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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104042
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】内燃機関の排気ガス還流装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/12 20160101AFI20240726BHJP
   F02M 26/41 20160101ALI20240726BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20240726BHJP
【FI】
F02M26/12
F02M26/41 301
F02M26/06 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008050
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛人
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062AA05
3G062ED08
3G062ED10
(57)【要約】
【課題】凝縮水を排出し易い位置にEGRバルブを配置できるとともに、EGRバルブの振動を低減できる内燃機関の排気ガス還流装置を提供すること。
【解決手段】エンジン1の排気ガス還流装置25は、過給機21の下流側の触媒コンバータ7と過給機21の上流側の上流側吸気管22とを連絡し、触媒コンバータ7から上流側吸気管22に排気ガス(EGRガス)を還流させるEGR配管26と、EGR配管26に配置され、EGR配管26を開閉するEGRバルブ27とを有する。EGR配管26は、シリンダヘッドカバー5の前方に配置される中間EGR配管26Bを有し、EGRバルブ27は、中間EGR配管26Bの最上部に位置し、チェーン上方外壁部5Bの上面にブラケット28を介して取付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの上側に配置されるシリンダヘッドカバーと、
前記シリンダヘッドと前記シリンダヘッドカバーとによって画成された空間に収容されたカム軸と、
前記カム軸の軸方向の端部に配置され、前記カム軸を回転駆動するタイミングチェーンと、
前記シリンダヘッドの排気側壁に取付けられた過給機とを備え、
前記シリンダヘッドカバーが、
前記カム軸の上方を覆うカム軸上方外壁部と、前記タイミングチェーンの上方を覆い、前記カム軸上方外壁部よりも前記カム軸の軸方向の外側に膨出し、かつ、前記カム軸上方外壁部よりも前記カム軸の軸方向と直交する方向に膨出するチェーン上方外壁部とを有する内燃機関の排気ガス還流装置であって、
前記過給機の下流側の排気通路と前記過給機の上流側の吸気通路とを連絡し、前記排気通路から前記吸気通路に排気ガスを還流させる排気ガス還流通路と、
前記排気ガス還流通路に配置され、前記排気ガス還流通路を開閉するEGRバルブとを有し、
前記排気ガス還流通路は、前記シリンダヘッドカバーの側方に配置される排気ガス還流通路部を含み、
前記EGRバルブは、前記排気ガス還流通路部の最上部に位置し、前記チェーン上方外壁部の上面にブラケットを介して取付けられていることを特徴とする内燃機関の排気ガス還流装置。
【請求項2】
前記EGRバルブは、排気ガスが導入される排気ガス入口部と、排気ガスを排出する排気ガス出口部とを有し、前記排気ガス入口部が前記カム軸の軸方向に沿う方向で前記過給機の排気ガス出口側を向き、かつ、前記排気ガス出口部が前記カム軸の軸方向に沿う方向で前記過給機の空気取入口と同方向に向くように前記ブラケットに支持されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気ガス還流装置。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記チェーン上方外壁部の上面に固定される板状のベース部と、前記ベース部から上方に延びる板状の取付部とを有し、
前記EGRバルブは、前記取付部に取付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の排気ガス還流装置。
【請求項4】
前記タイミングチェーンを覆うチェーンケースを有し、
