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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104102
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】医薬組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20240726BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240726BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240726BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240726BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240726BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240726BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K9/20
A61K9/48
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 105
A61K47/12
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/14
A61K9/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008151
(22)【出願日】2023-01-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智則
(72)【発明者】
【氏名】真島 聡芸
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC26
4C076CC27
4C076DD09F
4C076DD41N
4C076DD42N
4C076DD43N
4C076DD46F
4C076DD68F
4C076EE52
4C076FF16
4C076FF34
4C076FF43
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZB07
4C086ZB21
4C086ZB26
(57)【要約】
【課題】有効成分としてニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物であって、前記有効成分が弱酸性条件下において良好な溶解性を示す、新規の医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明の医薬組成物は、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と、酸(2)及び/又は下記界面活性剤(3)と、を含む。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と、
酸(2)及び/又は下記界面活性剤(3)と、
を含む医薬組成物。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【請求項2】
前記酸(2)が、常圧下における融点が30℃超の酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記酸(2)が、pKaが10以下の酸である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記酸(2)が有機酸である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記酸(2)がフマル酸、コハク酸、及びクエン酸から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記酸(2)の含有量が、前記(1)100重量部に対して1~30重量部である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
更に、油性媒体(4)を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
剤型がカプセル剤又は錠剤である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と、酸(2)及び/又は下記界面活性剤(3)と、を混合する工程を経て、請求項1又は2に記載の医薬組成物を得る、医薬組成物の製造方法。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【請求項10】
メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)を有効成分として含む医薬組成物の、前記有効成分の溶出改善剤であって、
酸(2)を含有する、溶出改善剤。
【請求項11】
メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)を有効成分として含む医薬組成物に、酸(2)を含有させて、前記有効成分の溶出率を改善する、溶出改善方法。
【請求項12】
メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と油性媒体(4)を乳化させる乳化剤であって、下記界面活性剤(3)を含有する、乳化剤。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【請求項13】
メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と油性媒体(4)に下記界面活性剤(3)を添加して、前記(1)と油性媒体(4)を乳化させる、乳化方法。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネートを有効成分として含む医薬組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(以後、「ニンテダニブエタンスルホン酸塩」と称する場合がある)は、癌疾患、免疫疾患、免疫疾患に伴う症状、又は線維症の治療に薬理効果を示す化合物である。
【0003】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩は強酸性条件下(例えば、pH1.2未満)では溶解し易いが、酸性度が下がると(=pH1.2以上であると)、溶解性が低下することが知られている。しかし、ニンテダニブエタンスルホン酸塩を有効成分として含む医薬組成物は、通常、食後に内服する方法で用いられるため、胃内部が弱酸性の状態(pHは、例えば1.2~6.0)において良好な溶解性を示すように製剤を工夫することが求められる。
【0004】
特許文献1には、ニンテダニブエタンスルホン酸塩に、レシチンを特定量添加すれば、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の、pH1条件下における溶出率を向上できることが開示されている。また、界面活性剤であるTween80を添加すれば、pH3条件下でも溶出率の低下を抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-98045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1には、ニンテダニブエタンスルホン酸塩に、酸(2)又は後述の界面活性剤(3)を添加することで、溶出率を向上できることは開示がない。
【0007】
また、特許文献1に記載の製造方法で得られた医薬品は、25℃を超える温度下で保存するとニンテダニブエタンスルホン酸塩の溶解性が低下し易いこと、すなわち、保存安定性が低いことが問題であった。そのため、夏場は冷所で保存することが必要であり、取り扱いが難しかった。
【0008】
