(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104060
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】アクティブマトリクスアレイ装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240726BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240726BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240726BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240726BHJP
G11C 19/28 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
G09F9/00 346A
G09F9/30 338
G09F9/00 309A
G09G3/20 622G
G02F1/1368
G11C19/28 230
G09G3/20 611C
G09G3/20 680G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008074
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
【テーマコード(参考)】
2H192
5B074
5C080
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H192AA24
2H192CB05
2H192CB31
2H192FB03
5B074CA01
5B074DB01
5B074EA01
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD09
5C080FF11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C094AA21
5C094BA03
5C094BA43
5C094CA19
5C094DA09
5C094DA14
5C094FA01
5C094FA02
5G435AA16
5G435BB12
5G435CC09
5G435EE31
5G435GG32
(57)【要約】
【課題】 ゲートドライバの動作特性を向上させることが可能なアクティブマトリクスアレイ装置を提供する。
【解決手段】 アクティブマトリクスアレイ装置は、基板2と、基板2上に設けられ、マトリクス状に配置された複数の素子11を有する素子アレイ10と、素子アレイ10に設けられ、それぞれが第1方向に延びる複数のゲート線と、素子アレイ10に設けられ、それぞれが第1方向に直交する第2方向に延びる複数のソース線と、素子アレイ10の領域内に設けられ、複数のゲート線にそれぞれ接続され、複数のゲート線を順に駆動するようにして直列接続され、それぞれがトランジスタを含む複数のゲートドライバ3と、トランジスタの上方に配置され、導電層で構成された静電遮蔽層51とを含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、マトリクス状に配置された複数の素子を有する素子アレイと、
前記素子アレイに設けられ、それぞれが第1方向に延びる複数のゲート線と、
前記素子アレイに設けられ、それぞれが第1方向に直交する第2方向に延びる複数のソース線と、
前記素子アレイの領域内に設けられ、前記複数のゲート線にそれぞれ接続され、前記複数のゲート線を順に駆動するようにして直列接続され、それぞれがトランジスタを含む複数のゲートドライバと、
前記トランジスタの上方に配置され、導電層で構成された静電遮蔽層と、
を具備し、
前記トランジスタは、
前記基板上に設けられた第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられた半導体層と、
前記半導体層の上方に設けられた第2ゲート電極とを含み、
前記静電遮蔽層は、前記第2ゲート電極を覆うように配置される
アクティブマトリクスアレイ装置。
【請求項2】
前記静電遮蔽層に固定電圧を供給する制御回路をさらに具備する
請求項1に記載のアクティブマトリクスアレイ装置。
【請求項3】
前記素子は、前記静電遮蔽層の上方に配置された電極を含む
請求項1に記載のアクティブマトリクスアレイ装置。
【請求項4】
前記素子は、薄膜トランジスタを含む
請求項1に記載のアクティブマトリクスアレイ装置。
【請求項5】
前記複数のソース線に接続されたソースドライバをさらに具備する
請求項1に記載のアクティブマトリクスアレイ装置。
【請求項6】
前記素子は、センサー、アクチュエーター、又は表示素子で構成される
請求項1に記載のアクティブマトリクスアレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクスアレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GIP(Gate driver in panel)あるいはGoA(Gate driver on Array)は、アクティブマトリクス駆動のディスプレイやセンサーなどのアレイの外側(額縁)にゲートドライバを形成する技術であり、狭額縁(Narrow Bezel)及び自由形状のパネルを低コストで実現する上で極めて重要な技術である。しかし、額縁に回路を配置する構成では、その配置領域が必要であるため、狭額縁化にも限界がある。このような状況下で、この課題を解決するために、ゲートドライバをアレイエリア内に搭載する技術が提案されている。
【0003】
