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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104126
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ソレノイドアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/121 20060101AFI20240726BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20240726BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20240726BHJP
   F16K 31/06 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
H01F7/16 F
F16F9/46
H01F7/16 R
F16K31/06 305G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008201
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小仲井 誠良
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 力
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 立矢
【テーマコード(参考)】
3H106
3J069
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DB37
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD03
3H106EE48
3H106GA26
3H106KK03
3H106KK17
3J069AA54
3J069EE28
3J069EE31
3J069EE41
5E048AA08
5E048AB01
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】安価な素材である磁性体でガイド部材(チューブ)を構成しても、他側固定子(アンカ)の吸引力を確保できるソレノイドアクチュエータを提供する。
【解決手段】ソレノイドアクチュエータ33は、コイル39と、筒状コア41と、アンカ40と、チューブ42と、アマチュア43と、を備えている。チューブ42は、磁性体で構成されている。この場合、チューブ42は、筒状コア41の内側に配される一側部(上部)としての第2筒部42C、アンカ40の外側かつボビン38の内側に配される他側部(下部)としての第3筒部42D、および、第2筒部42Cと第3筒部42Dとを接続する中間部としての第2接続部42F、を有している。第2接続部42Fは、ボビン38の内周および筒状コア41の他端(下端)に接触している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状を有するボビンに巻回されたコイルと、
前記ボビンの内周一方側に固定される一側固定子と、
前記一側固定子に所定の隙間を有して前記ボビンの内周他方側に配置される他側固定子と、
ガイド部材であって、
前記一側固定子の内側に配される一側部、
前記他側固定子の外側かつ前記ボビンの内側に配される他側部、および、
前記ボビンの内周または前記一側固定子の他端に接触し、前記一側部と前記他側部とを接続する中間部、を有し、磁性体で構成されるガイド部材と、
前記ガイド部材および前記他側固定子の内周面を移動可能な可動子と、
を備えるソレノイドアクチュエータ。
【請求項2】
前記中間部は、周方向面の一部の前記ボビンまたは前記一側固定子に対する接触度合いが、周方向面の他部の前記ボビンまたは前記一側固定子に対する接触度合いと異なる、
請求項1に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項3】
前記ソレノイドアクチュエータは、
前記一側固定子、前記他側固定子、および、前記ガイド部材を収容すると共に内周面に第1の溝を有するハウジング部材と、
前記第1の溝の中に配されて前記一側固定子との相対位置を位置決めするクリップと、をさらに備え、
前記中間部は、前記一側固定子を前記クリップに押し付ける方向の力を付与する、
請求項1に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項4】
円筒形状を有するボビンに巻回されたコイルと、
一部が前記ボビンの鍔部に埋め込まれ、他部が前記ボビンの径方向外側に延出する腕固定子と、
前記ボビンの内周面に嵌入され、前記腕固定子の前記一部と接する磁性体で構成されたガイド部材と、
前記ガイド部材の内周一方側に固定される一側固定子と、
前記一側固定子に所定の隙間を有して前記ガイド部材の内周他方側に配置される他側固定子と、
を備えるソレノイドアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば減衰力調整式緩衝器の減衰力調整機構に用いられるソレノイドアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
4輪自動車等の車両は、車体(ばね上)側と各車輪(ばね下)側との間に緩衝器(ダンパ)が設けられている。このような車両の緩衝器として、走行条件、車両の挙動等に応じて減衰力を可変に調整する減衰力調整式油圧緩衝器(減衰力調整式緩衝器)が知られている。減衰力調整式油圧緩衝器は、車両のセミアクティブ式サスペンションを構成している。
【0003】
減衰力調整式油圧緩衝器は、例えば、減衰力調整バルブの開弁圧を減衰力可変アクチュエータ(減衰力調整機構)により調整することで、発生減衰力を可変に調整する。減衰力可変アクチュエータとしては、例えば、ソレノイドアクチュエータが用いられている。ここで、特許文献1には、コイルの内周側に有底筒状のキャップ部材(ガイド部材)が設けられたソレノイド(ソレノイドアクチュエータ)が記載されている。キャップ部材(ガイド部材)の内部は、可動子が摺動する。また、キャップ部材(ガイド部材)は、内圧の隔壁部材としての機能も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-211062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のソレノイドによれば、キャップ部材(ガイド部材)は、他側固定子(アンカ)の吸引力(電磁力)が短絡しないように、非磁性体で構成している。しかし、SUS304等の非磁性体は高価である。
【0006】
本発明の目的の一つは、安価な素材である磁性体でガイド部材を構成しても、他側固定子の吸引力を確保できるソレノイドアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、好ましくは、円筒形状を有するボビンに巻回されたコイルと、前記ボビンの内周一方側に固定される一側固定子と、前記一側固定子に所定の隙間を有して前記ボビンの内周他方側に配置される他側固定子と、ガイド部材であって、前記一側固定子の内側に配される一側部、前記他側固定子の外側かつ前記ボビンの内側に配される他側部、および、前記ボビンの内周または前記一側固定子の他端に接触し、前記一側部と前記他側部とを接続する中間部、を有し、磁性体で構成されるガイド部材と、前記ガイド部材および前記他側固定子の内周面を移動可能な可動子と、を備えるソレノイドアクチュエータである。
【0008】
また、本発明は、好ましくは、円筒形状を有するボビンに巻回されたコイルと、一部が前記ボビンの鍔部に埋め込まれ、他部が前記ボビンの径方向外側に延出する腕固定子と、前記ボビンの内周面に嵌入され、前記腕固定子の前記一部と接する磁性体で構成されたガイド部材と、前記ガイド部材の内周一方側に固定される一側固定子と、前記一側固定子に所定の隙間を有して前記ガイド部材の内周他方側に配置される他側固定子と、を備えるソレノイドアクチュエータである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価な素材である磁性体でガイド部材を構成しても、他側固定子の吸引力を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態によるソレノイドアクチュエータが組込まれた減衰力調整式緩衝器を示す縦断面図である。
図2図1中の減衰力調整機構を拡大して示す断面図である。
図3】コイル通電時の減衰力調整機構を示す図2と同様位置の断面図である。
図4図3中のソレノイドアクチュエータを示す断面図である。
図5図4中のガイド部材(チューブ)を単体で示す断面図である。
図6図4中のガイド部材(チューブ)を単体で示す斜視図である。
図7】実施形態によるソレノイドアクチュエータを簡略化して示す説明図である。