従って、本発明の目的は、有効成分としてニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物であって、前記有効成分が弱酸性条件下において良好な溶解性を示す、新規の医薬組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、有効成分としてニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む医薬組成物であって、保存安定性に優れ、前記有効成分が弱酸性条件下において良好な溶解性を示す、新規の医薬組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記医薬組成物の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の新規の溶出改善剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の溶出率の改善方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩と油性媒体とを乳化させる新規の乳化剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩と油性媒体の乳化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ニンテダニブエタンスルホン酸塩を有効成分として含む医薬組成物に、酸(2)及び/又は下記界面活性剤(3)を添加すると、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の溶解性が向上することを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と、
酸(2)及び/又は下記界面活性剤(3)と、
を含む医薬組成物を提供する。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【0011】
本発明は、また、前記酸(2)が、常圧下における融点が30℃超の酸である前記医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記酸(2)が、pKaが10以下の酸である前記医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記酸(2)が有機酸である前記医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記酸(2)がフマル酸、コハク酸、及びクエン酸から選択される少なくとも1種である前記医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明は、また、前記酸(2)の含有量が、前記(1)100重量部に対して1~30重量部である前記医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明は、また、更に、油性媒体(4)を含む前記医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明は、また、剤型がカプセル剤又は錠剤である前記医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明は、また、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と、酸(2)及び/又は下記界面活性剤(3)と、を混合する工程を経て、前記医薬組成物を得る、医薬組成物の製造方法を提供する。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【0019】
本発明は、また、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)を有効成分として含む医薬組成物の、前記有効成分の溶出改善剤であって、
酸(2)を含有する、溶出改善剤を提供する。
【0020】
本発明は、また、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)を有効成分として含む医薬組成物に、酸(2)を含有させて、前記有効成分の溶出率を改善する、溶出改善方法を提供する。
【0021】
本発明は、また、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と油性媒体(4)を乳化させる乳化剤であって、下記界面活性剤(3)を含有する、乳化剤を提供する。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【0022】
本発明は、また、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と油性媒体(4)に下記界面活性剤(3)を添加して、前記(1)と油性媒体(4)を乳化させる、乳化方法を提供する。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
【発明の効果】
【0023】
本発明の医薬組成物は、有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩と共に酸(2)及び/又は界面活性剤(3)を含有するため、ニンテダニブエタンスルホン酸塩は優れた溶解性を示す。
前記医薬組成物が有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩と共に酸(2)を含有する場合、酸(2)が、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の近傍の酸性度を高める作用を発揮するため、弱酸性条件下でも、ニンテダニブエタンスルホン酸塩は優れた溶解性を示す。
特に前記医薬組成物が、酸(2)として融点が30℃超の酸を含有する場合、融点が30℃超の酸は夏場でも固体の状態で存在して、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の間に入り込み、ニンテダニブエタンスルホン酸塩が凝集するのを物理的に抑制することができるので、冷所に保存しなくても、経時での溶解性の低下を抑制することができ、取り扱いが容易である。
また、前記医薬組成物が有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩と共に界面活性剤(3)を含有する場合、界面活性剤(3)がニンテダニブエタンスルホン酸塩の分散性を高め、凝集を抑制するため、弱酸性条件下でも、ニンテダニブエタンスルホン酸塩は優れた溶解性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1、2、4及び比較例1で得られたカプセル剤の、pH1.2雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図2】実施例1、2、4及び比較例1で得られたカプセル剤の、pH3.0雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図3】実施例1で得られたカプセル剤の、苛酷試験前後での、pH1.2雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図4】実施例1で得られたカプセル剤の、苛酷試験前後での、pH3.0雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図5】実施例5、8、9、10で得られたカプセル剤の、pH1.2雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図6】実施例5、8、9、10で得られたカプセル剤の、pH3.0雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図7】実施例5、6、7及び比較例1で得られたカプセル剤の、pH1.2雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図8】実施例5、6、7及び比較例1で得られたカプセル剤の、pH3.0雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図9】実施例3、6で得られたカプセル剤の、pH1.2雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図10】実施例3、6で得られたカプセル剤の、pH3.0雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図11】実施例11で得られたカプセル剤の、加速試験前後での、pH1.2雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
図12】実施例11で得られたカプセル剤の、加速試験前後での、pH3.0雰囲気下における経時での溶出率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[医薬組成物]
本発明の医薬組成物は、有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)を含み、前記塩(1)と共に、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)を含む組成物で構成される。
【0026】
前記医薬組成物を構成する組成物には、下記態様が含まれる。
1.有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)と、界面活性剤(3)とを含む態様
2.有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と酸(2)とを含み、界面活性剤(3)を含まない態様