前記チェーンケースは、前記シリンダヘッドと前記シリンダヘッドカバーの前記カム軸の軸方向の端部に固定されており、
前記ブラケットは、前記ベース部の縁部から下方へ延び、かつ前記チェーンケースに固定される脚部を有することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気ガス還流装置。
【請求項5】
前記取付部には前記EGRバルブから排出される排気ガスが流れる管部が一体に設けられており、
前記排気ガス還流通路は、前記管部と前記吸気通路とを接続する配管部を有することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気ガス還流装置。
【請求項6】
前記取付部には前記EGRバルブから排出される排気ガスが流れる管部が一体に設けられており、
前記排気ガス還流通路は、前記管部と前記吸気通路とを接続する配管部を有することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の排気ガス還流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス還流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される内燃機関において、排気ガスの浄化促進等のために、排気ガスの一部を吸気系に還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このEGR装置は、シリンダヘッドの外周面に出口を開口させたEGR内部通路に、EGRクーラとEGRバルブとを備えたEGR通路下流側第1部分を有する。
【0004】
EGR通路下流側第1部分は、EGRクーラが鉛直方向に長い姿勢で下に位置してEGRバルブが上に位置するように並べて接続されており、EGRバルブがEGR通路の最も高い位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-157800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のEGR装置にあっては、EGRバルブをEGR通路の最も高い位置に配置すれば、EGRバルブの内部に発生する凝縮水がEGRバルブから流下してEGRバルブ内に溜まることを防止できる。
【0007】
しかしながら、EGRバルブをエンジン本体から上方に離れた位置に配置すると、EGRバルブをエンジン本体に支持するブラケットの剛性が低下し、EGRバルブの振動が増加するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、凝縮水を排出し易い位置にEGRバルブを配置できるとともに、EGRバルブの振動を低減できる内燃機関の排気ガス還流装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの上側に配置されるシリンダヘッドカバーと、前記シリンダヘッドと前記シリンダヘッドカバーとによって画成された空間に収容されたカム軸と、前記カム軸の軸方向の端部に配置され、前記カム軸を回転駆動するタイミングチェーンと、前記シリンダヘッドの排気側壁に取付けられた過給機とを備え、前記シリンダヘッドカバーが、前記カム軸の上方を覆うカム軸上方外壁部と、前記タイミングチェーンの上方を覆い、前記カム軸上方外壁部よりも前記カム軸の軸方向の外側に膨出し、かつ、前記カム軸上方外壁部よりも前記カム軸の軸方向と直交する方向に膨出するチェーン上方外壁部とを有する内燃機関の排気ガス還流装置であって、前記過給機の下流側の排気通路と前記過給機の上流側の吸気通路とを連絡し、前記排気通路から前記吸気通路に排気ガスを還流させる排気ガス還流通路と、前記排気ガス還流通路に配置され、前記排気ガス還流通路を開閉するEGRバルブとを有し、前記排気ガス還流通路は、前記シリンダヘッドカバーの側方に配置される排気ガス還流通路部を含み、前記EGRバルブは、前記排気ガス還流通路部の最上部に位置し、前記チェーン上方外壁部の上面にブラケットを介して取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、凝縮水を排出し易い位置にEGRバルブを配置できるとともに、EGRバルブの振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関の正面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関の平面