(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104105
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240726BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240726BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
E04H9/02 321F
F16F15/02 Z
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008167
(22)【出願日】2023-01-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名:2022年度大会(北海道) 学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集 第611~614頁 発行者名:一般社団法人 日本建築学会 発行日:令和4年7月20日 集会名:2022年度日本建築学会大会(北海道)(オンライン開催、http://taikai2022.aij.or.jp/#lecture、講演番号:22306、22307) 主催者:一般社団法人 日本建築学会 開催日:令和4年9月8日(開催期間:令和4年9月5~8日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り コンステックHD・テクニカルレポート25号、第15~22頁 発行者名:株式会社コンステック 発行日:令和4年10月7日 展示会名:コンステックグループテクノフェア2022(リアル会場:東京流通センター第2展示場Eホール(東京都大田区平和島6-1-1)、オンライン会場:https://cons-technofair.jp) 主催者:株式会社コンステックホールディングス 開催日:令和4年11月2~3日(令和4年12月13日以降、https://cons-technofair.jpでアーカイブデータをウェブ公開) とびしま技報第70号、第ix頁、第41~44頁 発行者名:飛島建設株式会社 発行日:令和4年11月30日(令和5年1月10日以降、https://www.tobishima.co.jp/laboratory/technique/pdf/70/gihou_70-2022-g09.pdf、https://www.tobishima.co.jp/laboratory/technique/pdf/70/gihou_70-2022-09.pdfでウェブ公開)
(71)【出願人】
【識別番号】000130374
【氏名又は名称】株式会社コンステック
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公平
(72)【発明者】
【氏名】津之下 睦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅春
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 晶子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】竹内 章博
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雄二郎
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AC22
2E139AC32
2E139BA06
2E139BA08
2E139BD24
3J048AA06
3J048AC06
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA38
3J066AA26
3J066BA03
3J066BF01
3J066BG05
(57)【要約】
【課題】より優れた制振性能を有する制振構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の制振構造1は、それぞれが第1の方向X1に延び、第1の方向X1に略垂直な第2の方向X2で互いに離間する上側横架材UBおよび下側横架材LBの間に配置され、下側横架材LBに固定される支持部材2と、支持部材2と上側横架材UBとに接合される制振装置3とを備え、制振装置3が、支持部材2に固定される第1の固定部31と、上側横架材UBに固定される第2の固定部32と、第1の固定部31と第2の固定部32との間に延びる制振部33とを備え、制振部33が、少なくとも部分的に、支持部材2および/または上側横架材UBの内部に埋設されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが第1の方向に延び、前記第1の方向に略垂直な第2の方向で互いに離間する上側横架材および下側横架材の間に配置される制振構造であって、
前記制振構造が、
前記上側横架材および前記下側横架材の一方に固定される支持部材と、
前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材とに接合される制振装置と
を備え、
前記制振装置が、
前記支持部材に固定される第1の固定部と、
前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材に固定される第2の固定部と、
前記第1の固定部と前記第2の固定部との間に延びる制振部と
を備え、