3.有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と界面活性剤(3)とを含み、酸(2)を含まない態様
【0027】
(ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1))
前記ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)は、メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネートであり、下記式(1)で表される化合物の、エタンスルホン酸塩である。
【化1】
【0028】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)は融点が305±5℃の化合物であり、室温では固体を呈する。
【0029】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)は、前記組成物中に高分散した状態で含まれることが、弱酸性条件下での溶解性を高める観点から好ましく、粒子径(D50)は例えば50μm以下(例えば、1~50μm)、好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは15μm以下、とりわけ好ましくは13μm以下である。前記粒子径(D50)の下限値は、5μmであっても良く、更に10μmであっても良い。
【0030】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の含有量は、前記組成物全量(100重量%)の、例えば5~60重量%である。前記含有量の下限値は、好ましくは10重量%、更に好ましくは20重量%、特に好ましくは30重量%、最も好ましくは35重量%である。また、前記含有量の上限値は、好ましくは55重量%、特に好ましくは50重量%、最も好ましくは45重量%である。
【0031】
前記医薬組成物1個(例えば、カプセル剤若しくは錠剤1個)当たりのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の含有量は、適応症、用法、用量等に応じて適宜調整することができるが、例えば5~1000mg、好ましくは25~300mgである。
【0032】
(酸(2))
前記酸(2)は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と共に弱酸性の胃内部に到達して、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)近傍の酸性度を高め、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の溶解性を向上させる働きを示す。
【0033】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)は、通常、食後に内服する方法で用いられる。そして、内服されたニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)は、胃において溶解し、消化管等において吸収される。胃内部に存在する胃液は、胃内壁にて生成する胃酸によって、空腹時は強酸性であるが、食事を摂ることで胃酸が中和され、食後2時間程度は弱酸性となる。ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)は、強酸性条件下では高い溶解性を示すが、酸性度が下がると溶解性は低下する。しかし、前記酸(2)により、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の近傍の酸性度を高めることで、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の溶解性を向上させることができる。
【0034】
前記酸(2)としては、胃内部(若しくは、胃液)の酸性度を高める効果を有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。
【0035】
前記酸(2)には、有機酸及び無機酸が含まれる。
【0036】
また、前記酸(2)には低分子化合物及び高分子化合物が含まれる。
【0037】
さらに、前記酸(2)には室温で固体の酸、及び室温で液体の酸が含まれる。
【0038】
前記酸(2)としては、例えば、コハク酸、D-酒石酸、酒石酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、グルクロン酸、マロン酸、DL-リンゴ酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、安息香酸、クエン酸水和物、無水クエン酸、アジピン酸、サリチル酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、ステアリン酸、カプリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、ソルビン酸、アルギン酸、カルメロース、グリチルリチン酸、結晶リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カルシウム水和物、リン酸、ホウ酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、チオグリコール酸、フィチン酸、プロピオン酸等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0039】
弱酸性条件下におけるニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の溶解性を高める効果に優れる点において、前記酸(2)の酸解離定数(pKa)は10以下が好ましく、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下、最も好ましくは5以下、とりわけ好ましくは4.5以下である。また、前記酸(2)の酸解離定数(pKa)は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、特に好ましくは2.5以上、最も好ましくは3以上である。尚、前記酸解離定数(pKa)は、25℃条件下、溶媒として水を使用した場合の値である。また、前記酸(2)が多価の酸である場合、前記pKaはpKa1である。
【0040】
前記酸(2)の常圧下における融点は例えば10℃以上である。前記融点は、医薬組成物の保存安定性を高める観点から、30℃超が好ましく、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、特に好ましくは80℃以上、最も好ましくは100℃以上、とりわけ好ましくは150℃以上である。尚、前記融点の上限値は、例えば350℃、好ましくは300℃である。
【0041】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)は、組成物中に微粒子の状態で配合しても、経時で凝集し易く、凝集により溶解性が低下する。しかし、前記酸(2)として固体を呈するものを使用すると、固体の酸がニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の粒子間に入り込んで、粒子が凝集するのを物理的に抑制することができるので、経時での溶解性の低下を抑制することができ、保存安定性を高めることができる。
【0042】
特に、前記酸(2)として、融点が30℃超の酸を選択して使用すると、夏場にも、冷所に保存しなくても、前記酸は固体の状態で存在して、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)が凝集するのを物理的に抑制することができるので、取り扱いが容易となり、優れた溶解性を安定的に有する医薬組成物を提供することができる。
【0043】
また、前記酸(2)が固体の酸である場合、前記組成物中において、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と前記酸(2)が良好に分散した状態で含まれることが、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の凝集を効率よく抑制して、溶解性を高める効果を得る点から好ましく、[酸(2)の粒子径(D50)]と[ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の粒子径(D50)]との差を、例えば500μm以下(好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下、最も好ましくは80μm以下)に調整することが好ましい。前記粒子径差の下限値は、例えば0μmである。
【0044】
前記酸(2)が固体の酸である場合、その粒子径(D50)は例えば300μm以下、好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下、最も好ましくは100μm以下、とりわけ好ましくは80μm以下である。前記粒子径(D50)の下限値は、例えば10μmである。
