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特開2024-104085X線撮影装置、および、X線撮影方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104085
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】X線撮影装置、および、X線撮影方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/40 20240101AFI20240726BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240726BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A61B6/00 300D
A61B6/00 350D
A61B6/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008123
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勲
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和喜
(72)【発明者】
【氏名】山川 恵介
(72)【発明者】
【氏名】中村 正
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA25
4C093CA23
4C093EA06
4C093EC15
4C093EC22
4C093EC28
4C093EC34
4C093FA15
4C093FD11
4C093FF16
4C093FF22
4C093FF35
4C093FF42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】X線管の支柱を回転させることなく、術中にリアルタイムに処置具の3次元位置を把握可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】天板に搭載された被検体のターゲット部位にX線を照射する位置に第1X線管を配置し、第1X線管と天板とを結ぶ軸を中心とする円軌道に沿って第2X線管を回動させて、第2X線管を配置する。第1X線管から被検体にX線を照射し、第1X線画像を取得する。第2X線管から、被検体にX線を照射し、第2X線画像を取得する。第1X線画像に含まれる所定の特徴部位の像の位置と、第2X線画像に含まれる前記特徴部位の像の位置とを用いて、所定の特徴部位の像の3次元位置を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を搭載する天板と、前記被検体にX線を照射する第1X線管と、前記第1X線管を支持する第1支持部と、前記被検体にX線を照射する第2X線管と、前記第2X線管を支持する第2支持部と、前記第1X線管および第2X線管が照射し、前記被検体を通過したX線を検出するX線検出器と、演算部とを有し、
前記演算部は、前記X線検出器が前記第1X線管の照射したX線を検出した出力から第1X線画像を取得し、前記X線検出器が前記第2X線管の照射したX線を検出した出力から第2X線画像を取得し、前記第1X線画像に含まれる所定の特徴部位の像の位置と、前記第2X線画像に含まれる前記特徴部位の像の位置とを用いて、前記所定の特徴部位の像の3次元位置を算出し、
前記第2支持部は、前記第1X線管と前記天板とを結ぶ軸を中心とする円軌道に沿って、前記第2X線管を回動可能に支持する機構を含む、
ことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、
前記第2支持部は、基部と先端とを有するアームと、支持軸と、回転機構とを含み、
前記支持軸は、前記第1支持部の前記第1X線管を支持する位置に設けられ、
前記アームの前記基部は、前記支持軸によって支持され、
前記アームの先端には、前記第2X線管が備えられ、
前記支持軸には、前記アームの前記基部を当該支持軸を中心に回転させる回転機構が備えられている
ことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項3】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、
前記第2支持部には、前記第2X線管の位置を前記円軌道に沿って変化させる駆動部が備えられている
ことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、
前記第2支持部は、前記円軌道の半径を変化させる機構部を備える
ことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項5】
請求項2に記載のX線撮影装置であって、
前記アームには、当該アームを軸方向に伸縮させることにより、前記円軌道の半径を変化させる伸縮機構が備えられていることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項6】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、前記被検体にX線を照射する第3X線管と、前記第3X線管を支持する第3支持部とをさらに有し、
前記第3支持部は、前記第3X線管を、前記第1X線管を通る軸を中心とすだ円軌道にそって回動可能に支持している、
ことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項7】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、
前記第2X線管の前記X線検出器へのX線の最大照射領域は、前記第1X線管の前記X線検出器へのX線の最大照射領域よりも小さいことを特徴するX線撮影装置。
【請求項8】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、
前記第2X線管のX線の最大出力は、前記第1X線管のX線の最大出力よりも小さいことを特徴するX線撮影装置。
