IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前田工繊株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社三共シーゼルの特許一覧

特開2024-104091支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造
<>
  • 特開-支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造 図1
  • 特開-支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造 図2
  • 特開-支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造 図3
  • 特開-支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造 図4
  • 特開-支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造 図5A
  • 特開-支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造 図5B
  • 特開-支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造 図5C
  • 特開-支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104091
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
E04G21/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008136
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521541804
【氏名又は名称】株式会社三共シーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】服部 浩崇
(72)【発明者】
【氏名】新 正行
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健
(72)【発明者】
【氏名】柴田 篤志
(57)【要約】
【課題】壁面材の起立部に対して支柱取付具の着脱作業を安全な作業環境で短時間のうちに簡単に行える、支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造を提供すること。
【解決手段】二点係止式の支柱取付具20を使用し、支柱取付具20は支柱31と連結可能な縦管21を具備し、下位係止手段である差込下爪22が縦管21の下部に下向きで一体に設けられ、上位係止手段であるフック装置25が縦管21の外周面にスライド自在に設けられていて、下位係止手段である差込下爪22および上位係止手段であるフック装置25の組付け方向と撤去方向を同一にした。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平部と起立部を具備した壁面材の起立部の前面の二点に係止可能な下位係止手段と上位係止手段を具備した二点係止式の支柱取付具を使用し、最上位の壁面材の起立部に取付けた前記支柱取付具の上部に安全柵用の支柱を連結する、支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造であって、
前記支柱取付具は前記支柱と連結可能な縦管を具備し、
前記下位係止手段が縦管の下部に下向きで一体に設けられ、前記壁面材の起立部の前面に差し込んで位置決めが可能であり、
前記上位係止手段が縦管の外周面にスライド自在に設けられ、前記壁面材の起立部の上辺を挟持するように嵌め込んで位置決めが可能であり、
前記下位係止手段および上位係止手段の組付け方向と撤去方向がそれぞれ同一であることを特徴とする、
支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造。
【請求項2】
前記下位係止手段が前記縦管の下部に下向きに設けた差込下爪であることを特徴とする、請求項1に記載の支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造。
【請求項3】
前記上位係止手段が縦管の周面にスライド自在に設けたフック装置であり、該フック装置が縦管を把持可能なクランプ部と、前記壁面材の起立部の上辺の前後面を挟持可能な下向フック部とを具備し、前記クランプ部と下向フック部が支軸を介して回転可能に枢支してあることを特徴とする、請求項1に記載の支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造。