図8】第1の変形例によるソレノイドアクチュエータを示す断面図である。
図9図8中のガイド部材(チューブ)を単体で示す断面図である。
図10図8中のガイド部材(チューブ)を単体で示す斜視図である。
図11】第1の変形例によるソレノイドアクチュエータを簡略化して示す説明図である。
図12】第2の変形例によるソレノイドアクチュエータを簡略化して示す説明図である。
図13】第3の変形例によるソレノイドアクチュエータを示す断面図である。
図14】第3の変形例によるソレノイドアクチュエータを簡略化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態および変形例によるソレノイドアクチュエータを、4輪自動車等の車両に組込まれる減衰力調整式緩衝器(減衰力調整式油圧緩衝器)の減衰力調整機構(減衰力調整装置)に用いた場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1ないし図7は、実施形態を示している。図1において、減衰力調整式油圧緩衝器1(以下、緩衝器1とする)は、シリンダとしての外筒2および内筒4と、ピストン5と、ピストンロッド8と、減衰力調整機構17と、を含んで構成されている。外筒2は、有底筒状に形成されており、緩衝器1の外殻を構成している。外筒2の下端側は、ボトムキャップ3により溶接手段等を用いて閉塞されている。外筒2の上端側は、径方向内側に屈曲されたかしめ部2Aとなっている。かしめ部2Aと内筒4との間には、ロッドガイド9とシール部材10が設けられている。一方、外筒2の下部側には、中間筒12の接続口12Cと同心に開口2Bが形成されている。外筒2には、開口2Bと対向して減衰力調整機構17が取付けられている。また、ボトムキャップ3には、例えば車両の車輪側に取付けられる取付アイ3Aが設けられている。
【0013】
外筒2内には、外筒2と同軸に内筒4が設けられている。内筒4は、外筒2と共にシリンダを構成している。内筒4は、下端側がボトムバルブ13に嵌合して取付けられている。内筒4の上端側は、ロッドガイド9に嵌合して取付けられている。外筒2内および内筒4内には、作動流体としての作動液(油液)が封入されている。なお、作動液としてはオイルに限らず、例えば添加剤を混在させた水等でもよい。内筒4と外筒2との間には、環状のリザーバ室Aが形成されている。リザーバ室A内には、油液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室Aは、ピストンロッド8の進入および退出を補償する。内筒4の長さ方向(軸方向)の途中位置には、ロッド側油室Bを環状油室Dに常時連通させる油穴4Aが径方向に穿設されている。
【0014】
ピストン5は、内筒4内に摺動可能に挿入されている。ピストン5は、内筒4内をロッド側油室Bとボトム側油室Cとに区画している。ピストン5には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路5A,5Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。ピストン5の下端面には、伸長側のディスクバルブ6が設けられている。伸長側のディスクバルブ6は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路5Aを介してボトム側油室C側にリリーフする。リリーフ設定圧は、減衰力調整機構17がハードに設定されたときの開弁圧より高い圧に設定されている。
【0015】
ピストン5の上端面には、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する縮み側逆止弁7が設けられている。逆止弁7は、ボトム側油室C内の油液がロッド側油室Bに向けて各油路5B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。逆止弁7の開弁圧は、減衰力調整機構17がソフトに設定されたときの開弁圧より低い圧に設定され、実質的に減衰力を発生しない。この実質的に減衰力を発生しないとは、ピストン5やシール部材10のフリクション以下の力であり、車の運動に対し影響しない。
【0016】
ピストンロッド8は、内筒4内を軸方向に延びている。ピストンロッド8は、下端側が内筒4内に挿入されている。ピストンロッド8の下端側には、ナット8Aによりピストン5が固定されている。ピストンロッド8は、上端側がロッドガイド9を介して外筒2および内筒4の外部に突出している。なお、ピストンロッド8の下端をさらに延ばしてボトム部(例えば、ボトムキャップ3)側から外向きに突出させ、所謂、両ロッドとしてもよい。
【0017】
内筒4の上端側には、段付円筒状のロッドガイド9が設けられている。ロッドガイド9は、内筒4の上側部分を外筒2の中央に位置決めすると共に、その内周側でピストンロッド8を軸方向に摺動可能にガイドする。ロッドガイド9と外筒2のかしめ部2Aとの間には、環状のシール部材10が設けられている。シール部材10は、中心にピストンロッド8が挿通される孔が設けられた金属性の円輪板にゴム等の弾性材料を焼き付けたもので、内周がピストンロッド8の外周側に摺接することによりピストンロッド8との間をシールしている。
【0018】
シール部材10には、下面側にロッドガイド9と接触するように延びるチェック弁としてのリップシール10Aが形成されている。リップシール10Aは、油溜め室11とリザーバ室Aとの間に配置されている。リップシール10Aは、油溜め室11内の油液等がロッドガイド9の戻し通路9Aを介してリザーバ室A側に向け流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する。
【0019】
中間筒12は、外筒2と内筒4との間に配設されている。中間筒12は、例えば、内筒4の外周側に上下の筒状シール12A,12Bを介して取付けられている。中間筒12は、内筒4の外周側を全周にわたって取囲むように延びた環状油室Dを内部に形成している。環状油室Dは、リザーバ室Aとは独立した油室となっている。環状油室Dは、内筒4に形成した径方向の油穴4Aを介してロッド側油室Bと常時連通している。即ち、環状油室Dは、ピストンロッド8の伸縮によって油液の流れが生じる流路を構成している。中間筒12の下端側には、減衰力調整バルブ18の接続管体20が取付けられる接続口12Cが設けられている。
【0020】
ボトムバルブ13は、内筒4の下端側に位置してボトムキャップ3と内筒4との間に設けられている。ボトムバルブ13は、ボトムキャップ3と内筒4との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを区画するバルブボディ14と、バルブボディ14の下面側に設けられた縮小側のディスクバルブ15と、バルブボディ14の上面側に設けられた伸び側逆止弁16とにより構成されている。バルブボディ14には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能にする油路14A,14Bがそれぞれ周方向に間隔をあけて形成されている。
【0021】
縮小側のディスクバルブ15は、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路14Aを介してリザーバ室A側にリリーフする。リリーフ設定圧は、減衰力調整機構17がハードに設定されたときの開弁圧より高い圧に設定される。
【0022】
伸び側逆止弁16は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。逆止弁16は、リザーバ室A内の油液がボトム側油室Cに向けて各油路14B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。逆止弁16の開弁圧は、減衰力調整機構17がソフトに設定されたときの開弁圧より低い圧に設定され、実質的に減衰力を発生しない。
【0023】
次に、緩衝器1の発生減衰力を可変に調整するための減衰力調整機構17について、図1に加えて、図2および図3も参照しつつ説明する。なお、図2は、ソレノイドアクチュエータ33のコイル39への非通電時に、パイロット弁体32がパイロットボディ26の弁座部26Eから離座した開弁状態を示している。これに対して、図3は、ソレノイドアクチュエータ33のコイル39への通電に基づいて、パイロット弁体32がパイロットボディ26の弁座部26Eに着座した閉弁状態を示している。
【0024】
図1に示すように、減衰力調整機構17は、流路としての環状油室Dの下端側に位置して緩衝器1の外筒2に設けられている。即ち、減衰力調整機構17の先端側(一端側となる図1ないし図3の右端側)は、外筒2の下部側から径方向外向きに突出している。減衰力調整機構17の基端側(他端側となる図1ないし図3の左端側)は、リザーバ室Aと環状油室Dとの間に介在して配置されている。減衰力調整機構17は、減衰力を発生する減衰力調整バルブ18と、減衰力調整バルブ18を駆動するソレノイドアクチュエータ33と、を備えている。
【0025】
