(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104165
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/10 20060101AFI20240726BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240726BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240726BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240726BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240726BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C08L101/10
C08K3/013
C08K5/54
C08K3/26
C08L71/02
C08L33/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008252
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】川上 敦史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA031
4J002AC111
4J002BG021
4J002CF201
4J002CH051
4J002CL001
4J002DA036
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE236
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DL006
4J002EX027
4J002EX037
4J002EX077
4J002FA106
4J002FD016
4J002FD207
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】加熱装置や多量の脱水剤を必要とせず、簡便に水分を除去し得る、新規の組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーを含む組成物の製造方法であって、前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーと、(C)シラン化合物と、を含む組成物を混合する準備工程、ならびに前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物を含む組成物を、最高温度が50~90℃の範囲で混合しながら減圧脱気する脱水工程、を有し、前記(C)シラン化合物の分子量は、500以下である、組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーを含む組成物の製造方法であって、
前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーと、(C)シラン化合物と、を含む組成物を混合する準備工程、ならびに
前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物を含む組成物を、最高温度が50~90℃の範囲で混合しながら減圧脱気する脱水工程、を有し、
前記(C)シラン化合物の分子量は、500以下である、組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(C)シラン化合物の含有量が、前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脱水工程前の組成物の水分値が、5000ppm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記脱水工程後の組成物の水分値が、1000ppm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記(B)無機フィラーが、少なくとも、平均粒子径10μm以下の炭酸カルシウムを含み、
前記(B)無機フィラー中の前記炭酸カルシウムの含有量が、重量換算で10~50重量%である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記(B)無機フィラーの含有量が、前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、10~1000重量部である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体が、オキシプロピレン系重合体、および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記脱水工程が、加熱設備を使用せず、攪拌熱を利用して組成物の温度を上昇させる工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ケイ素基を有する有機重合を含む組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中に少なくとも1個の加水分解性シリル基を含有する有機重合体は、室温においても湿分等による反応性ケイ素基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状硬化物が得られるという性質を有することが知られている。これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体は、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物と混合して、シーリング材、接着剤、塗料等の用途に広く使用されている。
【0003】
反応性ケイ素基を有する有機重合体を含む組成物の製造方法として、ホット法およびコールド法が知られている。ホット法としては、例えば、加熱装置を用いて、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーを含む組成物を120℃で加熱真空脱水を行い、かつ、温度を50℃以下とした後に(C)シラン化合物を添加する技術が開示されている(特許文献1)。また、コールド法としては、例えば、加熱装置を用いず、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物を含む組成物を、温度20~50℃にて攪拌混合する(が、真空脱水は行わない)技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第105176469号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第102102004号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した技術では、効率的な水分除去の観点で、改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、加熱装置や多量の脱水剤を必要とせず、簡便に水分を除去し得る、新規の組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物を含む組成物を、最高温度が50~90℃の範囲で混合しながら減圧脱気することにより、前記組成物中の水分を短時間で除去できること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーを含む組成物の製造方法であって、前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーと、(C)シラン化合物と、を含む組成物を混合する準備工程、ならびに前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物を含む組成物を、最高温度が50~90℃の範囲で混合しながら減圧脱気する脱水工程、を有し、前記(C)シラン化合物の分子量は、500以下である、組成物の製造方法(以下、「本製造方法」と称する。)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、加熱装置や多量の脱水剤を必要とせず、簡便に水分を除去し得る、新規の組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0011】
