(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104058
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】発光素子及び発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/38 20100101AFI20240726BHJP
H01L 33/64 20100101ALI20240726BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240726BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01L33/38
H01L33/64
H01L29/44 L
H01L23/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008072
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀川 航佑
【テーマコード(参考)】
4M104
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB05
4M104BB14
4M104EE16
4M104FF01
4M104FF03
4M104FF13
4M104GG04
4M104HH20
5F142AA42
5F142AA51
5F142CD02
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5F142CD44
5F142CD47
5F142DB02
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5F241AA33
5F241AA43
5F241CA04
5F241CA13
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5F241CA92
5F241CB04
5F241CB11
5F241CB23
5F241CB25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放熱効率を向上させ、信頼性の高い発光素子及び発光装置を提供する。
【解決手段】平板状の基板11と、基板11上に設けられ、各々がn型半導体層、発光層及びp型半導体層を含み1の方向に沿って延在する複数の発光機能部15Aと、n型半導体層が露出した複数の谷部15Bとを有する半導体層15と、p型半導体層上に設けられた複数のp電極17と、n型半導体層上に設けられた複数のn電極16と、n電極16の各々及びp電極17の各々上に設けられ、n電極16及びp電極17の一部が露出する第1及び第2の開口を有する絶縁層18と、絶縁層18上に設けられたnパッド電極19及び複数のpパッド電極20と、を備え、nパッド電極19及びpパッド電極20は、発光機能部15Aの延在方向に互いに離間して配置され、nパッド電極19は複数のpパッド電極20間に配置されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する2つの主面を備えた平板状の基板と、
前記基板の一方の主面上に設けられ、各々がn型半導体層、発光層及びp型半導体層を含み1の方向に沿って延在する複数の発光機能部と、前記複数の発光機能部の間の前記n型半導体層が露出した複数の谷部とを有する半導体層と、
前記発光機能部の前記p型半導体層上に、前記1の方向に沿って延在して設けられた複数のp電極と、
前記谷部に露出した前記n型半導体層上に、前記1の方向に沿って延在して設けられた複数のn電極と、
前記n電極の各々及び前記p電極の各々上に設けられ、それぞれ前記n電極及び前記p電極の一部が露出する第1及び第2の開口を有する絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられ、前記第1の開口を介して前記複数のn電極に接続されたnパッド電極、及び、前記第2の開口を介して前記複数のp電極に接続された複数のpパッド電極と、を備え、
前記nパッド電極及び前記pパッド電極は、前記発光機能部の延在方向に互いに離間して配置され、前記nパッド電極は、前記複数のpパッド電極間に配置されている半導体発光素子。
【請求項2】
前記pパッド電極及び前記nパッド電極の表面は、前記発光機能部の前記延在方向に沿って延びる凸形状を有する請求項1に記載された半導体発光素子。