具体的には、減衰力調整機構17は、環状油室Dからリザーバ室Aへの油液の流通を、減衰力調整バルブ18により制御することで、減衰力を発生する。即ち、減衰力調整機構17は、減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)の開弁圧を、減衰力可変アクチュエータとして用いられるソレノイドアクチュエータ33で調整することにより、発生減衰力を可変に調整する。
【0026】
減衰力調整バルブ18は、バルブケース19と、接続管体20と、バルブ部材21と、メインバルブ23と、パイロット弁体32と、を備えている。バルブケース19は、略円筒状に形成されており、その基端側が外筒2の開口2Bの周囲に固着され、先端側が外筒2から径方向外向に突出している。接続管体20は、基端側が中間筒12の接続口12Cに固定されると共に、先端側が環状のフランジ部20Aとなってバルブケース19の内側に隙間をもって配設されている。バルブ部材21は、接続管体20のフランジ部20Aに当接している。
【0027】
図2および図3に示すように、バルブケース19の基端側は、径方向内側に向けて突出する内側フランジ部19Aとなっている。バルブケース19の先端側は、バルブケース19の内周側係合部19Bをソレノイドアクチュエータ33の筒状ケース36に係合させてかしめ固定する固定部となっている。バルブケース19の内周面とバルブ部材21の外周面との間、さらに、バルブケース19の内周面とパイロットボディ26等の外周面との間は、リザーバ室Aに常時連通する環状の油室19Cとなっている。
【0028】
接続管体20の内側は、他端側(図2および図3の左端側)が環状油室Dに連通し、一端側(図2および図3の右端側)がバルブ部材21の位置まで延びる油路20Bとなっている。接続管体20のフランジ部20Aとバルブケース19の内側フランジ部19Aとの間には、円環状のスペーサ22が挟持されている。スペーサ22は、油室19Cとリザーバ室Aとを連通させる部材である。このために、スペーサ22には、油室19Cとリザーバ室Aとを連通するため径方向の油路となる切欠き22Aが、放射状に延びて複数個設けられている。なお、スペーサ22を省略し、バルブケース19の内側フランジ部19Aに油路を形成するための切欠き(溝)を放射状に設けてもよい。
【0029】
バルブ部材21には、径方向の中心に位置して軸方向に延びる中心孔21Aが設けられている。また、バルブ部材21には、中心孔21Aの周囲に周方向に離間して複数の油路21Bが設けられている。各油路21Bは、他端側(図2および図3の左端側)が接続管体20の油路20B側に常時連通している。また、バルブ部材21の一端側(図2および図3の右端側)の端面には、油路21Bの他側開口を取囲むように形成された環状凹部21Cと、環状凹部21Cの径方向外側に位置してメインバルブ23が離着座する環状弁座21Dと、が設けられている。バルブ部材21の各油路21Bは、環状油室Dに連通した接続管体20の油路20Bと、リザーバ室Aに連通したバルブケース19の油室19Cとの間で、メインバルブ23の開度に応じた流量の圧油が流通する流路となる。
【0030】
メインバルブ23は、内周側がバルブ部材21とパイロットピン24の大径部24Aとの間に挟持されている。ディスクバルブであるメインバルブ23は、外周側がバルブ部材21の環状弁座21Dに着座している。メインバルブ23の背面側の外周部には、弾性シール部材23Aが固着されている。メインバルブ23は、バルブ部材21の油路21B側(環状油室D側)の圧力を受けて環状弁座21Dから離座することにより開弁する。これにより、バルブ部材21の油路21B(環状油室D側)を、油室19C(リザーバ室A側)に連通させる。この場合、メインバルブ23の開弁圧は、背圧室27内の圧力に応じて可変に制御(調整)される。
【0031】
パイロットピン24は、段付円筒状に形成されており、軸方向中間部に大径部24Aが設けられている。パイロットピン24は、内周側に軸方向に延びる中心孔24Bを有している。中心孔24Bの他端部(接続管体20側の端部)には、オリフィス24Cが形成されている。パイロットピン24は、他端側(図2および図3の左端側)がバルブ部材21の中心孔21Aに圧入されている。この状態で、パイロットピン24の大径部24Aは、バルブ部材21との間でメインバルブ23を挟持している。
【0032】
パイロットピン24の一端側(図2および図3の右端側)は、パイロットボディ26の中心孔26Cに嵌合している。パイロットボディ26の中心孔26Cとパイロットピン24の一端側との間には、軸方向に延びる油路25が形成されている。この油路25は、メインバルブ23とパイロットボディ26との間に形成される背圧室27に連通している。言い換えると、パイロットピン24の一端側の側面には、軸方向に延びる油路25が周方向に複数設けられ、その他の周方向部位は、パイロットボディ26の中心孔26Cに圧入されている。
【0033】
パイロットボディ26は、略有底筒状体として形成されており、内側に段付き穴が形成された円筒部26Aと、該円筒部26Aを塞ぐ底部26Bと、を有している。パイロットボディ26の底部26Bには、パイロットピン24の一端側が嵌合される中心孔26Cが設けられている。パイロットボディ26の底部26Bの他端側には、外径側に位置して全周にわたってバルブ部材21側に突出する突出筒部26Dが一体に設けられている。突出筒部26Dの内周面には、メインバルブ23の弾性シール部材23Aが液密に嵌合しており、これにより、メインバルブ23とパイロットボディ26との間に背圧室27を形成している。背圧室27は、メインバルブ23に対して閉弁方向、即ち、メインバルブ23をバルブ部材21の環状弁座21Dに着座させる方向に押圧する圧力(内圧、パイロット圧)を発生させる。
【0034】
パイロットボディ26の底部26Bの一端側には、パイロット弁体32が離着座する弁座部26Eが、中心孔26Cを囲むように設けられている。この弁座部26Eの外周側には、底部26Bを軸方向に貫通する油路26Fが設けられている。この油路26Fは、メインバルブ23の開弁動作により背圧室27の内圧が過度に上昇したときに、背圧室27の油液を可撓性ディスク26Gを介してパイロット弁体32側に逃す。
【0035】
また、パイロットボディ26の円筒部26Aの内側には、パイロット弁体32をパイロットボディ26の弁座部26Eから離れる方向に付勢するリターンばね28、ソレノイドアクチュエータ33が非通電状態のとき(パイロット弁体32が弁座部26Eから最も離れたとき)のフェールセーフバルブを構成するディスクバルブ29、中心側に油路30Aが形成された保持プレート30等が配設されている。
【0036】
パイロットボディ26の円筒部26Aの開口端には、この円筒部26Aの内側にリターンばね28、ディスクバルブ29、保持プレート30等を配設した状態で、キャップ31が嵌合固定される。キャップ31には、例えば周方向に離間した4個所位置に切欠き31Aが形成されている。図2および図3に矢印Xで示すように、切欠き31Aは、保持プレート30の油路30Aを通じてソレノイドアクチュエータ33側に流れた油液を油室19C(リザーバ室A側)に流通させる流路となっている。
【0037】
パイロット弁体32は、パイロットボディ26と共にパイロットバルブ(制御弁)を構成している。パイロット弁体32は、ソレノイドアクチュエータ33の作動ピン44の他端側(アンカ40側)に設けられている。パイロット弁体32は、段付円筒状に形成されている。パイロット弁体32の先端部、即ち、パイロットボディ26の弁座部26Eに離着座する先端部は、先細りのテーパ状となっている。パイロット弁体32の内側には、ソレノイドアクチュエータ33の作動ピン44が嵌合固定されている。パイロット弁体32の開度(開弁圧)は、ソレノイドアクチュエータ33(コイル39)への通電(電流値)に応じて調節される。
【0038】
即ち、制御弁としてのパイロットバルブ(パイロットボディ26およびパイロット弁体32)は、ソレノイドアクチュエータ33の作動ピン44(より具体的には、作動ピン44に固定されたアマチュア43)の軸方向の移動により制御される。パイロット弁体32の基端側(ソレノイドアクチュエータ33側)には、ばね受となるフランジ部32Aが全周にわたって形成されている。フランジ部32Aは、ソレノイドアクチュエータ33(コイル39)が非通電状態のとき、即ち、パイロット弁体32が弁座部26Eから最も離れたときに、ディスクバルブ29の内周部と当接することにより、フェールセーフバルブを構成している。
【0039】
次に、減衰力調整バルブ18と共に減衰力調整機構17を構成しているソレノイドアクチュエータ33について、図1ないし図3に加えて、図4ないし図7も参照しつつ説明する。なお、図4ないし図7は、図2および図3の左右方向の右側を上側にして符号を付している。即ち、図1ないし図3の左右方向は、図4ないし図7の上下方向に対応する。また、図4は、ソレノイドアクチュエータ33の縦断面(切断面)の位置が図2および図3と異なっている(例えば、周方向に90°ずれている)。
【0040】
