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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104081
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02208 20210101AFI20240726BHJP
【FI】
H01S5/02208
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008104
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本林 久良
(72)【発明者】
【氏名】滝口 由朗
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MC01
5F173MC30
5F173ME02
5F173ME22
5F173ME63
5F173ME86
(57)【要約】
【課題】小型でありながら製造性に優れる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、支持面を含む支持部を有する基体と、その基体に設けられる発光素子と、発光素子を覆うように支持部に設けられ、支持部と対向する対向部および発光素子から出射される光が透過する光透過部を有するカバー部と、支持部と対向部との間に挟まれて支持部と対向部とを接合する接合部材とを備える。接合部材は、第1の厚さを有する第1部分と、第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する第2部分とを有する。第2部分の少なくとも一部と支持部および対向部のうちの少なくとも一方との間に空隙が存在する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面を含む支持部を有する基体と、
前記基体に設けられて光を発する発光素子と、
前記発光素子を覆うように前記支持部に設けられ、前記支持部と対向する対向部および前記発光素子から発せられる前記光が透過する光透過部を有するカバー部と、
前記支持部と前記対向部との間に挟まれて前記支持部と前記対向部とを接合する接合部材と
を備え、
前記接合部材は、第1の厚さを有する第1部分と、前記第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する第2部分とを有し、
前記第2部分の少なくとも一部と前記支持部および前記対向部のうちの少なくとも一方との間に空隙が存在する
発光装置。
【請求項2】
前記対向部は、前記支持面に沿って延在する対向面と、前記対向面に対して傾斜する傾斜面とを含み、
前記第1部分は、前記対向面と前記支持面との間に挟まれており、
前記第2部分は、前記傾斜面と前記支持面との間に挟まれており、
前記第2部分の少なくとも一部が、前記傾斜面および前記支持面の少なくとも一方と離間している
請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記接合部材に対する前記傾斜面の濡れ性は、前記接合部材に対する前記対向面の濡れ性よりも低い
請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記支持部は、第1金属層を有し、
前記対向部は、前記接合部材を挟んで前記第1金属層と対向する第2金属層を有する
請求項1記載の発光装置。
【請求項5】
前記支持部は、
前記第1部分を挟んで前記対向面と対向する前記支持面としての第1面を含む第1金属層と、
前記第1金属層の一部に積層されると共に前記第2部分を挟んで前記傾斜面と対向する第2面を含む第1被膜と
を有する
請求項2記載の発光装置。
【請求項6】
前記対向部は、前記対向面としての第3面を含む第2金属層と、前記第2金属層の一部に積層されると共に前記傾斜面としての第4面を含む第2被膜とを有する
請求項5記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2部分の少なくとも一部が、前記第2面および前記第4面のうちの少なくとも一方と離間している
請求項6記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1被膜および前記第2被膜は、SiOおよびAlのうちの少なくとも一方を含む酸化膜、またはSiN(窒化珪素)を含む窒化膜である