【請求項3】
前記nパッド電極は、複数の前記pパッド電極の中心に配置されている請求項1または請求項2に記載された半導体発光素子。
【請求項4】
前記発光機能部は、波長220nm~285nmの光を出射する請求項1または請求項2に記載された半導体発光素子。
【請求項5】
前記nパッド電極は、前記発光機能部の前記延在方向において、複数の前記pパッド電極の大きさの合算値の1/10~1/4の大きさである請求項1または請求項2に記載された半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1の開口は、前記基板の前記主面に垂直な方向から見たときに前記n電極の中央部に設けられている請求項1または請求項2に記載された半導体発光素子。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子と、
互いに対向する2つの主面を備えた平板状に形成され、一方の前記主面上に前記半導体発光素子が接合部材を介して接合された装置基板と、
前記装置基板の前記一方の主面上に窓接合部材を介して前記半導体発光素子を覆うように接合された窓部材と、を備え、
前記半導体発光素子は、前記装置基板と前記窓部材と前記窓接合部材とによって封止されている発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子及び当該半導体発光素子が実装された発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子が実装された発光装置は、殺菌、滅菌、または各種の照明などに利用されている。特に近年、半導体発光素子が実装された発光装置は、更なる長寿命化が求められている。半導体発光素子は温度が上昇すると、破損または劣化が生じることがある。特に、半導体発光素子内(発光部)の不均一な温度分布をともなう温度上昇において破損または劣化が生じやすい傾向にある。そこで長寿命化には、放熱効率の向上と半導体発光素子全体の均熱化が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、活性領域を含む半導体構造と、半導体構造の上面に形成される透光性導電層と、透光性導電層の上面に形成される誘電体膜と、誘電体膜の上面に形成される金属反射層と、を備える半導体発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、活性領域を含む半導体構造と、透光性導電層と、誘電体膜と、金属反射層とを備える半導体発光素子には、活性領域で発生した熱を効率的に放熱することができずに、半導体発光素子の破損または劣化を発生させるおそれがあるなど信頼性に問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、放熱効率を向上させつつ発熱均熱性を向上し、信頼性の高い発光素子又は発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1実施形態による発光素子は、
互いに対向する2つの主面を備えた平板状の基板と、
前記基板の一方の主面上に設けられ、各々がn型半導体層、発光層及びp型半導体層を含み1の方向に沿って延在する複数の発光機能部と、前記複数の発光機能部の間の前記n型半導体層が露出した複数の谷部とを有する半導体層と、
前記発光機能部の前記p型半導体層上に、前記1の方向に沿って延在して設けられた複数のp電極と、
前記谷部に露出した前記n型半導体層上に、前記1の方向に沿って延在して設けられた複数のn電極と、
前記n電極の各々及び前記p電極の各々上に設けられ、それぞれ前記n電極及び前記p電極の一部が露出する第1及び第2の開口を有する絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられ、前記第1の開口を介して前記複数のn電極に接続されたnパッド電極、及び、前記第2の開口を介して前記複数のp電極に接続された複数のpパッド電極と、を備え、
前記nパッド電極及び前記pパッド電極は、前記発光機能部の延在方向に互いに離間して配置され、前記nパッド電極は、前記複数のpパッド電極間に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の発光素子を示した展開図であり、上方側から見たときの斜視図である。
【
図1B】本発明の発光素子の上面を示す図であり、絶縁層及びパッド電極を透かした状態を示す図である。
【
