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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104067
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20240726BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20240726BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240726BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W30/12
B60W40/02
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008083
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】千葉 昌武
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA12
3D241BA31
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC34Z
3D241DC37Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181CC27
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】自車両が車線から逸脱することを抑制するための制御に起因して、自車両が障害物に向かって走行する挙動を抑制する。
【解決手段】車両制御装置(20、20a)は、自車両(1、1a)の進路前方に存在する障害物を回避するための目標軌道を設定して、該目標軌道に沿って走行するように自車両を制御する障害物回避制御と、自車両が走行している車線である走行車線から自車両が逸脱しそうである場合に、自車両の前記走行車線からの逸脱を抑制する車線逸脱抑制制御とを実行可能な車両制御装置である。当該車両制御装置は、障害物を回避するために障害物回避制御が実行されているときに、車線逸脱抑制制御が実行される場合に、車線逸脱抑制制御により自車両が走行車線の中央に向かうタイミングを、自車両が障害物を通過した後にする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進路前方に存在する障害物を回避するための目標軌道を設定して、前記目標軌道に沿って走行するように前記自車両を制御する障害物回避制御と、前記自車両が走行している車線である走行車線から前記自車両が逸脱しそうである場合に、前記自車両の前記走行車線からの逸脱を抑制する車線逸脱抑制制御とを実行可能な車両制御装置であって、
前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合に、前記車線逸脱抑制制御により前記自車両が前記走行車線の中央に向かうタイミングを、前記自車両が前記障害物を通過した後にする
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
当該車両制御装置は、前記障害物回避制御を実行可能な第1制御手段と、前記車線逸脱抑制制御を実行可能な第2制御手段とを備え、
前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合、前記第1制御手段は、前記障害物の位置を示す位置情報を前記第2制御手段に送信し、前記第2制御手段は、前記位置情報により示される前記障害物の位置を前記自車両が通過した後に、前記自車両が前記走行車線の中央に向かうように前記車線逸脱抑制制御を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合、前記第2制御手段は、前記位置情報により示される前記障害物の位置を前記自車両が通過するまで、前記自車両が前記走行車線に沿って走行するように前記車線逸脱抑制制御を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
当該車両制御装置は、前記障害物回避制御を実行可能な第1制御手段と、前記車線逸脱抑制制御を実行可能な第2制御手段と、前記第1制御手段及び前記第2制御手段を調停する調停手段とを備え、
前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合、
前記調停手段は、前記自車両が前記障害物を通過するまで、前記障害物回避制御が前記前記車線逸脱抑制制御より優先して実行されるように前記第1制御手段及び前記第2制御手段を調停し、
前記調停手段は、前記自車両が前記障害物を通過した後に、前記車線逸脱抑制制御が前記障害物回避制御より優先して実行されるように前記第1制御手段及び前記第2制御手段を調停する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、自車が車線から逸脱しそうな場合又は自車が周囲障害物と衝突しそうな場合に、ブレーキ制御装置によるヨーモーメント及びステアリング制御装置のアシスト操舵トルクの少なくとも一つを制御して、車線からの逸脱又は周囲障害物との衝突を防止する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-073530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
