(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010413
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】保冷コンテナ
(51)【国際特許分類】
F25D 16/00 20060101AFI20240117BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
F25D16/00
F25D11/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111737
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】598039242
【氏名又は名称】株式会社 スギヤマゲン
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健介
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 孝
(72)【発明者】
【氏名】前川 智律
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 高宏
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA02
3L045CA02
3L045DA01
3L045KA16
3L045LA08
3L045MA02
3L045NA03
3L045PA03
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】断熱箱体のなかの温度をできるだけ長くほぼ一定に保つ。
【解決手段】断熱箱体12は、断熱材21によって形成され、密閉可能である。蓄熱部材13は、所定の融点と前記融点との差が6度以内である所定の凝固点とを有する蓄熱剤と、蓄熱剤を収容した蓄熱剤容器とを有し、断熱箱体12のなかに配置されている。冷却装置14は、断熱箱体12のなかを蓄熱剤の融点よりも低い温度まで冷却する。蓄電池15は、冷却装置14に対して動作電力を供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材によって形成され、密閉可能な断熱箱体と、
所定の融点と前記融点との差が6度以内である所定の凝固点とを有する蓄熱剤と、前記蓄熱剤を収容した蓄熱剤容器とを有し、前記断熱箱体のなかに配置された蓄熱部材と、
前記断熱箱体のなかを前記融点よりも低い温度まで冷却する冷却装置と、
前記冷却装置に対して動作電力を供給する蓄電池と
を備える、保冷コンテナ。
【請求項2】
前記冷却装置は、
前記断熱箱体のなかの温度が前記融点よりも高い稼働温度になった時点で冷却を開始し、
前記断熱箱体のなかの温度が前記凝固点よりも低い目標温度になった時点で冷却を停止する、
請求項1の保冷コンテナ。
【請求項3】
請求項1の保冷コンテナを使用して冷蔵品を輸送する輸送方法において、
前記冷却装置が前記断熱箱体のなかを前記融点よりも低い温度まで冷却し、
前記断熱箱体のなかに前記冷蔵品を収容して前記保冷コンテナを輸送し、
前記保冷コンテナが輸送されている間、前記冷却装置は、前記蓄電池から供給される動作電力によって動作する、
輸送方法。
【請求項4】
前記冷却装置は、
前記断熱箱体のなかの温度が前記融点よりも高い稼働温度になった時点で冷却を開始し、
前記断熱箱体のなかの温度が前記凝固点よりも低い目標温度になった時点で冷却を停止する、
請求項3の輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵品を輸送するための保冷コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、外部電源で駆動されるコンデンシングユニットと、コンデンシングユニットにより予冷される蓄冷材と、バッテリで駆動される冷却ファンとを有する蓄冷式冷凍ユニット付きコンテナを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記蓄冷式冷凍ユニット付きコンテナは、輸送前にコンデンシングユニットを外部電源で駆動して蓄冷材を凍結させておき、外部電源を得ることができない輸送中は、庫内の温度が上昇すると冷却ファンを動作させて、蓄冷材によって冷やされた空気を庫内に供給することにより庫内の温度を下げる。
蓄冷材の凍結温度は、例えば-22℃~-30℃である。このため、庫内の温度が下がり過ぎる可能性がある。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
