IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104048
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】半導体光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/30 20060101AFI20240726BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20240726BHJP
   H01S 5/14 20060101ALI20240726BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALN20240726BHJP
【FI】
H01S5/30
H01S5/343
H01S5/14
H01L31/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008059
(22)【出願日】2023-01-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発/異種材料集積光エレクトロニクスを用いた高効率・高速処理分散コンピューティングシステム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健彦
【テーマコード(参考)】
5F149
5F173
5F849
【Fターム(参考)】
5F149AB07
5F149BA28
5F149CB17
5F149CB20
5F149DA02
5F149DA06
5F149DA35
5F149GA05
5F149JA03
5F149JA14
5F149XB05
5F149XB18
5F149XB51
5F173AB32
5F173AB49
5F173AF12
5F173AF33
5F173AG05
5F173AH07
5F173AH48
5F173AK22
5F173AP05
5F173AP32
5F173AP38
5F173AQ02
5F173AQ03
5F173AR93
5F849AB07
5F849BA28
5F849CB17
5F849CB20
5F849DA02
5F849DA06
5F849DA35
5F849GA05
5F849JA03
5F849JA14
5F849XB05
5F849XB18
5F849XB51
(57)【要約】
【課題】エッチングにおいて残存物の発生を抑制することが可能な半導体光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】III-V族化合物半導体を含む小片と、第1基板とを有する半導体光素子の製造方法であって、小片は第2基板と、第2基板の上に積層された半導体層とを有し、前記製造方法は、前記小片の前記半導体層を前記第1基板に接合する工程と、前記第1基板に接合された前記小片にマスクを形成する工程と、前記マスクが設けられた前記小片にエッチングを行うことで、前記第2基板を除去する工程と、を有し、前記マスクは開口部を有し、前記開口部から前記第2基板は露出し、前記開口部は第1方向に垂直な辺を有しておらず、前記第2基板を除去する工程におけるエッチングは、前記第1方向に比べて、前記第1方向に交差する第2方向に進みやすい半導体光素子の製造方法。
【選択図】 図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III-V族化合物半導体を含む小片と、第1基板とを有する半導体光素子の製造方法であって、
小片は第2基板と、第2基板の上に積層された半導体層とを有し、
前記製造方法は、前記小片の前記半導体層を前記第1基板に接合する工程と、
前記第1基板に接合された前記小片にマスクを形成する工程と、
前記マスクが設けられた前記小片にエッチングを行うことで、前記第2基板を除去する工程と、を有し、
前記マスクは開口部を有し、
前記開口部から前記第2基板は露出し、
前記開口部は第1方向に垂直な辺を有しておらず、
前記第2基板を除去する工程におけるエッチングは、前記第1方向に比べて、前記第1方向に交差する第2方向に進みやすい半導体光素子の製造方法。
【請求項2】
前記開口部の平面形状は円形である請求項1に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項3】
前記マスクは1つの前記開口部を有する請求項1または請求項2に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1方向における前記開口部の端部から前記第2基板の端部までの距離は、前記第2基板の厚さの1/4以上、2倍以下である請求項1または請求項2に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項5】
前記マスクは複数の前記開口部を有する請求項1または請求項2に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1方向における隣り合う2つの前記開口部の間の距離は、前記第2基板の厚さの2倍以下である請求項5に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項7】
前記開口部は長軸および短軸を有し、
前記長軸は前記第2方向に対して傾斜している請求項5に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項8】
前記長軸の前記第2方向からの傾斜角度は30°以上、150°以下である請求項7に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項9】
前記開口部の平面形状は楕円形、矩形、およびひし形のいずれかである請求項7に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2基板はインジウムリンを含み、
前記半導体層はインジウムガリウム砒素を含み、
前記第2基板を除去する工程において、塩酸を含むエッチャントを用いたウェットエッチングにより前記第2基板を除去する請求項1または請求項2に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項11】
前記半導体層は第1半導体層と第2半導体層とを含み、