【0045】
更に、前記酸(2)としては、結晶内に水分子を含まない酸が、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の加水分解を抑制することができ、薬理効果を安定的に維持することができる点において好ましい。
【0046】
尚、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)は、下記式(1)で表される化合物が、加水分解により矢印Iで示される部位で切断されると、下記式(1-1)で表される副生物(以後、「副生物(1-1)」と称する場合がある)が生成し、加水分解により矢印IIで示される位置で切断されると、下記式(1-2)で表される副生物(以後、「副生物(1-2)」と称する場合がある)が生成する。これらの副生物はニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の薬理効果を有さないので、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の加水分解が進行すると、本発明の医薬組成物から所期の薬理効果を得ることが困難となる傾向がある。
【化2】
【0047】
前記酸(2)としては、低分子量の有機酸を使用することが、前記組成物が高粘度化するのを抑制することができ、医薬組成物の製剤が容易となる点、すなわち作業性に優れる点において好ましい。
【0048】
前記酸(2)としては、カルボン酸(特に、低分子量のカルボン酸)を使用することが好ましい。
【0049】
前記酸(2)としては、コハク酸、フマル酸、クエン酸等の低分子量の固体有機酸(例えば、融点が30℃超の、固体カルボン酸)が好ましい。
【0050】
前記低分子化合物、低分子量の有機酸、低分子量のカルボン酸、及び低分子量の固体有機酸の分子量は、例えば500以下(例えば100~500)、好ましくは300以下、特に好ましくは250以下である。また、高分子化合物の分子量は、例えば500超、好ましくは1000以上である。
【0051】
前記酸(2)の含有量は、前記組成物全量(100重量%)の、例えば1~10重量%である。前記含有量の下限値は、好ましくは2重量%、更に好ましくは3重量%、特に好ましくは4重量%、最も好ましくは5重量%、とりわけ好ましくは5.5重量%である。また、前記含有量の上限値は、好ましくは9重量%、特に好ましくは8重量%、最も好ましくは7重量%である。
【0052】
前記酸(2)の含有量は、酸の種類に応じて適宜調整することができるが、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)100重量部に対して、例えば1~30重量部である。前記下限値は、好ましくは5重量部、特に好ましくは10重量部、最も好ましくは12重量部、とりわけ好ましくは15重量部である。また、前記上限値は、好ましくは28重量部、より好ましくは25重量部、更に好ましくは23重量部、更に好ましくは22重量部、特に好ましくは20重量部、最も好ましくは18重量部である。
【0053】
(界面活性剤(3))
界面活性剤(3)は、組成物中において、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)を均一に分散させ、溶解性を向上させる働きを示す。
【0054】
界面活性剤(3)のHLB(2種以上を組み合わせて使用する場合は、界面活性剤のHLBの重量平均値)は、例えば2~9である。ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の凝集を抑制して、弱酸性条件下での溶解性を高める観点から、前記HLBの下限値は、好ましくは3、特に好ましくは4であり、前記HLBの上限値は、好ましくは8、特に好ましくは7、最も好ましくは6、とりわけ好ましくは5である。
【0055】
尚、HLB(Hydrophilic-Lypophilic Balance)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量の割合を示すものであり、下記式から求められる。
HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の分子量)/(界面活性剤の分子量)]
【0056】
界面活性剤(3)には、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が含まれる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
本発明においては、非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0058】
非イオン性界面活性剤には、エステル型非イオン性界面活性剤、エーテル型非イオン性界面活性剤、及びエーテル・エステル型非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0059】
前記エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ショ糖脂肪酸エステル;(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(3)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(6)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(8)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(10)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(15)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(20)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(10)グリセリルトリイソステアレート、ポリオキシエチレン(20)グリセリルトリイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)グリセリルトリイソステアレート、ポリオキシエチレン(40)グリセリルトリイソステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(8)トリメチロールプロパントリミリステート、ポリオキシエチレン(20)トリメチロールプロパントリミリステート、ポリオキシエチレン(30)トリメチロールプロパントリミリステート等のポリオキシエチレントリメチロールプロパン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(30)ソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン(40)ソルビトールテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(6)ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(12)ジイソステアレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0060】
前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(7)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油等の、ポリオキシエチレン(5-100)硬化ヒマシ油(前記括弧内の数値はオキシエチレン基の重合度を示し、好ましくは10-100、特に好ましくは30-100である)が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
前記ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステルなどの、ショ糖のC10-25飽和又は不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。
【0062】
前記(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノステアリン酸ジグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-4、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-6等の、グリセリン単位の重合度が1~10である(ポリ)グリセリン1モルと、C10-25飽和又は不飽和脂肪酸1~10モル(好ましくは1~5モル)とのエステルが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