ソレノイドアクチュエータ33は、減衰力調整機構17の減衰力可変アクチュエータ(電磁アクチュエータ)として減衰力調整機構17に組み込まれている。即ち、ソレノイドアクチュエータ33は、減衰力調整バルブ18の開閉弁動作を調整するため減衰力調整式緩衝器に用いられる。ソレノイドアクチュエータ33は、カバーとなるオーバモールド34と、ハウジング部材としての筒状ケース36と、ボビン38と、コイル39と、一側固定子(一側固定鉄心)としての筒状コア41と、他側固定子(他側固定鉄心)としてのアンカ40と、ガイド部材としてのチューブ42と、可動子(可動鉄心)としてのアマチュア43と、軸部となる作動ピン44と、支持部材46と、を備えている。ソレノイドアクチュエータ33は、例えば比例ソレノイドにより構成されている。
【0041】
オーバモールド34は、ソレノイドアクチュエータ33の先端側(一端側となる図2および図3の右端側、図4および図7の上端側)の外殻をなしている。オーバモールド34は、内部にコイル39を収容している。オーバモールド34は、熱硬化性樹脂等を用いて全体として有底筒状に形成され、コイル39の外周側を覆っている。オーバモールド34は、コイル39の外周側を覆う円筒状の筒状部34Aと、筒状部34Aの一端側(図2および図3の右端側、図4および図7の上端側)を閉塞する蓋部34Bと、を有している。蓋部34Bの周方向の一部は、リード線からなるケーブル35が接続されたケーブル取出部34Cとなっている。
【0042】
筒状ケース36は、ソレノイドアクチュエータ33の周方向の外殻をなしている。筒状ケース36は、内部にパイロットボディ26およびコイル39を収容している。筒状ケース36は、パイロットバルブ(パイロットボディ26およびパイロット弁体32)の外周側に位置するバルブ側筒部36Aと、オーバモールド34の筒状部34Aの外周側に位置するコイル側筒部36Bと、これらバルブ側筒部36Aとコイル側筒部36Bとの間に位置して径方向内側に全周にわたって突出するフランジ部36Cと、を有している。筒状ケース36は、磁性体(磁性材料)により略円筒状のヨークとして形成され、通電時に磁路を形成する。
【0043】
バルブ側筒部36Aの内径側には、減衰力調整バルブ18のキャップ31が嵌合(内嵌)されている。バルブ側筒部36Aの外径側には、減衰力調整バルブ18のバルブケース19が嵌合(外嵌)されている。バルブ側筒部36Aの外周面には、シール溝36A1が全周にわたって設けられている。シール溝36A1には、シールリング36A2が装着されている。シールリング36A2は、筒状ケース36と減衰力調整バルブ18のバルブケース19との間を液密に封止する。
【0044】
コイル側筒部36Bの内径側には、オーバモールド34の筒状部34Aが嵌合(内嵌)されている。コイル側筒部36Bの先端側(一端側)の内周面とオーバモールド34(筒状部34A)の外周面との間には、筒状ケース36とオーバモールド34との間を抜止めするクリップとしての抜け止めリング47が設けられている。このために、筒状ケース36(コイル側筒部36B)の内周面には、ケース側リング溝36B1が設けられており、オーバモールド34(筒状部34A)の外周面には、コイル側リング溝34A1が設けられている。
【0045】
抜け止めリング47は、例えば、欠円環状(C字状)のリング部材、外径側に突出する凸部と内径側に突出する凹部とが互い違いに連続するリング部材等、弾性変形に基づいて内径寸法を拡大・縮小可能なリング部材である。抜け止めリング47は、ケース側リング溝36B1とコイル側リング溝34A1との間に係合される(架け渡される)ことにより、筒状ケース36からオーバモールド34が抜け出ることが阻止される。また、コイル側筒部36Bの内周面とオーバモールド34(筒状部34A)の外周面との間には、抜け止めリング47よりも筒状ケース36(コイル側筒部36B)の開口側に位置してシールリング36B2が設けられている。シールリング36B2は、筒状ケース36とオーバモールド34との間を液密に封止する。
【0046】
筒状ケース36のフランジ部36Cの内周側は、他端側(図2および図3の左端側、図4および図7の下端側)から一端側に向けて漸次縮径した傾斜面からなるテーパ面36C1が形成されている。フランジ部36Cの内周側には、チューブ42が嵌合されている。この場合、フランジ部36Cのテーパ面36C1とチューブ42との間には、シールリング36C2が設けられている。
【0047】
図2および図3に示すように、結合リング37は、バルブケース19の一端側に位置してバルブケース19の外周側に設けられている。結合リング37は、略円筒状に形成されている。結合リング37の内側には、バルブケース19の内周側係合部19Bに係合する外周側係合部37Aと、内径寸法が外周側係合部37Aの内径寸法よりも小さい鍔部37Bと、が設けられている。結合リング37は、バルブケース19の内周側係合部19Bと筒状ケース36との係合かしめ部を外側から覆って固定するための部材である。即ち、結合リング37は、外周側係合部37Aが内周側係合部19Bに係合することでバルブケース19に固定されている。
【0048】
図2ないし図4に示すように、ボビン38は、オーバモールド34の内周側に設けられている。ボビン38は、熱硬化性樹脂等の樹脂部材により形成されている。ボビン38は、例えばモールド成形により、コイル39の内周側を覆っている。ボビン38の一端側は、オーバモールド34のケーブル取出部34Cと接続されている。ボビン38は、内部に筒状コア41を埋設させている。この場合、筒状コア41の内周側は、ボビン38から露出している。
【0049】
コイル39は、ボビン38の外周側に設けられている。即ち、コイル39は、ボビン38の周囲に巻回されている。コイル39は、外周側がオーバモールド34の筒状部34Aにより覆われている。コイル39の内周側は、ボビン38により覆われている。コイル39は、ケーブル35を通じた電力の供給(通電)により、磁力を発生する。
【0050】
アンカ40は、アマチュア43と軸方向に対向して設けられている。アンカ40は、筒状ケース36およびボビン38(コイル39)の内周側に位置している。アンカ40は、内側に作動ピン44が挿通される筒部40Aと、該筒部40Aの外周面から径方向外側に突出するフランジ部40Bと、を有している。アンカ40は、コイル39により磁力を発生したときに、アマチュア43を吸引する。この場合、フランジ部40Bの外周面は、筒状ケース36のバルブ側筒部36Aの内周面と当接している。
【0051】
これにより、フランジ部40Bとバルブ側筒部36Aとの間で、磁束の受け渡しを効率良く行うことができる。また、筒部40Aのうちアマチュア43と対向する端面には、アマチュア43が吸着したときにアマチュア43が入り込む有底穴部40Cが設けられている。アンカ40の内周側には、ブッシュ嵌合穴40Dが設けられている。ブッシュ嵌合穴40Dには、作動ピン44を支持する第1ブッシュ45Aが嵌着されている。
【0052】
アンカ40のうちアマチュア43側となる一端側は、環状のコニカル部40Eとなっている。即ち、コニカル部40Eは、有底穴部40Cの外周側に形成されている。コニカル部40Eの外周面は、アンカ40とアマチュア43との間の磁気特性をリニア(直線的)にするために、テーパ面状となっている。即ち、コニカル部40Eの外周面は、フランジ部40B側となる他端側に向かう程外径寸法が大きくなる方向に傾斜している。
【0053】
インサートコアまたはプレートとも呼ばれる筒状コア41は、ボビン38の内部に位置している。即ち、筒状コア41は、コイル39の内周側および一端側を覆うように設けられている。筒状コア41は、磁性体(磁性材料)により鍔付き円筒状のヨークとして形成されている。筒状コア41は、内側にアマチュア43が挿通される筒部41Aと、筒部41Aの外周面から径方向外側に突出するフランジ部41Bと、を有している。この場合、アマチュア43に対向する筒部41Aの内周側は、ボビン38から露出しており、筒部41Aとアマチュア43との間で磁束の受け渡しを行うことができる磁気回路(磁路)を構成している。
【0054】
一方、フランジ部41Bの外周側には、コイル39にケーブル35を接続するための切欠き41Cが周方向に複数(例えば、4個)形成されている。切欠き41Cは、ケーブル35を通す他、オーバモールド34およびボビン38の成形時の樹脂回りを向上させる機能を有している。また、フランジ部41Bの外周面は、切欠き41Cが形成されていない部位が筒状ケース36のコイル側筒部36Bの内周面と当接している。これにより、フランジ部41Bとコイル側筒部36Bとの間で、磁束の受け渡しを効率良く行うことができる。
【0055】
チューブ42は、コイル39(ボビン38)の内周側に位置している。即ち、チューブ42は、アンカ40、アマチュア43、支持部材46等を囲むようにコイル39(ボビン38)の内周側に設けられている。図5および図6に示すように、チューブ42は、底部42Aと、第1筒部42Bと、第2筒部42Cと、第3筒部42Dと、第1接続部42Eと、第2接続部42Fと、フランジ部42Gと、を備えている。チューブ42の構成は、後で詳述する。
