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特開2024-104092走行支援システムおよび走行支援装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104092
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】走行支援システムおよび走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240726BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/09 F
G08G1/09 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008138
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英明
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181JJ06
5H181LL07
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】安全性を高めることができる走行支援システムを得る。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係る走行支援システムは、隊列走行を行う複数の車両の走行を支援可能な第1の走行支援装置と、複数の車両のうちの第1の車両の走行を支援可能な第2の走行支援装置とを備える。第1の走行支援装置は、複数の車両のそれぞれの位置および速度、および前方の交通信号機の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、複数の車両のそれぞれが交通信号機を通過可能かどうかを判断することにより、第1の車両が停止すべきことを判断可能な第1の処理部と、第1の処理部の処理結果を第1の車両に送信可能な第1の通信部とを有する。第2の走行支援装置は、第1の通信部から送信された処理結果を受信可能な第2の通信部と、第2の通信部の受信結果に基づいて、第1の車両を交通信号機の手前で停止させるための処理を行うことが可能な第2の処理部とを有する。
【選択図】図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隊列走行を行う複数の車両の走行を支援可能な第1の走行支援装置と、
前記複数の車両のうちの第1の車両の走行を支援可能な第2の走行支援装置と
を備え、
前記第1の走行支援装置は、
前記複数の車両のそれぞれの位置および速度、および前記複数の車両の前方の交通信号機の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、前記複数の車両のそれぞれが前記交通信号機を通過可能かどうかを判断することにより、前記第1の車両が停止すべきことを判断可能な第1の処理部と、
前記第1の処理部の処理結果を前記第1の車両に送信可能な第1の通信部と
を有し、
前記第2の走行支援装置は、
前記第1の通信部から送信された前記処理結果を受信可能な第2の通信部と、
前記第2の通信部の受信結果に基づいて、前記第1の車両を前記交通信号機の手前で停止させるための処理を行うことが可能な第2の処理部と
を有する
走行支援システム。
【請求項2】
前記第2の通信部は、前記第1の車両が実際に停止した場合に、前記第1の車両の位置および速度についてのデータを含む走行データを前記第1の通信部に送信可能であり、
前記第1の通信部は、前記第2の通信部から送信された前記走行データを受信可能であり、
前記第1の処理部は、前記第1の通信部が受信した前記走行データに基づいて、前記複数の車両のそれぞれの走行状態を示す走行状態データを生成可能であり、
前記第1の通信部は、前記走行状態データを前記第2の通信部に送信可能であり、
前記第2の通信部は、前記第1の通信部から送信された前記走行状態データを受信可能であり、
前記第2の処理部は、前記第2の通信部が受信した前記走行状態データに基づいて、前記複数の車両のそれぞれの前記走行状態をドライバに通知する処理を行うことが可能である
請求項1に記載の走行支援システム。
【請求項3】
前記第1の車両を前記交通信号機の手前で停止させるための処理は、前記第1の車両を停止させるべき旨のドライバへの通知、および前記第1の車両を制動させる処理のうちの少なくとも一方を含む
請求項1に記載の走行支援システム。
【請求項4】
前記第1の走行支援装置は、前記複数の車両のうちの第2の車両に搭載され、
前記第2の走行支援装置は、前記複数の車両のうちの前記第1の車両に搭載された
請求項1に記載の走行支援システム。
【請求項5】
隊列走行を行う複数の車両のそれぞれの位置および速度、および前記複数の車両の前方の交通信号機の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、前記複数の車両のそれぞれが前記交通信号機を通過可能かどうかを判断することにより、第1の車両が停止すべきことを判断可能な第1の処理部と、
前記第1の処理部の処理結果を前記第1の車両に送信可能な第1の通信部と
を備えた走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の走行を支援する走行支援システムおよび走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路では、複数の車両が隊列走行を行う場合がある。例えば、特許文献1には、このような隊列走行を行う複数の車両が交差点を通過する際に、複数の車両の走行を制御する路側制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-177638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の走行では、安全性が高いことが望まれており、隊列走行においても、安全性が高いことが期待されている。
【0005】
安全性を高めることができる走行支援システムおよび走行支援装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る走行支援システムは、第1の走行支援装置と、第2の走行支援装置とを備えている。第1の走行支援装置は、隊列走行を行う複数の車両の走行を支援可能なものである。第2の走行支援装置は、複数の車両のうちの第1の車両の走行を支援可能なものである。第1の走行支援装置は、第1の処理部と、第1の通信部とを有している。第1の処理部は、複数の車両のそれぞれの位置および速度、および複数の車両の前方の交通信号機の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、複数の車両のそれぞれが交通信号機を通過可能かどうかを判断することにより、第1の車両が停止すべきことを判断可能なものである。第1の通信部は、第1の処理部の処理結果を第1の車両に送信可能なものである。第2の走行支援装置は、第2の通信部と、第2の処理部とを有している。第2の通信部は、第1の通信部から送信された処理結果を受信可能なものである。第2の処理部は、第2の通信部の受信結果に基づいて、第1の車両を交通信号機の手前で停止させるための処理を行うことが可能なものである。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る走行支援装置は、第1の処理部と、第1の通信部とを備えている。第1の処理部は、隊列走行を行う複数の車両のそれぞれの位置および速度、および複数の車両の前方の交通信号機の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、複数の車両のそれぞれが交通信号機を通過可能かどうかを判断することにより、第1の車両が停止すべきことを判断可能なものである。第1の通信部は、第1の処理部の処理結果を第1の車両に送信可能なものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係る走行支援システムおよび走行支援装置によれば、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施の形態に係る走行支援システムの一構成例を表す構成図である。