【請求項4】
前記壁面材の起立部の上辺にキャップが装着してあり、前記下向フック部に形成した挟持溝の溝幅が前記キャップに外装可能な寸法を有することを特徴とする、請求項3に記載の支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造。
【請求項5】
前記縦管が、1枚の起立部の高さより長く、2枚の起立部12の高さより短い全長を有することを特徴とする、請求項1に記載の支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造。
【請求項6】
前記安全柵が複数の支柱と、隣り合う支柱の間に横架した手摺とを少なくとも具備することを特徴とする、請求項1に記載の支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造。
【請求項7】
前記壁面材が略菱形の開口を有するエキスパンドメタル製であることを特徴とする、請求項1に記載の支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造。
【請求項8】
前記壁面材が溶接金網製であることを特徴とする、請求項1に記載の支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強土壁の施工の安全性を確保する安全柵の設置技術に関し、より詳細には壁面材の起立部の前面に設置する、支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製の壁面材の設置工と、壁面材の背面側に盛土補強材を水平に敷設する盛土補強材の敷設工と、壁面材の背面側に層状に敷き均した盛土材を盛土して締め固める盛土工を繰り返し行って補強土壁を構築することは知られている。
施工中に作業者の転落事故を防止するため、壁面材側に組立式の安全柵を設置している。
【0003】
従来の安全柵は単管パイプ製で、その組立方法としては、安全柵を構成する支柱を壁面材の起立部に沿って仮固定し、仮固定した支柱の間に手摺材を横架して安全柵を組み立てる。補強土壁の最上位層の構築を終えたら、既設の壁面材から撤去した支柱を、新たに設置した最上位の壁面材に付け替えて安全柵を組み立てている。
【0004】
安全柵用の支柱を壁面材の起立部に仮固定する手段として、フック金具とスパイラルリングを用いることが知られている(特許文献1~3)。
スパイラルリングは、支柱より大径に形成した螺旋鋼線からなり、壁面材の起立部に巻き掛けて取り付けが可能である。
フック金具は、バネ鋼線を支柱の外周面に圧着可能な径に巻いて形成したリングバネ部と、リングバネ部の両端部の鋼線を外方に張り出して形成した一対のフック素子とを有し、一対のフック素子を摘まむことでリングバネ部が拡径し、一対のフック素子を離すことでリングバネ部が縮径する。
支柱にフック金具を取り付けるには、拡径操作したリングバネ部を支柱に外装した後に、リングバネ部を縮径操作することでリングバネ部を支柱の外周面に圧着する。
【0005】
支柱を壁面材に取り付けるには、上下2つの壁面材の起立部に対して夫々スパイラルリングを取り付ける工程と、上位のスパイラルリングに支柱を挿通する工程と、支柱の周面にフック金具を取り付ける工程と、フック金具の下向フック部をスパイラルリングに引っ掛ける工程を経て、2つの壁面材に跨って支柱の下部と中間部の2点を係留して取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-169027号公報
【特許文献2】特開2011-208415号公報
【特許文献3】特許2016-50427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の安全柵にはつぎの解決すべき課題を有する。
<1>スパイラルリングは、作業員が最上段の盛土層から身を乗り出して壁面材に取り付けなければならず、スパイラルリングの取付作業中に作業員が転落する危険がある。
<2>支柱の設置作業を円滑に行うため、スパイラルリングの内径は、ゆとりを持たせて支柱の径よりも大きい径に設定してあり、フック金具の下向フック部の屈曲幅もゆとり持たせて幅広に形成している。
そのため、支柱の組付け後において、各スパイラルリングと支柱の間だけでなく、スパイラルリングとフック金具の下向フック部との間に隙間が生じる。
支柱の支持部に生じた隙間は、支柱がガタつく原因となって、安全柵が不安定となる。
<3>壁面材の起立部に係留した状態のスパイラルリングに支柱を遠隔から挿し込む作業が難しく、支柱の挿入作業に多くの時間と労力を要して作業性が悪い。
<4>特に、支柱の下部をスパイラルリングに挿入する作業と、支柱の下部に装着したフック金具をスパイラルリングに掛止する作業を並行して行わなければならず、支柱の下部の位置決め作業に多くの時間と労力を要する。