請求項6記載の発光装置。
【請求項9】
前記カバー部の熱線膨張係数(CTE)よりも前記接合部材の熱線膨張係数のほうが大きい
請求項1記載の発光装置。
【請求項10】
前記接合部材は、はんだ、樹脂接着剤、導電性接着剤、または低融点ガラスである
請求項1記載の発光装置。
【請求項11】
前記対向面および前記傾斜面は、前記カバー部のうち前記発光素子からの前記光が進行する光路から外れた位置に設けられている
請求項2記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザを備える発光装置として、CANパッケージやフレームパッケージ等の、パッケージ化された発光装置が広く用いられている。例えば特許文献1に記載の発光装置では、ベース部に半導体レーザが横向きの姿勢で実装され、その半導体レーザを覆うように、封止空間を形成するガラスキャップがベース部に接続される。特許文献1に記載の発光装置では、このような構成を有することにより、小型でありながら高い気密性が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/149573号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような発光装置の分野においては、寸法の微細化が求められている。
【0005】
よって、小型でありながら製造性に優れる発光装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る発光装置は、支持面を含む支持部を有する基体と、その基体に設けられる発光素子と、発光素子を覆うように支持部に設けられ、支持部と対向する対向部および発光素子から出射される光が透過する光透過部を有するカバー部と、支持部と対向部との間に挟まれて支持部と対向部とを接合する接合部材とを備える。接合部材は、第1の厚さを有する第1部分と、第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する第2部分とを有する。第2部分の少なくとも一部と支持部および対向部のうちの少なくとも一方との間に空隙が存在する。
【0007】
本開示の一実施形態に係る発光装置では、小型化に適すると共に容易に製造可能な構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る発光装置の外観の一例を表した斜視図である。
図2図2は、図1に示した発光装置の断面構成の一例を表した第1の断面図である。
図3A図3Aは、図2に示した発光装置の断面構成の一部を拡大して表した拡大断面図である。
図3B図3Bは、図2に示した発光装置の第1の変形例(本開示の第1変形例)としての断面構成の一部を拡大して表した拡大断面図である。
図3C図3Cは、図2に示した発光装置の第2の変形例(本開示の第2変形例)としての断面構成の一部を拡大して表した拡大断面図である。
図4図4は、図1に示した接合部材を含む階層における平面構成の一例を表した平面図である。
図5図5は、図1に示した発光装置の断面構成の一例を表した第2の断面図である。
図6A図6Aは、図1に示した発光装置の製造方法の一工程を説明する模式図である。
図6B図6Bは、図6Aに続く一工程を説明する模式図である。
図6C図6Cは、図6Bに続く一工程を説明する模式図である。
図6D図6Dは、図6Cに続く一工程を説明する模式図である。
図7図7は、参考例としての発光装置の一部を拡大して表した断面構成の一例を示した模式図である。
図8図8は、本開示の一実施形態の変形例(本開示の第3変形例)に係る発光装置の一部を拡大して表した拡大断面図である。
図9図9は、本開示の一実施形態の変形例(本開示の第4変形例)に係る発光装置の一部を拡大して表した拡大断面図である。
図10図10は、本開示の一実施形態の変形例(本開示の第5変形例)に係る発光装置の一部を拡大して表した拡大断面図である。
図11図11は、本開示の第6変形例に係る発光装置を表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下で説明する実施形態は本開示の一具体例であって、本開示にかかる技術が以下の態様に限定されるわけではない。また、本開示の各構成要素の配置、寸法、および寸法比等についても、各図に示す様態に限定されるわけではない。
【0010】
なお、説明は以下の順序で行う。