【請求項9】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、
前記演算部は、前記第1X線画像と第2X線画像に含まれる所定の特徴部位の像を抽出検出する抽出部と、前記第1X線画像と前記第2X線画像に含まれる前記特徴部位の像の位置とを用いて、前記特徴部位の3次元位置を算出する3次元位置算出部とを含むことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項10】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、
前記演算部は、前記第1X線画像または前記第2X線画像に含まれる予め定めたターゲットと脊椎の位置を検出するか、または、前記ターゲットと脊椎の位置をユーザから受け付け、前記ターゲットと脊椎の位置が重なっている場合、前記被検体の中心軸から左右方向にずれた位置に前記第2X線管を配置するように促す表示を表示部に表示することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項11】
請求項3に記載のX線撮影装置であって、
前記演算部は、前記第2X線画像に含まれる前記特徴部位の位置に応じて、前記第2X線管を移動させるよう前記駆動部を駆動させ、前記第2X線画像の視野を前記特徴部位の移動に追従させることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項12】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、前記X線検出器の上に配置された複数の凸条を平行に並べたグリッドと、前記グリッドを主平面内で回転させる回転駆動部とをさらに備え、
前記回転駆動部は、前記第2X線管の前記円軌道上の位置に応じて前記グリッドを回転させることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項13】
天板に搭載された被検体のターゲット部位にX線を照射する位置に第1X線管を配置し、前記第1X線管と前記天板とを結ぶ軸を中心とする円軌道に沿って第2X線管を回動させて、前記第2X線管を配置し、
第1X線管から被検体にX線を照射し、前記被検体を通過したX線をX線検出器で検出して第1X線画像を取得し、
第2X線から、被検体にX線を照射し、前記被検体を通過したX線をX線検出器で検出して第2X線画像を取得し、
前記第1X線画像に含まれる所定の特徴部位の像の位置と、前記第2X線画像に含まれる前記特徴部位の像の位置とを用いて、前記所定の特徴部位の像の3次元位置を算出する
ことを特徴とするX線撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なX線撮影装置は、X線源から被検体に対してX線を照射し、被検体を透過したX線を平面状のX線検出器により検出することにより、静止画のX線撮影や、連続撮影による動画のX線撮影(いわゆる透視)を行うことができる。X線撮影および透視のいずれにおいても、得られるX線画像は、2次元投影像であり、被検体内の構造の厚み方向の位置を把握することはできない。
【0003】
そこで、被検体の3次元撮影を可能にするため、例えば特許文献1では、M個×N個のX線源から構成されるマルチX線発生装置と、K個×L個のセンサから構成される平面検出器をアームで対向させたX線撮影装置が提案されている。このX線撮影装置は、アームをスライド回転軸と主軸を中心に回転させながら、複数のX線源から周期的にX線放射を行い、同期してセンサを動作させ、複数の多方向画像を撮影し、X線源の座標情報を基に再構成することにより、任意の多層断層画像(いわゆるトモグラフィ画像)を取得することができる。
【0004】
また、特許文献2には、いわゆるバイプレーンのX線撮影装置が開示されている。このX線撮影装置は、第1のX線管と第1のX線検出器とを第1のC型アームによって対向配置し、第2のX線管と第2のX線検出器とを第2のC型アームによって対向配置した構成である。第1のC型アームと第2のC型アームの回転軸は、交差するように設定される。第1のC型アームと第2のC型アームをそれぞれ回転させて撮影を行うことにより、3次元画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-173015号公報
【特許文献2】特開2021-133036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の特許文献2のようなバイプレーンのX線撮影装置は、大型かつ高価である。一方、特許文献1のようにM個×N個のX線源を用いる多管球システムは、一つのX線源を用いて撮影した画像において、見たい対象物が他の構造物と重なっている場合、他のX線源に切り替えることができるが、M個×N個のX線源の位置は大きくは異ならないため、位置選択の自由度は大きくない。そのため、見たい対象物と他の構造物との重なりを解消できないことがある。
【0007】
また、特許文献1,2の装置は、X線源とX線検出器を支持するアームを被検体の周囲で回転させることにより、被検体の3次元画像やトモグラフィ画像を得ることができるが、手術中に3次元画像等を撮影する際には、回転するX線源やアームとの接触を避けるため、術者は、一旦被検体から離れる必要がある。そのため、術具等を挿入しながら3次元画像を撮影することは困難である。
【0008】
