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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104063
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240726BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240726BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240726BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240726BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M10/0587
H01M10/0585
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008078
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】西出 太祐
(72)【発明者】
【氏名】宮地 良和
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 祐太
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】繰り返し充放電したときにセル特性の劣化を抑制することができる非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】電極体と電解液とを含む非水電解質二次電池であり、前記電極体は、正極板と、セパレータと、負極板とを備え、前記電解液は、Li塩と、溶媒と、添加剤を含有し、 前記正極板は、正極芯体と、正極活物質層とを備え、前記負極板は、負極芯体と、負極活物質層とを備え、前記正極活物質層及び前記負極活物質層のうち少なくともいずれか一方は、前記電極体の幅方向中央部に配置された領域の前記添加剤に由来する成分の濃度Bに対する前記電極体の幅方向端部側に配置された領域の前記添加剤に由来する成分の濃度Aの比A/Bが、1.4以上2.6以下である、非水電解質二次電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と電解液とを含む非水電解質二次電池であり、
前記電極体は、正極板と、セパレータと、負極板とを備え、
前記電解液は、リチウム塩と、溶媒と、添加剤とを含有し、
前記正極板は、正極芯体と、正極活物質層とを備え、
前記負極板は、負極芯体と、負極活物質層とを備え、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層のうち少なくともいずれか一方は、前記電極体の幅方向中央部に配置された領域の前記添加剤に由来する成分の濃度Bに対する前記電極体の幅方向端部側に配置された領域の前記添加剤に由来する成分の濃度Aの比A/Bが、1.4以上2.6以下である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質層及び前記負極活物質層の前記電極体の幅方向における長さは180mm以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記添加剤は、LiBOBおよびLiFSOからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくともいずれか一方は前記添加剤を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記正極活物質層及び前記負極活物質層の厚みは100μm以上260μm以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記電極体は捲回型である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記電極体は積層型である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池(以下、電池ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-192333号公報(特許文献1)には、負極板における合材層の端部から浸透する電解液の浸透性を設定した非水電解質二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-192333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非水電解質二次電池は、繰り返し充放電したときに、電極体の幅方向における中央部の温度が端部に比べ上昇し易い傾向にある。その結果、温度の高い部分へ反応が集中し、反応が不均一となり、セル特性が劣化する場合がある。
【0005】
本開示の目的は、繰り返し充放電したときにセル特性の劣化を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の非水電解質二次電池を提供する。
