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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104141
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】運搬台車およびキャスター
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/04 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
B62B5/04 Z
B62B5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008224
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【弁理士】
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050JJ03
3D050JJ08
(57)【要約】
【課題】キャスターの旋回をロックすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、台車本体20と、台車本体20に取り付けられるキャスター41と、を備える運搬台車100であって、キャスター41の旋回をロックする旋回ロック機構100を有する。旋回ロック機構100は、使用者による操作に応じてキャスター41の旋回をロックするロック部124を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車本体と、
前記台車本体に取り付けられるキャスターと、を備える運搬台車であって、
前記キャスターの旋回をロックする旋回ロック機構を有することを特徴とする運搬台車。
【請求項2】
前記旋回ロック機構は、
使用者による操作に応じて前記キャスターの旋回をロックするロック部を有することを特徴とする請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
前記キャスターは、
使用者による操作に応じて車輪にブレーキを掛けるブレーキペダルを有し、
前記ロック部と前記ブレーキペダルとは、独立して別々に操作可能であることを特徴とする請求項2に記載の運搬台車。
【請求項4】
前記ロック部と前記ブレーキペダルとは、前記キャスターが旋回するときの旋回軸を挟んで反対側に位置することを特徴とする請求項3に記載の運搬台車。
【請求項5】
前記台車本体は、前記キャスターとの間に設けられる被ロック部材を有し、
前記ロック部は、前記被ロック部材の被ロック部に係合することにより、前記キャスターの旋回をロックすることを特徴とする請求項2または3に記載の運搬台車。
【請求項6】
前記旋回ロック機構は、
前記キャスターの旋回位置のうち予め定められた旋回位置で前記キャスターの旋回をロックすることを特徴とする請求項1または2に記載の運搬台車。
【請求項7】
前記キャスターは、
平面視で見て、前記台車本体の外周縁から一部がはみ出すように旋回し、
前記旋回ロック機構は、
平面視で見て、前記キャスターが前記台車本体の外周縁からはみ出さない状態のときに、前記キャスターの旋回をロック可能であることを特徴とする請求項6に記載の運搬台車。
【請求項8】
前記台車本体は、4隅に前記運搬台車を押して走行させるための手押部材が挿入される挿入孔が設けられたコーナ部材を有し、
前記キャスターは、
使用者による操作に応じて車輪にブレーキを掛けるブレーキペダルを有し、
前記旋回ロック機構は、
平面視で見て、前記ブレーキペダルが前記挿入孔と重なり合う状態であるときに、前記キャスターの旋回をロック可能であることを特徴とする請求項6に記載の運搬台車。
【請求項9】
前記キャスターは、車輪を有し、
前記旋回ロック機構は、
平面視で見て、前記車輪の後端が前記台車本体の角部を向いた状態であるときに、前記キャスターの旋回をロック可能であることを特徴とする請求項6に記載の運搬台車。
【請求項10】
運搬台車の台車本体に取り付けられるキャスターであって、
使用者による操作に応じて前記キャスターの旋回をロックするロック部を有することを特徴とするキャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬台車およびキャスターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業現場等では物品を運搬するために運搬台車が用いられる。特許文献1には、台車本体の下側に、台座に車輪を回転自在に取付けた旋回キャスターを設けた運搬台車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-61988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、キャスターの旋回をロックすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、台車本体と、前記台車本体に取り付けられるキャスターと、を備える運搬台車であって、前記キャスターの旋回をロックする旋回ロック機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、キャスターの旋回をロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の運搬台車の底面図である。