一方、処置具等のデバイスの位置を把握することを目的とする場合、3次元画像やトモグラフィ画像は必ずしも必要ではないため、3次元画像やトモグラフィ画像を撮影することなく、デバイスの位置を把握する技術が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、X線管を支持するアームを術中に回転させることなく、リアルタイムにデバイスの3次元位置を把握可能なX線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のX線撮影装置は、被検体を搭載する天板と、被検体にX線を照射する第1X線管と、第1X線管を支持する第1支持部と、被検体にX線を照射する第2X線管と、第2X線管を支持する第2支持部と、第1X線管および第2X線管が照射し、被検体を通過したX線を検出するX線検出器と、演算部とを有する。演算部は、X線検出器が第1X線管の照射したX線を検出した出力から第1X線画像を取得し、X線検出器が第2X線管の照射したX線を検出した出力から第2X線画像を取得し、第1X線画像に含まれる所定の特徴部位の像の位置と、第2X線画像に含まれる特徴部位の像の位置とを用いて、所定の特徴部位の像の3次元位置を算出する。第2支持部は、第1X線管と天板とを結ぶ軸を中心とする円軌道に沿って、第2X線管を回動可能に支持する機構を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線管の支柱を回転させることなく、術中にリアルタイムに処置具の3次元位置を把握可能なX線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1のX線撮影装置1を側面から見た場合の2つのX線管の配置と移動方向を示すブロック図。
図2】実施形態1のX線撮影装置1の主要部の構成を示すブロック図。
図3】実施形態1のX線撮影装置1の第1X線管60および第2X線管110への管電流の供給タイミングと、X線検出器からのデータ収集のタイミングを示すタイミングチャート。
図4】(a)実施形態1のX線撮影装置1の第1X線管60と第2X線管110の3次元位置S1,S2と、X線検出器70へ投影された処置具の特徴部位の3次元位置D1,D2を示す説明図、(b)第1X線画像の一例を示す図、(c)第2X線画像の一例を示す図、(d)処置具の特徴部位の3次元位置の算出方法を示す図。
図5】実施形態1のX線撮影装置1の動作を示すフローチャート図。
図6】実施形態1のX線撮影装置1の表示部に表示される画面例を示す図。
図7】実施形態2のX線撮影装置1を側面から見た場合の2つのX線管の配置と移動方向を示すブロック図。
図8】実施形態3のX線撮影装置1を側面から見た場合の2つのX線管の配置と移動方向を示すブロック図。
図9】実施形態4のX線撮影装置2の主要部の構成を示すブロック図。
図10】(a)実施形態4のX線撮影装置2が取得した事前撮像3次元画像を投影して2次元投影像を算出することを示す説明図、(b)第1の2次元投影像の一例と、第1X線画像を示す図、(c)第2の2次元投影像の一例と、第2X線画像を示す図。
図11】実施形態4のX線撮影装置2の動作を示すフローチャート図。
図12】実施形態4のX線撮影装置2の表示部に表示される画面例を示す図。
図13】(a)実施形態5のX線撮影装置の第1X線管60と第2X線管110に対する被検体101の腫瘍と脊髄の位置関係を示す図、(b)および(c)実施形態5の第2X線画像を示す図。
図14】(a)実施形態7のグリッドとX線の入射方向の関係を示す図、(b)第2X線管110の光軸とグリッドの列の方向が交差している配置を示す図、(c)第2X線管110の光軸とグリッドの列の方向が平行な配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
<<実施形態1>>
実施形態のX線撮影装置1の構成について説明する。
【0015】
図1は、X線撮影装置1を側面からそれぞれ見た場合の2つのX線管の配置と移動方向を示す図である。図2は、X線撮影装置1の主要部の構成を示すブロック図である。図3は、2つのX線管へ管電流を供給するタイミングと、X線検出器からのデータ収集のタイミングを示す図である。
【0016】
図1および図2に示すように、X線撮影装置1は、被検体を搭載する天板40と、被検体にX線を照射する第1X線管60および第2X線管110とを備えている。第1X線管60は、第1支持部120によって支持されている。第2X線管110は、第2支持部130によって支持されている。第1X線管60および第2X線管110が照射したX線は、被検体101を通過する。天板40内には、被検体101を通過したX線が照射される位置にX線検出器70が配置されている。
【0017】
第1支持部120は、スタンド10によって支持された支柱50と、第1X線支持腕90とを含む。
【0018】
第2支持部130は、第1X線管60と天板40とを結ぶ軸61を中心とする円軌道111に沿って、第2X線管110を回動可能に支持する機構を含む。軸61は、第1X線管60の光軸と一致していてもよいし、一致していていなくてもよい。第1X線管60が第1支持部120との接続部において、いずれかの方向に回動可能な首振り機構を備える場合、軸61と第1X線管60の光軸とが不一致になり得る。
【0019】
第2支持部130の具体的な構造例は、図1を用いて説明する。第2支持部130は、アーム131と、支持軸132と、回転機構133とを含む。支持軸132は、第1支持部120の第1X線管60を支持する位置に設けられている。ここでは、支持軸132は、第1支持部120の第1X線支持腕90の先端の下部に設けられ、支持軸132の下端に第1X線管60が支持された構造である。
【0020】
アーム131は、基部131aと先端とを有し、基部131aは、支持軸132によって支持されている。回転機構133は、支持軸132を中心にアーム131の基部131aを回動させる機構である。例えば、回転機構133は、支持軸132の外周の周方向に沿って設けられたガイドレールと、アーム131の基部131aに設けられ、ガイドレールに係合する係合部とを備える構成にすることができる。このような構成にすることにより、アーム131を支持軸132の外周に沿って回動させることができる。アーム131の先端131bには、第2X線管110が支持されている。これにより、軸61を中心とする円軌道111に沿って、第2X線管110を第1X線管60の周囲で回転させることができる。
【0021】
また、第2支持部130には、ユーザが手動で第2X線管110を円軌道111に沿って回転させてもよいが、第2X線管110の位置を円軌道111に沿って変化させる駆動部が備えられていてもよい。例えば、回転機構133のガイドレールをラック構造にし、上記ラック構造と噛み合うピニオンを係合部に配置し、ピニオンを回転させるモータを駆動部として配置することにより、モータの回転量だけ第2X線管110を円軌道111に沿って回転移動させることができる。
【0022】