1.一実施形態
1.1.発光装置の構成例
1.2.発光装置の製造方法
1.3.作用効果
1.4.変形例
2.その他の変形例
【0011】
<1.一実施形態>
[1.1.発光装置の構成]
図1および図2を参照して、本開示の一実施形態に係る発光装置100の具体的な構成例について説明する。図1は、発光装置100の外観の一例を表した斜視図である。図2は、発光装置100の断面構成の一例を表した断面図である。図2は、図1に示したII-II線に沿った矢視方向の断面を表している。
【0012】
発光装置100は、基体としてのベース基板10と、発光素子としての半導体レーザ20と、カバー部としてのキャップ30と、接合部材40とを備えている。
【0013】
ベース基板10は、略直方体状の外形を有する板状部材である。但し、ベース基板10の外形はこれに限定されるものではなく、例えば円板状であってもよいし、凹凸形状を有していてもよい。ベース基板10の構成材料としては、例えば窒化アルミニウム(AlN)や酸化アルミニウム(AlOx)などのセラミック材料やステンレス鋼などの金属材料が挙げられる。図1などに示したように、ベース基板10には、表面11Sを有する支持部11が含まれている。支持部11は、図2に示したように第1金属層34を有する。
【0014】
半導体レーザ20は、ベース基板10に設けられている。なお、ベース基板10と半導体レーザ20との間に、サブマウントなどの他の部材が設けられていてもよい。半導体レーザ20は、例えば端面発光型のレーザ素子であり、例えばベース基板10の長軸方向(Y軸方向)に延在するように実装される。半導体レーザ20は、電力が供給されると例えば+Y方向にレーザ光Lを発振するように設定されている。なお、半導体レーザ20の具体的な構成、および発振されるレーザ光Lの波長域等は特に限定されず、任意に選択可能である。
【0015】
キャップ30は、ベース基板10に載置されている。キャップ30は、本体31を有している。本体31は、対向部32と、光透過部33と、凹部31Uとを有している。本体31は、例えば略直方体形状の外形を有し、半導体レーザ20を覆うようにベース基板10のうちの支持部11の表面11Sに接合されている。キャップ30とベース基板10とに取り囲まれた空間Vに半導体レーザ20が収容されている。なお、空間Vは、キャップ30とベース基板10とを接合する接合部材40によって密閉されていてもよい。その場合、半導体レーザ20が、高い気密性が維持された空間Vに封止されることとなる。但し、空間Vは、発光装置100の外部の空間と連通していてもよい。
【0016】
図1および図2に示したように、半導体レーザ20から出射されるレーザ光Lは、光透過部33を透過して、発光装置100の外部に出射されるようになっている。本体31のうちの少なくとも光透過部33は、例えばガラス材料などの、半導体レーザ20が発振するレーザ光Lが透過する光透過性の材料により構成される。本体31の全てが光透過性の材料により構成されていてもよい。本体31のうちの少なくとも光透過部33は、例えばサファイアなどの、ガラス材料以外の光透過性材料により構成されていてもよい。光透過部33の構成材料としてガラス材料やサファイアなどが用いられることにより、半導体レーザ20が発振するレーザ光Lを光透過部33から発光装置100の外部へ効率よく取り出すことが可能となる。なお、本体31は可視光に対する透過率が高い材料に限定されるものではない。例えば半導体レーザ20レーザ光Lとして赤外光を発振するものである場合、本体31の光透過部33は、可視光域よりも赤外光域において高い透過率を示すカルコゲナイドガラスなどによって構成することができる。
【0017】
対向部32は、キャップ30のうち、ベース基板10の支持部11と対向する部分である。対向部32は、キャップ30のうち半導体レーザ20から発振されるレーザ光Lが進行する光路から外れた位置に設けられている。対向部32は、第2金属層35を有している。第2金属層35は、接合部材40を挟んで支持部11の第1金属層34と対向している。第1金属層34および第2金属層35は、例えばAu(金),Ag(銀),Cu(銅),Al(アルミニウム)などの金属により構成される単層膜である。第1金属層34および第2金属層35は単層膜に限定されず、例えば本体31の側から順にTi(チタン)層とPt(白金)層とAu(金)層とが順に積層されたTi/Pt/Auなどの積層膜であってもよい。さらに、上記以外の他の金属元素を含む金属材料により構成された単層膜もしくは積層膜であってもよい。