図2】運搬台車の平面図である。
図3】運搬台車の側面図である。
図4】運搬台車を後側から見た図である。
図5】取付部材にキャスターを結合する前の状態を示す斜視図である。
図6】取付部材にキャスターを結合した後の状態を示す斜視図である。
図7】キャスターの旋回をロックする旋回位置を示す底面図である。
図8】キャスターの旋回をロックする前後の状態を示す斜視図である。
図9】キャスターの旋回をロックする前後の状態を示す断面図である。
図10】キャスターの旋回をロックした状態を示す斜視図である。
図11】キャスターの旋回をロックしていない状態を示す斜視図である。
図12】第2の実施形態の被ロック部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る運搬台車およびキャスターについて図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は運搬台車10の底面図である。図2は運搬台車10の平面図である。図3は運搬台車10の側面図である。図4は運搬台車10を後側から見た図である。なお、各図では便宜上、矢印Frを前側、矢印Rrを後側、矢印Rを右側、矢印Lを左側とし、運搬台車10の左右方向の幅の中心を中心線C1として示している。ただし、運搬台車10は、走行面上を前後左右の何れの方向にも走行することができる。
【0009】
運搬台車10は、台車本体20と、走行部40と、旋回ロック機構100とを備えている。
台車本体20は、複数のフレーム部等が連結して構成され、運搬物を積載する。台車本体20は、平面視(または底面視)において前後方向(第1の方向)を長手方向とし、前後方向に直交する左右方向(第2の方向)を短手方向とする略矩形状である。台車本体20は、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、コーナ部材22、補強部25、取付部30等を有する。
【0010】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、台車本体20の外形を構成する。また、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、コーナ部材22により4つの角部で結合されることで、略矩形状の四方のフレーム枠を構成する。前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、例えば、アルミニウム合金製の角状の中空状パイプ等を用いることができる。
【0011】
コーナ部材22は、4つの角部で、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dのうち隣接するフレーム部同士を結合する。また、コーナ部材22は、台車本体20に手押部材70を取り付けるための取付部として機能する。コーナ部材22は、手押部材70が挿入される上側に開口した挿入孔23と、挿入孔23に挿入された手押部材70を支持する支持部24とを有する。コーナ部材22は、例えば、押出し成形により形成されるアルミニウム合金製の部材等を用いることができる。
【0012】
なお、各図には、手押部材70を二点鎖線で示している。手押部材70は、運搬台車10を走行させるときに使用者が手を掴むための部材である。使用者は手押部材70を手で掴み押したり引いたりすることで運搬台車10を走行させる。手押部材70をコーナ部材22の挿入孔23に挿入することで手押部材70が台車本体20に取り付けられ、挿入孔23から抜き出すことで手押部材70が台車本体20から取り外される。手押部材70は、上下方向に沿って長い棒状の部材である。手押部材70は、例えば、押出し成形により形成されるアルミニウム合金製の部材等を用いたり、単管(単管パイプ)を用いたりすることができる。単管とは、JIS G 3444に規定されている一般構造用炭素鋼鋼管をいい、外径が48.6mmの円管である。
【0013】
補強部25は、台車本体20の四方のフレーム枠を補強する。具体的に、補強部25は、補強フレーム部26a、26b、26cを有する。