[1] 電極体と電解液とを含む非水電解質二次電池であり、
前記電極体は、正極板と、セパレータと、負極板とを備え、
前記電解液は、リチウム塩と、溶媒と、添加剤とを含有し、
前記正極板は、正極芯体と、正極活物質層とを備え、
前記負極板は、負極芯体と、負極活物質層とを備え、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層のうち少なくともいずれか一方は、前記電極体の幅方向中央部に配置された領域の前記添加剤に由来する成分の濃度Bに対する前記電極体の幅方向端部側に配置された領域の前記添加剤に由来する成分の濃度Aの比A/Bが、1.4以上2.6以下である、非水電解質二次電池。
[2] 前記正極活物質層及び前記負極活物質層の前記電極体の幅方向における長さは180mm以上である、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[3] 前記添加剤は、LiBOBおよびLiFSOからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の非水電解質二次電池。
[4] 前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくともいずれか一方は前記添加剤を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
[5] 前記正極活物質層及び前記負極活物質層の厚みは100μm以上260μm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
[6] 前記電極体は捲回型である、[1]~[5]のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
[7] 前記電極体は積層型である、[1]~[5]のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、充放電したときにセル特性の劣化を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
図3図3は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、実施例において作製した積層体の層構成を示す概略図である。
図5図5は、実施例において添加剤に由来する成分の濃度を測定するのに用いたサンプルを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両等において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。電池100は、例えば1~300Ahの定格容量を有していてもよい。
【0011】
電池100は外装体90を含む。外装体90は角形(扁平直方体状)である。外装体90は、例えばアルミニウム(Al)合金製であってもよい。外装体90は電極体50と電解液(不図示)とを収納している。すなわち電池100は電極体50と電解液とを含む。
【0012】
外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、外装缶92の開口部を塞いでいる。例えばレーザ加工等により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。なお、外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えばパウチ形等であってもよい。すなわち外装体90は、Alラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0013】
封口板91には、正極端子81と負極端子82とが設けられている。封口板91に、注入口(不図示)、ガス排出弁(不図示)等がさらに設けられていてもよい。注入口から外装体90の内部に電解液が注入され得る。注入口は、例えば封止栓等によって閉塞され得る。正極集電部材71は、正極端子81と電極体50とを接続している。正極集電部材71は、例えばAl板等であってもよい。負極集電部材72は、負極端子82と電極体50とを接続している。負極集電部材72は、例えば銅(Cu)板等であってもよい。
【0014】
電極体50は、正極板と、セパレータと、負極板とを備える。電極体50は、例えば巻回型であってもよいし、積層型であってもよい。電極体50が巻回型である時、正極板、負極板およびセパレータの各々は、例えば帯状の平面形状を有する積層体であってよい。帯状の積層体が渦巻き状に巻回されることにより、巻回体が形成され得る。巻回体は、例えば筒状であってもよい。筒状の巻回体が径方向に圧縮されることにより、扁平状の電極体50が形成され得る。
【0015】
電極体50が積層型である時、正極板、負極板およびセパレータの各々は、例えば矩形状の平面形状を有する積層体であってよい。複数個の積層体が所定の一方向に積み上げられることにより、電極体50が形成され得る。
