(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104074
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ヘミング加工用金型、及びヘミング加工方法
(51)【国際特許分類】
B21D 19/08 20060101AFI20240726BHJP
B21D 22/08 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B21D19/08 C
B21D19/08 F
B21D22/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008096
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】鄭 進
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137CA02
4E137EA14
(57)【要約】
【課題】金型による複数の打痕が残ることを抑制し、加工品質の向上を図る。
【解決手段】ダイローラー部30及びパンチローラー部60は、ダイ20とパンチ50との間にワーク100を挟み込んだ状態において、ワーク100の平行移動を許容するように相互に回転可能に構成されている。ダイローラー部30及びパンチローラー部60は、ワーク100の縁部110を直角状に折り曲げる第1加工部D1、P1と、直角状に折り曲げられたワーク100の縁部110を鋭角状に折り曲げる第2加工部D2、P2と、鋭角状に折り曲げられたワーク100の縁部110をワーク100の一般部120と密着させる第3加工部D3、P3と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークの縁部を折り返すヘミング加工用金型において、
前記ワークと対向するように配置される下金型と、
前記ワークを隔てて前記下金型と対向するように配置され、前記下金型に対して近接及び離隔するように移動自在に構成される上金型と、を備え、
前記下金型は、前記上金型と対向する上面に下ローラー部を備え、
前記上金型は、前記下金型と対向する下面に、前記下ローラー部と対向するように配置された上ローラー部を備え、
前記下ローラー部及び前記上ローラー部は、
前記下金型と前記上金型との間に前記ワークを挟み込んだ状態において、前記ワークの平行移動を許容するように相互に回転可能に構成され、
前記下ローラー部及び前記上ローラー部は、
前記ワークの縁部を直角状に折り曲げる第1加工部と、
直角状に折り曲げられた前記ワークの縁部を鋭角状に折り曲げる第2加工部と、
鋭角状に折り曲げられた前記ワークの縁部を前記ワークの一般部と密着させる第3加工部と、を含む、
ヘミング加工用金型。
【請求項2】
前記下ローラー部及び前記上ローラー部は、
回転軸の延在方向に沿って、前記第1加工部、前記第2加工部、及び前記第3加工部が順番に配置されている
請求項1記載のヘミング加工用金型。
【請求項3】
前記下ローラー部及び前記上ローラー部は、
前記ワークの縁部に凹状の溝部を形成する第4加工部をさらに含み、
前記下ローラー部及び前記上ローラー部は、
前記回転軸の延在方向に沿って、前記第1加工部、前記第2加工部、前記第3加工部、及び前記第4加工部が順番に配置されている
請求項2記載のヘミング加工用金型。
【請求項4】
前記下ローラー部は、
前記下金型の上面に、前記回転軸に対して直交する方向に並んだ3つの下ローラーから構成され、
前記3つの下ローラーは、前記3つの下ローラーのうち中央にある下ローラーの上端位置が両側にある下ローラーの上端位置よりも前記上ローラー部側へと突出するように配置され、
前記上ローラー部は、
前記上金型の下面に、前記回転軸に対して直交する方向に並んだ3つの上ローラーから構成され、
前記3つの上ローラーは、それぞれの上ローラーの下端位置が同一平面上に揃うように配置されている
請求項2又は3記載のヘミング加工用金型。
【請求項5】
板状のワークの縁部を折り返すヘミング加工方法において、
回転自在な下ローラー部を備える下金型に対して、回転自在な上ローラー部を備える上金型を近接させて、前記下金型の下ローラー部と前記上金型の上ローラー部との間に前記ワークを挟み込む第1工程と、
前記下ローラー部と前記上ローラー部との間に前記ワークを挟み込んだ状態で、前記下ローラー部及び前記上ローラー部の回転軸と直交する方向に前記ワークを平行移動させながら、前記下ローラー部及び前記上ローラー部によって前記ワークの縁部を加工する第2工程と、を含み、
前記第1工程及び前記第2工程を繰り返しながら、
前記ワークの縁部を直角状に折り曲げる第1加工、
直角状に折り曲げられた前記ワークの縁部を鋭角状に折り曲げる第2加工、及び
鋭角状に折り曲げられた前記ワークの縁部を前記ワークの一般部と密着させる第3加工を行う