図2A】本発明の発光装置を示した断面図であり、
図2Bに示すD-D線に沿った断面図である。
【
図2B】本発明の発光装置を示した上面図であり、窓部材を透かした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、適宜改変し、組み合わせてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[発光素子]
【0010】
図1Aは、本発明の発光素子10を示した展開図であり、上方側から見たときの斜視図である。
図1Bは、本発明の発光素子10の上面を示す図であり、絶縁層及びパッド電極を透かした状態を示す図である。
図1Cは本発明の発光素子10の上面を示す図である。なお、
図1Cでは、n電極16及びp電極17とパッド電極19、20との配置関係の明確化のため、n電極16及びp電極17を破線で示している。
図1Dは
図1Cに示すA-A線に沿った断面図であり、
図1Eは
図1Cに示すB-B線に沿った断面図であり、
図1Fは
図1Cに示すC-C線に沿った断面図である。
【0011】
発光素子10の説明においては、基板11に対して発光機能部15Aが設けられている方向を上方といい、その反対方向を下方という。
【0012】
図1Aに示すように、発光素子10は、基板11と、基板11上に設けられた複数の離間した発光機能部15Aとを含む半導体層15が設けられている。発光機能部15Aは、基板11側からn型半導体層12、発光層13及びp型半導体層14がこの順で積層された積層構造を有し、所定の方向(
図1Bに示すY軸方向)に延在するメサ形状を有している。また、発光機能部15Aを離間する間隙にはn型半導体層12が露出している。
【0013】
また、露出したn型半導体層12上には複数のn電極16が設けられ、発光機能部15Aのp型半導体層14上には複数のp電極17が設けられている。n電極16の各々及びp電極17の各々を含む半導体層15の表面上には絶縁層18が設けられている。絶縁層18上にはnパッド電極19及び複数のpパッド電極20が設けられている。以後、nパッド電極19とpパッド電極20の各々を区別しない場合には単にパッド電極19、20と称して説明する。
【0014】
(基板)
図1A及び
図1Dに示すように、基板11は、互いに平行に対向する主面である上面11A及び下面(裏面)11Bを備えた矩形の平板状に形成されている。基板11の下面11Bは、発光機能部15Aから出射された光が出射される出光面である。
【0015】
基板11の下面11Bには、粗面処理が施されている。そのため、基板11の下面11Bに入光する光の反射を抑制することができる。なお粗面処理以外に、基板11と外界物質(例えば空気)との界面での反射を抑える反射防止膜(AR膜:Anti-Reflection coating)等を用いることもできる。よって、光の取り出し効率を向上させることができる。なお、基板11の下面11Bは、平坦であってもよい。
【0016】
基板11としては、窒化アルミ(AlN)単結晶基板が用いられている。基板11が半導体層15より熱伝導率の高い窒化アルミ(熱伝導率:270W/(m・K))で形成されていることにより、基板11全体がヒートスプレッダとして機能して均熱化され、局所的に高温となることを抑制することができる。そのため、局所的に歪むことで発生する半導体層15の損傷、電極の剥がれなどの発光素子の故障を抑制することができる。基板11には、半導体層15から出射する光を透光し、且つ半導体層15より熱伝導率が高い窒化ケイ素(SiC)結晶とすることもできる。なお、低発熱駆動をする場合にはサファイア(Al2O3)結晶とすることもできる。
【0017】
(発光機能部)
発光機能部15Aは、
図1Dに示すように半導体層15上に複数形成されており、n型半導体層12と、発光層13と、p型半導体層14とがこの順番で積層された積層構造からなる。発光機能部15Aは、上面視において、基板11の平行に対向した1対の辺に沿った方向(
図1のY方向)の長辺と、当該1対の辺に直交した方向(
図1のX方向)に平行に対向した1対の辺に沿った短辺を有する長方形をしている。また、複数の発光機能部15Aはメサ形状を有しており、凹部(谷部)15Bにより互いに隔てられている。より詳細には、凹部15Bは、
図1Bに示すY軸方向に延在しており、複数の発光機能部15Aも同様に
