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特開2024-104129インレットシートとインレットシートの製造方法、及びインレットシートから得られるインレットが搭載されたICシートを備える旅券及び非接触ICカード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104129
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】インレットシートとインレットシートの製造方法、及びインレットシートから得られるインレットが搭載されたICシートを備える旅券及び非接触ICカード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240726BHJP
   G06K 19/02 20060101ALI20240726BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20240726BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20240726BHJP
【FI】
G06K19/077 144
G06K19/02 020
G06K19/07 230
B42D25/305 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008205
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】亀田 義一
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005MA19
2C005MB01
2C005RA08
(57)【要約】
【課題】載置装置による対応可能な配列シートの上限サイズを超えて大サイズ化を図ることが可能なインレットシートと、このインレットシートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のインレットシート1は、1組のICチップ8とアンテナ9とを備える多数個のインレット2が分散状に配置される矩形状の配列シート3と、配列シート3の表裏面に一体的に設けられる一対のカバーシート4・5とで構成される。配列シート3は、分割状に形成された2枚以上の単位シート13・14を並列状に配してなる。そして、隣り合う単位シート13・14の向かい合う隣接辺部17・18どうしが、互いに重なり合うことなく突き合わされた状態で、配列シート3とカバーシート4・5とを一体的に接合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組のICチップ(8)とアンテナ(9)とを備える多数個のインレット(2)が分散状に配置される矩形状の配列シート(3)と、
配列シート(3)の表裏面に一体的に設けられる一対のカバーシート(4・5)と、
で構成されるインレットシートにおいて、
配列シート(3)は、分割状に形成された2枚以上の単位シート(13・14)を並列状に配してなり、
隣り合う単位シート(13・14)の向かい合う隣接辺部(17・18)どうしが、互いに重なり合うことなく突き合わされた状態で、配列シート(3)とカバーシート(4・5)とが一体的に接合されていることを特徴とするインレットシート。
【請求項2】
配列シート(3)は、同一サイズの矩形状に形成された第1単位シート(13)と第2単位シート(14)とで構成されており、
これら単位シート(13・14)のそれぞれには、各単位シート(13・14)を並列状に配する際に使用される治具(21)の位置決め体(22)に係合する位置決め部(23)が形成されており、
単位シート(13・14)を重畳させたとき、第1単位シート(13)に設けられる第1位置決め部(23a(23))と、第2単位シート(14)に設けられる第2位置決め部(23b(23))とが重なり合わないように構成されている請求項1に記載のインレットシート。
【請求項3】
第1単位シート(13)に複数個の第1位置決め部(23a(23))が形成され、第2単位シート(14)に複数個の第2位置決め部(23b(23))が形成されている請求項2に記載のインレットシート。
【請求項4】
各単位シート(13・14)をその中心を基準として四つの象限に分割したとき、第1及び第2の位置決め部(23a・23b)が、対角位置にある象限の外周縁部に設けられている請求項3に記載のインレットシート。
【請求項5】
一対のカバーシート(4・5)に、治具(21)の位置決め体(22)に係合する位置合わせ部(24)が設けられている請求項2に記載のインレットシート。
【請求項6】
1組のICチップ(8)とアンテナ(9)からなるインレット(2)と、多数個のインレット(2)が分散配置される矩形状の配列シート(3)と、配列シート(3)の表裏面に一体的に設けられる一対のカバーシート(4・5)とを備えるインレットシートの製造方法であって、
ブランクシート(30)から配列シート(3)を構成する複数枚の単位シート(13・14)を切り出す単位シート形成工程(P1)と、
各単位シート(13・14)に、載置装置(33)でインレット(2)を載置するインレット載置工程(P2)と、
一対のカバーシート(4・5)と、配列シート(3)を構成する複数枚の単位シート(13・14)とを、裏面側のカバーシート(5)、配列シート(3)、表面側のカバーシート(4)の順に治具(21)上に積層するシート積層工程(P3)と、
治具(21)上に積層された配列シート(3)と一対のカバーシート(4・5)とを接合して一体化する接合工程(P4)とを含み、
シート積層工程(P3)において、隣り合う単位シート(13・14)の向かい合う隣接辺部(17・18)どうしが互いに重なり合わず突き合わされる状態で、単位シート(13・14)を治具(21)上に並べて配置することを特徴とするインレットシートの製造方法。
【請求項7】
単位シート形成工程(P1)は、配列シート(3)のサイズよりも大きなサイズのブランクシート(30)の外周縁部を除去して前段シート体(31)を形成する前段形成工程と、前段シート体(31)を分断して複数枚の単位シート(13・14)を形成する分断工程とを備えており、
分断工程において前段シート体(31)に形成される切断辺が、単位シート(13・14)の隣接辺部(17・18)となる請求項6に記載のインレットシートの製造方法。
【請求項8】
単位シート形成工程(P1)は、単位シート(13・14)を、治具(21)の位置決め体(22)に係合する位置決め部(23)を形成する位置決め部形成工程を備えており、
単位シート形成工程(P1)において、分断工程と位置決め部形成工程とを同時に行う請求項7に記載のインレットシートの製造方法。
【請求項9】
シート積層工程(P3)において、シート(3・4・5)を支持する治具(21)の位置決め体(22)に、配列シート(3)の位置決め部(23)と各カバーシート(4・5)の位置合わせ部(24)とが係合される請求項6から8のいずれかひとつに記載のインレットシートの製造方法。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかひとつに記載のインレットシート(1)から得られるインレット(2)が搭載されたICシート(40)を備える旅券。
【請求項11】