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る内燃機関の正面拡大図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る内燃機関の右側面拡大図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係るEGRバルブとその周辺の内燃機関の上部の斜視図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係るチェーン上方外壁部とその周辺の内燃機関の平面図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係るチェーン上方外壁部とその周辺の内燃機関の正面図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係るチェーン上方外壁部とその周辺の内燃機関の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の排気ガス還流装置は、シリンダヘッドと、シリンダヘッドの上側に配置されるシリンダヘッドカバーと、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとによって画成された空間に収容されたカム軸と、カム軸の軸方向の端部に配置され、カム軸を回転駆動するタイミングチェーンと、シリンダヘッドの排気側壁に取付けられた過給機とを備え、シリンダヘッドカバーが、カム軸の上方を覆うカム軸上方外壁部と、タイミングチェーンの上方を覆い、カム軸上方外壁部よりもカム軸の軸方向の外側に膨出し、かつ、カム軸上方外壁部よりもカム軸の軸方向と直交する方向に膨出するチェーン上方外壁部とを有する内燃機関の排気ガス還流装置であって、過給機の下流側の排気通路と過給機の上流側の吸気通路とを連絡し、排気通路から吸気通路に排気ガスを還流させる排気ガス還流通路と、排気ガス還流通路に配置され、排気ガス還流通路を開閉するEGRバルブとを有し、排気ガス還流通路は、シリンダヘッドカバーの側方に配置される排気ガス還流通路部を含み、EGRバルブは、排気ガス還流通路部の最上部に位置し、チェーン上方外壁部の上面にブラケットを介して取付けられている。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関の排気ガス還流装置は、凝縮水を排出し易い位置にEGRバルブを配置できるとともに、EGRバルブの振動を低減できる。
【実施例0014】
以下、本発明に係る内燃機関の排気ガス還流装置の実施例について、図面を用いて説明する。
図1から図8は、本発明に係る一実施例の内燃機関の排気ガス還流装置を示す図である。図1から図8において、上下前後左右方向は、以下のように規定する。
【0015】
カム軸に沿う方向(気筒列方向)をエンジンの左右方向とし、チェーンケースが配置される側を右、その反対側を左とする。エンジンの高さ方向を上下方向とし、シリンダヘッド側を上、オイルパン側を下とする。カム軸と水平に交差する方向をエンジンの前後とし、触媒コンバータ側を前、吸気マニホールド側を後ろとする。
【0016】
まず、構成を説明する。
図1において、エンジン1は、エンジン本体2と、チェーンケース40とを備えている。エンジン本体2は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4、シリンダヘッドカバー5およびオイルパン6を有する。本実施例のエンジン1は、内燃機関を構成する。
【0017】
シリンダブロック3には図示しない複数の気筒が設けられており、気筒はエンジン1の左右方向に並んで配置されている。エンジン1は、気筒の中心軸が上下方向に延びるように配置されている。気筒の配列方向は、左右方向であり、気筒の配列方向を気筒列方向という。
【0018】
各気筒にはそれぞれ図示しないピストンが収容されており、ピストンは、図示しないコネクティングロッドを介して図示しないクランク軸に連結されている。クランク軸は、左右方向に延びる回転中心軸を有し、回転中心軸回りに回転する。
【0019】
ピストンは、気筒内で上下方向に往復運動することにより、コネクティングロッドを介してクランク軸を回転させる。シリンダヘッド4にはそれぞれ図示しない複数の吸気ポートと複数の排気ポートが形成されている。
【0020】