ヘミング加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘミング加工用金型、及びヘミング加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移送路に沿って板状のワークをピッチ送りする度に第一成形型と第二成形型とでワークを挟み込む動作を繰り返すことで、板状のワークの縁部を折り返すヘミング加工方法が開示されている。具体的には、第一成形型が第二成形型へと接近することにより、押し刃が移送路に向け移動し、ワークの縁部が直角曲げガイドに沿って折り曲げられる。ワークがピッチ送りされて、第一成形型が第二成形型へと接近することにより、直角状に折り曲げられた縁部は、押圧ガイドと鋭角曲げガイドとの間に挟み込まれ、鋭角状に折り曲げられる。さらに、ワークがピッチ送りされて、第一成形型が第二成形型へと接近することにより、鋭角状に折り曲げられた縁部は、押圧ガイドと重ね潰しガイドとの間に挟み込まれ、重ね潰し状になるまで折り曲げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、ワークをピッチ送りする度に第一成形金型と第二成形金型とによってワークが押圧されるので、加工後のワーク表面にピッチ送りに応じた金型の打痕が残ってしまう。このため、加工品質が低下してしまうという不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様のヘミング加工用金型は、板状のワークの縁部を折り返すヘミング加工用金型であって、ワークと対向するように配置される下金型と、ワークを隔てて下金型と対向するように配置され、下金型に対して近接及び離隔するように移動自在に構成される上金型と、を備え、下金型は、上金型と対向する上面に下ローラー部を備え、上金型は、下金型と対向する下面に、下ローラー部と対向するように配置された上ローラー部を備え、下ローラー部及び上ローラー部は、下金型と上金型との間にワークを挟み込んだ状態において、ワークの平行移動を許容するように相互に回転可能に構成され、下ローラー部及び上ローラー部は、ワークの縁部を直角状に折り曲げる第1加工部と、直角状に折り曲げられたワークの縁部を鋭角状に折り曲げる第2加工部と、鋭角状に折り曲げられたワークの縁部をワークの一般部と密着させる第3加工部と、を含む。
【0006】
本発明の一態様のヘミング加工用金型によれば、下金型及び上金型によってワークが挟持された状態でも、下ローラー部及び上ローラー部が相互に回転することでワークを平行移動させることができる。ワークが平行移動すると、上ローラー部及び下ローラー部が協働することで、ワークの縁部に沿って必要な加工を連続的に行うことができる。上ローラー部及び下ローラー部には、ヘミング加工に必要な加工部が設けられている。ワークの縁部を各加工部に位置決めし、加工部毎にワークの平行移動を繰り返すことで、ワークの縁部を段階的に折り曲げることができる。これにより、ワークの縁部に対してヘミング加工を行うことができる。各加工部が加工を行う間は、下金型と上金型とがワークを挟み込んだままの状態で維持されるので、金型による複数の打痕がワーク表面に残ることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、金型による複数の打痕が残ることを抑制することができるので、加工品質の向上を図ることできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るヘミング加工用金型を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すダイのAA断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すダイのBB断面を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すパンチのAA断面を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示すパンチのBB断面を示す断面図である。
【
図10】
図10は、ダイローラー及びパンチローラーの高さを説明する図である。
【
図11】
図11は、ダイ及びパンチによる溝加工を説明する図である。
【
図12】
図12は、ダイ及びパンチによる溝加工を説明する図である。
【
図13】
図13は、ダイ及びパンチによる溝加工を説明する図である。
【
図14】
図14は、ダイ及びパンチによる直角曲げ加工を説明する図である。
【
図15】
図15は、ダイ及びパンチによる直角曲げ加工を説明する図である。
【
図16】
図16は、ダイ及びパンチによる直角曲げ加工を説明する図である。
【
図17】
図17は、ダイ及びパンチによる鋭角曲げ加工を説明する図である。
【
図18】
図18は、ダイ及びパンチによる鋭角曲げ加工を説明する図である。
【
図19】
図19は、ダイ及びパンチによる鋭角曲げ加工を説明する図である。
【
図20】
図20は、ダイ及びパンチによる密着加工を説明する図である。
【
図21】
図21は、ダイ及びパンチによる密着加工を説明する図である。
【
図22】
