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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104086
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】車両用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20240726BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240726BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240726BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240726BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240726BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240726BHJP
   F28F 9/013 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6568
B60K11/04 G
F28F9/013 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008124
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百田 和俊
(72)【発明者】
【氏名】栗原 将好
【テーマコード(参考)】
3D038
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】複数のプレートをろう付けし、さらにパイプ部材をプレートにろう付けして熱交換器を構成する場合に材料コストを低減する。
【解決手段】バッテリの外面に接触する金属製の第1流路構成プレート10と、バッテリと反対側に接合された金属製の第2流路構成プレート20とがろう付けされている。第1流路構成プレート10と第2流路構成プレート20との間に、液状の熱交換媒体が流通可能な流路が設けられている。第1流路構成プレート10には、熱交換媒体の給排用のパイプ部材30の基端側部分が挿通される挿通孔11aが形成されている。パイプ部材30の基端側部分における流路内に位置する部分には、第1流路構成プレート10の内面にろう付けされたろう付け部が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された走行用モータへ電力を供給するバッテリの温度調整に用いられる車両用熱交換器であって、
前記バッテリの外面に接触する金属製の第1流路構成プレートと、当該第1流路構成プレートの前記バッテリと反対側に配置された金属製の第2流路構成プレートとがろう付けされ、
前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとの間に、液状の熱交換媒体が流通可能な流路が設けられ、
前記第1流路構成プレートには、熱交換媒体の給排用のパイプ部材の基端側部分が挿通される挿通孔が形成され、
前記パイプ部材の基端側部分における前記流路内側の部分には、前記第1流路構成プレートの内面にろう付けされたろう付け部が設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートにおける前記流路に対応する部分には、平面部が設けられ、
前記挿通孔は前記平面部を貫通するように形成され、
前記ろう付け部は、前記平面部の内面にろう付けされていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートは、前記第2流路構成プレート側の面にのみ犠牲層が設けられた板材で構成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第2流路構成プレートは、前記第1流路構成プレート側の面にのみ犠牲層が設けられた板材で構成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートは、前記バッテリの底面に接触するように配置されるとともに、前記底面に沿った所定方向に長い形状とされ、
前記第2流路構成プレートは、前記第1流路構成プレートの下に配置され、前記所定方向に延びるように形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用熱交換器において、