前記エーテル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルや、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0064】
前記エーテル・エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルステアレート、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテルステアレート等を挙げることができる。
【0065】
前記組成物が、有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)と、界面活性剤(3)とを含む態様である場合、界面活性剤(3)として、上記例示の界面活性剤から選択される1種又は2種以上を含有することが好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含有することが特に好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含むことが最も好ましい。
【0066】
前記組成物が、有効成分としてのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と界面活性剤(3)とを含み、酸(2)を含まない態様である場合、界面活性剤(3)として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを組み合わせて含む。ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の凝集抑制効果に特に優れる点において、界面活性剤(3)は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と共に、前記(3-2)としてショ糖脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
【0067】
界面活性剤(3)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、前記組成物全量(100重量%)の0.1~5重量%である。前記含有量の下限値は、好ましくは0.3重量%、特に好ましくは0.5重量%、最も好ましくは0.6重量%である。また、前記含有量の上限値は、好ましくは4重量%、特に好ましくは3重量%、最も好ましくは2重量%、とりわけ好ましくは1.5重量%である。
【0068】
前記組成物に含まれる界面活性剤(3)全量(100重量%)において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルの合計含有量の占める割合は、50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上、とりわけ好ましくは99重量%以上である。前記割合の上限値は100重量%である。
【0069】
従って、前記組成物に含まれる界面活性剤(3)全量(100重量%)において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とショ糖脂肪酸エステルと(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤の含有量(2種以上含有する場合はその総量)の占める割合は、50重量%以下が好ましく、より好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下、とりわけ好ましくは1重量%以下である。前記割合の下限値は0重量%である。
【0070】
界面活性剤(3)の含有量は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)100重量部に対して、例えば0.1重量部以上(例えば、0.1~10重量部)であり、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは0.8重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは1.3重量部以上で、とりわけ好ましくは1.5重量部以上である。尚、前記含有量の上限値は、好ましくは5重量部、更に好ましくは4重量部、特に好ましくは3.5重量部、最も好ましくは3重量部、とりわけ好ましくは2.5重量部である。
【0071】
前記医薬組成物が酸(2)と界面活性剤(3)を含有する場合、界面活性剤(3)の含有量は、酸(2)10重量部に対して、例えば0.1重量部以上であり、好ましくは0.5重量部以上、特に好ましくは0.8重量部以上、最も好ましくは1重量部以上である。尚、前記含有量の上限値は、例えば5重量部、好ましくは3重量部、特に好ましくは2.5重量部、最も好ましくは2重量部、とりわけ好ましくは1.5重量部である。
【0072】
(その他)
前記組成物は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)、酸(2)、界面活性剤(3)以外にも必要に応じて他の成分を1種又は2種以上含有することができる。
【0073】
他の成分としては、例えば、油性媒体(4)、甘味剤、保存剤、香料、着色剤、増粘剤、キレート剤、抗酸化剤等が挙げられる。
【0074】
前記組成物としては、組成物に流動性を付与して医薬組成物の製剤し易さを向上すると共に、組成を均一化することで、溶解性に優れた医薬組成物を歩留まり良く製造することができる点において、油性媒体(4)を含有することが好ましい。
【0075】
(油性媒体(4))
前記油性媒体(4)は、組成物に流動性を付与して、カプセル外殻内に充填し易くするための成分である。
【0076】
前記油性媒体としては、25℃で液体の油性媒体が好ましい。前記油性媒体には、高極性油と低極性油が含まれるが、なかでも低極性油を少なくとも含有することが好ましい。すなわち、前記油性媒体(4)としては、25℃で液体の低極性油を少なくとも含有することが特に好ましい。
【0077】
尚、25℃で液体の油性媒体とは、常圧下における融点が25℃未満の油性媒体である。前記油性媒体の融点は、好ましくは15℃以下、特に好ましくは10℃以下である。
【0078】
前記低極性油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、落花生油等の植物油;中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられる。
【0079】
前記MCTは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した化合物である。前記脂肪酸としては、例えば、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸、ラウリン酸などの炭素数8~12の飽和脂肪酸が挙げられる。
【0080】
前記MCTの具体例としては、トリカプリリン、トリカプリル酸グリセリド等が挙げられる。
【0081】
前記油性媒体(4)としては、なかでも、MCTを少なくとも含有することが好ましい。
【0082】
前記油性媒体(4)の全量において、MCTの占める割合は、例えば50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上、とりわけ好ましくは99重量%以上である。
【0083】
前記油性媒体(4)(特に、前記25℃で液体の油性媒体)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、前記組成物全量(100重量%)の例えば30~70重量%である。前記含有量の下限値は、好ましくは40重量%、特に好ましくは45重量%、最も好ましくは50重量%である。また、前記含有量の上限値は、好ましくは65重量%、特に好ましくは60重量%、最も好ましくは55重量%である。
【0084】
前記油性媒体(4)(特に、前記25℃で液体の油性媒体)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)1重量部に対して、例えば0.5重量部以上であり、好ましくは0.6重量部以上、特に好ましくは0.7重量部以上、最も好ましくは0.8重量部以上である。尚、前記含有量の上限値は、例えば2重量部、好ましくは1.8重量部、特に好ましくは1.7重量部、最も好ましくは1.6重量部、とりわけ好ましくは1.5重量部である。
【0085】
前記医薬組成物が界面活性剤(3)と油性媒体(4)を含有する場合、界面活性剤(3)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、油性媒体(4)100重量部に対して、例えば0.1重量部以上(例えば、0.1~5重量部)であり、好ましくは0.5重量部以上、特に好ましくは0.8重量部以上、最も好ましくは1重量部以上である。尚、前記含有量の上限値は、好ましくは3重量部、特に好ましくは2.5重量部、最も好ましくは2重量部である。