図2図2は、図1に示した走行支援システムの一動作例を表す説明図である。
図3図3は、図1に示した走行支援装置の一構成例を表すブロック図である。
図4A図4Aは、図1に示した走行支援システムの一動作例を表すフローチャートである。
図4B図4Bは、図1に示した走行支援システムの一動作例を表す他のフローチャートである。
図4C図4Cは、図1に示した走行支援システムの一動作例を表す他のフローチャートである。
図5図5は、図1に示した走行支援システムの第1のケースにおける一動作例を表す説明図である。
図6図6は、図1に示した走行支援システムの第1のケースにおける一動作例を表すシーケンス図である。
図7図7は、図1に示した走行支援システムの第2のケースにおける一動作例を表す説明図である。
図8図8は、図1に示した走行支援システムの第2のケースにおける一動作例を表すシーケンス図である。
図9A図9Aは、図1に示した走行支援システムの第3のケースにおける一動作例を表す説明図である。
図9B図9Bは、図1に示した走行支援システムの第3のケースにおける一動作例を表す他の説明図である。
図10図10は、図1に示した走行支援システムの第3のケースにおける一動作例を表すシーケンス図である。
図11図11は、図1に示した走行支援システムの第4のケースにおける一動作例を表す説明図である。
図12A図12Aは、図1に示した走行支援システムの第4のケースにおける一動作例を表すシーケンス図である。
図12B図12Bは、図1に示した走行支援システムの第4のケースにおける一動作例を表す他のシーケンス図である。
図13図13は、ユーザインタフェースの表示画像の一例を表す画像図である。
図14図14は、変形例に係る走行支援装置の一構成例を表すブロック図である。
図15A図15Aは、変形例に係る走行支援システムの一動作例を表すフローチャートである。
図15B図15Bは、変形例に係る走行支援システムの一動作例を表す他のフローチャートである。
図15C図15Cは、変形例に係る走行支援システムの一動作例を表す他のフローチャートである。
図16図16は、他の変形例に係る走行支援装置の一構成例を表すブロック図である。
図17A図17Aは、他の変形例に係る走行支援システムの一動作例を表すフローチャートである。
図17B図17Bは、他の変形例に係る走行支援システムの一動作例を表す他のフローチャートである。
図17C図17Cは、他の変形例に係る走行支援システムの一動作例を表す他のフローチャートである。
図18図18は、他の変形例に係る走行支援システムの一構成例を表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、一実施の形態に係る走行支援システム1の一構成例を表すものである。走行支援システム1は、複数の車両10(車両10A,10B,10C,…)を有している。車両10は、自動車などの車両である。複数の車両10は、走行路に沿って隊列を組んで走行する、いわゆる隊列走行を行うように設定されている。車両10のそれぞれは、走行支援装置9を有している。車両10の走行支援装置9は、互いに車車間通信COMを行うことができるようになっている。
【0012】
図2は、走行支援システム1の一動作例を表すものである。なお、この例では、走行路の中央より左を通行する、いわゆる左側通行の例で説明するが、これに限定されるものではなく、走行路の中央より右を通行する、いわゆる右側通行の例に適用してもよい。この例では、5台の車両10(車両10A~10E)は、走行路90に沿って交差点91に向かって隊列走行を行っている。車両10Aは隊列の先頭を走行しており、車両10Eは隊列の最後方を走行している。交差点91には、交通信号機92および路側機93が設けられている。交通信号機92は、青表示、黄表示、赤表示を行うことにより、車両10のドライバに対して車両10の進行もしくは停止を指示するように構成される。路側機93は、交通信号機92の動作を制御するように構成される。路側機93は、複数の車両10のうちの代表車両(この例では先頭を走行している車両10A)と通信を行うことにより、この車両10Aに対して、現在の交通信号機92の表示状態についてのデータ、および現在の表示状態が青表示である場合に赤表示になるまでの時間についてのデータを含む信号機データを供給するようになっている。
【0013】
走行支援システム1では、代表車両である車両10Aは、信号機データに基づいて、5台の車両10のそれぞれが交通信号機92を通過可能かどうかを判断する。例えば、交通信号機92の表示状態が青表示であり、その後まもなく赤表示になる場合には、車両10Aは、5台の車両10のうちの一部の車両10が通過でき、他の一部の車両10が通過できないと判断する。そして、車両10Aは、車車間通信COMを用いて、その通過することができない車両10に対して走行の停止を指示する。走行の停止を指示された車両10は、ドライバに対して交通信号機92の手前で停止すべき旨を通知し、ドライバはブレーキペダルを操作することにより車両10を停止させる。車両10が停止すると、その車両10は、車車間通信COMを用いて、車両10Aに対して、車両10の位置および車両10の速度についてのデータを含む走行データを送信する。車両10Aは、このようにして、車両10B~10Eの実際の走行状態を取得する。そして、車両10Aは、5台の車両10の実際の走行状態についてのデータを含む走行状態データを生成し、この走行状態データを、車車間通信COMを用いて車両10B~10Eにそれぞれ送信する。5台の車両10のそれぞれは、走行状態データに基づいて、5台の車両10の実際の走行状態をドライバに通知する。これにより、走行支援システム1では、安全性を高めることができるようになっている。
【0014】
図3は、5台の車両10のそれぞれにおける走行支援装置9の一構成例を表すものである。走行支援装置9は、ナビゲーション部11と、通信部14と、ユーザインタフェース15と、処理部20とを備えている。
【0015】
ナビゲーション部11は、自車両である車両10が走行すべき目的地までのルート(予定走行ルート)を決定するとともに、運転者に情報を提供することにより、決定したルートに沿って車両10を誘導するように構成される。ナビゲーション部11は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部12と、ナビゲーション処理部13とを有している。GNSS受信部12は、GPS(Global Positioning System)などのGNSSを用いて、地上での車両10の位置を取得するように構成される。ナビゲーション処理部13は、道路地図についてのデータを含む地図データベースを用いて、車両10の予定走行ルートを決定する。ナビゲーション処理部13は、例えば、地図データベースを記憶する記憶部を有し、記憶部に記憶された地図データベースを用いて予定走行ルートを決定してもよいし、例えば地図データベースが記憶されたネットワークサーバと通信を行う通信部を有し、このネットワークサーバから取得したデータに基づいて予定走行ルートを決定してもよい。ナビゲーション部11は、例えば、ドライバがユーザインタフェース15を操作することにより入力した目的地についての情報に基づいて目的地までの予定走行ルートを決定し、決定したルートについての情報を、このユーザインタフェース15を用いて運転者に提供する。また、ナビゲーション部11は、地図データベースに基づいて、車両10の前方の交通信号機92の位置、および車両10の位置についてのデータを処理部20に供給するようになっている。