前記パイプ部材は、前記第1流路構成プレートの長手方向一側に設けられ、熱交換媒体を前記流路に供給するための第1のパイプ部材と、前記第1流路構成プレートの長手方向他側に設けられ、前記流路内の熱交換媒体を排出するための第2のパイプ部材とを含んでおり、
前記第1流路構成プレートの長手方向一側には、前記第1のパイプ部材の基端側部分が挿通される第1の挿通孔が形成され、
前記第1流路構成プレートの長手方向他側には、前記第2のパイプ部材の基端側部分が挿通される第2の挿通孔が形成され、
前記第1のパイプ部材の基端側部分における前記流路内に位置する部分には、前記第1流路構成プレートの内面にろう付けされた第1のろう付け部が設けられ、
前記第2のパイプ部材の基端側部分における前記流路内に位置する部分には、前記第1流路構成プレートの内面にろう付けされた第2のろう付け部が設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記ろう付け部は、前記パイプ部材の外面から径方向外方へ突出して周方向に延びる突出部で構成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項8】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートには、前記パイプ部材を当該第1流路構成プレートに仮固定する仮固定部が設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用熱交換器において、
前記仮固定部は、前記パイプ部材にかしめ固定されるかしめ部で構成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートにおける前記かしめ部よりも前記挿通孔の径方向外側には、かしめ用の工具が差し込まれる差込孔が形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項11】
請求項10に記載の車両用熱交換器において、
前記ろう付け部は、前記差込孔を前記流路内側から閉塞するように配置されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるバッテリの温度調整を行う車両用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車には、走行用モータに電力を供給する高電圧バッテリが補機用バッテリとは別に搭載されている。高電圧バッテリは、充放電時に発生する熱で高温状態になると電力供給が困難になったり、寿命が短くなったりするので、熱交換器によって冷却するようにしている。また、高電圧バッテリが極低温状態になると充放電性能が極端に低下するため、熱交換器によって加温することも行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、液状媒体によってバッテリモジュールを冷却する冷却機構が開示されている。この冷却機構には、隔壁部とカバープレートとによって構成された冷媒流路が設けられており、液状媒体が冷媒流路を流通する間に液状媒体とバッテリモジュールとが熱交換し、バッテリモジュールの冷却が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-125346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリの冷却または加温時には、熱交換媒体との間で熱交換させる熱交換器が必要になる。熱交換器には熱交換媒体が流通可能な流路を形成する必要があることから、特許文献1のように複数の部材を組み合わせて熱交換器を構成しなければならず、さらに熱交換器に熱交換媒体を給排するためのパイプ部材を設けなければならない。
【0006】
ここで、2枚の金属製プレートとして、例えば第1プレート及び第2プレートを互いにろう付けすることにより、内部に流路を有する熱交換器を構成することが考えられる。ろう付け面には犠牲層が必要になるので、第1プレートにおける第2プレート側の面(第1プレートの内面)と、第2プレートにおける第1プレート側の面(第2プレートの内面)には、それぞれ犠牲層が必要になる。
【0007】
この構成を前提としてパイプ部材を設ける場合、パイプ部材を第1プレートに形成された挿通孔に挿通した状態で、当該第1プレートの外面にろう付けすれば、第1プレート及び第2プレートのろう付けの際に同時にパイプ部材を第1プレートにろう付けできるので熱交換器の製造効率が良くなる。
【0008】
