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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104041
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ガス燃料車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240726BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240726BHJP
   F02M 31/10 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
F02D45/00 369
F02M21/02 U
F02M21/02 Z
F02M31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008049
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友信
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA14
3G384BA47
3G384FA17
(57)【要約】
【課題】燃料タンク内に圧縮して貯蔵されるガス燃料の温度を正確に推定でき、燃料タンクに貯蔵されるガス燃料の残料を把握できるガス燃料車両を提供すること。
【解決手段】車両1は、エンジン2で加熱された冷却水によって燃料タンク4を加熱する燃料タンク加熱回路15と、燃料タンク加熱回路15を流れる冷却水の温度を検出する温度センサ24、25を有し、燃料タンク加熱回路15を制御するECU30とを有する。
ECU30は、燃料タンク加熱回路15を制御して燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料を、燃料タンク加熱回路15を流れる冷却水と同等の温度になるまで加熱し、このときに温度センサ24、25が検出した冷却水の温度を燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の温度に設定し、設定されたガス燃料の圧力と設定されたガス燃料の温度とに基づいて燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残量を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮されたガス燃料を貯蔵する燃料タンクと、
前記燃料タンクから供給されるガス燃料によって駆動される内燃機関と、
前記燃料タンク内に残存するガス燃料の量を、ガス燃料の圧力と温度とに基づいて推定して表示装置に表示するガス残量表示制御部とを有するガス燃料車両であって、
前記内燃機関で加熱された流体によって前記燃料タンクを加熱する燃料タンク加熱回路と、
前記燃料タンク加熱回路を流れる流体の温度を検出する温度検出部を有し、前記燃料タンク加熱回路を制御する燃料タンク制御部とを有し、
前記燃料タンク制御部は、前記燃料タンク加熱回路を制御して前記燃料タンク内のガス燃料を、前記燃料タンク加熱回路を流れる流体と同等の温度になるまで加熱し、このときに前記温度検出部が検出した流体の温度を前記燃料タンク内のガス燃料の温度に設定し、
前記ガス残量表示制御部は、ガス燃料の圧力と前記設定されたガス燃料の温度とに基づいて前記燃料タンクに貯蔵されるガス燃料の残量を推定することを特徴とするガス燃料車両。
【請求項2】
前記燃料タンク加熱回路は、制御弁を有し、
前記制御弁は、前記燃料タンクに流体を循環させる循環状態と、前記燃料タンクに流体を循環させない非循環状態とに切替え可能であり、
前記燃料タンク制御部は、前記燃料タンクに貯蔵されるガス燃料の圧力が所定値よりも高い場合に、前記制御弁を前記非循環状態に制御することを特徴とする請求項1に記載のガス燃料車両。
【請求項3】
前記燃料タンク制御部は、前記燃料タンク加熱回路を流れる流体の温度が所定値よりも高い場合に、前記制御弁を前記非循環状態に制御することを特徴とする請求項2に記載のガス燃料車両。
【請求項4】
前記燃料タンク加熱回路は、前記内燃機関に冷却水を循環させる回路によって構成され、前記内燃機関から受熱する受熱部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス燃料車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮天然ガスを燃料として使用するガス燃料車両おいて、燃料タンクの残量を表示する残燃料表示装置を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この残燃料表示装置は、燃料タンクの近傍のガス圧力とガス温度とに基づいて理想状態の気体の重量を求め、この理想状態の気体の重量を実在気体の重量に変換して残量を表示することによって残燃料を表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3164336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のガス燃料車両にあっては、燃料タンクの近傍のガス圧力とガス温度とに基づいて理想状態の気体の重量を求めているので、燃料タンクのガス燃料の温度を正確に検出できない。