<5>使用を終えたスパイラルリングを回収せずに壁面材の起立部に残置すると、壁面材の起立部に多数のスパイラルリングが露出して景観性が悪くなる。
使用を終えたスパイラルリングを撤去する場合には、別途に足場を設置しなければならず、パイラルリングの撤去コストが高くつく。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、以上の課題を解決できる、支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水平部と起立部を具備した壁面材の起立部の前面の二点に係止可能な下位係止手段と上位係止手段を具備した二点係止式の支柱取付具を使用し、最上位の壁面材の起立部に取付けた支柱取付具の上部に安全柵用の支柱を連結する、支柱取付具を用いた安全柵の取付け構造であって、前記支柱取付具は前記支柱と連結可能な縦管を具備し、前記下位係止手段が縦管の下部に下向きで一体に設けられ、前記壁面材の起立部の前面に差し込んで位置決めが可能であり、前記上位係止手段が縦管の外周面にスライド自在に設けられ、前記壁面材の起立部の上辺を挟持するように嵌め込んで位置決めが可能であり、前記下位係止手段および上位係止手段の組付け方向と撤去方向がそれぞれ同一である。
すなわち、前記下位係止手段および上位係止手段を介して、前記支柱取付具を壁面材の起立部の前面に着脱可能に係止した。
本発明の他の形態において、前記下位係止手段が前記縦管の下部に下向きに設けた差込下爪である。
本発明の他の形態において、前記上位係止手段が縦管の周面にスライド自在に設けたフック装置であり、該フック装置が縦管を把持可能なクランプ部と、前記壁面材の起立部の上辺の前後面を挟持可能な下向フック部とを具備し、前記クランプ部と下向フック部が支軸を介して回転可能に枢支してある。
前記壁面材の起立部の上辺にキャップが装着してあり、前記下向フック部に形成した挟持溝の溝幅が前記キャップに外装可能な寸法を有する。
本発明の他の形態において、前記縦管が、1枚の起立部の高さより長く、2枚の起立部12の高さより短い全長を有する。
本発明の他の形態において、前記安全柵が複数の支柱と、隣り合う支柱の間に横架した手摺とを少なくとも具備する。
本発明の他の形態において、前記壁面材が略菱形の開口を有するエキスパンドメタル製または溶接金網製である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>壁面材の起立部に対する支柱取付具の下位係止手段(差込下爪)および上位係止手段(フック装置)の組付け方向と撤去方向が同一であるため、壁面材の起立部に対する支柱取付具の着脱作業を短時間のうちに簡単に行える。
<2>最上位の壁面材を対象に安全な作業環境下で支柱取付具を取り付けできるので、作業者が前方に大きく身を乗り出したり、腹ばいになったりせずに済み、作業者の安全性が格段に向上する。
<3>壁面材の起立部に対して支柱取付具をガタツキのない状態で取り付けできるので、安全柵の安定性が向上する。
<4>支柱取付具の上下二箇所の掛止手段を介して壁面材の起立部に係合しているので、鉛直方向の荷重を分散して支持できるだけでなく、起立部の離間方向へ向けた外力に対しても抵抗することができる。
したがって、支柱取付具は高い支持力で安全柵を支持することができる。
<5>壁面材の起立部にキャップを装着してある場合は、キャップを介して起立部の上辺の前後面を挟持して位置決めできるので、上位係止手段と起立部の上辺との間の荷重伝達性能がよくなると共に、起立部の上辺の変形を抑制できる。
<6>フック装置(上位係止手段)を構成するクランプ部と下向フック部の間を回転可能に枢支したことで、起立部に縦向きに取付ける際に縦管が多少左右に傾倒していても、縦管の傾倒の影響を受けずに、下向フック部の奥深くまで起立部の上辺を嵌め込むことができる。
<7>支柱取付具は簡単な構造であるため、低コストでかつ堅牢に製作できる。
そのため、支柱取付具は耐久性に優れ、長期間に亘って繰り返しの使用に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】支柱取付具を用いて安全柵を設置した補強土壁の斜視図
図2】壁面材の斜視図
図3】支柱取付具の斜視図
図4】支柱取付具のフック装置の斜視図
図5A】安全柵の取付方法の説明図で、(A)は支柱取付具の取付方法の説明図、(B)は支柱取付具に安全柵の支柱を取り付ける取付方法の説明図
図5B】壁面材の背面に補強土壁の構築方法の説明図で、(C)は盛土層を構築する工程の説明図、(D)は最上位の盛土層にペットの壁面材設置する工程の説明図
図5C】安全柵の撤去移設方法の説明図で、(E)は安全柵を撤去する工程の説明図、(F)は撤去した支柱取付具を上位の壁面材へ付け替える工程の説明図