アレイエリア内にゲートドライバを搭載する技術は、例えばGIA(Gate driver in Active array)(非特許文献1)、GDM(Gate driver monolithic circuitry)(非特許文献2)などと呼ばれている。この技術は、パネルのタイリングにおける狭額縁化やFoldable(折りたためる)ディスプレイ構造を実現するための技術として開発されている。このように、当該技術は、狭額縁やそれに伴う異形ディスプレイに適用する技術として注目されている(特許文献1)。また、当該技術は、ディスプレイだけでなく、センサーやアクチュエーターなどのアクティブマトリクス基板についても適用可能な技術である。
【0004】
しかしながら、アレイエリア内にゲートドライバを形成し、その回路上にディスプレイ素子やセンサーなどの電極を形成しようとする場合、それらの電極の電位の影響により、ゲートドライバを構成する薄膜トランジスタ(TFT)の駆動能力が低下してしまう。よって、ゲートドライバが正常に動作しなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Bezel Free Design of Organic Light Emitting Diode Displayvia a-InGaZnO Gate Driver Circuit Integration within Active Array” SID Sym. Digest of Tech. Paper, 58-1, p814, (2019)
【非特許文献2】“Flexible Flat-Panel Display Designs with Gate Driver Circuits Integrated within the Pixel Area”, SID Sym. Digest of Tech. Paper, 46, p879, (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ゲートドライバの動作特性を向上させることが可能なアクティブマトリクスアレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によると、基板と、前記基板上に設けられ、マトリクス状に配置された複数の素子を有する素子アレイと、前記素子アレイに設けられ、それぞれが第1方向に延びる複数のゲート線と、前記素子アレイに設けられ、それぞれが第1方向に直交する第2方向に延びる複数のソース線と、前記素子アレイの領域内に設けられ、前記複数のゲート線にそれぞれ接続され、前記複数のゲート線を順に駆動するようにして直列接続され、それぞれがトランジスタを含む複数のゲートドライバと、前記トランジスタの上方に配置され、導電層で構成された静電遮蔽層とを具備し、前記トランジスタは、前記基板上に設けられた第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられた半導体層と、前記半導体層の上方に設けられた第2ゲート電極とを含み、前記静電遮蔽層は、前記第2ゲート電極を覆うように配置される、アクティブマトリクスアレイ装置が提供される。
【0009】
本発明の第2態様によると、前記静電遮蔽層に固定電圧を供給する制御回路をさらに具備する、第1態様に係るアクティブマトリクスアレイ装置が提供される。
【0010】
本発明の第3態様によると、前記素子は、前記静電遮蔽層の上方に配置された電極を含む、第1態様に係るアクティブマトリクスアレイ装置が提供される。
【0011】
本発明の第4態様によると、前記素子は、薄膜トランジスタを含む、第1態様に係るアクティブマトリクスアレイ装置が提供される。
【0012】
本発明の第5態様によると、前記複数のソース線に接続されたソースドライバをさらに具備する、第1態様に係るアクティブマトリクスアレイ装置が提供される。
【0013】
本発明の第6態様によると、前記素子は、センサー、アクチュエーター、又は表示素子で構成される、第1態様に係るアクティブマトリクスアレイ装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゲートドライバの動作特性を向上させることが可能なアクティブマトリクスアレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るアクティブマトリクスアレイ装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、素子アレイの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、複数のゲートドライバのブロック図である。
【
図4】
図4は、1個のゲートドライバの回路図である。
【
図5】
図5は、直列接続された3個のゲートドライバの構成を説明するブロック図である。
【
図6】
図6は、
図4に示したゲートドライバの動作の一例を説明するタイミング図である。
【
図7】
図7は、複数のゲートドライバの動作を説明するタイミング図である。
【
図8】
図8は、アクティブマトリクスアレイ装置のレイアウトの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、アクティブマトリクスアレイ装置の主要部の断面図である。
【
図11】
図11は、ゲートドライバに含まれるトランジスタの動作を説明する図である。
【
図12】
図12は、第1比較例に係るアクティブマトリクスアレイ装置の断面図である。
【
図13】
図13は、第2比較例に係るアクティブマトリクスアレイ装置の断面図である。
【
図14】
図14は、第2比較例に係るゲートドライバに含まれるトランジスタの動作を説明する図である。
【
図15】
図15は、第2比較例に係るTFTの電流電圧特性を説明する図である。
【
図16】
図16は、ゲートドライバに含まれる第1ノードの到達電位を説明する図である。
【
図17】
図17は、複数のゲートドライバにおける転送動作のシミュレーション結果を示す図である。
【
図18】
図18は、変形例に係るアクティブマトリクスアレイ装置の主要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[1] アクティブマトリクスアレイ装置1の構成