吸気ポートは、それぞれ気筒に連通しており、吸入空気を気筒に導入する。排気マニホールドは、排気ポートを通して複数の気筒に連通しており、複数の気筒から排出された排気ガスを集合して排気口から触媒コンバータ7に排出する。本実施例のシリンダヘッド4には排気マニホールドが一体に形成されている。
【0021】
シリンダヘッド4とシリンダヘッドカバー5とによって画成された空間には吸気カム軸11と排気カム軸12(図6に仮想線参照)が収容されており、吸気カム軸11と排気カム軸12は、シリンダヘッド4とシリンダヘッド4に取付けられた図示しないカムハウジングとに回転自在に支持されている。
【0022】
吸気カム軸11と排気カム軸12は、左右方向に平行に延びており、エンジン1の前後方向に並んで配置されている。吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向と気筒列方向とは同じ方向である。
【0023】
本実施例の吸気カム軸11と排気カム軸12は、カム軸を構成する。以下、吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向をカム軸の軸方向Dという。
【0024】
吸気カム軸11は、図示しない複数の吸気カムを備えており、吸気カムは、吸気カム軸11の軸方向に並んで配置されている。
【0025】
吸気カムは、1つの気筒に対して、例えば2つ設けられている。シリンダヘッド4には図示しない吸気バルブが設けられており、吸気カムは、吸気バルブを操作して吸気ポートを開閉し、気筒と吸気ポートを連通または遮断する。
【0026】
排気カム軸12は、図示しない複数の排気カムを備えており、排気カムは、排気カム軸12の軸方向に並んで配置されている。排気カムは、1つの気筒に対して、例えば2つ設けられている。シリンダヘッド4には図示しない排気バルブが設けられており、排気カムは、排気バルブを操作して排気ポートを開閉し、気筒と排気ポートを連通または遮断する。
【0027】
図6に示すように、吸気カム軸11の軸方向の右端部には吸気側バルブタイミング調整装置13が取付けられている(図8参照)。吸気側バルブタイミング調整装置13は、吸気側ハウジング部材13Aを有し、吸気側ハウジング部材13Aの外周部には図示しない吸気スプロケットが設けられている。
【0028】
排気カム軸12の軸方向の右端部には排気側バルブタイミング調整装置14が取付けられている(図8参照)。排気側バルブタイミング調整装置14は、排気側ハウジング部材14Aを有し、排気側ハウジング部材14Aの外周部には図示しない排気スプロケットが設けられている。
【0029】
クランク軸の右端部には図示しないクランクスプロケットが設けられている。クランクスプロケットと吸気スプロケットと排気スプロケットとにはタイミングチェーン15が巻き掛けられている。
【0030】
クランク軸の動力は、タイミングチェーン15を介して吸気カム軸11と排気カム軸12に伝達される。これにより、吸気カム軸11と排気カム軸12がタイミングチェーン15によって回転駆動され、吸気カムによって吸気バルブの開閉が行われるとともに、排気カムによって排気バルブの開閉が行われる。
【0031】
吸気側バルブタイミング調整装置13は、クランク軸に対する吸気カム軸11の相対回転位相を調整し、吸気バルブの開閉時期(バルブタイミング)を調整する。
【0032】
排気側バルブタイミング調整装置14は、クランク軸に対する排気カム軸12の相対回転位相を調整し、排気バルブの開閉時期(バルブタイミング)を調整する。
【0033】
チェーンケース40は、シリンダヘッド4とシリンダヘッドカバー5との吸気カム軸の軸方向Dの右端部(端部)にボルト41Aによって固定されており、タイミングチェーン15を覆っている。
【0034】
チェーンケース40にはマウント取付部40Aが設けられており、マウント取付部40Aには図示しないマウント部材が設けられている。
【0035】
マウント部材は、車両の前後方向に延びる図示しない右サイドメンバに取付けられており、チェーンケース40は、マウント部材を介して右サイドメンバに弾性的に連結されている。これにより、エンジン1の右方側は、マウント部材を介して右サイドメンバに弾性的に支持されている。
【0036】
図5図6に示すように、シリンダヘッドカバー5は、カム軸上方外壁部5Aとチェーン上方外壁部5Bとを有する。
【0037】
カム軸上方外壁部5Aは、吸気カム軸11と排気カム軸12の上方を覆っており、カム軸の軸方向Dに延びている。
【0038】