補強フレーム部26a、26b、26cは、四方のフレーム枠に突き合わされたり、互いに前後左右方向に突き合わされたりした状態で、ボルト、リベット、溶接等で接合されることで台車本体20を補強する。本実施形態では、前後方向に沿った2つの補強フレーム部26a、26bが前側フレーム部21aと後側フレーム部21bとに亘って架設される。また、左右方向に沿った計12の補強フレーム部26cが、右側フレーム部21cと補強フレーム部26a、補強フレーム部26aと補強フレーム部26b、補強フレーム部26bと左側フレーム部21dに亘ってそれぞれ架設される。補強フレーム部26a、26b、26cは、例えば、アルミニウム合金製の角状の中空状パイプ等を用いることができる。台車本体20は、補強フレーム部26a、26bにより平面視において前後方向に沿った複数列(3列)の空間が形成され、補強フレーム部26cにより平面視において左右方向に沿った複数例(5列)の空間が形成されることで、複数(計15)の略矩形状の空間27が形成される。
【0014】
取付部30は、走行部40を台車本体20に取り付ける。取付部30は、複数(4つ)の取付部材31を有する。
取付部材31は4つのコーナ部材22に近接する4隅の空間27にそれぞれ位置する。取付部材31は、平面視において矩形状の角部を切り欠いた形状である。取付部材31は、例えば板状のアルミニウム合金等によって形成される。空間27のうち取付部材31が配置された空間27は上側が開口し、下側の一部あるいは全部が取付部材31によって閉塞される。なお、取付部材31により閉塞された空間27には、同じ運搬台車10を積み重ねたときに上段の運搬台車10の後述するキャスター41の一部分が入り込む。一方、空間27のうち取付部材31が配置されていない空間27は上下方向に貫通する。取付部材31は、下方からボルトやリベット等を介して、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、補強フレーム部26a、26b、26cに結合される。
【0015】
図5は、取付部材31にキャスター41を結合する前の状態であって、キャスター41の一部を分解した斜視図である。図6は、取付部材31にキャスター41を結合した後の状態を示す斜視図である。
走行部40は、台車本体20および運搬物の荷重を支持しながら床面を走行する。走行部40は、複数(4つ)のキャスター41を有する。
キャスター41は、台車本体20の4隅に位置し、取付部材31を介して台車本体20に取り付けられる。キャスター41は、上下方向に沿った旋回軸Oを中心として旋回可能な旋回キャスターである。また、キャスター41は、使用者の操作に応じてブレーキを掛けたり、ブレーキを解除したりすることができるブレーキ付キャスターである。
【0016】
キャスター41は、車輪42、支持部45、ブレーキペダル55等を有する。
車輪42は、内部にベアリングが内蔵されたホイール部42aと、ホイール部42aの外周に嵌め込まれたタイヤ部42bとを有する。
支持部45は、車軸43を介して車輪42を回転自在に支持する。支持部45は、車輪42を支持すると共に、取付部材31を介して台車本体20に取り付けられるフォーク部材46と、ブレーキペダル55を揺動可能に支持するペダル保持部材51とを有する。
フォーク部材46は、車輪42の両側にそれぞれ位置する一対の側壁46aと、一対の側壁46aを車輪42の上側で連結させた円形の天板46bとで一体的に形成される。天板46bは後述するベアリング49、50を介して上皿部材47と下皿部材48とにより挟持される(後述する図9を参照)。
【0017】
天板46bの中央にはキャスター41の旋回軸Oと同軸上に挿通孔46eが形成される。上皿部材47は、天板46bよりもやや大きな円形に形成され、中央には旋回軸Oと同軸上に挿通孔47aが形成される。下皿部材48は、天板46bよりも小さな円形に形成され、中央には旋回軸Oと同軸上に挿通孔48aが形成される。
上皿部材47と下皿部材48とは、挿通孔47aおよび挿通孔48aの近辺で両者が相対的に回転しないように一体的に結合されている。したがって、天板46b、すなわちフォーク部材46は、上皿部材47および下皿部材48に対して、ベアリング49、50を介して旋回軸Oを中心に旋回可能である。
【0018】
ペダル保持部材51は、車輪42の両側にそれぞれ位置する一対の側壁51aと、一対の側壁51aを上側で連結した連結板51bとで一体的に形成される。一対の側壁51aは、連結板51bから二股状に異なる方向に向かって延出され、二股状のうち一方側が下側でフォーク部材46と共に車軸43により支持され、他方側が上側で軸部材52により支持される。側壁51aの上部であって、連結板51bに近接した位置には、ブレーキペダル55を揺動可能に支持する軸部材56が挿通される。
【0019】
ブレーキペダル55は、使用者による操作に応じて、車輪42にブレーキを掛ける。ブレーキペダル55は、ペダル本体55aと、ペダル本体55aから一体で延出するペダル操作部としての操作片55bとを有する。ペダル本体55aは、車輪42の両側にそれぞれ位置する一対の側壁と、一対の側壁を上部で連結した連結板とで一体的に形成される。進行方向でキャスター41を見た場合に、ブレーキペダル55は車輪42と重なり合う位置に配置される。ブレーキペダル55は軸部材56を中心にしてペダル保持部材51に対して上下に揺動可能である。
操作片55bは、使用者が足等で操作されることにより、ブレーキペダル55が上下に揺動する。