【0016】
通信部14は、自車両である車両10の周囲の路側機93や自車両である車両10の周囲の車両10と、通信を行うように構成される。具体的には、通信部14は、例えば、V2X(Vehicle to Everything)通信などの無線通信を用いて、路側機93との間で通信を行い、自車両である車両10の周囲の車両10との間で車車間通信COMを行うようになっている。
【0017】
ユーザインタフェース15は、例えば、表示パネル、タッチパネル、各種ボタン、スピーカなどを有し、車両10の乗員の操作を受け付けるとともに、乗員へ情報を通知するように構成される。
【0018】
処理部20は、自車両である車両10Aを含む5台の車両10の隊列走行を支援する処理を実行するように構成される。処理部20は、例えば、1または複数のプロセッサや、1または複数のメモリなどを含んで構成され、プログラムを実行することにより、5台の車両10の隊列走行を支援する走行支援処理を行う。処理部20は、通信処理部21と、走行データ収集部22と、通過判断部23と、延長時間算出部24と、停止判断部25と、通知処理部26と、走行制御部27とを有している。
【0019】
通信処理部21は、通信部14が送信する信号の送信処理、および通信部14が受信した信号の受信処理を行うように構成される。
【0020】
走行データ収集部22は、他の車両10から供給された、車両10の位置および車両10の速度についてのデータを含む走行データを収集するように構成される。また、走行データ収集部22は、例えば、5台の車両10のうちの一部の車両10が通過でき、他の一部の車両10が通過できないことにより、5台の車両10が分断された場合に、収集した走行データに基づいて、5台の車両10のそれぞれの実際の走行状態についてのデータを含む走行状態データを生成するようになっている。
【0021】
通過判断部23は、5台の車両10のそれぞれが前方の交通信号機92を通過することができるかどうかを判断するように構成される。具体的には、車両10Aの通過判断部23は、路側機93から供給された信号機データに基づいて、交通信号機92の現在の表示状態を確認する。また、通過判断部23は、現在の表示状態が青表示である場合には、信号機データに含まれる、赤表示になるまでの時間についてのデータに基づいて、交通信号機92の表示状態が赤表示になる前に、車両10A~10Eのそれぞれが交通信号機92を通過することができるかどうかを判断するようになっている。
【0022】
延長時間算出部24は、5台の車両10のうちの一部の車両10が交通信号機92を通過でき、他の一部の車両10が交通信号機92を通過できないと判断された場合に、5台の車両10の全てが交通信号機92を通過するために必要な、交通信号機92の表示状態が赤表示になるまでの時間の延長量を算出するように構成される。
【0023】
停止判断部25は、5台の車両10のうちの一部の車両10が交通信号機92を通過でき、他の一部の車両10が交通信号機92を通過できないと判断された場合に、その判断結果に基づいて、5台の車両10のうちの、交通信号機92の手前で停止すべき車両10を決定するように構成される。
【0024】
通知処理部26は、ユーザインタフェース15を用いて、車両10の乗員に情報を通知するように構成される。
【0025】
走行制御部27は、自車両である車両10のモータやエンジンなどの動力源、操舵装置、制動装置などの動作を制御することにより、車両10の走行制御を行うように構成される。具体的には、走行制御部27は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルなどに対するドライバの運転操作に基づいて、車両10の走行制御を行うようになっている。
【0026】
ここで、車両10Aの処理部20は、本開示の一実施の形態における「第1の処理部」の一具体例に対応する。車両10Aの通信部14は、本開示の一実施の形態における「第1の通信部」の一具体例に対応する。車両10B~10Eのいずれかの通信部14は、本開示の一実施の形態における「第2の通信部」の一具体例に対応する。車両10B~10Eのいずれかの処理部20は、本開示の一実施の形態における「第2の処理部」の一具体例に対応する。
【0027】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の走行支援システム1の動作および作用について説明する。
【0028】
(全体動作概要)
まず、図1~3を参照して、走行支援システム1の動作を説明する。5台の車両10の代表車両である車両10Aは、路側機93から供給された信号機データに基づいて、5台の車両10のそれぞれが交通信号機92を通過可能かどうかを判断する。例えば、交通信号機92の表示状態が青表示であるが、その後まもなく赤表示になり、5台の車両10のうちの一部の車両10が通過でき、他の一部の車両10が通過できないと判断された場合には、車両10Aは、車車間通信COMを用いて、その通過することができない車両10に対して走行の停止を指示する。走行の停止を指示された車両10は、ドライバに対して交通信号機92の手前で停止すべき旨を通知し、ドライバはブレーキペダルを操作することにより車両10を停止させる。車両10が停止すると、車両10は、車車間通信COMを用いて、車両10Aに対して、車両10の位置および車両10の速度についてのデータを含む走行データを送信する。車両10Aは、このようにして、車両10B~10Eの実際の走行状態を取得する。そして、車両10Aは、5台の車両10の実際の走行状態についての情報を含む走行状態データを生成し、この走行状態データを、車車間通信COMを用いて車両10B~10Eにそれぞれ送信する。5台の車両10のそれぞれは、走行状態データに基づいて、5台の車両10の走行状態をドライバに通知する。
【0029】
(詳細動作)
図4A~4Cは、走行支援システム1の一動作例を表すものである。走行支援システム1は、所定の時間が経過する度に、図4A~4Cに示した処理を行う。
【0030】
まず、車両10Aの通信処理部21は、通信部14が周囲の路側機93と通信を行うことができるかどうかを確認する(ステップS101)。通信部14が周囲の路側機93と通信を行うことができない場合(ステップS101において“N”)には、この処理は終了する。
【0031】
ステップS101において、通信部14が周囲の路側機93と通信を行うことができる場合(ステップS101において“Y”)には、車両10Aの通信処理部21は、路側機93から供給された信号機データを受け取る(ステップS102)。この信号機データは、現在の交通信号機92の表示状態についてのデータ、および現在の表示状態が青表示である場合に赤表示になるまでの時間についてのデータを含む。
【0032】
次に、車両10Aの走行データ収集部22は、車両10B~10Eから供給された走行データを受け取る(ステップS103)。具体的には、車両10Aの通信部14は、車車間通信COMにより車両10B~10Eからそれぞれ送信された走行データを受信し、走行データ収集部22は、通信部14から、これらの走行データを受け取る。走行データは、車両10の位置および車両10の速度についてのデータを含む。
【0033】