【0018】
接合部材40は、支持部11と対向部32との間に挟まれて支持部11と対向部32とを接合する。発光装置100では、第1金属層34と第2金属層35との間に接合部材40が設けられており、接合部材40が第1金属層34と第2金属層35とを接合している。接合部材40は、はんだ、樹脂接着剤、または導電性接着剤である。はんだとしては、AuSn、SnAgCu、およびSnBiなどが挙げられる。導電性接着剤は、例えばAg(銀)ペーストである。あるいは、接合部材40として、例えば600℃以下の融点を有する低融点ガラスを用いてもよい。また、キャップ30の熱線膨張係数(CTE)よりも接合部材40の熱線膨張係数のほうが大きい。ここでいうキャップ30の熱線膨張係数とは、例えば本体31の熱線膨張係数、または第1金属層34の熱線膨張係数である。
【0019】
次に、図3Aを参照して、対向部32の近傍における詳細の構成について説明する。図3Aは、図2に示した発光装置100の一部を拡大して表した拡大断面図である。
【0020】
図3Aに示したように、支持部11の表面11Sには第1金属層34が設けられている。第1金属層34は、支持面としての表面34Sを有している。本体31の対向部32は、表面34Sに沿って延在する面31Aと、面31Aに対して傾斜する面31Bとを含んでいる。面31Bは、面31Aに対して例えば45°の角度をなしている。面31Aおよび面31Bは、キャップ30のうち半導体レーザ20からのレーザ光Lが進行する光路から外れた位置に設けられている。また、対向部32の第2金属層35は、面31Aを覆う第1部分351と、面31Bを覆う第2部分352とを含んでいる。第1部分351は、対向面としての面351Sを有している。面351Sは、表面34Sおよび面31Aの双方に沿って、表面34Sおよび面31Aの双方に対して例えば実質的に平行に延在している。第2部分352は、面351Sに対して傾斜する傾斜面としての面352Sを有している。面352Sは面351Sに沿って延在しているので、面352Sは表面34Sに対して傾斜している。したがって、面351Sと表面34SとのZ軸方向の間隔は実質的に一定であるのに対し、面352Sと表面34SとのZ軸方向の間隔は、キャップ30の外側に向かうほど、すなわちX軸方向に沿って第1部分351から遠ざかるほど徐々に広がっている。
【0021】
図3Aに示したように、接合部材40は、第1金属層34と第2金属層35の第1部分351との間に挟まれた第1部分41と、第1金属層34と第2金属層35の第2部分352との間に挟まれた第2部分42とを有する。第2部分42は、第1部分41の厚さT41よりも大きな厚さT42を有する部分を含んでいる。図3Aに示した例では、第1部分41は、実質的に一定の厚さT41を有しており、第2部分42は、X軸方向に沿って第1部分41から遠ざかるほど徐々に増大する厚さT42を有している。なお、厚さとは、Z軸方向の寸法を意味する。ここで、第2部分42の少なくとも一部と、支持部11の第1金属層34および対向部32の第2金属層35の第2部分352のうちの少なくとも一方との間に空隙Gが存在する。図3Aに示した例では、第2部分42と第2部分352との間に空隙Gが存在する。すなわち、第2部分42と第2部分352の面352Sとが離間している。なお、本開示は、面352Sの全体が第2部分42と離間している態様に限定されず、面352Sの一部分のみが第2部分42と離間している態様であってもよい。また、本開示は、例えば図3Bに示した発光装置100Aのように、第2部分42と第1金属層34との間に空隙Gが存在する態様であってもよい。図3Bの態様では、第2部分42と第1金属層34の表面34Sとが離間している。さらに、本開示は、例えば図3Cに示した発光装置100Bのように、第2部分42と第2部分352との間に空隙G1が存在すると共に、第2部分42と第1金属層34との間にも空隙G2が存在する態様であってもよい。図3Cの態様では、第2部分42と面352Sとが離間していると共に、第2部分42と第1金属層34の表面34Sとが離間している。
【0022】