保冷コンテナは、断熱材によって形成され、密閉可能な断熱箱体と、所定の融点と前記融点との差が6度以内である所定の凝固点とを有する蓄熱剤と、前記蓄熱剤を収容した蓄熱剤容器とを有し、前記断熱箱体のなかに配置された蓄熱部材と、前記断熱箱体のなかを前記融点よりも低い温度まで冷却する冷却装置と、前記冷却装置に対して動作電力を供給する蓄電池とを有する。
前記保冷コンテナを使用して冷蔵品を輸送する輸送方法は、前記冷却装置が前記断熱箱体のなかを前記融点よりも低い温度まで冷却し、前記断熱箱体のなかに前記冷蔵品を収容して前記保冷コンテナを輸送し、前記保冷コンテナが輸送されている間、前記冷却装置は、前記蓄電池から供給される動作電力によって動作する。
前記冷却装置は、前記断熱箱体のなかの温度が前記融点よりも高い稼働温度になった時点で冷却を開始し、前記断熱箱体のなかの温度が前記凝固点よりも低い目標温度になった時点で冷却を停止してもよい。
【発明の効果】
【0006】
前記保冷コンテナによれば、蓄熱剤の凝固点と融点との差が6度以内なので、断熱箱体のなかの温度が下がり過ぎるのを防ぐことができる。蓄電池から供給される電力で冷却装置が動作するので、外部から電源を得ることができない輸送中であっても、断熱箱体のなかの温度を一定に保つことができる。また、冷却装置が動作しない場合であっても、蓄熱剤によって断熱箱体のなかの温度をほぼ一定に保つことができる。
冷却装置の稼働温度を蓄熱剤の融点よりも高く設定し、目標温度を蓄熱剤の凝固点よりも低く設定すれば、蓄熱剤が完全に融解してから冷却装置が冷却を開始し、蓄熱剤が完全に凝固してから冷却装置が冷却を停止するので、冷却装置が起動/停止する回数を抑えることができる。これにより、冷却装置の消費電力を抑えることができるので、保冷コンテナの保冷時間を延ばすことができる。また、冷却装置が故障する確率を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、保冷コンテナ10について説明する。
保冷コンテナ10は、例えばコールドロールボックスであり、高い精度でほぼ一定の温度に保持する必要がある冷蔵品を収容して運搬するためのコンテナである。保冷コンテナ10は、例えば、断熱箱体12と、蓄熱部材13と、冷却装置14と、蓄電池15と、外箱16と、車輪17とを有する。
【0009】
外箱16は、例えば略直方体箱状であり、断熱箱体12を保護する。外箱16は、前面が開口した本体61と、本体61に開閉可能に固定された扉62とを有する。
車輪17は、外箱16の下に例えば4つ設けられている。これにより、保冷コンテナ10全体を容易に移動させることができる。
【0010】
断熱箱体12は、例えば略直方体箱状であり、外箱16のなかに配置されている。断熱箱体12は、例えば6枚の断熱材21を有する。断熱材21は、例えば長方形板状であり例えばシリカ製の真空断熱材である。断熱材21のうちの1枚は、外箱16の扉62の内側に固定され、残りの5枚は、外箱16の本体61のなかに固定され、扉62を閉めると、内部に密閉空間を画定するよう構成されている。断熱箱体12の内部に画定される密閉空間の容量は、例えば560L(リットル)である。
【0011】
蓄熱部材13は、断熱箱体12のなかに配置され、断熱箱体12の内部の密閉空間の温度を一定に保つ。この例において、蓄熱部材13は、断熱箱体12の側面を構成する4枚の断熱材21(扉62に固定されている断熱材21も含む。)それぞれに8個ずつ、全部で32個の蓄熱部材13が取り付けられている。なお、蓄熱部材13は、取り外し可能であり、要求される保冷時間にしたがって増減させることができる。蓄熱部材13は、例えば、蓄熱剤容器31(不図示)と、蓄熱剤容器31のなかに収容された蓄熱剤32(不図示)とを有する。
蓄熱剤32は、所定の融点(例えば4℃)で融解する。このため、あらかじめ蓄熱剤32を凝固させておけば、蓄熱剤32の周囲の温度が融点に達すると、蓄熱剤32が融解熱を吸収し、蓄熱剤32が完全に融解するまでの間、周囲の温度を融点に保つ。
また、蓄熱剤32は、融点よりも低い所定の凝固点(例えば3℃)で凝固する。このため、融解した蓄熱剤32を凝固させるために冷却すると、蓄熱剤32が凝固熱を吸収し、蓄熱剤32が完全に凝固するまでの間、周囲の温度を凝固点に保つ。
ここで、蓄熱剤32の凝固点と融点との間の差は、6度以内(例えば1度)である。したがって、断熱箱体12のなかの温度が低くなり過ぎるのを防ぐことができる。
【0012】
冷却装置14は、例えば外箱16の上に設置され、断熱箱体12のなかを冷却する。冷却装置14は、間歇動作する。例えば、断熱箱体12のなかの温度を測定し、測定した温度が所定の稼働温度まで上昇したとき、冷却を開始し、稼働温度より低い所定の目標温度まで下降したとき、冷却を停止する。
冷却装置14は、例えば単相交流100V(ボルト)で動作する。これにより、輸送開始前は、商用電源に接続して断熱箱体12のなかを予冷しておくことができる。予冷動作時において、冷却装置14は、断熱箱体12のなかを蓄熱剤32の凝固点よりもわずかに低い温度(例えば2℃)まで冷却する。これにより、蓄熱剤32を完全に凝固させることができる。