障害物を回避するために、自車両が障害物から離れるように自動的に操舵制御されたことに起因して、自車両が車線から逸脱しそうなった場合に、自車両が車線中央に向かうように自動的に操舵制御されると、自車両が障害物に向かって走行する挙動となる可能性がある。特許文献1では、このような挙動は考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、自車両が車線から逸脱することを抑制するための制御に起因して、自車両が障害物に向かって走行する挙動を抑制することができる車両制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の進路前方に存在する障害物を回避するための目標軌道を設定して、前記目標軌道に沿って走行するように前記自車両を制御する障害物回避制御と、前記自車両が走行している車線である走行車線から前記自車両が逸脱しそうである場合に、前記自車両の前記走行車線からの逸脱を抑制する車線逸脱抑制制御とを実行可能な車両制御装置であって、前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合に、前記車線逸脱抑制制御により前記自車両が前記走行車線の中央に向かうタイミングを、前記自車両が前記障害物を通過した後にするというものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図2】車両の挙動の一例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図5】車両の挙動の他の例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
車両制御装置に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
<第1実施形態>
車両制御装置に係る第1実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。先ず、車両制御装置20を備える車両1について図1を参照して説明する。図1において、車両1は、外界センサ11、車両センサ12、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14、操舵アクチュエータ15及び車両制御装置20を備える。外界センサ11は、車両1の周囲を撮像するカメラ、レーダセンサ及びLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)の少なくとも一つを含んでいてよい。車両センサ12は、速度センサ、加速度センサ及びヨーレートセンサの少なくとも一つを含んでいてよい。
【0010】
車両1がエンジンを備える車両である場合、駆動アクチュエータ13は、車両制御装置20からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量(例えば、スロットル開度)を制御し、車両1の駆動力を制御する。尚、車両1がハイブリッド車両である場合、車両制御装置20からの制御信号は、駆動アクチュエータ13に加えて、動力源としてのモータに入力される。この結果、該モータの駆動力が制御される。尚、車両1が電気自動車である場合、車両制御装置20からの制御信号は、動力源としてのモータに入力される。この場合、車両1は、駆動アクチュエータ13を備えていなくてもよい。
【0011】
ブレーキアクチュエータ14は、車両制御装置20からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、車両1の車輪へ付与する制動力を制御する。操舵アクチュエータ15は、車両制御装置20からの制御信号に応じて、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を制御する。これにより、操舵アクチュエータ15は、車両1の操舵トルクを制御する。
【0012】
車両制御装置20は、ECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。車両制御装置20は、外界センサ11の出力に基づいて、車両1の周囲の状況を認識してもよい。尚、車両1の周囲の状況には、車線を規定する線、信号機、道路標識、道路標示、他車両、歩行者、自転車及び障害物の少なくとも一つが含まれていてよい。車両制御装置20は、車両センサ12の出力に基づいて、車両1の挙動を把握してもよい。車両1の挙動には、速度、前後加速度、横加速度、上下加速度、ヨーレート及びヨーモーメントの少なくとも一つが含まれていてよい。車両制御装置20は、上記認識された車両1の周囲の状況に基づいて、車両1の目標軌道を設定してもよい。車両制御装置20は、車両1が目標軌道に沿って走行するように、上記把握された車両1の挙動に応じて、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つを制御してもよい。つまり、車両制御装置20は、車両1を自動運転してもよい。
【0013】
車両制御装置20は、その内部に論理的に構築された論理ブロックとして、又は、物理的に実現された処理回路として、障害物回避制御部21及び車線逸脱抑制制御部22を有する。障害物回避制御部21は、車両1の進路前方に障害物が存在する場合に、車両1が該障害物を回避するための目標軌道を設定して、目標軌道に沿って走行するように車両1を制御する(具体的には、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つを制御する)障害物回避制御を行う。尚、車両1の進路前方の障害物は、外界センサ11の出力に基づいて認識された車両1の周囲の状況から検出されてよい。