ここで、接合部材40に対する第2部分352の面352Sの濡れ性は、接合部材40に対する第1部分351の面351Sの濡れ性よりも低くなっている。あるいは、第1金属層34の表面34Sのうち接合部材40の第2部分42と対向する部分の接合部材40に対する濡れ性が、第1金属層34の表面34Sのうち接合部材40の第1部分41と対向する部分の接合部材40に対する濡れ性よりも低くなっていてもよい。第2部分352の面352Sの濡れ性や第1金属層34の表面34Sの一部の濡れ性を低下させるために、例えば表面改質処理がなされているとよい。具体的には、第2金属層35の面352Sに対し、コロナ処理やプラズマ処理、フレーム処理、化学薬品処理、またはUV照射などを表面改質処理として行うことができる。
【0023】
図4は、接合部材40を含む階層におけるXY面に沿った平面構成の一例を表した平面図である。図4に示したように、本体31の凹部31Uを取り囲むようにXY面内において周回する周回部分43と、周回部分43から本体31の外側へ延びる引き出し部分44とを有する。接合部材40が周回部分43を有することにより、キャップ30がベース基板10の支持部11に隙間なく接合され、密封された空間Vが形成されている。なお、空間Vを密封しなくてもよい場合は、周回部分43の一部に切り欠きなどの隙間があってもよい。なお、第2金属層35および接合部材40は、キャップ30の製造過程において、複数の本体31が個片化される前の一体化されている状態で、複数の本体31の対向部32にそれぞれ順次、一括形成される。第2金属層35および接合部材40は、例えば電解めっき法により形成され得る。具体的には、第2金属層35がめっき下地層となり、接合部材40が第2金属層35をめっき下地層として利用して電解めっきにより形成される。引き出し部44は、隣り合う複数の本体31の対向部32に形成される接合部材40同士を連結していた部分である。
【0024】
引き出し部分44は、図2に示したように、相対的に厚さの大きな第2部分42となっている。なお、図2は、図4に示したII-II線に沿った矢視方向の断面に対応する。一方、図5に示したように、引き出し部分44が存在しない箇所では、本体31のうち傾斜した面31Bには第2金属層35が設けられておらず、接合部材40も存在していない。すなわち、本体31のうちの面31Aにのみ第2金属層35が設けられている。また、本体31の対向部32は、表面34Sに沿って延在する面31Aに対して傾斜する面31Bを含んでいる。このため、製造過程において例えばダイシングブレードを用いて本体31の外縁を切削加工する際、引き出し部分44を含む端面において接合部材40のチッピングの発生が抑制される。
【0025】
[1.2.発光装置の製造方法]
次に、図6A~6Dを参照して、発光装置100の製造方法について説明する。なお、図6A~6Dでは1つのベース基板10に1つの半導体レーザ20および1つのキャップ30を接合部材40により接合する様子を記載しているが、実際には同一のベース基板10に複数の半導体レーザ20および複数のキャップ30を形成したのち、ダイシングブレード等によって個々の発光装置100に分離する操作を行うことができる。 図6A~6Dは、発光装置100の製造方法の一例を示す工程フロー図である。
【0026】
まず、図6Aに示したように、ベース基板10を用意したのち、ベース基板10の所定の位置に半導体レーザ20を載置すると共に支持部11に第1金属層34を形成する。その一方で、本体31の対向部32に第2金属層35を形成すると共に、第2金属層35にはんだなどの接合部材40を予め塗布しておく。
【0027】
次に、図6Bに示したように、第1金属層34と第2金属層35とが接合部材40を挟んで対向するように位置合わせを行ったのち、キャップ30をベース基板10に向けて所定の荷重Fで押し付ける。
【0028】
次に、図6Cに示したように、キャップ30をベース基板10に向けて荷重Fで押し付けた状態のまま接合部材40を加熱することで、接合部材40を溶融させる。接合部材40の加熱方法としては、加熱方法としては、リフローのような大気からの熱伝導により加熱する方法でもよいし、ダイボンダを用いてステージ上で加熱する方法であってもよい。
【0029】
そののち接合部材40を冷却することにより、接合部材40のうちの第1部分41によって第1金属層34と第2金属層35とが接合される。その結果、キャップ30が半導体レーザ20を覆うようにベース基板10に固定され、発光装置100が完成する。ただし、図6Dに示したように、第2部分42の少なくとも一部が第1金属層34および第2金属層35のうちの少なくとも一方と離間し、空隙Gが形成される。そのため、接合部材40の収縮に伴う引張応力が解放され、キャップ30に伝播する引張応力が緩和される。よって、キャップ30の割れや欠けなどの損傷が回避される。