前記制振部が、少なくとも部分的に、前記支持部材、ならびに/または、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、もしくは前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材の内部に埋設される、
制振構造。
【請求項2】
前記制振部が、低降伏点鋼材プレートにより形成される、
請求項1記載の制振構造。
【請求項3】
前記第1の方向における前記制振部の近傍において、前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に前記第2の方向で間隙が設けられ、
前記第1の方向における前記制振部から離間した位置において、前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に支圧材が設けられる、
請求項1または2記載の制振構造。
【請求項4】
前記支圧材と、前記支持部材、または、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、もしくは前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に、摺動促進材が設けられる、
請求項3記載の制振構造。
【請求項5】
前記支持部材が、ほぞ継ぎおよび支持部材用固定部材により、前記下側横架材に固定され、
前記制振装置が、前記支持部材と前記上側横架材とに接合される、
請求項1または2記載の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の耐震性や制振性を向上することを目的に、たとえば特許文献1に開示されるような制振構造物が用いられている。特許文献1の制振構造物は、天井梁に固定される第1間柱と、床梁に固定される第2間柱と、第1間柱と第2間柱との間に連結される制振装置とから形成されている。制振装置は、第1間柱に固定される第1固定パネルと、第2間柱に固定される第2固定パネルと、第1固定パネルと第2固定パネルとの間に延びるダンパーパネルとを備えている。この制振構造物では、地震発生時に建造物に作用する振動エネルギーが、第1間柱および第2間柱を介して制振装置に伝達され、制振装置のダンパーパネルが塑性変形することにより、振動エネルギーが減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制振構造物では、制振装置のダンパーパネルが塑性変形することによって振動エネルギーが吸収されるが、ダンパーパネルは、塑性変形する際に、面外方向に座屈する可能性がある。ダンパーパネルが面外方向に座屈すると、ダンパーパネルが損傷して、面内方向の振動エネルギーを十分に吸収できなくなる。特に、建造物が木造の場合には、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などと比べて、振動エネルギーを受けた際の梁の変位が大きくなるため、ダンパーパネルが座屈する可能性が高くなり、間柱が梁に対して捩れてしまう可能性もある。したがって、特許文献1の制振構造物では、十分な制振性能を得ることができない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、より優れた制振性能を有する制振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制振構造は、それぞれが第1の方向に延び、前記第1の方向に略垂直な第2の方向で互いに離間する上側横架材および下側横架材の間に配置される制振構造であって、前記制振構造が、前記上側横架材および前記下側横架材の一方に固定される支持部材と、前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材とに接合される制振装置とを備え、前記制振装置が、前記支持部材に固定される第1の固定部と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材に固定される第2の固定部と、前記第1の固定部と前記第2の固定部との間に延びる制振部とを備え、前記制振部が、少なくとも部分的に、前記支持部材、ならびに/または、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、もしくは前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材の内部に埋設されることを特徴とする。
【0007】
また、前記制振部が、低降伏点鋼材プレートにより形成されることが好ましい。
【0008】
また、前記第1の方向における前記制振部の近傍において、前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に前記第2の方向で間隙が設けられ、前記第1の方向における前記制振部から離間した位置において、前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に支圧材が設けられることが好ましい。
【0009】
また、前記支圧材と、前記支持部材、または、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、もしくは前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に、摺動促進材が設けられることが好ましい。
【0010】