ところが、パイプ部材を第1プレートの外面にろう付けしようとすると、第1プレートの外面にも犠牲層を設ける必要がある。つまり、両面に犠牲層を有する第1プレートを用意しなければならないので、材料コストが高くなるという問題がある。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、複数のプレートをろう付けし、さらにパイプ部材をプレートにろう付けして熱交換器を構成する場合に材料コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、車両に搭載された走行用モータへ電力を供給するバッテリの温度調整に用いられる車両用熱交換器を前提とすることができる。前記バッテリの外面に接触する金属製の第1流路構成プレートと、当該第1流路構成プレートの前記バッテリと反対側に配置された金属製の第2流路構成プレートとがろう付けされている。前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとの間に、液状の熱交換媒体が流通可能な流路が設けられている。前記第1流路構成プレートには、熱交換媒体の給排用のパイプ部材の基端側部分が挿通される挿通孔が形成されている。前記パイプ部材の基端側部分における前記流路内側の部分には、前記第1流路構成プレートの内面にろう付けされたろう付け部が設けられているという構成である。
【0011】
この構成によれば、第1流路構成プレートと第2流路構成プレートをろう付けする際には、第1流路構成プレートにおける第2流路構成プレート側の面(第1流路構成プレートの内面)と、第2流路構成プレートにおける第1流路構成プレート側の面(第2流路構成プレートの内面)とにそれぞれ犠牲層を設けておき、これら第1流路構成プレート及び第2流路構成プレートをろう付けすることができる。犠牲層を有するプレートは、例えばクラッド材で構成することができる。
【0012】
パイプ部材を第1流路構成プレートにろう付けする際には、パイプ部材のろう付け部が流路内側の部分に設けられていて、第1流路構成プレートの内面にろう付けされるので、第1流路構成プレートの外面に犠牲層を設ける必要がない。よって、片面に犠牲層を有する第1流路構成プレート及び第2流路構成プレートを用意すれば済み、両面に犠牲層を有するプレートを用いる場合に比べて材料コストが安価になる。
【0013】
前記第1流路構成プレートにおける前記流路に対応する部分には、平面部が設けられていてもよい。この場合、前記挿通孔は前記平面部を貫通するように形成され、前記ろう付け部は、前記平面部の内面にろう付けすることができる。平面部は、曲面部に比べて形状が単純で成形精度を高くすることができ、この部分にろう付け部をろう付けすることで、ろう付け性が良好になる。
【0014】
前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとは、互いにろう付けされる側に位置する面にのみ犠牲層が設けられた板材で構成されていてもよい。これにより、第1流路構成プレート及び第2流路構成プレートの材料コストを確実に低減できる。
【0015】
前記第1流路構成プレートは、前記バッテリの底面に接触するように配置されるとともに、前記底面に沿った所定方向に長い形状とされていてもよい。この場合、前記第2流路構成プレートは、前記第1流路構成プレートの下に配置され、前記所定方向に延びるように形成することができる。これにより、バッテリの底面の広い範囲の温度調節が可能になる。
【0016】
前記パイプ部材は、前記第1流路構成プレートの長手方向一側に設けられ、熱交換媒体を前記流路に供給するための第1のパイプ部材と、前記第1流路構成プレートの長手方向他側に設けられ、前記流路内の熱交換媒体を排出するための第2のパイプ部材とを含んでいてもよい。この場合、前記第1流路構成プレートの長手方向一側には、前記第1のパイプ部材の基端側部分が挿通される第1の挿通孔を形成することができ、また、前記第1流路構成プレートの長手方向他側には、前記第2のパイプ部材の基端側部分が挿通される第2の挿通孔を形成することができる。さらに、前記第1のパイプ部材の基端側部分における前記流路内に位置する部分には、前記第1流路構成プレートの内面にろう付けされた第1のろう付け部を設けることができ、前記第2のパイプ部材の基端側部分における前記流路内に位置する部分には、前記第1流路構成プレートの内面にろう付けされた第2のろう付け部を設けることができる。これにより、熱交換媒体を給排するための複数のパイプ部材を同時にろう付けできるので、製造工数を削減できる。
【0017】
前記ろう付け部は、前記パイプ部材の外面から径方向外方へ突出して周方向に延びる突出部で構成されていてもよい。突出部によってパイプ部材の外面と挿通孔の内面との間を閉塞して高いシール性を確保できる。
【0018】
前記第1流路構成プレートには、前記パイプ部材を当該第1流路構成プレートに仮固定する仮固定部が設けられていてもよい。この構成によれば、パイプ部材を第1流路構成プレートにろう付けするまでの間にパイプ部材の脱落や位置ずれが防止されるので、パイプ部材を第1流路構成プレートの所定位置に精度良くろう付けできる。
【0019】
