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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104088
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ガス濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/024 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
G01N29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008129
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】507294395
【氏名又は名称】株式会社ホクシンエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】田中 義克
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 洋
(72)【発明者】
【氏名】大友 勇人
(72)【発明者】
【氏名】加賀屋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】牧野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】藤肥 いずみ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 育美
(72)【発明者】
【氏名】宇野 宏志
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅史
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA01
2G047BC02
2G047BC15
2G047EA10
2G047GG30
2G047GG46
(57)【要約】
【課題】温度、湿度、気圧等の値に基づく補正を行うことなく、ガス濃度を精度良く測定する。
【解決手段】ガス濃度測定装置1は、第1流路11、第1流入口12及び第1流出口13を有し、第1流路11の両端部14a、14bに一対の第1超音波センサ15a、15bが配置される第1測定管10と、第2流路21、第2流入口22及び第2流出口23を有し、第2流路21の両端部24a、24bに一対の第2超音波センサ25a、25bが配置される第2測定管20と、第1流出口13と第2流入口22とを連通する第3流路31及び第3流入口32を有する連通管30と、第1超音波センサ15a、15b及び第2超音波センサ25a、25bと接続され、混合気体X中の気体A及び/又は気体Bのガス濃度を算出する制御装置40と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体A及び気体Bからなる混合気体X中のいずれか一方又は両方の気体のガス濃度を測定するガス濃度測定装置であって、
第1流路、第1流入口及び第1流出口を有し、前記第1流路の両端部に一対の第1超音波センサが配置される第1測定管と、
第2流路、第2流入口及び第2流出口を有し、前記第2流路の両端部に一対の第2超音波センサが配置される第2測定管と、
前記第1流出口と前記第2流入口とを連通する第3流路及び第3流入口を有する連通管と、
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサと接続され、前記混合気体X中の前記気体A及び/又は前記気体Bのガス濃度を算出する制御装置と、
を有し、
実測時においては、前記気体Aが、前記第1流入口から前記第1流路に流入し、前記第1流路を通過し、前記第1流出口から前記第3流路に流出し、前記気体Bが、前記第3流入口から前記第3流路に流入し、前記気体A及び前記気体Bが、前記第3流路において混合し、前記気体A及び前記気体Bからなる前記混合気体Xが、前記第2流入口から前記第2流路に流入し、前記第2流路を通過し、前記第2流出口から流出し、
前記制御装置は、前記第1超音波センサが出力する値に基づいて測定され、前記第1測定管を流れる前記気体A中を伝搬する超音波の音速である第1速度と、前記第2超音波センサが出力する値に基づいて測定され、前記第2測定管を流れる前記混合気体X中を伝搬する超音波の音速である第2速度とを用いて、前記混合気体Xにおける前記気体A及び/又は前記気体Bのガス濃度を算出することを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記気体Aの分子量をM、前記気体Bの分子量をM、前記気体Aの比熱をγ、前記気体Bの比熱をγ、前記第1速度をc、前記第2速度をc、前記混合気体Xにおける前記気体Aの混合比率をα、前記混合気体における前記気体Bの混合比率をαとし、予めM、M、γ及びγの値を記憶し、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサから出力される値に基づいてc及びcの値を算出し、M、M、γ、γ、c及びcの値を次式に代入することによって、α及び/又はαを算出することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度測定装置。