〔1.本発明の概要〕
上述の通り、特許文献1および2に記載の技術では、効率的な水分除去の観点で、改善の余地があった。具体的には、特許文献1に記載の方法(ホット法)では、加熱装置が必要であり、組成物の中の水分を短時間で除去できないこと、脱水後の冷却に時間がかかるという問題があった。また、特許文献2に記載の方法(コールド法)では、脱水剤を多く使用する必要があり、コストの面で問題があった。また、多くの脱水剤を使用することから、組成物中に脱水剤が残存してしまい、最終的な組成物の性能に影響を及ぼすという問題があった。
【0012】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物を含む組成物を、最高温度が50~90℃の範囲で混合(攪拌混合)しながら減圧脱気することにより、前記組成物中の水分を短時間で除去できることを初めて見出した。また、上記の方法によれば、加熱装置や多量の脱水剤を必要としないことも見出した。さらには、上記製造方法で得られた組成物は、従来の技術で製造した組成物と比べて、物性において実質的に差がないことも見出した。
【0013】
このように、本製造方法によれば、反応性ケイ素基を有する有機重合を含む組成物の製造おいて、加熱装置や多量の脱水剤を必要とせず、攪拌熱のみで、簡便に水分を除去できるため、反応性ケイ素基を有する有機重合を含む組成物を用いる分野において、極めて有用である。以下、本製造方法の構成について詳説する。
【0014】
〔2.組成物の製造方法〕
本製造方法は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーを含む組成物の製造方法であって、以下の工程を有する:
・工程(a):前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーと、(C)シラン化合物(分子量が500以下である)と、を含む組成物を混合する準備工程
・工程(b):前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物(分子量が500以下である)を含む組成物を、最高温度が50~90℃の範囲で混合しながら減圧脱気する脱水工程。
【0015】
本製造方法により、加熱装置や多量の脱水剤を必要とせず、簡便に水分を除去し得る。なお、本製造方法における「(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体」、「(B)無機フィラー」および「(C)シラン化合物」を、それぞれ、「(A)成分」、「(B)成分」および「(C)成分」と称する場合がある。
【0016】
(工程(a))
工程(a)は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーと、(C)シラン化合物(分子量が500以下である)と、を含む組成物を混合する準備工程である。工程(a)は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーの混合物に、(C)シラン化合物を添加して調製してもよいし、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーと、(C)シラン化合物を一括で混合して調製してもよい。
【0017】
<(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体>
本製造方法の工程(a)における組成物は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体を含む。(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体の主鎖に特に制限はない。有機重合体の主鎖を構成する重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン-プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンとの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンまたはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンまたはブタジエンとアクリロニトリルおよびスチレンとの共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の単量体をラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の単量体をラジカル重合して得られるビニル系重合体;前記有機重合体中でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε-カプロラクタムの開環重合で得られるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合で得られるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との縮重合で得られるナイロン6・10、ε-アミノウンデカン酸の縮重合で得られるナイロン11、ε-アミノラウロラクタムの開環重合で得られるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;例えばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体等が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を表し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸および/またはメタクリル酸」表す。同様のその他の表記も、これらと同様の意味を有する。
【0018】
ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体、および(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物の物性に優れることから好ましい。
【0019】
(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体のガラス転移温度は、特に限定は無いが、20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度が20℃以下であれば、取り扱い性が向上し、また、硬化物の柔軟性、および伸びが向上する。前記ガラス転移温度はDSC測定による値を示す。
【0020】
また、ポリオキシアルキレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体は透湿性が高く、これらを含む1液型組成物は深部硬化性に優れ、さらに接着性にも優れる。そのため有機重合体としては、ポリオキシアルキレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体が好ましく、ポリオキシアルキレン系重合体がより好ましく、ポリオキシプロピレン系重合体がさらに好ましい。