【0014】
車線逸脱抑制制御部22は、車両1が走行している車線である走行車線から車両1が逸脱しそうである場合に、車両1の走行車線からの逸脱を抑制する車線逸脱抑制制御を行う。この場合、車線逸脱抑制制御部22は、操舵アクチュエータ15を介して、車両1が走行車線の中央に向かうような操舵トルクを発生させることにより、車両1の走行車線からの逸脱を抑制してもよい。或いは、車線逸脱抑制制御部22は、ブレーキアクチュエータ14を介して、車両1が走行車線の中央に向かうようなヨーモーメントを車両1に発生させることにより、車両1の走行車線からの逸脱を抑制してもよい。ここで、走行車線から車両1が逸脱しそうであるか否かは、車両1の近い将来(例えば数百ミリ秒~数秒後)の位置と、走行車線を規定する線(例えば、白線又は黄線)との位置関係に基づいて判定すればよい。車線逸脱抑制制御部22は、車両1の近い将来の位置が、走行車線の外側である場合、走行車線から車両1が逸脱しそうであると判定してよい。
【0015】
障害物回避制御部21及び車線逸脱抑制制御部22は、互いから独立している。車線逸脱抑制制御部22における、走行車線から車両1が逸脱しそうであるか否かの判定に、障害物に関する情報は必要がない。このため、車線逸脱抑制制御部22には、外界センサ11の出力に基づいて認識された車両1の周囲の状況のうち、走行車線を規定する線に関する情報以外の情報が入力されないことが多い。すると、以下に説明するような技術的問題点が生じる可能性がある。
【0016】
図2(a)に示すように、車両1の進路前方に障害物Obが存在するものとする。この場合、障害物Obが存在するので、障害物回避制御部21は、車両1が障害物Obを回避するための目標軌道rを設定する。その後、障害物回避制御部21は、車両1が目標軌道rに沿って走行するように、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つを制御する。この場合に何らの対策も採らなければ、例えば、目標軌道rに沿って走行する車両1が地点p1に達したときに、車線逸脱抑制制御部22が車線逸脱抑制制御を行う可能性がある。この結果、図2(a)に示す矢印a1に沿って、車両1が走行車線の中央に向かう可能性がある。つまり、障害物回避制御と車線逸脱抑制制御とが競合した結果、車両1が、回避すべき障害物Obに向かう可能性がある。
【0017】
本実施形態では、上記技術的問題点に鑑みて、車線逸脱抑制制御部22が図3のフローチャートに示す動作を行う。図3において、車線逸脱抑制制御部22は、障害物回避制御部21により障害物回避制御が実行されているか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101の処理において、障害物回避制御が実行されていないと判定された場合(ステップS101:No)、図3に示す動作は終了される。その後、所定時間経過したときにステップS101の処理が行われてよい。つまり、図3に示す動作は、所定時間に応じた周期で繰り返し行われてよい。
【0018】
ステップS101の処理において、障害物回避制御が実行されていると判定された場合(ステップS101:Yes)、車線逸脱抑制制御部22は、障害物回避制御部21から障害物の位置を示す位置情報を引き継ぐ(言い換えれば、障害物の位置を示す位置情報を取得する)(ステップS102)。次に、車線逸脱抑制制御部22は、ステップS102の処理において引き継いだ位置情報に基づいて、車両1が障害物を通過したか否かを判定する(ステップS103)。
【0019】
ステップS103の処理において、車両1が障害物を通過していないと判定された場合(ステップS103:No)、車線逸脱抑制制御部22は、走行車線から車両1が逸脱しそうであるか否か(言い換えれば、車線逸脱の可能性があるか否か)を判定する(ステップS104)。ステップS104の処理において、走行車線から車両1が逸脱しそうではないと判定された場合(ステップS104:No)、ステップS103の処理が行われる。
【0020】
ステップS104の処理において、走行車線から車両1が逸脱しそうであると判定された場合(ステップS102:YesNo)、車線逸脱抑制制御部22は、車両1の進行方向が車線と平行となるように、操舵アクチュエータ15を介して操舵トルクを発生させる(即ち、操舵アシストを行う)(ステップS105)。尚、「車線と平行」は、車両1の進行方向が車線と完全に平行になる場合に限らず、車両1の進行方向と車線とが実践上平行とみなせる場合も含む概念である。その後、ステップS103の処理が行われる。
【0021】
ステップS103の処理において、車両1が障害物を通過したと判定された場合(ステップS103:Yes)、車線逸脱抑制制御部22は、走行車線から車両1が逸脱しそうであるか否かを判定する(ステップS106)。ステップS106の処理において、走行車線から車両1が逸脱しそうではないと判定された場合(ステップS106:No)、図3に示す動作は終了される。その後、所定時間経過したときにステップS101の処理が行われてよい。
【0022】