次に、車両10Aの通過判断部23は、5台の車両10A~10Eのそれぞれが交通信号機92を通過できるかどうかを確認する(ステップS104)。具体的には、車両10Aの通過判断部23は、ステップS102において得られた信号機データに基づいて、交通信号機92の現在の表示状態を確認する。また、通過判断部23は、現在の表示状態が青表示である場合には、信号機データに含まれる、赤表示になるまでの時間を示すデータを確認し、現在時刻と、表示状態が赤表示になるまでの時間に基づいて、交通信号機92の表示状態が赤表示になる時刻を算出する。そして、通過判断部23は、車両10Aの位置および車両10Aの速度に基づいて、交通信号機92の表示状態が赤表示になる時刻の前に、車両10Aが交通信号機92を通過することができるかどうかを判断する。例えば、通過判断部23は、ナビゲーション部11から供給された、車両10Aの位置と交通信号機92の位置とに基づいて、車両10Aと交通信号機92との間の距離を求め、その距離および車両10Aの速度に基づいて、車両10Aが交通信号機92に到達する時刻を算出することにより、交通信号機92の表示状態が赤表示になる時刻の前に、車両10Aが交通信号機92を通過することができるかどうかを判断する。同様に、通過判断部23は、ステップS103において得られた、車両10B~10Eのそれぞれの位置および速度についてのデータに基づいて、交通信号機92の表示状態が赤表示になる時刻の前に、車両10B~10Eのそれぞれが交通信号機92を通過することができるかどうかを判断する。
【0034】
まず、車両10Aの通過判断部23は、全ての車両10が交通信号機92を通過可能であるかどうかを確認する(ステップS105)。具体的には、通過判断部23は、例えば、交通信号機92の現在の表示状態が青表示であり、表示状態が赤表示になる前に、車両10A~10Eの全てが交通信号機92を通過できると推定した場合には、全ての車両10が交通信号機92を通過可能であると判断する。全ての車両10が交通信号機92を通過可能である場合(ステップS105において“Y”)には、全ての車両10は、交通信号機92を通過するように走行し続ける(ステップS106)。そして、この処理は終了する。
【0035】
ステップS105において、全ての車両10が交通信号機92を通過可能でない場合(ステップS105において“N”)には、車両10Aの通過判断部23は、いずれの車両10も交通信号機92を通過できないかどうかを確認する(ステップS107)。具体的には、通過判断部23は、例えば、交通信号機92の現在の表示状態が赤表示である場合には、いずれの車両10も交通信号機92を通過できないと判断する。いずれの車両10も交通信号機92を通過できない場合(ステップS107において“Y”)には、全ての車両10は、交通信号機92の手前で停止する(ステップS108)。そして、この処理は終了する。
【0036】
ステップS107において、5台の車両10のうち、一部の車両10が通過でき、他の一部の車両10が通過できない場合(ステップS107において“N”)には、車両10Aの延長時間算出部24は、5台の車両10の全てが交通信号機92を通過するのに必要な交通信号機92の延長時間を算出する(ステップS109)。
【0037】
次に、車両10Aの通信部14は、通信処理部21からの指示に基づいて、路側機93に対して、ステップS109において算出された延長時間分だけ、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長できるかどうかを問い合わせる(ステップS110)。
【0038】
路側機93は、車両10Aからの問い合わせに応じて、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長できるかどうかを判断する。具体的には、路側機93は、例えば、例えば表示状態が青表示である時間を延長し、あるいは表示状態が黄表示である時間を延長することにより、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長することができるかどうかを判断する。路側機93は、例えば、ステップS109において算出された延長時間の分だけ、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長することができる場合には、延長可能である旨を、車両10Aに対して応答する。また、路側機93は、例えば、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長する機能を有しているが、ステップS109において算出された延長時間が長すぎ、許容可能な延長時間を超える場合には、延長することが出来ない旨を、車両10Aに対して応答する。また、路側機93は、例えば、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長する機能を有していない場合には、延長することが出来ない旨を、車両10Aに対して応答する。
【0039】
ステップS110における問い合わせに対する応答が、延長可能である旨の応答である場合(ステップS111において“Y”)には、路側機93は、交通信号機92の表示状態が赤表示になるまでの時間を延長する(ステップS112)。そして、全ての車両10は、交通信号機92を通過するように走行し続ける(ステップS113)。以上で、この処理は終了する。
【0040】
ステップS110における問い合わせに対する応答が、延長できない旨の応答である場合(ステップS111において“N”)には、車両10Aの停止判断部25は、ステップS104における判断結果に基づいて、交通信号機92の手前で停止すべき車両10を決定する(ステップS114)。具体的には、停止判断部25は、例えば、ステップS104において、交通信号機92を通過できないと判断された車両10が、交通信号機92の手前で停止すべき車両10であると判断する。
【0041】
そして、車両10Aの通信部14は、車車間通信COMを用いて、通信処理部21からの指示に基づいて、交通信号機92の手前で停止すべき車両10に対して停止指示を行う(ステップS115)。
【0042】
停止指示を受け取った車両10の通知処理部26は、交通信号機92の手前で停止すべき旨を通知する処理を行い、ユーザインタフェース15は、通知処理部26からの指示に基づいて、ドライバに対して、交通信号機92の手前で停止すべき旨を通知する(ステップS116)。ユーザインタフェース15は、画面に情報を表示することにより、交通信号機92の手前で停止すべき旨を通知してもよいし、音声を出力することにより、交通信号機92の手前で停止すべき旨を通知してもよい。
【0043】
次に、停止指示を受け取った車両10の走行制御部27は、ドライバが停止操作を行ったかどうかを確認する(ステップS117)。具体的には、走行制御部27は、ドライバがブレーキペダルを踏み込んで、車両10を停止させる操作を行ったかどうかを確認する。ドライバが停止操作を行っていない場合(ステップS118において“N”)には、処理はステップS120に進む。
【0044】
ドライバが停止操作を行った場合(ステップS118において“Y”)には、車両10の走行制御部27は、車両10を停止させ、車両10の通信部14は、通信処理部21からの指示に基づいて、車両10の位置および車両10の速度についてのデータを含む走行データを車両10Aに対して送信する(ステップS119)。すなわち、この走行データは、車両10が停止したことを示すデータを含む。このようにして、車両10Aの走行データ収集部22は、車両10B~10Eの走行データを収集する。
【0045】
次に、車両10Aの走行データ収集部22は、全ての車両10のそれぞれの実際の走行状態についてのデータを含む走行状態データを生成し、通信部14は、通信処理部21からの指示に基づいて、この走行状態データを車両10B~10Eに対して送信する(ステップS120)。
【0046】
そして、全ての車両10のそれぞれの通知処理部26は、走行状態データに基づいて、すべての車両10の状態を通知する処理を行い、ユーザインタフェース15は、通知処理部26からの指示に基づいて、ドライバに対して、全ての車両10の走行状態を通知する(ステップS121)。ユーザインタフェース15は、画面に情報を表示することにより、全ての車両10の走行状態を通知してもよいし、音声を出力することにより、全ての車両10の走行状態を通知してもよい。
【0047】