図22は、ダイ及びパンチによる密着加工を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本実施形態に係るヘミング加工用金型、及びヘミング加工方法について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るヘミング加工用金型を示す断面図である。本実施形態に係るヘミング加工用金型1は、板状のワーク100の縁部110を折り返すヘミング加工用金型であって、ワーク100と対向するように配置されるダイ20(下金型の一例)と、ワーク100を隔ててダイ20と対向するように配置され、ダイ20に対して近接及び離隔するように移動自在に構成されるパンチ50(上金型の一例)と、を備える。ダイ20は、パンチ50と対向する上面23にダイローラー部30(下ローラ部の一例)を備え、パンチ50は、ダイ20と対向する下面53に、ダイローラー部30と対向するように配置されたパンチローラー部60(上ローラ部の一例)を備える。ダイローラー部30及びパンチローラー部60は、ダイ20とパンチ50との間にワーク100を挟み込んだ状態において、ワーク100の平行移動を許容するように相互に回転可能に構成されている。そして、ダイローラー部30及びパンチローラー部60は、ワーク100の縁部110を直角状に折り曲げる第1加工部D1、P1と、直角状に折り曲げられたワーク100の縁部110を鋭角状に折り曲げる第2加工部D2、P2と、鋭角状に折り曲げられたワーク100の縁部110をワーク100の一般部120と密着させる第3加工部D3、P3と、を含む。
【0011】
以下、ヘミング加工用金型1の詳細な構成を説明する。ヘミング加工用金型1は、板状のワーク100に対して、ワーク100の縁部110を180度折り返して重ね合わせるヘミング加工を行うための金型である。ヘミング加工用金型1は、図示しないパンチプレスに装着して使用される。このヘミング加工用金型1によって加工されるワーク100は、例えば0.8~1.6mm程度の薄板であることが好ましい。折り返す縁部110の幅、すなわちワーク100の縁辺100aから曲げ線Xまでの距離は、例えば6mm以下であることが好ましい。
【0012】
ヘミング加工用金型1は、ダイ20と、上金型の一例であるパンチ50とを備えている。ヘミング加工用金型1は、ダイ20とパンチ50との協働によりヘミング加工を行う。ダイ20は、パンチプレスが備える、下部タレットなどのダイホルダに支持されている。パンチ50は、パンチプレスが備える、上部タレットなどのパンチホルダに上下動自在に支持されている。
【0013】
図2は、ダイの構成を示す斜視図である。
図3は、ダイの構成を示す上面図である。
図4は、
図3に示すダイのAA断面を示す断面図であり、
図5は、
図3に示すダイのBB断面を示す断面図である。
【0014】
図2に示すように、ダイ20は、ダイ本体部22と、ダイローラー部30とで構成されている。
【0015】
ダイ本体部22の上面23は、ワーク100の下面と対向する対向面であり、ワーク100を隔ててパンチ50と対向する。ダイ本体部22の上面23は、所要の凹凸形状を備えている。ダイ本体部22の上面23には、ダイローラー部30が設けられている。
【0016】
ダイ本体部22には、ワーク搬入時にワーク100がダイローラー部30と干渉しないように所定の高さでワーク100を支持するためのブラシ部材24が設けられている。ブラシ部材24は、パンチ50が接近してワーク100を押圧したときにワーク100がダイローラー部30に到達することができるように、可撓性を備える柔軟な部材で構成されている。
【0017】
ダイローラー部30は、センターダイローラー31と、センターダイローラー31の両側に配置された一対のサイドダイローラー35とで構成されている。センターダイローラー31及び一対のサイドダイローラー35を総称する場合には、単にダイローラー31、35という。
【0018】
図3及び
図4に示すように、センターダイローラー31は、ダイ本体部22に支持されたセンターダイシャフト32にスラスト軸受33、インナー軸受34を介して回転自在に支持されている。
図3及び
図5に示すように、サイドダイローラー35は、ダイ本体部22に支持されたサイドダイシャフト36にスラスト軸受37、インナー軸受38を介して回転自在に支持されている。
【0019】
図3及び
図4に示すように、センターダイローラー31は、センターダイシャフト32に沿って延在する円筒形状の回転部材である。センターダイローラー31の回転軸(センターダイシャフト32の軸心)は、ワーク100に対して平行となるように設定されている(
図1参照)。
【0020】
センターダイローラー31は、円筒形状のダイローラー本体部310と、円筒形状のダイローラー連結部320とで構成されている。ダイローラー本体部310とダイローラー連結部320とは、軸方向(回転軸の延在方向)に沿って連続しており、一体的に連結されている。
【0021】
ダイローラー本体部310は、第1大径部311と、小径部312と、第2大径部313とを有している。第1大径部311、小径部312、第2大径部313は、この順番でダイローラー本体部310の軸方向にかけて配置されている。第1大径部311及び第2大径部313は、軸方向にかけて均一な外径となる円筒形状を有しており、第1大径部311及び第2大径部313の外径は互いに一致している。小径部312は、第1大径部311及び第2大径部313よりも小径に形成されており、軸方向の中央部に向かうほど窄んだ円筒形状を有している。
【0022】
ダイローラー連結部320は、軸方向にかけて均一な外径となる円筒形状を有している。ダイローラー連結部320の軸方向の中央部には、突条部321が設けられている。突条部321は、径方向外側に向かって鋭角に尖った凸形状を有しており、周方向に沿ってダイローラー連結部320の全周に延在している。