図1は、本発明の実施形態に係るアクティブマトリクスアレイ装置1のブロック図である。
図1において、X方向は、ゲート線が延びるロウ方向であり、Y方向は、ソース線が延びるカラム方向である。アクティブマトリクスアレイ装置1は、アレイ基板2、複数のゲートドライバ3、端子部4、ソースドライバ5、制御回路6、及び電圧発生回路7を備える。
【0018】
アレイ基板2には、それぞれがX方向に延びる複数のゲート線GLと、それぞれがY方向に延びる複数のソース線SLとが設けられる。複数のゲートドライバ3はそれぞれ、複数のゲート線GLに接続される。
【0019】
アレイ基板2には、素子アレイ10が設けられる。
図2は、素子アレイ10の構成を示すブロック図である。素子アレイ10は、マトリクス状に配置された複数の素子11を備える。X方向に並んだ一行分の素子11は、1本のゲート線GLに共通接続される。Y方向に並んだ一列分の素子11は、1本のソース線SLに共通接続される。素子アレイ10の行数及び列数は、任意に設定可能である。
【0020】
ゲート線GLは、素子アレイ10の行を選択するために用いられ、また素子11を駆動するために用いられる。複数のゲート線GLに順に入力される走査信号によって、素子アレイ10の複数の行が走査される。ソース線SLは、素子11にデータを入力、又は素子11からデータを出力するために用いられる。
【0021】
複数の素子11の各々は、ゲート線GLによって駆動することが可能なように構成される。例えば、素子11は、ゲート線GLにゲートが接続されたスイッチング素子を含む。また、素子11は、ソース線SLからのデータを入力、又はソース線SLにデータを出力可能なように構成される。
【0022】
複数の素子11の各々は、センサー、アクチュエーター、又は表示素子で構成される。センサーは、例えば、圧力センサーを含む。アクチュエーターは、触覚デバイスを含む。表示素子は、画像を表示するための素子であり、画素とも呼ばれる。
【0023】
端子部4は、複数の端子を備える。端子部4は、アレイ基板2上に設けられる。アレイ基板2に設けられた複数の配線は、端子部4を介してアレイ基板2の外部に引き出される。
【0024】
ソースドライバ5は、複数のソース線SLに接続される。ソースドライバ5は、制御回路6又は外部から入力されたデータに基づいて、複数のソース線SLにデータを送信する。又は、ソースドライバ5は、複数のソース線SLからデータを受信し、受信したデータを制御回路6又は外部へ出力する。
【0025】
制御回路6は、アクティブマトリクスアレイ装置1の動作を統括的に制御する。制御回路6は、複数のゲートドライバ3、及びソースドライバ5に制御信号を送信し、複数のゲートドライバ3、及びソースドライバ5の動作を制御する。
【0026】
電圧発生回路7は、アクティブマトリクスアレイ装置1内の各回路の動作に必要な各種電圧を生成し、これら電圧を対応する回路に供給する。
【0027】
[2] 複数のゲートドライバ3の構成
複数のゲートドライバ3は、アレイ基板2上に設けられる。また、複数のゲートドライバ3は、素子アレイ10が形成される領域内に設けられる。
【0028】
図3は、複数のゲートドライバ3のブロック図である。複数のゲートドライバ3は、複数のゲート線GLに対応して設けられ、複数のゲート線GLにそれぞれ接続される。各ゲートドライバ3は、対応するゲート線GLを駆動するとともに、ゲート線GLにパルス状の走査信号を供給する。
【0029】
複数のゲートドライバ3は、直列接続される。複数のゲートドライバ3は、複数のゲート線GLを上から順に駆動するように動作するとともに、複数のゲート線GLを走査するように動作する。直列接続された複数のゲートドライバ3は、シフトレジスタ回路を構成する。
【0030】
制御回路6は、初段のゲートドライバ3にスタート信号STを供給する。スタート信号STは、1フレームの走査を開始する場合にハイレベルとなる信号である。シフトレジスタ回路は、スタート信号STが活性化された場合に、走査動作を開始する。制御回路6は、最終段のゲートドライバ3から走査信号に対応する出力信号Voutを受ける。制御回路6は、最終段のゲートドライバ3から出力信号Voutを受けた場合に、1フレームの走査が終了したことを認識する。
【0031】
次に、ゲートドライバ3の構成の一例について説明する。
【0032】
図4は、1個のゲートドライバ3の回路図である。ゲートドライバ3は、単位シフトレジスタ回路を構成する。ゲートドライバ3を構成する複数のトランジスタは、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)で構成され、またNチャネルTFTで構成される。TFTは、結晶質シリコンを含み、例えばアモルファスシリコンにより形成された半導体層を備えていてもよく、ポリシリコンにより形成された半導体層を備えていてもよい。回路構成の説明における接続は、電気的に接続されていることを意味する。
【0033】
ゲートドライバ3は、高電位側トランジスタM2と、低電位側トランジスタM5と、転送用トランジスタM3bと、出力用トランジスタM3と、2個のプルダウントランジスタM4、M4bと、2個のブートストラップコンデンサCbo、Cbtと、第1ノードAnと、擬インバータ回路とを備える。擬インバータ回路は、第1トランジスタM6と、第2トランジスタM7と、コンデンサCaと、第2ノードBnとを備える。
【0034】
高電位側トランジスタM2のゲートは、入力信号Vinの入力端子に接続される。高電位側トランジスタM2のドレインは、ゲートに接続される。すなわち、高電位側トランジスタM2は、ダイオード接続される。高電位側トランジスタM2のドレインには、高電圧VGHが印加されてもよい。高電圧VGHは、例えば電源電圧Vddである。高電位側トランジスタM2のソースは、第1ノードAnに接続される。
【0035】