チェーン上方外壁部5Bは、カム軸上方外壁部5Aよりもカム軸の軸方向Dの外側(右側)に膨出し、かつ、カム軸上方外壁部5Aよりもカム軸の軸方向Dと直交する方向(前後方向)に膨出しており、タイミングチェーン15の上方を覆っている。
【0039】
チェーン上方外壁部5Bは、カム軸上方外壁部5Aの上面よりも上方に膨出しており、チェーン上方外壁部5Bの上面は、カム軸上方外壁部5Aの上面よりも高い位置に位置している。
【0040】
図3に示すように、エンジン1には過給機21が設けられており、過給機21は、シリンダヘッド4の排気側壁4Aに取付けられている。過給機21は、コンプレッサハウジング21Aおよびタービンハウジング21Bを有する。
【0041】
コンプレッサハウジング21Aには図示しないコンプレッサホイールが回転自在に設けられており、コンプレッサハウジング21Aには上流側吸気管22の下流端が接続されている。
【0042】
タービンハウジング21Bには図示しないタービンホイールが回転自在に設けられており、タービンホイールは、コンプレッサホイールと一体で回転する。タービンハウジング21Bには触媒コンバータ7の上流端が接続されている。
【0043】
タービンハウジング21Bは、シリンダヘッド4に接続されており、タービンハウジング21Bにはシリンダヘッド4に形成された排気マニホールドを通して排気ガスが排出される。タービンハウジング21Bに排出される排気ガスは、タービンハウジング21Bから触媒コンバータ7に排出される。
【0044】
タービンハウジング21Bは、触媒コンバータ7に接続される排気ガス出口21aを有し、排気ガス出口21aから触媒コンバータ7に排気ガスを排出する。
【0045】
過給機21は、排気圧によってタービンホイールが回転され、タービンホイールの回転 に伴ってコンプレッサホイールが回転することにより、コンプレッサハウジング21Aに 供給される空気を加圧する。
【0046】
上流側吸気管22の上流端は、エアクリーナ23に取付けられている。エアクリーナ23は、カム軸上方外壁部5Aを覆うようにシリンダヘッドカバー5の上面に固定されており、エアクリーナ23には図示しない吸気ダクトを通して空気が導入される。
【0047】
エアクリーナ23は、吸気ダクトから取り入れた空気を浄化して上流側吸気管22を通してコンプレッサハウジング21Aに導入する。過給機21は、上流側吸気管22に接続される空気取入口21bを有し、上流側吸気管22を流れる空気を空気取入口21bから取り入れる。
【0048】
コンプレッサハウジング21Aには図示しない下流側吸気管の上流端が接続されており、下流側吸気管の下流端は、吸気マニホールド(図2図4参照)24に接続されている。
【0049】
図4に示すように、吸気マニホールド24は、シリンダヘッド4の吸気側壁4Bに取付けられており、吸気マニホールド24にはコンプレッサホイールによって加圧された空気が下流側吸気管を通して導入される。
【0050】
吸気マニホールド24は、下流側吸気管から導入された空気をシリンダヘッド4の各吸気ポートに分配する。
【0051】
ここで、上流、下流とは空気や排気ガスの流れる方向に対して上流、下流を指す。例えば、上流側吸気管22に対してエアクリーナ23は上流側に位置し、上流側吸気管22に対してコンプレッサハウジング21Aは下流側に位置する。
【0052】
コンプレッサハウジング21A、上流側吸気管22、エアクリーナ23および下流側吸気管は、吸入空気が流れる吸気系を構成し、タービンハウジング21B、触媒コンバータ7および排気管は、排気ガスが流れる排気系を構成する。
【0053】
触媒コンバータ7は、タービンハウジング21Bから排出された排気ガスを浄化する。触媒コンバータ7の下流端には図示しない排気管が接続されており、排気管は、触媒コンバータ7から排出された排気ガスを大気に排出する。本実施例の上流側吸気管22は、吸気通路を構成し、触媒コンバータ7は、排気通路を構成する。
【0054】
図1図3に示すように、エンジン1には排気ガス還流装置25が設けられており、排気ガス還流装置25は、EGR配管26と、EGRバルブ27と、ブラケット28(図5参照)とを備えている。本実施例のEGR配管26は、排気ガス還流通路を構成する。
【0055】
図1に示すように、EGR配管26は、過給機21の下流側の触媒コンバータ7の下流部7aと過給機21の上流側の上流側吸気管22とを連絡し、シリンダヘッド4から触媒コンバータ7に排出される排気ガスの一部をEGRガスとして上流側吸気管22に還流させる。
【0056】
EGR配管26は、上流側EGR配管26Aと、中間EGR配管26Bと、下流側EGR配管26Cとを有する。