なお、第2支持部130には、第2X線管110を円軌道111に沿って回転可能な状態から固定された状態に切り替えるストッパを設けてもよい。例えば支持軸132の周囲に設けた出没可能な突起をストッパとして用いることができる。突起を突出させることにより、アーム131の回転が阻止されることにより、第2X線管110を固定することができる。
【0023】
さらに、第2支持部130は、円軌道111の半径を変化させる機構部を備える構成にすることも可能である。例えば、アーム131を伸縮可能にする伸縮機構134をアーム131内に配置する。具体的には、伸縮機構134として、スライドレール機構を用いることができる。これにより、アーム131を所望の長さに伸縮させることができ、円軌道111の半径を変化させることができる。
【0024】
また、アーム131を図1のように湾曲した形状にすることにより、第1X線管60の高さと、第2X線管110の円軌道111との高さの関係を所望の関係にすることができる。例えば、図1のように、第2X線管110の円軌道111の高さを、第1X線管60の高さとほぼ同じ高さにすることができる。
【0025】
なお、第2支持部130の構成は、上述の構造に限定されるものではなく、円軌道111にそって第2X線管110を回転させることができる構成であればよく、第2支持部130が直接、スタンド10の上に立設した構成であってもよい。
【0026】
このように、第2X線管110の円軌道111にそって第1X線管60の周りで回動可能な構造にすることにより、第2X線管110により撮影した画像において被検体101内の位置を検出したい特徴部位(例えば、カテーテル等の処置具の先端等)が、被検体101の骨等の構造物と重なって特徴部位の像が画像上で把握できない場合でも、第2X線管110を回動させることにより異なる角度から撮影することができ、特徴部位の位置を検出可能になる。
【0027】
X線撮影装置1の制御および演算を行う構成について説明する。X線撮影装置1は、図2に示すように演算制御部150を有し、演算制御部150内には、演算部140と、駆動制御部151、出力制御部152と、データ収集部154と、高電圧発生器153とが配置されている。
【0028】
演算部140は、X線画像生成部141と、特徴部位抽出部142と、3次元位置算出部143とを備えている。X線画像生成部141は、X線検出器70が、第1X線管60の照射したX線を検出した出力から第1X線画像を取得し、X線検出器70が第2X線管110の照射したX線を検出した出力から第2X線画像を取得する。特徴部位抽出部142は、第1X線画像に含まれる所定の特徴部位の像の位置と、第2X線画像に含まれる特徴部位の像の位置とを抽出する。3次元位置算出部143は、特徴部位抽出部142の抽出結果から所定の特徴部位の像の3次元位置を算出する。
【0029】
第2X線管110のX線検出器70へのX線の最大照射領域は、第1X線管60のX線検出器70へのX線の最大照射領域よりも小さくてもよい。
【0030】
また、第2X線管110のX線の最大出力は、第1X線管60のX線の最大出力よりも小さくてもよい。
【0031】
第1X線管60を支持する第1支持部120の第1X線支持腕90内には、第1X線管60の位置を、天板40の幅方向(A5方向=x方向)に移動させる第2スライド機構52が備えられている。ここでは、支持軸132および第2X線管110も、第1X線支持腕90に支持されているため、第1X線管60とともに第2X線管110も移動する。
【0032】
さらに、第1X線管60を第1X線支持腕90の先端(図1では支持軸132の下端)において、天板40の長軸(y軸)に平行な軸を中心に(A6方向)回動させる第1回動機構53が、第1X線管60と支持軸132との接続部に配置されている。
【0033】
また、本実施形態では、第1支持部120の支柱50は、スタンド10に備えられた支柱支持腕20上に搭載されている。第1支持部120の支柱50の下端と、支柱支持腕20との間には、支柱50の下端を、スタンド10に対して天板40の幅方向(A4方向=x方向)に移動させる第1スライド機構51が備えられている。第1スライド機構51は、第1支持部120と第2支持部130を一体にx方向に移動させる。
【0034】
支柱支持腕20には、第1支持部120だけでなく、天板40を支持する支持枠30が搭載されている。スタンド10には、支柱支持腕20を上下動(A1方向=z軸)させる駆動機構221が内蔵されている。これにより、第1X線管60と天板40との位置関係を保った状態で、天板40、第1X線管60および第2X線管110を昇降させることができる。
【0035】
また、スタンド10の支柱支持腕20には、第1支持部120を天板40の長軸方向(A3方向=y軸)に移動させる移動機構224が内蔵されている。これにより、第1X線管60および第2X線管110を、天板40に対し、天板40の長軸方向(y軸)に移動させることができる。
【0036】
また、スタンド10には、支柱支持腕20を支柱支持腕20の中心軸(x軸)を回転中心として回転(A9方向)させる起倒動機構223が備えられている。これにより、第1X線管60と天板40との位置関係を保った状態で、天板40を起倒動させることができる。
【0037】
さらに、支柱支持腕20には、第1支持部120との接続部に、半円型のレールに沿って、第1支持部120を支柱支持腕20に対して支柱支持腕20の中心軸(x軸)を回転中心として回動させる傾斜機構(不図示)が備えられている。これにより、第1支持部120を天板40に対して、x軸を回転中心として傾斜させることができる。
【0038】
さらに、図示していないが、天板40内には、X線検出器70を天板40に対して、天板40の長軸方向および短軸方向に移動させる駆動機構(不図示)が備えられている。
【0039】
各駆動機構51~53,133~134、221、224~224は、どのような構成であってもよい。一例としては、移動方向に沿って配置されたラックと、ラックと噛み合うピニオンと、ピニオンを回転させるモータとを備えた構成とすることができる。
【0040】
演算制御部150は、上述の各駆動機構51~53,133~134、221、223~224の動作を制御する駆動制御部151と、出力制御部152と、高電圧発生器153と、データ収集部154と、演算部140とを備えている。
【0041】