請求項1から5のいずれかひとつに記載のインレットシート(1)から得られるインレット(2)が搭載されたICシート(40)を備える非接触ICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1組のICチップとアンテナとを備える多数個のインレットが分散状に配置される配列シートの表裏面を樹脂シートでカバーしてなるインレットシートと、このインレットシートの製造方法、及び前記インレットシートから得られるインレットが搭載されたICシートを備える旅券及び非接触ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のインレットシートは、例えば特許文献1(発明の名称:非接触型情報媒体用インレイ)に開示されている。特許文献1のインレットシート(インレイ)は、配列シート(基材)と、配列シート上にマトリクス状に載置された9個(多数)のインレットと、配列シートの表裏面をカバーする樹脂シートとを備える。そして上記のインレットシートを1個のインレットを含むように切断・分離することで、インレットが搭載されたICシートを製造することができる。同様のインレットシートは本出願人も製造しており、そこでは、配列シートに対するインレットの載置作業は専用の載置装置で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-27543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、インレットを内蔵する非接触型のICカードを製造する際には、インレットシートの表裏面をカード券面が印刷された樹脂からなるカバーシートでカバーしてカード前段体を形成し、次いで当該カード前段体に対して打ち抜き加工を施してカードサイズに切り出すことで多数枚のICカードを得ることができる。つまり、1枚のカード前段体から多数枚のICカードを得ることができる。このとき、1枚のカード前段体から切り出されるICカードの枚数が多いほど作業効率と生産性の向上を図ることが可能となり、さらにICカードの低コスト化を図ることができるため、近年、インレットシートのサイズはより大きくなる(大サイズ化される)傾向にある。しかし、載置装置が対応可能な配列シートのサイズには上限があるため、インレットシートの大サイズ化は、載置装置の載置能力の制限を大いに受ける。尤も、より大サイズの配列シートに対応可能な載置装置を導入すれば、インレットシートの大サイズ化への対応は可能となるが、その場合には多額の設備投資が求められることとなる。
【0005】
本発明は、載置装置による対応可能な配列シートの上限サイズを超えて大サイズ化を図ることが可能なインレットシートと、このインレットシートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、インレットを備えるICシートを含んで構成される旅券或いは非接触ICカードを、より安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1組のICチップ8とアンテナ9とを備える多数個のインレット2が分散状に配置される矩形状の配列シート3と、配列シート3の表裏面に一体的に設けられる一対のカバーシート4・5とで構成されるインレットシートを対象とする。配列シート3は、分割状に形成された2枚以上の単位シート13・14を並列状に配してなる。そして、隣り合う単位シート13・14の向かい合う隣接辺部17・18どうしが、互いに重なり合うことなく突き合わされた状態で、配列シート3とカバーシート4・5とが一体的に接合されていることを特徴とする。
【0007】
配列シート3は、同一サイズの矩形状に形成された第1単位シート13と第2単位シート14とで構成されている。これら単位シート13・14のそれぞれには、各単位シート13・14を並列状に配する際に使用される治具21の位置決め体22に係合する位置決め部23が形成されている。単位シート13・14を重畳させたとき、第1単位シート13に設けられる第1位置決め部23a(23)と、第2単位シート14に設けられる第2位置決め部23b(23)とが重なり合わないように構成されている。
【0008】
第1単位シート13に複数個の第1位置決め部23a(23)が形成され、第2単位シート14に複数個の第2位置決め部23b(23)が形成されている。
【0009】
各単位シート13・14をその中心を基準として四つの象限に分割したとき、第1及び第2の位置決め部23a・23bが、対角位置にある象限の外周縁部に設けられている。
【0010】
一対のカバーシート4・5に、治具21の位置決め体22に係合する位置合わせ部24が設けられている。
【0011】
また、本発明は、1組のICチップ8とアンテナ9からなるインレット2と、多数個のインレット2が分散配置される矩形状の配列シート3と、配列シート3の表裏面に一体的に設けられる一対のカバーシート4・5とを備えるインレットシートの製造方法を対象とする。インレットシートの製造方法は、ブランクシート30から配列シート3を構成する複数枚の単位シート13・14を切り出す単位シート形成工程P1と、各単位シート13・14に、載置装置33でインレット2を載置するインレット載置工程P2と、一対のカバーシート4・5と、配列シート3を構成する複数枚の単位シート13・14とを、裏面側のカバーシート5、配列シート3、表面側のカバーシート4の順に治具21上に積層するシート積層工程P3と、治具21上に積層された配列シート3と一対のカバーシート4・5とを接合して一体化する接合工程P4とを含む。そして、シート積層工程P3において、隣り合う単位シート13・14の向かい合う隣接辺部17・18どうしが互いに重なり合わず突き合わされる状態で、単位シート13・14を治具21上に並べて配置することを特徴とする。
【0012】
単位シート形成工程P1は、配列シート3のサイズよりも大きなサイズのブランクシート30の外周縁部を除去して前段シート体31を形成する前段形成工程と、前段シート体31を分断して複数枚の単位シート13・14を形成する分断工程とを備えている。分断工程において前段シート体31に形成される切断辺が、単位シート13・14の隣接辺部17・18となる。
【0013】
単位シート形成工程P1は、単位シート13・14を、治具21の位置決め体22に係合する位置決め部23を形成する位置決め部形成工程を備えている。単位シート形成工程P1において、分断工程と位置決め部形成工程とを同時に行う。
【0014】
シート積層工程P3において、シート3・4・5を支持する治具21の位置決め体22に、配列シート3の位置決め部23と各カバーシート4・5の位置合わせ部24とが係合される。
【0015】
本発明に係る旅券41は、上記のインレットシート1から得られるインレット2が搭載されたICシート40を備える。
【0016】
本発明に係る非接触ICカードは、上記のインレットシート1から得られるインレット2が搭載されたICシート40を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明のように、配列シート3が2枚以上の単位シート13・14で構成されていると、各単位シート13・14のサイズをインレット2の載置を担う載置装置33により対応可能な上限サイズよりも小さなものとすることで、当該載置装置33によるインレット2の載置作業を支障無く進めることができる。これにより、インレット2の載置作業を行う際の配列シート3(単位シート13・14)のサイズの大型化を図ることなく、インレットシート1のサイズの大型化を図ることができる。換言すれば、載置装置33による対応可能な配列シート3(単位シート13・14)の上限サイズを超えて、大サイズ化されたインレットシート1を得ることができる。また、新たな設備を導入することなく既存の載置装置33を使用して、同装置33で載置できる配列シート3の上限サイズ以上に大サイズ化されたインレットシート1を形成することも可能となる。