【0023】
図4に示すように、センターダイシャフト32の両端には、センターダイローラー31の上下方向の高さを調整するための部材である高さ調整シム39が設けられている。高さ調整シム39には様々なサイズが用意されており、センターダイローラー31に付与する高さに応じてサイズを切り替えることができる。
【0024】
図3及び
図5に示すように、サイドダイローラー35は、サイドダイシャフト36に沿って延在する円筒形状の回転部材である。サイドダイローラー35の回転軸(サイドダイシャフト36の軸心)は、ワーク100に対して平行となるように配置されている。サイドダイローラー35は、センターダイローラー31のダイローラー本体部310と同一構造を有しており、第1大径部351と、小径部352と、第2大径部353とを有している。
【0025】
このような構成のダイ20において、上面23側からダイ本体部22を眺めた場合、
図3に示すように、3つのダイローラー31、35は、互いに平行となるように配列されている。このとき、3つのダイローラー31、35は、第1大径部311、351側に位置するローラー端面31a、35aが同一直線上に並ぶように、位置決めされている。したがって、センターダイローラー31の第1大径部311、小径部312、及び第2大径部313と、一対のサイドダイローラー35の第1大径部351、小径部352、及び第2大径部353とは、それぞれ横並びに整列している。
【0026】
図6は、パンチの構成を示す斜視図である。
図7は、パンチの構成を示す下面図である。
図8は、
図7に示すパンチのAA断面を示す断面図であり、
図9は、
図7に示すパンチのBB断面を示す断面図である。
【0027】
図6に示すように、パンチ50は、パンチ本体部52と、パンチローラー部60とで構成されている。
【0028】
パンチ本体部52は、パンチプレスのストライカによって押圧されて上下方向に移動する円筒形状のガイド部材55(
図1参照)の下端に固定されている。パンチ本体部52の下面53は、ワーク100の上面と対向する対向面であり、ワーク100を隔ててダイ20と対向する。パンチ本体部52の下面53は、所要の凹凸形状を備えている。パンチ本体部52の下面53には、パンチローラー部60が設けられている。
【0029】
パンチローラー部60は、センターパンチローラー61と、センターパンチローラー61の両側に配置された一対のサイドパンチローラー65とで構成されている。センターパンチローラー61及び一対のサイドパンチローラー65を総称する場合には、単にパンチローラー61、65という。
【0030】
図7及び
図8に示すように、センターパンチローラー61は、パンチ本体部52に支持されたセンターパンチシャフト62にスラスト軸受63、インナー軸受64を介して回転自在に支持されている。
図9に示すように、サイドパンチローラー65は、パンチ本体部52に支持されたサイドパンチシャフト66にインナー軸受68を介して回転自在に支持されている。
【0031】
図7及び
図8に示すように、センターパンチローラー61は、センターパンチシャフト62に沿って延在する円筒形状の回転部材である。センターパンチローラー61の回転軸(センターダイシャフト32の軸心)は、ワーク100に対して平行となるように配置されている(
図1参照)。
【0032】
センターパンチローラー61は、円筒形状のパンチローラー本体部610と、フランジ部620とで構成されている。パンチローラー本体部610と、フランジ部620とは、軸方向に沿って連続するように一体形成されている。
【0033】
パンチローラー本体部610は、軸方向にかけて均一な外径となる円筒形状を有している。パンチローラー本体部610の軸方向における全長は、センターダイローラー31の軸方向における全長と概ね対応している(
図1参照)。フランジ部620は、パンチローラー本体部610の一方の端部側に設けられており、パンチローラー本体部610よりも大径となるように形成されている。
【0034】
図8に示すように、センターパンチローラー61の両端には、センターパンチローラー61の軸方向位置を調整するための部材である板厚調整シム69が設けられている。板厚調整シム69には様々な厚みが用意されており、センターパンチローラー61の軸方向位置に応じて厚みを切り替えることができる。
【0035】
図7及び
図9に示すように、サイドパンチローラー65は、サイドパンチシャフト66に沿って延在する円筒形状の回転部材である。サイドパンチローラー65の回転軸(サイドパンチシャフト66の軸心)は、ワーク100に対して平行となるように配置されている。サイドパンチローラー65は、軸方向にかけて均一な外径となる円筒形状を有している。
【0036】
サイドパンチローラー65の外径は、パンチローラー本体部610の外径よりも小さく設定されている。サイドパンチローラー65の軸方向における全長は、パンチローラー本体部610の軸方向における全長よりも短く設定されている。サイドパンチローラー65の軸方向における全長は、サイドダイローラー35の軸方向における全長と概ね対応している。
【0037】
このような構成のパンチ50において、下面53側からパンチ本体部52を眺めた場合、