【0030】
[1.3.作用効果]
本実施の形態の発光装置100は、上述したように、支持部11と対向部32との間に挟まれて支持部11と対向部32とを接合する接合部材40のうち、相対的に大きな厚さT42を有する第2部分42の少なくとも一部と支持部11および対向部32のうちの少なくとも一方との間に空隙Gが存在するようにしている。このため、製造過程や製造後の使用時において発生する接合部材40の膨張収縮に伴う引張応力が解放され、キャップ30に印加される引張応力が緩和される。よって、キャップ30の対向部32の近傍における割れや欠けなどの損傷が回避される。
【0031】
これに対し、例えば図7に示した参考例としての発光装置1100のように、相対的に大きな厚さT42を有する第2部分42の全ての部分が第1金属層34および第2金属層35と密接に接合されている場合には、温度変化などに伴う接合部材40の膨張収縮が生じると、支持部11の熱線膨張係数や対向部32の熱線膨張係数との差異によって支持部11や対向部32に対して応力が印加されてしまう。そのため、最も強度の低い箇所、例えばガラス材料などによって構成される本体31の一部に亀裂CRが生じることがある。
【0032】
そこで、本実施の形態の発光装置100では、例えば接合部材40に対する第2金属層35の面352Sの濡れ性や、第1金属層34の表面34Sのうち接合部材40の第2部分42と対向する部分の接合部材40に対する濡れ性を低下させるなどして、第2部分42のうちの少なくとも一部を第1金属層34および第2金属層35のうちの少なくとも一方から離間させるようにしている。その結果、接合部材40の膨張収縮が生じたとしても、接合部材40の膨張収縮に伴う応力に起因するキャップ30の損傷を効果的に防ぐことができる。
【0033】
[1.4.変形例]
(第3変形例)
図8を参照して、本実施の形態の第3変形例に係る発光装置100Cについて説明する。図8は、発光装置100Cの一部の断面構成例を示す模式図である。なお、図8は、上記実施の形態の発光装置100の一部の断面構成例を表す図2に対応する。
【0034】
図8の発光装置100Cの構成は、被膜36を設けるようにしたことを除き、図2などに示した発光装置100の構成と実質的に同じである。具体的には、発光装置100Cでは、第1金属層34の表面34Sの一部に積層するように、表面34Sと反対側に面36Sを有する被膜36が設けられている。より詳細には、被膜36は、表面34Sのうち、接合部材40の第2部分42を挟んで第2金属層35の面352Sと対向する位置に設けられている。したがって、被膜36の面36Sは、接合部材40の第2部分42を挟んで第2金属層35の面352Sと対向している。発光装置100Cでは、表面34Sに表面改質処理がなされていなくてもよい。被膜36は、例えばSiOおよびAlのうちの少なくとも一方を含む酸化膜、またはSiN(窒化珪素)を含む窒化膜である。
【0035】
発光装置100Cでは、接合部材40に対する第1金属層34の表面34Sの濡れ性と比較して、接合部材40に対する被膜36の濡れ性が低い。このため、発光装置100Cの製造過程において、第2部分42の少なくとも一部が面36Sと離間し、被膜36と接合部材40の第2部分42との間に空隙Gが形成されることとなる。よって、製造過程や製造後の使用時において発生する接合部材40の膨張収縮に伴う引張応力が解放され、キャップ30に印加される引張応力が緩和される。その結果、キャップ30の対向部32の近傍における割れや欠けなどの損傷が回避される。
【0036】
(第4変形例)
図9を参照して、本実施の形態の第4変形例に係る発光装置100Dについて説明する。図9は、発光装置100Dの一部の断面構成例を示す模式図である。なお、図9は、上記実施の形態の発光装置100の一部の断面構成例を表す図2に対応する。
【0037】
図9の発光装置100Dの構成は、被膜37を設けるようにしたことを除き、図2などに示した発光装置100の構成と実質的に同じである。詳細には、発光装置100Dでは、第2金属層35の第2部分352の面352Sを覆うように、面352Sと反対側に面37Sを有する被膜37が設けられている。したがって、被膜37の面37Sは、接合部材40の第2部分42を挟んで第1金属層34の表面34Sと対向している。発光装置100Dでは、第2部分352の面352Sに表面改質処理がなされていなくてもよい。被膜37は、例えばSiOおよびAlのうちの少なくとも一方を含む酸化膜、またはSiN(窒化珪素)を含む窒化膜である。