【0086】
また、前記油性媒体(4)は、25℃で固体の油性媒体を含有しても良いが、前記組成物の流動性を高める観点から、25℃で固体の油性媒体の含有量は、前記組成物全量(100重量%)の例えば35重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下、とりわけ好ましくは1重量%以下である。
【0087】
25℃で固体の油性媒体の含有量は、前記油性媒体(4)全量の、例えば50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下、とりわけ好ましくは1重量%以下である。
【0088】
尚、25℃で固体の油性媒体(25℃で液体状の油性媒体以外の油性媒体であり、固体のものだけでなく、半固体状のものも含む)とは、常圧下における融点が25℃以上(例えば、25~50℃)の油性媒体である。
【0089】
前記医薬組成物の剤型としては、特に制限がないが、内服し易さの観点から、カプセル剤や錠剤が好ましい。
【0090】
前記医薬組成物がカプセル剤である場合、前記医薬組成物は、前記組成物がカプセル外殻に内包されたものである。
【0091】
前記医薬組成物が錠剤である場合、前記医薬組成物は、前記組成物の打錠成形体である。
【0092】
(医薬組成物の製造方法)
本発明の医薬組成物は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)とを混合する工程(以後、「工程1」と称する場合がある)を経て、製造することができる。
【0093】
また、前記医薬組成物がカプセル剤である場合、すなわち、前記医薬組成物が、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)とを内包するカプセル剤である場合、前記工程1と、前記工程1を経て得られたニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)とを含む組成物をカプセル外殻内に充填する工程2を経て製造することができる。
【0094】
前記カプセル外殻は、上記成分を充填するための容器であり、硬質であっても良いし、軟質であっても良い。
【0095】
硬質のカプセル外殻は、例えば、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの基剤から製造される。前記基剤には、酸化チタン、酸化鉄などの薬学的に許容される着色剤が含まれてもよい。
【0096】
硬質のカプセル外殻の大きさは、治療有効量のニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)を充填できる限り特に限定されず、例えば日本薬局方に記載の0号~5号のサイズが挙げられる。
【0097】
前記医薬組成物が、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)とを内包する硬カプセル剤である場合、前記工程2は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)とを含む組成物を、予め形成された硬質のカプセル外殻内に充填する工程である。前記工程1と工程2を経て、硬カプセル剤を製造することができる。
【0098】
軟質のカプセル外殻は、例えば、ゼラチンに、弾性を付与するためのグリセリンやソルビトール等を添加して得られる基剤を用いて製造される。前記基剤には、酸化チタン、酸化鉄などの薬学的に許容される着色剤が含まれてもよい。
【0099】
前記医薬組成物が、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)とを内包する軟カプセル剤である場合は、前記工程2は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)とを含む組成物を軟質のカプセル外殻基剤で包み込み、シールする工程である。本工程2において、カプセル外殻の形成と前記組成物の充填とを同時に行うことができる。そして、前記工程1と工程2を経て、軟カプセル剤を製造することができる。
【0100】
また、前記医薬組成物が錠剤である場合は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と、酸(2)及び/又は界面活性剤(3)とを含む組成物を打錠成形することにより製造することができる。
【0101】
上記方法で製造された医薬組成物(例えば、カプセル剤や錠剤)は、その後、PTP包装、ビン充填、又はアルミ包装等を施しても良い。
【0102】
[溶出改善剤]
本発明の溶出改善剤は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)を有効成分として含む医薬組成物の、前記有効成分の溶出改善剤であって、上記酸(2)を含有する。
【0103】
前記溶出改善剤は酸(2)以外にも他の成分を含有していても良いが、溶出改善剤全量(100重量%)において酸(2)の占める割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上、とりわけ好ましくは99重量%以上である。前記割合の上限値は100重量%である。
【0104】
前記溶出改善剤の使用量は、前記溶出改善剤中の酸(2)の使用量が、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)100重量部に対して、例えば1~30重量部となる範囲である。前記下限値は、好ましくは5重量部、特に好ましくは10重量部、最も好ましくは12重量部、とりわけ好ましくは15重量部である。また、前記使用量の上限値は、好ましくは25重量部、特に好ましくは20重量部、最も好ましくは18重量部である。
【0105】
前記溶出改善剤の粒子径(D50)(好ましくは、前記溶出改善剤に含まれる酸(2)の粒子径(D50))は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の粒子径(D50)との差が、例えば500μm以下(好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下、最も好ましくは80μm以下)となるよう調整することが好ましい。前記差の下限値は、例えば0μmである。
【0106】
前記溶出改善剤は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)を含む医薬組成物に添加することで、当該医薬組成物を食後に内服した際の、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の、弱酸性の胃内部(pHは、例えば1.2~6.0、好ましくは1.2~4.0)における溶解性を向上させる効果を発揮することができる。前記溶出改善剤を医薬組成物に包含させた場合の、pH1.2の水溶液に浸漬後1時間でのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)溶出率は、例えば70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。pH3.0の水溶液に浸漬後1時間でのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)溶出率は、例えば35%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。
【0107】
尚、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)を含む医薬組成物が前記溶出改善剤を含有しない場合、pH1.2の水溶液に浸漬後1時間でのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)溶出率は40%程度であり、pH3.0の水溶液に浸漬後1時間でのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)溶出率は20%程度である。
【0108】
従って、前記溶出改善剤は、好ましくは弱酸性(pHは、例えば1.2~6.0、好ましくは1.2~4.0)の水溶液中における前記有効成分の溶出改善剤である。
【0109】
[溶出率の改善方法]
本発明の溶出率の改善方法は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)を有効成分として含む医薬組成物に、酸(2)を含有させて、前記有効成分の溶出率を改善する方法である。
【0110】
酸(2)の使用量は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)100重量部に対して、例えば1~30重量部である。前記下限値は、好ましくは5重量部、特に好ましくは10重量部、最も好ましくは12重量部、とりわけ好ましくは15重量部である。また、前記上限値は、好ましくは25重量部、特に好ましくは20重量部、最も好ましくは18重量部である。