図1Bに示すY軸方向に互いに平行に延在している。また、凹部15Bは、n型半導体層12の内部に至る深さで形成され、当該凹部15Bの底面では、n型半導体層12が露出している。言い換えれば、複数の発光機能部15Aと凹部15Bとは、交互且つ平行にX軸方向に整列して並んでいる。なお、複数の発光機能部15Aと凹部15Bの整列領域の周縁(半導体層15の周縁)には凹部15Bの底面と面続きとなる周縁部を設けている。
【0018】
発光機能部15Aは、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系化合物の半導体からなり、発光波長265nmの深紫外光を出射する。発光機能部15AのAlGaN結晶のAl組成比は0.5以上と高くすることで、深紫外帯域の波長220nm~285nmの光を出射することができる。このようなAl組成比が高いAlGaN結晶は、面内の均熱性を向上することによって熱劣化を抑制することができる。
【0019】
半導体層15には、電子障壁層(EBL層)、分布ブラッグ反射鏡層(DBR層)、超格子構造層(SLS層)、コンタクト層(例えば、MgドープGaN層、MgドープAlGaN層)などを含んでもよい。
【0020】
(n電極)
図1Aに示すように、n電極16は各々が、短冊状に形成されており、発光機能部15Aに沿って延在している。より詳細には、n電極16は、
図1Bに示すように、Y軸方向に延在されている。また、n電極16は、凹部15Bの底面及び凹部15Bの底面から面続きの周縁部(
図1Aには図示せず)の辺においてn型半導体層12上に設けられ、n型半導体層12と電気的に接続されている。そのため、n電極16から供給された電流は、発光機能部15Aの長辺方向から均一に給電される。
【0021】
n電極16は、チタン(Ti)及び金(Au)がこの順で積層して形成されている。以後、順に積層されている層についてはTi/Auと記載する。n電極16としては、Ti/アルミ(Al)、Ti/プラチナ(Pt)/Au、Ti/ロジウム(Rh)/Auなどでもよい。なお、n電極16の最上層には、金属酸化膜との接着性を向上するTiを配することもできる。
【0022】
(p電極)
図1Aに示すように、p電極17は各々が、短冊状に形成されており、発光機能部15Aに沿って延在されている。より詳細には、p電極17は、
図1Bに示すように、Y軸方向に延在されている。p電極17は、発光機能部15Aの頂部においてp型半導体層14上に設けられ、p型半導体層14と電気的に接続されている。そのため、p電極から供給された電流は、発光機能部15Aの上面全体に均一に給電される。
【0023】
p電極17としては、ニッケル(Ni)/Auが積層して形成されている。p電極としては、Ni/Pt/Au、Ni/パラジウム(Pd)/Au、Ni/銀(Ag)/Pt/Au、Ni/Pt/Al/Pt/Auなどでもよい。なお、n電極16の最上層には、金属酸化膜との接着性を向上するTiを配することもできる。
【0024】
(絶縁層)
図1Aに示すように、絶縁層18の表面は、半導体層15の上面形状を反映した凸形状を有するように形成されている。言い換えると、絶縁層18の表面は、半導体層15の発光機能部15A(凸部)の延在方向(
図1Cに示すY軸方向)に沿って延びる複数の凸形状を有している。また、絶縁層18には、絶縁層18を上下方向に貫通する複数の第1開口18Aと第2開口18Bが形成されている。
【0025】
第1開口18Aは、
図1A及び
図1Fに示すように、n電極16の長手方向の中央の上面を覆う絶縁層18の凹部の底面に形成されており、第1開口18Aからn電極16の一部が露出している。第2開口18Bは、
図1A及び
図1Dに示すように、p電極17の長手方向の中央を除く上面を覆う絶縁層18の凸部の頂面に形成されており、第2開口18Bからp電極17の一部が露出している。また、第2開口18Bは、第1開口18Aを仮想的に繋げた領域帯の端から離間して対向するように設けられている。
【0026】
なお、本実施形態の絶縁層18は単数だが、複数積層した構成とすることもできる。例えば、半導体層15上に,n電極16及びp電極17を形成する開口を設けた第1の絶縁層を設け、当該絶縁層上にn電極16及びp電極17を形成し、その上に第2の絶縁層を形成する構成とすることもできる。
【0027】
絶縁層18としては、二酸化ケイ素(SiO2)が用いられている。なお、絶縁層18としては二酸化チタン(TiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)などの絶縁性の金属酸化物を用いることもできる。
【0028】
(パッド電極)
本実施形態のnパッド電極19は、
図1C及び