低電位側トランジスタM5のゲートは、リセット信号RSTinの入力端子に接続される。低電位側トランジスタM5のソースには、低電圧VGLが印加される。低電圧VGLは、例えば接地電圧Vssである。低電位側トランジスタM5のドレインは、第1ノードAnに接続される。
【0036】
転送用トランジスタM3bのゲートは、第1ノードAnに接続される。転送用トランジスタM3bのドレインは、出力用トランジスタM3のドレインおよびクロックClkAの入力端子に接続される。転送用トランジスタM3bのソースは、出力信号Voutの出力端子と、リセット信号RSToutの出力端子とに接続される。出力信号Voutは、次段の単位シフトレジスタ回路のスタート信号(入力信号Vin)として用いられる。リセット信号RSToutは、前段の単位シフトレジスタ回路のリセット信号(RSTin)として用いられる。転送用トランジスタM3bのゲート-ソース間には、ブートストラップコンデンサCbtが接続される。
【0037】
出力用トランジスタM3のゲートは、第1ノードAnに接続される。出力用トランジスタM3のドレインは、転送用トランジスタM3bのドレインおよびクロックClkAの入力端子に接続される。出力用トランジスタM3のソースは、ゲート線GLを駆動する駆動信号Goutの出力端子に接続される。出力用トランジスタM3のゲート-ソース間には、ブートストラップコンデンサCboが接続される。
【0038】
プルダウントランジスタM4bのゲートは、クロックClkBの入力端子に接続される。プルダウントランジスタM4bのソースには、接地電圧Vss(=VGL)が印加される。プルダウントランジスタM4bのドレインは、出力信号Voutの出力端子に接続される。
【0039】
プルダウントランジスタM4のゲートは、クロックClkBの入力端子に接続される。プルダウントランジスタM4のソースには、接地電圧Vss(=VGL)が印加される。プルダウントランジスタM4のドレインは、駆動信号Goutの出力端子に接続される。
【0040】
プルダウントランジスタM4、M4bは、クロックClkBがハイレベルのときにオンし、ゲート線GLおよびリセット信号RSToutをローレベル(=Vss)に保持する。
【0041】
第1トランジスタM6のゲートは、第2ノードBnを介して第2トランジスタM7のドレインに接続されるとともに、コンデンサCaを介してクロックClkAの入力端子に接続される。第1トランジスタM6のソースには、接地電圧Vss(=VGL)が印加される。第1トランジスタM6のドレインは、第1ノードAnに接続される。第1トランジスタM6は、第2ノードBnの電位がハイレベル(=VGH)になっているときにオンし、第1ノードAnの電位を低電圧VGL(=Vss)電位に向けて変化させる。
【0042】
第2トランジスタM7のゲートは、第1ノードAnに接続される。第2トランジスタM7のソースには、接地電圧Vss(=VGL)が印加される。第2トランジスタM7のドレインは、第2ノードBnに接続される。第2トランジスタM7は、第1ノードAnの電位がハイレベル(VGH)になっているときにオンし、第2ノードBnの電位を低電圧VGL(=Vss)に向けて変化させる。
【0043】
擬インバータ回路においては、コンデンサCaは、ダイオード接続トランジスタの代わりに配置されており、ダイオード接続トランジスタの劣化により出力が不安定になることを回避することができる。なお、上記のようにコンデンサCaはダイオード接続トランジスタに代えて用いられるものであるため大容量である必要はなく、コンデンサCaを採用したとしても単位シフトレジスタ回路の回路規模が大きくなることを抑制することができる。
【0044】
第1トランジスタM6、第2トランジスタM7、及びコンデンサCaを備える擬インバータ回路は、出力用トランジスタM3のゲートおよび転送用トランジスタM3bのゲートの電圧を安定させるための回路である。
【0045】
図5は、直列接続された3個のゲートドライバ3の構成を説明するブロック図である。ゲートドライバ3及びゲート線GLに付記した“j”は、複数のゲート線GLのうち任意のゲート線GLの番号である。
【0046】
直列接続された複数のゲートドライバ3には、クロックClkとクロックXClkとが入力される。クロックClkとクロックXClkとは逆位相のクロック(相補クロック)である。クロックClk、XClkは、前述したクロックClkA、ClkBとして用いられる。すなわち、クロックClkAとクロックClkBとは、逆位相のクロックとなる。直列接続された複数のゲートドライバ3には、クロックClkとクロックXClkとが交互に入れ替わるように供給される。
【0047】
ゲートドライバ3_(j-1)の出力信号Voutは、ゲートドライバ3_jのスタート信号(入力信号Vin)の入力端子に入力される。ゲートドライバ3_jの駆動信号Goutは、ゲート線GLjに出力される。ゲートドライバ3_jのリセット信号RSToutは、ゲートドライバ3_(j-1)のリセット信号RSTinの入力端子に入力される。
【0048】
なお、初段のゲートドライバ3には、入力信号Vinとして、制御回路6からスタート信号STが入力される。
【0049】
次に、複数のゲートドライバ3の動作について説明する。
【0050】
図6は、
図4に示したゲートドライバ3の動作の一例を説明するタイミング図である。
図6には、クロックClkA、ClkB、入力信号Vin、リセット信号RSTin、第1ノードAnの電位、第2ノードBnの電位、及び出力信号Voutを示している。
【0051】
第1ノードAnは、出力用トランジスタM3のゲートおよび転送用トランジスタM3bのゲートに接続されたノードであり、ゲートドライバ3の出力を制御する電圧が印加されるノードである。第2ノードBnは、第1トランジスタM6のゲートおよび第2トランジスタM7のドレインに接続されたノードであり、第1ノードAnの電位を安定化させるために設けられたノードである。
【0052】
クロックClkAとクロックClkBとは同時にハイレベルとなることがなく、ハイレベルとローレベルとが周期的に切り替わる信号である。
【0053】