【0056】
図2ないし図4に示すように、アマチュア43は、コイル39およびチューブ42の内周側に配置されている。アマチュア43は、コイル39の巻回軸線方向に移動可能に設けられた磁性体(磁性材料)からなる可動子(可動鉄心)である。即ち、アマチュア43は、軸方向の移動を可能にコイル39の内側に設けられている。アマチュア43は、作動ピン44に一体的に固定されている。アマチュア43は、例えば鉄系の磁性体により略円筒状に形成されている。アマチュア43は、コイル39により磁力を発生したときに、アンカ40に吸着されることにより推力を発生する。
【0057】
アマチュア43は、アンカ40側に位置してアンカ40と軸方向に対向する厚肉筒部43Aと、支持部材46側に位置して支持部材46と軸方向に対向するテーパ筒部43Bと、を有している。厚肉筒部43Aには、アマチュア43の変位に対してソレノイドアクチュエータ33内の油液が流路抵抗とならないように、周方向に離間して複数の連通路43A1が形成されている。作動ピン44には、厚肉筒部43Aのうち連通路43A1から周方向に外れた部位が圧入されている。アマチュア43の外径寸法は、チューブ42内で軸方向に変位できるように、チューブ42の第2筒部42Cの内径寸法よりも僅かに小さな値に設定されている。
【0058】
作動ピン44は、アンカ40、アマチュア43および支持部材46の内周側を軸方向に延びるようにソレノイドアクチュエータ33内に設けられている。作動ピン44の軸方向の両側は、アンカ40および支持部材46に第1ブッシュ45Aと第2ブッシュ45Bとを介して軸方向の変位を可能に支持されている。作動ピン44は、中間部にアマチュア43が圧入等の手段を用いて一体的に固定(サブアッセンブリ)されている。作動ピン44は、アマチュア43と一体に変位することにより、アマチュア43の推力をパイロット弁体32に伝達する。作動ピン44の内周側には、作動ピン44を軸方向に貫通する連通路44Aが設けられている。連通路44Aは、パイロットバルブを構成するパイロット弁体32側と支持部材46との間を連通する。
【0059】
作動ピン44の他端側(図2および図3の左端側、図4および図7の下端側)は、アンカ40から突出すると共に、その突出端には、減衰力調整バルブ18のパイロット弁体32が固定されている。従って、パイロット弁体32は、アマチュア43と作動ピン44と共に一体的に移動(変位)する。換言すれば、パイロット弁体32の弁開度または開弁圧は、コイル39への通電に基づくアマチュア43の推力に対応したものとなる。これにより、アマチュア43は、自身の軸方向の移動により、減衰力調整バルブ18のパイロットバルブ、即ち、パイロットボディ26の弁座部26Eに対するパイロット弁体32の開閉弁を行うことができる。
【0060】
第1ブッシュ45Aは、アンカ40の内周側に位置してブッシュ嵌合穴40Dに設けられている。第1ブッシュ45Aは、アンカ40に対する作動ピン44の軸受として、作動ピン44の他端側を支持している。第2ブッシュ45Bは、支持部材46の内周側に位置してブッシュ嵌合穴46Cに設けられている。第2ブッシュ45Bは、支持部材46に対する作動ピン44の軸受として、作動ピン44の一端側を支持している。第1ブッシュ45Aおよび第2ブッシュ45Bは、アマチュア43の軸方向両側にそれぞれ設けられている。作動ピン44は、第1ブッシュ45Aおよび第2ブッシュ45Bにより軸方向に変位可能に案内される。
【0061】
支持部材46は、チューブ42の一端側(底部42A側)に設けられている。支持部材46は、チューブ42の第1筒部42Bの内周側に嵌合されている。支持部材46は、作動ピン44の一端部(アマチュア43を挟んでアンカ40とは反対側の端部)を覆うように有底円筒状に形成されている。即ち、支持部材46は、底部46Aと、底部46Aの外周縁から全周にわたって他端側(アマチュア43側、アンカ40側)に向けて軸方向に延びる筒部46Bと、を備えている。そして、筒部46Bの内周側には、ブッシュ嵌合穴46Cが設けられている。ブッシュ嵌合穴46Cには、作動ピン44を支持する第2ブッシュ45Bが嵌着されている。
【0062】
ところで、前述の特許文献1によれば、ソレノイドアクチュエータのキャップ部材(チューブ)は、非磁性体(非磁性材料)により構成されている。しかし、SUS304等の非磁性体は高価である。これに対して、キャップ部材(チューブ)を単に磁性体(磁性材料)で構成しただけでは、本来アンカとアマチュアとの間だけで発生してほしい磁気回路がキャップ部材(チューブ)に逃げてしまう。即ち、アンカとアマチュアとの間でキャップ部材(チューブ)を通過する磁路が形成され(短絡し)、アンカの吸引力(アマチュアの推力)を十分に確保できなくなる可能性がある。そこで、実施形態では、チューブ42をボビン38の内周に沿わせることにより、チューブ42に磁性体を用いても、チューブ42を通過する磁路を抑制できるようにしている。以下、この点について、詳しく説明する。
【0063】
先ず、図1に示すように、緩衝器1は、シリンダとしての内筒4および外筒2と、ピストン5と、ピストンロッド8と、流路となる環状油室D(より具体的には、環状油室Dとリザーバ室Aとの間の流路)と、減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)と、を備えている。減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)は、ピストンロッド8の伸縮によって作動流体の流れが生じる流路、即ち、環状油室Dとリザーバ室Aとの間に設けられている。減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)は、ソレノイドアクチュエータ33によって駆動(開弁圧力が調整)される。
【0064】
また、図2および図3に示すように、減衰力調整機構17は、コイル39と、一側固定子(上側固定子)としての筒状コア41と、他側固定子(下側固定子)としてのアンカ40と、ガイド部材としてのチューブ42と、可動子としてのアマチュア43と、制御弁としての減衰力調整バルブ18(より具体的には、パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)と、を備えている。減衰力調整バルブ18(パイロット弁体32、延いては、メインバルブ23)は、作動ピン44に固定されたアマチュア43の軸方向の移動により制御される。また、図4に示すように、ソレノイドアクチュエータ33は、コイル39と、筒状コア41と、アンカ40と、チューブ42と、アマチュア43と、を備えている。また、ソレノイドアクチュエータ33は、ハウジング部材としての筒状ケース36と、クリップとしての抜け止めリング47と、を備えている。
【0065】
コイル39は、円筒形状を有するボビン38に巻回されている。筒状コア41は、ボビン38の内周側でボビン38の軸方向の一方側(図2および図3の右側、図4および図7の上側、アンカ40とは反対側)に固定されている。アンカ40は、筒状コア41に所定の隙間(軸方向隙間)を有してボビン38の内周側でボビン38の軸方向の他方側(図2および図3の左側、図4および図7の下側、筒状コア41とは反対側)に配置されている。チューブ42は、筒状コア41の内周側、アマチュア43の外周側、アンカ40の外周側に配置されている。アマチュア43は、チューブ42およびアンカ40の内周面を軸方向に移動可能である。筒状ケース36は、筒状コア41、アンカ40およびチューブ42を収容する。これと共に、筒状ケース36は、内周面に第1の溝としてのケース側リング溝36B1を有している。
【0066】
即ち、筒状ケース36(コイル側筒部36B)の内周面には、ケース側リング溝36B1が設けられている。抜け止めリング47は、ケース側リング溝36B1の中に配されている。抜け止めリング47は、筒状ケース36と筒状コア41との相対位置(軸方向の相対位置)を位置決めする。この場合、ソレノイドアクチュエータ33のカバーとなるオーバモールド34は、外周面に第2の溝としてのコイル側リング溝34A1を有している。即ち、オーバモールド34(筒状部34A)の外周面には、コイル側リング溝34A1が設けられている。抜け止めリング47は、ケース側リング溝36B1とコイル側リング溝34A1との間に配置されている。
【0067】
ソレノイドアクチュエータ33は、パイロット弁体32と共に、ソレノイドバルブ(圧力制御弁)を構成している。図3に矢印Mで示すように、ソレノイドアクチュエータ33は、コイル39に電流を流すことで磁束が発生し、アマチュア43、アンカ40、筒状ケース36、筒状コア41により構成される磁気回路を通ることで、アマチュア43がアンカ40に吸引される。これがアマチュア43の推力となって、パイロット弁体32の開閉が制御される。
【0068】