図1Fに示すように、発光機能部15Aの延在方向(Y軸方向)の中間点且つ直交した方向(X軸方向)に、第1開口18Aを含む長方形状に形成されている。言い換えれば、複数の発光機能部15Aを長辺方向において二分するように設けられている。また、nパッド電極19は、第1開口18Aを埋設してn電極16と電気的に接続している。pパッド電極20は、
図1C及び
図1Dに示すように、発光機能部15Aの延在方向(Y軸方向)おいてnパッド電極19から離間し、第2開口18Bを含む矩形状に形成されている。言い換えれば、pパッド電極20はnパッド電極19と離間スリット21を挟んで複数の発光機能部15Aを覆うように2つ設けられている。つまり、nパッド電極19は、2つのpパッド電極20の間に配置されている。また、各々のpパッド電極20は、nパッド電極19から離間して、分割された第2開口18Bを埋設してp電極17と電気的に接続している。
【0029】
図1Aに示すように、パッド電極19、20の表面は、発光機能部15Aの形状を反映した凸形状の凸形状部19A、20Aを有している。言い換えると、パッド電極19、20の表面は、発光機能部15Aの延在方向(
図1Cに示すY軸方向)に沿って延びる凸形状部19A、20Aを有している。よって、nパッド電極19の発光機能部15Aが配列された方向(
図1Cに示すX方向)には規則的に凸形状部が並んでいる。また、各々のpパッド電極20の発光機能部15Aが配列された方向(
図1Cに示すX方向)にも規則的に凸形状部19A、20Aが並んでいる。パッド電極19、20の凸形状部19A、20Aは、発光素子10を実装基板(例えば、後述する装置基板31)に実装する際に当接する当接部となる。
【0030】
本実施形態において、1.7mm(Y方向)×1.65mm(X方向)の基板に、nパッド電極19の発光機能部15Aの延在方向(
図1Cに示すY軸方向)のnパッド幅は0.19mmとした。また、pパッド電極20の発光機能部15Aの延在方向のpパッド幅は0.62mmとした。さらに、nパッド電極19とpパッド電極20各々との離間距離は、0.12mmとした。つまり、nパッド電極19のnパッド幅は、発光機能部15Aの延在方向において、2つのpパッド電極20のpパッド幅の合算値の1/6程度である。nパッド電極19のnパッド幅は、2つのpパッド電極20のpパッド幅の合算値の1/10~1/4であることが好ましい。nパッド電極19のnパッド幅が狭すぎると実装基板(装置基板)との接合が不安定になる。また広すぎると、2つのpパッド電極20の接合によって働くnパッド電極19を抑え込む力が不十分になるからである。n電極パッド幅は、pパッド電極幅の合算値の1/8~1/5が好適である。
【0031】
パッド電極19、20としては、Ni/Auの積層体が用いられる。Auの熱伝導率は320(W/(m・K))と高いので、ヒートスプレッダとして機能し、発光機能部15Aで発生した熱を基板11の全面に広げることができる。
【0032】
また、nパッド電極19からn電極16に給電する接続部(第1開口18A)がn電極16の中央にあり、接続部からn電極16の端部までの距離が等しく、またn電極16の片側にあるより端部までの距離が短くなるので、n電極16からn型半導体層12への給電偏りを防止できる。
【0033】
上述したように本実施形態においては、長方形の発光機能部15Aの長辺沿った半導体層15の凹部15Bの底面にn電極16が設けられ、発光機能部15Aの頂面15Cにp電極17が設けられている。すなわち、n電極16とp電極17及び発光機能部15Aが平行に配置されている。よって、n電極16及びp電極17に給電された電流は、発光機能部15Aの短辺方向に均一に流れるので、発光機能部15Aにおいて発光及び発熱が均一になる。従って、発光機能部15A内で局所的な発熱が起こらず、発光機能部15Aの劣化を防止できる。
【0034】
また、発光機能部15Aから出射される光は、基板11を導波する過程において広がり発光素子10の出光面11Bにおいて均一化されて出光する。同様に、発光機能部15Aで発生する熱も、n型半導体層12及び基板11の伝熱によって発光素子10の面内において均熱化される。また、パッド電極19、20によっても均熱化される。
【0035】
また、発光素子10を実装基板(例えば装置基板31)に接合部材を介して接合する際に、パッド電極19、20の凸形状部は優先的に接合する。よって、発光機能部15Aで発生した熱を効率的に実装基板へ放熱できる。
【0036】
上述したように、本発明によれば、放熱効率を向上させ、発光素子の発熱均熱性を向上することができ、信頼性の高い発光素子10を提供することができる。