前記仮固定部は、前記パイプ部材にかしめ固定されるかしめ部で構成されていてもよい。これにより、パイプ部材を第1流路構成プレートにしっかりと仮固定できる。この場合、前記第1流路構成プレートにおける前記かしめ部よりも前記挿通孔の径方向外側には、かしめ用の工具が差し込まれる差込孔が形成されていてもよい。これにより、かしめ固定作業が容易に行えるようになる。
【0020】
また、前記パイプ部材の前記ろう付け部は、前記差込孔を前記流路内側から閉塞するように配置されていてもよい。これにより、かしめ固定作業が容易に行えるようにしながら、流路内の熱交換媒体が差込孔から漏出するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、第1流路構成プレート及び第2流路構成プレートをろう付けして流路を構成し、給排用のパイプ部材を第1流路構成プレートの挿通孔に挿通した状態で当該第1流路構成プレートの内面にろう付けするようにしたので、片面に犠牲層を有する流路構成プレートを用いて熱交換器を構成でき、材料コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態1に係る車両用熱交換器を上方から見た斜視図である。
図2】バッテリ用温度調整装置の概略構造を示す図である。
図3図1におけるIII-III線断面図である。
図4】車両用熱交換器の入口側パイプ部材近傍を上方から見た斜視図である。
図5】車両用熱交換器の入口側パイプ部材近傍の平面図である。
図6図5におけるVI-VI線断面図である。
図7図5におけるVI-VI線に相当する分解図である。
図8】かしめ用の工具を差込孔に差し込む前の図6相当図である。
図9】かしめ用の工具を差込孔に差し込んだ後の図6相当図である。
図10】本発明の実施形態2に係る図5相当図である。
図11】実施形態2に係り、かしめ前の状態を示すXI-XI線断面図である。
図12】実施形態2に係り、かしめ後の状態を示すXI-XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用熱交換器1を上方から見た斜視図であり、図2は、車両用熱交換器1を備えたバッテリ用温度調整装置100の概略構造を示す図である。バッテリ用温度調整装置100は、例えば自動車等の車両に搭載されているバッテリBの温度調整に用いられるものである。バッテリBは、自動車に搭載された走行用モータ(図示せず)へ電力を供給するバッテリであり、一般の補機用バッテリに比べて高電圧かつ大容量に構成されている。バッテリBは、例えば自動車のフロアパネルの下の車外に配設されている。バッテリBの底面は、水平方向に延びるように形成されている。このバッテリBは、複数のセルを有するバッテリユニットで構成されていてもよい。バッテリBの種類は特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオンバッテリ等を挙げることができる。尚、バッテリBは、例えば車室内や荷室等に配設されていてもよい。
【0025】
自動車は、内燃機関を搭載しない電気自動車であってもよいし、内燃機関と走行用モータの両方を搭載するハイブリッド自動車であってもよい。ハイブリッド自動車の場合、プラグインハイブリッド自動車であってもよい。電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車の場合、外部の充電設備から充電することや、走行用モータからの回生によって充電することができる。
【0026】
バッテリ用温度調整装置100は、液状の熱交換媒体を用いてバッテリBの温度調整を行うように構成されている。熱交換媒体としては、例えばクーラント液等を挙げることができるが、これに限られるものではなく、流動性を有する熱交換媒体であればよい。バッテリ用温度調整装置100は、車両用熱交換器1の他に、熱交換媒体の温度調整を行う温度調整部101と、熱交換媒体を送るポンプ102と、入口側配管103と、出口側配管104と、中間配管105とを有している。ポンプ102の吐出側が入口側配管103を介して車両用熱交換器1の入口側に接続されている。また、車両用熱交換器1の出口側が出口側配管104を介して温度調整部101に接続されている。温度調整部101とポンプ102の吸入側とは、中間配管105を介して接続されている。これにより、車両用熱交換器1、温度調整部101及びポンプ102が接続され、熱交換媒体の循環が可能な循環経路が構成されている。
【0027】