前記第2基板、前記第1半導体層、および前記第2半導体層はこの順番に積層され、
前記接合する工程において、前記第2半導体層が前記第1基板に接合され、
前記製造方法は、
前記第2基板を除去する工程の後、前記第1半導体層を除去する工程と、
前記第2半導体層をエッチングする工程と、を有する請求項1または請求項2に記載の半導体光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体光素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体で形成され光学利得を有する半導体素子を、導波路を形成したSOI(Silicon On Insulator)基板(シリコンフォトニクス)などの基板に接合する技術が知られている(例えば特許文献1)。例えばインジウムリン(InP)などの化合物半導体のウェハに半導体層を成長する。ウェハを切断することで半導体素子を形成する。半導体素子をSOI基板に接合する。接合後に、半導体素子にエッチングなどを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-164148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接合後のエッチングにおいて、エッチングの異方性に起因して、残存物が発生することがある。残存物は、例えばレジストの塗布といった後工程の障害となる。そこで、エッチングにおいて残存物の発生を抑制することが可能な半導体光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る半導体光素子の製造方法は、III-V族化合物半導体を含む小片と、第1基板とを有する半導体光素子の製造方法であって、小片は第2基板と、第2基板の上に積層された半導体層とを有し、前記製造方法は、前記小片の前記半導体層を前記第1基板に接合する工程と、前記第1基板に接合された前記小片にマスクを形成する工程と、前記マスクが設けられた前記小片にエッチングを行うことで、前記第2基板を除去する工程と、を有し、前記マスクは開口部を有し、前記開口部から前記第2基板は露出し、前記開口部は第1方向に垂直な辺を有しておらず、前記第2基板を除去する工程におけるエッチングは、前記第1方向に比べて、前記第1方向に交差する第2方向に進みやすいものである。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、エッチングにおいて残存物の発生を抑制することが可能な半導体光素子の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは第1実施形態に係る半導体光素子を例示する斜視図である。
図1B図1B図1Aの線A-Aに沿った断面図である。
図2A図2Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図2B図2Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図3A図3Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図3B図3Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図4A図4Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図4B図4Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図5A図5Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図5B図5Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図6A図6Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図6B図6Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図7A図7Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図7B図7Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図8A図8Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図8B図8Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図9A図9Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図9B図9Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図10A図10Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図10B図10Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図11A図11Aは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図11B図11Bは半導体光素子の製造方法を例示する図である。
図12A図12Aは比較例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。
図12B図12B図12Aの線D-Dに沿った断面図である。
図13A図13Aは比較例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。
図13B図13B図13Aの線D-Dに沿った断面図である。
図14A図14Aは第2実施形態に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。
図14B図14B図14Aの線D-Dに沿った断面図である。
図15A図15Aは第1変形例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。
図15B図15Bは開口部の拡大図である。
図16A図16Aは第2変形例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。