【数1】
【請求項3】
前記制御装置は、工場出荷時又は初期設定時において同一の測定条件によって測定される一対の前記第1超音波センサ間の超音波往復伝搬時間と一対の前記第2超音波センサ間の超音波往復伝搬時間との差をΔt、一対の前記第1超音波センサ間の距離及び一対の前記第2超音波センサ間の距離をL、実測時において測定される一対の前記第1超音波センサ間の超音波往復伝搬時間をt、実測時において測定される一対の前記第2超音波センサ間の超音波往復伝搬時間をtとし、予めΔt及びLの値を記憶し、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサから出力される値としてt及びtを入力し、Δt、L、t及びtの値をc=2L÷(t-Δt)、c=2L÷tの式に代入することによって、前記第1速度c及び前記第2速度cを算出することを特徴とする請求項2に記載のガス濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の気体からなる混合気体中の各気体のガス濃度を測定するガス濃度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素を含む2種類のガスの混合気体が流れる系に組み込まれる超音波流量計を用いた酸素濃度計が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の酸素濃度計は、測定管流路に超音波送受波器を配置し、測定管流路内の超音波伝搬時間を測定し、超音波伝搬時間から測定管流路内を流れる混合気体中を伝搬する超音波の音速を算出し、混合気体中を伝搬する超音波の音速から混合気体中の2種類の気体のガス濃度(=混合気体における各気体のガスの混合比率)を算出する。
【0003】
ここで、気体中を伝搬する超音波の音速の測定値は、温度、湿度、気圧等に依存するため、ガス濃度の算出値もこれらの影響を受ける。そこで、特許文献1に記載の酸素濃度計では、ガス濃度を精度良く算出するために、温度センサや湿度センサを設置するか、又は既設の他の装置での温度や湿度の測定値を自動的或いは手動的に入力し、測定される超音波伝搬時間に対して温度補正や湿度補正を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5938597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際には測定管流路内の温度、湿度、気圧等を精度良く測定することは困難であり、測定精度が低い値で超音波伝搬時間の補正を行っても、ガス濃度を精度良く算出できない。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、温度、湿度、気圧等の値に基づく補正を行うことなく、ガス濃度を精度良く測定可能なガス濃度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明は、気体A及び気体Bからなる混合気体X中のいずれか一方又は両方の気体のガス濃度を測定するガス濃度測定装置であって、第1流路、第1流入口及び第1流出口を有し、前記第1流路の両端部に一対の第1超音波センサが配置される第1測定管と、第2流路、第2流入口及び第2流出口を有し、前記第2流路の両端部に一対の第2超音波センサが配置される第2測定管と、前記第1流出口と前記第2流入口とを連通する第3流路及び第3流入口を有する連通管と、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサと接続され、前記混合気体X中の前記気体A及び/又は前記気体Bのガス濃度を算出する制御装置と、を有し、実測時においては、前記気体Aが、前記第1流入口から前記第1流路に流入し、前記第1流路を通過し、前記第1流出口から前記第3流路に流出し、前記気体Bが、前記第3流入口から前記第3流路に流入し、前記気体A及び前記気体Bが、前記第3流路において混合し、前記気体A及び前記気体Bからなる前記混合気体Xが、前記第2流入口から前記第2流路に流入し、前記第2流路を通過し、前記第2流出口から流出し、前記制御装置は、前記第1超音波センサが出力する値に基づいて測定され、前記第1測定管を流れる前記気体A中を伝搬する超音波の音速である第1速度と、前記第2超音波センサが出力する値に基づいて測定され、前記第2測定管を流れる前記混合気体X中を伝搬する超音波の音速である第2速度とを用いて、前記混合気体Xにおける前記気体A及び/又は前記気体Bのガス濃度を算出することを特徴とするガス濃度測定装置である。