温度調整部101は、例えば外部空気と熱交換媒体とを熱交換させて熱交換媒体を冷却する熱交換器で構成されていてもよいし、熱交換媒体を加温するヒータ等で構成されていてもよいし、熱交換媒体の冷却と加温の両方が行える装置等で構成されていてもよい。また、図示しないが、熱交換媒体を冷却するための温度調整部と、熱交換媒体を加温するための温度調整部とが別々に設けられていてもよい。バッテリBを冷却する場合には、温度調整部101によって熱交換媒体を冷却し、一方、バッテリBを加温する場合には、温度調整部101によって熱交換媒体を加温する。温度調整部101は、図示しない制御部によって制御される。制御部は、バッテリBの温度状態、バッテリBの充放電状態を検出し、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、温度調整部101を制御する。
【0028】
ポンプ102も制御部によって制御される。制御部は、バッテリBの温度状態、バッテリBの充放電状態を検出し、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、ポンプ102を制御する。
【0029】
車両用熱交換器1は、バッテリBと熱交換媒体との間で熱交換させ、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、当該バッテリBの温度調整に用いられるものである。車両用熱交換器1をバッテリBの下に配設した場合には、バッテリBを下から温度調整することができるが、これに限らず、車両用熱交換器1をバッテリBの上に配設してもよいし、バッテリBの側方に配設してもよい。また、バッテリBを上下に挟むように複数の車両用熱交換器1を配設してもよい。また、複数の車両用熱交換器1を直列または並列に接続して使用してもよい。「直列」とは、熱交換媒体の流れ方向に複数の車両用熱交換器1を配列して接続することであり、「並列」とは、熱交換媒体が同時に複数の車両用熱交換器1に流入するように、車両用熱交換器1を配列して接続することである。
【0030】
本実施形態では、バッテリBの下に車両用熱交換器1が配設されている場合について説明する。車両用熱交換器1は、当該車両用熱交換器1の上側に配置される上側流路構成プレート(第1流路構成プレート)10と、当該車両用熱交換器1の下側に配置される下側流路構成プレート(第2流路構成プレート)20とを備えている。バッテリBの下に車両用熱交換器1が配設されるので、上側流路構成プレート10がバッテリBの底面(外面)に接触する接触部材であり、一方、下側流路構成プレート20が上側流路構成プレート10の下に配置され、当該上側流路構成プレート10の下側(バッテリBと反対側)に接合された部材である。
【0031】
また、車両用熱交換器1には、ポンプ102から送給された熱交換媒体を当該車両用熱交換器1の流路Rに供給するための入口側パイプ部材(第1のパイプ部材)30と、流路R内の熱交換媒体を車両用熱交換器1の外部へ排出するための出口側パイプ部材(第2のパイプ部材)40とが設けられている。この実施形態では、入口側パイプ部材30が設けられている側を正面側とし、出口側パイプ部材40が設けられている側を背面側とする。説明の便宜を図るために、正面側を車両前側とし、背面側を車両後側とし、さらに、車両前側に向かって見た時に右となる側を右側とし、左になる側を左側とする。車両の左右方向は幅方向と一致している。この方向の定義は、車両用熱交換器1を自動車に搭載した時の方向を限定するものではなく、前後方向が反対になるように車両に搭載してもよいし、左右方向が車両前後方向に向くように搭載してもよい。
【0032】
図2に示すように、車両用熱交換器1は全体として、バッテリBの底面に沿うように前後方向(所定方向)に長い矩形状をなしており、従って、上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20は共に前後方向に延びるように形成される。また、前後方向に長い形状であることから、車両用熱交換器1の前後方向の寸法は、左右方向の寸法よりも短くなる。尚、車両用熱交換器1は左右方向に長い形状であってもよいし、前後方向の寸法と左右方向の寸法とが同じ形状であってもよい。車両用熱交換器1の前側を長手方向一側とし、車両用熱交換器1の後側を長手方向他側とする。
【0033】
図3に示すように、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との間には、熱交換媒体が流通可能な流路Rが形成されている。流路Rは、車両用熱交換器1の前後方向に延びている。すなわち、上側流路構成プレート10は、上方へ膨出した上側膨出部10aと、上側膨出部10aの周縁部から流路Rの外方へ向けて水平方向に延出した上側延出板部10bとを有している。上側膨出部10a及び上側延出板部10bは、1枚のアルミニウム合金製の板材で構成されている。上側膨出部10a及び上側延出板部10bを成形する際には、例えばプレス成形法を用いることができる。上側流路構成プレート10は、下側流路構成プレート20側の面(下面)にのみ犠牲層10cが設けられた板材、即ちろう材がクラッドされた板材(クラッド材ともいう)で構成されている。