図7に示すように、3つのパンチローラー61、65は、互いに平行となるように配列されている。このとき、センターパンチローラー61は、サイドパンチローラー65における一方のローラー端面65aよりもフランジ部620が突出するように位置に配置されている。
【0038】
再び
図1を参照するに、ダイ20及びパンチ50がパンチプレスに装着されると、ダイ20とパンチ50とが互いに対向する。このとき、センターダイローラー31の上方に、センターパンチローラー61が対向する。なお、
図1には示されていないが、一対のサイドダイローラー35の上方に、一対のサイドパンチローラー65がそれぞれ対向する。
【0039】
センターパンチローラー61のフランジ部620と、センターダイローラー31の一方のローラー端面31aとの間には、一定のクリアランスCLが設けられる。このクリアランスCLは、加工対象となるワーク100の板厚に基づいて、板厚調整シム69を用いてセンターパンチローラー61の軸方向位置を調整することにより設定される。
【0040】
図10は、ダイローラー及びパンチローラーの高さを説明する図である。ダイローラー部30を構成する3つのダイローラー31、35のうち、センターダイローラー31の上端位置は、両側にあるサイドダイローラー35の上端位置よりも高さhだけ、パンチローラー部60側へと突出するように配置されている。一方、パンチローラー部60を構成する3つのパンチローラー61、65は、それぞれのローラー下端部が同一平面(ワーク100と平行な平面)上に揃うように配置されている。このように、中央に位置するセンターダイローラー31を上方に突出させることで、加工時に生じるワーク100の反りを抑制することができる。
【0041】
なお、高さhは、ワーク100に生じる反りを矯正する程度に応じて調整することができる。この高さhは、高さ調整シム39を用いてセンターダイローラー31の上下方向の高さを調整することにより設定される。
【0042】
図1に示すように、このような構成のヘミング加工用金型1において、ダイローラー部30及びパンチローラー部60には、第1から第4までの加工部D1~D4、P1~P4が設けられている。
【0043】
第1加工部D1、P1は、ワーク100の縁部110を直角状に折り曲げる部位であり、ダイ20側の第1加工部D1と、パンチ50側の第1加工部P1とで構成されている。ダイ20側の第1加工部D1は、センターダイローラー31の一方のローラー端面31aと、センターダイローラー31の第1大径部311とで構成されている。一方、パンチ50側の第1加工部P1は、センターパンチローラー61のフランジ部620と、パンチローラー本体部610の一部とで構成されている。
【0044】
第2加工部P2、D2は、直角状に折り曲げられたワーク100の縁部110を鋭角状に折り曲げる部位であり、ダイ20側の第2加工部D2と、パンチ50側の第2加工部P2とで構成されている。ダイ20側の第2加工部D2は、センターダイローラー31の小径部312で構成されている。一方、パンチ側の第2加工部P2は、センターパンチローラー61のパンチローラー本体部610で構成されている。
【0045】
「縁部110を鋭角状に折り曲げる」とは、縁部110と一般部120(縁部110を除いたワーク100の領域)との内角が鋭角であることを意味する。したがって、縁部110と一般部120との境目の形状が尖った角形状であることに限らず、丸みを伴うような湾曲形状であってもよい。
【0046】
図1では示されていないが、サイドダイローラー35の小径部352も、ダイ20側の第2加工部D2の一部を構成する。同様に、サイドパンチローラー65も、パンチ50側の第2加工部P2の一部を構成する。
【0047】
第3加工部D3、P3は、鋭角状に折り曲げられたワーク100の縁部110をワーク100の一般部120と密着させる部位であり、ダイ20側の第3加工部D3と、パンチ50側の第3加工部P3とで構成されている。ダイ20側の第3加工部D3は、センターダイローラー31の第2大径部313で構成されている。一方、パンチ側の第3加工部P3は、センターパンチローラー61のパンチローラー本体部610で構成されている。
【0048】
図1では示されていないが、サイドダイローラー35の第2大径部353も、ダイ20側の第3加工部D3を構成する。同様に、サイドパンチローラー65も、パンチ50側の第3加工部P3を構成する。
【0049】
第4加工部D4、P4は、ワーク100の縁部110に凹状の溝部を形成する部位であり、ダイ20側の第4加工部D4と、パンチ50側の第4加工部P4とで構成されている。ダイ20側の第4加工部D4は、センターダイローラー31のダイローラー連結部320で構成されている。一方、パンチ側の第1加工部P1は、センターパンチローラー61のパンチローラー本体部610で構成されている。
【0050】
第1加工部D1、P1、第2加工部D2、P2、第3加工部D3、P3、及び第4加工部D4、P4は、ダイローラー部30及びパンチローラー部60の軸方向(回転軸の延在方向)に沿って順番に配置されている。
【0051】
以下、
図11から