ステップS106の処理において、走行車線から車両1が逸脱しそうであると判定された場合(ステップS106:Yes)、車線逸脱抑制制御部22は、車両1が走行車線の中央に向かうように車線逸脱抑制制御を行う(ステップS107)。その後、所定時間経過したときにステップS101の処理が行われてよい。
【0023】
例えば、図2(b)に示すように、車両1の進路前方に障害物Obが存在する場合に、図3に示す動作が行われた結果、車両1は、矢印a2に沿って走行する。つまり、障害物回避制御部21は、車両1が目標軌道rに沿って走行するように、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つを制御する。車両1が地点p1近傍を走行しているときに、車線逸脱抑制制御部22は、障害物回避制御部21から障害物の位置を示す位置情報を引き継ぐ(上述した、ステップS102の処理に相当)。以降、車両1の挙動は、車線逸脱抑制制御部22により制御される。車線逸脱抑制制御部22は、車両1が障害物Obを通過するまで(言い換えれば、車両1が地点p2を通過するまで)、車両1の進行方向が車線と平行になるように、操舵アクチュエータ15を介して操舵トルクを発生させる(上述した、ステップS105の処理に相当)。車両1が障害物Obを通過した場合、車線逸脱抑制制御部22は、車両1が走行車線の中央に向かうように車線逸脱抑制制御を行う(上述した、ステップS107の処理に相当)。
【0024】
(技術的効果)
本実施形態に係る車両制御装置20によれば、車線逸脱抑制制御部22が図3に示す動作を行うことによって、車両1の進路前方の障害物(例えば、障害物Ob)の回避と、走行車線から車両1が逸脱することの抑制との両方を行うことができる。つまり、車両制御装置20によれば、障害物回避制御の実行中に車線逸脱抑制制御が実行されたとしても、車両1が、回避すべき障害物に向かうことを抑制することができる。言い換えれば、車両制御装置20によれば、車線逸脱抑制制御に起因して、車両1が障害物に向かって走行する挙動を抑制することができる。
【0025】
<第2実施形態>
車両制御装置に係る第2実施形態について図4乃至図6を参照して説明する。第2実施形態において、上述した第1実施形態と重複する説明は省略する。また、図面上において、上述した第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して示す。
【0026】
図4において、車両1aは、車両制御装置20aを備える。車両制御装置20aは、
ECUを含んでいてもよい。車両制御装置20aは、外界センサ11の出力に基づいて、車両1aの周囲の状況を認識してもよい。車両制御装置20aは、車両センサ12の出力に基づいて、車両1aの挙動を把握してもよい。車両制御装置20aは、上記認識された車両1aの周囲の状況に基づいて、車両1aの目標軌道を設定してもよい。車両制御装置20aは、車両1aが目標軌道に沿って走行するように、上記把握された車両1aの挙動に応じて、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つを制御してもよい。つまり、車両制御装置20aは、車両1aを自動運転してもよい。
【0027】
車両制御装置20aは、その内部に論理的に構築された論理ブロックとして、又は、物理的に実現された処理回路として、障害物回避制御部21、車線逸脱抑制制御部22及び調停部23を有する。調停部23は、障害物回避制御部21及び車線逸脱抑制制御部22を調停する。
【0028】
図5(a)は、図2(a)に相当する図面である。上述した第1実施形態で説明したように、障害物回避抑制制御が行われている場合に何らの対策も採らなければ、車線逸脱抑制制御部22が車線逸脱抑制制御を行った結果、車両1aが、回避すべき障害物Obに向かう可能性がある。
【0029】
本実施形態では、上記技術的問題点に鑑みて、調停部23が図6のフローチャートに示す動作を行う。図6において、調停部23は、障害物回避制御部21により障害物回避制御が実行されているか否かを判定する(ステップS201)。ステップS201の処理において、障害物回避制御が実行されていないと判定された場合(ステップS201:No)、図6に示す動作は終了される。その後、所定時間経過したときにステップS201の処理が行われてよい。つまり、図6に示す動作は、所定時間に応じた周期で繰り返し行われてよい。
【0030】
ステップS201の処理において、障害物回避制御が実行されていると判定された場合(ステップS201:Yes)、調停部23は、障害物の位置を示す位置情報を取得する(ステップS202)。尚、調停部23は、上記位置情報を、障害物回避制御部21から取得してもよいし、外界センサ11の出力に基づいて認識された車両1aの周囲の状況から取得してもよい。調停部23は、ステップS202の処理において取得した位置情報に基づいて、車両1aが障害物を通過したか否かを判定する(ステップS203)。
【0031】
ステップS203の処理において、車両1aが障害物を通過していないと判定された場合(ステップS203:No)、調停部23は、車線逸脱抑制制御の実行を許可しない(ステップS204)。その後、ステップS203の処理が行われる。「車線逸脱抑制制御の実行を許可しない」ことは、以下の少なくとも一つを意味してよい。即ち、(i)調停部23は、車線逸脱抑制制御部22からの出力(例えば、制御信号)に対するキャンセル信号を、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つに入力してよい。(ii)調停部23は、車線逸脱抑制制御部22からの出力(例えば、制御信号)が、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つに入力されないようにしてよい。(iii)調停部23は、障害物回避制御の優先度を、車線逸脱抑制制御の優先度よりも高くしてよい。