【0018】
隣り合う単位シート13・14の向かい合う隣接辺部17・18どうしが、互いに重なり合うことなく突き合わされた状態で、配列シート3とカバーシート4・5とが一体的に接合されていると、単位シート13・14の突き合わせ部分に対応するインレットシート1の厚み寸法が、部分的に厚く形成される、或いは部分的に薄く形成されるといったような不都合が生じることを防ぐことができる。また、上記の構成を採ることで、得られたインレットシート1の品質を1枚物の配列シートを含んで形成されるインレットシートと同様の品質とすることができる。
【0019】
第1単位シート13及び第2単位シート14に、両単位シート13・14を並べて配置するときに治具21の位置決め体22に係合する位置決め部23が設けられていると、位置決め体22に位置決め部23を係合させることで、治具21に対して両単位シート13・14を位置決めすることができる。配列シート3を構成する第1及び第2の単位シート13・14は、その厚みが薄く取扱いに難があるが、本発明のように両単位シート13・14を位置決めすることができると、隣接辺部17・18が互いに重なり合うことなく突き合わされた適正姿勢に、両単位シート13・14を並べて配置することが容易となる。単位シート13・14の配置作業の作業効率の向上を図ることもできる。
【0020】
第1単位シート13及び第2単位シート14が同一サイズの矩形状に形成されており、両単位シート13・14を重畳させたとき、第1単位シート13に設けられる第1位置決め部23a(23)と、第2単位シート14に設けられる第2位置決め部23b(23)とが重なり合わないように各位置決め部23a・23bが形成されていると、これら第1と第2の単位シート13・14が同一サイズの矩形状である場合でも、作業者は位置決め部23の位置を基準にして、いずれの単位シートであるかを明確に判別することができる。これにより、第1単位シート13と第2単位シート14とが治具21上において逆に配置されることを確実に防ぐことができる。
【0021】
各単位シート13・14に形成される位置決め部23(23a・23b)が1個の場合には、位置決め部23まわりに各単位シート13・14が回動してずれ動くおそれがある。これに対して各単位シート13・14のそれぞれに、位置決め部23a・23bが複数個設けられていると、各単位シート13・14が位置決め部23まわりに回動してずれ動くことを防ぐことができる。
【0022】
各単位シート13・14をその中心を基準として四つの象限に分割したとき、位置決め部23a・23bが、対角位置にある象限の外周縁部に設けられていると、隣り合う象限に位置決め部23(23a・23b)を設ける場合に比べて、位置決め部23間の距離を可及的に大きくすることができるので、より安定的に第1と第2の単位シート13・14を位置決めすることができる。
【0023】
一対のカバーシート4・5に、治具21の位置決め体22に係合する位置合わせ部24が設けられていると、配列シート3と一対のカバーシート4・5との相対位置を的確に規定し、さらに治具21に対して各シート3・4・5を位置決めすることができる。カバーシート4・5は、その厚みが薄く取扱いに難があるが、それらを位置決めすることができると、より容易に取り扱うことができる。
【0024】
本発明のインレットシート1は、ブランクシート30から配列シート3を構成する複数枚の単位シート13・14を切り出す単位シート形成工程P1と、各単位シート13・14に、載置装置33でインレット2を載置するインレット載置工程P2と、一対のカバーシート4・5と、配列シート3を構成する複数枚の単位シート13・14とを、裏面側のカバーシート5、配列シート3、表面側カバーシート4の順に治具21上に積層するシート積層工程P3と、治具21上に積層された配列シート3と一対のカバーシート4・5とを接合して一体化する接合工程P4とを含んで製造される。このような製造方法によれば、単位シート形成工程P1において、配列シート3を構成する各単位シート13・14のサイズをインレット2の載置を担う載置装置33により対応可能な上限サイズよりも小さなものとすることで、インレット載置工程P2において、当該載置装置33によるインレット2の載置作業を支障無く進めることができる。これにより、インレット2の載置作業を行う際の配列シート3(単位シート13・14)のサイズの大型化を図ることなく、インレットシート1のサイズの大型化を図ることができる。換言すれば、載置装置33による対応可能な配列シート3(単位シート13・14)の上限サイズを超えて、大サイズ化されたインレットシート1を得ることができる。また、新たな設備を導入することなく既存の載置装置33を使用して、同装置33で載置できる配列シート3の上限サイズ以上に大サイズ化されたインレットシート1を形成することも可能となる。
【0025】
シート積層工程P3において、隣り合う単位シート13・14の向かい合う隣接辺部17・18どうしが互いに重なり合わず突き合わされる状態で、単位シート13・14を治具21上に並べて配置すると、単位シート13・14の突き合わせ部分に対応するインレットシート1の厚み寸法が、部分的に厚く形成される、或いは部分的に薄く形成されるといったような不都合が生じることを防ぐことができる。また、上記の方法を採ることで、得られたインレットシート1の品質を1枚物の配列シートを含んで形成されるインレットシートと同様の品質とすることができる。
【0026】
単位シート形成工程P1が、配列シート3のサイズよりも大きなサイズのブランクシート30の外周縁部を除去して前段シート体31を形成する前段形成工程と、前段シート体31を分断して第1及び第2の単位シート13・14を形成する分断工程とを備えており、分断工程において前段シート体31に形成される切断辺が、第1及び第2の単位シート13・14の隣接辺部17・18となるように構成する。このように、分断工程において前段シート体31に形成される切断辺が、第1及び第2の単位シート13・14の隣接辺部17・18となるように構成されていると、両単位シート13・14を並べて配置したとき、両隣接辺部17・18とが部分的に重なり合うこと、或いは両隣接辺部17・18どうしの間に部分的に隙間が形成されることを防いで、両隣接辺部17・18を必ず合致させることができる。したがって、単位シート13・14の突き合わせ部分に対応するインレットシート1の厚み寸法が、部分的に厚く形成される、或いは薄く形成されるといったような不都合が発生することを確実に防ぐことができる。
【0027】
単位シート形成工程P1は、単位シート13・14を、治具21の位置決め体22に係合する位置決め部23を形成する位置決め部形成工程を備えており、単位シート形成工程P1において、分断工程と位置決め部形成工程とを同時に行う。分断工程と位置決め部形成工程とをそれぞれ別の工程で行うと、各工程における誤差が蓄積され、隣接辺部17と位置決め部23a(23)、及び隣接辺部18と位置決め部23b(23)との相対位置にずれが生じるおそれがある。これに対して本発明によれば、隣接辺部17と位置決め部23a、及び隣接辺部18と位置決め部23bを同時に形成するので、前記相対位置のずれが生じることを解消して、位置決め体22に位置決め部23を係合させて、治具21に対して両単位シート13・14を位置決めするだけで、隣接辺部17・18どうしが重なり合うことなく突き合わされた状態で、両単位シート13・14を的確に位置決めすることができる。