【0057】
上流側EGR配管26Aの上流端は触媒コンバータ7の下流部7aに接続されており、上流側EGR配管26Aの下流端はEGRクーラ29に接続されている。
【0058】
中間EGR配管26Bの上流端はEGRクーラ29に接続されており、中間EGR配管26Bの下流端はEGRバルブ27に接続されている。
【0059】
中間EGR配管26Bは、過給機21よりも上方に位置し、シリンダヘッドカバー5の前方(側方)に配置されている。本実施例の中間EGR配管26Bは、排気ガス還流通路部を構成する。
【0060】
下流側EGR配管26Cの上流端はEGRバルブ27に接続されており、下流側EGR配管26Cの下流端は上流側吸気管22に接続されている。
【0061】
EGR配管26から上流側吸気管22に導入されたEGRガスは、コンプレッサハウジング21Aから下流側吸気管を通して吸気マニホールド24に導入され、下流側吸気管から吸気マニホールド24に導入された吸入空気と混合されて気筒に導入される。
【0062】
EGRクーラ29は、上流側EGR配管26Aから中間EGR配管26Bに流れるEGRガスを冷却し、高温の排気ガスの温度を下げることによりEGRガスの密度を高め、エンジン1の損失低減およびノッキングを防止する。
【0063】
EGRバルブ27は、EGR配管26の下流部側においてEGR配管26の最上部、具体的には、中間EGR配管26Bの最上部に位置している。
【0064】
EGRバルブ27は、EGR配管26を通って触媒コンバータ7から上流側吸気管22に還流される排気ガスの流量を調整する。
【0065】
このように排気系から吸気系に供給されるEGRガスにより、エンジン1は、窒素酸化物(NOx)の排出量を削減する効果と、エンジン1のポンピングロスを低下させて燃費を向上させる効果と、排気温度を低下させてプレイグニッションの発生を抑制する効果とを得ることができる。
【0066】
図5図7に示すように、ブラケット28は、ベース部28A、取付部28Bおよび脚部28Cを有する。ベース部28Aは、水平方向に延びる板状に形成されており、チェーン上方外壁部5Bの上面に対向している。取付部28Bは、ベース部28Aから上方に延びており、板状に形成されている。
【0067】
脚部28Cは、ベース部28Aの前縁部から下方へ延びており、下端部がチェーンケース40の前壁40aに対向している。
【0068】
図7図8に示すように、チェーン上方外壁部5Bの上面には第1のボス部5aと第2のボス部5bが設けられており、第1のボス部5aと第2のボス部5bは、チェーン上方外壁部5Bの前端部においてカム軸の軸方向Dに離隔している。
【0069】
ベース部28Aのカム軸の軸方向Dの両端部には第1の締結部28aと第2の締結部28bが設けられている。
【0070】
第1の締結部28aはボルト41Bによって第1のボス部5aに固定されており、第2の締結部28bはボルト41Cによって第2のボス部5bに固定されている。
【0071】
脚部28Cはボルト41Dによってチェーンケース40の前壁40aに固定されている。これにより、ブラケット28は、チェーン上方外壁部5Bの上面とチェーンケース40の前壁40aに取付けられている。
【0072】
図8に示すように、取付部28Bには複数の締結部28cが設けられており、EGRバルブ27は、複数のボルト41E(図8でボルトを一部省略)によって取付部28Bに固定されている。
【0073】
図5に示すように、EGRバルブ27は、EGRバルブ本体27Aと、アクチュエータ27Bとを有する。
【0074】
EGRバルブ本体27Aは、排気ガスが導入される排気ガス入口部27aと、排気ガスを排出する排気ガス出口部27bを有する。
【0075】
図3に示すように、EGRバルブ27は、排気ガス入口部27aがカム軸の軸方向D(気筒列方向)に沿う方向で過給機21の排気ガス出口21a側を向き、かつ、排気ガス出口部27bがカム軸の軸方向Dに沿う方向で過給機21の空気取入口21bと同方向に向くようにブラケット28の取付部28Bに支持されている。
【0076】
EGRバルブ本体27Aの内部には図示しない開閉バルブが設けられており、アクチュエータ27Bは、開閉バルブを開閉駆動する。つまり、アクチュエータ27Bは、開閉バルブの開度を全閉状態、全開状態および全閉状態と全開状態の間の所定の開度に制御して、EGR配管26を流れるEGRガスの流量を調整する。
【0077】
図5図6に示すように、取付部28Bには管部28Dが一体に設けられている。管部28Dは、取付部28Bから右斜め下方に向かって傾斜して延びており、管部28Dは下流側EGR配管26Cを介して上流側吸気管22に接続されている。