【0034】
下側流路構成プレート20は、下方へ膨出した下側膨出部20aと、下側膨出部20aの周縁部から流路Rの外方へ向けて水平方向に延出した下側延出板部20bとを有している。下側膨出部20a及び下側延出板部20bは、上側流路構成プレート10と同様に、1枚のアルミニウム合金製の板材で構成されている。下側流路構成プレート20は、上側流路構成プレート10側の面(上面)にのみ犠牲層20cが設けられた板材、即ちろう材がクラッドされた板材で構成されている。上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20の厚みは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
上側膨出部10aは、流路Rの上側の壁部を構成しており、流路Rに対応する部分となっている。流路Rに対応する部分とは、流路Rを区画形成している部分である。この上側膨出部10aの上面にバッテリBの底面が接触するようになっている。一方、下側膨出部20aは、上側膨出部10aの真下に位置するように形成されており、流路Rの下側の壁部を構成する部分である。上側膨出部10aと下側膨出部20aの膨出量により、流路Rの上下方向の寸法が設定され、また、上側膨出部10aと下側膨出部20aの左右方向の寸法により、流路Rの左右方向(幅方向)の寸法が設定される。さらに、上側膨出部10aと下側膨出部20aの前後方向の寸法により、流路Rの前後方向(長さ方向)の寸法が設定される。この実施形態では、流路Rの上下方向の寸法が幅方向の寸法よりも短く設定されており、従って水平方向に扁平な断面形状を持った流路Rとなっている。
【0036】
流路Rを流通する熱交換媒体は、上側膨出部10aを介してバッテリBとの間で熱交換する。このとき、上側膨出部10aがアルミニウム合金製とされていて、熱伝導率の高い材料で構成されているので、伝熱効率を向上させることができる。
【0037】
上側膨出部10a及び下側膨出部20aの前側部分は左右方向中間部が左右両側に比べて前方へ突出するように形成されている。また、上側膨出部10a及び下側膨出部20aの後側部分は左右方向中間部が左右両側に比べて後方へ突出するように形成されている。これにより、流路Rの前側部分は、左右方向中間部が前方へ突出するような形状になり、また、流路Rの後側部分は、左右方向中間部が後方へ突出するような形状になる。
【0038】
上側延出板部10bは、上側膨出部10aの周縁部の全周に亘って環状に形成されており、略平坦である。下側延出板部20bは、下側膨出部20aの周縁部の全周に亘って環状に形成されており、上側延出板部10bと同様に略平坦である。上側延出板部10bの真下に下側延出板部20bが配置され、平面視で上側延出板部10bと下側延出板部20bとが重複するようになっている。
【0039】
上側延出板部10b及び下側延出板部20bはろう付け代を形成している部分であり、上側延出板部10bの下面と下側延出板部20bの上面とが全周に亘ってろう付けされている。上側延出板部10b及び下側延出板部20bがろう付けされることにより、上側延出板部10bと下側延出板部20bとの間のシール性が確保される。
【0040】
図4図7に示すように、上側流路構成プレート10の上側膨出部10aの前側部分には、水平に延びる円形の前側平面部11が設けられている。前側平面部11は、上側膨出部10aの前側部分から一段高くなるように形成されている。これに伴い、前側平面部11の周縁部には、径方向外方へ行くほど下に位置するように傾斜した前側傾斜面部12が形成されることになる。
【0041】
図6及び図7に示すように、下側流路構成プレート20の下側膨出部20aの前側部分には、水平に延びる円形の前側平面部21が設けられている。前側平面部21は、下側膨出部20aの前側部分から一段低くなるように形成されている。これに伴い、前側平面部21の周縁部には、径方向外方へ行くほど上に位置するように傾斜した前側傾斜面部22が形成されることになる。下側流路構成プレート20の前側平面部21と、上側流路構成プレート10の前側平面部11とは平面視で重複するように配置されている。
【0042】
前側平面部11には、入口側パイプ部材30の基端側部分が挿通される前側挿通孔(第1の挿通孔)11aが形成されている。前側挿通孔11aは、円形状とされており、前側平面部11を厚み方向(上下方向)に貫通している。前側平面部11が平面形状であることから、前側平面部11の下面(内面)も平面形状となっており、前側挿通孔11aの周りの面も平面形状となっている。
【0043】