実施形態では、ソレノイドアクチュエータ33のチューブ42を磁性体で構成している。即ち、チューブ42は、磁性体(磁性材料)の薄板により有底の段付円筒状に形成されている。例えば、チューブ42は、1枚の金属板に深絞り加工を施すことにより形成されている。チューブ42は、底部42Aと、第1筒部42Bと、第2筒部42Cと、第3筒部42Dと、第1接続部42Eと、第2接続部42Fと、フランジ部42Gと、を備えている。チューブ42は、ソレノイドアクチュエータ33の内部を液密にして、減衰力調整バルブ18内の油液が外部に流出するのを防ぐ機能を有している。
【0069】
チューブ42の底部42Aは、オーバモールド34の蓋部34Bの内側に位置している。底部42Aは、チューブ42の一端側(図2および図3の右端側、図4ないし図7の上端側)を閉塞している。第1筒部42Bは、支持部材46の外周側となる位置に設けられている。第2筒部42Cは、アマチュア43の外周側となる位置に設けられている。第3筒部42Dは、アンカ40の外周側となる位置に設けられている。この場合、第2筒部42Cの外形寸法は、第1筒部42Bの外形寸法よりも大きい。第3筒部42Dの外形寸法は、第2筒部42Cの外形寸法よりも大きい。
【0070】
第1筒部42Bと第2筒部42Cとの間は、第1接続部42Eにより接続されている。なお、第1接続部42Eを省略し、第1筒部42Bと第2筒部42Cとを同じ外径寸法(1つの筒部)としてもよい。第2筒部42Cと第3筒部42Dとの間は、第2接続部42Fにより接続されている。第2接続部42Fは、ボビン38の内周および筒状コア41の他端(図2および図3の左端、図4および図7の下端)に沿うように傾斜している。フランジ部42Gは、第3筒部42Dの他端側(図2および図3の左端側、図4ないし図7の下端側)を径方向外側に折り曲げることにより形成されている。フランジ部42Gは、筒状ケース36のフランジ部36Cとアンカ40のフランジ部40Bとの間に配置されている。
【0071】
実施形態では、チューブ42は、第2筒部42C、第3筒部42D、および、第2接続部42F、を有している。第2筒部42Cは、筒状コア41の内側に配されて軸方向の一側(図2および図3の右側、図4および図7の上側)に位置する一側部(右部、上部)に対応する。第3筒部42Dは、アンカ40の外側かつボビン38の内側に配されて軸方向の他側(図2および図3の左側、図4および図7の下側)に位置する他側部(左部、下部)に対応する。第2接続部42Fは、第2筒部42Cと第3筒部42Dとを接続する中間部(軸方向の中間部)に対応する。そして、第2接続部42Fは、「ボビン38の内周」および「筒状コア41の軸方向の他端(図2および図3の左端、図4および図7の下端)」に接触している。即ち、チューブ42の第2接続部42Fは、ボビン38の内周および筒状コア41の他端(軸方向の他端)に沿わせている。換言すれば、第2接続部42Fは、筒状コア41の内周側からアンカ40側に進むに従って内径寸法が大きくなる方向に傾斜したテーパ筒部となっている。これにより、筒状コア41とアンカ40との間で、チューブ42の第2接続部42Fおよび第3筒部42Dを、アマチュア43から最大限離間させている。このため、これにより得られる空間49が、磁気遮断材として機能することで、チューブ40を安価な磁性体で構成しつつも磁束の短絡を抑制することができる。
【0072】
なお、図7は、図4のソレノイドアクチュエータ33を簡略化して示している。図4のソレノイドアクチュエータ33は、チューブ42の第2接続部42Fを、ボビン38の内周と筒状コア41の他端との両方に接触させている。即ち、図4の第2接続部42Fは、図7の右半部に示すように、ボビン38の内周と筒状コア41の他端(図7の下端)との両方に接触している。これに対して、図7の左半部に示すように、第2接続部42Fは、ボビン38の内周およびボビン38の他端(図7の下端)に接触させてもよい。即ち、チューブの中間部(第2接続部)は、ボビンの内周、一側固定子(筒状コア)の他端(下端)、または、ボビンの他端(下端)に接触させることができる。ボビンの他端(下端)に接触させる場合には、例えば、図7の左半部に示すように、ボビン38の中間部に内径側に向けて突出して設けられた突部48の他端(下端)に接触させてもよい。いずれの場合も、中間部(接続部)は、一側固定子(筒状コア)と他側固定子(アンカ)との間で中間部(接続部)および/または他側部(筒部)が可動子(アマチュア)から離間するように、ボビンの内周、一側固定子(筒状コア)の他端(下端)、および/または、ボビンの他端(下端)に接触させる。
【0073】
実施形態によるソレノイドアクチュエータ33、減衰力調整機構17および緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0074】
まず、緩衝器1を自動車等の車両に実装するときには、例えば、ピストンロッド8の上端側(突出端側)が車両の車体側に取付けられ、ボトムキャップ3に設けられた取付アイ3A側が車輪側に取付けられる。また、ソレノイドアクチュエータ33のケーブル35は、車両の車体側に設けられたコントローラ(制御装置)等に接続される。
【0075】
車両の走行時には、路面の凹凸等により、上下方向の振動が発生すると、ピストンロッド8が外筒2から伸長、縮小するように変位し、減衰力調整機構17等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。このとき、コントローラによりソレノイドアクチュエータ33のコイル39への電流値を制御し、パイロット弁体32の開度(開弁圧)を調整することにより、緩衝器1(減衰力調整バルブ18)による減衰力を可変に調整することができる。
【0076】
例えば、ピストンロッド8の伸び行程では、内筒4内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側逆止弁7が閉じる。ピストン5のディスクバルブ6の開弁前には、ロッド側油室Bの油液が加圧され、内筒4の油穴4A、環状油室D、中間筒12の接続口12Cを通じて減衰力調整バルブ18の接続管体20の油路20Bに流入する。このとき、ピストン5が移動した分の油液は、リザーバ室Aからボトムバルブ13の伸び側逆止弁16を開いてボトム側油室Cに流入する。なお、ロッド側油室Bの圧力がディスクバルブ6の開弁圧力に達すると、該ディスクバルブ6が開き、ロッド側油室Bの圧力をボトム側油室Cにリリーフする。
【0077】
減衰力調整機構17では、接続管体20の油路20Bに流入した油液は、メインバルブ23の開弁前(ピストン速度低速域)においては、図2および図3に矢印Xで示すように、バルブ部材21の中心孔21A、パイロットピン24の中心孔24B、パイロットボディ26の中心孔26Cを通り、パイロット弁体32を押し開き、パイロットボディ26の内側に流入する。そして、パイロットボディ26の内側に流入した油液は、パイロット弁体32のフランジ部32Aとディスクバルブ29との間、保持プレート30の油路30A、キャップ31の切欠き31A、バルブケース19の油室19Cを通ってリザーバ室Aへ流れる。ピストン速度の上昇に伴って、接続管体20の油路20Bの圧力、即ち、ロッド側油室Bの圧力が、メインバルブ23の開弁圧力に達すると、接続管体20の油路20Bに流入した油液は、図2および図3に矢印Yで示すように、バルブ部材21の油路21Bを通り、メインバルブ23を押し開き、バルブケース19の油室19Cを通ってリザーバ室Aへ流れる。
【0078】
一方、ピストンロッド8の縮み行程では、内筒4内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側逆止弁7が開き、ボトムバルブ13の伸び側逆止弁16が閉じる。ボトムバルブ13(ディスクバルブ15)の開弁前には、ボトム側油室Cの油液がロッド側油室Bに流入する。これと共に、ピストンロッド8が内筒4内に浸入した分に相当する油液が、ロッド側油室Bから減衰力調整バルブ18を介してリザーバ室Aに、伸び行程時と同様の経路で流れる。なお、ボトム側油室C内の圧力がボトムバルブ13(ディスクバルブ15)の開弁圧力に達すると、ボトムバルブ13(ディスクバルブ15)が開き、ボトム側油室Cの圧力をリザーバ室Aにリリーフする。
【0079】
これにより、ピストンロッド8の伸び行程と縮み行程とで、減衰力調整バルブ18のメインバルブ23の開弁前は、パイロットピン24のオリフィス24Cとパイロット弁体32の開弁圧力とによって減衰力が発生し、メインバルブ23の開弁後は、該メインバルブ23の開度に応じて減衰力が発生する。この場合、ソレノイドアクチュエータ33のコイル39への通電によってパイロット弁体32の開弁圧力を調整することにより、ピストン速度に拘わらず、減衰力を直接制御することができる。
【0080】
具体的には、コイル39への通電電流を小さくしてアマチュア43の推力を小さくすると、パイロット弁体32の開弁圧力が低下し、ソフト側の減衰力が発生する。一方、コイル39への通電電流を大きくしてアマチュア43の推力を大きくすると、パイロット弁体32の開弁圧力が上昇し、ハード側の減衰力が発生する。このとき、パイロット弁体32の開弁圧力によって、その上流側の油路25を介して連通する背圧室27の内圧が変化する。これにより、パイロット弁体32の開弁圧力を制御することにより、メインバルブ23の開弁圧力を同時に調整することができ、減衰力特性の調整範囲を広くすることができる。