図6図5Aに示した支柱取付具の取付構造の部分拡大図で、(A)は差込下爪を壁面材の起立部に貫入した支柱取付具の下位の位置決め部の縦断面図、(B)はその正面図、(C)はフック装置を壁面材の起立部の上辺に係止した支柱取付具の上位の位置決め部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1>補強土壁
図1に補強土壁40の一例を示す。補強土壁40は公知の土構造物を含む。
補強土壁40の法面側には壁面材10が露出していて、所定の勾配を有してる。
本例では、法面側に壁面材10を配置する工程と、各壁面材10の背面側に盛土層41を構築する工程を繰り返しながら補強土壁40を構築する形態について説明する。
なお、必要に応じて各盛土層41の間にジオテキスタイル等の盛土補強材(図示省略)を埋設する。
【0013】
本発明では、最上位の壁面材10の一部に着脱可能な二点係止式の支柱支持具20を取付け、この支柱支持具20を使用して安全柵30を設置する。
以降に各資材について説明する。
【0014】
<2>壁面材
図2を参照して説明すると、壁面材10は断面形状が略L字形を呈する剛性部材であり、水平部11と起立部12とを有する。
水平部11に対する起立部12の屈曲角度は、法面の勾配(0~8分勾配)に合わせて設定する。
【0015】
本例では、壁面材10が略菱形(菱形または六角形)の開口13群を有するエキスパンドメタル製である場合について説明するが、壁面材10は溶接金網(ワイヤーメッシュ)等の公知のメッシュ材または有孔板であってもよい。
【0016】
壁面材10の使用にあたっては、壁面材10の内側面を土砂流出防止用または緑化用のシート14で覆う。起立部12の頂部に断面コ字形のキャップ15を装着してシート14を固定する。
必要に応じて起立部12と水平部11の間には、単数または複数の斜材16を後付けして補強する。
これらのシート14、キャップ15、斜材16は必須ではなく、これらの一部または全部を省略してもよい。
【0017】
<3>支柱取付具
支柱取付具20は壁面材10の起立部12の前面の二点に係止可能な二つの掛止手段(下位係止手段と上位係止手段)を具備し、壁面材10の起立部12の二点に反力を得て安全柵30の支柱31を立設するための支持部材である。
【0018】
図3,4に例示した支柱取付具20について説明すると、支柱取付具20は縦管21と、縦管21の下部外周面に下向き(縦管21の延長方向)に延設した下位係止手段である差込下爪22と、差込下爪22の上位であって、縦管21の周面にスライド自在に装着した上位係止手段であるフック装置25とを具備する。
【0019】
<3.1>縦管
縦管21は壁面材10の起立部12から反力を得て、安全柵30を構成する支柱31と同軸線上で連結可能な筒体である。
縦管21は短い鋼管であり、1枚の起立部12の高さより長く、2枚の起立部12の高さより短い全長を有する。
縦管21は直管でもよいが、安全柵30を鉛直に向けて立設できるように、縦管21の上部近くを適宜の角度で外方に向けて屈曲してもよい。
【0020】
<3.2>差込下爪
縦管21の最下部の外周面には下向きに差込下爪22を延設する。
差込下爪22は縦管21の下端を位置決めするための先鋭な突起体であり、起立部12の任意の高さに差し込んで係止可能である。
【0021】
差込下爪22を縦管21の下端面から下方に突出したのは、縦管21を傾動操作したときに縦管21の下部が起立部12に干渉するのを避けて、差込下爪22を起立部12に差し込みやすく、かつ差込下爪22を起立部12から抜き取り易くするためである。
【0022】
<3.3>フック装置
フック装置25は縦管21の中間部と壁面材10の起立部12の上辺との間を連結するための連結具として機能する。
【0023】
図3,4,6を参照して説明すると、フック装置25は縦管21を把持可能なクランプ部26と、壁面材10の起立部12の上辺に外装して係合可能な断面コ字形の下向フック部27と、クランプ部26と下向フック部27の間を回転可能に枢支する支軸28とを具備する。
【0024】
<3.3.1>クランプ部
クランプ部26は縦管21に固定するためのヒンジ式のボルト26aとナット26bを有している。
クランプ部26は縦管21に対してスライド自在であり、縦管21の中間部の任意の位置に取付けできて、差込下爪22とフック装置25による二点の取付間隔を任意に設定できる。
【0025】
<3.3.2>下向フック部
下向フック部27は下向きの挟持溝27aを有していて、下向フック部27を起立部12に嵌め込んで取り付けが可能である。。
挟持溝27aは壁面材10の起立部12の上辺に嵌め込み可能な溝幅を有している。
【0026】
<3.3.2.1>挟持溝の溝幅
挟持溝27aの溝幅は起立部12の上辺の幅(厚さ)に応じて適宜選択が可能である。
本例のように起立部12の上辺にキャップ15を装着する場合には、下向フック部27の挟持溝27aはキャップ15に外装可能な寸法に設定する。
【0027】
<3.3.2.2>挟持溝を下向きに形成した理由