入口側パイプ部材30は、アルミニウム合金製の円筒状部材で構成されており、軸線が上下方向に延びる姿勢とされて上側流路構成プレート10に取り付けられている。入口側パイプ部材30の基端側部分における流路R内側に位置する部分には、上側流路構成プレート10の内面、具体的には前側平面部11の内面にろう付けされたろう付け部31(第1のろう付け部)が設けられている。ろう付け部31は、入口側パイプ部材30の外面から径方向外方へ突出して周方向に連続して延びる環状の突出部で構成されている。この実施形態では、入口側パイプ部材30の基端部にろう付け部31が設けられているが、これに限らず、入口側パイプ部材30の基端部から先端側へ離れた箇所にろう付け部31が設けられていてもよい。
【0044】
入口側パイプ部材30の外面には、周方向に連続して延びる環状の溝部32も形成されている。溝部32は、ろう付け部31よりも入口側パイプ部材30の先端側に近い部分に位置しており、ろう付け部31に隣接している。ろう付け部31を前側平面部11の内面に接触させた状態で、溝部32の高さと前側挿通孔11aの内面とは同じ高さとなる。
【0045】
上側流路構成プレート10の前側平面部11には、入口側パイプ部材30を当該上側流路構成プレート10に仮固定する複数のかしめ部11bが設けられている。この実施形態では、3つのかしめ部11bが前側挿通孔11aの周方向に間隔をあけて配置されている。かしめ部11bは、前側挿通孔11aの周縁部の一部で構成されており、従って、ろう付け部31を前側平面部11の内面に接触させると、かしめ部11bが入口側パイプ部材30の溝部32と同じ高さに配置される。
【0046】
上側流路構成プレート10におけるかしめ部11bよりも前側挿通孔11aの径方向外側には、かしめ用の工具200(図8及び図9に示す)が差し込まれる差込孔11cが形成されている。差込孔11cの数は、かしめ部11bの数と同じであり、前側挿通孔11aの周方向について差込孔11cとかしめ部11bとは同じ位置に配置されている。
【0047】
図9に示すように、かしめ用の工具200を各差込孔11cに差し込んでから前側挿通孔11aの径方向内方へ向けて力を作用させると、各かしめ部11bが前側挿通孔11aの径方向内方へ移動するように塑性変形する。このとき、各かしめ部11bと入口側パイプ部材30の溝部32とが同じ高さに配置されているので、各かしめ部11bが溝部32に入り込んで入口側パイプ部材30にかしめ固定される。これにより、入口側パイプ部材30が上側流路構成プレート10にろう付けされる前の段階で仮固定される。つまり、各かしめ部11bは、入口側パイプ部材30を上側流路構成プレート10に仮固定する仮固定部である。
【0048】
入口側パイプ部材30のろう付け部31の径方向の突出量は、当該ろう付け部31が差込孔11cの真下に位置して差込孔11cの閉塞可能なように設定されている。すなわち、入口側パイプ部材30が上側流路構成プレート10に仮固定された状態で、ろう付け部31が差込孔11cを流路R内側から閉塞するように配置される。
【0049】
尚、差込孔11cとかしめ部11bの数は、3つに限られるものではなく、2つ以下または4つ以上の任意の数に設定できる。差込孔11cとかしめ部11bが1つであってもよい。また、入口側パイプ部材30に溝部32を形成することなく、入口側パイプ部材30の外面にかしめ部11bを接触させてもよい。
【0050】
図1に示すように、上側流路構成プレート10の上側膨出部10aの後側部分には、前側平面部11と同様に後側平面部13と後側傾斜面部14が設けられている。図示しないが、下側流路構成プレート20の下側膨出部20aの後側部分には、前側平面部21と同様な後側平面部と後側傾斜面部が形成されている。
【0051】
後側平面部13には、出口側パイプ部材40の基端側部分が挿通される後側挿通孔(第2の挿通孔)13aが形成されている。後側挿通孔13aは前側挿通孔11aと同様なものである。
【0052】
出口側パイプ部材40は入口側パイプ部材30と同様に構成されており、図示しないが、ろう付け部(第2のろう付け部)と溝部とが設けられている。上側流路構成プレート10の後側平面部13には、図示しないが、出口側パイプ部材40を当該上側流路構成プレート10に仮固定する複数のかしめ部と、かしめ用の工具が差し込まれる差込孔が前側と同様に設けられている。
【0053】
入口側パイプ部材30と出口側パイプ部材40は、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20のろう付け時に同時にろう付けできる。すなわち、入口側パイプ部材30と出口側パイプ部材40を上側流路構成プレート10に仮固定した後、上側流路構成プレート10を下側流路構成プレート20に重ねた状態で保持する。この状態で、上側延出板部10bと下側延出板部20bとが上下方向に重なる。
【0054】