【0111】
前記改善方法によれば、弱酸性(pHは、例えば1.2~6.0、好ましくは1.2~4.0)の水溶液中における、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の溶解性を向上させることができる。
【0112】
前記改善方法によれば、pH1.2の水溶液に浸漬後1時間でのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)溶出率は、例えば70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。pH3.0の水溶液に浸漬後1時間でのニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)溶出率は、例えば35%以上、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。
【0113】
従って、前記改善方法は、好ましくは弱酸性(pHは、例えば1.2~6.0、好ましくは1.2~4.0)の水溶液中における前記有効成分の溶出率の改善方法である。
【0114】
[乳化剤]
本発明の乳化剤は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と油性媒体(4)を乳化させる乳化剤(若しくは、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と油性媒体(4)を均一に分散させる分散剤)であって、上記界面活性剤(3)を含有する。
【0115】
前記油性媒体(4)としては、上述の油性媒体(4)と同様の例が挙げられる。
【0116】
前記乳化剤は界面活性剤(3)以外にも他の成分を含有していても良いが、乳化剤全量(100重量%)において界面活性剤(3)の占める割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上、とりわけ好ましくは99重量%以上である。前記割合の上限値は100重量%である。
【0117】
前記乳化剤の使用量は、前記乳化剤中の界面活性剤(3)の使用量が、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)100重量部に対して、例えば0.1重量部以上となる範囲であり、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは0.8重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは1.3重量部以上で、とりわけ好ましくは1.5重量部以上である。尚、前記使用量の上限値は、例えば10重量部、好ましくは5重量部、更に好ましくは4重量部、特に好ましくは3.5重量部、最も好ましくは3重量部、とりわけ好ましくは2.5重量部である。
【0118】
前記乳化剤は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と油性媒体(4)の混合物中に添加することで、油性媒体(4)中においてニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)が凝集するのを抑制して均一に分散させることができ、これによりニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の溶解性(或いは、溶出率)を向上させることができる。
【0119】
[乳化方法]
本発明の乳化方法は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と油性媒体(4)に下記界面活性剤(3)を添加し、必要に応じて撹拌して、前記(1)と油性媒体(4)を乳化させる方法(若しくは、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)と油性媒体(4)を均一に分散させる分散方法)である。
【0120】
前記油性媒体(4)としては、上述の油性媒体(4)と同様の例が挙げられる。
【0121】
界面活性剤(3)の使用量は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)100重量部に対して、例えば0.1重量部以上となる範囲であり、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは0.8重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは1.3重量部以上で、とりわけ好ましくは1.5重量部以上である。尚、前記使用量の上限値は、例えば10重量部、好ましくは5重量部、更に好ましくは4重量部、特に好ましくは3.5重量部、最も好ましくは3重量部、とりわけ好ましくは2.5重量部である。
【0122】
前記乳化方法によれば、油性媒体(4)中においてニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)が凝集するのを抑制して均一に分散させることができ、これによりニンテダニブエタンスルホン酸塩(1)の溶解性(或いは、溶出率)を向上させることができる。
【0123】
以上、本発明の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。また、本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例0124】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0125】
実施例1
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(1)を得た。
すなわち、MCT、ショ糖エルカ酸エステル、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を撹拌混合し、そこへニンテダニブエタンスルホン酸塩(D50:13μm)とフマル酸(pKa1=3.02)を加え、ボルテックスミキサーを用いて均一になるまで撹拌した。これにより、組成物(1)を得た。
得られた組成物(1)を硬カプセル外殻(豚ゼラチンハードカプセル、食品用0号、商品名「Licapsカプセル」、ロンザ(株)製)に充填して、硬カプセル剤(1)を得た。
【0126】
【表1】
【0127】
実施例2
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(2)を得た。
得られた組成物(2)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(2)を得た。尚、クエン酸水和物のpKa1は3.09である。
【0128】
実施例3
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(3)を得た。
得られた組成物(3)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(3)を得た。
【0129】
【表2】
【0130】
実施例4
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(4)を得た。
得られた組成物(4)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(4)を得た。尚、コハク酸のpKa1は4.2である。
【0131】
【表3】
【0132】
実施例5
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(5)を得た。
得られた組成物(5)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(5)を得た。
【0133】
実施例6
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(6)を得た。
得られた組成物(6)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(6)を得た。
【0134】
実施例7
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(7)を得た。
得られた組成物(7)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(7)を得た。
【0135】
実施例8
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(8)を得た。
得られた組成物(8)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(8)を得た。
【0136】
実施例9
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(9)を得た。
得られた組成物(9)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(9)を得た。