【0020】
ブレーキを解除した状態では、ブレーキペダル55は上昇した位置にある。一方、使用者が足でブレーキペダル55の操作片55bを下側に踏み込むように操作することで、ブレーキペダル55は下側に向かって揺動する。なお、各図に示すブレーキペダル55は、ブレーキが解除された状態である。ブレーキペダル55の下側への揺動に伴って、ブレーキペダル55が直接または間接的に車輪42の外周面を強固に押圧するために、車輪42が回転できない、ブレーキが掛けられた状態となる。また、ブレーキペダル55はブレーキが掛けられた状態で保持されるためにストッパとして機能する。
【0021】
本実施形態の運搬台車10は、キャスター41の旋回をロックする旋回ロック機構100を備える。旋回ロック機構100は、支持部材110と、ロック部材120と、被ロック部材130とを有する。本実施形態では、支持部材110およびロック部材120がキャスター41側に位置し、被ロック部材130が台車本体20側に位置する。すなわち、キャスター41が旋回したときに、支持部材110およびロック部材120はキャスター41と同期して旋回し、被ロック部材130は旋回せずに台車本体20との相対位置が維持される。
【0022】
支持部材110は、ロック部材120を支持する。支持部材110は、ペダル保持部材51に対して旋回軸Oを挟んだ反対側の位置でフォーク部材46に結合される。支持部材110は、一対の側壁111と、一対の側壁111を上側で連結した連結部112とを有する。支持部材110は、例えば、板状の金属板をプレス加工することにより形成される。一対の側壁111は、後端に凹部113が形成される。凹部113は、支持部材110をフォーク部材46に結合するときに軸部材52と係合することで支持部材110が位置決めされる。また、一対の側壁111は、軸部材114、115が前後に離れた状態で懸架される。支持部材110は、軸部材114を介してロック部材120を回動可能に支持する。軸部材115は、一対の側壁111の前後方向に長い長孔内に位置しており、長孔内を移動可能である。軸部材114と軸部材115との間には付勢部材116が架け渡されている(図9を参照)。したがって、軸部材114と軸部材115とは付勢部材116によって互いに近づく方向に付勢される。また、一対の側壁111は、支持部材110をフォーク部材46に結合するための固定ボルト117が挿入される軸孔118を有する。
【0023】
ロック部材120は、被ロック部材130の被ロック部132に係合することによりキャスター41の旋回をロックする。ロック部材120は、軸部材114を介して支持部材110に回動可能に支持される。ロック部材120は、一対の側壁121と、一対の一対の側壁121を前端で連結した連結部122とを有する。ロック部材120は、例えば、板状の金属板をプレス加工することにより形成される。一対の側壁121は、後端に第1の位置決め部123aと第2の位置決め部123bを有する(図9を参照)。第1の位置決め部123aと第2の位置決め部123bは、上下に離れて位置しており、前側に向かって凹んだ円弧状である。第1の位置決め部123aおよび第2の位置決め部123bの何れか一方が軸部材115と係合することでロック部材120の回動が位置決めされる。
【0024】
連結部122は、上側にロック部124を有し、下側に操作部125を有する。
ロック部124は、使用者による操作に応じて、被ロック部材130の被ロック部132に係合することによりキャスター41の旋回をロックする。ロック部124は、下側に位置する幅が広い幅広部124aと、上側に位置する幅が狭い幅狭部124bとにより一体で構成される板状である。幅広部124aは上側に向かうにしたがって徐々に幅が狭くなり、幅狭部124bは略一定の幅である。なお、ここでの幅とは車軸43に対して直交する方向から見たときのロック部124の水平方向の長さである。ロック部124のうち幅狭部124bが被ロック部132と係合する。ロック部材120が軸部材114を中心にして回動することにより、ロック部124は前後方向に移動する。具体的に、ロック部124が旋回軸Oに向かって移動することによりロック部124が被ロック部132に係合し、ロック部124が旋回軸Oから離れるように移動することによりロック部124と被ロック部132とによる係合が解除される。
【0025】
操作部125は、使用者がロック部124と被ロック部132とによる係合を解除したいときに操作する。操作部125には、前面に滑り止め用の複数の突条125aが幅方向に亘って突設されている。使用者は、ロック部124が被ロック部132に係合している状態から、例えば足を使って操作部125を旋回軸Oに向かって押すように操作する。操作部125が旋回軸Oに向かって操作されることにより、ロック部材120が軸部材114を中心にして回動してロック部124と被ロック部132とによる係合が解除される。
【0026】