時刻t1において、クロックClkAがローレベルであり、入力信号Vinがハイレベルとなると、高電位側トランジスタM2がオンし、第1ノードAnに高電圧VGHが印加される。この状態でクロックClkBがハイレベルとなり、出力信号Voutは低電圧VGLに維持される。このとき、第2トランジスタM7がオンし、第2ノードBnには低電圧VGL(=Vss)が印加される。
【0054】
続いて、入力信号Vinがローレベルとなり、高電位側トランジスタM2がオフする。
【0055】
時刻t2において、クロックClkAがハイレベルとなると、転送用トランジスタM3bのドレインおよび出力用トランジスタM3のドレインにハイレベルの電圧が印加され、これに伴いブートストラップコンデンサCbo、Cbtの電圧が上昇する。ブートストラップコンデンサCbo、Cbtの一端は、出力用トランジスタM3のゲートおよび転送用トランジスタM3bのゲートに接続されるため、ブートストラップコンデンサCbo、Cbtの電圧上昇に伴い、第1ノードAnの電位が上昇する。これにより、出力用トランジスタM3および転送用トランジスタM3bがオンし、出力信号Voutおよび駆動信号Goutがハイレベルとなる。
【0056】
時刻t3において、クロックClkAがローレベルとなると、ブートストラップコンデンサCbo、Cbtの電圧が降下し、これに伴い第1ノードAnの電位も降下する。これにより、出力用トランジスタM3および転送用トランジスタM3bがオフする。
【0057】
時刻t4において、クロックClkBとリセット信号RSTinとがハイレベルとなると、プルダウントランジスタM4、M4bがオンして出力信号Voutおよび駆動信号Goutが低電圧VGL(=Vss)となるとともに、低電位側トランジスタM5がオンして第1ノードAnに低電圧VGL(=Vss)が印加される。
【0058】
図7は、複数のゲートドライバ3の動作を説明するタイミング図である。
図7では、クロックClkAとクロックClkBとが同時に遷移するように示されているが、詳細には、クロックClkAとクロックClkBとは同時に活性化しないようにタイミング制御される。素子アレイ10には、n本のゲート線GL1~GLnが配設され、ゲート線GL1~GLnには、複数のゲートドライバ3から駆動信号G1~Gnが供給されるものとする。駆動信号G1~Gnは、ゲートドライバ3の駆動信号Goutに対応する。
【0059】
複数のゲートドライバ3は、ゲート線GL1~GLnを順次活性化する(ハイレベルにする)ように動作する。また、複数のゲートドライバ3は、ゲート線GL1~GLnを走査するように動作する。
【0060】
[3] アクティブマトリクスアレイ装置1の詳細な構造
次に、アクティブマトリクスアレイ装置1の詳細な構造について説明する。
【0061】
図8は、アクティブマトリクスアレイ装置1のレイアウトの一例を示す図である。
図9は、アクティブマトリクスアレイ装置1の主要部の断面図である。本実施形態では、素子11として、画素を例に挙げて説明する。
【0062】
アクティブマトリクスアレイ装置1は、画素が形成される領域である画素回路領域12と、ゲートドライバ3が形成される領域であるゲートドライバ回路領域13とを有する。例えば、画素回路領域12とゲートドライバ回路領域13とは、Y方向に沿って交互に配置される。
【0063】
まず、画素回路領域12の構成について説明する。画素回路領域12には、素子11としての画素が設けられる。画素11は、スイッチング素子20を備える。スイッチング素子20は、TFTで構成され、またNチャネルTFTで構成される。スイッチング素子20は、ゲート電極21、ゲート絶縁膜22、半導体層23、オーミックコンタクト層24、25、ソース電極26、及びドレイン電極27を備える。
【0064】
アレイ基板2上には、X方向に延びるゲート電極21が設けられる。
図8の例では、ゲート電極21は、X方向に延びる第1電極部分と、第1電極部分からY方向に突出した第2電極部分とを含む。ゲート電極21は、ゲート線GLとして機能する。ゲート電極21上には、ゲート絶縁膜22が設けられる。
【0065】
ゲート絶縁膜22上かつゲート電極21の上方には、半導体層23が設けられる。
【0066】
半導体層23上には、オーミックコンタクト層24を介して、ソース電極26が設けられる。オーミックコンタクト層24は、半導体層と電極との電気的接続を良好にする機能を有する。オーミックコンタクト層24は、高濃度のn型不純物が導入されたn+型半導体層で構成される。オーミックコンタクト層24は、省略しても構わない。ソース電極26は、平面視において、半導体層23に部分的に重なるように配置される。ソース電極26は、Y方向に延びるソース線SLに電気的に接続される。
【0067】
半導体層23上には、オーミックコンタクト層25を介して、ドレイン電極27が設けられる。オーミックコンタクト層25は、オーミックコンタクト層24と同じ構成を有する。オーミックコンタクト層25は、省略しても構わない。ドレイン電極27は、平面視において、半導体層23に部分的に重なるように配置される。ソース電極26とドレイン電極27とは、X方向において離間して配置される。
【0068】
ソース電極26及びドレイン電極27上には、層間絶縁層28が設けられる。層間絶縁層28上には、ドレイン電極27に電気的に接続された接続電極29が設けられる。
【0069】
層間絶縁層28上には、層間絶縁層30、31が順に設けられる。
【0070】
画素11は、画素電極32を備える。層間絶縁層31上には、画素電極32が設けられる。画素電極32は、Y方向に延びるとともに、画素回路領域12及びゲートドライバ回路領域13に設けられる。画素電極32は、層間絶縁層30、31内に設けられたコンタクト33を介して、接続電極29に電気的に接続される。
【0071】
図示は省略するが、アレイ基板2上には、液晶層、及び対向基板が順に積層される。対向基板には、カラーフィルタと共通電極とが設けられる。
【0072】
次に、ゲートドライバ回路領域13の構成について説明する。ゲートドライバ3は、スイッチング素子40を備える。スイッチング素子40は、