【0028】
シート積層工程P3において、シート3・4・5を支持する治具21の位置決め体22に、配列シート3の位置決め部23と各カバーシート4・5の位置合わせ部24とが係合されるように構成されていると、これらシート3・4・5を治具21上の適正位置に配することが容易となる。したがって、これらシート3・4・5を適正位置に位置決めした状態で適正に接合することができる。
【0029】
以上のように本発明のインレットシート1によれば、シートサイズの大サイズ化を図ることができるので、当該インレットシート1から得られる、インレット2が搭載されたICシート40の製造コストを抑えて、ICシート40の低廉化を図ることができる。したがって、このICシート40を備える旅券41、或いは非接触ICカード42の製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係るインレットシートの平面図であり、部分的にカバーシートと単位シートを剥離した状態を示している。
図2】第1単位シートと第2単位シートとの突き合わせ部分を示す縦断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るインレットシートの製造工程を説明するための図である。
図4】単位シート形成工程を説明するための図である。
図5】第1及び第2の単位シートの平面図である。
図6】シート積層工程を説明するための図である。
図7】位置決めピンと、位置決め孔及び位置合わせ孔との関係を示す縦断面図である。
図8】ICチップ部分におけるインレットシートの縦断面図である。
図9】インレットシートと、当該インレットシートから得られたICシートの斜視図である。
図10】本発明の実施形態に係るインレットシートから得られたICシートを備える旅券を示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態に係るインレットシートから得られたICシートを備える非接触ICカードを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態) 図1から図9に、本発明に係るインレットシートの実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、図1及び図6に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。なお、上下方向はインレットシートの厚み方向に相当し、各図における厚みなどの寸法は、実際の様子を示したものではなく模式的に示したものである。
【0032】
図1に示すように、インレットシート1は、多数のインレット2を備える矩形状のシート体であり、インレット2が配置される配列シート3と、該配列シート3の上下面(表裏面)に一体的に設けられる一対のカバーシート4・5とで構成される。配列シート3と両カバーシート4・5は、平面視におけるサイズが同一のポリカーボネートのシート体からなる。本実施形態における配列シート3の厚み寸法は0.2mmに設定されており、両カバーシート4・5の厚み寸法は0.085mmに設定されている。各シート3・4・5の前後方向の長さ寸法は440mmに設定され、左右方向の長さ寸法は640mmに設定されている。なお、配列シート3と両カバーシート4・5とは、平面視におけるサイズが同一であることが望ましいが、必ずしも同一である必要はなく、配列シート3と各カバーシート4・5とが異なるサイズに設定されていてもよい。
【0033】
各カバーシート4・5は少なくとも配列シート3に臨む側の面、つまり上側のカバーシート4では下面、下側のカバーシート5では上面が粗面化されていることが望ましい。本実施形態のシート3・4・5は溶着により接合されるが、各カバーシート4・5における配列シート3に臨む側の面が粗面であると、溶着部分の対向面が平滑面どうしである場合に比べて、溶着部分の表面積を大きくすることができるので、接合強度を向上させることができる。また、各シート3・4・5の形成素材は、ポリカーボネートのシート体以外に、ポリエチレンテレフタレート(PET、PET-G)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのシート体で形成することもできる。
【0034】
インレット2は、情報が記録されるICチップ8と、ICチップ8に接続されるループコイル状のアンテナ9とからなる。取り扱いを容易にするために、これらICチップ8とアンテナ9は、担持シート10に保持されている。担持シート10は、不織布からなる上下一対の基布10a・10bで構成されており、ICチップ8及びアンテナ9は、これら基布10a・10bの間に保持されている。
【0035】
配列シート3は、第1単位シート(単位シート)13と第2単位シート(単位シート)14の2枚のシート体で構成されている。各単位シート13・14は、それぞれ同一サイズの矩形状に形成されている。第1及び第2の単位シート13・14のそれぞれには、4行2列のマトリクス状に8個のインレット2が分散配置され、配列シート3の全体には計16個のインレット2が配置されている。各インレット2は、各単位シート13・14の上面に接着固定されている。図5において符号15は、配列シート3(各単位シート13・14)に形成された、ICチップ8よりひとまわり大きな貫通状の開口からなる逃げ孔を示し、ICチップ8は、この逃げ孔15に臨む状態で各単位シート13・14上に配置される(図8参照)。図5の二点鎖線は、担持シート10で保持されたインレット2の載置位置を示す。各単位シート13・14は、前後方向の長さ寸法が440mmに設定され、左右方向の長さ寸法は320mmに設定されている。
【0036】
インレットシート1は、下面側のカバーシート5、配列シート3、上面側のカバーシート4を下方側から順に積層し、これら積層した各シート5・3・4を接合部16で一体的に接合することで形成される。この接合部16は、各シート5・3・4の全体を一体化するものではなく、各シート5・3・4どうしが相対的に位置ずれしないように部分的に仮止めする仮止め部である。接合部(仮止め部)16を形成する方法としては、シート5・3・4を厚み方向に加圧した状態で、該加圧部分に超音波を作用させる超音波溶着、或いは該加圧部分に熱を加える熱溶着などがある。その他、接合部(仮止め部)16は、溶着に換えて、接着剤を塗布し、該接着剤による接着によるものでもよい。
【0037】
これら第1と第2の単位シート13・14は、第1単位シート13が左側に位置し、第2単位シート14が右側に位置するように並列状に配される。このとき、第1単位シート13の右辺部で構成される第1隣接辺部(隣接辺部)17と、第2単位シート14の左辺部で構成される第2隣接辺部(隣接辺部)18とが、互いに重なり合うことなく突き合わされた状態となるよう配される。また、第1隣接辺部17と第2隣接辺部18とは、図2に示すように密接する、或いは僅かな隙間を介して向かい合う状態で配される。接合部16は、各単位シート13・14の四隅部に対応する位置に設けられており、計8箇所で積層した3枚のシート5・3・4を溶着固定している。これにより、インレットシート1の四隅部分において、各シート5・3・4は、その角部が揃う状態で一体的に接合される。接合部16は、各単位シート13・14の四隅に対応する位置に設けることが望ましいが、これに限らず、接合部16の位置及び個数は、各シート5・3・4を不離一体的に接合できるように設けてあればよい。第1及び第2の単位シート13・14に跨って接合部16を設けることもできる。