図16B図16Bは開口部の拡大図である。
図17A図17Aは第3変形例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。
図17B図17Bは開口部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0009】
本開示の一形態は、(1)III-V族化合物半導体を含む小片と、第1基板とを有する半導体光素子の製造方法であって、小片は第2基板と、第2基板の上に積層された半導体層とを有し、前記製造方法は、前記小片の前記半導体層を前記第1基板に接合する工程と、前記第1基板に接合された前記小片にマスクを形成する工程と、前記マスクが設けられた前記小片にエッチングを行うことで、前記第2基板を除去する工程と、を有し、前記マスクは開口部を有し、前記開口部から前記第2基板は露出し、前記開口部は第1方向に垂直な辺を有しておらず、前記第2基板を除去する工程におけるエッチングは、前記第1方向に比べて、前記第1方向に交差する第2方向に進みやすい半導体光素子の製造方法である。開口部が第1方向に垂直な辺を有していないため、第2基板のエッチングにおいて、エッチングレートの低い面が露出しにくい。第2基板のエッチングが進みやすい。エッチングおける残存物の発生を抑制することができる。
(2)上記(1)において、前記開口部の平面形状は円形でもよい。開口部が第1方向に垂直な辺を有していないため、第2基板のエッチングにおいて、エッチングレートの低い面が露出しにくい。第2基板のエッチングが進みやすい。エッチングおける残存物の発生が抑制される。
(3)上記(1)または(2)において、前記マスクは1つの前記開口部を有してもよい。開口部が第1方向に垂直な辺を有していないため、第2基板のエッチングにおいて、エッチングレートの低い面が露出しにくい。第2基板のエッチングが進みやすい。エッチングおける残存物の発生が抑制される。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記第1方向における前記開口部の端部から前記第2基板の端部までの距離は、前記第2基板の厚さの1/4以上、2倍以下でもよい。エッチングは第2基板の厚さの方向に進み、かつ第2基板の面内の方向にも進む。エッチングは、半導体層まで進み、かつ第2基板の端部まで到達する。残存物の発生を抑制することができる。
(5)上記(1)または(2)において、前記マスクは複数の前記開口部を有してもよい。開口部が第1方向に垂直な辺を有していないため、第2基板のエッチングにおいて、エッチングレートの低い面が露出しにくい。第2基板のエッチングが進みやすい。エッチングおける残存物の発生を抑制することができる。
(6)上記(5)において、前記第1方向における隣り合う2つの前記開口部の間の距離は、前記第2基板の厚さの2倍以下でもよい。エッチングは第2基板の厚さの方向に進み、かつ第2基板の面内の方向にも進む。第2基板のうち開口部の間の部分がエッチングによって除去される。残存物の発生を抑制することができる。
(7)上記(5)または(6)において、前記開口部は長軸および短軸を有し、前記長軸は前記第2方向に対して傾斜していてもよい。第2基板のエッチングにおいて、エッチングレートの低い面が露出しにくい。第2基板のエッチングが進みやすい。エッチングおける残存物の発生が抑制される。
(8)上記(7)において、前記長軸の前記第2方向からの傾斜角度は30°以上、150°以下でもよい。第2基板のエッチングにおいて、エッチングレートの低い面が露出しにくい。第2基板のエッチングが進みやすい。エッチングおける残存物の発生が抑制される。
(9)上記(7)または(8)において、前記開口部の平面形状は楕円形、矩形、およびひし形のいずれかでもよい。第2基板のエッチングにおいて、エッチングレートの低い面が露出しにくい。第2基板のエッチングが進みやすい。エッチングおける残存物の発生が抑制される。
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記第2基板はインジウムリンを含み、前記半導体層はインジウムガリウム砒素を含み、前記第2基板を除去する工程において、塩酸を含むエッチャントを用いたウェットエッチングにより前記第2基板を除去してもよい。第2基板と半導体層との間で高いエッチング選択比が得られる。エッチングによって第2基板を除去する。エッチングは半導体層で停止する。
(11)上記(1)から(10)のいずれかにおいて、前記半導体層は第1半導体層と第2半導体層とを含み、前記第2基板、前記第1半導体層、および前記第2半導体層はこの順番に積層され、前記接合する工程において、前記第2半導体層が前記第1基板に接合され、前記製造方法は、前記第2基板を除去する工程の後、前記第1半導体層を除去する工程と、前記第2半導体層をエッチングする工程と、を有してもよい。第2半導体層の加工に対する残存物の影響が抑制される。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る半導体光素子の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
<第1実施形態>
(半導体光素子)
図1Aは第1実施形態に係る半導体光素子100を例示する斜視図である。図1B図1Aの線A-Aに沿った断面図である。図1Aおよび図1Bに示すように半導体光素子100は、基板10(第1基板)と半導体素子20とを有するハイブリッド型のレーザ素子である。半導体素子20はIII-V族化合物半導体層を含む素子である。半導体素子20は、例えば光学利得を有し、光を発生させる。別の例では、半導体素子20は、光感度を有し、光を吸収して光電流を発生させる。半導体素子20は、電圧に応じて屈折率を変化させ、光を変調させてもよい。基板10は光を伝搬させる。Z軸方向は基板10の上面の法線方向である。
【0012】
図1Bに示すように、基板10は、Z軸方向に順に積層された基板12、ボックス層14、およびシリコン(Si)層16を含むSOI基板である。基板12は例えばSiで形成される。ボックス層14は例えば酸化シリコン(SiO)で形成される。ボックス層14の厚さは例えば3μmである。Si層16の厚さは、例えば220nmである。基板10の上面は絶縁膜18で覆われている。絶縁膜18は例えば厚さ1μmのSiOで形成されている。Si層16の屈折率は3.45である。ボックス層14および絶縁膜18の屈折率は、Si層16より低く、1.45である。