その後、入口側パイプ部材30と出口側パイプ部材40が仮固定された上側流路構成プレート10と、下側流路構成プレート20とをろう付け用の炉内に搬入してろう材の溶融温度まで加熱し、炉内から搬出する。ろう材が固化することで、入口側パイプ部材30と出口側パイプ部材40が上側流路構成プレート10にろう付けされるとともに、上側延出板部10bと下側延出板部20bとがろう付けされた車両用熱交換器1が得られる。尚、入口側パイプ部材30と出口側パイプ部材40を上側流路構成プレート10にろう付けした後に、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20とをろう付けしてもよい。
【0055】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態では、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20をろう付けする際に、上側流路構成プレート10の内面と、下側流路構成プレート20の内面とにそれぞれ犠牲層10c、20cを設けておき、これら上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20をろう付けすることができる。
【0056】
入口側パイプ部材30を上側流路構成プレート10にろう付けする際には、入口側パイプ部材30のろう付け部31が流路R内側に位置していて、上側流路構成プレート10の内面にろう付けされるので、上側流路構成プレート10の外面に犠牲層を設ける必要がない。よって、片面に犠牲層を有する上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20を用意すれば済み、両面に犠牲層を有するプレートに比べて材料コストが安価になる。出口側パイプ部材40をろう付けする際も同様である。
【0057】
また、入口側パイプ部材30及び出口側パイプ部材40のろう付け前に、入口側パイプ部材30及び出口側パイプ部材40を上側流路構成プレート10に仮固定しておくことができるので、ろう付け前に入口側パイプ部材30及び出口側パイプ部材40の脱落や位置ずれを防止できる。これにより、入口側パイプ部材30及び出口側パイプ部材40を上側流路構成プレート10の所定位置に精度良くろう付けできる。
【0058】
(実施形態2)
図10図12は、本発明の実施形態2に係るものであり、実施形態2では入口側パイプ部材30及び出口側パイプ部材40の上側流路構成プレート10への仮固定構造が実施形態1のものとは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0059】
実施形態2の入口側パイプ部材30には、流路Rの外側に位置する部分にフランジ部33が設けられている。また、前側平面部11における前側挿通孔11aの周囲には上方へ向けて突出するようにバーリング加工された円環状のバーリング加工部11eが設けられている。入口側パイプ部材30の基端側部分は、バーリング加工部11eに挿通される。バーリング加工部11eに挿通された状態で、フランジ部33の下面にバーリング加工部11eの上端部が当接して挿入方向の位置決めがなされる。
【0060】
図示しない器具を用いて入口側パイプ部材30の基端部34を当該パイプ部材30の内方から拡径させることで、入口側パイプ部材30を上側流路構成プレート10に仮固定することができる。この状態でろう付け用の炉内に搬送することにより、入口側パイプ部材30の基端側部分における流路R内側に位置する部分が、上側流路構成プレート10のバーリング加工部11eの内面にろう付けされる。つまり、実施形態2では、入口側パイプ部材30の基端側部分の外面がろう付け部となる。よって、実施形態2のものも実施形態1と同様な作用効果を奏することができ、材料コストを低減できる。
【0061】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、1つの車両用熱交換器1に実施形態1と実施形態2を適用することもできる。また、入口側パイプ部材30及び出口側パイプ部材40の突出方向は上方向に限られるものではなく、下方向であってもよい。この場合、上記車両用熱交換器1の上下反転させた状態で使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明に係る車両用熱交換器は、例えば車両に搭載されるバッテリの温度調整を行う場合に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用熱交換器
10 上側流路構成プレート(第1流路構成プレート)
11 前側平面部
11a 前側挿通孔
11b かしめ部
11c 差込孔
20 下側流路構成プレート(第2流路構成プレート)
30 入口側パイプ部
31 ろう付け部
40 出口側パイプ部
200 かしめ用の工具
B バッテリ
R 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12