【0037】
[発光装置]
発光装置30について説明する。
図2Aは、本発明の発光装置30を示した断面図であり、
図2Bに示すD-D線に沿った断面図である。
図2Bは、本発明の発光装置30を示した上面図であり、窓部材42を透かした状態を示す図である。なお、
図2Bでは発光素子10と第1配線電極32A、第2配線電極32Bとの配置関係の明確化のため、p側接合領域32A1及びn側接合領域32B1を破線で示している。
図2Cは、本発明の発光装置30の下面を示す図である。
【0038】
発光装置30の説明においては、装置基板31に対して発光素子10が設けられている方向を上方といい、その反対方向を下方という。
【0039】
図2Aに示すように、発光装置30は、発光素子10と、装置基板31と、窓部材42と、を備える。発光素子10は、接合部材38を介して装置基板31上に接合されている。窓部材42は、窓接合部材39を介して装置基板31上に接合されている。
【0040】
(装置基板)
図2Aに示すように、装置基板31は、上面31A及び下面31Bを備えた矩形の平板状に形成されている。装置基板31としては、熱伝導率150~210(W/(m・K))窒化アルミ(AlN)系のセラミック基板が用いられている。装置基板31が、熱伝導率が高い窒化アルミ(AlN)で形成されていることにより、装置基板31全体が均熱化され、局所的に高温になることを抑制することができる。また、熱伝導率が高いことで、発光装置30が実装される回路基板やヒートシンクへの放熱量を大きくできるので、発光装置30及び発光素子10の温度上昇を抑えることができる。なお、装置基板31の基材には、熱伝導率100~180W/(m・K)の窒化ケイ素(Si
3N
4)系のセラミック基板を用いることもできる。
【0041】
図2Bに示すように、装置基板31の上面31Aには、第1配線電極32A、第2配線電極32B及び窓部材載置領域35が設けられている。第1配線電極32Aには、発光素子10のpパッド電極20に対応した形状の2つのp側接合領域32A1を有している。第2配線電極32Bには、発光素子10のnパッド電極19に対応した形状の1つのn側接合領域32B1を有している。また、装置基板31の内部には、第1導通ビア33A及び第2導通ビア33Bが設けられている。さらに、
図2Cに示すように装置基板31の下面31Bには、回路基板(不図示)と接続する第1実装電極34A及び第2実装電極34Bが設けられている。
【0042】
以後、第1配線電極32A、第2配線電極32Bの各々を区別しない場合には単に配線電極32と、第1導通ビア33A、第2導通ビア33Bの各々を区別しない場合には単に導通ビア33と、第1実装電極34A、第2実装電極34Bの各々を区別しない場合には単に実装電極34と称して説明する。
【0043】
装置基板31の上面31Aの第1配線電極32Aと装置基板31の下面31Bの第1実装電極34Aは第1導通ビア33Aを介して電気的に接続されている。また、装置基板31の上面31Aの第2配線電極32Bと装置基板31の下面31Bの第2実装電極34Bは第2導通ビア33Bを介して電気的に接続されている。窓部材載置領域35は、配線電極32を包含し、装置基板31の上面31Aの外周縁に沿って、一定の幅を持って形成されている。
【0044】
配線電極32は、銅(Cu)を基材とした金属であり、表面にニッケル(Ni)、金(Au)がこの順でメッキされている。導通ビア33は、銅(Cu)を主体とした金属である。実装電極34は、銅(Cu)を主体とした金属であり、表面にNi、Auがこの順でメッキされている。配線電極32、導通ビア33及び実装電極34の主体金属は、タングステン(W)などでもよい。
【0045】
発光素子10は、装置基板31上の第1配線電極32Aのp側接合領域32A1とpパッド電極20が接合部材38を介して接合され、第2配線電極32Bのn側接合領域32B1とnパッド電極19が接合部材38を介して各々接合されている。第1配線電極32Aには接合部材を介して、保護素子36が接合されている。また、保護素子36の上面の電極は、導電性のワイヤ37により、第2配線電極32Bに電気的に接続されている。保護素子36は発光素子10と並列かつ逆極性で接続されており、静電気等による発光素子10の破損を防止する。本実施形態の保護素子にはツェナーダイオードを用いた。なお、保護素子としてはツェナーダイオードの他にコンデンサ、バリスタ等を用いることもできる。
【0046】