【0038】
図6に示すように3枚のシート3・4・5は、治具21上において、下面側のカバーシート5、配列シート3、上面側のカバーシート4の順に積層される。治具21と各シート5・3・4との相対的な位置決めのため、治具21には上向きに突出する丸軸からなる位置決めピン(位置決め体)22が突設されている。また、配列シート3には、位置決めピン22に係合する丸孔からなる位置決め孔(位置決め部)23が形成され、各カバーシート4・5には、位置決めピン22に係合する丸孔からなる位置合わせ孔(位置合わせ部)24が形成されている。位置決めピン22は、その下端が治具21に凹み形成された下穴に圧入されて治具21に固定されている。位置決めピン22の先端は先窄まり状に形成されており、位置決めピン22に対する位置決め孔23と位置合わせ孔24の係合を容易化している。位置決めピン22は、治具21に対して前後方向及び左右方向に位置を調整できるように設けることもできる。
【0039】
図5に示すように、各単位シート13・14には、2個の位置決め孔23が設けられている。具体的には、第1単位シート13には、その中心を基準とした一点鎖線で示す四つの象限に分割したとき、対角位置にある第1象限(右後)と第3象限(左前)との外周縁部に第1位置決め孔(第1位置決め部)23a・23aが設けられている。同様に、第2単位シート14には、その中心を基準とした一点鎖線で示す四つの象限に分割したとき、対角位置にある第1象限(右後)と第3象限(左前)との外周縁部に第2位置決め孔(第2位置決め部)23b・23bが設けられている。このように各単位シート13・14に2個(複数個)の位置決め孔23・23を設けると、一方の位置決め孔23が係合する位置決めピン22まわりに単位シート13・14が回動することを防ぐことができる。前後左右方向を一致させた状態で両単位シート13・14を重ね合わせたとき、第1単位シート13の第1位置決め孔23aと第2単位シート14の第2位置決め孔23bとは重なり合わないように形成されている。
【0040】
詳しくは、図5に示すように、第1単位シート13の第1象限に形成された第1位置決め孔23aの孔中心と第1単位シート13の後辺部との距離をL1、孔中心と第1単位シート13の右辺部との距離をW1、第1単位シート13の第3象限に形成された第1位置決め孔23aの孔中心と第1単位シート13の前辺部との距離をL2、孔中心と第1単位シート13の左辺部との距離をW2と規定し、同様に、第2単位シート14の第1象限に形成された第2位置決め孔23bの孔中心と第2単位シート14の後辺部との距離をL3、孔中心と第2単位シート14の右辺部との距離をW3、第2単位シート14の第3象限に形成された第2位置決め孔23bの孔中心と第2単位シート14の前辺部との距離をL4、孔中心と第2単位シート14の左辺部との距離をW4と規定したとき、距離L1と距離L3とを同一距離に設定し、距離W1と距離W3とは異なる距離となるように設定している(W1<W3)。また、距離L2と距離L4とを同一距離に設定し、距離W2と距離W4とは異なる距離となるように設定している(W2>W4)。
【0041】
以上より、前後左右方向を一致させた状態で両単位シート13・14を重ね合わせたときにも、先の第1位置決め孔23aと第2位置決め孔23bとは重なり合わないように形成することができる。本実施形態では、逃げ孔15を基準に第1位置決め孔23a及び第2位置決め孔23bの左右方向の位置を決定しており、したがって、各位置決め孔23a・23bの中心は、逃げ孔15の中心を通る前後方向の延長線上に配置されている。
【0042】
上記各距離Lx(xは1~4)は、小さく設定する、換言すれば、各位置決め孔23(23a・23b)は、前後の辺部に近接して形成されることが望ましい。また、上記各距離Wx(xは1~4)も小さく設定する、換言すれば、各位置決め孔23(23a・23b)は、左右の辺部に近接して形成されることが望ましい。以上より、各単位シート13・14に設けられる2個の位置決め孔23の前後方向及び左右方向の離間距離は、大きく設定することが望ましい。これによれば、2個の位置決め孔23(23a・23b)間の距離をより大きくすることができる。より望ましくは各単位シート13・14の向かい合う角部を結ぶ対角線状において、より角部に近い位置に各位置決め孔23(23a・23b)を形成する。なお、上記各距離Lx(xは1~4)は、上記各距離Wx(xは1~4)よりも小さく設定することが望ましい(Lx<Wx)。
【0043】
各距離Lx(xは1~4)或いは各距離Wx(xは1~4)が小さすぎる場合、換言すれば、各単位シート13・14の縁部の際に位置決め孔23(23a・23b)が形成されている場合には、各単位シート13・14の縁部と位置決め孔23(23a・23b)の孔縁との間で各単位シート13・14が破断するおそれがある。したがって、各距離Lx(xは1~4)及び各距離Wx(xは1~4)は、各単位シート13・14の形成素材の強度を考慮して設定する必要がある。また、各距離Lx(xは1~4)が大きく設定されている、換言すれば、位置決め孔23(23a・23b)が各単位シート13・14の前後方向の中央に近付く状態で形成されていると、インレット2を配置するための前後方向の領域が狭くなるため、配置できるインレット2の個数に影響を及ぼす。
【0044】
本実施形態に係るインレットシート1は、図3に示すように、単位シート形成工程P1と、インレット載置工程P2と、シート積層工程P3と、接合工程P4と、熱プレス工程P5とを経て製造される。
【0045】
単位シート形成工程P1では、配列シート3を構成する第1単位シート13と第2単位シート14とを形成する。より詳しくは、当該単位シート形成工程P1は、配列シート3のサイズよりも大きなサイズのブランクシート30の外周縁部を除去して前段シート体31を形成する前段形成工程と、前段シート体31を半分に分断して第1と第2の単位シート13・14を形成する分断工程と、両単位シート13・14に逃げ孔15を形成する逃げ孔形成工程と、両単位シート13・14に位置決め孔23を形成する位置決め孔形成工程(位置決め部形成工程)とを含む。ブランクシート30のサイズは配列シート3のサイズよりもひとまわり大きく、本実施形態では、ブランクシート30の前後方向の長さ寸法は450mmに設定され、左右方向の長さ寸法は650mmに設定されている。
【0046】
単位シート形成工程P1では、プレス機に取り付けられる上下一対の金型からなる単位シート形成金型32を用いて、ブランクシート30に打ち抜き加工を施して、前段形成工程、分断工程、逃げ孔形成工程、及び位置決め孔形成工程を同時に行う。詳しくは、上下に離間した単位シート形成金型32の間にブランクシート30を配置し、プレス機を駆動することにより、ブランクシート30から、逃げ孔15及び位置決め孔23が形成された第1と第2の単位シート13・14を得ることができる。図4において二点鎖線はブランクシート30を加工する単位シート形成金型32の前段形成工程及び分断工程に対応する打ち抜き線(切断線)を示し、四角枠状の二点鎖線は、前段シート体31の打ち抜き線を示している。前段シート体31の左右中央の二点鎖線は、前段シート体31の分断線を示している。前段シート体31を半分に分断する分断線の部分(切断辺)が、第1単位シート13の第1隣接辺部17と第2単位シート14の第2隣接辺部18となる。なおブランクシート30に対して打ち抜き加工を施すと、5mm幅の四角枠状の縁枠部分が形成されるが、この縁枠部分は不要な部分であり、廃棄される。