【0006】
一方、ガス燃料車両にあっては、ガス燃料を15Mpa程度の圧力に圧縮して燃料タンクに貯蔵しており、燃料タンク内のガス燃料の温度を正確に取得してガス燃料の残量を表示するには耐圧性の高い温度センサが必要となる。
【0007】
しかしながら、一般的な温度センサは、上記のような高圧には耐えられないため、燃料タンク内のガス燃料をレギュレータで200kpa程度まで減圧し、減圧後のガス燃料の温度を測定せざるを得なかった。
【0008】
この際、温度センサで測定したガス燃料の温度が、燃料タンク内のガス燃料の温度と乖離し、燃料タンク内に残ったガス燃料の量を正確に把握できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、燃料タンク内に圧縮して貯蔵されるガス燃料の温度を正確に推定でき、燃料タンクに貯蔵されるガス燃料の残料を把握できるガス燃料車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、圧縮されたガス燃料を貯蔵する燃料タンクと、前記燃料タンクから供給されるガス燃料によって駆動される内燃機関と、前記燃料タンク内に残存するガス燃料の量を、ガス燃料の圧力と温度とに基づいて推定して表示装置に表示するガス残量表示制御部とを有するガス燃料車両であって、前記内燃機関で加熱された流体によって前記燃料タンクを加熱する燃料タンク加熱回路と、前記燃料タンク加熱回路を流れる流体の温度を検出する温度検出部を有し、前記燃料タンク加熱回路を制御する燃料タンク制御部とを有し、前記燃料タンク制御部は、前記燃料タンク加熱回路を制御して前記燃料タンク内のガス燃料を、前記燃料タンク加熱回路を流れる流体と同等の温度になるまで加熱し、このときに前記温度検出部が検出した流体の温度を前記燃料タンク内のガス燃料の温度に設定し、前記ガス残量表示制御部は、ガス燃料の圧力と前記設定されたガス燃料の温度とに基づいて前記燃料タンクに貯蔵されるガス燃料の残量を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、燃料タンク内に圧縮して貯蔵されるガス燃料の温度を正確に推定でき、燃料タンクに貯蔵されるガス燃料の残料を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施例に係る燃料タンク加熱回路を備えた車両の概略図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両の燃料タンク制御部のブロック図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両の電磁遮断弁制御のフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両の燃料表示制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係るガス燃料車両は、圧縮されたガス燃料を貯蔵する燃料タンクと、燃料タンクから供給されるガス燃料によって駆動される内燃機関と、燃料タンク内に残存するガス燃料の量を、ガス燃料の圧力と温度とに基づいて推定して表示装置に表示するガス残量表示制御部とを有するガス燃料車両であって、内燃機関で加熱された流体によって燃料タンクを加熱する燃料タンク加熱回路と、燃料タンク加熱回路を流れる流体の温度を検出する温度検出部を有し、燃料タンク加熱回路を制御する燃料タンク制御部とを有し、燃料タンク制御部は、燃料タンク加熱回路を制御して燃料タンク内のガス燃料を、燃料タンク加熱回路を流れる流体と同等の温度になるまで加熱し、このときに温度検出部が検出した流体の温度を燃料タンク内のガス燃料の温度に設定し、ガス残量表示制御部は、ガス燃料の圧力と設定されたガス燃料の温度とに基づいて燃料タンクに貯蔵されるガス燃料の残量を推定する。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係るガス燃料車両は、燃料タンク内に圧縮して貯蔵されるガス燃料の温度を正確に推定でき、燃料タンクに貯蔵されるガス燃料の残料を把握できる。
【実施例0015】
以下、本発明に係るガス燃料車両の実施例について、図面を用いて説明する。
図1から図4は、本発明に係る一実施例のガス燃料車両を示す図である。
【0016】
まず、構成を説明する。
図1において、ガス燃料車両(以下、単に車両という)1は、内燃機関としてのエンジン2を備えている。エンジン2は、ガス燃料の燃焼を行い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する。すなわち、エンジン2は、ガス燃料によって駆動される。
【0017】
エンジン2は、ピストン3が収容される気筒2Aを有し、ピストン3は、コネクティングロッド3Aを介して図示しないクランク軸に連結されている。ピストン3は、上下方向に往復運動することにより、コネクティングロッド3Aを介してクランク軸を回転させる。