【0021】
本発明の有機重合体中に含有される反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、シラノール縮合触媒によって加速される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋し得る基である。ここで加水分解性基とは、水と反応して水酸基を生成する基を意味する。
【0022】
反応性ケイ素基としては、下記一般式(1)で表される基が挙げられる。
-SiR1
3-aXa・・・(1)
式(1)中、Rは、それぞれ独立に炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、または-OSi(R’)(式中、R’は、それぞれ独立に炭素原子数1~20の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。Xは、それぞれ独立に水酸基または加水分解性基である。aは1~3の整数である)
加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよく、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、およびアルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。
【0023】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1~3個の範囲で結合することができる。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0024】
上記一般式(1)におけるaは、硬化性の点から、2または3であることが好ましく、特に組成物の速硬化性を求める場合には3であることが好ましく、組成物の貯蔵安定性を求める場合には2であることが好ましい。
【0025】
上記一般式(1)におけるRとしては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、R’がメチル基、フェニル基等である-OSi(R’)で示されるトリオルガノシロキシ基等が挙げられる。これらの中ではメチル基が特に好ましい。
【0026】
反応性ケイ素基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等が挙げられる。活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基およびメチルジメトキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基およびメチルジメトキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基がさらに好ましい。貯蔵安定性の点からは、ジメトキシメチルシリル基、トリエトキシシリル基が好ましい。また、トリエトキシシリル基およびジエトキシメチルシリル基は、反応性ケイ素基の加水分解反応に伴って生成するアルコールが、エタノールであり、より高い安全性を有する点から好ましい。
【0027】
反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行えばよい。例えば以下(I)~(III)の方法が挙げられる。
【0028】
(I)水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物(例えば、飽和基含有エポキシ化合物)を反応させ、不飽和基を有する有機重合体を得る。次いで、得られた不飽和基を有する有機重合体に、反応性ケイ素基を有するヒドロシラン化合物を反応させる(ヒドロシリル化)。
【0029】
(II)(I)の方法と同様にして得られた不飽和基を含有する有機重合体に、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0030】
(III)分子中に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0031】
以上の方法のなかで、(I)の方法、または(III)のうち末端に水酸基を有する有機重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られる為に好ましい。さらに、(I)の方法で得られた(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体は、(III)の方法で得られる有機重合体よりも低粘度であり、これを用いれば作業性の良い硬化性組成物が得られること、また、(II)の方法で得られる有機重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことから、(I)の方法が特に好ましい。
【0032】
(I)の方法において用いるヒドロシラン化合物としては、例えば、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシラン等のハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等のアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン等のアシロキシシラン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちでは特にハロゲン化シラン類、アルコキシシラン類が好ましく、特にアルコキシシラン類は、得られる硬化性組成物の加水分解性が穏やかで取り扱いやすいために最も好ましい。アルコキシシラン類の中で、メチルジメトキシシランは、入手し易く、得られる有機重合体を含有する硬化性組成物の硬化性、貯蔵安定性、伸び特性、引張強度が高い為に好ましい。また、トリメトキシシランは、得られる硬化性組成物の硬化性および復元性の点から特に好ましい。
【0033】
(II)の方法としては、例えば、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を、ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下でのラジカル付加反応によって、有機重合体の不飽和結合部位に導入する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。前記メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
(III)の方法のうち水酸基を有する有機重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法としては、例えば、特開平3-47825号に示される方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。前記イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物としては、例えば、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルジエトキシメチルシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
トリメトキシシラン等の一つのケイ素原子に3個の加水分解性基が結合しているシラン化合物は不均化反応が進行する場合がある。不均化反応が進むと、ジメトキシシランのような不安定な化合物が生じ、取り扱いが困難となることがある。しかし、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランでは、このような不均化反応は進行しない。このため、ケイ素含有基としてトリメトキシシリル基等の3個の加水分解性基が一つのケイ素原子に結合している基を用いる場合には、(II)または(III)の方法を用いることが好ましい。