【0016】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。図2の電極体50は巻回型である。電極体50は積層体40を含む。電極体50は、実質的に積層体40からなっていてもよい。積層体40は、正極板10と負極板20とセパレータ30とを含む。セパレータ30の少なくとも一部は、正極板10と負極板20との間に介在している。セパレータ30は、正極板10と負極板20とを分離している。積層体40は、1枚のセパレータ30を単独で含んでいてもよい。積層体40は、2枚のセパレータ30を含んでいてもよい。例えば正極板10が2枚のセパレータ30に挟まれていてもよい。例えば負極板20が2枚のセパレータ30に挟まれていてもよい。積層体40は、例えば、セパレータ30(第1セパレータ)と、負極板20と、セパレータ30(第2セパレータ)と、正極板10とがこの順序で積層されることにより形成されていてもよい。
【0017】
図3は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略断面図である。図3の電極体50は巻回型である。図3には巻回軸と直交する断面が示されている。電極体50は、湾曲部51と平坦部52とを含む。湾曲部51においては、積層体40が湾曲している。湾曲部51において、積層体40は弧を描いていてもよい。平坦部52においては、積層体40が平坦である。平坦部52は、2つの湾曲部51に挟まれている。平坦部52は、2つの湾曲部51を接続している。なお、積層型の電極体50は、実質的に平坦部52からなる。
【0018】
電極体50において、正極板10は任意の積層数を有し得る。正極板10の積層数は、電極体50を積層方向に横断する直線が、正極板10と交差する回数を示す。積層方向は、電極体50において、正極板10、負極板20およびセパレータ30が積層される方向を示す。巻回型の電極体50における積層方向は、平坦部52における正極板10、負極板20およびセパレータ30の厚さ方向(図3のD軸方向)と平行である。積層型の電極体50における積層方向は、正極板10、負極板20およびセパレータ30の厚さ方向と平行である。
【0019】
正極板10は、例えば60~80の積層数を有していてもよい。負極板20は、例えば60~80の積層数を有していてもよい。セパレータ30は、例えば120~160の積層数を有していてもよい。負極板20およびセパレータ30の積層数も、正極板10の積層数と同様に計数され得る。なお、電極体50が積層型である場合、正極板10、負極板20及びセパレータ30の積層数はそれぞれ、正極板10、負極板20及びセパレータ30の枚数を示す。
【0020】
電極体50は、正極活物質層及び負極活物質層の電極体の幅方向(図1中、W軸方向)における長さが例えば180mm以上、200mm以上又は220mm以上となるように巻回又は積層することができる。すなわち正極活物質層及び負極活物質層を積層又は巻回により電極体としたときの正極活物質層及び負極活物質層の電極体の幅方向における長さが例えば180mm以上、200mm以上又は220mm以上であることができる。
【0021】
正極板10は、正極芯材11と正極活物質層12とを含む(図2参照)。正極芯材11は導電性シートである。正極芯材11は、例えば純Al箔、Al合金箔等を含んでいてもよい。正極芯材11は、例えば10~30μmの厚さを有していてもよい。正極板10の幅方向(図2のW軸方向)において、一方の端部に正極芯材11が露出していてもよい。正極芯材11が露出した部分には、正極集電部材71が接合され得る(図1参照)。
【0022】
正極活物質層12は、正極芯材11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12は、正極芯材11の表裏両面に配置されていてもよい。正極活物質層12の厚さは、積層体40に含まれる正極活物質層12の厚さの合計を示す。例えば、正極板10の両面に正極活物質層12が形成されている場合、正極活物質層12の厚さは、両面(2つ)の正極活物質層12の厚さの合計を示す。正極活物質層12は、例えば100μm以上260μm以下の厚さを有していてもよいし、20~60μmの厚さを有していてもよいし、30~50μmの厚さを有していてもよい。なお、片面(1つ)の正極活物質層12の厚さは、例えば10~30μmであってもよいし、15~25μmであってもよい。
【0023】
正極活物質層12は正極活物質粒子を含む。正極活物質粒子は任意の成分を含み得る。正極活物質粒子は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式においては、括弧内の組成比の合計が1である。すなわち「CNi+CCo+CMn=1」の関係が満たされている。例えば「CNi」はNiの組成比を示す。組成比の合計が1である限り、各成分の組成比は任意である。
【0024】
正極活物質層12は正極活物質粒子に加えて、例えば、導電材、バインダ、添加剤等をさらに含んでいてもよい。例えば正極活物質層12は、実質的に、質量分率で0.1~10%の導電材と、0.1~10%のバインダと、残部の正極活物質粒子とからなっていてもよい。導電材は、例えばアセチレンブラック等を含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。添加剤の詳細は後述される。