出力制御部152は、高電圧発生器153が発生した高電圧を第1X線管60と、第2X線管110に対して、図3に示したようなタイミングで、それぞれ設定された電圧値および電流値により供給し、第1X線管60と、第2X線管110からX線を照射させる。出力制御部152は、第1X線管60と第2X線管110の出力を個別に制御可能である。
【0042】
データ収集部154は、X線検出器70に2次元に配列されているX線検出素子から、図3に示したタイミングで、X線の照射を受けて出力する信号を収集する。また、データ収集部154は、出力制御部152により制御された管電流・管電圧から,各X線管からの照射開始と終了の情報を取得する。
【0043】
演算部140は、すでに説明したように、X線画像生成部141と、特徴部位抽出部142と、3次元位置算出部143とを備えている。X線画像生成部141は、X線検出器70が第1X線管の照射したX線を検出した出力をデータ収集部154から受け取って、第1X線画像を生成する(図4(b)参照)。また、X線画像生成部141は、X線検出器70が第2X線管の照射したX線を検出した出力をデータ収集部154から受け取って、第2X線画像を生成する(図4(c)参照)。
【0044】
特徴部位抽出部142は、第1X線画像に含まれる所定の特徴部位の像の位置と、第2X線画像に含まれる特徴部位の像の位置とを公知の手法により抽出する。特徴部位とは、例えば、カテーテル等の処置具の先端である。
【0045】
3次元位置算出部143は、第1X線画像に含まれる所定の特徴部位の像の位置と、第2X線画像に含まれる特徴部位の像の位置とを用いて、所定の特徴部位の3次元位置を算出する。
【0046】
具体的な特徴部位の算出方法の一例について説明する。図4(a)に示すように、第1X線管60の3次元位置(実空間座標)をS1とし、第1X線画像における特徴部位の3次元位置(実空間座標)をD1とし、S1とD1とを結ぶ直線をL1とする。また、第2X線管110の3次元位置をS2とし、第2X線画像における特徴部位の3次元位置をD2とし、S2とD2とを結ぶ直線をL2とする。D1とD2は、同一の処置具の先端等の特徴部位を投影したものである。このため、直線L1とL2とは、図4(a)のように理想的に1点で交わる。実際には、図4(d)のように、計測誤差等によって、交わらない場合もある。そこで2つの直線の距離が最も近くなる直線S1-D1上の点Q1と、直線S2-D2上の点Q2を求め、例えばその2点の中点uを、特徴部位の像の位置とすることができる。
【0047】
図4(d)に示す点Q1及び点Q2は、以下の式1に従って求めることができる。
【0048】
Q1=S1+(D1-D2*Dv)/(1-Dv*Dv)*v1
Q2=S2+(D2-D1*Dv)/(Dv*Dv-1)*v2 ・・・(1)
但し、
D1=(S2-S1)v1
D2=(S2-S1)v2
Dv=v1・v2
【0049】
上記の式により求めた点Q1及び点Q2の3次元位置から、次式2を用いて特徴部位の3次元位置uを算出することができる。
【0050】
u=(Q1+Q2)/2 ・・・(2)
つぎに、本実施形態のX線撮影装置1によって、X線透視画像下で術中に処置具(デバイス)の先端の3次元位置を検出する場合の各部の動作について図5のフローを用いて説明する。
【0051】
(ステップ600)
被検体101を天板40に搭載し、ユーザは、駆動制御部151の制御下で各駆動機構51~53,221、223~224を動作させ、デバイスを挿入するターゲット部位を撮影可能な位置に第1X線管60を配置する。また、ターゲット部位および/または使用するデバイスの事前情報に基づいて、ユーザは、機構133~134により、第2X線管110を円軌道111に沿って移動させ、脊椎等の骨や肝臓等の臓器に重ならない向きから、挿入するデバイスの先端を撮影可能な位置に、第2X線管110を配置する。この際に、アーム131の長さを伸縮機構134により調整することにより、第1X線管60と第2X線管110との距離を調整しても良い。
【0052】
(ステップ601)
操作者から操作の開始の指示があったならば、図3に示したように、第1X線管60に管電流を供給し、第1X線管60から被検体101にX線を照射し、X線撮像を開始する。
【0053】
(ステップ602)
X線画像生成部141は、第1X線管60の照射したX線によりX線画像を取得する。
【0054】
具体的には、第1X線管60から照射され、被検体101を通過したX線は、X線検出器70により検出され、X線検出器70の出力は、図3に示したタイミングでデータ収集部154により収集される。
【0055】
X線画像生成部141は、データ収集部154からX線検出器70の出力を受け取って、第1X線画像を生成する(図4(b)参照)。X線画像生成部141は、第1X線画像を表示部160に表示する。
【0056】
術者は、表示部160の第1X線画像を見ながら、処置具(カテーテル等)を被検体内に挿入する。
【0057】
(ステップ603)
特徴部位抽出部142は、ステップ602で生成された第1X線画像を画像処理し、第1X線画像内の処置具の特徴部位(例えば、処置具の先端)を抽出する。
【0058】
(ステップ604)
3次元位置算出部143は、第1X線画像内の処置具の位置に基づいて、処置具の特徴部位が投影されたX線検出器70上での位置D1(実空間座標)を算出する。
【0059】
(ステップ605)
3次元位置算出部143は、処置具特徴部位のX線検出器上での位置D1(実空間座標)と、第1X線管60の位置S1(実空間座標)の2点を結ぶ直線L1を算出する。
【0060】
(ステップ606)
図3に示したように、第1X線管60のX線照射が終了したタイミングで、第2X線管110から被検体101にX線を照射し、X線撮像を行う。
【0061】
具体的には、出力制御部152は、第1X線管60への管電流、管電圧の供給を停止し、第2X線管110に操作者により設定されている管電流、管電圧を供給し、X線の照射を所定の時間のみ行う。
【0062】
(ステップ607)
X線画像生成部141は、第2X線管110の照射したX線によりX線画像を取得する。
【0063】
具体的には、第2X線管110から照射され、被検体101を通過したX線は、X線検出器70により検出され、X線検出器70の出力は、図3に示した所定のタイミングでデータ収集部154により収集される。