【0036】
一方で、下記一般式(2)で表されるシラン化合物は、不均化反応が進まない。
H-(SiR2
2O)mSiR2
2-R3-SiX3・・・(2)
式中、Xは式(1)と同じである。2m+2個のR2は、それぞれ独立に炭化水素基である。R3は2価の有機基である。mは0~19の整数である。
【0037】
この為、(I)の方法で、3個の加水分解性基が1つのケイ素原子に結合している基を導入する場合には、一般式(2)で表されるシラン化合物を用いることが好ましい。入手性およびコストの点から、2m+2個のR2は、それぞれ独立に、好ましくは炭素原子数1~20の炭化水素基、より好ましくは炭素原子数1~8の炭化水素基、さらに好ましくは炭素原子数1~4の炭化水素基である。入手性およびコストの点から、R3は、好ましくは炭素原子数1~12の2価の炭化水素基、より好ましくは炭素原子数2~8の2価の炭化水素基、さらに好ましくは炭素原子数2の2価の炭化水素基である。入手性およびコストの点から、mは、好ましくは1である。一般式(2)で示されるシラン化合物としては、例えば、1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1-[2-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1-[2-(トリメトキシシリル)ヘキシル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0038】
(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体は、直鎖状または分岐状のいずれでもよい。(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC(ポリスチレン換算)により測定される値であり、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~50,000、特に好ましくは3,000~30,000である。この数平均分子量が1,000以上であれ、硬化物の伸びが向上し、100,000以下であれば、硬化性組成物の取り扱い性が向上する。GPCにより測定される(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.4以下である。
【0039】
高強度、高伸び、かつ低弾性率を示すゴム状硬化物を得る観点から、有機重合体に含有される反応性ケイ素基の数は、1分子中に平均して、好ましくは1以上、より好ましくは1.1~5.0、さらに好ましくは1.1~3.0、特に好ましくは1.1~2.0である。分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が平均して1以上であると、硬化性が向上し、良好なゴム弾性挙動を有する硬化物が得られる。反応性ケイ素基は、有機重合体の主鎖末端または側鎖末端にあってもよいし、また、両方にあってもよい。特に、反応性ケイ素基が主鎖末端にのみあるときは、最終的に形成される硬化物中における有効網目長が長くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
【0040】
前記ポリオキシアルキレン系重合体は、本質的に、下記一般式(3)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
-R4-O-・・・(3)
式中、R4は、炭素原子数1~14の直鎖状または分岐アルキレン基である。
【0041】
一般式(3)におけるR4は、好ましくは、炭素原子数1~14(より好ましくは2~4)の、直鎖状または分岐アルキレン基である。一般式(3)で示される繰り返し単位としては、例えば、-CH2O-、-CH2CH2O-、-CH2CH(CH3)O-、-CH2CH(C2H5)O-、-CH2C(CH3)O-、-CH2CH2CH2CH2O-等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に前記硬化性組成物がシーラント等に使用される場合には、(A)成分の有機重合体の主成分が、非晶質且つ比較的低粘度であるポリオキシプロピレン系重合体であることが好ましい。
【0042】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOH等のアルカリ触媒による重合法、特開昭61-215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体等の遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46-27250号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒(例えば、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒)による重合法、特開平10-273512号に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11-060722号に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、例えば、特開平8-231707号で提案されている数平均分子量(Mn)6,000以上、分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下のポリオキシアルキレン系重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記の反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0044】
前記飽和炭化水素系重合体は脂肪族不飽和結合を含有しない重合体である。飽和炭化水素系重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン等の炭素原子数2~6のオレフィン系化合物を主単量体として重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレン等のジエン系化合物を単独重合させ、あるいは、上記オレフィン系化合物とを共重合させた後、水素添加する等の方法により得ることができる。
【0045】
反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体の製法としては、例えば、特開平7-53882号等に記載されているが、これらに限定されるものではない。上記の反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体は、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0046】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては特に限定されず、各種のものを用いることができる。該単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピルジメトキシメチルシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメトキシメチルシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジエトキシメチルシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の(メタ)アクリル酸系単量体が挙げられる。