また、前記支持部材が、ほぞ継ぎおよび支持部材用固定部材により、前記下側横架材に固定され、前記制振装置が、前記支持部材と前記上側横架材とに接合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より優れた制振性能を有する制振構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制振構造の正面図である。
【
図3】
図1の制振構造の別の変形例の正面図である。
【
図6】
図1の制振構造に含まれる制振装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る制振構造を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例にすぎず、本発明の制振構造は以下の例に限定されることはない。
【0014】
本実施形態の制振構造1は、建築物の耐震性や制振性を向上することを目的に、
図1に示されるように、建築物の架構に組み込まれて使用される。制振構造1が組み込まれる架構は、それぞれが第1の方向X1(図示された例では水平方向)に延び、第1の方向X1に略垂直な第2の方向X2(図示された例では鉛直方向)で互いに離間する上側横架材UBおよび下側横架材LBを備えている。架構はさらに、それぞれが第2の方向X2に沿って延び、第1の方向X1で互いに離間する第1の柱P1および第2の柱P2を備えている。第1および第2の柱P1、P2のそれぞれは、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに固定されている。制振構造1が組み込まれる架構を有する建築物としては、特に限定されることはなく、木製部材により構成される木造建築物や、鋼製部材により構成される鋼造建築物などが例示される。木造建築物の場合は、木製の上側および下側横架材UB、LBならびに木製の第1および第2の柱P1、P2により架構が形成され、鋼造建築物の場合は、鋼製の上側および下側横架材UB、LBならびに鋼製の第1および第2の柱P1、P2により架構が形成される。
【0015】
第1および第2の柱P1、P2は、第2の方向X2(図示された例では鉛直方向)に延びるように設けられ、建築物の上部の荷重を支持する部材である。また、上側および下側横架材UB、LBは、第1および第2の柱P1、P2に対して横方向(図示された例では水平方向)に架け渡され、建築物の上部の荷重を支持するとともに、建築物の上部の荷重を第1および第2の柱P1、P2に伝達する部材である。本実施形態では、上側横架材UBは、第1および第2の柱P1、P2に対して鉛直方向上側で水平方向に延びるように設けられる梁であり、下側横架材LBは、第1および第2の柱P1、P2に対して鉛直方向下側で水平方向に延びるように設けられる梁または土台である。
【0016】
第1および第2の柱P1、P2はそれぞれ、本実施形態では、
図1に示されるように、上側および下側横架材UB、LBに対して、ほぞ継ぎ、および公知のホールダウン金物などの柱用固定部材HDにより固定されている。ただし、第1および第2の柱P1、P2のそれぞれと、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとは、図示された例に限定されることはなく、他の公知の固定方法によって互いに固定されてもよい。
【0017】
制振構造1は、
図1に示されるように、上側横架材UBと下側横架材LBとの間に配置されて、地震動や風などの外乱を受けることにより建築物の架構に生じる振動エネルギーを減衰させる。特に、制振構造1は、第1の方向X1に生じるせん断力を伴う振動エネルギーを減衰させる。制振構造1は、下側横架材LBに固定される支持部材2と、支持部材2と上側横架材UBとに接合される制振装置3とを備えている。制振構造1では、上側および下側横架材UB、LBに生じた振動エネルギーを、上側横架材UBおよび支持部材2を介して制振装置3に伝達し、伝達された振動エネルギーを制振装置3により減衰させる。
【0018】
なお、
図1に示される例では、支持部材2が下側横架材LBに固定され、制振装置3が支持部材2と上側横架材UBとに接合されている。しかし、
図2に示される例のように、支持部材2が上側横架材UBに固定され、制振装置3が支持部材2と下側横架材LBとに接合されてもよいし、
図3に示される例のように、支持部材2が下側横架材LBに固定され、制振装置3が支持部材2と、上側横架材UBに固定される第2の支持部材2Aとに接合されてもよい。ただし、制振構造1は、
図1に示される例のように支持部材2が下側横架材LBに固定され、制振装置3が支持部材2と上側横架材UBとに接合される構成とすることで、
図3に示される例のように2つの支持部材2、2Aが用いられる場合と比べて、支持部材を横架材に固定するための支持部材用固定部材4の点数を減らすことができ、施工コストや施工時間を削減することができる。また、制振構造1は、
図1に示される例のように構成することで、
図2に示される例にように支持部材2が上側横架材UBに固定される場合と比べて、支持部材を横架材に容易に固定することができるので、施工効率を向上させることができる。以下では、支持部材2が下側横架材LBに固定され、制振装置3が支持部材2と上側横架材UBとに接合される
図1の例を挙げて制振構造1を説明し、
図2および
図3の例の説明は省略するが、以下の説明は、
図2および
図3に示される例にも適用可能である。
【0019】
支持部材2は、
図1に示されるように、下側横架材LBに固定されるとともに制振装置3に接合されて、下側横架材LBに対して制振装置3を支持する部材である。支持部材2は、地震動などにより生じる下側横架材LBの第1の方向X1の変位を制振装置3に伝達する。支持部材2は、下側横架材LBに対して制振装置3を支持し、下側横架材LBの第1の方向X1の変位を制振装置3に伝達することができればよく、その形状は特に限定されない。支持部材2は、本実施形態では、