【0013】
基板10のSi層16は、導波路11、2つの凹部13、2つのテラス15を有する。導波路11と凹部13とは同じ方向に延伸する。2つの凹部13は導波路11の両側に位置し、導波路11と同じ方向に延伸する。テラス15はSi層16の平面であり、凹部13の導波路11とは反対に位置する。図1Bにおいて凹部13の底面はSi層16であるが、底面はボックス層14でもよい。Si層16には、リング共振器およびループミラーなどの光学部品を設けてもよい。例えば導波路11をリング状に湾曲させることでリング共振器が形成される。
【0014】
図1Bに示すように、半導体素子20は、Si層16の上面であって、導波路11および凹部13の上に接合されている。半導体素子20は、クラッド層22、活性層24、クラッド層26およびコンタクト層28を有する。クラッド層22からコンタクト層28は、基板10の上面から上に向けて順番に積層されている。
【0015】
クラッド層22は、例えば厚さ400nmのn型インジウムリン(n-InP)で形成される。クラッド層26は、例えば厚さ2μmのp-InPで形成される。コンタクト層28は、(p+)-ガリウムインジウム砒素(GaInAs)などで形成されている。活性層24は、交互に積層された複数の井戸層およびバリア層を含み、多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)を有する。井戸層およびバリア層は、ノンドープのガリウムインジウム砒素リン(i-GaInAsP)などで形成されている。活性層24の厚さは例えば300nmである。活性層24は光学利得を有し、例えば波長1.55μmの光を出射する。半導体素子20の各層は上記以外のIII-V族化合物半導体で形成されてもよい。
【0016】
図1Aに示すように、半導体素子20はメサ30、電極32および34を有する。半導体素子20のメサ30は導波路11の上に位置する。メサ30の先端はテーパ形状であり、導波路11に沿って先細りである。半導体素子20のメサ30およびテーパ形状の先端などが、素子構造である。
【0017】
図1Bに示すように、メサ30は活性層24、クラッド層26およびコンタクト層28で形成され、導波路11の上に位置する。クラッド層22はメサ30と基板10との間に位置し、メサ30の外側に広がる。クラッド層22は、基板10の導波路11の上面およびテラス15の上面に接触する。メサ30およびクラッド層22の表面は絶縁膜18に覆われる。絶縁膜18はメサ30の上、およびクラッド層22の上に開口部を有する。
【0018】
図1Bに示すように、電極32は、メサ30の上からメサ30の外側の絶縁膜18の上面まで延伸する。電極32は絶縁膜18の開口部を通じてコンタクト層28と電気的に接続される。電極32は例えばチタン(Ti)、白金(Pt)および金(Au)の積層体などで形成されている。電極34は電極32から離間し、絶縁膜18の上面に設けられ、絶縁膜18の開口部を通じてクラッド層22に電気的に接続される。電極34は、例えば金、ゲルマニウムおよびニッケルの合金(AuGeNi)などの金属で形成されている。電極32および電極34にAuのメッキ層などを設けてもよい。
【0019】
電極32および34に電圧を印加し、半導体素子20の活性層24にキャリアを注入する。キャリアを注入することで、活性層24は光を生成する。半導体素子20と基板10とはエバネッセント光結合によって光学的に結合しており、光は基板10の導波路11に遷移する。光は導波路11を伝搬し基板10の端部から半導体光素子100の外に出射される。
【0020】
(製造方法)
図2Aから図11Bは半導体光素子100の製造方法を例示する図である。図2Aは基板40(第2基板)を例示する平面図である。図2B図2Aの線B-Bに沿った断面図である。図中には基板40の結晶の方向を示している。図2Aにおいて、基板40の表面は(100)面である。奥から手前の方向は[100]方向である。上は[011]方向である。下は[0-1-1]方向である。右は[01-1]方向である。左は[0-11]方向である。[0-11]方向および[01-1]方向は第1方向に対応する。[011]方向および[0-1-1]方向は第2方向に対応し、[0-11]方向および[01-1]方向とは交差する。[011]方向および[0-1-1]方向は、[0-11]方向および[01-1]方向に直交する。
【0021】
図2Aに示す基板40は、例えば2インチのInP基板である。図2Bに示すように、例えば有機金属気相成長法(MOVPE:Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)により、基板40の1つの面に、エッチングストップ層42(第1半導体層)、および半導体層44(第2半導体層)を、この順番でエピタキシャル成長する。半導体層44は、図1Bに示したクラッド層22、活性層24、クラッド層26およびコンタクト層28を含む。エッチングストップ層42の上に、クラッド層22、活性層24、クラッド層26およびコンタクト層28がこの順番で積層される。基板40は、例えば厚さが350μmのインジウムリン(InP)で形成されている。エッチングストップ層42は、例えば厚さが0.3μmのインジウムガリウム砒素(InGaAs)で形成されている。半導体層44の成長後、ダイシングを行う。
【0022】
図3Aはダイシング後の基板40を例示する平面図である。図3B図3Aの線C-Cに沿った断面図であり、1つの小片43を含む断面を例示している。InPは[0-11]方向および[0-1-1]方向に沿って割れやすい。これらの方向に沿ってウェハを分割する。図3Aに示すように、ダイシングによってウェハを分割し、複数の小片43を形成する。InP系半導体で形成される基板40は、(01-1)面および(0-1-1)面を劈開面として割れやすい。[011]方向および[0-1-1]方向に沿って、半導体層44、エッチングストップ層42および基板40を切断する。[0-11]方向および[01-1]方向に沿って半導体層44、エッチングストップ層42、および基板40を切断する。ダイシングによって小片43が形成される。図3Bに示すように、小片43は、基板40、エッチングストップ層42および半導体層44を含む。
【0023】