【0025】
セパレータ30は多孔質樹脂層を含む。セパレータ30は、実質的に多孔質樹脂層からなっていてもよい。多孔質樹脂層は、負極活物質層22と直接接触している。多孔質樹脂層と負極活物質層22との間に介在物がないことにより、例えば出力の向上等が期待される。なおセパレータ30は、正極活物質層12と接触する面に、保護層を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0026】
多孔質樹脂層は、例えば10~50μmの厚さを有していてもよいし、10~30μmの厚さを有していてもよいし、14~20μmの厚さを有していてもよい。
【0027】
多孔質樹脂層は電気絶縁性を有する。多孔質樹脂層はポリオレフィン系材料を含む。多孔質樹脂層は、例えば、実質的にポリオレフィン系材料からなっていてもよい。ポリオレフィン系材料は、例えば、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0028】
負極板20は負極活物質層22を含む(図2参照)。負極板20は、実質的に負極活物質層22からなっていてもよい。負極板20は、例えば負極芯材21をさらに含んでいてもよい。例えば、負極活物質層22は負極芯材21の表面に配置されていてもよい。負極芯材21の片面のみに負極活物質層22が配置されていてもよい。負極芯材21の表裏両面に負極活物質層22が配置されていてもよい。負極芯材21は導電性のシートである。負極芯材21は、例えば純Cu箔、Cu合金箔等を含んでいてもよい。負極芯材21は、例えば5~30μmの厚さを有していてもよい。負極板20の幅方向(図2のW軸方向)において、一方の端部に負極芯材21が露出していてもよい。負極芯材21が露出した部分には、負極集電部材72が接合され得る(図1参照)。
【0029】
積層体40の厚さは、積層体40に含まれる正極板10、負極板20およびセパレータ30の厚さの合計を示す。積層体40は、例えば100~200μmの厚さを有していてもよいし、120~180μmの厚さを有していてもよい。
【0030】
負極活物質層22の厚さは、積層体40に含まれる負極活物質層22の厚さの合計を示す。例えば、負極板20の両面に負極活物質層22が形成されている場合、負極活物質層22の厚さは、両面(2つ)の負極活物質層22の厚さの合計を示す。負極活物質層22は、例えば100μm以上260μm以下の厚さを有していてもよいし、40~80μmの厚さを有していてもよいし、50~70μmの厚さを有していてもよい。なお、片面(1つ)の負極活物質層22の厚さは、例えば20~40μmであってもよいし、25~35μmであってもよい。
【0031】
負極活物質層22は負極活物質粒子を含む。負極活物質層22は、実質的に負極活物質粒子からなっていてもよい。負極活物質粒子は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、珪素、酸化珪素、錫、酸化錫、およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。負極活物質粒子は、例えば複合粒子であってもよい。負極活物質粒子は、例えば基材粒子と皮膜とを含んでいてもよい。皮膜は基材粒子の表面を被覆し得る。基材粒子は、例えば天然黒鉛等を含んでいてもよい。皮膜は、例えば非晶質炭素等を含んでいてもよい。
【0032】
負極活物質層22は、負極活物質粒子に加えて、導電材、バインダ、添加剤等をさらに含んでいてもよい。例えば負極活物質層22は、実質的に、質量分率で0~10%の導電材と、0.1~10%のバインダと、残部の負極活物質粒子とからなっていてもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ等を含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。添加剤の詳細は後述される。
【0033】
電解液は液体電解質である。電解液は溶媒とリチウム塩(以下、Li塩ともいう)と添加剤とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0034】
Li塩は溶媒に溶解している。Li塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO22からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Li塩は、例えば0.2~2.0M(mоl/L)のモル濃度を有していてもよい。
【0035】
添加剤は、LiBOBおよびLiFSOからなる群から選択される少なくとも1種を含む。電解液は、質量分率で0.01~5%の添加剤を含んでいてもよい。正極活物質層及び負極活物質層が添加剤を含む場合、添加剤は、電解液中の添加剤であることができる。電解液が正極活物質層及び負極活物質層に浸透することにより、添加剤が正極活物質層及び負極活物質層に含まれることとなる。
【0036】