【0032】
ステップS203の処理において、車両1aが障害物を通過したと判定された場合(ステップS203:Yes)、調停部23は、車線逸脱抑制制御の実行を許可する(ステップS205)。その後、所定時間経過したときにステップS201の処理が行われてよい。「車線逸脱抑制制御の実行を許可する」ことは、以下の少なくとも一方を意味してよい。即ち、(i)調停部23は、車線逸脱抑制制御部22からの出力(例えば、制御信号)が、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つに入力されるようにする一方で、障害物回避制御部21からの出力(例えば、制御信号)が、駆動アクチュエータ13、ブレーキアクチュエータ14及び操舵アクチュエータ15の少なくとも一つに入力されないようにしてよい。(ii)調停部23は、車線逸脱抑制制御の優先度を、障害物回避制御の優先度よりも高くしてよい。
【0033】
例えば、図5(b)に示すように、車両1aの進路前方に障害物Obが存在する場合に、図6に示す動作が行われた結果、車両1aが障害物Obを通過するまで(言い換えれば、車両1aが地点p2を通過するまで)、障害物回避制御部21が実行する障害物回避制御によって、車両1aは目標軌道rに沿って走行する。なぜなら、車線逸脱抑制制御の実行が許可されていないからである。車両1aが障害物Obを通過した場合、車線逸脱抑制制御部22は、車両1が走行車線の中央に向かうように車線逸脱抑制制御を行う。この結果、車両1aは矢印a3に沿って走行する。つまり、第2実施形態では、車両1aが障害物Obを通過するまでは、障害物回避制御部21により車両1aの挙動が制御される。車両1aが障害物Obを通過した後は、車線逸脱抑制制御部22により車両1aの挙動が制御される。
【0034】
(技術的効果)
本実施形態に係る車両制御装置20aによれば、上述した第1実施形態における車両制御装置20と同様に、車線逸脱抑制制御に起因して、車両1aが障害物に向かって走行する挙動を抑制することができる。
【0035】
以上に説明した実施形態から導き出される発明の態様を以下に説明する。
【0036】
発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の進路前方に存在する障害物を回避するための目標軌道を設定して、前記目標軌道に沿って走行するように前記自車両を制御する障害物回避制御と、前記自車両が走行している車線である走行車線から前記自車両が逸脱しそうである場合に、前記自車両の前記走行車線からの逸脱を抑制する車線逸脱抑制制御とを実行可能な車両制御装置であって、前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合に、前記車線逸脱抑制制御により前記自車両が前記走行車線の中央に向かうタイミングを、前記自車両が前記障害物を通過した後にするというものである。
【0037】
当該車両制御装置は、前記障害物回避制御を実行可能な第1制御手段と、前記車線逸脱抑制制御を実行可能な第2制御手段とを備えてよい。前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合、前記第1制御手段は、前記障害物の位置を示す位置情報を前記第2制御手段に送信し、前記第2制御手段は、前記位置情報により示される前記障害物の位置を前記自車両が通過した後に、前記自車両が前記走行車線の中央に向かうように前記車線逸脱抑制制御を実行してよい。上述した実施形態においては、「障害物回避制御部21」が「第1制御手段」の一例に相当し、「車線逸脱抑制制御部22」が「第2制御手段」の一例に相当する。
【0038】
前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合、前記第2制御手段は、前記位置情報により示される前記障害物の位置を前記自車両が通過するまで、前記自車両が前記走行車線に沿って走行するように前記車線逸脱抑制制御を実行してよい。
【0039】
当該車両制御装置は、前記障害物回避制御を実行可能な第1制御手段と、前記車線逸脱抑制制御を実行可能な第2制御手段と、前記第1制御手段及び前記第2制御手段を調停する調停手段とを備えてよい。前記障害物を回避するために前記障害物回避制御が実行されているときに、前記車線逸脱抑制制御が実行される場合、前記調停手段は、前記自車両が前記障害物を通過するまで、前記障害物回避制御が前記前記車線逸脱抑制制御より優先して実行されるように前記第1制御手段及び前記第2制御手段を調停し、前記調停手段は、前記自車両が前記障害物を通過した後に、前記車線逸脱抑制制御が前記障害物回避制御より優先して実行されるように前記第1制御手段及び前記第2制御手段を調停してよい。上述した実施形態においては、「調停部23」が「調停手段」の一例に相当する。
【0040】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1、1a…車両、11…外界センサ、12…車両センサ、13…駆動アクチュエータ、14…ブレーキアクチュエータ、15…操舵アクチュエータ、20、20a…車両制御装置、21…障害物回避制御部、22…車線逸脱抑制制御部、23…調停部
図1
図2
図3
図4
図5
図6