【0038】
発光装置100Dでは、接合部材40に対する第2金属層35の第1部分351の面351Sの濡れ性と比較して、接合部材40に対する被膜37の濡れ性が低い。このため、発光装置100Dの製造過程において、第2部分42の少なくとも一部が面37Sと離間し、被膜37と接合部材40の第2部分42との間に空隙Gが形成されることとなる。よって、製造過程や製造後の使用時において発生する接合部材40の膨張収縮に伴う引張応力が解放され、キャップ30に印加される引張応力が緩和される。その結果、キャップ30の対向部32の近傍における割れや欠けなどの損傷が回避される。
【0039】
(第5変形例)
図10を参照して、本実施の形態の第5変形例に係る発光装置100Eについて説明する。図10は、発光装置100Eの一部の断面構成例を示す模式図である。なお、図10は、上記実施の形態の発光装置100Eの一部の断面構成例を表す図2に対応する。
【0040】
図10の発光装置100Eの構成は、被膜36および被膜37を設けるようにしたことを除き、図2などに示した発光装置100の構成と実質的に同じである。被膜36および被膜37を設ける位置やそれらの材質、技術的意義などは、上記本実施の形態の第3変形例としての発光装置100Cおよび第4変形例としての発光装置100Dと同じである。
【0041】
<2.その他の変形例>
以上、いくつかの実施形態および変形例を挙げて、本開示にかかる技術を説明した。ただし、本開示にかかる技術は、上記実施の形態等に限定されるわけではなく、種々の変形が可能である。
【0042】
(第6変形例)
例えば上記一実施形態の発光装置100では、平板状のベース基板10に搭載された半導体レーザ20を、凹部31Uを有する本体31を含むキャップ30により覆うようにしている。しかしながら、本開示では、例えば図11に示した第6変形例としての発光装置100Fのような態様を採用することもできる。発光装置100Fでは、ベース基板10の代わりに、凹部50Uを有する容器50を基体として備えている。半導体レーザ20は、凹部50Uの底面50USに載置されている。容器50は、支持面51Sを含む支持部51を有している。支持面51Sは、XY面内において凹部50Uを取り囲むように周回している。発光装置100Fでは、略平板状の本体61を含むカバー部60を備えている。本体61は、例えば発光装置100における本体31と同様の材料により構成されており、支持部51と対向する対向部62と、光透過部63とを有する。半導体レーザ20は例えば面発光レーザであり、光透過部63を透過するレーザ光Lを発振するように構成されている。支持部51と対向部62との間には第1金属層34および第2金属層35が設けられており、第1金属層34と第2金属層35とが接合部材40を介して接合されている。ただし、接合部材40は、上記発光装置100と同様に、第1部分41と、第1部分41の厚さよりも厚い第2部分42とを含んでいる。第2部分4の少なくとも一部と支持部51および対向部62のうちの少なくとも一方との間に空隙Gが存在する。したがって、図11の発光装置100Fにおいても、図2などの発光装置100と同様の効果が期待できる。
【0043】
また、上記一実施形態の発光装置100などでは、支持部が第1金属層34を有すると共に対向部が第2金属層35を有するようにしたが、本開示はそのような態様に限定されるものではない。すなわち、本開示の発光装置は、第1金属層34および第2金属層35を有しないものであってもよい。例えば表面11Sの一部に表面改質処理を施したり、キャップ30の本体31の面31Bに表面改質処理を施したりするなどして、接合部材40の第2部分42と表面11Sの一部および本体31の面31Bの少なくとも一方との間に空隙を設けるようになっていてもよい。
【0044】
さらに、上記一実施形態および各変形例で説明した構成および動作の全てが本開示の構成および動作として必須であるとは限らない。たとえば、各実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素は、任意の構成要素として理解されるべきである。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」または「含まれる」という用語は、「含まれるとして記載された様態に限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するとして記載された様態に限定されない」と解釈されるべきである。