【0047】
続いて、第1単位シート13と第2単位シート14のそれぞれに対してインレット2を載置する(インレット載置工程P2)。具体的には、シート体にインレット2を載置する専用の載置装置33を用いて、第1と第2の単位シート13・14の表面の所定位置にインレット2を接着固定する。なお、インレット2は、予め担持シート10を形成する上下の基布10a・10b間に保持された状態で載置装置33に供給される。また、載置装置33は担持シート10に保持されたインレット2を第1と第2の単位シート13・14の表面に載置する。本実施形態の第1と第2の単位シート13・14のサイズは、先の単位シート形成工程P1において、載置装置33が取り扱うことができる(インレット2を載置できる)上限のサイズよりも小さく形成されており、載置装置33は、これら第1と第2の単位シート14のそれぞれに対して、支障無くインレット2を載置することができる。なお、第1と第2の単位シート13・14からなる配列シート3のサイズは、先の載置装置33が取り扱うことができる上限サイズよりも大きなサイズとされている。
【0048】
続いて、配列シート3と一対のカバーシート4・5とを、治具21を使用して積層する(シート積層工程P3、図6参照)。具体的には、治具21上に下面側のカバーシート5、配列シート3、上面側のカバーシート4を記載順に積層する。図6に示すように、第1と第2の単位シート13・14は、治具21の左側に第1単位シート13がセットされ、治具21の右側に第2単位シート14がセットされる。両カバーシート4・5は、予め形成された位置合わせ孔24が、位置決めピン22に係合する状態で治具21上にセットされる。第1単位シート13は、位置決めピン22に位置決め孔23a・23aが係合する状態でセットされ、第2単位シート14は、位置決めピン22に位置決め孔23b・23bが係合する状態でセットされる。以上のように、治具21にセットされた配列シート3は、第1単位シート13の第1隣接辺部17と、第2単位シート14の第2隣接辺部18とが、互いに重なり合わず突き合わされる状態となる。
【0049】
位置決め孔23と位置合わせ孔24とは同一径に設定されており、位置決めピン22の直径Dはこれら孔23・24の直径dよりも僅かに小さく設定されている(図7参照)。位置決めピン22を利用して治具21上で各シート5・3・4を積層したとき、各シート3・4・5は、シート平面方向のテンションが生じない状態で位置決めピン22に位置決め孔23及び位置合わせ孔24が係合されていることが望ましい。これは、シート平面方向のテンションが生じた状態で、位置決めピン22に位置決め孔23及び位置合わせ孔24が係合されていると、各シート3・4・5が伸長してシワが生じたり、のちの熱プレス工程により単位シート13・14の隣接辺部17・18を起点に破断するおそれがあるからである。
【0050】
続いて、治具21上に積層された配列シート3と一対のカバーシート4・5とを部分的に接合して一体化する(接合工程P4、図3参照)。具体的には、第1単位シート13の四隅に対応する箇所、及び第2単位シート14の四隅に対応する箇所に、上方から接合装置(仮止め装置)34を押し当てて、積層されたシート5・3・4を溶着して一体化する。以上より、この接合工程P4では、シート5・3・4が部分的に溶着されたインレットシート1を得ることができる。接合装置34は、シート5・3・4を厚み方向に加圧した状態で、該加圧部分に超音波を作用させる超音波溶着装置、或いは該加圧部分に熱を加える熱溶着装置などを挙げることができる。接合装置34に換えて、接着剤を塗布してシート5・3・4を接着により仮止めする接着装置であってもよい。
【0051】
続いて、接合工程P4で部分的に溶着されたシート5・3・4を、その全体を溶着して、これらシート5・3・4を接合する(熱プレス工程P5、図3参照)。具体的には、治具21から部分的に溶着されたシート5・3・4からなるインレットシート1を分離して、プレス機上に載置する。そして、プレス機に取り付けられる上下一対の金型からなる加熱金型35を用いて、シート5・3・4を加熱しながら厚み方向に加圧を行い、シート5・3・4の全体に対して溶着を施す。このとき、上下に離間した加熱金型35の間に部分的に溶着された状態のインレットシート1(シート5・3・4)を配置したうえで、加熱金型35を加熱しつつプレス機を駆動することで、配列シート3と一対のカバーシート4・5の全体を軟化させて、これらシート5・3・4間を溶着させることができる。以上より、シート5・3・4の全体が溶着により一体的に接合されたインレットシート1を得ることができる。
【0052】
接合工程P4後のシート5・3・4が部分的に接合されたインレットシート1では、担持シート10が存在する部分は、当該担持シート10の厚み分だけ、部分的に厚みが増加することが避けられない(図8参照)。しかし、その後の熱プレス工程P5において、シート5・3・4を加熱しながら厚み方向に加圧を行うと、軟化した配列シート3とカバーシート4とが担持シート10の不織布の繊維間に進入するため、担持シート10の厚みは、両シート3・4に吸収されることとなる。また、ICチップ8は配列シート3の逃げ孔15に収容されることとなる。以上より、熱プレス工程P5後のインレットシート1はその全体が均一な厚み寸法に形成され、その表面が滑らかな平坦面とされる。
【0053】
インレットシート1は、ユーザーが要望する製品の形態で供給される。例えば、全体が溶着されたインレットシート1を要望するユーザーに対しては、熱プレス工程P5が終了した状態でユーザーに供給される。位置決め孔23や接合部16を有する外周部分を不要とするユーザーに対しては、熱プレス工程P5後に、位置決め孔23の内側(図9で二点鎖線で示す位置)で四周縁を切断して不要部分を除去した状態で、ユーザーに供給される。熱プレス工程P5を必要としないユーザーに対しては、シート5・3・4が部分的に溶着され接合された状態で供給される。以上のように、本実施形態のインレットシート1とは、接合工程P4が終了した時点の状態を意味し、その後はユーザーの要望に応じて適宜追加の加工を施すなど、種々の製品形態でユーザーに提供される。
【0054】
以上のように、本実施形態のインレットシート1では、配列シート3を2枚の第1単位シート13及び第2単位シート14で構成したので、各単位シート13・14のサイズをインレット2の載置を担う載置装置33により対応可能な上限サイズよりも小さなものとすることで、当該載置装置33によるインレット2の載置作業を支障無く進めることができる。これにより、インレット2の載置作業を行う際の配列シート3(単位シート13・14)のサイズの大型化を図ることなく、インレットシート1のサイズの大型化を図ることができる。換言すれば、載置装置33による対応可能な配列シート3(単位シート13・14)の上限サイズを超えて、大サイズ化されたインレットシート1を得ることができる。また、新たな設備を導入することなく既存の載置装置33を使用して、同装置33で載置できる配列シート3の上限サイズ以上に大サイズ化されたインレットシート1を形成することも可能となる。
【0055】