被ロック部材130は、ロック部材120のロック部124が係合される。被ロック部材130は、キャスター41を取付部材31に結合したときに、キャスター41と取付部材31との間に配置され、取付部材31に対して固定される。被ロック部材130は、旋回軸Oを中心とした略平らな円板状に形成される。被ロック部材130は、例えば、板状の金属板をプレス加工することにより形成される。被ロック部材130は、中央に旋回軸Oと同軸上の挿通孔131を有する。
【0027】
また、被ロック部材130は、外周縁の一部に被ロック部132を有する。
被ロック部132は、ロック部材120のロック部124が係合される。被ロック部材130は、外周縁の一定の範囲に下側に向かって段状に低くなった段部133を有する。被ロック部132は、段部133内で旋回軸Oに向かって凹状の形状である。被ロック部132は、旋回軸O側に向かうにしたがって徐々に幅が狭くなっている。換言すると、被ロック部132は、旋回軸O側から離れるにしたがって徐々に幅が広がっている。なお、被ロック部132の幅の中心を中心線Sで示している。被ロック部132のうちロック部124と係合する位置は幅WBであり、ロック部124の幅狭部124bの幅WAと略同一である(後述する図8(a)を参照)。
【0028】
次に、旋回ロック機構100をキャスター41および台車本体20に結合する場合について説明する。
まず、支持部材110に対してロック部材120を回動可能な状態に組み立てる。このとき、軸部材114と軸部材115との間には付勢部材116を架け渡す。
次に、キャスター41のフォーク部材46に支持部材110を結合する。具体的には、フォーク部材46の一対の側壁46aの間に支持部材110を差し込み、ペダル保持部材51を支持する軸部材52と支持部材110の凹部113を係合させることにより、支持部材110を位置決めする。次に、フォーク部材46の一対の側壁46aにそれぞれ形成された軸孔46cと支持部材110の一対の側壁111の軸孔118とを連通させ、固定ボルト117を挿通させて固定することにより、ロック部材120を支持した状態の支持部材110をキャスター41に結合することができる。
【0029】
支持部材110をキャスター41に結合した状態では、ブレーキ機構と旋回ロック機構とは旋回軸Oを挟んで互いに反対側に位置する。すなわち、ロック部材120のロック部124と、ブレーキペダル55とが旋回軸Oを挟んで反対側に位置する。また、ロック部材120の操作部125と、ブレーキペダル55の操作片55bとが旋回軸Oを挟んで反対側に位置する。
【0030】
次に、支持部材110が結合されたキャスター41を取付部材31に結合する。具体的には、図5に示すように、取付部材31の上からボルト60を、座金部材61の挿通孔61a、取付部材31の挿通孔31a、被ロック部材130の挿通孔131、上皿部材47の挿通孔47a、フォーク部材46の天板46bの挿通孔46e、下皿部材48の挿通孔48aの順に挿通させ、フォーク部材46の一対の側壁46aの間でナット62を螺合させることで固定する。したがって、被ロック部材130は、取付部材31とキャスター41との間、より具体的には取付部材31と上皿部材47との間の位置で取付部材31に固定される。
【0031】
ここで、被ロック部材130は、被ロック部132が取付部材31に対して所定の位置になるように固定される。具体的には、被ロック部材130の被ロック部132は、取付部材31の矩形が切り欠かれた部位と対角となる角部31c(図5を参照)を指向する位置になるように固定される。なお、被ロック部材130と取付部材31とは凹凸で位置決めしたり、両者をボルトやリベット等の固定部材を用いて直接、結合したりすることにより、被ロック部132を取付部材31に対して所定の位置になるように固定することができる。
【0032】
図6に示すように、取付部材31にキャスター41が結合された状態ではキャスター41は旋回軸Oを中心に旋回可能である。このとき、旋回ロック機構100のうち支持部材110およびロック部材120はフォーク部材46に結合されていることから、キャスター41と同期して旋回する。一方、被ロック部材130は、取付部材31に固定されていることから旋回しない。
【0033】
最後に、キャスター41が結合された取付部材31を台車本体20の4隅に取り付けることにより、運搬台車10は旋回ロック機構100を備えることができる。取付部材31を台車本体20に取り付けることにより、被ロック部132が台車本体20の下側であって、底面視で見て所定の位置に配置される。
【0034】
このように、キャスター41を台車本体20に対して取り付けることにより、キャスター41を台車本体20に対して旋回軸Oを中心にして旋回させることができる。図1には、キャスター41が旋回軸Oを中心にして旋回したときのキャスター41の軌跡Tを二点鎖線で示している。軌跡Tは、キャスター41のブレーキペダル55の操作片55bの軌跡を示している。軌跡Tの一部は、平面視(または底面視)において、台車本体20の外周縁(四方のフレーム枠)よりも外側にはみ出す。具体的に、軌跡Tに注目すると、車輪42が前後方向を向いているときには、操作片55bが後側フレーム部21bから後側にはみ出し、キャスター41が90°旋回して車輪42が左右方向を向いているときには、操作片55bが左側フレーム部21dからはみ出す。一方、キャスター41が45°旋回して車輪42が斜めを向いているときには、操作片55bがコーナ部材22と重なり合って操作片55bが台車本体20からはみ出さない、あるいは、はみ出す量が少なくなる。なお、ここでは一つのキャスター41の軌跡Tについて説明したが、他のキャスター41の軌跡Tも同様である。