【0047】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体では、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とともに、以下のビニル系単量体を共重合することもできる。該ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等のスチレン系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0048】
これらは、単独で用いてもよいし、複数を共重合させてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体としては、物性等の観点から、(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる重合体、並びにスチレン系単量体および(メタ)アクリル酸系単量体からなる重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる重合体がより好ましく、アクリル酸エステル単量体からなる重合体がさらに好ましい。
【0050】
配合物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される一般建築用途等においては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を構成する単量体として、アクリル酸ブチルが好ましい。一方、耐油性等が要求される自動車用途等においては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体としては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途には、アクリル酸ブチルの比率は40重量%以下にするのが好ましく、30重量%以下にするのがより好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために、側鎖のアルキル基に酸素が導入された単量体(例えば、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル等)を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により、共重合体の耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、側鎖のアルキル基に酸素が導入された単量体の比率は40重量%以下にするのが好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、使用する単量体の比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、耐油性、耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている共重合体としては、例えば、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2-メトキシエチル(重量比で40~50/20~30/30~20)の共重合体が挙げられる。本発明においては、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチルを他の単量体と共重合、さらにはブロック共重合させても構わなく、その際は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチルが40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の合成法としては、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。但し、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物等を用いる通常のフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2より大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るためには、リビングラジカル重合法を用いることが好ましい。
【0052】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法として、さらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法は、例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁等に記載されている。
【0053】
反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製法としては、例えば、特開平6-211922号等に、連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法を用いた製法が開示されている。また、特開平9-272714号等に、原子移動ラジカル重合法を用いた製法が開示されているが、これらに限定されるものではない。上記の反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0054】
これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。具体的には、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体、からなる群から選択される2種以上の有機重合体の混合物も使用できる。
【0055】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の有機重合体の混合物の製造方法は、特開平11-116763号等に提案されているが、これらに限定されるものではない。好ましい(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法としては、例えば、反応性ケイ素基を有し分子鎖が実質的に、下記一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体に、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体をブレンドして製造する方法が挙げられる。
-CH2-C(R5)(COOR6)-・・・(4)
式中、R5は水素原子またはメチル基である。R6は炭素原子数1~8のアルキル基である。
-CH2-C(R5)(COOR7)-・・・(5)
式中、R5は前記と同じである。R7は炭素原子数9以上のアルキル基である。
【0056】
前記一般式(4)のR6としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基等の炭素原子数1~8、好ましくは1~4、さらに好ましくは1または2のアルキル基が挙げられる。なお、R6のアルキル基は1種でもよく、2種以上でもよい。
【0057】
前記一般式(5)のR7としては、例えば、ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素原子数9以上、好ましくは10~30、より好ましくは10~20のアルキル基が挙げられる。なお、R7のアルキル基はR6の場合と同様、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0058】