小片43の平面形状は矩形である。基板40は辺43a、辺43b、辺43cおよび辺43dを有する。辺43aおよび辺43bは、互いに対向し、かつ[011]方向および[0-1-1]方向に垂直である。辺43cおよび辺43dは、互いに対向し、かつ[01-1]方向および[0-11]方向に垂直である。小片43の辺43aおよび辺43bの長さL1は例えば3.2mmである。小片43の辺43cおよび辺43dの長さL0は例えば3.2mmである。長さL1は長さL0に等しくてもよいし、長さL0とは異なってもよい。
【0024】
図4Aは基板10を例示する平面図である。基板10は例えば直径10インチのウェハである。図4Aに示すように、基板10に複数の小片43を接合する。接合の方法は親水化接合またはプラズマ活性化接合などである。小片43の半導体層44の表面および基板10のSi層16の表面に親水化、またはプラズマ照射による活性化を行う。
【0025】
図4Bは1つの小片43を含む図面を例示する断面図である。図4Bに示すように、半導体層44の表面を、基板10のSi層16の表面に対向させ、接触させる。接触後、例えば300℃の温度で加熱処理を行うことで、接合強度を強める。Z軸方向において、基板10、半導体層44、エッチングストップ層42および基板40がこの順番に並ぶ。小片43の基板40は、半導体層44およびエッチングストップ層42を挟んで基板10の反対に位置する。図4Bに示すように、半導体層44は基板10の導波路11の上に接合される。
【0026】
図5A図6A図7A図8A図9A図10Aおよび図11Aは1つの小片を含む平面を例示する平面図である。図5B図6B図7B図8B図9B図10Bおよび図11Bは対応する平面図の線D-Dに沿った断面図である。
【0027】
図5Aおよび図5Bに示すように、例えばプラズマCVD(Chamical Vapor Deposition)法により、絶縁膜45を形成する。絶縁膜45は、基板10の上面、小片43の側面および上面を覆う。絶縁膜45は酸化シリコン(SiO)などの絶縁体で形成されている。小片43の上面における絶縁膜45の厚さは例えば1μmである。小片43の側面における厚さは例えば0.5μmである。
【0028】
図6Aおよび図6Bに示すように、絶縁膜45の表面にレジスト47を形成する。フォトリソグラフィおよびエッチングなどにより、レジスト47のパターニングを行い、レジスト47に開口部47aを形成する。開口部47aは小片43の上であって、小片43の平面のほぼ中央に位置する。図6Aに示すように、開口部47aの平面形状は円形である。開口部47aの端部は、小片43の辺43a、辺43b、辺43c、および辺43dから離間し、4つの辺に囲まれている。
【0029】
開口部47aの直径D1は、小片43の辺の長さL0およびL1より小さい。[01-1]方向における、開口部47aの端部と小片43の端部との最短距離D2(開口部47aの端部から辺43dまでの距離)は、例えば100μm以上、500μm以下である。開口部47aから辺43aまでの距離、辺43bまでの距離、辺43cまでの距離は、それぞれD2と同程度であり、D2に等しくてもよい。開口部47aからは絶縁膜45が露出する。
【0030】
図7Aおよび図7Bに示すように、例えばバッファードフッ酸を用いたエッチングを行い、レジスト47のパターンを絶縁膜45に転写する。エッチングによって、絶縁膜45からマスク46が形成される。マスク46は開口部48を有する。開口部48は、レジスト47の開口部47aに重なり、マスク46を貫通する。基板40は開口部48から露出する。開口部48の平面形状は円形である。開口部48は[01-1]方向に垂直な辺および[0-11]方向な垂直な辺を有さない。開口部48の直径は開口部47aの直径D1に等しい。開口部48の端部から小片43の端部までの距離は、開口部47aの端部から小片43の端部までの距離(例えばD2)に等しい。開口部48からは小片43の基板40が露出する。図8Aおよび図8Bに示すように、レジスト47を除去する。マスク46が露出する。
【0031】
図9Aから図10Bに示すように、基板40の裏面からウェットエッチングを行う。基板40がInP基板である場合、基板40の裏面は(-100)面である。基板40がInP基板である場合、エッチャントとしては塩酸(HCl)を含む溶液を用いる。エッチャントの溶液は、基板40を構成する材料に合わせて選択される。
【0032】
図9Aに示すように、マスク46の開口部48は円形である。開口部48からは基板40の円形の領域が露出する。露出する面は(-100)面である。InP基板の(-100)面に対して、塩酸系のエッチャントを用いてウェットエッチングを施すとき、図9Bに示すように、エッチングは基板40の厚さ方向、すなわち[100]方向に進行する。ウェットエッチングは、[100]方向に進むとともに、基板40の面内にも進む。すなわち、ウェットエッチングは3次元的にあらゆる方向に進行する。
【0033】
基板40のウェットエッチングには異方性がある。エッチングは[01-1]方向、[0-11]方向、[011]方向、および[0-1-1]方向にも進行する。エッチングの進行しやすさは方向ごとに異なる。(-100)面と35度の角度を有する面に垂直な方向に対するエッチングレートは極めて小さく、当該方向にはエッチングはほとんど進行しない。基板40に対するウェットエッチングの開始から、ある方向で基板40が溶けてなくなるまでの時間を、その方向におけるエッチングレートと定義する。[01-1]方向におけるエッチングレート、および[0-11]方向におけるエッチングレートは、[011]方向におけるエッチングレートおよび[0-1-1]方向におけるエッチングレートより小さい。
【0034】
図9Aに示すように、マスク46の開口部48は円形であり、[01-1]方向および[0-11]方向に垂直な辺を有さない。エッチングレートの小さい面が露出しにくい。図9Bに示すように、ウェットエッチングは[100]方向にも、面内の方向にも進み、基板40のうちマスク46の下の部分にも進む。ウェットエッチングは、[100]方向においてエッチングストップ層42に達し、エッチングストップ層42で停止する。ウェットエッチングは、小片43の辺43a、辺43b、辺43cおよび辺43dまで達する。図10Aおよび図10Bに示すように、ウェットエッチングによって小片43から基板40が除去される。エッチングストップ層42が露出する。ウェットエッチングの終了後、バッファードフッ酸(BHF)を用いたエッチングによりマスク46を除去する。マスク46を取り除いた後、小片43に後工程を行う。
【0035】