【0046】
本明細書で使用した用語には、単に説明の便宜のために用いており、構成及び動作を限定する目的で使用したわけではない用語が含まれる。たとえば、「右」、「左」、「上」、「下」などの用語は、参照している図面上での方向を示しているにすぎない。また、「内側」、「外側」という用語は、それぞれ、注目要素の中心に向かう方向、注目要素の中心から離れる方向を示しているにすぎない。これらに類似する用語や同様の趣旨の用語についても同様である。
【0047】
なお、本開示にかかる技術は、以下のような構成を取ることも可能である。以下の構成を備える本開示の一実施形態に係る発光装置は、小型化に適すると共に容易に製造可能な構造を有する。
なお、本開示にかかる技術が奏する効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるわけではなく、本開示中に記載されたいずれの効果であってもよい。
<1>
支持面を含む支持部を有する基体と、
前記基体に設けられて光を発する発光素子と、
前記発光素子を覆うように前記支持部に設けられ、前記支持部と対向する対向部および前記発光素子から発せられる前記光が透過する光透過部を有するカバー部と、
前記支持部と前記対向部との間に挟まれて前記支持部と前記対向部とを接合する接合部材と
を備え、
前記接合部材は、第1の厚さを有する第1部分と、前記第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する第2部分とを有し、
前記第2部分の少なくとも一部と前記支持部および前記対向部のうちの少なくとも一方との間に空隙が存在する
発光装置。
<2>
前記対向部は、前記支持面に沿って延在する対向面と、前記対向面に対して傾斜する傾斜面とを含み、
前記第1部分は、前記対向面と前記支持面との間に挟まれており、
前記第2部分は、前記傾斜面と前記支持面との間に挟まれており、
前記第2部分の少なくとも一部が、前記傾斜面および前記支持面の少なくとも一方と離間している
上記<1>記載の発光装置。
<3>
前記接合部材に対する前記傾斜面の濡れ性は、前記接合部材に対する前記対向面の濡れ性よりも低い
上記<2>記載の発光装置。
<4>
前記支持部は、第1金属層を有し、
前記対向部は、前記接合部材を挟んで前記第1金属層と対向する第2金属層を有する
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載の発光装置。
<5>
前記支持部は、
前記第1部分を挟んで前記対向面と対向する前記支持面としての第1面を含む第1金属層と、
前記第1金属層の一部に積層されると共に前記第2部分を挟んで前記傾斜面と対向する第2面を含む第1被膜と
を有する
上記<2>記載の発光装置。
<6>
前記対向部は、前記対向面としての第3面を含む第2金属層と、前記第2金属層の一部に積層されると共に前記傾斜面としての第4面を含む第2被膜とを有する
上記<5>記載の発光装置。
<7>
前記第2部分の少なくとも一部が、前記第2面および前記第4面のうちの少なくとも一方と離間している
上記<6>記載の発光装置。
<8>
前記第1被膜および前記第2被膜は、SiOおよびAlのうちの少なくとも一方を含む酸化膜、またはSiN(窒化珪素)を含む窒化膜である
上記<6>または<7>記載の発光装置。
<9>
前記カバー部の熱線膨張係数(CTE)よりも前記接合部材の熱線膨張係数のほうが大きい
上記<1>から<8>のいずれか1つに記載の発光装置。
<10>
前記接合部材は、はんだ、樹脂接着剤、導電性接着剤、または低融点ガラスである
上記<1>から<9>のいずれか1つに記載の発光装置。
<11>
前記対向面および前記傾斜面は、前記カバー部のうち前記発光素子からの前記光が進行する光路から外れた位置に設けられている
上記<2>に記載の発光装置。
【符号の説明】
【0048】
100…発光装置、10…ベース基板、11…支持部、11S…表面、20…半導体レーザ、30…キャップ、31…本体、31U…凹部、32…対向部、33…光透過部、34…第1金属層、35…第2金属層、34S,35S…表面、40…接合部材、50…容器、G…空隙、V…空間。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11