以上で、この処理は終了する。
【0048】
以下に、いくつか例を挙げて、走行支援システム1の一動作例について詳細に説明する。
【0049】
(ケースC1)
まず、交通信号機92の表示状態が青表示であり、表示状態が赤表示になるまでに十分な時間がある場合について説明する。
【0050】
図5は、ケースC1における5台の車両10の一走行例を表すものである。この例では、交通信号機92の表示状態が青表示Gであり、表示状態が赤表示Rになるまでに十分な時間がある。よって、交通信号機92表示状態が赤表示Rになる前に、車両10A~10Eの全てが交通信号機92を通過する。
【0051】
図6は、ケースC1における走行支援システム1の一動作例を表すものである。
【0052】
まず、路側機93は、代表車両である車両10Aに対して、信号機データを送信する(ステップS201)。車両10Aの通信部14は、この信号機データを受信し、通信処理部21は、この信号機データを受け取る。この処理は、図4A~4CにおけるステップS102の処理に対応する。
【0053】
次に、車両10B~10Eのそれぞれの通信処理部21は、ナビゲーション部11から供給された車両10の位置についてのデータ、および走行制御部27から供給された車両10の速度についてのデータに基づいて走行データを生成し、通信部14は、この走行データを送信する(ステップS202)。車両10Aの通信部14は、これらの走行データを受信し、走行データ収集部22は、車両10B~10Eから供給された走行データを収集する。この処理は、図4A~4CにおけるステップS103の処理に対応する。
【0054】
次に、車両10Aの通過判断部23は、5台の車両10A~10Eの全てが交通信号機92を通過可能である判断する(ステップS203)。すなわち、この例では、交通信号機92の表示状態が青表示Gであり、表示状態が赤表示Rになるまでに十分な時間があるので、通過判断部23は、5台の車両10A~10Eの全てが交通信号機92を通過可能である判断する(図4A~4CのステップS105において“Y”)。そして、車両10Aの通信部14は、車両10B~10Eに対して、通過可能であることを示す通過指示を行う(ステップS204)。よって、全ての車両10は、図6に示したように、交通信号機92を通過するように走行し続ける。この処理は、図4A~4CにおけるステップS105,S106に対応する。
【0055】
(ケースC2)
次に、交通信号機92の表示状態が赤表示である場合について説明する。
【0056】
図7は、ケースC2における5台の車両10の一走行例を表すものである。この例では、例えば、交通信号機92の表示状態が赤表示Rである。よって、車両10A~10Eの全てが交通信号機92の手前で停止する。
【0057】
図8は、ケースC2における走行支援システム1の一動作例を表すものである。
【0058】
まず、路側機93は、代表車両である車両10Aに対して、信号機データを送信する(ステップS211)。車両10Aの通信部14は、この信号機データを受信し、通信処理部21は、この信号機データを受け取る。この処理は、図4A~4CにおけるステップS102の処理に対応する。
【0059】
次に、車両10B~10Eのそれぞれの通信処理部21は、ナビゲーション部11から供給された車両10の位置についてのデータ、および走行制御部27から供給された車両10の速度についてのデータに基づいて走行データを生成し、通信部14は、この走行データを送信する(ステップS212)。車両10Aの通信部14は、これらの走行データを受信し、走行データ収集部22は、車両10B~10Eから供給された走行データを収集する。この処理は、図4A~4CにおけるステップS103の処理に対応する。
【0060】
次に、車両10Aの通過判断部23は、いずれの車両10も交通信号機92を通過できないと判断する(ステップS213)。すなわち、この例では、交通信号機92の表示状態は赤表示Rであるので、通過判断部23は、いずれの車両10も交通信号機92を通過できないと判断する(図4A~4CのステップS107において“Y”)。車両10Aの通信部14は、車両10B~10Eに対して、停止指示を行う(ステップS214)。車両10Aの走行制御部27は、ドライバの停止操作を受け付け(ステップS215)、車両10Aを停止させる(ステップS216)。同様に、車両10Bの走行制御部27は、ドライバの停止操作を受け付け(ステップS217)、車両10Bを停止させる(ステップS218)。車両10C~10Eについても同様である。この処理は、図4A~4CにおけるステップS107,S108の処理に対応する。
【0061】
(ケースC3)
次に、交通信号機92の表示状態が赤表示になるまでの時間が短く、表示状態が赤表示になるまでの時間が延長される場合について説明する。
【0062】
図9A,9Bは、ケースC3における5台の車両10の一走行例を表すものである。この例では、路側機93は、交通信号機92の表示状態が黄表示Yである時間を延長している。図9Aに示したように、交通信号機92の表示状態が黄表示Yになった時、車両10A~10Cは交通信号機92を通過しているが、車両10D,10Eは交通信号機92の手前を走行している。交通信号機92の表示状態が黄表示Yである時間は延長されるので、図9Bに示したように、車両10D,10Eは、表示状態が赤表示Rになるまでに、交通信号機92を通過することができる。
【0063】
図10は、ケースC3における走行支援システム1の一動作例を表すものである。
【0064】
まず、路側機93は、代表車両である車両10Aに対して、信号機データを送信する(ステップS221)。車両10Aの通信部14は、この信号機データを受信し、通信処理部21は、この信号機データを受け取る。この処理は、図4A~4CにおけるステップS102の処理に対応する。
【0065】
次に、車両10B~10Eのそれぞれの通信処理部21は、ナビゲーション部11から供給された車両10の位置についてのデータ、および走行制御部27から供給された車両10の速度についてのデータに基づいて走行データを生成し、通信部14は、この走行データを送信する(ステップS222)。車両10Aの通信部14は、これらの走行データを受信し、走行データ収集部22は、車両10B~10Eから供給された走行データを収集する。この処理は、図4A~4CにおけるステップS103の処理に対応する。
【0066】
次に、車両10Aの通過判断部23は、この例では、全ての車両10が通過可能であるのではなく(ステップS105において“N”)、いずれの車両10も通過できないのではない(ステップS107において“N”)ので、車両10A~10Eのうちの一部の車両10が通過できない可能性があると判断する(ステップS223)。次に、車両10Aの延長時間算出部24は、5台の車両10の全てが交通信号機92を通過するのに必要な交通信号機92の延長時間を算出し(ステップS224)、路側機93に対して、その延長時間分だけ、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長できるかどうかを問い合わせる(ステップS225)。路側機93は、車両10Aに対して、延長可能である旨の応答を行う(ステップS226)。そして、路側機93は、その延長時間分だけ、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長する(ステップS227)。全ての車両10は、図9Bに示したように、交通信号機92を通過するように走行し続ける。この処理は、図4A~4CにおけるステップS107,S109~S113の処理に対応する。
【0067】
(ケースC4)
次に、交通信号機92の表示状態が赤表示になるまでの時間が短く、表示状態が赤表示になるまでの時間が延長されず、5台の車両10が分断される場合について説明する。
【0068】