【0008】
本発明における前記制御装置は、前記気体Aの分子量をM、前記気体Bの分子量をM、前記気体Aの比熱をγ、前記気体Bの比熱をγ、前記第1速度をc、前記第2速度をc、前記混合気体Xにおける前記気体Aの混合比率をα、前記混合気体における前記気体Bの混合比率をαとし、予めM、M、γ及びγの値を記憶し、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサから出力される値に基づいてc及びcの値を算出し、M、M、γ、γ、c及びcの値を次式に代入することによって、α及び/又はαを算出することが望ましい。
【数1】
【0009】
また、本発明における前記制御装置は、工場出荷時又は初期設定時において同一の測定条件によって測定される一対の前記第1超音波センサ間の超音波往復伝搬時間と一対の前記第2超音波センサ間の超音波往復伝搬時間との差をΔt、一対の前記第1超音波センサ間の距離及び一対の前記第2超音波センサ間の距離をL、実測時において測定される一対の前記第1超音波センサ間の超音波往復伝搬時間をt、実測時において測定される一対の前記第2超音波センサ間の超音波往復伝搬時間をtとし、予めΔt及びLの値を記憶し、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサから出力される値としてt及びtを入力し、Δt、L、t及びtの値をc=2L÷(t-Δt)、c=2L÷tの式に代入することによって、前記第1速度c及び前記第2速度cを算出することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、温度、湿度、気圧等の値に基づく補正を行うことなく、ガス濃度を精度良く測定可能なガス濃度測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ガス濃度測定装置1の構成を示す図
図2】実測時における気体の流れを示す図
図3】工場出荷時又は初期設定時における気体の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施の形態に係るガス濃度測定装置は、複数種類の気体からなる混合気体中の各気体のガス濃度(=混合気体における各気体のガスの混合比率)を測定する。以下では、図1図3を参照し、気体A及び気体Bからなる混合気体X中のいずれか一方又は両方の気体のガス濃度を測定するガス濃度測定装置を説明する。本実施の形態では、気体Aは空気、気体Bは水素を例に挙げて説明し、水素のガス濃度の測定範囲は1~4%程度である。
【0013】
図1は、ガス濃度測定装置1の構成を示す図である。図1に示すように、ガス濃度測定装置1は、円筒状の第1流路11、第1流入口12及び第1流出口13を有し、第1流路11の両端部14a、14bに一対の第1超音波センサ15a、15bが配置される第1測定管10と、円筒状の第2流路21、第2流入口22及び第2流出口23を有し、第2流路21の両端部24a、24bに一対の第2超音波センサ25a、25bが配置される第2測定管20と、第1流出口13と第2流入口22とを連通する円筒状の第3流路31及び第3流入口32を有する連通管30と、第1超音波センサ15a、15b及び第2超音波センサ25a、25bと接続され、混合気体X中の気体A及び/又は気体Bのガス濃度を算出する制御装置40と、を有する。
【0014】
第1測定管10の第1流入口12は、第1流路11の一方の端部14a近傍に設けられ、第1流出口13は、第1流路11の他の端部14b近傍に設けられる。第1流入口12には、気体Aを供給する円筒状の供給管16の一方の端部が接続される。供給管16の他の端部には、不図示の気体A供給装置が接続される。気体A供給装置は、例えば、外気から取り込まれる空気を公知の圧縮機で圧縮し、圧縮された空気すなわち気体Aを第1測定管10に供給する。
【0015】
連通管30の第3流入口32には、気体Bを供給する円筒状の供給管51の一方の端部が接続される。供給管51の他の端部には、気体B供給装置50が接続される。気体B供給装置50は、公知の水素ガス発生装置で水素ガスを発生させ、発生された水素ガスすなわち気体Bを連通管30に供給する。
【0016】
第2測定管20の第2流入口22は、第2流路21の一方の端部24a近傍に設けられ、第2流出口23は、第2流路21の他の端部24b近傍に設けられる。第2流出口23には、混合気体Xを他の装置に供給する円筒状の供給管26の一方の端部が接続される。供給管26の他の端部には、例えば、不図示の水素含有ガス吸入装置が接続される。水素含有ガス吸入装置は、例えば、水素ガス吸入療法等で用いられる。
【0017】
一対の第1超音波センサ15a、15bは、超音波を送受波可能な超音波素子をそれぞれ有し、これらの超音波素子が互いに対向するように第1流路11の端部14a、14bに設けられる。第1超音波センサ15aから送波される超音波は、第1超音波センサ15bが受波可能であり、第1超音波センサ15bから送波される超音波は、第1超音波センサ15aが受波可能である。