また、冷却装置14は、蓄電池15から供給される直流電力でも動作できる。これにより、輸送中など、商用電源に接続できない状況であっても、断熱箱体12のなかを冷却することができる。
【0013】
蓄電池15は、例えば外箱16の上に設置され、冷却装置14に動作電力を供給する。蓄電池15は、例えば商用電源に接続して充電することができる。蓄電池15を充電するための電源コードは、冷却装置14と共用であってもよい。
【0014】
次に、
図2を参照して、冷蔵品を輸送する輸送方法80について説明する。
輸送方法80は、例えば、予冷工程81と、収容工程82と、輸送工程83とを有する。
【0015】
予冷工程81において、冷却装置14を商用電源などに接続して断熱箱体12のなかを蓄熱剤32の凝固点よりも低い温度(例えば2℃)まで冷却し、蓄熱剤32を完全に凝固させる。なお、蓄熱部材13を保冷コンテナ10から取り出して、外部に設置された冷凍庫などで蓄熱剤32を凝固させてもよい。また、蓄電池15を充電しておく。その後、収容工程82へ進む。
収容工程82において、輸送すべき冷蔵品を断熱箱体12のなかに収容する。その後、輸送工程83へ進む。
【0016】
輸送工程83において、保冷コンテナ10を例えば輸送車両に搭載するなどして、輸送する。輸送車両は冷蔵車である必要がないので、冷蔵品を常温品とともに輸送することができる。
輸送中は、蓄電池15から供給される電力で冷却装置14が動作する。
【0017】
例えば、冷却装置14の稼働温度を蓄熱剤32の融点よりも低くかつ凝固点よりも高い温度に設定した場合、断熱箱体12のなかの温度が上昇して稼働温度に達すると、冷却装置14が動作して、断熱箱体12のなかの温度を下げる。蓄熱剤32の融点には達しないので、蓄熱剤32が融解するのを防ぐことができる。
その後、断熱箱体12のなかの温度が下降して目標温度に達すると、冷却装置14が動作を停止する。冷却装置14の目標温度は、蓄熱剤32の凝固点よりも高くてもよいし、低くてもよい。いずれにしても、蓄熱剤32は、完全に凝固したままの状態を保つ。
蓄電池15の充電が切れたり冷却装置14が故障したりして、冷却装置14が動作しなくなった場合、断熱箱体12のなかの温度が上昇して稼働温度に達しても冷却装置14が動作しないので、断熱箱体12のなかの温度は、更に上昇して蓄熱剤32の融点に達する。この時点ではじめて、蓄熱剤32が融解を開始する。その後、蓄熱剤32が完全に融解するまでの間は、断熱箱体12のなかの温度が蓄熱剤32の融点より高くなることはない。したがって、温度逸脱を防ぐことができる。
【0018】
あるいは、冷却装置14の稼働温度を蓄熱剤32の融点よりわずかに高い温度に設定してもよい。その場合、断熱箱体12のなかの温度が上昇して蓄熱剤32の融点に達しても、冷却装置14は動作せず、蓄熱剤32が融解を開始する。蓄熱剤32が完全に融解してはじめて、断熱箱体12のなかの温度が蓄熱剤32の融点を超えて稼働温度に達し、冷却装置14が動作する。これにより、蓄電池15の消耗を防ぐことができる。
その後、断熱箱体12のなかの温度が下降して目標温度に達すると、冷却装置14が動作を停止する。目標温度を蓄熱剤32の凝固点よりも高く設定した場合、蓄熱剤32は凝固しない。したがって、その後は比較的早く断熱箱体12の温度が上昇して稼働温度に達することとなり、冷却装置14が間歇的に動作する。
また、冷却装置14の目標温度を蓄熱剤32の凝固点よりも低く設定した場合は、断熱箱体12のなかの温度が蓄熱剤32の凝固点に達した時点で、蓄熱剤32が凝固を開始する。蓄熱剤32が完全に凝固すると、断熱箱体12のなかの温度が蓄熱剤32の凝固点より低くなり、目標温度に達するので、冷却装置14が動作を停止する。
【0019】
一般に、冷却装置は、起動時に大きな電力を消費する。また、起動/停止の回数が多いと、故障発生の確率が高くなる。このため、冷却装置が起動/停止する回数を少なくし、一回起動したらできるだけ長く連続運転することが好ましい。
この点を考慮すると、冷却装置14の稼働温度を蓄熱剤32の融点よりも高く設定し、目標温度を蓄熱剤32の凝固点よりも低く設定することが好ましい。そうすれば、冷却装置14が起動/停止する回数を減らし、電力消費を抑え、故障発生の確率を低くすることができる。
【0020】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 保冷コンテナ、12 断熱箱体、21 断熱材、13 蓄熱部材、31 蓄熱剤容器、32 蓄熱剤、14 冷却装置、15 蓄電池、16 外箱、61 本体、62 扉、17 車輪、80 輸送方法、81 予冷工程、82 収容工程、83 輸送工程。