図11は、ケースC4における5台の車両10の一走行例を表すものである。この例では、表示状態が赤表示Rになるまでの時間が延長されず、表示状態は赤表示Rになっている。よって、車両10A~10Cは、交通信号機92を通過し、車両10D,10Eは、交通信号機92の手前で停止する。
【0069】
図12Aは、ケースC4における走行支援システム1の一動作例を表すものである。
【0070】
まず、路側機93は、代表車両である車両10Aに対して、信号機データを送信する(ステップS231)。車両10Aの通信部14は、この信号機データを受信し、通信処理部21は、この信号機データを受け取る。この処理は、図4A~4CにおけるステップS102の処理に対応する。
【0071】
次に、車両10B~10Eのそれぞれの通信処理部21は、ナビゲーション部11から供給された車両10の位置についてのデータ、および走行制御部27から供給された車両10の速度についてのデータに基づいて走行データを生成し、通信部14は、この走行データを送信する(ステップS232)。車両10Aの通信部14は、これらの走行データを受信し、走行データ収集部22は、車両10B~10Eから供給された走行データを収集する。この処理は、図4A~4CにおけるステップS103の処理に対応する。
【0072】
次に、車両10Aの通過判断部23は、この例では、全ての車両10が通過可能であるのではなく(ステップS105において“N”)、いずれの車両10も通過できないのではない(ステップS107において“N”)ので、車両10A~10Eのうちの一部の車両10が通過できない可能性があると判断する(ステップS233)。次に、車両10Aの延長時間算出部24は、5台の車両10の全てが交通信号機92を通過するのに必要な交通信号機92の延長時間を算出し(ステップS234)、路側機93に対して、その延長時間分だけ、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長できるかどうかを問い合わせる(ステップS235)。路側機93は、車両10Aに対して、この例では延長することができない旨の応答を行う(ステップS236)。車両10Aの停止判断部25は、交通信号機92の手前で車両10D,10Eを停止すべきことを決定し(ステップS237)、車両10Aの通信部14は、車両10D,10Eに対して停止指示を行う(ステップS238)。この処理は、図4A~4CにおけるステップS107,S109~S111,S114,S115の処理に対応する。
【0073】
次に、車両10Dのユーザインタフェース15は、通知処理部26からの指示に基づいて、ドライバに対して、交通信号機92の手前で停止すべき旨を通知する(ステップS239)。車両10Dの走行制御部27は、ドライバの停止操作を受け付け(ステップS240)、車両10Dを停止させる(ステップS241)。そして、車両10Dの通信部14は、車両10の位置および車両10の速度についてのデータを含む走行データを車両10Aに対して送信する(ステップS242)。車両10Eについても同様である。この処理は、図4A~4CにおけるステップS117~S119の処理に対応する。
【0074】
次に、車両10Aの走行データ収集部22は、全ての車両10のそれぞれの実際の走行状態についてのデータを含む走行状態データを生成し(ステップS243)、通信部14は、この走行状態データを車両10B~10Eに対して送信する(ステップS244)。この処理は、図4A~4CにおけるステップS120の処理に対応する。
【0075】
そして、車両10Bのユーザインタフェース15は、この走行状態データに基づいて、ドライバに対して、全ての車両10の走行状態を通知する(ステップS245)。
【0076】
図13は、車両10Bのユーザインタフェース15が表示する画像の一例を表すものである。5台の車両10のうち、交通信号機を通過している3台の車両は、車両10A~10Cに対応し、交通信号機の手前で停止している2台の車両は、車両10D,10Eに対応する。自車両である車両10Bは、この例では、網掛けにより示されている。車両10Bのドライバは、この画像を確認することにより、車両10Bの後方の車両10D,10Eが、交通信号機の手前で停止していることを、直感的に確認することができる。
【0077】
このようにして、車両10Bのユーザインタフェース15は、ドライバに対して、全ての車両10の走行状態を通知する。車両10A,10C~10Eについても同様である。この処理は、図4A~4CにおけるステップS121の処理に対応する。
【0078】
このように、走行支援システム1では、隊列走行を行う複数の車両10A~10Eの走行を支援可能な第1の走行支援装置(車両10Aの走行支援装置9)と、複数の車両10A~10Eのうちの第1の車両(例えば車両10D)の走行を支援可能な第2の走行支援装置(例えば車両10Dの走行支援装置9)とを設けるようにした。第1の走行支援装置(車両10Aの走行支援装置9)は、複数の車両10A~10Eのそれぞれの位置および速度、および複数の車両10A~10Eの前方の交通信号機92の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、複数の車両10A~10Eのそれぞれが交通信号機92を通過可能かどうかを判断することにより、第1の車両(例えば車両10D)が停止すべきことを判断可能な第1の処理部(車両10Aの処理部20)と、第1の処理部(車両10Aの処理部20)の処理結果を第1の車両(例えば車両10D)に送信可能な第1の通信部(車両10Aの通信部14)とを有するようにした。第2の走行支援装置(例えば車両10Dの走行支援装置9)は、第1の通信部(車両10Aの通信部14)から送信された処理結果を受信可能な第2の通信部(例えば車両10Dの通信部14)と、第2の通信部の受信結果に基づいて、第1の車両(例えば車両10D)を交通信号機92の手前で停止させるための処理を行うことが可能な第2の処理部(例えば車両10Dの処理部20)とを有するようにした。これにより、走行支援システム1では、複数の車両10のそれぞれに対して個別に、例えば走行すべきか停止すべきかを指示することができ、複数の車両10のドライバがどのように対応すべきかを指示することができる。複数の車両10のそれぞれのドライバは、例えば、交通信号機92の手前において、交通信号機92の表示状態が変化する場合に、走行を続けるべきか停止するべきかを明確に把握することができる。その結果、走行支援システム1では、例えば追突事故などが生じる可能性を低減することができるので、安全性を高めることができる。
【0079】
また、走行支援システム1では、第2の通信部(例えば車両10Dの通信部14)は、第1の車両(例えば車両10D)が実際に停止した場合に、第1の車両の位置および速度についてのデータを含む走行データを第1の通信部(車両10Aの通信部14)に送信可能であり、第1の通信部(車両10Aの通信部14)は、第2の通信部(例えば車両10Dの通信部14)から送信された走行データを受信可能であり、第1の処理部(車両10Aの処理部20)は、第1の通信部(車両10Aの通信部14)が受信した走行データに基づいて、複数の車両10A~10Eのそれぞれの走行状態を示す走行状態データを生成可能にした。第1の通信部(車両10Aの通信部14)は、走行状態データを第2の通信部(例えば車両10Dの通信部14)に送信可能であり、第2の通信部(例えば車両10Dの通信部14)は、第1の通信部(車両10Aの通信部14)から送信された走行状態データを受信可能であり、第2の処理部(例えば車両10Dの処理部20)は、第2の通信部(例えば車両10Dの通信部14)が受信した走行状態データに基づいて、複数の車両10A~10Eのそれぞれの走行状態をドライバに通知する処理を行うことが可能であるようにした。これにより、複数の車両10のそれぞれのドライバは、例えば、複数の車両10のそれぞれの位置および速度を把握することができるので、分断された他の車両10を目視で探したり、分断された他の車両10の走行状態を目視で確認したりしないで済むため、車両10の運転に集中することができる。その結果、走行支援システム1では、安全性を高めることができる。