【0018】
同様に、一対の第2超音波センサ25a、25bは、超音波を送受波可能な超音波素子をそれぞれ有し、これらの超音波素子が互いに対向するように第2流路21の端部24a、24bに設けられる。第2超音波センサ25aから送波される超音波は、第2超音波センサ25bが受波可能であり、第2超音波センサ25bから送波される超音波は、第2超音波センサ25aが受波可能である。
【0019】
第1超音波センサ15a、15bや第2超音波センサ25a、25bには、例えば特許文献1に記載のように、酸素濃度計等に用いられ、気体中を伝搬する超音波の音速を測定可能な公知の超音波送受器を用いることができる。
【0020】
制御装置40は、CPUやメモリを内蔵し、他の電子部品を制御するマイクロコンピュータと、他の電子部品が接続されるインタフェース部とを有する。第1超音波センサ15a、15bや第2超音波センサ25a、25bは、インタフェース部を介して制御装置40に接続される。また、制御装置40には、液晶ディスプレイ等の表示装置や他のコンピュータ等が接続されても良い。制御装置40は、他のコンピュータ等からデータを入力し、内蔵のメモリに記憶することや、表示装置や他のコンピュータにガス濃度の測定値を出力することが可能である。
【0021】
第1流路11における気体の流れは、第1流入口12側の端部14aが上流であり、第1流出口13側の端部14bが下流である。また、第2流路21における気体の流れは、第2流入口22側の端部24aが上流であり、第2流出口23側の端部24bが下流である。
【0022】
一対の第1超音波センサ15a、15bは、互いの超音波素子間の距離と、この距離を超音波が伝搬する時間から、第1流路11を流れる気体中を伝搬する超音波の音速を測定できる。ここで、第1流路11内では気体が流れているため、超音波を上流から下流に向けて送波させたときの伝搬時間は、流れのないときの伝搬時間に比較し、若干短くなる。一方、超音波を下流から上流に向けて送波させたときの伝搬時間は、流れのないときの伝搬時間に比較し、若干長くなる。これらの時間の減少分と増加分は略等しく、合計することによって相殺されるので、一対の第1超音波センサ15a、15bは、互いの超音波素子間の距離の2倍、すなわち往復距離を、両方向の伝搬時間の合計である超音波往復伝搬時間で割ることによって、第1流路11を流れる気体中を伝搬する超音波の音速を算出する。同様に、一対の第2超音波センサ25a、25bは、互いの超音波素子間の距離の2倍、すなわち往復距離を、両方向の伝搬時間の合計である超音波往復伝搬時間で割ることによって、第2流路21を流れる気体中を伝搬する超音波の音速を算出する。
【0023】
第1超音波センサ15a、15b及び第2超音波センサ25a、25bは、それぞれ第1測定管10及び第2測定管20を流れる気体中を伝搬する超音波の音速を算出し、算出値を制御装置40に出力しても良い。また、第1超音波センサ15a、15b及び第2超音波センサ25a、25bは、それぞれが、超音波を上流から下流に向けて送波させたときの伝搬時間と、超音波を下流から上流に向けて送波させたときの伝搬時間を制御装置40に出力し、制御装置40が第1測定管10及び第2測定管20を流れる気体中を伝搬する超音波の音速を算出しても良い。本実施の形態では、これらの方法を区別せず、第1超音波センサ15a、15bが出力する値に基づいて測定され、第1測定管10を流れる気体中を伝搬する超音波の音速を第1速度とし、第2超音波センサ25a、25bが出力する値に基づいて測定され、第2測定管20を流れる気体中を伝搬する超音波の音速を第2速度とする。そして、制御装置40は、第1速度と第2速度とを用いて、混合気体Xにおける気体A及び/又は気体Bのガス濃度を算出する。
【0024】
第1流出口13には、連通管30から第1測定管10への気体の逆流を防止する逆止弁を設けることが望ましい。また、第2流入口22には、第2測定管20から連通管30への気体の逆流を防止する逆止弁を設けることが望ましい。更に、第1流入口12、第2流出口23及び第3流入口32にも、必要に応じて逆止弁を設けても良い。
【0025】
第1測定管10と第2測定管20は、略同一形状及び略同一寸法であることが望ましい。また、第1超音波センサ15a、15bと第2超音波センサ25a、25bは、同一性能を有することが望ましい。
【0026】
図2は、実測時における気体の流れを示す図である。図2の矢印が示すように、実測時においては、気体Aが、供給管16を介して第1流入口12から第1流路11に流入し、第1流路11を通過し、第1流出口13から第3流路31に流出する。また、気体Bが、供給管51を介して第3流入口32から第3流路31に流入する。そして、気体A及び気体Bが、第3流路31において混合する。更に、気体A及び気体Bからなる混合気体Xが、第2流入口22から第2流路21に流入し、第2流路21を通過し、第2流出口23から供給管26に流出する。
【0027】