図1に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる略矩形の板状に形成され、その下端側が下側横架材LBに固定され、その上端側が制振装置3に接合される。また、支持部材2は、少なくとも、下側横架材LBに対して制振装置3を支持し、下側横架材LBの第1の方向X1の変位を制振装置3に伝達する際に変形が抑制される強度を有していれば、その材質は特に限定されることはなく、木製部材や鋼製部材により形成される。木製部材としては、直交集成材(CLT)、単板積層材(LVL)、集成材、無垢材などが使用され、鋼製部材としては、公知の鋼材が使用される。なお、
図3に示される第2の支持部材2Aもまた、支持部材2と同様の構成とすることができる。
【0020】
支持部材2は、下側横架材LBに対して制振装置3を支持し、下側横架材LBの第1の方向X1の変位を制振装置3に伝達するように下側横架材LBに固定されていればよく、下側横架材LBに対する固定方法は特に限定されない。本実施形態では、支持部材2は、
図1に示されるように、第1の方向X1の両側において下側横架材LBに当接するように、下側横架材LBに嵌合される。つまり、第1の方向X1において支持部材2と下側横架材LBとの間にクリアランスが設けられることなく、支持部材2と下側横架材LBとが互いに嵌合される。これにより、下側横架材LBが第1の方向X1に変位した際に、第1の方向X1における下側横架材LBと支持部材2との間の相対移動が抑制されるので、下側横架材LBの第1の方向X1の変位が支持部材2に伝達される際に、伝達のロスが抑えられて、変位がより正確に伝達される。本実施形態では、
図1に示されるように、支持部材2に設けられた凸部PRが下側横架材LBに設けられた凹部RCに嵌入されることで、支持部材2と下側横架材LBとが互いに嵌合されている。つまり、支持部材2は、ほぞ継ぎにより、下側横架材LBに固定されている。なお、支持部材2に凹部が設けられ、下側横架材LBに凸部が設けられ、下側横架材LBの凸部が支持部材2の凹部に嵌入されることで、支持部材2と下側横架材LBとが互いに嵌合されてもよい。
【0021】
支持部材2はさらに、
図1に示されるように、第2の方向X2において下側横架材LBに対して近接する方向に押圧されて、下側横架材LBに固定される。つまり、支持部材2と下側横架材LBとは、第2の方向X2において互いに対して押圧されるように互いに対して固定される。これにより、支持部材2と下側横架材LBとの間に第2の方向X2で互いに引き離そうとする引張力が生じたとしても、その引張力に抵抗することで支持部材2の下側横架材LBに対する第2の方向X2の相対移動が抑制される。たとえば下側横架材LBに対して上側横架材UBが第1の方向X1に相対変位する場合、支持部材2には、第1および第2の方向X1、X2を含む面(
図1の紙面)内で、支持部材2が下側横架材LBに対して相対回転する方向に力が加わる。支持部材2が下側横架材LBに対して相対回転してしまうと、下側横架材LBの第1の方向X1の変位を支持部材2に正確に伝達することができない。それに対して、本実施形態では、支持部材2の下側横架材LBに対する第2の方向X2の相対移動が抑制されており、それによって支持部材2の下側横架材LBに対する相対回転も抑制されるので、下側横架材LBの第1の方向X1の変位が支持部材2に伝達される際に、伝達のロスが抑えられて、変位がより正確に伝達される。
【0022】
支持部材2は、上述した理由により、上側横架材UBと下側横架材LBとが第1の方向X1で互いに対して相対変位した際に、第1および第2の方向X1、X2を含む面内での下側横架材LBに対する相対回転が抑制されるように、下側横架材LBに固定されることが好ましい。そのような観点から、第1および第2の方向X1、X2を含む面内における下側横架材LBに対する支持部材2の回転剛性が第1の方向X1における制振装置3のせん断剛性よりも大きくなるように、支持部材2が下側横架材LBに固定されることが好ましい。それにより、少なくとも制振装置3が第1の方向X1でせん断力を受けて変形する前に、支持部材2が下側横架材LBに対して相対回転するのを抑制することができ、下側横架材LBの第1の方向X1の変位を支持部材2に、より正確に伝達することができる。たとえば、本実施形態では、
図1に示されるように、第1の方向X1における支持部材2の両端側において、支持部材2と下側横架材LBとが第2の方向X2で互いに押圧されて、支持部材2と下側横架材LBとが互いに固定される。このようにして第1の方向X1における支持部材2の両端側を下側横架材LBに固定することで、支持部材2の下側横架材LBに対する回転剛性を高め、支持部材2の下側横架材LBに対する相対回転を抑制することができる。その他にも、支持部材2の第1の方向X1の長さを長くするなどして調整することによっても、支持部材2の下側横架材LBに対する回転剛性を高めるなどの調整が可能である。
【0023】
支持部材2は、第2の方向X2で下側横架材LBに対して押圧されるように、下側横架材LBに固定することができればよく、その固定方法は特に限定されない。本実施形態では、
図1、
図4~
図5に示されるように、支持部材2は、支持部材用固定部材4により下側横架材LBに固定される。支持部材用固定部材4は、支持部材2に固定される支持部材側固定部41と、下側横架材LBに固定される横架材側固定部42と、支持部材側固定部41と横架材側固定部42とを連結する連結部43とを備えている。支持部材用固定部材4は、少なくとも支持部材2および下側横架材LBよりも高い強度を有していれば、その構成材料は特に限定されることはなく、鋼材などの硬質材料により形成される。