図11Aおよび図11Bに示すように、エッチングストップ層42を除去する。半導体層44が露出する。半導体層44の上にレジストパターンおよびエッチングマスクなどを設ける。エッチングを行い、半導体層44から図1Aおよび図1Bに示す半導体素子20を形成する。半導体光素子100が形成される。
【0036】
図12Aおよび図13Aは比較例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。図12Bおよび図13Bは対応する平面図の線D-Dに沿った断面図である。小片43の基板10への接合後、マスクを設けずに、基板40にウェットエッチングを行う。
【0037】
基板40のウェットエッチングにおいて、[01-1]方向および[0-11]方向にエッチングが進むとき、(-100)面と35度の角度を有し、[011]方向に平行に延伸する特定の結晶面が露出しやすい。(-100)面に対し35度で傾斜した面に垂直な方向のエッチングレートは極めて小さい。角度35度で傾斜した面が露出すると、その面に垂直な方向にはエッチングが進みにくい。[011]方向および[0-1-1]方向に比べて、[01-1]方向および[0-11]方向にはエッチングが進みにくい。
【0038】
図12Aおよび図12Bに示すように、[01-1]方向および[0-11]方向に、基板40の一部が除去されず、残存物40eとして残る。基板40のウェットエッチングの後、エッチングストップ層42にウェットエッチングを行う。図13Aおよび図13Bに示すように、残存物40e、および下のエッチングストップ層42が残る。残存物40eは辺43cおよび辺43dに沿って延伸する。残存物40eはエッチングストップ層42の上面から上に突出する。残存物40eの断面形状は三角形である。残存物40eの底角の角度は例えば35度である。残存物40eの高さは例えば20μmである。残存物40e底辺の長さは例えば30μmである。残存物40eがあるため、半導体層44の上にレジストパターンおよびエッチングマスクなどを形成することが難しい。
【0039】
第1実施形態によれば、小片43を基板10に接合した後、小片43にマスク46を形成する。マスク46が設けられた小片43にウェットエッチングを行う。ウェットエッチングは、[01-1]方向および[0-11]方向に進みにくく、[011]方向および[0-1-1]方向に進みやすい。マスク46は開口部48を有する。図7Aに示すように、開口部48の平面形状は円形であり、[01-1]方向および[0-11]方向に垂直な辺を有さない。ウェットエッチングの工程において、エッチングレートの低い面が露出しにくい。ウェットエッチングは[100]方向に進むとともに、基板40の面内にも進む。ウェットエッチングがエッチングストップ層42に達し、かつ小片43の4つの辺に達することで、基板40は除去される。図10Aおよび図10Bに示すように、残存物の発生を抑制することができる。残存物のない小片43を加工することで、半導体素子20を形成することができる。
【0040】
[01-1]方向における開口部48の端部から小片43の辺43dまでの距離D2は、基板40の厚さの1/4以上、2倍以下である。基板40の厚さが350μmである場合、距離D2は、おおよそ90μmから700μmの範囲内であり、例えば100μm以上、500μm以下としてもよい。マスク46の端部から小片43の他の辺43a、辺43bおよび辺43cまでの距離は距離D2と同程度であり、距離D2に等しくてもよい。
【0041】
ウェットエッチングは、基板40の厚さの方向に進み、かつ面内の方向にも進む。距離D2が大きすぎると、ウェットエッチングがエッチングストップ層42まで進んだ時点で、辺43cおよび辺43dまで到達しない。[01-1]方向および[0-11]方向に基板40が残る恐れがある。距離D2が小さすぎると、ウェットエッチングがエッチングストップ層42まで進む前に、ウェットエッチングが辺43cおよび辺43dまで到達する。基板40が残ってしまう。[01-1]方向および[0-11]方向におけるマスク46の端部から基板40の端部までの距離D2を、上記のような範囲とする。ウェットエッチングが、厚さ方向ではエッチングストップ層42まで進み、かつ[01-1]方向および[0-11]方向において小片43の端部まで到達する。基板40の残存物の発生を抑制することができる。
【0042】
マスク46の平面内の面積(図10Aの点線の内側の面積)に対して、開口部48が占める割合は、例えば70%程度である。基板40の裏面のうち約30%はマスク46で覆われ、約70%は開口部48から露出する。ウェットエッチングは、基板40の裏面のうち露出する部分から、マスク46で覆われた部分にも進む。基板40が除去され、残存物の発生は抑制される。開口部48が占める割合は50%以上、90%以下でもよい。
【0043】
マスク46は1つの開口部48を有する。開口部48の平面形状は円形である。開口部48が[01-1]方向および[0-11]方向に垂直な辺を有さない。ウェットエッチングの工程において残存部が発生しにくい。開口部48の平面形状は楕円形でもよい。開口部48の短軸は、[011]方向および[0-1-1]方向に平行である。長軸は[01-1]方向および[0-11]方向に平行である。開口部48の平面形状はひし形などの多角形でもよい。後述するように開口部の個数は2個以上でもよい。
【0044】
基板40とエッチングストップ層42との間でエッチング選択比が高いことにより、接合後に基板40をウェットエッチングで除去することができる。例えば、基板40はInPで形成される。エッチングストップ層42はInGaAsで形成される。ウェットエッチングのエッチャントとして塩酸を用いる。基板40を除去し、ウェットエッチングをエッチングストップ層42で停止させることができる。基板40はInPを含んでもよいし、InP以外の半導体で形成されてもよい。エッチングストップ層42はInGaAsを含んでもよいし、InGaAs以外の半導体で形成されてもよい。エッチャントは塩酸以外の溶液を含んでもよい。
【0045】
残存物40eの発生が抑制されることで、半導体層44の上にレジストパターンおよびエッチングマスクなどを形成することが可能である。半導体層44のエッチングを行い、図1Aに示すようなテーパ形状を有するメサ30を形成することができる。
【0046】