【0081】
なお、コイル39の断線等によりアマチュア43の推力が失われた場合には、パイロット弁体32がリターンばね28により後退(弁座部26Eから離れる方向に変位)し、パイロット弁体32のフランジ部32Aとディスクバルブ29とが当接する。この状態では、ディスクバルブ29の開弁圧によって減衰力を発生することができ、コイルの断線等の不調時にも、必要な減衰力を得ることができる。
【0082】
ここで、実施形態によれば、チューブ42の第2接続部42Fは、ボビン38の内周および筒状コア41の他端(図2および図3の左端、図4および図7の下端)に接触している。このため、チューブ42の第2接続部42Fをボビン38の内周および筒状コア41の他端に沿わせることができる。これに加えて、チューブ42の第3筒部42Dをボビン38の内周に沿わせることができる。これにより、チューブ42の第2接続部42Fおよび第3筒部42Dを、筒状コア41とアンカ40との間でアマチュア43から最大限離間させることができる。そして、この離間により得られる空間49が、磁気遮断材として機能する。従って、チューブ42を安価な素材である磁性体で構成しても、筒状コア41とアンカ40との間でチューブ42の第2接続部42Fおよび第3筒部42Dを経由する磁束の短絡を抑制することができる。この結果、チューブ42のコストを低減しつつ性能(アマチュア43の推力、アンカ40の吸引力)を確保できる。即ち、安価な素材である磁性体でチューブ42を構成しても、アンカ40の吸引力を確保できる。
【0083】
なお、実施形態では、図7の右半部に示すように、チューブ42の第2接続部42Fをボビン38の内周と筒状コア41の下端(他端)との両方に接触させた場合と、図7の左半部に示すように、第2接続部42Fをボビン38の内周およびボビン38の下端(他端)に接触させた場合とを例に挙げて説明した。この場合、チューブ42の第2接続部42Fは、ボビン38の内周の全周にわたって同じ接触度合、筒状コア41の下端(他端)の全周にわたって同じ接触度合、ボビン38の下端(他端)に全周にわたって同じ接触度合、とすることができる。この場合の「同じ接触度合」は、「ほぼ同じ接触度合」、例えば製造誤差に基づく不可避的な誤差等に伴って接触度合が厳密には相違してしまう場合も含む。
【0084】
これに対して、例えば、図8ないし図11に示す第1の変形例のように、チューブ42の第2接続部51は、周方向の1ないし複数の部分の接触度合を、その他の部分の接触度合に対して積極的に異ならせてもよい。即ち、図8ないし図11に示す第1の変形例では、チューブ42の第2接続部51は、周方向面の一部(近接部51A)のボビン38および筒状コア41に対する接触度合いを、周方向面の他部(離間部51B)のボビン38および筒状コア41に対する接触度合いと異ならせている。
【0085】
換言すれば、チューブ42の第2接続部51は、一部(近接部51A)を、ボビン38の内周面および筒状コア41の他端(下端)に対して浮かせている。このために、チューブ42の第2接続部51は、周方向の1個所位置に、他側固定子となるアンカ40に近付く方向に湾曲した近接部51Aを設けている。近接部51Aは、チューブ42の内側から見るとアンカ40側に向けて突出する凸部となっており、チューブ42の外側から見るとアンカ40側に向けて凹む凹部となっている。これにより、チューブ42の第2接続部51は、近接部51Aと、この近接部51A以外の部位となる離間部51Bとを有している。そして、近接部51Aは、離間部51Bと比較して、ボビン38または筒状コア41に対する接触度合いが低くなる。このため、近接部51Aは、筒状コア41とアンカ40との間でアマチュア43および/またはアンカ40に近付く。この場合、近接部51Aは、性能(アマチュア43の推力、アンカ40の吸引力)を確保できる範囲で設定する。
【0086】
このように、第1の変形例では、チューブ42の中間部(軸方向の中間部)となる第2接続部51は、周方向面の一部となる近接部51Aのボビン38または筒状コア41に対する接触度合いを、周方向面の他部となる離間部51Bのボビン38または筒状コア41に対する接触度合いと異ならせている。このため、チューブ42の第2接続部51のうち接触度合いの低い部位となる近接部51Aで、意図的に磁束を短絡させることができる。即ち、周方向の一部で磁気回路を(動作に影響のない範囲で)異ならせることができる。これにより、アマチュア43の推力(アンカ40の吸引力)が円周方向で不均一となり、アマチュア43に横力(即ち、アマチュア43を径方向にずらす力)を発生させることができる。そして、この横力に基づいて、作動ピン44を傾斜させ、作動ピン44を支承するブッシュ45A,45Bに対して作動ピン44の周方向の一部を押し付けることができる。この結果、アマチュア43の励振を抑制することができる。
【0087】
実施形態および第1の変形例では、筒状ケース36とオーバモールド34との間にクリップとしての抜け止めリング47設け、この抜け止めリング47により、筒状ケース36からオーバモールド34が抜け出ることを阻止する構成となっている。ここで、例えば、図12に示す第2の変形例のように、抜け止めリング47によりチューブ42を板ばねとして活用してもよい。換言すれば、筒状ケース36とオーバモールド34とを組み付けた状態で、チューブ42を弾性変形させることにより、抜け止めリング47に反力を付与してもよい。
【0088】
即ち、図12に示す第2の変形例も、実施形態と同様に、筒状ケース36(コイル側筒部36B)の内周面に第1の溝としてのケース側リング溝36B1が設けられている。また、オーバモールド34(筒状部34A)の外周面には、第2の溝としてのコイル側リング溝34A1が設けられている。そして、抜け止めリング47は、ケース側リング溝36B1とコイル側リング溝34A1との間に架け渡されている。即ち、抜け止めリング47は、ケース側リング溝36B1とコイル側リング溝34A1とに係合している。そして、第2の変形例では、チューブ42の中間部(軸方向の中間部)となる第2接続部61は、筒状コア41を抜け止めリング47に押し付ける方向の力を付与する。このために、第2接続部61の位置は、抜け止めリング47がケース側リング溝36B1とコイル側リング溝34A1との間に係合(架け渡)された状態で、筒状コア41の下端(他端)および/またはボビン38の下端(他端)によってアンカ40側に向けて弾性変形する位置となっている。
【0089】
これにより、抜け止めリング47を用いて筒状ケース36とオーバモールド34とを組み付けた状態で、チューブ42(第2接続部61)は、筒状コア41の他端(図12の下端)が底付きすることに加えて、この筒状コア41の他端によって他側(下側)に押圧されることにより、アンカ40側に弾性変形している。図12では、チューブ42の第2接続部61を拡大して示すと共に、第2接続部61が弾性変形する前の状態を二点鎖線で示している。即ち、第2の変形例では、筒状コア41の他端(下端)がチューブ42の第2接続部61に底付きしていることに加えて、筒状コア41の他端(下端)が第2接続部61を他側(下側)に向けて押圧し、第2接続部61が弾性変形している。
【0090】
そして、この弾性変形による反力として、第2接続部61は、筒状コア41の下端(他端)を直接またはボビン38を介して抜け止めリング47側に押し付ける。このため、この押し付け力によって、抜け止めリング47は、ケース側リング溝36B1とコイル側リング溝34A1とに押し付けられ、これらケース側リング溝36B1とコイル側リング溝34A1との間でがたつくことが抑制される。これにより、筒状コア41が筒状ケース36(コイル側筒部36B)内でがたつくことを抑制でき、筒状コア41を筒状ケース36(コイル側筒部36B)内に安定して収容することができる。しかも、チューブ42とは別に、上記の力を付与するための弾性部材(ばね)を設ける必要がなくなり、部品点数を低減できる。
【0091】
実施形態および第1,第2の変形例では、一側固定子(上側固定子)としての筒状コア41を筒部41Aとフランジ部41Bとを有する鍔付き円筒状に形成すると共に、筒状コア41をチューブ42の外側(外周側)に配置し、かつ、チューブ42の内側(内周側)をアマチュア43が軸方向に変位する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図13および図14に示す第3の変形例のように、一側固定子(上側固定子)としての筒状コア71をチューブ73の内側(内周側)に配置すると共に、この筒状コア71の内側(内周側)でアマチュア43が軸方向に変位する構成としてもよい。
【0092】