上述した好ましい(メタ)アクリル酸エステル系重合体の分子鎖は、実質的に、一般式(4)および一般式(5)の単量体単位からなる。ここでいう「実質的に」とは該重合体中に存在する一般式(4)および一般式(5)の単量体単位の合計が50重量%を超えることを意味する。一般式(4)および一般式(5)の単量体単位の合計は好ましくは70重量%以上である。
【0059】
一般式(4)の単量体単位と一般式(5)の単量体単位の存在比は、重量比で95:5~40:60が好ましく、90:10~60:40がさらに好ましい。上述した好ましい(メタ)アクリル酸エステル系重合体に含有されていてもよい一般式(4)および一般式(5)以外の単量体単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基を含む単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を含む単量体;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位が挙げられる。
【0060】
反応性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の有機重合体の混合物は、特開平1-168764号、特開2000-186176号等に提案されているが、これらに限定されるものではない。
【0061】
反応性ケイ素官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の有機重合体の混合物の製造方法としては、反応性ケイ素基を有する有機重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行う方法が利用できる。この製造方法は、特開昭59-78223号、特開昭59-168014号、特開昭60-228516号、特開昭60-228517号等に具体的に開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0062】
一方、有機重合体の主鎖中には本発明の効果を大きく損なわない範囲でウレタン結合および/またはウレア結合を含んでいてもよい。前記ウレタン結合および/またはウレア結合は、一般式(6)で表されるアミドセグメントを含む結合であり、これは、例えば、イソシアネート基と活性水素基との反応により形成される。
-NR8-C(=O)-・・・(6)
式中、R8は有機基または水素原子である。
【0063】
アミドセグメントは極性が比較的高いため、これを含む有機重合体を用いれば、得られる硬化物の強度や基材への接着性が高くなる傾向にある。
【0064】
一般式(6)で表されるアミドセグメントとしては、例えば、イソシアネート基と水酸基との反応、イソシアネート基とアミノ基との反応、イソシアネート基とメルカプト基との反応等により形成されるものを挙げることができる。また、本活性水素原子を含む前記アミドセグメントとイソシアネート基との反応により形成されるものも、一般式(6)で表されるアミドセグメントに含まれる。
アミドセグメントと反応性ケイ素基を有する有機重合体の工業的に容易な製造方法としては、例えば、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に、過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて、ポリウレタン系主鎖の末端にイソシアネート基を有する重合体とした後、あるいは同時に、該イソシアネート基の全部または一部に一般式(7)で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法により製造されるものを挙げることができる。
W-R9-SiR1
3-aXa・・・(7)
式中、R1、X、aは前記と同じである。R9は2価の有機基、より好ましくは炭素原子数1~20の炭化水素基である。Wは水酸基、カルボキシ基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれた活性水素含有基である。
【0065】
この製造方法に関連する文献としては、例えば、特開2001-323040号等が挙げられる。
【0066】
また、アミドセグメントと反応性ケイ素基を有する有機重合体としては、例えば、末端に活性水素含有基を有する有機重合体と、一般式(8)で示される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物とを反応させることにより製造される重合体を挙げることができる。
O=C=N-R9-SiR1
3-aXa・・・(8)
式中、R9、R1、X、aは前記に同じである。
【0067】
この製造方法に関連する文献としては、例えば、WO03/059981等が挙げられる。
【0068】
末端に活性水素含有基を有する有機重合体としては、末端に水酸基を有するオキシアルキレン重合体(ポリエーテルポリオール)、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する飽和炭化水素系重合体(ポリオレフィンポリオール)、ポリチオール化合物、ポリアミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、および、ポリオレフィンポリオールは、得られる有機重合体のガラス転移温度が比較的低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。特に、ポリエーテルポリオールは、得られる有機重合体の粘度が低く、作業性が良好であり、硬化性組成物の深部硬化性および硬化物の接着性が良好である為に特に好ましい。また、ポリアクリルポリオールおよび飽和炭化水素系重合体は、得られる硬化物の耐候性、耐熱性が良好である為により好ましい。
【0069】
ポリエーテルポリオールとしては、いかなる製造方法において製造されたものでも使用することが出来るが、全分子平均で分子末端当り、少なくとも0.7個の水酸基を有するものが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、従来のアルカリ金属触媒を使用して製造したポリオキシアルキレン系重合体や、複合金属シアン化物錯体やセシウムの存在下、少なくとも2つの水酸基を有するポリヒドロキシ化合物等の開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて製造されるポリオキシアルキレン系重合体等が挙げられる。
【0070】
上記重合法の中でも、複合金属シアン化物錯体を使用する重合法は、より低不飽和度で、Mw/Mnが狭く、より低粘度でかつ、高耐酸性、高耐候性のオキシアルキレン重合体を得ることが可能であるため好ましい。
【0071】
前記ポリアクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体を主鎖とし、かつ、分子内に水酸基を有するポリオールを挙げることができる。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001-207157号に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温および高圧で連続塊状重合することによって得られる(いわゆるSGOプロセスで得られる)重合体を用いるのが好ましい。具体的には、東亞合成(株)製のアルフォンUH-2000等が挙げられる。
【0072】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0073】