基板40の表面は(100)面であるとした。基板40の表面の面方位が、InPの(100)面に対して例えば2°、6°、15°など15°以下に傾いてもよい。こうした基板40を用いた場合でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。第1方向および第2方向は、製造上のばらつきの範囲で[01-1]方向および[011]方向からずれることがある。当該ばらつきが発生した場合でも同様の効果が得られる。
【0047】
<第2実施形態>
図14Aは第2実施形態に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。図14B図14Aの線D-Dに沿った断面図である。図14Aおよび図14Bは、第1実施形態の図8Aおよび図8Bに対応する工程を例示している。第1実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0048】
図14Aおよび図14Bに示すように、小片43が基板10に接合され、マスク50が設けられている。マスク50は、マスク46と同様にSiOで形成され、マスク46に代えて用いられる。絶縁膜45を小片43に設ける。レジストを設け、レジストパターニングを行う。レジストには複数の開口部が形成される。レジストのパターンを絶縁膜45に転写し、マスク46を形成する。
【0049】
マスク50は複数の開口部52を有する。開口部52からは基板40が露出する。開口部52の平面形状は円形である。[01-1]方向および[0-11]方向に、8個の開口部52が並び、列を形成する。[011]方向および[0-1-1]方向に、開口部52の列は9列並ぶ。開口部52の直径D3は例えば10μm以上、100μm以下である。隣り合う2つの開口部52の間の距離D4は、例えば10μm以上、50μm以下である。複数の開口部52のうち最も小片43の端部に近いものを開口部52aとする。開口部52aの端部から小片43の端部までの最短距離D5は、例えば10μm以上、50μm以下である。
【0050】
マスク50が設けられた小片43にウェットエッチングを行うことで、基板40を除去する。エッチングストップ層42が露出する。基板40除去後の工程は第1実施形態と同じである。
【0051】
第2実施形態によれば、マスク50は複数の開口部52を有する。開口部52は円形であり、[01-1]方向および[0-11]方向に垂直な辺を有さない。ウェットエッチングの工程において、エッチングレートの低い面が露出しにくい。ウェットエッチングは[100]方向に進むとともに、基板40の面内にも進む。ウェットエッチングは、基板40のうちマスク50の下の部分、および複数の開口部52の間の部分にも進む。ウェットエッチングがエッチングストップ層42に達し、かつ小片43の4つの辺に達することで、基板40は除去される。残存物の発生を抑制することができる。残存物のない小片43を加工することで、半導体素子20を形成することができる。
【0052】
隣り合う2つの開口部52の間の距離D4は、基板40の厚さの2倍以下であり、例えば10μm以上、50μm以下である。基板40のうち2つの開口部52の間の部分が、ウェットエッチングによって除去される。残存物の発生を抑制することができる。開口部52aの端部から小片43の端部までの最短距離D5は、基板40の厚さの2倍以下であり、例えば10μm以上、50μm以下である。残存物の発生を抑制することができる。
【0053】
開口部52の個数および大きさは変更してもよい。開口部52の個数が多いほど、1つの開口部52を小さくする。個数が少ないほど、1つの開口部52を大きくする。開口部52の個数は例えば4個以上でもよいし、数十個でもよいし、100個以上でもよい。
【0054】
第2実施形態においては、レジストに複数の円形の開口部を設ける。レジストを用いて絶縁膜45に円形の開口部52を複数個設けることができる。レジストの開口部の形状を変えることで、マスクの開口部の形状も変えることができる。
【0055】
(第1変形例)
図15Aは第1変形例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。第1実施形態および第2実施形態のいずれかと同じ構成については、説明を省略する。図15Aに示すように、小片43にマスク54が設けられている。マスク54は複数の開口部55を有する。開口部55の平面形状は楕円形である。
【0056】
図15Bは開口部55の拡大図であり、2つの開口部55を図示している。図15Bに示すように、開口部55は長軸56および短軸57を有する。開口部55は、長軸56に関して線対称であり、短軸57に関して線対称である。長軸56の長さD6は例えば10μm以上、100μm以下である。短軸57の長さD7は、例えば10μm以上、100μm以下であり、かつ長軸56の長さD6より小さい。隣り合う2つの開口部55間の最短距離D8は、例えば10μm以上、50μm以下である。
【0057】
長軸56および短軸57は、[011]方向、[0-1-1]方向、[01-1]方向および[0-11]方向から傾斜している。長軸56および短軸57は、(01-1)面および(0-11面)に対して平行ではない。長軸56の[011]方向および[0-1-1]方向からの傾斜角度θ1は例えば30°以上、150°以下である。
【0058】
第1変形例によれば、マスク50は複数の開口部55を有する。開口部55は楕円形であり、[01-1]方向および[0-11]方向に垂直な辺を有さない。長軸56および短軸57は、[011]方向および[0-1-1]方向から傾斜している。ウェットエッチングの工程において、エッチングレートの低い面が露出しにくい。ウェットエッチングは[100]方向に進むとともに、基板40の面内にも進む。ウェットエッチングがエッチングストップ層42に達し、かつ小片43の4つの辺に達することで、基板40は除去される。残存物の発生を抑制することができる。残存物のない小片43を加工することで、半導体素子20を形成することができる。
【0059】
長軸56が[011]方向および[0-1-1]方向に対して平行、すなわち(01-1)面および(0-11)面に対して平行である場合、エッチングレートの低い面が露出し、残存物が発生しやすい。図15Bに示すように、長軸56が[011]方向および[0-1-1]方向に対して傾斜し、(01-1)面および(0-11)面に対して傾斜する。エッチングレートの低い面が露出しにくい。傾斜角度θ1は例えば30°以上、150°以下である。長軸56が[011]方向および[0-1-1]方向に対して平行な位置から遠ざかる。ウェットエッチングの途中で、エッチングレートの低い面が露出しにくい。残存物の発生が抑制される。角度θ1は例えば20°以上、40°以上、45°以上、140°以下、160°以下などでもよい。