【0024】
支持部材側固定部41は、支持部材2に当接して固定されるとともに、連結部43に固定される部位である。支持部材側固定部41は、
図4および
図5に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に対して略垂直な第3の方向X3における支持部材2の両方の側面に固定される一対の固定プレート41a、41aを備えている。一対の固定プレート41a、41aはそれぞれ、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、第3の方向X3で支持部材2を挟んで支持部材2の側面に当接するように配置される。一対の固定プレート41a、41aはそれぞれ、第3の方向X3に沿って固定プレート41aを貫通し、支持部材2の内部にまで延びるビスなどの固定具B1により、支持部材2の側面に固定される。支持部材側固定部41が支持部材2にビスで固定されることによって、ビスと支持部材2との間にクリアランスが生じることがない。したがって、支持部材2と支持部材側固定部41との間で行なわれる第1および第2の方向X1、X2の応力伝達のロスを抑制することができる。また、支持部材用固定部材4は、一対の固定プレート41a、41aが第3の方向X3で支持部材2を挟んで支持部材2に当接して固定されることで、支持部材2の下側横架材LBに対する第3の方向X3の相対移動を抑制することができる。
【0025】
横架材側固定部42は、下側横架材LBに当接して固定されるとともに、連結部43に固定される部位である。横架材側固定部42は、
図4および
図5に示されるように、第2の方向X2で下側横架材LBに面して設けられ、第2の方向X2で下側横架材LBに対して押圧されるようにして固定される。横架材側固定部42は、第1および第3の方向X1、X3に沿って延びる板状に形成され、下側横架材LBの第2の方向X2の上面に当接して配置される。横架材側固定部42は、固定具B2によって、下側横架材LBに対して押圧されるように固定される。固定具B2は、本実施形態では、第2の方向X2に沿って横架材側固定部42および下側横架材LBを貫通する固定ボルトとナットの組み合わせである。固定具B2は、固定ボルトとナットとを互いに締め付けることにより、横架材側固定部42と下側横架材LBとを第2の方向X2で互いに近づく方向に引き寄せて固定する。支持部材用固定部材4は、横架材側固定部42が下側横架材LBに対して押圧されるように固定されることで、第2の方向X2で、支持部材2と下側横架材LBとの間の互いに引き離そうとする引張力に抵抗して、支持部材2の下側横架材LBに対する第2の方向X2の相対移動を抑制する。なお、固定具B2は、横架材側固定部42と下側横架材LBとを第2の方向X2で互いに近づく方向に引き寄せて固定することができればよく、固定ボルトとナットの組み合わせ以外にも、たとえば第2の方向X2に沿って延びるビスなどであってもよい。
【0026】
連結部43は、支持部材側固定部41と横架材側固定部42とを互いに連結し、横架材側固定部42に伝達される下側横架材LBの変位を支持部材側固定部41および支持部材2に伝達する。連結部43は、本実施形態では、
図4および
図5に示されるように、第2の方向X2に沿って延びる角形鋼管により構成され、角形鋼管の側面が支持部材2の第1の方向X1の側面に当接して配置される。連結部43は、角形鋼管により構成されることで、支持部材側固定部41の横架材側固定部42に対する第1および第3の方向X1、X3への回転剛性を高める。連結部43は、溶接など公知の固定手段により、支持部材側固定部41および横架材側固定部42に固定される。
【0027】
制振装置3は、上側横架材UBおよび下側横架材LBから伝達される振動エネルギーを減衰させる装置である。制振装置3は、本実施形態では、
図1に示されるように、支持部材2と上側横架材UBとの間に配置され、支持部材2と上側横架材UBとに接合される。ただし、制振装置3は、
図2に示されるように、支持部材2が上側横架材UBに固定される場合は、支持部材2と下側横架材LBとの間に配置され、支持部材2と下側横架材LBとに接合される。また、制振装置3は、
図3に示されるように、支持部材2が下側横架材LBに固定され、第2の支持部材2Aが上側横架材UBに固定される場合は、支持部材2と第2の支持部材2Aとの間に配置され、支持部材2と第2の支持部材2Aとに接合される。
【0028】
制振装置3は、伝達される振動エネルギーを減衰させることができればよく、その構成は特に限定されることはない。制振装置3は、本実施形態では、
図1、
図6~
図7に示されるように、支持部材2に固定される第1の固定部31と、上側横架材UBに固定される第2の固定部32と、第1の固定部31と第2の固定部32との間に延びる制振部33とを備えている。制振装置3は、振動エネルギーが伝達された際に制振部33が変形することにより、振動エネルギーを減衰させる。なお、
図2に示されるように、制振装置3が支持部材2と下側横架材LBとに接合される場合は、第1の固定部31が支持部材2に固定され、第2の固定部32が下側横架材LBに固定される。また、
図3に示されるように、制振装置3が支持部材2と第2の支持部材2Aとに接合される場合は、第1の固定部31が支持部材2に固定され、第2の固定部32が第2の支持部材2Aに固定される。
【0029】