【0064】
X線画像生成部141は、データ収集部154からX線検出器70の出力を受け取って、第2X線画像を生成する(図4(c)参照)。
【0065】
これにより、術者は、第1X線画像とは異なる角度から撮影した第2X線画像を表示部160で確認することができる。
【0066】
(ステップ608)
特徴部位抽出部142は、ステップ607で生成された第2X線画像を画像処理し、第2X線画像内の処置具の特徴部位(処置具の先端)を抽出する。
【0067】
(ステップ609)
3次元位置算出部143は、第2X線画像内の処置具の位置に基づいて、処置具の特徴部位が投影されたX線検出器70上での位置D2(実空間座標)を算出する。
【0068】
(ステップ610)
3次元位置算出部143は、処置具の特徴部位のX線検出器上での位置D2(実空間座標)と、第2X線管110の位置S2(実空間座標)の2点を結ぶ直線L2を算出する。
【0069】
(ステップ611)
3次元位置算出部143は2直線L1,L2の位置関係から上述の式1および式2を用いて、処置具の特徴部位の3次元位置を算出する。
【0070】
(ステップ612)
3次元位置算出部143は、算出した処置具の特徴部位の現時点の3次元位置を例えば図6の3次元画像702のように表示する。これにより、表示部160の表示画面には、第1X線画像701と、処置具の特徴部位の位置を時系列に示す3次元画像702が並べて表示される。術者は、第1X線画像701により被検体101と処置具の投影画像を把握するとともに、3次元画像702により処置具の先端の深さの時間変化を把握することができる。
【0071】
(ステップ613)
操作者から撮影継続の指示を確認し、撮影継続であれば、ステップ601に戻って第1X線管60による撮影を継続するとともに、一定の時間間隔でステップ606~610の第2X線管110による撮影を行い、処置具の特徴部位の位置を算出して表示を更新する。これにより、処置具の特徴部位の位置が一定の時間間隔で時系列に取得される。
【0072】
上述してきたように、本実施形態のX線撮影装置1は、第2X線管110を備え、第2X線管110を第1X線管60の周りの円軌道111に沿って移動させることができ、術中に第1X線管60から撮影を行いながら、処置具(デバイス)が骨や他の臓器と重ならない向きから第2X線管110によりデバイスを撮影することができる。よって、本実施形態のX線撮影装置1は、簡素な構成でありながら、リアルタイムに処置具の特徴部位の3次元位置を把握することができる。
【0073】
また、図5のフローにおいて、ステップ601、602、606、607を実施した後、第1X線画像と第2X線画像が、図4(b)、(c)のように表示部160に表示されるため、デバイス位置が算出される前に、ユーザは複数方向からデバイスを撮影した第1および第2X線画像を参照でき、処置具(デバイス)の位置や向きを把握できる。
【0074】
なお、上述の実施形態では、ステップ603~605における第1X線画像に対するデバイスの特徴部位抽出を、ステップ606、607における第2X線管110による第2X線画像の撮影の前または並行して実施しているが、ステップ603~605をステップ606、607の後に実施してもよい。
【0075】
また、第2X線管110としては、出力が小さく、照射範囲の狭い、小型なX線管を用いることができ、しかも、第2X線管110を円軌道111に沿って移動させることができるため、第2X線管110が、第1X線管60の撮影や術者の邪魔にならない。よって、第1X線管60と第2X線管110とによって術中にリアルタイムに撮影を行うことができる。
【0076】
<<実施形態2>>
実施形態2のX線撮影装置について図7を用いて説明する。
【0077】
実施形態2のX線撮影装置は、第1X線管60は、第1X線支持腕90により直接支持され、支持軸132を第1X線支持腕90の上面に立設させた構成である。アーム131の基部131aは、支持軸132の周囲を回転する。これにより、円軌道111に沿って第2X線管110を回動させることができる。
【0078】
他の構造および動作は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0079】
<<実施形態3>>
実施形態3のX線撮影装置について図8を用いて説明する。
【0080】
実施形態3のX線撮影装置は、第2X線管110を複数備えている。複数の第2X線管110は、複数のアーム131によりそれぞれ支持軸132の周囲を回転する構造である。なお、複数の第2X線管110は、第1X線管60を挟んで対称な位置に配置されていてもよいし、非対称な位置に配置されていてもよい。
【0081】
実施形態3のX線撮影装置は、複数の第2X線管110により、複数方向からターゲットとなる部位や処置具(デバイス)を撮影することができるため、より多くの情報を取得することができる。
【0082】
なお、支持軸132は、実施形態1と同様に第1X線支持腕90の下に備えられていてもよいし、実施形態2と同様に第1X線支持腕90の上に備えられていてもよい。
【0083】
他の構成および動作は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0084】
<<実施形態4>>
実施形態4のX線撮影装置2では、CT装置やMRI装置等によって予め撮像しておいた3次元画像から術者が所望する方向の2次元投影像を生成し、生成した2次元投影像上で処置具の特徴部位の位置を表示する機能を有する。
【0085】
X線撮影装置2の他の構成は、実施形態1と同様であるので、実施形態1と同じ構成および同じ動作については説明を省略する。
【0086】
図9は、実施形態4のX線撮影装置2の主要部の構成を示すブロック図である。図10(a)~(c)は、事前撮像3次元画像を投影して2次元投影画像を生成することを説明する図である。
【0087】
X線撮影装置2は、実施形態1のX線撮影装置1とほぼ同様の構成であるが、演算部140内に、3次元画像取得部144と、2次元投影像作成部145と、画像位置合わせ部146とを備えている点が実施形態1とは異なる。3次元画像取得部144は、外部の医用画像サーバ170に接続されている。医用画像サーバ170には、被検体101について予めCT装置やMRI装置によって撮影された3次元画像が格納されている。