【0078】
これにより、EGRバルブ27を流れるEGRガスは、管部28Dから下流側EGR配管26Cを通って上流側吸気管22に流れる。本実施例の下流側EGR配管26Cは、配管部を構成する。
【0079】
次に、本実施例のエンジン1の排気ガス還流装置25の効果を説明する。
本実施例のエンジン1は、シリンダヘッド4と、シリンダヘッド4の上側に配置されるシリンダヘッドカバー5と、シリンダヘッド4とシリンダヘッドカバー5とによって画成された空間に収容された吸気カム軸11および排気カム軸12の右端部に設けられ、吸気カム軸11と排気カム軸12を回転駆動するタイミングチェーン15と、シリンダヘッド4の排気側壁4Aに取付けられる過給機21とを備えている。
【0080】
シリンダヘッドカバー5は、吸気カム軸11の上方を覆うカム軸上方外壁部5Aと、タイミングチェーン15の上方を覆い、カム軸上方外壁部5Aよりもカム軸の軸方向Dの外側に膨出し、かつ、カム軸上方外壁部5Aよりもカム軸の軸方向Dと直交する前後方向に膨出するチェーン上方外壁部5Bとを有する。
【0081】
エンジン1の排気ガス還流装置25は、過給機21の下流側の触媒コンバータ7と過給機21の上流側の上流側吸気管22とを連絡し、触媒コンバータ7から上流側吸気管22に排気ガス(EGRガス)を還流させるEGR配管26と、EGR配管26に配置され、EGR配管26を開閉するEGRバルブ27とを有する。
【0082】
EGR配管26は、シリンダヘッドカバー5の前方に配置される中間EGR配管26Bを有し、EGRバルブ27は、中間EGR配管26Bの最上部に位置し、チェーン上方外壁部5Bの上面にブラケット28を介して取付けられている。
【0083】
このように、EGRバルブ27を排気ガス還流装置25の中で最上位に配置できるので、エンジン1の停止中にEGRガスに含まれた水分が凝縮してEGRバルブ27に溜まった場合に、凝縮水をEGRバルブ27から容易に排出できる。
【0084】
これにより、EGRバルブ27が凝縮水によって腐食することを防止でき、EGRバルブ27の応答性が悪化することを防止できる。
【0085】
また、チェーン上方外壁部5Bは、カム軸上方外壁部5Aの上面よりも上方に膨出しており、チェーン上方外壁部5Bの上面は、カム軸上方外壁部5Aの上面よりも高い位置に位置しているので、EGRバルブ27をエンジン本体2の中で最上位に配置できる。
【0086】
これにより、EGRバルブ27に溜まった凝縮水をEGRバルブ27から確実、かつ、効率よく排出できる。
【0087】
また、シリンダヘッドカバー5は、カム軸上方外壁部5Aよりもカム軸の軸方向Dに膨出し、かつ、カム軸の軸方向Dと直交する前後方向に膨出するチェーン上方外壁部5Bを有し、ブラケット28をチェーン上方外壁部5Bの上面に取付け、ブラケット28にEGRバルブ27を取付けているので、EGRバルブ27をシリンダヘッドカバー5に近づけて配置でき、EGRバルブ27の振動を低減できる。
【0088】
ところで、EGR配管26は、シリンダヘッドカバー5の前方に配置される中間EGR配管26Bを有するので、中間EGR配管26Bがチェーン上方外壁部5Bと干渉しないように、中間EGR配管26Bをエンジン1の前方に湾曲させるかエンジン1の上方に湾曲させる必要がある。
【0089】
仮に、中間EGR配管26Bをエンジン1の前方に屈曲させ、EGRバルブ27をブラケット28によってカム軸上方外壁部5Aに支持した場合、ブラケット28がエンジン1の前後方向に長くなり、剛性が低下してEGRバルブ27の振動が増加するおそれがある。
【0090】
一方、中間EGR配管26Bをエンジン1の上方に屈曲させ、EGRバルブ27をブラケット28によってカム軸上方外壁部5Aに支持した場合、ブラケット28がエンジン1の上下方向に長くなり、剛性が低下し、EGRバルブ27の振動が増加するおそれがある。
【0091】
本実施例のEGRバルブ27は、チェーン上方外壁部5Bの上面にブラケット28を介してEGRバルブ27を取付けているので、長尺のブラケット28を用いることを不要にして、EGRバルブ27をシリンダヘッドカバー5に近づけて配置できる。
【0092】
このため、凝縮水を排出し易い位置にEGRバルブ27を配置した場合でも、シリンダヘッドカバー5によるEGRバルブ27の支持剛性を高くでき、EGRバルブ27の振動を低減できる。
【0093】