第1および第2の固定部31、32はそれぞれ、支持部材2および上側横架材UBのそれぞれに固定されて、上側横架材UBおよび下側横架材LBから伝達される振動エネルギーを制振部33に伝達する。第1および第2の固定部31、32はそれぞれ、本実施形態では、
図1、
図6~
図7に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成される。第1および第2の固定部31、32はそれぞれ、支持部材2に設けられた挿入溝21および上側横架材UBに設けられた挿入溝UB1に挿入されて、支持部材2および上側横架材UBに埋設された状態で固定される。第1および第2の固定部31、32は、第3の方向X3に沿って延びるドリフトピンなどの固定具B3が、第1および第2の固定部31、32に設けられた貫通孔31a、32aを貫通して、支持部材2および上側横架材UBに打ち込まれることで、支持部材2および上側横架材UBに固定される。第1および第2の固定部31、32が支持部材2および上側横架材UBにドリフトピンで固定されることによって、ドリフトピンと支持部材2および上側横架材UBとの間にクリアランスが生じることがない。したがって、第1および第2の固定部31、32と支持部材2および上側横架材UBとの間で第1の方向X1に沿ってせん断力が伝達される際に伝達ロスが抑制される。第1および第2の固定部31、32は、上側および下側横架材UB、LBから振動エネルギーが伝達された際に、少なくとも制振部33が変形する前に変形しない強度を有していればよく、特に限定されることはないが、制振部33よりも高い降伏点を有する、たとえば普通鋼材により形成することができる。
【0030】
制振部33は、第1および第2の固定部31、32を介して振動エネルギーが伝達された際に、第1および第2の固定部31、32よりも先行して変形して、振動エネルギーを減衰させる。たとえば、
図1において、上側および下側横架材UB、LBが第1の方向X1で互いに対して相対変位した場合、制振部33は、第1の方向X1に沿ってせん断力を受ける。制振部33は、所定以上の大きさのせん断力を受けたときに変形して、振動エネルギーを減衰させる。制振部33は、本実施形態では、所定以上の大きさのせん断力を受けたときに塑性変形する低降伏点鋼材プレートにより形成される。より具体的には、制振部33は、
図6および
図7に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、第1および第2の方向X1、X2を含む面(
図6の紙面)内における制振部33の中心に向かって薄肉になるように形成されている(薄肉部33a参照)。これにより、制振部33に振動エネルギーが伝達された際に、制振部33の全体に応力を分散させることができ、制振部33の第1および第2の固定部31、32との接続部分近傍に応力が集中するのを抑制することができる。したがって、制振部33の第1および第2の固定部31、32との接続部分近傍における局所的な破壊が抑制される。なお、ここでいう低降伏点鋼材とは、公知の制振装置や制振ダンパーで一般的に使用される低降伏点鋼材と同様の性能を有する鋼材を意味する。
【0031】
制振部33は、本実施形態では、
図6に示されるように、正面視で(第3の方向X3に沿ってみたとき)、第1の方向X1に沿って短手軸を有し、第2の方向X2に沿って長手軸を有し、その周縁が湾曲した形状(図示された例では略楕円形状)の薄肉部33aを有している。このように制振部33の薄肉部33aが、上側および下側横架材UB、LBの延びる第1の方向X1に対して略垂直な第2の方向X2に沿って長手軸を有するように形成されることで、上側および下側横架材UB、LBが第1の方向X1に沿って大きく相対変位したとしても、その相対変位に追従して変形することができる。そのような観点から、薄肉部33aの第1の方向X1の長さと第2の方向X2の長さとの比が、1:1~1:2の範囲内であることが好ましく、1:1.1~1:1.5の範囲内であることがさらに好ましく、1:1.2~1:1.4の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0032】
制振部33は、本実施形態では、上述したように、低降伏点鋼材プレートにより形成される。しかし、制振部33は、制振構造1が第1の方向X1に沿った所定以上の大きさのせん断力を受けた場合に、少なくとも上側横架材UB、下側横架材LB、支持部材2、制振装置3の第1および第2の固定部31、32、ならびにそれらの接合部材(たとえば上述した支持部材用固定部材4や固定具B2、B3など)よりも先行して変形する材料により構成されていればよい。したがって、制振部33は、本実施形態のように、せん断力を受けて塑性変形する材料に限定されることはなく、粘性体や粘弾性体など、せん断力を受けて弾性変形する材料により形成されてもよい。
【0033】
制振部33(特に薄肉部33a)は、
図1および
図7に示されるように、少なくとも部分的に、支持部材2および/または上側横架材UBの内部に埋設される。より具体的には、制振部33は、第1の方向X1の変形が許容され、第3の方向X3の変形が抑制されるように、少なくとも部分的に、支持部材2の挿入溝21および/または上側横架材UBの挿入溝UB1に埋設される。これにより、制振部33は、第1の方向X1に沿って所定以上の大きさのせん断力を受けたときに、第1の方向X1に変形しながらも、第3の方向X3の変形が抑制される。これにより、制振部33は、第3の方向X3への座屈が抑制されるので、せん断力の分散が抑制されて、せん断力を伴う振動エネルギーを効果的に減衰させることができる。また、制振部33が第3の方向X3に座屈することが抑制されるので、制振部33の損傷を抑え、上側横架材UBに対する支持部材2の第3の方向X3の捩れを抑えることができる。したがって、制振構造1は、より優れた制振性能を実現することができる。