正極活物質層及び負極活物質層のうち少なくともいずれか一方は、添加剤に由来する成分を含む。正極活物質層及び負極活物質層のうち少なくともいずれか一方は、電極体の幅方向中央部に配置された領域(以下、中央領域ともいう)の添加剤に由来する成分の濃度B(以下、中央部添加剤濃度Bともいう)に対する電極体の幅方向端部側に配置された領域(以下、端部領域ともいう)の添加剤に由来する成分の濃度A(以下、端部添加剤濃度Aともいう)の比A/Bが、1.4以上2.6以下である。正極活物質層及び負極活物質層のうち少なくともいずれか一方において、比A/Bを1.4以上2.6以下とすることにより、中央部の発熱による反応が抑制され、幅方向において端部側部分と中央部分の反応が均一となり、充放電したときにセル特性の劣化を抑制することが可能となる。比A/Bは好ましくは1.4以上2.0以下、より好ましくは1.4以上1.8以下である。比A/Bは積層方向における差はないか、又は極めて小さい。
【0037】
電極体の幅方向は、帯状の積層体を巻回した巻回型電極体の場合、巻回軸に平行な方向であり、矩形状の平面形状を有する積層型電極体の場合、電極体を積層方向からみたときに対向する端部同士を最短距離で結ぶ方向のうちの長い方である。図1において電極体50の幅方向はW軸方向である。正極活物質層及び負極活物質層の電極体の幅方向中央部に配置された領域は、電極体幅方向における中心を含む領域であって、上記中心を中心としたときの電極体の幅方向における長さが、正極活物質層及び負極活物質層が対向する部分の幅方向における長さの10%である領域であることができる。また、正極活物質層及び負極活物質層の電極体の幅方向端部側に配置された領域は、電極体幅方向における端部を含む領域であって、電極体の幅方向における長さが、正極活物質層及び負極活物質層が対向する部分の幅方向における長さの10%である領域であることができる。
【0038】
端部添加剤濃度A及び中央部添加剤濃度Bは、正極活物質層及び負極活物質層の中央領域及び端部領域における10箇所において測定した添加剤に由来する成分の濃度の平均値であってよい。添加剤に由来する成分は、例えばS及びBであることができる。端部添加剤濃度A及び中央部添加剤濃度Bは、正極活物質層又は負極活物質層の単位体積当たりの質量を基準としたときの正極活物質層又は負極活物質層の単位体積あたりに含まれる添加剤に由来する成分の質量割合(%)として求められる。質量割合(%)は例えばレーザーアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)により測定することができる。例えば、電極体が巻回型電極体である場合、端部添加剤濃度A及び中央部添加剤濃度Bは後述の実施例の欄において説明する方法に従って測定される。
【実施例0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0040】
<実施例1>
[正極板の作製]
正極活物質層形成用組成物(LiNiCoMnO:AB:PVdF=100:1:1の質量比)とNMPとを混合して作製した正極スラリーをアルミ箔(正極芯体)上に塗布し、乾燥した後、所定の厚みに圧縮し、所定の幅に切り出し、幅方向において、アルミ箔上に正極活物質層が形成された部分と、活物質層が形成されていない部分とで構成された正極板を作製した。正極活物質層(厚み:110μm)の電極体の幅方向における長さ(以下、正極活物質層の幅ともいう)は220mmであった。
[負極板の作製]
負極活物質層形成用組成物(黒鉛:SBR:CMC=100:1:1の質量比)と水とを混合して作製した負極スラリーを銅箔(負極芯体)上に塗布し、乾燥した後、所定の厚みに圧縮し、所定の幅に切り出し、銅箔上に負極活物質層が形成された部分と、負極活物質層が形成されていない部分とで構成された負極板を作製した。負極活物質層(厚み:140μm)の電極体の幅方向における長さ(以下、負極活物質層の幅ともいう)は224mmであった。
[電極体の作製]
図4に示すように、正極板10と負極板20とを、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層からなるセパレータ30を介し、両端部のそれぞれに正極板のアルミ箔及び負極板の銅箔が露出するように積層して積層体を作製し、積層体の一端を巻回軸Rとして積層体を巻回することにより巻回型の電極体50を作製した。
[非水電解質二次電池の作製]
電極体の正極板のアルミ箔と正極集電部材のアルミ板とを溶接、電極体の負極板の銅箔と負極集電部材の銅板とを溶接し、アルミニウムラミネートフィルムの外挿体内に挿入し、次の電解液の注液方法1に従って電解液を注液し、ラミネートフィルムを封止することで非水電解質二次電池を作製した。
[電解液の注液方法1]
第1電解液[1.4M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiBOB_1wt%]を注液後、1時間放置し、その後25℃環境下にて0.05Cの電流値で2.5Vまで充電を実施し、1時間放置した。次に、第2電解液[0.6M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:なし]を注液し、3時間放置した。第1電解液及び第2電解液は体積比が50体積%:50体積%となるように注液した。
【0041】
<比較例1>