即ち、図13および図14に示す第3の変形例では、ソレノイドアクチュエータ33は、コイル39と、腕固定子としての円輪状コア72と、ガイド部材としてのチューブ73と、一側固定子(上側固定子)としての筒状コア71と、他側固定子(下側固定子)としてのアンカ40と、を備えている。コイル39は、円筒形状を有するボビン74に巻回されている。ボビン74は、内部に円輪状コア72を埋設させている。即ち、ボビン74は、筒部74Aと、筒部74Aから径方向外側に全周にわたって突出する鍔部74Bと、を有している。そして、ボビン74の鍔部74Bに円輪状コア72が埋設されている。この場合、円輪状コア72の内周側(内周縁)は、ボビン74から露出している。
【0093】
インサートコアとも呼ばれる円輪状コア72は、一部がボビン74の鍔部74Bに埋め込まれており、他部がボビン74の径方向外側に延出している。即ち、円輪状コア72は、径方向内側部分がボビン74の鍔部74Bに埋め込まれており、径方向の外側部分のうちの少なくともいずれかの部位がボビン74の径方向外側から延出している。そして、円輪状コア72のうちボビン74から径方向外側に延出した部分は、筒状ケース36(コイル側筒部36B)の内周面に接触している。また、円輪状コア72の内径側、より具体的には、円輪状コア72の内周面(内周縁)は、ボビン74のから露出している。そして、円輪状コア72の内周面(内周縁)は、チューブ73の第2筒部73Cの外周面に接触している。
【0094】
チューブ73は、磁性体で構成されている。チューブ73は、底部73Aと、第1筒部73Bと、第2筒部73Cと、第1接続部73Dと、フランジ部73Eと、を備えている。底部73Aは、オーバモールド34の蓋部34Bの内側に位置している。第1筒部73Bは、支持部材46の外周側となる位置に設けられている。第2筒部73Cは、筒状コア71およびアンカ40の外周側となる位置に設けられている。第2筒部73Cの外形寸法は、第1筒部73Bの外形寸法よりも大きい。
【0095】
第1筒部73Bと第2筒部73Cとの間は、第1接続部73Dにより接続されている。第1接続部73Dは、筒状コア71の軸方向の一端(図13の上端)に沿うように傾斜している。なお、第1接続部73Dを省略し、第1筒部73Bと第2筒部73Cとを同じ外径寸法(1つの筒部)としてもよい。フランジ部73Eは、第2筒部73Cから全周にわたって径方向外側に突出している。第1筒部73Bおよび第2筒部73Cは、ボビン74の内側に嵌合されている。また、第2筒部73Cは、円輪状コア72の内周面(内周縁)と接触している。即ち、チューブ73は、ボビン74の内周面に嵌入され、円輪状コア72一部(円輪状コア72の径方向内側部分)と接している。
【0096】
筒状コア71は、チューブ73の内部に位置している。即ち、筒状コア71は、第2筒部73Cの内側に挿通されている。これにより、筒状コア71は、チューブ73の内周でチューブ73の軸方向の一方側(図13および図14の上側、アンカ40とは反対側)に固定されている。この場合、筒状コア71は、径方向外側に向けて突出する外径側フランジ部を有しない円筒状部材(換言すれば、外周面がほぼ全体にわたってストレート状の円筒部材)として構成されている。アンカ40は、アマチュア43と軸方向に対向して設けられている。アンカ40は、チューブ73の第2筒部73Cの内側に挿通されている。これにより、アンカ40は、筒状コア71に所定の隙間(軸方向隙間)を有してチューブ73の内周側でチューブ73の軸方向の他方側(図13および図14の下側、円輪状コア72とは反対側)に配置されている。
【0097】
このような第3の変形例によれば、チューブ73の内周に筒状コア71が固定されている。このため、筒状コア71の外径側にチューブ73を位置させることができ、その分、筒状コア71とアンカ40との間で、チューブ73をアマチュア43から離間させることができる。これにより、チューブ73を安価な素材である磁性体で構成しても、筒状コア71とアンカ40との間でチューブ73を経由する磁束の短絡を抑制することができる。この結果、チューブ73のコストを低減しつつ性能(アマチュア43の推力、アンカ40の吸引力)を確保できる。即ち、第3の変形例も、実施形態と同様に、安価な素材である磁性体でチューブ73を構成しても、アンカ40の吸引力を確保できる。
【0098】
実施形態および変形例では、アンカ40の有底穴部40Cを平坦な底面とすると共に、この有底穴部40Cに対面するアマチュア43の対向部も平坦にした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、アンカの有底穴部にアマチュアに向けて断面三角形状に突出する中間凸部を設けると共に、この中間凸部に対応してアマチュアに断面三角形状の溝部を設ける構成としてもよい。
【0099】
実施形態および変形例では、ソレノイドアクチュエータ33を比例ソレノイドとして構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ON/OFF式のソレノイドとして構成してもよい。
【0100】
実施形態および変形例では、外筒2と内筒4とからなる複筒式の緩衝器1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、単筒式の筒部材(シリンダ)からなる減衰力調整式緩衝器に用いてもよい。
【0101】
実施形態および変形例では、ソレノイドアクチュエータ33を緩衝器1の減衰力可変アクチュエータとして用いる場合、即ち、減衰力調整バルブ18のパイロットバルブを構成するパイロット弁体32をソレノイドアクチュエータ33の駆動対象物とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、ソレノイドは、例えば、油圧回路に用いるバルブ等の各種機械装置に組込まれるアクチュエータ、即ち、直線的に駆動すべき駆動対象物を駆動する駆動装置として広く用いることができる。
【0102】
実施形態および変形例は例示であり、異なる実施形態および変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0103】
以上説明した実施形態および/または変形例(以下、単に「実施形態」という)によれば、ガイド部材の中間部は、ボビンの内周または一側固定子の他端に接触する。このため、ガイド部材の中間部をボビンの内周または一側固定子の他端に沿わせることができ、その分、ガイド部材の中間部および他側部を一側固定子と他側固定子との間で可動子から離間させることができる。これにより、ガイド部材を安価な素材である磁性体で構成しても、一側固定子と他側固定子との間でガイド部材の中間部および他側部を経由する磁束の短絡を抑制することができる。この結果、ガイド部材のコストを低減しつつ性能(可動子の推力、他側固定子の吸引力)を確保できる。即ち、安価な素材である磁性体でガイド部材を構成しても、他側固定子の吸引力を確保できる。
【0104】
実施形態によれば、ガイド部材の中間部は、周方向面の一部のボビンまたは一側固定子に対する接触度合いが、周方向面の他部のボビンまたは一側固定子に対する接触度合いと異なる。このため、ガイド部材の中間部のうち接触度合いの低い部位で、意図的に磁束を短絡させることができる。これにより、可動子の推力(他側固定子の吸引力)が円周方向で不均一となり、可動子に横力を発生させることができる。この結果、可動子の励振を抑制することができる。
【0105】
実施形態によれば、ガイド部材の中間部は、一側固定子をクリップに押し付ける方向の力を付与する。このため、この力によってクリップを第1の溝に押し付けることができ、一側固定子をハウジング部材内でがたつきにくくできる。これにより、ハウジング部材内に一側固定子を安定して収容することができる。しかも、ガイド部材とは別に、上記の力を付与するための弾性部材(ばね)を設ける必要がなくなり、部品点数を低減できる。
【0106】
実施形態によれば、ガイド部材の内周に一側固定子が固定される。このため、一側固定子の外径側にガイド部材を位置させることができ、その分、ガイド部材を一側固定子と他側固定子との間で可動子から離間させることができる。これにより、ガイド部材を安価な素材である磁性体で構成しても、一側固定子と他側固定子との間でガイド部材を経由する磁束の短絡を抑制することができる。この結果、ガイド部材のコストを低減しつつ性能(可動子の推力、他側固定子の吸引力)を確保できる。即ち、安価な素材である磁性体でガイド部材を構成しても、他側固定子の吸引力を確保できる。
【符号の説明】
【0107】
1 緩衝器(減衰力調整式緩衝器)
2 外筒(シリンダ)
4 内筒(シリンダ)
5 ピストン
8 ピストンロッド
17 減衰力調整機構
18 減衰力調整バルブ
32 パイロット弁体(制御弁)
33 ソレノイドアクチュエータ
36 筒状ケース(ハウジング部材)
36B1 ケース側リング溝(第1の溝)
38,74 ボビン
39 コイル
40 アンカ(他側固定子)
41,71 筒状コア(一側固定子)
42,73 チューブ(ガイド部材)
42C 第2筒部(一側部、上部)
42D 第3筒部(他側部、下部)
42F,51,61 第2接続部(中間部)
43 アマチュア(可動子)
47 抜け止めリング(クリップ)
72 円輪状コア(腕固定子)
74B 鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14