【0035】
図7は、キャスター41の旋回位置のうち、旋回ロック機構100によりキャスター41の旋回をロックすることができる旋回位置を示す底面図である。
旋回ロック機構100は、平面視または底面視においてキャスター41の操作片55bがコーナ部材22と重なり合う状態でのキャスター41の旋回位置で、キャスター41の旋回をロック可能である。このときのキャスター41の旋回位置は、平面視または底面視においてキャスター41の操作片55bが台車本体20の外周縁からはみ出さない、あるいは、はみ出す量が少なくなる状態である。
具体的には、後側の2つのキャスター41の場合、車輪42が前後方向を向いた状態から45°旋回して斜めを向いているときにキャスター41の旋回をロック可能である。また、前側の2つのキャスター41の場合、車輪42が前後方向を向いた状態から135°旋回して斜めを向いているときにキャスター41の旋回をロック可能である。この場合には、平面視または底面視において車輪42の後端が台車本体20の角部を向いている状態である。
【0036】
車輪42の幅の中心を中心線Vとすると、旋回ロック機構100は、車輪42の中心線Vと台車本体20の中心線C1とが交差するときの鋭角側の角度αが略45°のときにキャスター41の旋回をロックすることができる。このとき、底面視において、後側の2つのキャスター41は略「ハ」字状に位置しており、前側の2つのキャスター41は「ハ」字を前後に反転させた略「逆ハ」字状に位置している。
【0037】
したがって、被ロック部132は、図7に示したような、キャスター41の操作片55bがコーナ部材22と重なり合い、操作片55bが台車本体20からはみ出さない、あるいは、はみ出す量が少なくなる状態のキャスター41の旋回位置でロックできるように配置されている。
具体的には、図1に示すように、前側の2つのキャスター41に対応する被ロック部材130の被ロック部132は、旋回軸Oよりも中心線C1側かつ後側の位置であって、旋回軸Oから斜め45°の位置である。また、後側の2つのキャスター41に対応する被ロック部材130の被ロック部132は、旋回軸Oよりも中心線C1側かつ前側の位置であって、旋回軸Oから斜め45°の位置である。すなわち、被ロック部132は、図1に示すように、被ロック部132の幅の中心線Sと台車本体20の中心線C1との鋭角側の角度βが略45°で交差する位置に配置される。
【0038】
このように、旋回ロック機構100が、上述したキャスター41の旋回位置で旋回をロックすることにより、キャスター41が台車本体20から台車本体20からはみ出さない状態、あるいは、はみ出す量が少なくなる状態であるために、運搬台車10の周囲を通行する通行者がキャスター41に接触することを抑制することができる。また、平面視において、キャスター41の車輪42と床面とが接地する4つの接地点の位置を互いに離すことができるために、運搬台車10の安定性を図ることができる。
【0039】
次に、使用者が旋回ロック機構100を用いてキャスター41の旋回をロックさせる操作について説明する。
図8(a)はキャスター41の旋回をロックしていないときの旋回ロック機構100の状態を示す斜視図であり、図8(b)はキャスター41の旋回をロックしたときの旋回ロック機構100の状態を示す斜視図である。図9(a)はキャスター41の旋回をロックしていない旋回ロック機構100の状態を示す断面図であり、図9(b)はキャスター41の旋回をロックしたときの旋回ロック機構100の状態を示す断面図である。図9(a)、(b)は、旋回軸Oおよび被ロック部132の幅の中心線Sを通るように切断したときの断面図である。図10は、旋回ロック機構100によりキャスター41の旋回をロックした状態を示す斜視図である。図11は、旋回ロック機構100によりキャスター41の旋回をロックしていない状態を示す斜視図である。
【0040】
図8(a)および図9(a)に示すように、キャスター41の旋回をロックしていない場合では、ロック部材120のロック部124と被ロック部材130の被ロック部132とは離れており、ロック部124と被ロック部132との係合が解除されている。したがって、キャスター41は旋回軸Oを中心に自由に旋回することができる。
このとき、ロック部材120の第1の位置決め部123aに軸部材115が係合しているために、ロック部材120の位置が維持されている。
【0041】
次に、使用者がキャスター41の旋回をロックさせる場合には、まず、キャスター41を旋回させて、図8(a)および図9(a)に示すように、ロック部材120のロック部124と被ロック部材130の被ロック部132とを対向させる。