下向フック部27に下向きの挟持溝27aを形成したのは、下向フック部27を起立部12の前後の両側面に接面させて、フック装置25の安定した取付反力を得るためと、下向フック部27の着脱方向を差込下爪22の着脱方向と一致させて、壁面材10に対する支柱支持具20の着脱の作業性をよくするためである。
【0028】
<3.3.3>支軸
クランプ部26と下向フック部27の間はリベットやボルト等の支軸28が枢支していて、支軸28を中心にクランプ部26と下向フック部27が互いに回転可能である。
クランプ部26と下向フック部27の間を回転可能に枢支したのは、縦管21を起立部12に縦向きに取付ける際に縦管21が多少左右に傾倒していても、縦管21の傾倒の影響を受けずに、下向フック部27の奥深くまで起立部12の上辺を嵌め込むためである。
【0029】
<4>安全柵
図1を参照して説明すると、安全柵30は間隔を隔てて配置した複数の支柱31と、隣り合う支柱31の間に横架した手摺32とを少なくとも具備する。
本例では安全柵30を複数の単管パイプとフック装置を現場で組み合わせて製作した形態について説明するが、安全柵30は少なくとも支柱31を具備していれば適用が可能である。
【0030】
[安全柵の取付方法]
図5A図5B図6を参照しながら支柱取付具20を使用した安全柵30の取付方法について説明する。
【0031】
<1>最上位の壁面材
図5Aは最上位の壁面材10の起立部12の前面に支柱取付具20を取り付ける工程を示している。
支柱取付具20を設置予定の最上位の壁面材10は、その水平部11にアンカーピン等を打設して最上段の盛土層41に転倒不能に固定してある。
最上位の壁面材10の背面に盛土作業を行うにあたり、以下の要領で壁面材10の起立部12の前面に所定の間隔を隔てて複数の支柱取付具20を取り付ける。
【0032】
<2>支柱取付具の取付け
支柱取付具20の取付け方法について詳しく説明する。
【0033】
<2.1>差込下爪の差込み
図5A(A)に示すように、縦管21を手で掴み、縦管21の下端の差込下爪22を壁面材10の起立部12の適宜の高さに差し込んで支柱取付具20の下部を位置決めする。
差込下爪22が先鋭な形状を呈するため、特別な工具を用いずに作業者の人力だけで差込下爪22を起立部12に簡単に差し込みできる。
【0034】
図6(A),(B)は支柱取付具20の下部の位置決め箇所の拡大図を示していて、差込下爪22の根元部が開口13のV字形を呈する下方の頂部に当接して位置決めされるので、支柱取付具20の下部の自由な移動が規制されている。
【0035】
<2.2>フック装置の嵌め込み
つぎに図5A(B)に示すように、差込下爪22の差込部を支点に縦管21を起立部12へ向けて傾倒した後に、縦管21に設けたフック装置25を押し下げて下向きフック27を壁面材10の起立部12の上辺に嵌め込んで、支柱取付具20の上半部を位置決めする。
【0036】
下向きフック27の挟持溝27aが起立部12の上辺に嵌め込み可能な寸法に形成してあるので、フック装置25の全体を押し下げるだけの簡単な操作で以て、下向フック部27を起立部12の前後の両側面に接面させて取り付けできる。
下向きフック27を壁面材10の起立部12の上辺に嵌め込んだら、クランプ部26を締め付けて、縦管21に対してフック装置25をスライド不能に固定する。
起立部12の上辺に嵌め込んだ下向きフック27の内面が起立部12の前後面に当接して位置決めされるので、支柱取付具20の上部の自由な移動が規制される。
【0037】
図6(C)はフック装置25が壁面材10の起立部12に係合した上位の位置決め箇所の拡大図を示している。
壁面材10の起立部12の上辺にキャップ15が設けてある場合は、フック装置25の下向きフック27がキャップ15の前後面を挟み込んで位置決めする。
【0038】
このように本発明では、支柱取付具20を押し下げて差込下爪22を壁面材10の起立部12の途中に差し込むと共に、フック装置25を押し下げて下向きフック27を壁面材10の起立部12の上辺に押し込んで嵌め込むだけの簡単な操作によって支柱取付具20の上下二箇所を壁面材10の起立部12に係止して取り付けできる。
しかも、支柱取付具20は、下位の壁面材10ではなく、最上位の壁面材10を対象にして取り付けるので、作業者が前方に大きく身を乗り出したり、腹ばいになったりせずに安全な作業環境下で支柱取付具20を設置することができる。
【0039】
<3>安全柵の取付け
図5A(B)は縦管21を壁面材20の起立部12の前面の上下二箇所に位置決めして取り付けた縦管21を示している。
支柱取付具20を利用して安全柵30を組み付ける。
具体的には、縦管21の上部に安全柵30を構成する支柱31の下端を接続する。
支柱31の接続にあたり、公知の接続具33を介して接続してもよいし、接続具33を用いずに支柱31の下端を縦管21の上部に直接接続してもよい。
つぎに図1に示すように、複数の支柱31の間に手摺32を横架し、その交点を固定して安全柵30を組み立てる。
【0040】