【0018】
車両1は、燃料タンク4を有する。燃料タンク4にはCNG(Compressed Natural Gas)などの圧縮された高圧(例えば、15Mpa程度)のガス燃料が貯蔵されており、燃料タンク4は、燃料配管5によってエンジン2に接続されている。
【0019】
具体的には、エンジン2にはガスインジェクタ6を介してデリバリパイプ7が接続されており、燃料配管5は、デリバリパイプ7に接続されている。
【0020】
ガスインジェクタ6は、エンジン2の気筒2A毎に設けられており、気筒2Aにガス燃料を噴射する。デリバリパイプ7は、燃料タンク4から燃料配管5を通してデリバリパイプ7に供給されるガス燃料を各ガスインジェクタ6に分配する。
【0021】
燃料配管5の途中には減圧弁10が設けられている。減圧弁10は、燃料タンク4からエンジン2に供給されるガス燃料を、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の圧力よりも低い圧力(例えば、200kpa程度)に減圧する。
【0022】
減圧弁10とエンジン2の間において、燃料配管5には燃料フィルタ11が設けられており、燃料フィルタ11は、燃料タンク4からエンジン2に供給されるガス燃料を浄化する。
【0023】
燃料タンク4と減圧弁10の間において、燃料配管5には燃料タンク圧力センサ12が設けられており、燃料タンク圧力センサ12は、燃料タンク4に貯蔵されているガス燃料の圧力を検出する。
【0024】
減圧弁10と燃料フィルタ11の間において、燃料配管5にはガス燃料温度センサ13が設けられており、ガス燃料温度センサ13は、減圧弁10によって減圧されたガス燃料の温度を検出する。
【0025】
燃料フィルタ11とデリバリパイプ7の間において、燃料配管5には燃料圧力センサ14が設けられており、燃料圧力センサ14は、デリバリパイプ7に供給されるガス燃料の圧力を検出する。
【0026】
エンジン2には燃料タンク加熱回路15が設けられている。燃料タンク加熱回路15は、上流側冷却水配管16と、ラジエータ17と、下流側冷却水配管18と、バイパス冷却水配管19と、電磁遮断弁20と、ウォータポンプ21と、ヒートライザ22と、サーモスタット23とを含んで構成されている。燃料タンク加熱回路15は、エンジン2を冷却する冷却水通路とは独立して設けられている。
【0027】
上流側冷却水配管16の上流端はヒートライザ22に接続されており、上流側冷却水配管16の下流端はラジエータ17に接続されている。下流側冷却水配管18の上流端はラジエータ17に接続されており、下流側冷却水配管18は、燃料タンク4を経由して下流端がヒートライザ22に接続されている。
【0028】
ここで、上流、下流とは、上流側冷却水配管16および下流側冷却水配管18を流れる冷却水の方向に対して上流、下流を指す。例えば、上流側冷却水配管16に対して下流側冷却水配管18は下流側に位置し、下流側冷却水配管18に対して上流側冷却水配管16は上流側に位置する。
【0029】
ウォータポンプ21は、上流側冷却水配管16に設けられており、上流側冷却水配管16と下流側冷却水配管18との間で冷却水を循環させる。ウォータポンプ21は、エンジン2のクランク軸から伝達される動力によって駆動されてもよく、電動ポンプから構成されてもよい。
【0030】
ヒートライザ22は、エンジン2から受ける熱によって上流側冷却水配管16から下流側冷却水配管18を流れる冷却水を加熱する。本実施例のヒートライザ22は、受熱部を構成する。
【0031】
サーモスタット23は、ヒートライザ22を流れる冷却水の温度が、例えば、50℃を超えたときに開弁する。
【0032】
電磁遮断弁20は、燃料タンク4とラジエータ17の間において下流側冷却水配管18に設けられている。電磁遮断弁20は、非通電時に弁開度をゼロにして下流側冷却水配管18の通路を閉じ、通電時に弁開度を全開にして下流側冷却水配管18の通路を開く。
【0033】
具体的には、電磁遮断弁20は、下流側冷却水配管18の通路を開いて燃料タンク4に冷却水を循環させる循環状態と、下流側冷却水配管18の通路を閉じて燃料タンク4に冷却水を循環させない非循環状態とに切替え可能となっている。本実施例の電磁遮断弁20は、制御弁を構成する。
【0034】
バイパス冷却水配管19は、電磁遮断弁20よりも上流側の下流側冷却水配管18と燃料タンク4よりも下流側の下流側冷却水配管18とを接続しており、ラジエータ17から下流側冷却水配管18を流れる冷却水は、燃料タンク4を迂回してヒートライザ22を流れる。
【0035】
下流側冷却水配管18には温度センサ24、25が設けられている。温度センサ24は、ラジエータ17から下流側冷却水配管18に排出された冷却水の温度を検出し、温度センサ25は、燃料タンク4を通過して下流側冷却水配管18を流れる冷却水の温度を検出する。
【0036】
図2に示すように、車両1にはECU(Electronic Control Unit)30が設けられている。ECU30は、例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。
【0037】
ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。ECU30の入力側には、CAN等の規格の通信ラインを介して、燃料タンク圧力センサ12、ガス燃料温度センサ13、燃料圧力センサ14、温度センサ24、25、エンジン回転数センサ27等の各種センサ類やイグニッションスイッチ28が接続されている。
【0038】
エンジン回転数センサ27は、エンジン2の機関回転数を検出してECU30に検出情報を出力する。イグニッションスイッチ28は、車両1のシステムの起動操作の有無とエンジン2の起動操作の有無とを検出して検出情報をECU30に出力する。
【0039】
ECU30の出力側には、CAN等の規格の通信ラインを介して、電磁遮断弁20および表示装置26が接続されている。
【0040】
ECU30は、電磁遮断弁20を開閉することにより、燃料タンク加熱回路15を制御し、燃料タンク4内に残存するガス燃料の量を、ガス燃料の温度と圧力とに基づいて推定して表示装置26に表示する。
【0041】
具体的には、ECU30は、温度センサ24が検出した冷却水の温度が所定値よりも高くない場合に、電磁遮断弁20を開いて燃料タンク加熱回路15を循環状態にして燃料タンク4を加熱し、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料を、下流側冷却水配管18を流れる冷却水と同等の温度になるまで加熱する。
【0042】
また、ECU30は、下流側冷却水配管18を流れる冷却水の温度を温度センサ24、25によって検出し、温度センサ24によって検出され燃料タンク4よりも上流側の冷却水の温度と、温度センサ25によって検出された燃料タンク4よりも下流側の冷却水の温度とを比較する。
【0043】
ECU30は、温度センサ24、25によって検出された冷却水の温度差がない場合に、下流側冷却水配管18を流れる冷却水と燃料タンク4に貯蔵されたガス燃料とが熱交換されてガス燃料の温度が冷却水の温度と同等になったものと判断する。
【0044】
これに加えて、ECU30は、設定されたガス燃料の温度と燃料タンク圧力センサ12によって検出された燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の圧力とに基づいて燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残量を推定する。
【0045】
具体的には、ECU30は、気体の状態方程式にガス燃料の温度と圧力とを代入して燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残量を推定し、このガス燃料の残量を表示装置26に表示する。
【0046】
表示装置26は、運転者が目視可能なように車両1の運転席に設けられており、表示装置26には燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残料を含んだ各種情報が表示される。
【0047】
ECU30は、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の圧力が所定値よりも高い場合と、下流側冷却水配管18を流れる冷却水の温度が所定値よりも高い場合とにおいて、電磁遮断弁20を閉じて燃料タンク加熱回路15を非循環状態に制御する。
【0048】
本実施例のECU30は、ガス残量表示制御部および燃料タンク制御部を構成し、温度センサ24、25は、温度検出部を構成する。
【0049】
次に、図3図4のフローチャートを参照して、ECU30によって実行される電磁遮断弁制御および燃料表示制御について説明する。図3図4に示す電磁遮断弁制御および燃料表示制御は、所定の短い周期で繰り返し実行される。
【0050】
図1において、電磁遮断弁20が閉状態にある場合には、上流側冷却水配管16を流れる冷却水が下流側冷却水配管18でバイパス冷却水配管19を経由してヒートライザ22を流れ、ヒートライザ22によって加熱される。
【0051】
ヒートライザ22によって加熱された冷却水の温度が、例えば、50℃を超えるとサーモスタット23が開弁し、冷却水がヒートライザ22から上流側冷却水配管16を流れ、ラジエータ17によって冷却された後、下流側冷却水配管18を流れる。
【0052】
ここで、ヒートライザ22は、エンジン2によって加熱される冷却水(例えば、ウォータジャケットを流れる冷却水)よりも低温となるように冷却水を加熱する。
【0053】
ラジエータ17によって冷却された冷却水は、バイパス冷却水配管19を経由してヒートライザ22を流れて加熱される。つまり、ヒートライザ22とラジエータ17の間で冷却水は50℃を超え、ラジエータ17よりも下流側で冷却水は50℃以下で50℃に近い温度に保たれる。
【0054】
図3の電磁遮断弁制御において、ECU30は、イグニッションスイッチ28がオンされた後に、エンジン回転数センサ27からエンジン回転数を取得し(ステップS1)、エンジン2が完爆状態にあるか否かを判別する(ステップS2)。
【0055】
ステップS2でECU30は、エンジン2が完爆状態にないものと判断した場合には、ステップS8に移行し、電磁遮断弁20を閉じて電磁遮断弁制御を終了し、燃料タンク加熱回路15を非循環状態に維持する。
【0056】