従って、実測時においては、第1測定管10に気体Aが流れるので、第1超音波センサ15a、15bが出力する値に基づいて測定される第1速度は、気体A中を伝搬する超音波の音速である。また、第2測定管20に混合気体Xが流れるので、第2超音波センサ25a、25bが出力する値に基づいて測定される第2速度は、混合気体X中を伝搬する超音波の音速である。
【0028】
ここで、制御装置40による気体A及び気体Bのガス濃度の算出方法を詳細に説明する。本実施の形態では、第1測定管10及び第2測定管20が連通管30を介して連通しているため、第1測定管10を流れる気体Aの温度と第2測定管20を流れる気体Xの温度は同一の値T[K]と仮定する。
【0029】
気体中を伝搬する超音波の音速は、気体の分子量(混合気体の場合は平均分子量)及び気体の温度の関数として表現できる。すなわち、気体定数をR、気体Aの分子量をM[g/mol]、混合気体Xの平均分子量をM[g/mol]、気体Aの比熱をγ、混合気体Xの平均比熱をγ、第1超音波センサ15a、15bが出力する値に基づいて測定される第1速度をc[m/s]、第2超音波センサ25a、25bが出力する値に基づいて測定される第2速度をc[m/s]とすると、次の式(1)及び式(2)が成り立つ。
【0030】
【数2】
【0031】
式(1)及び式(2)からRとTを消去すると、次の式(3)が成り立つ。
【0032】
【数3】
【0033】
また、気体Bの分子量をM[g/mol]、気体Bの比熱をγとする。更に、混合気体Xにおける気体Aの混合比率(=ガス濃度)をα、混合気体Xにおける気体Bの混合比率(=ガス濃度)をαとすると、α=(1-α)であり、次の式(4)及び式(5)が成り立つ。式(4)は混合気体の分子量の関係式であり、式(5)は混合気体の比率の関係式である。
【0034】
【数4】
【0035】
式(3)乃至式(5)からMとγを消去すると、次の式(6)が成り立つ。
【0036】
【数5】
【0037】
式(6)を変形し、αについて解くと、次の式(7)が成り立つ。
【0038】
【数6】
【0039】
ここで、気体Aすなわち空気の比熱γ=1.4、気体Bすなわち水素の比熱γ=1.41、気体Aすなわち空気の分子量M=28.8、気体Bすなわち水素の分子量M=2を式(7)に代入すると、次の式(8)が成り立つ。
【0040】
【数7】
【0041】
水素が第2測定管20に含まれている場合、第1速度cよりも第2速度cの方が速い、すなわちc>cが成り立つので、式(8)の値は正、すなわち混合気体Xにおける水素のガス濃度は正となり、水素が第2測定管20に含まれていることと矛盾しない。また、水素が第2測定管20に含まれていない場合、第1速度c=第2速度cが成り立つので、式(8)の値は0、すなわち混合気体Xにおける水素のガス濃度は0となり、水素が第2測定管20に含まれていないことと矛盾しない。
【0042】
実測時には、制御装置40は、予めM、M、γ及びγの値を記憶し、第1超音波センサ15a、15b及び第2超音波センサ25a、25bから出力される値に基づいてc及びcの値を算出し、M、M、γ、γ、c及びcの値を式(7)に代入することによって、α及び/又はαを算出する。制御装置40は、αを算出する場合、M、M、γ、γ、c及びcの値を式(7)に代入し、αを算出する場合、更に、式(7)に代入して得られるαの値をα=(1-α)の式に代入する。
【0043】
の値については、第1超音波センサ15a、15b又は制御装置40は、第1超音波センサ15a、15bの互いの超音波素子間の往復距離を予め記憶し、第1超音波センサ15a、15bが超音波往復伝搬時間を測定し、超音波素子間の往復距離を超音波往復伝搬時間で割ることによって、第1流路11を流れる気体中を伝搬する超音波の音速(=第1速度)として算出する。同様に、cの値については、第2超音波センサ25a、25b又は制御装置40は、第2超音波センサ25a、25bの互いの超音波素子間の往復距離を予め記憶し、第2超音波センサ25a、25bが超音波往復伝搬時間を測定し、超音波素子間の往復距離を超音波往復伝搬時間で割ることによって、第2流路21を流れる気体中を伝搬する超音波の音速(=第2速度)として算出する。
【0044】
以上の通り、本実施の形態におけるガス濃度測定装置1は、温度、湿度、気圧等の値に基づく補正を行うことなく、混合気体Xにおける気体A及び/又は気体Bのガス濃度を算出する。従って、ガス濃度測定装置1によって測定される気体Aや気体Bのガス濃度の値は、測定精度が低い測定管流路内の温度、湿度、気圧等の値に依存しないので、高い精度を確保することができる。
【0045】
前述の説明では、水素が第2測定管20に含まれていない場合、第1速度c=第2速度cが成り立つものとしていた。すなわち、同一の測定条件によって測定される一対の第1超音波センサ15a、15b間の超音波往復伝搬時間と一対の第2超音波センサ25a、25b間の超音波往復伝搬時間は同一であり、ひいては、算出される第1速度c及び第2速度cの値も同一であることを前提条件としていた。この前提条件を満たすために、第1測定管10と第2測定管20は、略同一形状及び略同一寸法であることが望ましく、第1超音波センサ15a、15bと第2超音波センサ25a、25bは、同一性能を有することが望ましいとしていた。