図4に示す複数のスイッチング素子のいずれかに対応する。
【0073】
スイッチング素子40は、デュアルゲート型TFTで構成され、またNチャネルTFTで構成される。スイッチング素子40は、ボトムゲート電極41、半導体層42、オーミックコンタクト層43、44、ソース電極45、ドレイン電極46、及びトップゲート電極47を備える。
【0074】
アレイ基板2上には、X方向に延びるボトムゲート電極41が設けられる。
図8の例では、ボトムゲート電極41は、X方向に延びる第1電極部分と、第1電極部分よりY方向の幅が広い第2電極部分(六角形の電極部分)とを含む。ボトムゲート電極41上には、ゲート絶縁膜22が設けられる。
【0075】
ゲート絶縁膜22上かつボトムゲート電極41の上方には、半導体層42が設けられる。
【0076】
半導体層42上には、オーミックコンタクト層43を介して、ソース電極45が設けられる。オーミックコンタクト層43は、オーミックコンタクト層24と同じ構成を有する。オーミックコンタクト層43は、省略しても構わない。ソース電極45は、平面視において、半導体層42に部分的に重なるように配置される。
【0077】
半導体層42上には、オーミックコンタクト層44を介して、ドレイン電極46が設けられる。オーミックコンタクト層44は、オーミックコンタクト層24と同じ構成を有する。オーミックコンタクト層44は、省略しても構わない。ドレイン電極46は、平面視において、半導体層42に部分的に重なるように配置される。ソース電極45とドレイン電極46とは、X方向において離間して配置される。
【0078】
ソース電極45及びドレイン電極46上には、層間絶縁層28が設けられる。層間絶縁層28上かつ半導体層42の上方には、トップゲート電極47が設けられる。トップゲート電極47は、半導体層42の面積とおおよそ同じかそれより大きい面積を有する。
【0079】
ボトムゲート電極41とトップゲート電極47とは、接続電極48~50を用いて電気的に接続される。アレイ基板2上には、接続電極48が設けられる。接続電極48は、配線層を用いてボトムゲート電極41に電気的に接続される。接続電極48は、ボトムゲート電極41と同じレベルの配線層で構成される。ゲート絶縁膜22上には、接続電極48に電気的に接続された接続電極49が設けられる。接続電極49は、ドレイン電極46と同じレベルの配線層で構成される。接続電極49は、配線として用いられる。層間絶縁層28上には、接続電極49に電気的に接続された接続電極50が設けられる。接続電極50は、トップゲート電極47と同じレベルの配線層で構成される。接続電極50は、配線層を用いてトップゲート電極47に電気的に接続される。
【0080】
トップゲート電極47上には、層間絶縁層30が設けられる。
【0081】
層間絶縁層30上には、平面視において、半導体層42及びトップゲート電極47を覆うように、静電遮蔽層51が設けられる。静電遮蔽層51は、導電層で構成される。静電遮蔽層51は、スイッチング素子40の電位を遮蔽するとともに、静電遮蔽層51の上方に設けられた電極の電位を遮蔽する機能を有する。静電遮蔽層51には、制御回路6により、接地電圧VSS、又は任意の固定電圧が印加される。
図8のレイアウトの例では、静電遮蔽層51は、ゲートドライバ回路領域13全体を覆う面積を有する。
【0082】
図8のレイアウトの例では、スイッチング素子40において、1本のソース電極を挟むように2本のドレイン電極が設けられる構成を示している。
図10は、
図8のレイアウトに対応するスイッチング素子40の断面図である。
図10は、
図8のスイッチング素子40をX方向に切断した断面図である。
【0083】
ボトムゲート電極41、半導体層42、及びトップゲート電極47は、例えば六角形を有する。ボトムゲート電極41とトップゲート電極47とは、おおよそ同じ面積を有する。半導体層42は、ボトムゲート電極41より若干小さい面積を有する。
【0084】
半導体層42上には、オーミックコンタクト層43を介して、Y方向に延びるソース電極45が設けられる。
【0085】
半導体層42上には、オーミックコンタクト層44-1、44-2を介して、Y方向に延びるドレイン電極46-1、46-2が設けられる。ドレイン電極46-1、46-2は、ソース電極45を挟むように配置される。ドレイン電極46-1、46-2は、電気的に接続される。
【0086】
ソース電極45は、コンタクト52を介して、X方向に延びる配線53に電気的に接続される。配線53は、ボトムゲート電極41と同じレベルの配線層で構成される。
【0087】
ドレイン電極46-1、46-2は、Y方向に延びる配線54に電気的に接続される。配線54は、ドレイン電極46-1、46-2と同じレベルの配線層で構成される。
【0088】
(材料の例示)
半導体層23、42としては、例えばアモルファスシリコンが用いられる。
【0089】
ゲート電極21、ソース電極26、ドレイン電極27、走査線GL、信号線SL、ボトムゲート電極41、ソース電極45、ドレイン電極46、トップゲート電極47、及び接続電極48~50としては、例えば、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、及びタングステン(W)のいずれか、又はこれらの1種類以上を含む合金等が用いられる。
【0090】
静電遮蔽層51としては、透明電極が用いられ、例えばITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。また、静電遮蔽層51としては、非透明な金属を用いてもよい。例えば、静電遮蔽層51としては、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、及びタングステン(W)のいずれか、又はこれらの1種類以上を含む合金等が用いられる。
【0091】
画素電極32、及びコンタクト33としては、透明電極が用いられ、例えばITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。