図22を参照し、本実施形態に係るヘミング加工用金型1を用いたヘミング加工方法について説明する。本実施形態に係るヘミング加工は、回転自在なダイローラー部30を備えるダイ20に対して、回転自在なパンチローラー部60を備えるパンチ50を近接させて、ダイ20のダイローラー部30とパンチ50のパンチローラー部60との間にワーク100を挟み込む第1工程と、ダイローラー部30とパンチローラー部60との間にワーク100を挟み込んだ状態で、ダイローラー部30及びパンチローラー部60の回転軸と直交する方向にワーク100を平行移動させながら、ダイローラー部30及びパンチローラー部60によってワーク100の縁部110を加工する第2工程を含む。そして、第1工程及び第2工程を繰り返しながら、ワーク100の縁部110を直角状に折り曲げる直角曲げ加工(第1加工)と、直角状に折り曲げられたワーク100の縁部110を鋭角状に折り曲げる鋭角曲げ加工(第2加工)と、鋭角状に折り曲げられたワーク100の縁部110をワーク100の一般部120と密着させる密着加工(第3加工)と、を行う。
【0052】
なお、上述した通り、本実施形態に係るダイローラー部30及びパンチローラー部60は、ワーク100の縁部110に凹状の溝部を形成する第4加工部D4、P4を含んでいる。そのため、直角曲げ加工に先立ち、ワーク100の縁部110に凹状の溝部110aを形成する溝加工(第4加工)を行うことができる。
【0053】
図11から
図13を参照し、ワーク100の縁部110に凹状の溝部110aを形成する溝加工について説明する。
図11から
図13は、ダイ及びパンチによる溝加工を説明する図である。
図11において、X1方向、及びX1方向と反対向きとなるX2方向は、ダイローラー部30(及びパンチローラー部60)の軸方向と平行な方向である。Y1方向、及びY1方向と反対向きとなるY2方向は、ダイローラー部30(及びパンチローラー部60)の軸方向と直交する方向である。
【0054】
ワーク100は、図示しないワーク移動装置に設けられたクランプ200によって保持されており、ワーク100の移動は、ワーク移動装置によって行われる。まず、ワーク移動装置は、ワーク100の折り曲げ位置である曲げ線XがY1及びY2方向と平行になるようにワーク100をダイ20上に配置する。このとき、ワーク100は、ダイローラー部30の第4加工部D4、具体的には突条部321に対して曲げ線Xが一致するように位置決めされる。加えて、ワーク100は、縁辺100aと直交する関係にある一方の直交縁辺100bがセンターダイローラー31に到達するように位置決めされる。
【0055】
このような位置決め後、ダイ20に対してパンチ50を近接させることにより第1工程を実行する。第1工程により、ダイローラー部30の第4加工部D4とパンチローラー部60の第4加工部P4との間にワーク100が挟み込まれる。
【0056】
つぎに、ワーク移動装置は、ワーク100をY1方向へと平行移動させる(第2工程)。平行移動は、一方の直交縁辺100bの対辺となる他方の直交縁辺100cが、ワーク100の進行方向であるY1方向の奥側にあるサイドダイローラー35を通り過ぎるまで行われる。これにより、ダイローラー部30の第4加工部D4とパンチローラー部60の第4加工部P4との間をワーク100の縁部110が通過する。ワーク100が通過した後、パンチ50はダイ20から離される。
【0057】
図12に示すように、ダイローラー部30の第4加工部D4には突条部321が設けられ、パンチローラー部60の第4加工部P4には円筒形状のパンチローラー本体部610が設けられている。突条部321とパンチローラー本体部610との間でワーク100が押圧されることで、
図13に示すように、ワーク100の下面において曲げ線Xと対向する位置に、凹状の溝部110aが成形される。突条部321が鋭角な形状であるため、溝部110aの形状もV字形状となる。加えて、ワーク100がY1方向へと平行移動されるので、ワーク100の縁辺100aに沿って溝部110aが直線状に形成される。
【0058】
図14から
図16を参照し、ワーク100の縁部110を直角状に折り曲げる直角曲げ加工について説明する。
図14から
図16は、ダイ及びパンチによる直角曲げ加工を説明する図である。
【0059】
図14に示すように、ワーク移動装置は、曲げ線X(すなわちV字状の溝部110a)がダイローラー31、35の一方のローラー端面31a、35aと一致するように、ワーク100をX1方向へ平行移動させる。つづいて、ワーク移動装置は、他方の直交縁辺100cがセンターダイローラー31に到達するように、ワーク100を位置決めする。
【0060】
位置決め後、ダイ20に対してパンチ50を近接させることにより第1工程を実行する。第1工程により、ダイローラー部30の第1加工部D1とパンチローラー部60の第1加工部P1との間にワーク100が挟み込まれる。
【0061】
つぎに、ワーク移動装置は、ワーク100をY2方向へと平行移動させる(第2工程)。平行移動は、一方の直交縁辺100bがダイ20を通り過ぎるまで行われる。これにより、ダイローラー部30の第1加工部D1とパンチローラー部60の第1加工部P1との間をワーク100の縁部110が通過する。ワーク100が通過した後、パンチ50はダイ20から離される。
【0062】