【0034】
制振部33(特に薄肉部33a)は、本実施形態では、
図1および
図7に示されるように、支持部材2および上側横架材UBの両方に埋設される。より具体的には、制振部33のうち、第2の方向X2の中心から第1の固定部31側の部分が支持部材2に埋設され、制振部33のうち、第2の方向X2の中心から第2の固定部32側の部分が上側横架材UBに埋設される。ただし、制振部33は、第1の方向X1の変形が許容され、第3の方向X3の変形が抑制されればよく、その目的のためには、少なくとも支持部材2および上側横架材UBのいずれか一方に埋設されていていればよい。
【0035】
制振部33(特に薄肉部33a)は、少なくとも部分的に、支持部材2および/または上側横架材UBの内部に埋設されていればよく、埋設される割合は特に限定されることはない。制振部33は、第1の方向X1に沿ったせん断力を受けた際に、第3の方向X3への変形をより抑制するという観点から、正面視で(第3の方向X3に沿ってみたとき)、たとえば、制振部33(特に薄肉部33a)の全体の面積の40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、よりさらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上埋設される。制振部33が支持部材2および上側横架材UBの両方に埋設される場合は、正面視で(第3の方向X3に沿ってみたとき)、制振部33(特に薄肉部33a)のうち、第2の方向X2の中心から第1の固定部31側の部分の面積の40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、よりさらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上が支持部材2に埋設され、制振部33(特に薄肉部33a)のうち、第2の方向X2の中心から第2の固定部32側の部分の面積の40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、よりさらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上が上側横架材UBに埋設される。
【0036】
制振部33は、第1の方向X1に沿ったせん断力を受けた際に、第3の方向X3への変形をより抑制するという観点から、支持部材2の挿入溝21および/または上側横架材UBの挿入溝UB1の第3の方向X3の側壁までの距離が小さい方が好ましい。その観点から、制振部33が埋設された支持部材2の挿入溝21および/または上側横架材UBの挿入溝UB1の部分の第3の方向X3の長さをD1とし、支持部材2の挿入溝21および/または上側横架材UBの挿入溝UB1に埋設された制振部33の部分の第3の方向X3の(最大)長さをD2としたときに、D1/D2が、たとえば1.0~2.0に、好ましくは1.0~1.8に、さらに好ましくは1.0~1.6に、よりさらに好ましくは1.0~1.4に、最も好ましくは1.0~1.2に設定される。
【0037】
制振装置3が接合される支持部材2と上側横架材UBとの間には、
図1に示されるように、第1の方向X1における制振装置3の制振部33の近傍において、第2の方向X2で間隙Gが設けられてもよい。これにより、支持部材2と上側横架材UBとが第2の方向X2で当接する場合と比べて摩擦抵抗が低下するので、支持部材2および上側横架材UBの第1の方向X1の互いに対する相対変位が容易となるとともに、その相対変位が生じたときの制振部33の第1の方向X1における変形が容易となる。間隙Gの大きさは、特に限定されることはなく、支持部材2と上側横架材UBとの間の接触を抑制できる大きさであって、制振部33の第3の方向X3への変形を抑制するために支持部材2および/または上側横架材UBに埋設させる制振部33の大きさを確保するために必要な大きさに適宜設定可能である。その観点から、間隙Gの第2の方向X2の長さをD3とし、制振部33の第2の方向X2の長さをD4としたときに、D3/D4が、たとえば0~0.6、好ましくは0~0.5、さらに好ましくは0~0.4、よりさらに好ましくは0~0.3、最も好ましくは0~0.2に設定される。
【0038】
支持部材2と上側横架材UBとの間に間隙Gが設けられる場合、第1の方向X1における制振部33から離間した位置において、支持部材2と上側横架材UBとの間に支圧材5が設けられる。支圧材5は、少なくとも支持部材2と上側横架材UBとが第2の方向X2で互いに近づく方向に移動しようとしたときに、支持部材2および上側横架材UBの両方に第2の方向X2で直接または間接的に当接するように配置され、第2の方向X2で間隙Gが小さくなるのを抑制する。支圧材5は、支持部材2および上側横架材UBが第2の方向X2で互いに対して近づく方向の力を受けた際に、支持部材2と上側横架材UBとの間で第2の方向X2に生じる圧縮力に抵抗して、支持部材2と上側横架材UBとが第2の方向X2で互いに近づく方向に移動するのを抑制する。これにより、制振装置3の制振部33が第2の方向X2で圧縮力を受けることが抑制されるので、制振部33が第3の方向X3に座屈することが抑制される。
【0039】
支圧材5は、少なくとも第1の方向X1における制振部33から離間した位置に設けられ、支持部材2と上側横架材UBとの間の間隙Gが小さくなるのを抑制することができればよく、その配置される位置は特に限定されることはない。支圧材5は、本実施形態では、