また、本実施例のエンジン1の排気ガス還流装置25によれば、EGRバルブ27は、排気ガスが導入される排気ガス入口部27aと、排気ガスを排出する排気ガス出口部27bとを有し、EGRバルブ27は、排気ガス入口部27aがカム軸の軸方向Dに沿う方向で過給機21の排気ガス出口21a側を向き、かつ、排気ガス出口部27bがカム軸の軸方向Dに沿う方向で過給機21の空気取入口21bと同方向に向くようにブラケット28に支持されている。
【0094】
これにより、EGRバルブ27をチェーン上方外壁部5Bの上面により一層近付けて配置できる。このため、シリンダヘッドカバー5によるEGRバルブ27の支持剛性をより効果的に高くでき、EGRバルブ27の振動をより効果的に低減できる。
【0095】
また、EGRバルブ27よりも上流側の中間EGR配管26Bと、EGRバルブ27より下流側の下流側EGR配管26Cとのそれぞれが上下方向に過度に屈曲することを防止できる。このため、EGR配管26の内部においてEGRガスを円滑に流すことができる。
【0096】
また、本実施例のエンジン1の排気ガス還流装置25によれば、ブラケット28は、チェーン上方外壁部5Bの上面に固定される板状のベース部28Aと、ベース部28Aから上方に延びる板状の取付部28Bとを有し、EGRバルブ27は、取付部28Bに取付けられている。
【0097】
これにより、EGRバルブ27をチェーン上方外壁部5Bの上面により一層近付けて配置できる。このため、シリンダヘッドカバー5によるEGRバルブ27の支持剛性をより効果的に高くでき、EGRバルブ27の振動をより効果的に低減できる。
【0098】
また、本実施例のエンジン1の排気ガス還流装置25によれば、タイミングチェーン15を覆うチェーンケース40を有し、チェーンケース40は、シリンダヘッド4とシリンダヘッドカバー5のカム軸の軸方向Dの右端部に固定されている。
【0099】
これに加えて、ブラケット28は、ベース部28Aの前縁部から下方へ延び、かつチェーンケース40に固定される脚部28Cを有する。
【0100】
これにより、シリンダヘッドカバー5によるEGRバルブ27の支持剛性をより効果的に高くできる。
【0101】
すなわち、チェーンケース40は、ボルト41Aによってシリンダヘッド4とシリンダヘッドカバー5に強固に締結されており、剛性が高い。この剛性の高いチェーンケース40にブラケット28の脚部28Cを取付けることにより、チェーンケース40によるEGRバルブ27の支持剛性をより一層高くでき、EGRバルブ27の振動をより効果的に低減できる。
【0102】
また、チェーンケース40は、マウント部材が取付けられるマウント取付部40Aを有するので、剛性がより一層高くなっている。このため、チェーンケース40によるEGRバルブ27の支持剛性をより一層高くでき、EGRバルブ27の振動をより効果的に低減できる。
【0103】
また、本実施例のエンジン1の排気ガス還流装置25によれば、ブラケット28の取付部28BにはEGRバルブ27から排出される排気ガスが流れる管部28Dが一体に設けられており、EGR配管26は、管部28Dと上流側吸気管22とを接続する下流側EGR配管26Cを有する。
【0104】
このように、取付部28Bと管部28Dとを一体にしてEGRバルブ27をブラケット28に取付けることにより、EGRバルブ27の構造を簡素化できる。
【0105】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく調整が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0106】
1...エンジン(内燃機関)、4...シリンダヘッド、5...シリンダヘッドカバー、5A...カム軸上方外壁部、5B...チェーン上方外壁部、7...触媒コンバータ(排気通路)、11...吸気カム軸(カム軸)、12...排気カム軸(カム軸)、15...タイミングチェーン、21...過給機、21a...排気ガス出口、21b...空気取入口、22...上流側吸気管(吸気通路)、25...排気ガス還流装置、26...EGR配管(排気ガス還流通路)、26B...中間EGR配管(排気ガス還流通路部)、26C...下流側EGR配管(配管部)、27...EGRバルブ、27a...排気ガス入口部、27b...排気ガス出口部、28...ブラケット、28A...ベース部、28B...取付部、28C...脚部、28D...管部
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8