図15に示すように、ダイローラー部30の第1加工部D1にはフランジ部620が設けられ、パンチローラー部60の第1加工部P1には第1大径部311が設けられている。フランジ部620と第1大径部311の端面(センターダイローラー31の一方のローラー端面31a)との間にワーク100の縁部110が挟み込まれることで、
図16に示すように、ワーク100の縁部110が下向き、且つ直角状に折り曲げられる。加えて、ワーク100がY2方向へと平行移動されるので、ワーク100の縁部110の全域が下向き、且つ直角状に折り曲げられる。
【0063】
図17から
図19を参照し、ワーク100の縁部110を鋭角状に折り曲げる鋭角曲げ加工について説明する。
図17から
図19は、ダイ及びパンチによる鋭角曲げ加工を説明する図である。
【0064】
図17に示すように、ワーク搬送装置は、曲げ線Xがダイローラー31、35の小径部312、352と一致するように、ワーク100をX2方向へ平行移動させる。このとき、先の工程で、一方の直交縁辺100bがダイ20を通り過ぎるまでワーク100を移動させているので、直角に折り曲げられた縁部110とダイ20とが干渉することなく、ワーク100をX2方向へと移動させることができる。つづいて、ワーク搬送装置は、一方の直交縁辺100bがサイドダイローラー35に到達するように、ワーク100を位置決めする。
【0065】
位置決め後、ダイ20に対してパンチ50を近接させることにより第1工程を実行する。第1工程により、ダイローラー部30の第2加工部D2とパンチローラー部60の第2加工部P2との間にワーク100が挟み込まれる。
【0066】
つぎに、ワーク移動装置は、ワーク100をY1方向へと平行移動させる(第2工程)。平行移動は、他方の直交縁辺100cがダイ20を通り過ぎるまで行われる。これにより、ダイローラー部30の第2加工部D2とパンチローラー部60の第2加工部P2との間をワーク100の縁部110が通過する。ワーク100が通過した後、パンチ50はダイ20から離される。
【0067】
図18に示すように、ダイローラー部30の第2加工部D2には外周面が凹状に湾曲した小径部312が設けられ、パンチローラー部60の第2加工部P2には円筒形状のパンチローラー本体部610が設けられている。よって、小径部312とパンチローラー本体部610との間でワーク100が押圧されることで、下向きに折り曲げられた縁部110は、小径部312の湾曲に沿って折り曲げられる。これにより、
図19に示すように、ワーク100の縁部110が鋭角状に折り曲げられる。加えて、ワーク100がY1方向へと平行移動されるので、ワーク100の縁部110の全域が鋭角状に折り曲げられる。なお、鋭角曲げ加工は、センターダイローラー31及びセンターパンチローラー61のみならず、一対のサイドダイローラー35及びサイドパンチローラー65によっても行われる。
【0068】
図20から
図22を参照し、ワーク100の縁部110をワーク100の一般部120と密着させる密着加工について説明する。
図20から
図22は、ダイ及びパンチによる密着加工を説明する図である。
【0069】
図20に示すように、ワーク搬送装置は、曲げ線Xがダイローラー31、35の第2大径部313、353と一致するように、ワーク100をX2方向へ平行移動させる。つづいて、ワーク搬送装置は、他方の直交縁辺100cがサイドダイローラー35に到達するように、ワーク100を位置決めする。
【0070】
位置決め後、ダイ20に対してパンチ50を近接させることにより第1工程を実行する。第1工程により、ダイローラー部30の第3加工部D3とパンチローラー部60の第3加工部P3との間にワーク100が挟み込まれる。
【0071】
つぎに、ワーク移動装置は、ワーク100をY2方向へと平行移動させる(第2工程)。平行移動は、一方の直交縁辺100bがダイ20を通り過ぎるまで行われる。これにより、ダイローラー部30の第3加工部D3とパンチローラー部60の第3加工部P3との間をワーク100の縁部110が通過する。ワーク100が通過した後、パンチ50は、ダイ20から離される。
【0072】
図21に示すように、ダイローラー部30の第3加工部D3には第2大径部313が設けられ、パンチローラー部60の第3加工部P3には円筒形状のパンチローラー本体部610が設けられている。よって、パンチローラー本体部610と第2大径部313との間でワーク100が押圧されることで、
図22に示すように、ワーク100の縁部110がワーク100の一般部120に対して密着させられる。加えて、ワーク100がY1方向へと平行移動されるので、ワーク100の縁部110の全域が一般部120に対して密着させられる。なお、密着加工は、センターダイローラー31及びセンターパンチローラー61のみならず、一対のサイドダイローラー35及びサイドパンチローラー65によっても行われる。
【0073】