【0092】
ゲート絶縁膜22、及び層間絶縁層28、30、31としては、透明な絶縁材料が用いられ、例えばシリコン窒化物(SiN)が用いられる。
【0093】
[4] アクティブマトリクスアレイ装置1の動作
上記のように構成されたアクティブマトリクスアレイ装置1の動作について説明する。
【0094】
ゲートドライバ3の動作を、ゲートドライバ3に含まれるトランジスタM2(TFT(M2)とも表記)を例に挙げて説明する。
図11は、ゲートドライバ3に含まれるトランジスタM2の動作を説明する図である。
【0095】
トランジスタM2は、デュアルゲート型のTFTである。トランジスタM2は、ゲートとドレインとが接続されたダイオード接続となっている。トランジスタM2は、ゲートG、ソースS、ドレインD、及びトップゲートTGを備える。ゲートGは、ボトムゲート電極に対応し、トップゲートTGは、トップゲート電極に対応する。ドレインDには、入力信号Vinが入力される。ソースSは、電位VAnを出力する。電位VAnは、第1ノードAnの電位である。ゲートG、ソースS、ドレインD、及びトップゲートTGには、電位の数値を示している。括弧内の付記した電位は、トランジスタM2のソース電位を基準にした電位である。
【0096】
ゲートドライバ3への書き込み動作時、トランジスタM2は、入力信号Vinを第1ノードAnへ書き込む動作を行う。
図11(a)~
図11(c)は、トランジスタM2の書き込み動作時における動作点の変化の様子を示している。Vin=11V、V
Anの初期電位を-12Vとする。
【0097】
図11(a)において、トランジスタM2のソースSは、電位V
Anと同じ-12Vである。Vin=11Vにより、トランジスタM2は、オンする。トランジスタM2は、ドレインDの電位をソースSに転送するとともに、電位V
Anを上昇させる。
【0098】
図11(b)において、ソースSの電位が0Vに上昇する。
図11(c)において、最終的に、トランジスタM2のソースSは、“11V-Vth”となる。Vthは、トランジスタM2の閾値電圧である。本実施形態では、第1ノードAnの電位V
Anを“11V-Vth”まで書き込むことができる。
【0099】
次に、比較例の構成及び動作について説明する。
図12は、第1比較例に係るアクティブマトリクスアレイ装置の断面図である。第1比較例に係るアクティブマトリクスアレイ装置は、静電遮蔽層51を備えていない。層間絶縁層30上には、画素電極32が設けられる。第1比較例では、トップゲート電極47の上方に画素電極32が配置されている。
【0100】
第1比較例では、スイッチング素子40のゲート電極電位の影響によって、素子11の電極電位(例えば画素電極32の電位)が変動してしまう。これにより、素子11の動作が不安定になってしまう。また、素子11が誤動作を起こす可能性がある。
【0101】
図13は、第2比較例に係るアクティブマトリクスアレイ装置の断面図である。第2比較例に係るスイッチング素子40は、逆スタガ型のTFTである。第2比較例に係るスイッチング素子40は、トップゲート電極を備えていない。第2比較例に係るアクティブマトリクスアレイ装置は、静電遮蔽層51を備えている。層間絶縁層28上かつスイッチング素子40の上方には、静電遮蔽層51が設けられる。
【0102】
第2比較例では、静電遮蔽層51の電位により、ゲートドライバの動作時におけるTFTの駆動能力が大幅に低下してしまう。
【0103】
図14は、第2比較例に係るゲートドライバに含まれるトランジスタM2の動作を説明する図である。トランジスタM2のPIXは、画素電極32を意味する。画素電極32(PIX)の電位をPIX電位と称する。
図14(a)~
図14(c)は、第2比較例に係るトランジスタM2の書き込み動作時における動作点の変化の様子を示している。Vin=11V、電位V
Anの初期電位を-12Vとする。PIX電位は、固定電位であり、0Vである。第2比較例に係るトランジスタM2の閾値電圧をVth´とする。
【0104】
第2比較例では、PIX電位が固定電位であるため、第1ノードAnの電位V
Anの上昇に伴い、画素電極32の電位V
Anに対する相対電位は低下する。
図14(c)では、電位V
Anが“11V-Vth´”である。初期のPIX電位が0Vであった場合、電位V
Anが0V以上になると、画素電極32の電位V
Anに対する相対電位は負電位となり、ゲートドライバのTFTの動作を抑制する方向に作用する。
図14(c)では、電位V
Anに対するPIX電位が“-11V+Vth´”である。
【0105】
TFTの上部電極(画素電極32に対応)の電位を変化させると、TFTの閾値電圧Vth´が上昇することが知られている。結果として、電位VAnの到達電位は大きく低下する。
【0106】
図15は、第2比較例に係るTFTの電流電圧特性を説明する図である。
図15の横軸がゲート-ソース間電圧Vgs(及びドレイン-ソース間電圧Vds)であり、縦軸がドレイン電流Idsである。
図15は、ダイオード接続されたTFTのグラフである。
【0107】
図15には、PIX電位を12V、6V、0V、-6V、-12Vに変化させた場合の電流電圧特性を載せている。
図15から、PIX電位が低下すると、TFTの閾値電圧Vthが上昇する。これにより、電位V
Anの到達電位が低下する。
【0108】
図16は、第1ノードAnの電位V
Anの到達電位を説明する図である。
図16の横軸が時間(μsec)、縦軸が第1ノードAnの電位V
An(V)である。
図16には、本実施形態と第2比較例とのグラフを載せている。
【0109】
図16から理解できるように、本実施形態は、第2比較例に比べて、電位V
Anの到達電位が高くなっている。本実施形態では、電位V
Anへの書き込みが問題なくできている。第2比較例では、電位V
Anの到達電位が低いため、電位V
Anへの書き込みが十分に行われない。
【0110】