【0088】
X線撮影装置2の動作を図11のフローを用いて説明する。
【0089】
図11のフローは、実施形態1の図5のフローに、ステップ801~808、809が加わった構成である。
【0090】
(ステップ600)
まず、実施形態1の図5のフローのステップ600により、ユーザは、第1X線管60を配置し、ターゲット部位および/または使用するデバイスの事前情報に基づいて、ユーザは、第2X線管110を円軌道111に沿って移動させ、脊椎等の骨や肝臓等の臓器に重ならない向きから、挿入するデバイスの先端を撮影可能な位置に、第2X線管110を配置する。
【0091】
(ステップ801)
つぎに、3次元画像取得部144は、医用画像サーバ170から被検体101について事前に撮像された3次元画像を取得する。
【0092】
(ステップ802)
第1X線管60から被検体101にX線を照射し、X線画像生成部141は、第1X線画像を取得する。
【0093】
(ステップ803)
2次元投影像作成部145は、図10(a)のように、ステップ802の第1X線管60と、X線検出器70との位置関係と同じ位置に、模擬的な第1X線管60と模擬的なX線検出器70を事前撮像3次元画像に対して配置し、事前撮像3次元画像を模擬的なX線検出器70に投影し、第1の2次元投影画像を算出する。
【0094】
(ステップ804)
画像位置合わせ部146は、図10(b)のように、ステップ802で取得した第1X線画像と、ステップ803で算出した第1の2次元投影画像を比較する。相違している場合、模擬的な第1X線管60と模擬的なX線検出器70に対する事前撮像3次元画像の位置を変更し、再び、第1の2次元投影画像を算出し、ステップ802で取得した第1X線画像と比較する。これをステップ802で取得した第1X線画像と、ステップ803で算出した第1の2次元投影画像が一致するまで繰り返す。
【0095】
(ステップ805)
つぎに、第2X線管110から被検体101にX線を照射し、X線画像生成部141は、第2X線画像を取得する。
【0096】
(ステップ806)
2次元投影像作成部145は、図10(a)のように、ステップ805の第2X線管110と、X線検出器70との位置関係と同じ位置に、模擬的な第2X線管110と模擬的なX線検出器70を事前撮像3次元画像に対して配置し、事前撮像3次元画像を模擬的なX線検出器70に投影し、第2の2次元投影画像を算出する。
【0097】
(ステップ807)
画像位置合わせ部146は、図10(c)のように、ステップ805で取得した第2X線画像と、ステップ806で算出した第2の2次元投影画像を比較する。相違している場合、模擬的な第2X線管110と模擬的なX線検出器70に対する事前撮像3次元画像の位置を変更し、再び、第2の2次元投影画像を算出し、ステップ805で取得した第2X線画像と比較する。これをステップ805で取得した第2X線画像と、ステップ806で算出した第2の2次元投影画像が一致するまで繰り返す。
【0098】
(ステップ808)
画像位置合わせ部146は、ステップ802で取得した第1X線画像と、ステップ803で算出した第1の2次元投影画像が一致した時の模擬的な第1X線管60と模擬的なX線検出器70に対する事前撮像3次元画像の位置から、事前撮像3次元画像の座標系を実空間座標に対応づけるパラメータを算出する(レジストレーション)。同様に、ステップ805で取得した第2X線画像と、ステップ806で算出した第2の2次元投影画像が一致した時の模擬的な第1X線管60と模擬的なX線検出器70に対する事前撮像3次元画像の位置から、事前撮像3次元画像の座標系を実空間座標に対応づけるパラメータを算出する(レジストレーション)。ここでは、第1X線画像から得たパラメータと、第2X線画像から得たパラメータとが得られるため、いずれか一方を選択するか、平均を求める等により、事前撮像3次元画像の座標系を実空間座標に対応づけるパラメータを求める。
【0099】
(ステップ601~612)
ステップ601~612は、実施形態1と同様に実行し、処置具の特徴部位の現時点の3次元位置を算出し、算出した位置を示す画像702と、第1X線画像701を表示部160に表示する。
【0100】
(ステップ809)
ステップ808において求めた事前撮像3次元画像の座標系を実空間座標に対応づけるパラメータにより、事前撮像3次元画像の実空間座標に変換した後、術者が所望する方向に2次元投影し、計算投影画像703を算出する。算出した計算投影画像703上にステップ611で算出した処置具の特徴部位の位置を重畳し、図12のように表示する。
【0101】
実施形態4のX線撮影装置2によれば、リアルタイムに認識した処置具の特徴部位の位置を、事前撮像3次元画像を術者が指定する方向に投影した2次元投影画像上に示すことができ、処置具の特徴部位の位置と被検者の解剖構造との対応の把握が容易になる。
【0102】
なお、実施形態1と同様に、図11のステップ603~605は、ステップ606、607の後に実行してもよい。
【0103】
<<実施形態5>>
上述した実施形態1および実施形態4では、ステップ600において、ユーザが、ターゲット部位および/または使用するデバイスの事前情報に基づいて、第2X線管110を円軌道111に沿って移動させ、脊椎等の骨や肝臓等の臓器に重ならない向きから、挿入するデバイスの先端を撮影可能な位置に、第2X線管110を配置する構成であった。
【0104】
実施形態5では、ユーザが第2X線管110の位置を決定するのではなく、X線撮影装置が、第2X線管110を適切な位置に移動させるか、または、適切な位置への移動をユーザに促す構成である。
【0105】
例えば、図13(a)のように、ターゲットとして腫瘍を例に記載すると、腫瘍が体軸方向に延びる脊椎に近い位置にある場合、X線撮影装置は下記の検出手段によりそのことを検出する。具体的には、特徴部位抽出部142が検出手段として機能し、第1X線管60の撮影した第1X線画像あるいは第2X線管110の撮影した第2X線画像から、腫瘍および脊椎を抽出し、抽出した腫瘍と脊椎の位置関係が重なっているかどうかをチェックする。あるいは、ユーザが、ポインティングデバイス等を用いて、第1X線画像あるいは第2X線画像上で、腫瘍および脊椎の位置を指し示す等することにより、X線撮影装置に「部位重畳」の判定対象として、腫瘍および脊椎の位置を入力する。X線撮影装置は、ユーザから入力された腫瘍と脊椎の位置関係が重なっているかどうかをチェックする。また、腫瘍位置のみをユーザがポインティングデバイス等により指定し、脊椎の位置は特徴部位抽出部142が抽出する構成としてもよい。