【0137】
実施例10
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(10)を得た。
得られた組成物(10)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(10)を得た。
【0138】
比較例1
下記表に記載の処方(単位は重量部)で組成物(11)を得た。
得られた組成物(11)を硬カプセル外殻(サイズ0号)に充填して、硬カプセル剤(11)を得た。
【0139】
【表4】
【0140】
実施例及び比較例で得られた硬カプセル剤について、下記評価を行った。
【0141】
(評価1)
下記方法で溶出試験を行った。結果を図1~10に示す。
<溶出試験条件>
第18改正日本薬局方の溶出試験法に規定された回転バスケット法(100メッシュ、100rpm)により、下記試験液(37±0.5℃、900mL)を使用して、pH1.2又はpH3.0雰囲気におけるニンテダニブエタンスルホン酸塩の溶出速度を測定した。
pH1.2の試験液:溶出試験第1液を用いた
pH3.0の試験液:マッキルベイン緩衝液を用いた
【0142】
図1~10から、本発明の医薬組成物(剤型は、硬カプセル剤)は、酸(2)又は界面活性剤(3)を含有するため、酸(2)及び界面活性剤(3)を含有しない比較例に比べて、高い溶出率を示し、弱酸性条件下でも、溶出率に低下を抑制できることが分かる。
【0143】
(評価2)
実施例1で得られた硬カプセル剤をアルミピロー包装し、これをガラス瓶内に入れ、このガラス瓶を60℃条件下で7日間保存する苛酷試験に付した。そして、苛酷試験後の硬カプセル剤について、(評価1)と同様の方法で溶出試験を行った。結果を図3、4に示す。
【0144】
図3、4から、本発明の医薬組成物(硬カプセル剤)は、保存安定性が高く、前記苛酷条件下に保存しても、溶解性の低下を抑制できることが分かる。
【0145】
(評価3)
実施例1、3で得られた硬カプセル剤を(評価2)と同様の方法で苛酷試験に付し、苛酷試験後のカプセル剤を、水/アセトニトリル混液(1/1)に溶解したものをサンプルとして使用し、液体クロマトグラフィー分析により、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の加水分解物である副生物(1-1)、(1-2)の生成量を測定した。結果を下記表に示す。尚、副生物の生成量は、少ない方が保存安定性に優れる。
【0146】
【表5】
※NDは未検出の意味である。
【0147】
表5から、本発明の医薬組成物が酸(2)を含有する場合には、高温条件下でも有効成分濃度を高く維持できることが分かる。そして、酸(2)としてフマル酸を使用した場合に、前記効果が顕著であることが分かる。
【0148】
実施例11
(内容液調製)
下記表に記載の処方(単位は重量部)で内容液(1)を得た。
すなわち、MCTに、ショ糖エルカ酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を撹拌混合し、そこへフマル酸(pKa1=3.02)を加え、更にニンテダニブエタンスルホン酸塩(D50:13μm)を加え、ホモジナイザーを用いて均一になるまで撹拌した。その後、脱泡し、目開き710μmの篩で篩過した。これにより、内容液(1)を得た。
【0149】
(軟質カプセル外殻基剤調製)
下記表に記載の処方(単位は重量部)で軟質カプセル外殻基剤を得た。
すなわち、精製水に、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、及び三二酸化鉄を加え、ホモジナイザーを用いて分散させ、その後、目開き75μmの篩で篩過した。これにより、色素分散液を調製した。
別途、タンクに、精製水と濃グリセリンを加えて混和し、ここに、前記色素分散液溶液を加えて混和した。その後、ゼラチンを加え、溶解させた後、脱泡及び必要に応じて加水して、粘度を調整した。これにより、軟質カプセル外殻基剤(1)を得た。
【0150】
(軟カプセル剤の成形)
前記軟質カプセル外殻基剤(1)を用いて皮膜を形成した。
得られた皮膜を、ロータリー式軟カプセル自動充填機を用いて成形してカプセルを形成すると同時に、カプセル内に前記内容液(1)を充填し、その後、前記カプセルを個片化し、乾燥させて、軟カプセル剤(1)(ニンテダニブエタンスルホン酸塩100mg含有、長径:12.6mm、短径:7.5mm)を得た。
【0151】
実施例12
(内容液調製)
下記表に記載の処方(単位は重量部)で内容液(2)を得た。
【0152】
(軟カプセル剤の成形)
内容液(1)に代えて内容液(2)を使用した以外は実施例11と同様にして、軟カプセル剤(2)(ニンテダニブエタンスルホン酸塩150mg含有、長径:14.2mm、短径:8.5mm)を得た。
【0153】
【表6】
【0154】
実施例11で得られた軟カプセル剤について、下記評価を行った。
【0155】
(評価4)
(評価1)と同様の方法で溶出試験を行った。結果を図11、12に示す。
【0156】
(評価5)
実施例11で得られた軟カプセル剤をアルミピロー包装し、これを40℃、75%RHの条件下で1か月保存する加速試験に付した。そして、加速試験後のカプセル剤について、(評価1)と同様の方法で溶出試験を行った。結果を図11、12に示す。
【0157】
図11、12から、本発明の医薬組成物は、軟カプセル剤である場合にも、保存安定性が高く、長期に亘って、安定的に高い溶解性を示すことが分かる。
【0158】
以上のまとめとして、本開示の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と、
酸(2)及び/又は下記界面活性剤(3)と、
を含む医薬組成物。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
[2] 前記酸(2)が、常圧下における融点が30℃超の酸である、[1]に記載の医薬組成物。
[3] 前記酸(2)が、pKaが10以下の酸である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[4] 前記酸(2)が有機酸である、[1]~[3]の何れか1つに記載の医薬組成物。
[5] 前記酸(2)がフマル酸、コハク酸、及びクエン酸から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の医薬組成物。
[6] 前記酸(2)の含有量が、前記(1)100重量部に対して1~30重量部である、[1]~[5]の何れか1つに記載の医薬組成物。
[7] 更に、油性媒体(4)を含む、[1]~[6]の何れか1つに記載の医薬組成物。
[8] 剤型がカプセル剤又は錠剤である、[1]~[7]の何れか1つに記載の医薬組成物。
[9] メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と、酸(2)及び/又は下記界面活性剤(3)と、を混合する工程を経て、[1]~[8]の何れか1つに記載の医薬組成物を得る、医薬組成物の製造方法。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
[10] メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)を有効成分として含む医薬組成物の、前記有効成分の溶出改善剤であって、
酸(2)を含有する、溶出改善剤。
[11] メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)を有効成分として含む医薬組成物に、酸(2)を含有させて、前記有効成分の溶出率を改善する、溶出改善方法。
[12] メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と油性媒体(4)を乳化させる乳化剤であって、下記界面活性剤(3)を含有する、乳化剤。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
[13] メチル(3Z)-3-[({4-[N-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド]フェニル}アミノ)(フェニル)メチリデン]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-カルボキシレート モノエタンスルホネート(1)と油性媒体(4)に下記界面活性剤(3)を添加して、前記(1)と油性媒体(4)を乳化させる、乳化方法。
界面活性剤(3):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(3-1)と、ショ糖脂肪酸エステル及び(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物(3-2)とを含み、HLBが2~9である
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12