次に、使用者は例えば足を使って、ロック部124を旋回軸Oに向かって押圧する。このとき、ロック部材120の第1の位置決め部123aには付勢部材116により付勢された軸部材115が係合しているために、使用者は付勢部材116の付勢に抗してロック部124を押圧する。したがって、ロック部材120が軸部材114を中心にして矢印A方向に回動して、図8(b)および図9(b)に示すようにロック部124が被ロック部132に係合する。また、ロック部材120が回動するときに、軸部材115は長孔内を移動しながら第1の位置決め部123aと第2の位置決め部123bとの境界の突起を乗り越えて、第2の位置決め部123bに係合する。したがって、第2の位置決め部123bに軸部材115が係合することによりロック部材120の位置が維持される。
ロック部124が被ロック部132に係合することにより、キャスター41を旋回させようとしてもロック部124が被ロック部132と干渉して移動できないために、図10に示すように旋回ロック機構100はキャスター41の旋回をロックすることができる。
【0042】
なお、使用者は、操作部125を用いてロック部124を被ロック部132に係合させてもよい。具体的には、使用者は例えば足を操作部125に引っ掛けて、旋回軸Oから離れるように操作する。操作部125が旋回軸Oから離れるように操作されることにより、ロック部材120が軸部材114を中心にして回動してロック部124が被ロック部132と係合する。
【0043】
一方、使用者がキャスター41の旋回のロックを解除する場合には、使用者は例えば足を使って、操作部125を旋回軸Oに向かって押圧する。このとき、ロック部材120の第2の位置決め部123bには付勢部材116により付勢された軸部材115が係合しているために、使用者は付勢部材116の付勢に抗して操作部125を押圧する。したがって、ロック部材120が軸部材114を中心にして矢印B方向に回動して、ロック部124と被ロック部132との係合が解除される。また、ロック部材120が回動するときに、軸部材115は長孔内を移動しながら第1の位置決め部123aと第2の位置決め部123bとの境界の突起を乗り越えて、第1の位置決め部123aに係合する。したがって、第1の位置決め部123aに軸部材115が係合することによりロック部材120の位置が維持される。
ロック部124と被ロック部132との係合が解除されることにより、キャスター41を旋回させたときにロック部124が被ロック部132と干渉しないために、旋回ロック機構100はキャスター41の旋回のロックを解除することができる。したがって、図11に示すように、キャスター41は旋回軸Oを中心に自由に旋回することができる。
【0044】
このように、本実施形態の運搬台車10は、キャスター41の旋回をロックする旋回ロック機構100を有することから、キャスター41の旋回をロックすることができる。
また、本実施形態では、キャスター41の旋回をロックするロック部材120と、キャスター41の車輪42が回転できない状態に保持するブレーキペダル55とは、独立して別々に操作可能である。したがって、キャスター41の車輪42を回転できる状態のままキャスター41の旋回をロックしたり、キャスター41の旋回をロックしていない状態のままキャスター41の車輪42を回転できない状態にしたりすることができる。
【0045】
<第2の実施形態>
第1の実施形態の被ロック部材130は略平らな円板状である場合について説明した。第2の実施形態では、被ロック部材140が凹凸のある円板状である場合について説明する。
図12は、取付部材31にキャスター41が結合される前の状態を示す斜視図である。なお、図12では、被ロック部材140以外は第1の実施形態と同様の構成であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
被ロック部材140は、中央に旋回軸Oと同軸上の挿通孔141を有する。被ロック部材140は、下側に向かって凸状の下側凸部と、上側に向かって凸状の上側凸部とが旋回軸Oを中心とした円周方向に沿って交互に形成される。このように、被ロック部材140が下側凸部と上側凸部とを有することにより、被ロック部材140の剛性を高めることができる。また、被ロック部材140は、外周縁の一部に被ロック部142を有する。被ロック部142は、ロック部材120のロック部124が係合される。
被ロック部材140は、キャスター41を取付部材31に結合したときに、キャスター41と取付部材31との間に配置される。このとき、被ロック部材140の下側凸部が、上皿部材47に接し、上側凸部が取付部材31に接する。したがって、キャスター41の車輪42が障害物に衝突したときにキャスター41に生じるモーメントは、剛性がある被ロック部材140を介して強度に優れた取付部材31に伝達されることから、キャスター41のフォーク部材46の塑性変形を防止することができる。
【0047】