隣り合う単位シート13・14の向かい合う第1及び第2の隣接辺部17・18どうしが、互いに重なり合うことなく突き合わされた状態で、配列シート3とカバーシート4・5とを一体的に接合したので、第1及び第2の単位シート13・14の突き合わせ部分に対応するインレットシート1の厚み寸法が、部分的に厚く形成される、或いは部分的に薄く形成されるといったような不都合が生じることを防ぐことができる。また、上記の構成を採ることで、得られたインレットシート1の品質を1枚物の配列シートを含んで形成されるインレットシートと同様の品質とすることができる。
【0056】
第1単位シート13及び第2単位シート14に、両単位シート13・14を並べて配置するときに治具21の位置決めピン22に係合する位置決め孔23を設けたので、位置決めピン22に位置決め孔23を係合させることで、治具21に対して両単位シート13・14を位置決めすることができる。配列シート3を構成する第1及び第2の単位シート13・14は、その厚みが薄く取扱いに難があるが、本実施形態のように両単位シート13・14を位置決めすることができると、第1及び第2の隣接辺部17・18が互いに重なり合うことなく突き合わされた適正姿勢に、両単位シート13・14を並べて配置することが容易となる。単位シート13・14の配置作業の作業効率の向上を図ることもできる。
【0057】
第1単位シート13及び第2単位シート14を同一サイズの矩形状に形成し、両単位シート13・14を重畳させたとき、第1単位シート13に設けられる第1位置決め孔23a(23)と、第2単位シート14に設けられる第2位置決め孔23b(23)とが重なり合わないように各位置決め孔23a・23bを形成したので、これら第1と第2の単位シート13・14が同一サイズの矩形状である場合でも、作業者は位置決め孔23の位置を基準にして、いずれの単位シートであるかを明確に判別することができる。これにより、第1単位シート13と第2単位シート14とが治具21上において逆に配置されることを確実に防ぐことができる。
【0058】
各単位シート13・14に形成される位置決め孔23(23a・23b)が1個の場合には、位置決め孔23まわりに各単位シート13・14が回動してずれ動くおそれがある。これに対して各単位シート13・14のそれぞれに、2個の位置決め孔23a・23bを設けたので、各単位シート13・14が位置決め孔23まわりに回動してずれ動くことを防ぐことができる。
【0059】
各単位シート13・14をその中心を基準として四つの象限に分割したとき、位置決め孔23a・23bを、対角位置にある象限の外周縁部に設けたので、隣り合う象限に位置決め孔23(23a・23b)を設ける場合に比べて、位置決め孔23間の距離を可及的に大きくすることができ、より安定的に第1と第2の単位シート13・14を位置決めすることができる。
【0060】
一対のカバーシート4・5に、治具21の位置決めピン22に係合する位置合わせ孔24を設けたので、配列シート3と一対のカバーシート4・5との相対位置を的確に規定し、さらに治具21に対して各シート3・4・5を位置決めすることができる。カバーシート4・5は、その厚みが薄く取扱いに難があるが、それらを位置決めすることができると、より容易に取り扱うことができる。
【0061】
本実施形態のインレットシート1の製造方法では、単位シート形成工程P1において、配列シート3を構成する各単位シート13・14のサイズをインレット2の載置を担う載置装置33により対応可能な上限サイズよりも小さなものとすることで、インレット載置工程P2において、当該載置装置33によるインレット2の載置作業を支障無く進めることができる。これにより、インレット2の載置作業を行う際の配列シート3(単位シート13・14)のサイズの大型化を図ることなく、インレットシート1のサイズの大型化を図ることができる。換言すれば、載置装置33による対応可能な配列シート3(単位シート13・14)の上限サイズを超えて、大サイズ化されたインレットシート1を得ることができる。また、新たな設備を導入することなく既存の載置装置33を使用して、同装置33で載置できる配列シート3の上限サイズ以上に大サイズ化されたインレットシート1を形成することも可能となる。
【0062】
シート積層工程P3において、隣り合う単位シート13・14の向かい合う第1及び第2の隣接辺部17・18どうしが互いに重なり合わず突き合わされる状態で、単位シート13・14を治具21上に並べて配置したので、第1及び第2の単位シート13・14の突き合わせ部分に対応するインレットシート1の厚み寸法が、部分的に厚く形成される、或いは部分的に薄く形成されるといったような不都合が生じることを防ぐことができる。また、上記の方法を採ることで、得られたインレットシート1の品質を1枚物の配列シートを含んで形成されるインレットシートと同様の品質とすることができる。
【0063】
単位シート形成工程P1は、配列シート3のサイズよりも大きなサイズのブランクシート30の外周縁部を除去して前段シート体31を形成する前段形成工程と、前段シート体31を分断して第1及び第2の単位シート13・14を形成する分断工程とを備えるものとし、分断工程において前段シート体31に形成される切断辺が、第1及び第2の単位シート13・14の第1及び第2の隣接辺部17・18となるように構成した。このように、分断工程において前段シート体31に形成される切断辺が、第1及び第2の単位シート13・14の第1及び第2の隣接辺部17・18となるように構成したので、両単位シート13・14を並べて配置したとき、両隣接辺部17・18とが部分的に重なり合うこと、或いは両隣接辺部17・18どうしの間に部分的に隙間が形成されることを防いで、両隣接辺部17・18を必ず合致させることができる。したがって、単位シート13・14の突き合わせ部分に対応するインレットシート1の厚み寸法が、部分的に厚く形成される、或いは薄く形成されるといったような不都合が発生することを確実に防ぐことができる。
【0064】
単位シート形成工程P1は、単位シート13・14を、治具21の位置決めピン22に係合する位置決め孔23を形成する位置決め孔形成工程を備えるものとし、単位シート形成工程P1において、分断工程と位置決め孔形成工程とを同時に行うようにした。分断工程と位置決め孔形成工程とをそれぞれ別の工程で行うと、各工程における誤差が蓄積され、第1隣接辺部17と位置決め孔23a(23)、及び第2隣接辺部18と位置決め孔23b(23)との相対位置にずれが生じるおそれがある。これに対して本実施形態の製造方法によれば、第1隣接辺部17と位置決め孔23a、及び第2隣接辺部18と位置決め孔23bを同時に形成するので、前記相対位置のずれが生じることを解消して、位置決めピン22に位置決め孔23を係合させて、治具21に対して両単位シート13・14を位置決めするだけで、両隣接辺部17・18どうしが重なり合うことなく突き合わされた状態で、両単位シート13・14を的確に位置決めすることができる。
【0065】
シート積層工程P3において、シート3・4・5を支持する治具21の位置決めピン22に、配列シート3の位置決め孔23と各カバーシート4・5の位置合わせ孔24とが係合されるように構成したので、これらシート3・4・5を治具21上の適正位置に配することが容易となる。したがって、これらシート3・4・5を適正位置に位置決めした状態で適正に接合することができる。
【0066】
図9は、熱プレス工程P5後のインレットシート1を示しており、このインレットシート1を1個のインレット2を含むように切断・分離することで、インレット2(1組のICチップ8とアンテナ9)が搭載されたICシート40を得ることができる。本実施形態では、配列シート3に16個のインレット2が配置されているので、1枚のインレットシート1から16枚のICシート40を得ることができる。
【0067】