実施例1における電解液の注液方法1に代えて以下の電解液の注液方法2を行ったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の非水電解質二次電池を作製した。
[電解液の注液方法2]
第3電解液[1.0M_LiPF6 EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiBOB_0.5wt%]を体積比100%で注液後、3時間放置し、その後25℃環境下にて0.05Cの電流値で2.5Vまで充電を実施し、1時間放置した。
【0042】
<比較例2>
実施例1において第1電解液及び第2電解液に代えて、それぞれ、第4電解液[1.2M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiBOB_1wt%]及び第5電解液[0.8M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:なし]を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例2の非水電解質二次電池を作製した。
【0043】
<実施例2>
実施例1において第1電解液及び第2電解液に代えて、それぞれ、第6電解液[1.6M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiBOB_1wt%]及び第7電解液[0.4M_LiPF6 EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:なし]を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の非水電解質二次電池を作製した。
【0044】
<実施例3>
実施例1において第1電解液及び第2電解液に代えて、それぞれ、第8電解液[1.8M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiBOB_1wt%]及び第9電解液[0.2M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:なし]を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例3の非水電解質二次電池を作製した。
【0045】
<比較例3>
実施例1において第1電解液及び第2電解液に代えて、それぞれ、第10電解液[2.0M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiBOB_1wt%]及び第11電解液[LiPFなし EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:なし]を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例3の非水電解質二次電池を作製した。
【0046】
<比較例4>
実施例1において正極活物質層の幅を130mmとしたこと、及び負極活物質層の幅を134mmとしたこと以外は実施例1と同様にして比較例4の非水電解質二次電池を作製した。
【0047】
<実施例4>
実施例3において正極活物質層の幅を130mmとしたこと、及び負極活物質層の幅を134mmとしたこと以外は実施例3と同様にして実施例4の非水電解質二次電池を作製した。
【0048】
<比較例5>
実施例1において、正極活物質層の幅を180mmとしたこと、負極活物質層の幅を184mmとしたこと、及び電解液の注液方法2を行ったこと以外は実施例1と同様にして比較例5の非水電解質二次電池を作製した。
【0049】
<実施例5>
実施例2において、正極活物質層の幅を180mmとしたこと、負極活物質層の幅を184mmとしたこと以外は実施例2と同様にして実施例5の非水電解質二次電池を作製した。
【0050】
<比較例6>
比較例1において第3電解液に代えて、第12電解液[1.0M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiFSO_0.5wt%]を用いたこと以外は、比較例1と同様にして比較例6の非水電解質二次電池を作製した。
【0051】
<実施例6>
実施例1において第1電解液及び第2電解液に代えて、それぞれ第13電解液[1.4M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiFSO_1wt%]及び第14電解液[0.6M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:なし]を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例6の非水電解質二次電池を作製した。
【0052】
<非水電解質二次電池の初期活性化>
実施例及び比較例で作製した非水電解質二次電池を25℃環境下にて、C/10の電流値で4.2Vcccvで充電し、C/10の電流値で3Vまでの充放電を3サイクル繰り返し、その後4.2Vまで充電した状態で60℃24時間保存し、C/10の電流値で3Vまで放電することで初期の活性化を行った。