【0106】
X線撮影装置が、腫瘍と脊椎との位置が重なっていることを検出した場合(図13(b)参照)、第2X線管110が脊椎を見込む角度が、第1X線管60と異なるように、すなわち、被検体101の中心軸(脊椎)に対して左右方向にずれた位置に、第2X線管110を配置するようにユーザに促す表示を出す。ユーザは、この表示を元に第2X線管110の位置を調整する。あるいは、X線撮影装置が、第2X線管110の位置を調整することを、ユーザが承認する構成としてもよい。後者の場合は、X線撮影装置は、第2X線管110の位置を所定の量だけ移動させるか、あるいは第2X線画像において腫瘍と脊椎が重畳しなくなるように第2X線管110を移動させる。
【0107】
第2X線管110が、脊椎に対して左右方向に配置された場合、腫瘍と脊椎が重ならない第2X線画像が得られる(図13(c)参照)。これにより、腫瘍に向けて挿入するデバイスの先端は、脊椎に重ならず、第1X線画像および第2X線画像におけるデバイスの先端の像のS/Nを確保できる。
【0108】
<<実施形態6>>
実施形態5では、X線撮影装置が、腫瘍と脊椎との位置が重なっていることを検出する構成であるが、ユーザが第1X線画像または第2X線画像を見て、腫瘍と脊椎との位置が重なって両者が見にくい場合、予め画面上に準備しておいた「重畳解消ボタン」を押す構成としてもよい。
【0109】
重畳解消ボタンがユーザによって押された場合、X線撮影装置は、第2X線管110の位置を所定の量だけ移動させる。
【0110】
これにより、腫瘍と脊椎が重ならない第2X線画像を得ることができる。
【0111】
<<実施形態7>>
手技中に処置具(デバイス)が、術者により挿入され移動すると、第2X線管110による画像(第2のX線画像)の外にデバイスが出てしまう可能性がある。そこで、特徴部位抽出部142がデバイスの特徴部位を抽出した結果、その位置が、第2X線画像の例えば視野端から10%以内の領域にあった場合、演算部140は、以下のような対応をしても良い。
【0112】
例えば、演算部140が、ユーザに、第2X線管110の位置の移動を促す表示を出し、ユーザが第2X線管110の位置を円軌道111に沿って移動させることにより、第2X線画像の視野内に特徴部位が入るようにする。または、演算部140が、駆動制御部151に指示して、第2X線管110の位置を円軌道111に沿って所定量だけ移動させることにより、第2X線画像の視野内に特徴部位が入るようにする。後者の場合、演算部140が、第2X線管110の位置を移動させる前に、ユーザに第2X線管110の位置を変更して良いかを確認しても良い。
【0113】
なお、演算部140は、円軌道111に沿って第2X線管110を移動させるだけでなく、円軌道111に沿った移動と、アーム131を伸縮機構134により伸縮させることにより、第2X線管110の位置を変更してもよい。
【0114】
すなわち、実施形態7では、演算部140が第2X線画像に含まれる特徴部位の位置に応じて、第2X線管110を移動させるよう回転機構133を駆動させる等することにより、第2X線画像の視野を特徴部位の移動に追従させることができる。
【0115】
<<実施形態8>>
実施形態8のX線撮影装置は、実施形態1~4と同様の構成であるが、X線検出器の上に配置された複数の凸条を平行に並べたグリッドと、グリッドを主平面内で回転させる回転駆動部とがさらに備えられている。回転駆動部は、第2X線管の円軌道上の位置に応じてグリッドを回転させる。
【0116】
グリッドは、X線検出器に散乱線を減らす作用を有するが、第2X線管110の円軌道111上の位置によっては、X線検出器のS/Nが低下する。
【0117】
具体的には、図14(a)および図14(b)に示すように、第2X線管110の光軸(X線照射方向)がグリッドの凸条の長手方向に交差する向きである場合、グリッドの影がX線検出器70上に顕著に生じ、X線検出器70の出力のS/Nが低下する。そこで、図14(c)のように、第2X線管110の光軸がグリッドの凸条の長手方向に平行になるように、グリッドを回転させることにより、S/Nを維持することができる。
【0118】
具体的には、回転駆動部は、天板40内にグリッドを主平面内において回転させる機構部を含む。回転駆動部は、第2X線管110の回動に同期してグリッドを回転させてもよい。
【0119】
また、回転駆動部は、第2X線管110の位置が固定されたこと(位置情報の変動が無くなったこと)を駆動制御部151を介して検出した後、第2X線管110の位置情報に基づいて、グリッドを自動で回転させてもよい。
【0120】
また、ユーザが、第2X線管110を手動で回転させた後、グリッドを手動で回転させてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 X線撮影装置
2 X線撮影装置
10 スタンド
20 支柱支持腕
30 支持枠
40 天板
50 支柱
51 第1スライド機構
52 第2スライド機構
53 第1回動機構
60 第1X線管
61 軸
70 X線検出器
90 第1X線支持腕
101 被検体
110 第2X線管
111 円軌道
120 第1支持部
130 第2支持部
131 アーム
132 支持軸
133 回転機構
134 伸縮機構
140 演算部
141 X線画像生成部
142 特徴部位抽出部
143 3次元位置算出部
144 3次元画像取得部
145 2次元投影像作成部
146 画像位置合わせ部
150 演算制御部
151 駆動制御部
152 出力制御部
153 高電圧発生器
154 データ収集部
160 表示部
170 医用画像サーバ
223 起倒動機構
224 移動機構
701 第1X線画像
702 3次元画像
703 計算投影画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14