<4>補強土壁の構築工(盛土工と壁面材の設置工)
図5Bを参照して補強土壁の構築工程について説明する。
図5B(C)は、最上位の壁面材10の背面側に盛土と転圧を行って盛土層41を構築する工程を示し、図5B(D)は最上位の盛土層41の上面に別途の壁面材10を設置する作業工程を示している。
別途の壁面材10を載置する際、上下の壁面材10,10の間に下向きフック27の一部が介装するが、下向きフック27が薄厚の板体であるため、壁面材10の積み重ねに支障をきたさない。
【0041】
また別途の壁面材10を積み上げる際に、既設の壁面材10の起立部12から僅かに後退させて階段状に別途の壁面材10を積み上げる。これは支柱取付具20を移設する際に、別途の壁面材10と干渉せずに下向きフック27の抜き取りを行えるようにするためである。
【0042】
盛土工と別途の壁面材10の設置工を行う際、最上位の壁面材10の外方に安全柵30が立設してあるので、安全な環境下で補強土壁の構築作業を行うことができる。
【0043】
<5>安全柵の支持性能
各支柱取付具20は、その上下の二箇所(下向きフック27の取付箇所とフック装置25の取付箇所)を壁面材10の起立部12にガタツキを防止した状態で取り付けてあるので、安全柵30をガタツキのない安定した状態で支持できる。
【0044】
起立部12の上辺に嵌め込んだフック装置25の下向きフック27の内面が起立部12の前後面に当接するので、フック装置25の下方向と左右方向へ向けた自由な移動が制限される。
支柱取付具20は差込下爪22とフック装置25を設けた上下二箇所の係止手段を介して壁面材10の起立部12に係合しているので、鉛直方向の荷重を分散して支持できるだけでなく、起立部12の離間方向へ向けた外力に対しても抵抗することができる。
したがって、支柱取付具20は高い支持力で安全柵30を支持することができる。
【0045】
特に、キャップ15を介して壁面材10の起立部12の上辺にフック装置25の下向きフック27を嵌着するので、起立部12の上辺と下向きフック27との嵌合部における荷重伝達性能がよくなると共に、起立部12の上辺の変形を抑制できる。
【0046】
[安全柵の移設方法]
図5Cを参照しながら安全柵30の移設方法について説明する。
【0047】
<1>安全柵の撤去
図5C(E)は、安全柵30の撤去工程を示している。
盛土層41の一層分の構築を終えたら、安全柵30を撤去する。
具体的には、安全柵30の支柱31を支柱取付具20から分離して撤去する。
【0048】
<2>支柱取付具の撤去と移設
図5C(D)は支柱取付具20の撤去工程を示す。
支柱取付具20を上方に持ち上げて既設の壁面材10の起立部12から抜き取る。
支柱取付具20の抜き取りにあたっては、フック装置25と下向きフック27を同時に抜き取ってもよいし、フック装置25を選考して抜き取った後に下向きフック27を抜き取るようにしてもよい。
【0049】
撤去した支柱取付具20は、既述したように最上位の壁面材10の起立部12に組み付け、支柱取付具20を介して撤去した安全柵30を組み付ける。
同じ支柱取付具20と安全柵30を繰り返し使用して所定の高さの補強土壁を構築できるので、支柱取付具20と安全柵30の使用数が最小で済み、資材コストを削減できる。
【0050】
このように本発明では、安全柵30を取り付けるための支柱取付具20の下端部を壁面材10の起立部12に差し込んで支柱取付具20の上部を起立部12の上辺に押し込んで嵌め込むだけの簡単な作業で以て支柱取付具20を取り付けできるだけでなく、支柱取付具20を上方に持ち上げるだけの簡単な作業で以て支柱取付具20を撤去することができる。
特に、支柱取付具20の取付け作業と撤去作業を、構築中の補強土壁の上位において安全な環境下で行えるので、支柱取付具20の着脱作業中における作業員の転落事故を確実に防止することができる。
【0051】
[他の変形例]
先の実施例では、最上位の盛土層41の上面に別途の壁面材10を設置した後に、支柱取付具20と安全柵30を撤去する場合について説明したが、最上位の盛土層41の上面に別途の壁面材10を設置する前に、支柱取付具20と安全柵30を撤去することも可能である。
本例では、支柱取付具20と安全柵30の撤去後に、最上位の盛土層41の上面に別途の壁面材10を設置することになる。
【符号の説明】
【0052】
10・・・・壁面材
11・・・・水平部
12・・・・起立部
13・・・・開口
14・・・・シート
15・・・・キャップ
16・・・・斜材
20・・・・支柱取付具
21・・・・縦管
22・・・・差込下爪
25・・・・フック装置
26・・・・クランプ部
27・・・・下向フック部
27a・・・保持溝
28・・・・支軸
30・・・・安全柵
31・・・・安全柵の支柱
32・・・・安全柵の手摺
40・・・・補強土壁
41・・・・盛土層
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6