【0053】
<添加剤成分濃度A及びBの測定>
図5に示すように初期活性化後の非水電解質二次電池を解体して電極体を抽出し、次に抽出した電極体の巻き終わり(E)から巻き始め(S)まで展開し、展開した負極板から電極体の巻き始め(S)の正極板1ターン目の内周側に対向している部分を切り出した。切り出した負極板をジメチルカーボネート(DMC)で洗浄した後、減圧乾燥し、次の定量分析を行い、添加剤成分濃度を測定した。LiBOB成分であるB、もしくはLiFSO成分であるSについて、レーザーアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)により、電極体の幅方向(W)における端部(EW)から負極板の正極板に対向している幅(WH)の10%の長さまでの範囲(端部領域)(A)の上記測定成分の平均値、及び電極体の幅方向(W)において負極活物質層の中心(CW)を中心とし、負極板の正極板に対向している幅(WH)の10%の長さの範囲(中央領域)(B)の上記測定成分の平均値をそれぞれ、端部添加剤成分濃度A及び中央部添加剤成分濃度Bとした。端部添加剤成分濃度Aを100%としたときの中央部添加剤成分濃度Bの比率を比A/Bとして表1に示す。
【0054】
<サイクル容量維持率の評価>
初期活性化後、次のサイクル試験を行った。25℃環境下にて、1Cの電流値で4.2Vcccvで充電し、1Cの電流値で3Vまでの放電を1サイクルとする充放電を繰り返し行った。1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の維持率を容量維持率とした。容量維持率は下記式:
容量維持率=(500サイクル目放電容量/1サイクル目放電容量)×100(%)
に従って算出した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1~3、4及び5は、比率A/Bが1.4以上2.6以下であった。これは注液1回目の電解液の塩濃度を高めることで、電解液の粘度が高くなり、電極体の幅方向への電解液の含浸速度が緩やかになり、端部付近に電解液がとどまる時間が相対的に長くなり、その状態で2.5Vまで充電することで、負極活物質表面にLiBOBが還元分解することで被膜が形成され、中央部に対し端部側の添加剤成分濃度が相対的に高くなっているものと推測される。比較例1及び2と実施例1~3との比較では、比率A/Bが大きくなるとサイクル容量維持率が高くなる傾向が見られた。また、実施例1及び2では比較例1に比べサイクル容量維持率が5%以上向上し、十分な効果が得られた。これらは添加剤LiBOBの初期活性化によって、負極活物質の反応抵抗の低減効果が得られるが、比較例1の幅方向の添加剤成分濃度がほぼ均一なため、幅方向での抵抗が同等であるが、充放電サイクルにより、電池の端部側に対し、中央部付近の温度上昇が高くなることで、中央部付近の反応抵抗がさらに低下し、端部付近に対し、中央部付近の抵抗が相対的に低下し、サイクル時の電流が中央部付近に集中しやすくなり、反応のむらが生じることでサイクル容量維持率の低下の一要因になっていると推測される。これに対し、中央部に対する端部側の添加剤成分濃度を高くするにつれ、初期では端部付近の抵抗に対し、中央部の抵抗が相対的に高くなるが、充放電サイクルにより、中央部は温度上昇で抵抗が低下し、端部側に対する中央部の抵抗差が抑制されることにより、サイクル容量維持率が向上していると推測される。その結果、比較例1に対し、実施例1、2においてサイクル容量維持率が向上しているものと推測される。実施例2に対し、実施例3、さらには比較例3と添加剤成分濃度比率がさらに高くなると、サイクル容量維持率が逆に低下傾向にあり、比較例3では比較例1と比較し、サイクル容量維持率が同程度となった。これらは初期状態の端部側と中央部の抵抗差が大きくなりすぎたことによる要因が大きいためと推測される。比較例4及び実施例4の比較では、正極活物質層の幅が130mmと実施例1~3よりも狭いため、サイクル試験による幅方向の温度差が比較的生じにくいため、上記要因によるサイクル容量維持率についての影響が小さいためと推測される。実施例5及び比較例5の比較では、比率A/Bを高くすることで、サイクル容量維持率が5%向上した。これらは上述した要因によるサイクル容量維持率の向上効果によるものと推測される。実施例6及び比較例6との比較から、LiFSOにおいても負極活物質の反応抵抗の低減効果が得られ、他の実施例と同様の要因でサイクル容量維持率が向上していると推測される。以上から、本発明によれば、繰り返し充放電したときにセル特性の劣化を抑制することができる非水電解質二次電池が提供されることが理解される。
【符号の説明】
【0057】
10 正極板、11 正極芯材、12 正極活物質層、20 負極板、21 負極芯材、22 負極活物質層、30 セパレータ、40 積層体、50 電極体、51 湾曲部、52 平坦部、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池、W 幅方向、R 巻回軸、S 巻き始め、E 巻き終わり、WH 負極板の正極板に対向している幅、EH 端部、CW 中心、A 端部領域、B 中央領域。
図1
図2
図3
図4
図5