以上、本発明を上述した実施形態により説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、各実施形態や以下の変形例を組み合わせる等して、本発明の範囲内で変更等が可能である。
本実施形態の旋回ロック機構100は、予め定めた1箇所の旋回位置でキャスター41の旋回をロックする場合について説明したが、この場合に限られず、予め定めた複数個所の旋回位置でキャスター41の旋回をロックするようにしてもよい。この場合には、被ロック部材130は、複数の被ロック部132を周方向に間隔を空けて設けることにより実現することができる。
【0048】
本実施形態の旋回ロック機構100は、車輪42の中心線Vと台車本体20の中心線C1とが交差するときの鋭角側の角度αが略45°のときにキャスター41の旋回をロックすることができる場合について説明したが、この場合に限られない。車輪42の中心線Vと台車本体20の中心線C1とが交差するときの鋭角側の角度αが45°よりも大きく60°よりも小さい角度の範囲のうち所定の角度(例えば、50°)のときにキャスター41の旋回をロックすることができるようにしてもよく、角度αが45°よりも小さく30°よりも大きい角度の範囲のうち所定の角度(例えば、40°)のときにキャスター41の旋回をロックすることができるようにしてもよい。
【0049】
本実施形態の旋回ロック機構100は、キャスター41の操作片55bが台車本体20からはみ出さない、あるいは、はみ出す量が少なくなる状態のキャスター41の旋回位置で、キャスター41の旋回をロックする場合について説明したが、この場合に限られない。旋回ロック機構100は、車輪42が前後方向を向いた状態のキャスター41の旋回位置(例えば、図1に示す状態)でキャスター41の旋回をロックすることができるようにしてもよい。
【0050】
本実施形態では、支持部材110およびロック部材120がキャスター41側に位置し、被ロック部材130が台車本体20側に位置する場合について説明したが、この場合に限られず、支持部材110およびロック部材120が台車本体20側に位置し、被ロック部材130がキャスター41側に位置してもよい。
本実施形態では、被ロック部材130が被ロック部132を有する場合について説明したが、この場合に限られず、取付部材31に被ロック部132を一体的に設けてもよく、台車本体20に被ロック部132を一体的に設けてもよい。この場合には、被ロック部材130を省略することができる。
【0051】
本実施形態の運搬台車10は、台車本体20の下面に4つのキャスター41を配置する場合について説明したが、この場合に限られない。キャスター41の数は、運搬台車10の用途等に応じて自由に変更することができる。例えば、前側の2つのキャスター41と後側の2つのキャスター41との間の中央に2つのキャスター41を追加することにより、運搬台車10は6つのキャスター41を備えていてもよい。
本実施形態の取付部30は、4つの取付部材31を有する場合について説明したが、この場合に限られない。前側の2つの取付部材31を繋げて1枚の左右方向に長い取付部材にしてもよい。また、後側の2つの取付部材31を繋げて1枚の左右方向に長い取付部材にしてもよい。
【0052】
なお、本実施形態の運搬台車10は、台車本体20の下側に無人搬送車が側方から進入可能であり、無人搬送車により搬送可能である。ここで、無人搬送車とは、人間が運転操作を行うことなく、自動で走行できる搬送車である。無人搬送車は、台車本体20の下側に側方から入り込み、運搬台車10をリフトアップした状態で搬送する。このとき、使用者は、予め旋回ロック機構100を用いてキャスター41の旋回をロックしておく。キャスター41の旋回をロックすることにより、無人搬送車が運搬台車10を搬送するときに、キャスター41が遠心力等により旋回してしまうことを防止することができる。
【0053】
本実施形態の旋回ロック機構100は、キャスター41の操作片55bが台車本体20からはみ出さない、あるいは、はみ出す量が少なくなる状態のキャスター41の旋回位置で、キャスター41の旋回をロックする。この場合、ブレーキペダル55が台車本体20の車体中心側ではなく車体中心から離れた位置でロックされる。したがって、無人搬送車が台車本体20の2つのキャスター41の間から台車本体20の下側に進入しようとするときに2つのキャスター41の間隔を広く確保することができ、無人搬送車がブレーキペダル55に接触してしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
10:運搬台車 20:台車本体 22:コーナ部材 23:挿入孔 41:キャスター 42:車輪 55:ブレーキペダル 55b:操作片 70:手押部材 100:旋回ロック機構 110:支持部材 120:ロック部材 124:ロック部 125:操作部 130、140:被ロック部材 132、142:被ロック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12