図1に示されるように、支持部材2の第1の方向X1の両側の端部のそれぞれに設けられている。これにより、支圧材5は、間隙Gが小さくなるのを抑制するとともに、支持部材2の上側横架材UBに対する相対回転も抑制することができる。支圧材5は、本実施形態では、支持部材2とは別部材として形成され、支持部材2にビスなどの固定具により固定される。しかし、支圧材5は、間隙Gが小さくなるのを抑制するように支持部材2と上側横架材UBとの間に配置されればよく、たとえば支持部材2と一体的に形成されてもよいし、上側横架材UBに固定されてもよい。支圧材5は、支持部材2と上側横架材UBとの間で第2の方向X2の圧縮力を受けたときに変形が抑制される強度を有していれば、特に限定されることはなく、たとえば木材や鋼材により形成される。
【0040】
本実施形態では、
図8に示されるように、支圧材5と上側横架材UBとの間に摺動促進材6が設けられる。摺動促進材6は、支圧材5と上側横架材UBとの間の摩擦抵抗を低下させ、支持部材2および上側横架材UBの第1の方向X1における互いに対する相対移動を容易にする。支圧材5と上側横架材UBとの間に摺動促進材6が設けられることで、支持部材2および上側横架材UBの第1の方向X1における互いに対する相対移動が円滑に行われるので、上側および下側横架材UB、LBに生じた第1の方向X1の振動エネルギーを、伝達ロスを抑えて、制振装置3に伝達することができる。摺動促進材6は、本実施形態では、支圧材5に取り付けられる支圧材側摺動促進材61と、上側横架材UBに取り付けられる横架材側摺動促進材62とを備えている。横架材側摺動促進材62は、支圧材5が上側横架材UBに対して第1の方向X1に沿って移動し得る範囲に亘るように、第1の方向X1に沿って支圧材側摺動促進材61よりも長くなるように形成されている。摺動促進材6としては、支圧材5と上側横架材UBとの間の摩擦抵抗を低下させることができればよく、特に限定されることはないが、たとえばPTFEテープなどを用いることができる。なお、本実施形態では、支圧材5が支持部材2に固定されているので、支圧材5と上側横架材UBとの間に摺動促進材6が設けられているが、支圧材5が上側横架材UBに固定される場合には、支圧材5と支持部材2との間に摺動促進材6が設けられる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0042】
(1)それぞれが第1の方向に延び、前記第1の方向に略垂直な第2の方向で互いに離間する上側横架材および下側横架材の間に配置される制振構造であって、
前記制振構造が、
前記上側横架材および前記下側横架材の一方に固定される支持部材と、
前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材とに接合される制振装置と
を備え、
前記制振装置が、
前記支持部材に固定される第1の固定部と、
前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材に固定される第2の固定部と、
前記第1の固定部と前記第2の固定部との間に延びる制振部と
を備え、
前記制振部が、少なくとも部分的に、前記支持部材、ならびに/または、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、もしくは前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材の内部に埋設される、
制振構造。
【0043】
(2)前記制振部が、低降伏点鋼材プレートにより形成される、
(1)に記載の制振構造。
【0044】
(3)前記第1の方向における前記制振部の近傍において、前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に前記第2の方向で間隙が設けられ、
前記第1の方向における前記制振部から離間した位置において、前記支持部材と、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、または前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に支圧材が設けられる、
(1)または(2)に記載の制振構造。
【0045】
(4)前記支圧材と、前記支持部材、または、前記上側横架材および前記下側横架材の他方、もしくは前記上側横架材および前記下側横架材の他方に固定される第2の支持部材との間に、摺動促進材が設けられる、
(1)~(3)のいずれか1つに記載の制振構造。
【0046】
(5)前記支持部材が、ほぞ継ぎおよび支持部材用固定部材により、前記下側横架材に固定され、
前記制振装置が、前記支持部材と前記上側横架材とに接合される、
(1)~(4)のいずれか1つに記載の制振構造。
【符号の説明】
【0047】
1 制振構造
2 支持部材
21 挿入溝
2A 第2の支持部材
3 制振装置
31 第1の固定部
31a 貫通孔
32 第2の固定部
32a 貫通孔
33 制振部
33a 薄肉部
4 支持部材用固定部材
41 支持部材側固定部
41a 固定プレート
42 横架材側固定部
43 連結部
5 支圧材
6 摺動促進材
61 支圧材側摺動促進材
62 横架材側摺動促進材
B1、B2、B3 固定具
D1 挿入溝の第3の方向の長さ
D2 制振部の第3の方向の長さ
D3 間隙の第2の方向の長さ
D4 制振部の第2の方向の長さ
G 間隙
HD 柱用固定部材
LB 下側横架材
P1 第1の柱
P2 第2の柱
PR 凸部
RC 凹部
UB 上側横架材
UB1 挿入溝
X1 第1の方向
X2 第2の方向
X3 第3の方向