図17は、複数のゲートドライバにおける転送動作のシミュレーション結果を示す図である。
図17の横軸が複数のゲートドライバの段数L1、L2、・・・であり、縦軸がゲートドライバの出力電圧Voutである。
【0111】
図17から、第2比較例では、数段のゲートドライバしか電位を転送できていない。本実施形態では、200段以上のゲートドライバ3で正常に電位を転送できている。
【0112】
[5] 変形例
ゲートドライバ3を構成するTFTとして、スタガ構造(トップゲート構造)を用いてもよい。
図18は、変形例に係るアクティブマトリクスアレイ装置1の主要部の断面図である。
【0113】
まず、画素回路領域12の構成について説明する。アレイ基板2上には、下地層55が設けられる。下地層55としては、例えばシリコン窒化物、又はシリコン酸化物が用いられる。
【0114】
下地層55上には、半導体層23が設けられる。半導体層23は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low-temperature Poly Silicon)、又はa-IGZO(amorphous In-Ga-Zn-O)で構成される。半導体層23は、チャネル領域23A、及び半導体領域23B、23Cを備える。半導体領域23B、23Cは、高濃度のn型不純物が導入されたn+型半導体層で構成される。
【0115】
半導体層23上には、ゲート絶縁膜22が設けられる。ゲート絶縁膜22上かつチャネル領域23Aの上方には、ゲート電極21が設けられる。ゲート電極21上には、層間絶縁層28が設けられる。
【0116】
層間絶縁層28上には、半導体領域23Bに電気的に接続されたソース電極26が設けられる。層間絶縁層28上には、半導体領域23Cに電気的に接続されたドレイン電極27が設けられる。画素電極32は、コンタクト33を介してドレイン電極27に電気的に接続される。
【0117】
次に、ゲートドライバ回路領域13の構成について説明する。
下地層55上には、半導体層42が設けられる。半導体層42は、半導体層23と同じ材料で構成される。半導体層42は、チャネル領域42A、及び半導体領域42B、42Cを備える。半導体領域42B、42Cは、高濃度のn型不純物が導入されたn+型半導体層で構成される。
【0118】
半導体層42上には、ゲート絶縁膜22が設けられる。ゲート絶縁膜22上かつチャネル領域42Aの上方には、ゲート電極41が設けられる。ゲート電極41上には、層間絶縁層28が設けられる。
【0119】
層間絶縁層28上には、半導体領域42Bに電気的に接続されたソース電極45が設けられる。層間絶縁層28上には、半導体領域42Cに電気的に接続されたドレイン電極46が設けられる。
【0120】
ゲート絶縁膜22上には、接続電極48が設けられる。接続電極48は、ゲート電極41と同じレベルの配線層で構成される。層間絶縁層28上には、接続電極48に電気的に接続された接続電極49が設けられる。接続電極49は、ソース電極45と同じレベルの配線層で構成される。接続電極48、49は、例えば、ゲート電極41とドレイン電極46とを電気的に接続する配線として用いられる。
【0121】
ソース電極45及びドレイン電極46上には、層間絶縁層30が設けられる。
【0122】
層間絶縁層30上には、平面視において、半導体層42及びゲート電極41を覆うように、静電遮蔽層51が設けられる。静電遮蔽層51は、例えば、ゲートドライバ回路領域13全体を覆う面積を有する。
【0123】
変形例においても、前述した実施形態と同じ動作を行うことができる。
【0124】
[6] 実施形態の効果
本実施形態によれば、複数のゲートドライバ3の各々は、デュアルゲート構造を有するTFTで構成される。これにより、ゲートドライバ3に含まれるTFTの駆動能力を向上させることができる。ひいては、ゲートドライバ3の動作特性を向上させることが可能なアクティブマトリクスアレイ装置1を実現できる。
【0125】
また、ゲートドライバ3に含まれるTFTのトップゲート電極47を覆うように静電遮蔽層51が設けられる。静電遮蔽層51には、制御回路6により固定電圧が印加される。静電遮蔽層51は、素子11に含まれる電極(例えば画素電極32)とゲートドライバ3に含まれるTFTとを電気的に遮蔽する。ゲートドライバ3に含まれるTFTの電位が素子11に影響を与えるのを抑制できるとともに、素子11の電位がゲートドライバ3に影響を与えるのを抑制できる。これにより、ゲートドライバ3の動作特性を向上させることが可能なアクティブマトリクスアレイ装置1を実現できる。
【0126】
また、ゲートドライバ回路領域13全体に静電遮蔽層51を配置することができる。素子11に含まれる電極を、静電遮蔽層51の上方かつゲートドライバ回路領域13に配置することができる。これにより、素子11の設計の自由度を向上させることができる。
【0127】
また、素子アレイ領域内にゲートドライバを搭載するGIA技術を採用している。これにより、狭額縁化やFoldable(折りたためる)ディスプレイ構造を実現することができる。
【0128】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0129】
1…アクティブマトリクスアレイ装置、2…アレイ基板、3…ゲートドライバ、4…端子部、5…ソースドライバ、6…制御回路、7…電圧発生回路、10…素子アレイ、11…素子、12…画素回路領域、13…ゲートドライバ回路領域、20…スイッチング素子、21…ゲート電極、22…ゲート絶縁膜、23…半導体層、24,25…オーミックコンタクト層、26…ソース電極、27…ドレイン電極、28,30,31…層間絶縁層、29…接続電極、32…画素電極、33…コンタクト、40…スイッチング素子、41…ボトムゲート電極、42…半導体層、43,44…オーミックコンタクト層、45…ソース電極、46…ドレイン電極、47…トップゲート電極、48~50…接続電極、51…静電遮蔽層、52…コンタクト、53,54…配線、55…下地層、GL…ゲート線、SL…ソース線。