ステップS2でECU30は、エンジン2が完爆状態にあるものと判断した場合には、燃料タンク圧力センサ12の検出情報に基づいて燃料タンク4に貯蔵されているガス燃料の圧力Ptを取得する(ステップS3)。
【0057】
次いで、ECU30は、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の圧力Ptが所定値Paよりも高いか否かを判別し(ステップS4)、ガス燃料の圧力Ptが所定値Paよりも高いものと判断した場合には、ステップS8に処理を移して電磁遮断弁制御を終了し、燃料タンク加熱回路15を非循環状態に維持する。
【0058】
一方、ステップS4でECU30は、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の圧力Ptが所定値Paよりも高くないものと判断した場合には、ステップS5に処理を移す。
【0059】
ガス燃料の圧力の所定値Paは、加熱により燃料タンク4が限度を超える高圧になるおそれがある場合に燃料タンク4を加熱するのは好ましくないので、ガス燃料の加熱に支障のない圧力に設定される。
【0060】
ステップS5でECU30は、温度センサ24によって下流側冷却水配管18を流れる冷却水の温度Ttを取得した後、温度センサ24によって検出された冷却水の温度Ttが所定値Taよりも高いか否か判別する(ステップS6)。
【0061】
ステップS6でECU30は、冷却水の温度が所定値Taよりも高いものと判断した場合には、ステップS8に処理を移して電磁遮断弁20を閉じて電磁遮断弁制御を終了し、燃料タンク加熱回路15を非循環状態に維持する。
【0062】
ここで、冷却水の温度の所定値Taは、限度を超えた高温の冷却水によって燃料タンク4を加熱するのは好ましくないので、ガス燃料の加熱に支障のない温度に設定される。
【0063】
本実施例では、所定値Taとして50℃に設定される。所定値Taとして50℃に設定したのは、ガス燃料の加熱に支障のない温度で燃料タンク4を暖機し、かつ、ガス燃料の温度と冷却水の温度が同等とみなせる状態にできる温度であり、外気温より高く、かつ、水温ランプ消灯温度(冷却水の暖機が完了した温度)であるので好ましいからである。
【0064】
一方、ステップS6でECU30は、冷却水の温度Ttが所定値Taよりも高くないものと判断した場合には、電磁遮断弁20を開いた後(ステップS7)、電磁遮断弁制御を終了する。
【0065】
電磁遮断弁20が開かれると、燃料タンク加熱回路15が循環状態に移行して下流側冷却水配管18を流れる冷却水が燃料タンク4に供給される。これにより、燃料タンク4が冷却水によって加熱される。
【0066】
ステップS8で電磁遮断弁20が開かれるタイミングで図4に示す燃料表示制御に移行する。
【0067】
図4において、ECU30は、温度センサ24、25から下流側冷却水配管18を流れる冷却水の温度Tt、Tsを取得した後(ステップS11)、温度センサ24と温度センサ25によって検出された温度差Tt-Ts≒0であるか否かを判別する(ステップS12)。
【0068】
ステップS12でECU30は、温度差Tt-Ts≒0でないものと判断した場合にはステップS11に処理を移し、温度差Tt-Ts≒0であるものと判断した場合にはステップS13に移行する。
【0069】
ステップS12において、ECU30は、温度差Tt-Ts≒0であるものと判断すると、燃料タンク4に内蔵されたガス燃料と冷却水とが熱交換されて冷却水の温度がガス燃料の温度と略同等となったものとみなし、このときの冷却水の温度をガス燃料の温度と推定する。
【0070】
つまり、ECU30は、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料を、下流側冷却水配管18を流れる流体と同等の温度になるまで加熱し、このときに温度センサ25が検出した冷却水の温度Tsを燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の温度に設定する。
【0071】
ここで、温度センサ24、25によって検出される冷却水の温度差Tt-Tsは、冷却水とガス燃料とが熱交換されてガス燃料の温度が冷却水の温度と同等となればよいので、温度差Tt-Tsは、0であってもよく、0に近い値(例えば、1℃)でもよい。
【0072】
ステップS13でECU30は、燃料タンク圧力センサ12の検出情報に基づいて燃料タンク4に貯蔵されているガス燃料の圧力Ptを取得した後、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残料(燃料タンクの残量)を算出する(ステップS14)。
【0073】
ステップS14でECUは、ステップS12においてガス燃料の温度と推定された冷却水の温度Tsとガス燃料の圧力Ptとを気体の状態方程式に代入し、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残料を推定する。
【0074】
すなわち、状態方程式によれば、気体の量は、気体の圧力×気体の体積/気体定数×気体の温度によって求まる。ガス燃料の圧力は、燃料タンク圧力センサ12の検出情報によって求まり、ガス燃料の体積は燃料タンク4によって一定であり、気体定数は使用燃料によって求まる。