このような一連の工程により、ワーク100の縁部110にヘミング加工が行われる。これにより、ワーク100の縁部110は、180度折り曲げられて、ワーク100の一般部120に対して密着した状態となる。なお、ヘミング加工における各加工時のパンチ50のストローク位置、すなわちパンチ50の下降端の位置は、ダイローラー部30とパンチローラー部60との間の間隔が各加工において最適となるように調整されている。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係るヘミング加工用金型1によれば、ダイ20及びパンチ50によってワーク100が挟持された状態でも、ダイローラー部30及びパンチローラー部60が相互に回転することでワーク100を平行移動させることができる。ワーク100が平行移動すると、ダイローラー部30及びパンチローラー部60が協働することで、必要な加工をワーク100の縁部110に沿って連続的に行うことができる。ダイローラー部30及びパンチローラー部60には、ヘミング加工に必要な加工部D1~D3、P1~P3が設けられている。ワーク100の縁部110を各加工部D1~D3、P1~P3に位置決めし、加工部D1~D3、P1~P3毎にワーク100の平行移動を繰り返すことで、ワーク100の縁部110を段階的に折り曲げることができる。これにより、ワーク100に対してヘミング加工を行うことができる。各加工部D1~D3、P1~P3が加工を行う間は、ダイ20とパンチ50とがワーク100を挟み込んだままの状態で維持されるので、金型による複数の打痕がワーク表面に残ることを抑制することができる。これにより、加工品質の向上を図ることできる。
【0075】
本実施形態において、ダイローラー部30及びパンチローラー部60は、回転軸の延在方向(軸方向)に沿って、第1加工部D1、P1、第2加工部D2、P2、及び第3加工部D3、P3が順番に配置されている。
【0076】
この構成によれば、ワーク100の位置を軸方向に沿って移動させることで、第1加工部D1、P1、第2加工部D2、P2、及び第3加工部D3、P3を択一的に選択することができる。これにより、加工部D1~D3、P1~P3を切り替えながらワーク100の縁部110を加工することで、ワーク100に対してヘミング加工を行うことができる。
【0077】
本実施形態において、ダイローラー部30及びパンチローラー部60は、ワーク100の縁部110に凹状の溝部110aを形成する第4加工部D4、P4をさらに含む。ダイローラー部30及びパンチローラー部60は、回転軸の延在方向に沿って、第1加工部D1、P1、第2加工部D2、P2、第3加工部D3、P3、及び第4加工部D4、P4が順番に配置されている。
【0078】
この構成によれば、同一のヘミング加工用金型1によって溝加工を行うことができる。ワーク100に対して溝部110aを前加工しておくことで、加工時の曲げがアシストされるので、曲げ線Xからずれることなく縁部110を整然と折り曲げることができる。これにより、加工品質の向上を図ることできる。
【0079】
なお、ダイローラー部30及びパンチローラー部60は、第4加工部D4、P4を必須で備えている必要はない。例えば、別途の手法で、ワーク100に対して溝部110aを前加工しておいてもよい。また、板厚の薄いワーク100を用いる場合には、そのまま直角曲げを行っても、加工後の曲げ位置が曲げ線Xからずれることが少ないと考えられるので、前加工としての溝加工を省略することも可能である。
【0080】
また、本実施形態では、突条部321によってコイニング(圧印)することにより溝部110aを形成している。しかしながら、溝部110aの形成方法は、切削などであってもよい。
【0081】
本実施形態において、ダイローラー部30は、ダイ20の上面23に回転軸に対して直交する方向に並んだ3つのダイローラー31、35から構成され、3つのダイローラー31、35は、3つのダイローラー31、35のうち中央にあるセンターダイローラー31の上端位置が両側にあるサイドダイローラー35の上端位置よりも突出するように配置されている。また、パンチローラー部60は、パンチ50の下面53に回転軸に対して直交する方向に並んだ3つのパンチローラー61、65から構成され、3つのパンチローラー61、65は、それぞれのパンチローラー61、65の下端位置が同一平面上に揃うように配置されている。
【0082】
この構成によれば、中央に位置するセンターダイローラー31を上方に突出させることで、加工時に生じるワーク100の反りを抑制することができる。
【0083】
本実施形態において、ヘミング加工方法は、ヘミング加工用金型1と対向する技術的特徴を備えている。このため、本実施形態に係るヘミング加工方法によれば、各加工を行う間、ダイ20とパンチ50との間にワークを挟み込んだ状態が継続されている。金型による複数の打痕がワーク表面に残ることを抑制することができるので、加工品質の向上を図ることできる。
【0084】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0085】
1 ヘミング加工用金型
20 ダイ
22 ダイ本体部
23 上面
30 ダイローラー部
31 センターダイローラー
31a ローラー端面
310 ダイローラー本体部
320 ダイローラー連結部
321 突条部
35 サイドダイローラー
35a ローラー端面
39 高さ調整シム
50 パンチ
52 パンチ本体部
53 下面
60 パンチローラー部
61 センターパンチローラー
610 パンチローラー本体部
620 フランジ部
65 サイドパンチローラー
69 板厚調整シム
D1、P1 第1加工部
D2、P2 第2加工部
D3、P3 第3加工部
D4、P4 第4加工部
100 ワーク
100a 縁辺
100b、100c 直交縁辺
110 縁部
110a 溝部
120 一般部
200 クランプ