【0080】
また、走行支援システム1では、第1の車両(例えば車両10D)を交通信号機92の手前で停止させるための処理は、第1の車両(例えば車両10D)を停止させるべき旨のドライバへの通知を含むようにした。これにより、ドライバは、その指示に従って例えばブレーキペダルを操作することにより、車両10を停止させることができる。その結果、走行支援システム1では、安全性を高めることができる。
【0081】
また、走行支援システム1では、第1の走行支援装置(車両10Aの走行支援装置9)は、複数の車両10A~10Eのうちの第2の車両(車両10A)に搭載され、第2の走行支援装置(例えば車両10Dの走行支援装置9)は、複数の車両10A~10Eのうちの第1の車両(例えば車両10)に搭載されるようにした。これにより、走行支援システム1では、通信の遅延時間を短い時間に抑えることができるので、例えば、タイムリーに、車両10の走行状態を把握して処理を行うことができる。その結果、走行支援システム1では、安全性を高めることができる。
【0082】
[効果]
以上のように本実施の形態では、隊列走行を行う複数の車両の走行を支援可能な第1の走行支援装置と、複数の車両のうちの第1の車両の走行を支援可能な第2の走行支援装置とを設けるようにした。第1の走行支援装置は、複数の車両のそれぞれの位置および速度、および複数の車両の前方の交通信号機の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、複数の車両のそれぞれが交通信号機を通過可能かどうかを判断することにより、第1の車両が停止すべきことを判断可能な第1の処理部と、第1の処理部の処理結果を第1の車両に送信可能な第1の通信部とを有するようにした。第2の走行支援装置は、第1の通信部から送信された処理結果を受信可能な第2の通信部と、第2の通信部の受信結果に基づいて、第1の車両を交通信号機の手前で停止させるための処理を行うことが可能な第2の処理部とを有するようにした。これにより、複数の車両のドライバがどのように対応すべきかを指示することができるので、安全性を高めることができる。
【0083】
本実施の形態では、第2の通信部は、第1の車両が実際に停止した場合に、第1の車両の位置および速度についてのデータを含む走行データを第1の通信部に送信可能であり、第1の通信部は、第2の通信部から送信された走行データを受信可能であり、第1の処理部は、第1の通信部が受信した走行データに基づいて、複数の車両のそれぞれの走行状態を示す走行状態データを生成可能にした。第1の通信部は、走行状態データを第2の通信部に送信可能であり、第2の通信部は、第1の通信部から送信された走行状態データを受信可能であり、第2の処理部は、第2の通信部が受信した走行状態データに基づいて、複数の車両のそれぞれの走行状態をドライバに通知する処理を行うことが可能であるようにした。これにより、ドライバは、例えば、車両の運転に集中することができるので、安全性を高めることができる。
【0084】
本実施の形態では、第1の車両を交通信号機の手前で停止させるための処理は、第1の車両を停止させるべき旨のドライバへの通知を含むようにしたので、ドライバは、その指示に従って例えばブレーキペダルを操作することにより、車両を停止させることができるため、安全性を高めることができる。
【0085】
本実施の形態では、第1の走行支援装置は、複数の車両のうちの第2の車両に搭載され、第2の走行支援装置は、複数の車両のうちの第1の車両に搭載されるようにしたので、タイムリーに、車両10の走行状態を把握して処理を行うことができるため、安全性を高めることができる。
【0086】
[変形例1]
上記実施の形態では、先頭を走行する車両10Aを代表車両としたが、これに限定されるものではなく、車両10B~10Dのうちの任意の1台を代表車両とすることができる。例えば、車両10Bを代表車両とした場合には、この車両10Bは、信号機データに基づいて、5台の車両10のそれぞれが交通信号機92を通過可能かどうかを判断し、その通過することができない車両10に対して、車車間通信COMを用いて走行の停止を指示する。そして、車両10Bは、車車間通信COMを用いて、車両10A,10C~10Eの実際の走行状態を取得し、車両10A~10Eの実際の走行状態についてのデータを含む走行状態データを生成し、この走行状態データを、車車間通信COMを用いて車両10A,10C~10Eにそれぞれ送信する。
【0087】
[変形例2]
上記実施の形態では、図4Bに示したように、路側機93は、例えば、ステップS109において算出された延長時間が長すぎ、許容可能な延長時間を超える場合には、表示状態が赤表示になるまでの時間を延長することが出来ない旨を、車両10Aに対して応答するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、路側機93は、例えば、表示状態が赤表示になるまでの時間を、許容可能な範囲で延長してもよい。この場合、路側機93は、例えば、車両10Aに対して、再度、表示状態が赤表示になるまでの時間についての信号機データを送信する。そして、車両10Aの通過判断部23は、5台の車両10A~10Eのそれぞれが交通信号機92を通過できるかどうかを確認し、車両10Aの停止判断部25は、交通信号機92の手前で停止すべき車両10を決定することができる。
【0088】
[変形例3]
上記実施の形態では、走行制御部27は、ドライバの運転操作に基づいて、車両10の走行制御を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、他の車両10から送信された制御信号に基づいて走行制御を行うことができるようにしてもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0089】
図14は、本変形例に係る走行支援装置9Cの一構成例を表すものである。走行支援装置9Cは、処理部20Cを備えている。処理部20Cは、走行制御部27Cを有している。走行制御部27Cは、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルなどに対するドライバの運転操作に基づいて、車両10の走行制御を行う。また、走行制御部27Cは、他の車両10から送信された停止制御信号に基づいて車両10を停止させることができるようになっている。
【0090】
図15A~15Cは、本変形例に係る走行支援システム1の一動作例を表すものである。ステップS101~S118,S119~S121の処理は、上記実施の形態の場合と同様である。
【0091】
ステップS118において、ドライバが停止操作を行った場合(ステップS118において“Y”)には、車両10の通信部14は、車両10A~10Eのうちの、その車両10より後方を走行している他の車両10に対して停止制御信号を送信する(ステップS131)。
【0092】
車両10A~10Eのうちの、この停止制御信号を受信した車両10の走行制御部27Cは、この停止制御信号に基づいて、車両10を停止させる。すなわち、停止制御信号を受信した車両10も、ステップS115の停止指示を受け取っているが、その車両10のドライバが停止操作を行っていない場合があり得る。この場合でも、停止制御信号を受信した車両10は、停止制御信号に基づいて停止することができる。これにより、停止制御信号を受信した車両10は、その車両10の前の他の車両10に衝突する可能性を低減することができるので、安全性を高めることができる。
【0093】
[変形例4]
上記実施の形態では、車両10は、ドライバの運転操作に基づいて走行するようにした。この車両10は、さらに、例えば、車両10の周囲の環境に基づいて走行できるようにしてもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0094】