【0075】
したがって、ガス燃料を加熱する冷却水の温度によってガス燃料の温度を推定することにより、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残量を求めることができる。
【0076】
次いで、ECU30は、ステップS14で算出したガス燃料の残料を表示装置26に表示して(ステップS15)、燃料表示制御を終了する。また、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残料から車両1の走行距離の計算を行うことが可能となる。
【0077】
なお、ガス燃料を加熱する冷却水に補正値を設けてガス燃料の推定精度を高くしてもよい。この場合、燃料タンク4の周辺の気温(外気)をセンサによって検出し、この気温情報を補正値として用いてもよい。
【0078】
次に、本実施例の車両1の効果を説明する。
本実施例の車両1は、エンジン2で加熱された冷却水によって燃料タンク4を加熱する燃料タンク加熱回路15と、燃料タンク加熱回路15を流れる冷却水の温度を検出する温度センサ24、25を有し、燃料タンク加熱回路15を制御するECU30とを有する。
【0079】
ECU30は、燃料タンク加熱回路15を制御して燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料を、燃料タンク加熱回路15を流れる冷却水と同等の温度になるまで加熱し、このときに温度センサ25が検出した冷却水の温度Tsを燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の温度に設定し、ガス燃料の圧力Ptと設定されたガス燃料の温度とに基づいて燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残料を推定する。
【0080】
これにより、従来のように減圧後のガス燃料の温度を温度センサで検出するものと比べ、燃料タンク4に圧縮して貯蔵されるガス燃料の温度を正確に推定でき、ガス燃料の温度と圧力とから燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残量を把握できる。この結果、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の残料を正確に表示装置26に表示できる。
【0081】
また、本実施例の車両1によれば、燃料タンク加熱回路15は、電磁遮断弁20を有し、電磁遮断弁20は、燃料タンク4に冷却水を循環させる循環状態と、燃料タンク4に冷却水を循環させない非循環状態とに切替え可能であり、ECU30は、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の圧力Ptが所定値Paよりも高い場合に、電磁遮断弁20を非循環状態に制御する。
【0082】
これにより、燃料タンク4に貯蔵されるガス燃料の圧力Ptが所定値Paより高い場合に、電磁遮断弁20を非循環状態にして燃料タンク4の加熱を禁止でき、ガス燃料の圧力が過度に上昇することが回避できる。この結果、車両1の安全性が確保できる。
【0083】
また、本実施例の車両1によれば、ECU30は、燃料タンク加熱回路15を流れる冷却水の温度Ttが所定値Taよりも高い場合に、電磁遮断弁20を非循環状態に制御する。
【0084】
これにより、燃料タンク加熱回路15を流れる冷却水の温度が所定値より高い場合に、電磁遮断弁20を非循環状態に燃料タンク4の加熱を禁止でき、ガス燃料の圧力が過度に上昇することが回避できる。この結果、車両1の安全性が確保できる。
【0085】
また、本実施例の車両1によれば、燃料タンク加熱回路15は、エンジン2に冷却水を循環させる回路によって構成され、エンジン2から受熱するヒートライザ22 を有する。
【0086】
これにより、エンジン2の熱によって加熱されるヒートライザ22によって、燃料タンク加熱回路15内を流れる冷却水を適温に維持でき、燃料タンク4の加熱性能を向上できる。
【0087】
なお、本実施例の車両1は、温度センサ24、25によって冷却水の温度を検出しているが、電磁遮断弁20と燃料タンク4の間において下流側冷却水配管18に1つの温度センサを設け、ECU30が、この温度センサの検出情報に基づいて電磁遮断弁20を開閉制御し、燃料タンク4を加熱する冷却水の温度からガス燃料の温度を推定してもよい。
【0088】
また、燃料タンク4を加熱する手段としては、冷却水に限定されるものではなく、例えば、排気ガスの熱を利用してガス燃料を加熱してもよい。
【0089】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく調整が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0090】
1...車両(ガス燃料車両)、2...エンジン(内燃機関)、4...燃料タンク、15...燃料タンク加熱回路、20...電磁遮断弁(制御弁)、22...ヒートライザ(受熱部)、24、25...温度センサ(温度検出部)、30...ECU(燃料タンク制御部、ガス残量表示制御部)
図1
図2
図3
図4