ICシート40は、例えば図10に示すように、旅券(冊子)41に内蔵することができる。ICシート40は、旅券41を構成する所定のページ、具体的には、顔写真や個人情報が掲載されているデータページの内部に封入される。ICチップ8には、旅券41の作成時にデータページに記載の内容と一致する所持人の情報が記録されている。専用のリーダライタを用いてICチップ8にアクセスすることで、旅券41のデータページに記載の所持人の情報と、ICチップ8に記録されている所持人の情報とを比較することができ、旅券41の真贋を見極めることができる。
【0068】
また、ICシート40は、配列シート3の上下にカバーシート4・5を一体的に設けた形態であり、JISで定められる非接触ICカードの規格に準拠する厚み寸法に比べてその厚みが薄く形成されているので、旅券41に内蔵(データページの内部に封入)した場合でも、ICシート40によって旅券41が嵩張ることを防ぐことができる。なお、図10では、ICシート40をデータページに封入した例を示しているが、ICシート40は表裏のカバー(カバーページ)、あるいはデータページ以外のページ(センターページ)に封入することもできる。
【0069】
また、ICシート40は、該ICシート40の上下面(表裏面)に外装シート43を一体的に設けて、図11に示すようなICシート40を備える非接触ICカード42として構成することもできる。非接触ICカード42は、インレットシート1から得られたICシート40を該ICシート40と同サイズ、もしくは該ICシート40よりもひとまわり大きな上下の外装シート43・43で挟み込むことで形成することができる。また、インレットシート1の上下面(表裏面)に外装シート43を設けたのち、これを1個のインレット2を含むように切断・分離することで、ICシート40を備える非接触ICカード42を形成することができる。このとき、外装シート43を設けるインレットシート1は、位置決め孔23や接合部16を有する外周部分を含むインレットシート1、或いは、前記外周部分を切断により除去したインレットシート1のいずれであってもよい。外装シート43は印刷層が形成される印刷シートやICシート40の表面を保護するオーバーシート、或いは前記両シートなど、非接触ICカード42の用途に応じて多様なシート構成を採ることができる。
【0070】
本実施形態のインレットシート1は、シートサイズの大サイズ化を図ることができるので、当該インレットシート1から得られる、インレット2が搭載されたICシート40の製造コストを抑えて、ICシート40の低廉化を図ることができる。したがって、このICシート40が搭載される旅券41、或いは非接触ICカード42の製造コストを抑えることができる。
【0071】
上記実施形態のインレット2は、1組のICチップ8とアンテナ9とからなるものとしたが、インレット2は、これらICチップ8とアンテナ9に加え、両者8・9を保持する担持シート10を含むものとして構成することもできる。
【0072】
また、担持シート10で多数個の1組のICチップ8とアンテナ9とを保持して、これを各単位シート13・14の上面に接着固定することもできる。例えば上記実施形態と同様に、各単位シート13・14に8個の1組のICチップ8とアンテナ9を配置する場合には、8個の1組のICチップ8とアンテナ9を4行2列状に担持シート10で保持し、これを各単位シート13・14に配置する形態、4個の1組のICチップ8とアンテナ9を4行1列状に担持シート10で保持し、これを左右方向に並べて各単位シート13・14に配置する形態、4個の1組のICチップ8とアンテナ9を2行2列状に担持シート10で保持し、これを前後方向に並べて各単位シート13・14に配置する形態、或いは2個の1組のICチップ8とアンテナ9を1行2列状に担持シート10で保持し、これを前後方向に並べて各単位シート13・14に配置する形態などが考えられる。
【0073】
担持シート10は2枚の基布10a・10bで構成したが1枚の不織布で構成することもできる。この場合には、ICチップ8およびアンテナ9を内包する状態で繊維を交絡させて不織布からなる担持シート10を形成する、あるいは担持シート10の上面または下面に担持シート10よりも低温で軟化する易軟化層を形成し、当該易軟化層にICチップ8およびアンテナ9を固定する。担持シート10(基布10a・10b)はポリカーボネートで形成したものでもよい。担持シート10は多数独立の孔が開設された不織布で形成することもでき、この場合の担持シート10の素材は、ポリカーボネート、あるいは上記各実施形態で挙げた素材を用いることができる。担持シート10を形成する素材の参考例として、多数独立の孔を設けたフィルム体やシート体を挙げることができる。フィルム体やシート体は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET、PET-G)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などで形成することができる。
【0074】
アンテナ9は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET、PET-G)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などで形成されるフィルムやシートの表面にスクリーン印刷やエッチングなどで形成されたものであってもよい。この場合には、アンテナ9の部分以外のフィルムやシートに多数の孔を設けることが好ましい。
【0075】
上記の実施形態においては、配列シート3を第1と第2の単位シート13・14の2枚に分割して構成したが、配列シート3は3枚以上に分割することもできる。カバーシート4・5は配列シート3の上下にそれぞれ1層のみ設けたが、各カバーシート4・5は2層以上であってもよく、配列シート3の上下で層数が異なっていてもよい。単位シート形成工程P1では、前段形成工程、分断工程、逃げ孔形成工程、及び位置決め孔形成工程を同時に行ったが、少なくとも分断工程と逃げ孔形成工程とを同時に行えばよい。インレットシート1を形成する各シート3・4・5の平面サイズ、厚み寸法、形成素材等は、上記実施形態のものに限られない。本発明に係るインレットシートとインレットシートの製造方法、及びインレットシートから得られる、インレットが搭載されたICシートを備える旅券及び非接触ICカードは、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals)の目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)および目標12(つくる責任、つかう責任)に貢献することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 インレットシート
2 インレット
3 配列シート
4 カバーシート
5 カバーシート
8 ICチップ
9 アンテナ
13 単位シート(第1単位シート)
14 単位シート(第2単位シート)
17 隣接辺部(第1隣接辺部)
18 隣接辺部(第2隣接辺部)
21 治具
22 位置決め体(位置決めピン)
23 位置決め部(位置決め孔)
23a 第1位置決め部(第1位置決め孔)
23b 第2位置決め部(第2位置決め孔)
24 位置合わせ部(位置合わせ孔)
30 ブランクシート
31 前段シート体
33 載置装置
40 ICシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11