接合部材38としては、金錫(Au-20wt%Sn)クリームはんだが用いられている。接合前の接合部材38は、装置基板31の配線電極32と発光素子10のパッド電極19、20の間において、加熱処理されることにより、クリームはんだに含まれるフラックスを蒸発しつつ溶融・固化して、発光素子10を装置基板31に接合する。保護素子36も同様にして装置基板31に接合する。
【0047】
(窓部材)
図2Aに示すように、窓部材42は、上面40A及び下面40Bを備えた板状に形成された上板40と、上板40の下面40Bの周縁から立設された枠部41とを有している。より詳細には、窓部材42は、発光素子10を内部に収容する空間である凹部42Aを画定している。窓部材42は、一体成型されている。なお、窓部材42は上板40と枠部41を別途作成して、接着して形成することもできる。
【0048】
窓部材42としては、石英ガラス(SiO2)が用いられている。また、枠部41の下面41Bには、クロム-タングステン(CrW)、Ni、Auがこの順でメッキされている。なお、窓部材42の基材には、硼珪酸ガラスなどを用いてもよい。
【0049】
窓接合部材39としては、フラックスレスの金錫(Au-20Wt%Sn)はんだが用いられている。接合前の窓接合部材39は、装置基板31の窓部材載置領域35と窓部材42の下面端部の間において、窒素ガス環境下で加熱及び押圧処理されることにより、溶融・固化して、窓部材42を装置基板31に接合する。これにより、発光素子10及び保護素子36は、装置基板31、窓部材42及び窓接合部材39により窓部材42の凹部42A内に封止される。
【0050】
窓部材42の凹部42A内には、窒素(N2)ガスが封入されている。発光素子10は不活性ガスである窒素ガスにより封止されているため、Al組成比の高いAlGaN系の発光素子10の腐食を抑制することができる。また、窒素ガスは、発光素子10で発生した熱を対流により、装置基板31及び窓部材42に伝達する熱伝達媒体として機能する。そのため、発光素子10で発生した熱を効率的に放熱することができる。窓部材42の凹部42A内に封入される気体としては、アルゴン(Ar)またはヘリウム(He)等の不活性ガスを用いることもできる。
【0051】
本実施形態の発光装置30は、パッド電極19、20に凸形状部を有する発光素子10を実装している。よって、発光素子10のパッド電極19、20の凸形状部(発光機能部15Aに対応)が装置基板31の配線電極32に優先的に接合されているので、発光機能部15Aで発生した熱を効率的に装置基板31へ放熱できる。従って、発光素子10の駆動時の温度上昇を抑制できる。また、発光素子10のパッド電極19、20の凸形状部と装置基板31の配線電極32間にボイドの残留がなく局所的に放熱が損なわれて高温化することも抑制できる。
【0052】
具体的には、発光素子10のパッド電極19、20の凸形状部19A、20Aと装置基板31の配線電極32間の余剰な接合部材38が、パッド電極19、20の凸形状部と凸形状部の間(凹部15Bの上方のパッド電極19、20の部分)に排出されるのでボイド生成が抑制される。また同時に、パッド電極19、20の凸形状部19A、20Aの接合部材38の厚みムラも抑制される。加えて、接合前の接合部材38に含まれるフラックスが接合時に気化したガスもパッド電極19、20の凸形状部と凸形状部の間から排出できる。また、幅の狭いnパッド電極19を幅の広い同形状のpパッド電極20で挟む構造により、pパッド電極20が均等に接合する力によって、nパッド電極19も安定した接合が可能になる。
【0053】
上述したように、本発明によれば、放熱効率を向上させ、信頼性の高い発光装置30を提供することができる。
【0054】
以上、説明したように、本発明によれば、放熱効率を向上させ、発光素子10の発熱均熱性を向上することができ、信頼性の高い発光素子10及び発光装置30を提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 発光素子
11 基板
12 n型半導体層
13 発光層
14 p型半導体層
15 半導体層
15A 発光機能部
16 n電極
17 p電極
18 絶縁層
19 nパッド電極
20 pパッド電極
21 離間スリット
30 発光装置
31 装置基板
32A 第1配線電極
32B 第2配線電極
33A 第1導通ビア
33B 第2導通ビア
34A 第1実装電極
34B 第2実装電極
35 窓部材載置領域
36 保護素子
37 ワイヤ
38 接合部材
39 窓接合部材
40 上板
41 枠部
42 窓部材