【0060】
(第2変形例)
図16Aは第2変形例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。第1実施形態、第2実施形態および第1変形例のいずれかと同じ構成については、説明を省略する。図16Aに示すように、小片43にマスク60が設けられている。マスク60は複数の開口部62を有する。開口部62の平面形状は矩形である。開口部62は、小片43の辺43aと辺43cとの間に延伸する、または辺43bと辺43dとの間に延伸する。
【0061】
図16Bは開口部62の拡大図であり、2つの開口部62を図示している。図16Bに示すように、開口部62は長軸64および短軸66を有する。長軸64は、開口部62の長辺に平行であり、長辺に等しい長さを有する。短軸66は、開口部62の短辺に平行であり、短辺に等しい長さを有する。長軸64の長さD9は、短軸66の長さD10以上である。短軸66の長さD10は、例えば10μm以上、100μm以下である。隣り合う2つの開口部62間の最短距離D11は、例えば10μm以上、50μm以下である。
【0062】
長軸64および短軸66は、[011]方向、[0-1-1]方向、[01-1]方向および[0-11]方向から傾斜している。長軸64および短軸66は、(01-1)面、(0-11面)に対して平行ではない。長軸64の[011]方向および[0-1-1]方向からの傾斜角度θ2は例えば30°以上、150°以下である。
【0063】
第2変形例によれば、マスク60は複数の開口部62を有する。長軸64および短軸66は、[011]方向および[0-1-1]方向から傾斜している。開口部62は、[01-1]方向および[0-11]方向に垂直な辺を有さない。ウェットエッチングの工程において、エッチングレートの低い面が露出しにくい。ウェットエッチングの工程における残存物の発生を抑制することができる。残存物のない小片43を加工することで、半導体素子20を形成することができる。
【0064】
長軸64の傾斜角度θ2は例えば30°以上、150°以下である。長軸64が[011]方向および[0-1-1]方向に対して平行な位置から遠ざかる。ウェットエッチングの途中で、エッチングレートの低い面が露出しにくい。残存物の発生が抑制される。角度θ2は例えば20°以上、40°以上、45°以上、140°以下、160°以下などでもよい。
【0065】
複数の開口部62の短軸66の長さD10は、互いに等しくてもよい。複数の短軸66の長さD10は、例えば10μmから100μmの範囲内で異なる長さを含んでもよい。長軸64の長さD9は、短軸66の長さD10以上であり、小片43の対角線の長さよりも短い。例えば、開口部62の端部が、辺43aおよび辺43c、または辺43bおよび辺43dに近づくように、長さD9を定める。開口部62の端部から小片43の端部までの最短距離は、例えば10μm以上、50μm以下である。
【0066】
(第3変形例)
図17Aは第3変形例に係る半導体光素子の製造方法を例示する平面図である。第1実施形態、第2実施形態、第1変形例および第2変形例のいずれかと同じ構成については、説明を省略する。図17Aに示すように、小片43にマスク70が設けられている。マスク70は複数の開口部72を有する。開口部72の平面形状はひし形である。
【0067】
図17Bは開口部72の拡大図であり、2つの開口部72を図示している。図17Bに示すように、開口部72は長軸74および短軸76を有する。長軸74の長さD12は例えば10μm以上、100μm以下である。短軸76の長さD13は、例えば10μm以上、100μm以下であり、かつ長軸74の長さD12より小さい。隣り合う2つの開口部72間の最短距離D14は、例えば10μm以上、50μm以下である。
【0068】
長軸74および短軸76は、[011]方向、[0-1-1]方向、[01-1]方向および[0-11]方向から傾斜している。長軸74および短軸76は、(01-1)面、(0-11面)に対して平行ではない。長軸74の[011]方向および[0-1-1]方向からの傾斜角度θ3は例えば30°以上、150°以下である。
【0069】
第3変形例によれば、マスク70は複数の開口部72を有する。開口部72はひし形であり、[01-1]方向および[0-11]方向に垂直な辺を有さない。長軸74および短軸76は、[011]方向および[0-1-1]方向から傾斜している。ウェットエッチングの工程において、エッチングレートの低い面が露出しにくい。ウェットエッチングの工程における残存物の発生を抑制することができる。残存物のない小片43を加工することで、半導体素子20を形成することができる。
【0070】
長軸74の傾斜角度θ3は例えば30°以上、150°以下である。長軸74が[011]方向および[0-1-1]方向に対して平行な位置から遠ざかる。ウェットエッチングの途中で、エッチングレートの低い面が露出しにくい。残存物の発生が抑制される。角度θ3は例えば20°以上、40°以上、45°以上、140°以下、160°以下などでもよい。
【0071】
図14Aに示すように、開口部の平面形状は円形でもよい。開口部の平面形状は円形以外に、長軸および短軸を有する形状でもよい。第1変形例から第3変形例のように開口部の平面形状は、円形、楕円形、矩形およびひし形でもよいし、他の形状でもよい。
【0072】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10、12、40 基板
11 導波路
13 凹部
14 ボックス層
15 テラス
16 Si層
18 絶縁膜
20 半導体素子
22、26 クラッド層
24 活性層
28 コンタクト層
30 メサ
32、34 電極
40e 残存物
42 エッチングストップ層
44 半導体層
43 小片
43a、43b、43c、43d 辺
45 絶縁膜
46、50、54、60、70 マスク
47 レジスト
47a、48、52、55、62、72 開口部
56、64、74 長軸
57、66、76 短軸
100 半導体光素子

図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B