示に過ぎない。本発明の範囲から逸脱しない範囲において適宜改変して適用することができる。
【0158】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、高温、高湿度環境及び腐食性ガス環境等の厳しい環境下においても高い信頼性を有する半導体発光素子及び半導体発光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0159】
10,50,60,70,80,90:半導体発光装置
10A,50A,60A,80A:半導体発光素子
11:素子基板
12:第1半導体層(n型半導体層)
12D:環状凹部
12G:分離溝
12L:発光機能半導体層
13:発光層
14:第2半導体層(p型半導体層)
15F:枠部
15M:発光機能部
21:n電極
23:p電極
23S:ショットキー層
25:第1絶縁膜
26:pパッド電極
28:nパッド電極
29:封止電極壁
42:第1載置配線
43:第2載置配線
47A,47B:接合部材
51:第2絶縁膜
71:保護膜
91:透光性キャップ
AS:気密空間
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B