【0046】
しかしながら、第1測定管10と第2測定管20の個体差や、第1超音波センサ15a、15bと第2超音波センサ25a、25bの個体差に起因して、同一の測定条件であっても、第1超音波センサ15a、15b間の超音波往復伝搬時間の測定値と第2超音波センサ25a、25b間の超音波往復伝搬時間の測定値の間に無視できない差が生じることが考えられる。そこで、本実施の形態では、この差の影響をなくすため、実測を行う前、例えば工場出荷時又は初期設定時に、補正の為の測定を行う。
【0047】
図3は、工場出荷時又は初期設定時における気体の流れを示す図である。工場出荷時又は初期設定時においては、気体B供給装置50を使用しない。図3の矢印が示すように、気体Aが、供給管16を介して第1流入口12から第1流路11に流入し、第1流路11を通過し、第1流出口13から第3流路31に流出する。そのまま、気体Aが、第2流入口22から第2流路21に流入し、第2流路21を通過し、第2流出口23から供給管26に流出する。
【0048】
従って、工場出荷時又は初期設定時においては、第1測定管10に気体Aが流れるので、第1超音波センサ15a、15bが出力する値に基づいて測定される第1速度は、気体A中を伝搬する超音波の音速である。同様に、第2測定管20に気体Aが流れるので、第2超音波センサ25a、25bが出力する値に基づいて測定される第2速度は、気体A中を伝搬する超音波の音速である。このように、工場出荷時又は初期設定時には、同一の測定条件によって第1速度及び第2速度が測定される。
【0049】
制御装置40は、工場出荷時又は初期設定時において同一の測定条件によって測定される一対の第1超音波センサ15a、15b間の超音波往復伝搬時間tpre1と一対の第2超音波センサ25a、25b間の超音波往復伝搬時間tpre2との差(tpre1-tpre2)をΔt、一対の第1超音波センサ15a、15b間の距離及び一対の第2超音波センサ25a、25b間の距離の設計値をL(図2図3参照)とし、実測前に予めΔt及びLの値を記憶しておく。また、制御装置40は、実測時において測定される一対の第1超音波センサ15a、15b間の超音波往復伝搬時間をt、実測時において測定される一対の第2超音波センサ25a、25b間の超音波往復伝搬時間をtとし、第1超音波センサ15a、15b及び第2超音波センサ25a、25bから出力される値としてt及びtを入力する。そして、制御装置40は、Δt、L、t及びtの値をc=2L÷(t-Δt)、c=2L÷tの式に代入することによって、第1速度c及び第2速度cを算出する。
【0050】
これによって、本実施の形態におけるガス濃度測定装置1は、第1測定管10と第2測定管20の個体差や、第1超音波センサ15a、15bと第2超音波センサ25a、25bの個体差に起因する誤差を無くし、混合気体Xにおける気体Aや気体Bのガス濃度を精度良く測定できる。
【0051】
本実施の形態では、2種類の気体A及び気体Bからなる混合気体Xを対象としたが、測定管や超音波センサを増やすことによって、3種類以上の気体からなる混合気体を対象とすることができる。例えば、3本の測定管に対してそれぞれ一対の超音波センサを設けることによって、3種類の気体A、気体B及び気体Cからなる混合気体Y中の各気体のガス濃度を測定することができる。この場合、制御装置40は、前述の説明の通り、気体A及び気体Bからなる混合気体Xにおける気体A及び気体Bのガス濃度α及びαを算出するとともに、式(4)及び式(5)にα及びαの値を代入し、混合気体Xの平均分子量M及び平均比熱γを算出する。そして、制御装置40は、更に、前述の説明における気体Aを混合気体X、気体Bを気体Cとし、混合気体X及び気体Cからなる混合気体Yにおける混合気体X及び気体Cのガス濃度を算出する。4種類以上の気体からなる混合気体についても、混合気体に含まれる気体の種類数だけ測定管や超音波センサを設けることにより、同様に各気体のガス濃度を算出することができる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るガス濃度測定装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
1………ガス濃度測定装置
10………第1測定管
11………第1流路
12………第1流入口
13………第1流出口
14a、14b………第1流路11の両端部
15a、15b………一対の第1超音波センサ
20………第2測定管
21………第2流路
22………第2流入口
23………第2流出口
24a、24b………第2流路21の両端部
25a、25b………一対の第2超音波センサ
30………連通管
31………第3流路
32………第3流入口
40………制御装置
図1
図2
図3