図16は、本変形例に係る走行支援装置9Dの一構成例を表すものである。走行支援装置9Dは、撮像部16Dと、処理部20Dとを備えている。
【0095】
撮像部16Dは、車両10の周囲を撮像することにより撮像画像を生成するように構成される。撮像部16Dは、例えば、単眼カメラやステレオカメラを用いて構成される。撮像部16Dは、撮像画像を処理部20Dに供給するようになっている。
【0096】
処理部20Dは、外部環境検出部28Dと、走行制御部27Dとを有している。外部環境検出部28Dは、撮像部16Dから供給された撮像画像に基づいて、車両10の周囲の環境を検出するように構成される。走行制御部27Dは、ドライバの運転操作、および外部環境検出部28Dの検出結果に基づいて、車両10の走行制御を行うように構成される。
【0097】
図17A~17Cは、本変形例に係る走行支援システム1の一動作例を表すものである。ステップS101~S115,S120,S121の処理は、上記実施の形態の場合と同様である
【0098】
ステップS115において、車両10Aの通信部14は、車車間通信COMを用いて、交通信号機92の手前で停止すべき車両10に対して停止指示を行うと、停止指示を受け取った車両10の外部環境検出部28Dは、撮像部16Dから供給された撮像画像に基づいて、安全に停止することができるかどうかを確認する(ステップS151)。安全に停止できない場合(ステップS152において“N”)には、処理はステップS120に進む。
【0099】
安全に停止できる場合(ステップS152において“Y”)には、車両10の走行制御部27Dは、車両10を停止させ、車両10の通信部14は、通信処理部21からの指示に基づいて、車両10の位置および車両10の速度についてのデータを含む走行データを車両10Aに対して送信する(ステップS153)。具体的には、走行制御部27Dは、車両10の制動装置を動作させることにより、車両10を停止させる。そして、通信部14は、車両10の位置および車両10の速度についてのデータを含む走行データを車両10Aに対して送信する。
【0100】
このように、構成した場合でも、上記実施の形態の場合と同様に、安全性を高めることができる。
【0101】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0102】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0103】
例えば、上記実施の形態等では、車両10Aに搭載された走行支援装置9が、信号機データに基づいて、5台の車両10のそれぞれが交通信号機92を通過可能かどうかを判断したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、図18に示す走行支援装置2のように、サーバ30を備え、サーバ30が、信号機データに基づいて、5台の車両10のそれぞれが交通信号機92を通過可能かどうかを判断してもよい。この場合、サーバ30は、
その通過することができない車両10に対して、走行の停止を指示する。そして、サーバ30は、車両10A~10Eの実際の走行状態を取得し、車両10A~10Eの実際の走行状態についてのデータを含む走行状態データを生成し、この走行状態データを車両10A~10Eにそれぞれ送信する。このように、サーバ30が走行支援装置として動作しても、上記実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0104】
例えば、図4A~4Cに示した処理は、一例であり、これらの処理のうちの一部が省かれてもよいし、他の処理が追加されてもよい。
【0105】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0106】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
【0107】
(1)
隊列走行を行う複数の車両の走行を支援可能な第1の走行支援装置と、
前記複数の車両のうちの第1の車両の走行を支援可能な第2の走行支援装置
を備え、
前記第1の走行支援装置は、
前記複数の車両のそれぞれの位置および速度、および前記複数の車両の前方の交通信号機の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、前記複数の車両のそれぞれが前記交通信号機を通過可能かどうかを判断することにより、前記第1の車両が停止すべきことを判断可能な第1の処理部と、
前記第1の処理部の処理結果を前記第1の車両に送信可能な第1の通信部と
を有し、
前記第2の走行支援装置は、
前記第1の通信部から送信された前記処理結果を受信可能な第2の通信部と、
前記第2の通信部の受信結果に基づいて、前記第1の車両を前記交通信号機の手前で停止させるための処理を行うことが可能な第2の処理部と
を有する
走行支援システム。
(2)
前記第2の通信部は、前記第1の車両が実際に停止した場合に、前記第1の車両の位置および速度についてのデータを含む走行データを前記第1の通信部に送信可能であり、
前記第1の通信部は、前記第2の通信部から送信された前記走行データを受信可能であり、
前記第1の処理部は、前記第1の通信部が受信した前記走行データに基づいて、前記複数の車両のそれぞれの走行状態を示す走行状態データを生成可能であり、
前記第1の通信部は、前記走行状態データを前記第2の通信部に送信可能であり、
前記第2の通信部は、前記第1の通信部から送信された前記走行状態データを受信可能であり、
前記第2の処理部は、前記第2の通信部が受信した前記走行状態データに基づいて、前記複数の車両のそれぞれの前記走行状態をドライバに通知する処理を行うことが可能である
前記(1)に記載の走行支援システム。
(3)
前記第1の車両を前記交通信号機の手前で停止させるための処理は、前記第1の車両を停止させるべき旨のドライバへの通知、および前記第1の車両を制動させる処理のうちの少なくとも一方を含む
前記(1)または(2)に記載の走行支援システム。
(4)
前記第1の走行支援装置は、前記複数の車両のうちの第2の車両に搭載され、
前記第2の走行支援装置は、前記複数の車両のうちの前記第1の車両に搭載された
前記(1)から(3)のいずれかに記載の走行支援システム。
(5)
隊列走行を行う複数の車両のそれぞれの位置および速度、および前記複数の車両の前方の交通信号機の表示状態が赤表示になる予定タイミングに基づいて、前記複数の車両のそれぞれが前記交通信号機を通過可能かどうかを判断することにより、第1の車両が停止すべきことを判断可能な第1の処理部と、
前記第1の処理部の処理結果を前記第1の車両に送信可能な第1の通信部と
を備えた走行支援装置。
【符号の説明】
【0108】
1…走行支援システム、9…走行支援装置、10,10A~10E…車両、11…ナビゲーション部、12…GNSS受信部、13…ナビゲーション処理部、14…通信部、15…ユーザインタフェース、16…撮像部、20…処理部、21…通信処理部、22…走行データ収集部、23…通過判断部、24…延長時間算出部、25…停止判断部、26…通知処理部、27…走行制御部、90…走行路、91…交差点、92…交通信号機、93…路側機、COM…車車間通信、G…青表示、R…赤表示、Y…黄表示。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
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図9A
図9B
図10
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図12A
図12B
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