一般式(7)で表されるケイ素化合物としては特に限定はないが、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(N-フェニル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等の水酸基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;等が挙げられる。また、特開平6-211879号に記載されている様に、各種のα,β-不飽和カルボニル化合物と一級アミノ基含有シランとのMichael付加反応物、または、各種の(メタ)アクリロイル基含有シランと一級アミノ基含有化合物とのMichael付加反応物もまた、一般式(7)で表されるケイ素化合物として用いることができる。
【0074】
一般式(8)で表される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物としては特に限定はないが、例えば、γ-トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、γ-メチルジメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ-メチルジエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルメチルイソシアネート等が挙げられる。また、特開2000-119365号(米国特許6046270号)に記載されている様に、一般式(7)のケイ素化合物と、過剰の前記ポリイソシアネート化合物を反応させて得られる化合物もまた、一般式(8)で表される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物として用いることができる。
【0075】
好ましい実施態様では、(A)成分の有機重合体は、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基およびメチルジメトキシシリル基からなる群から選択される少なくとも一つのケイ素含有基を1分子中に平均して1.1~5個有し、数平均分子量が1,000~100,000である、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群から選択される少なくとも一つである。なお、この好ましい実施態様の記載において、前記ケイ素含有基および数平均分子量の限定(修飾語句)は、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体の全てを修飾している。
【0076】
より好ましい実施態様では、(A)成分の有機重合体は、トリメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基およびメチルジメトキシシリル基からなる群から選択される少なくとも一つのケイ素含有基を1分子中に平均して1.1~3個有し、数平均分子量が2,000~50,000である、ポリオキシアルキレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群から選択される少なくとも一つである。なお、このより好ましい実施態様の記載において、前記ケイ素含有基および数平均分子量の限定(修飾語句)は、ポリオキシアルキレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル系重合体の両方を修飾している。
【0077】
さらに好ましい実施態様では、(A)成分の有機重合体は、トリメトキシシリル基およびメチルジメトキシシリル基からなる群から選択される少なくとも一つのケイ素含有基を1分子中に平均して1.1~2個有し、数平均分子量が3,000~30,000であるポリオキシアルキレン系重合体である。
【0078】
特に好ましい実施態様では、(A)成分の有機重合体は、メチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.1~2個有し、数平均分子量が3,000~30,000であるポリオキシプロピレン系重合体である。
【0079】
<(B)無機フィラー>
本製造方法の工程(a)における組成物は、(B)無機フィラーを含む。(B)無機フィラーは、安価な材料であるため、コストダウンを可能とする。
【0080】
(B)無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、バライト、無水石膏、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、マイカ、亜鉛華、鉛白、リトポン、硫化亜鉛、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、PVC粉末、PMMA粉末等が挙げられる。中でも、より安価であるという観点から、炭酸カルシウムが好ましい。これら無機フィラーは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
(B)無機フィラーの含有量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、10~1000重量部であることが好ましく、10~600重量部であることがより好ましく、30~500重量部であることがさらに好ましく、50~500重量部であることが特に好ましく、100~400重量部であることがとりわけ好ましい。(B)無機フィラーの含有量が10重量部以上であると、強度に不利な影響を与えず、適度な強度が得られる。また、(B)無機フィラーの含有量が1000重量部以下であると、系の粘度の増加を回避でき、硬化性組成物の加工性に優れる。
【0082】
本発明の一実施形態において、(B)無機フィラーは、少なくとも、平均粒子径が10μm以下、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、2μm以下、の炭酸カルシウムを含む。(B)無機フィラー中に、平均粒子径10μm以下の炭酸カルシウムを含むことにより、強度や伸び率に対して利点を有する。また、前記炭酸カルシウムの平均粒子径の下限は特に限定されないが、例えば、0.5μm以上である。なお、平均粒子径が小さい炭酸カルシウムは、水分量が多い傾向にある。また、(B)無機フィラーを2種以上含む場合は、(B)無機フィラーの平均粒子径は、各(B)無機フィラーの平均粒子径と、各(B)無機フィラーの含有量とに基づき、算出される。例えば、(B)無機フィラーを2種含む場合は、以下の式により算出される:
(第1の(B)無機フィラーの含有量×第1の(B)無機フィラーの平均粒子径+第2の(B)無機フィラーの含有量×第2の(B)無機フィラーの平均粒子径)/(第1の(B)無機フィラーの含有量+第2の(B)無機フィラーの含有量)。
【0083】
また、本発明の一実施形態において、(B)無機フィラー中の上記炭酸カルシウムの含有量は、重量換算で10~50重量%であることが好ましく、15~45重量%であることがより好ましく、20~40重量%であることがさらに好ましい。(B)無機フィラー中の上記炭酸カルシウムの含有量が重量換算で10~50重量%であることにより、硬化性組成物の強度、伸び率、加工性で利点を有する。
【0084】
<(C)シラン化合物>
本製造方法の工程(a)における組成物は、(C)シラン化合物を含む。
【0085】
本製造方法において、(C)シラン化合物は、脱水剤として機能する。また、本製造方法において、(C)シラン化合物は、脱水工程である工程(b)で除去されるため、最終生成物である組成物中には実質的に含まれないが、含まれていてもよい。
【0086】
(C)シラン化合物としては、下記一般式(9):
R3Si- ・・・(9)
(式中、Rはそれぞれ独立に置換又は非置換の1価の炭化水素基又は水素原子)で示される基を含有し、加水分解によりR3SiOHを生成する。
【0087】
その中でも、
QOSiR3 ・・・(10)
(式中、Rは一般式(9)におけるRと同一であり、Qは炭素数1~20の置換又は非置換の1価の炭化水素基)で示されるシラン化合物を用いることが好ましい。
【0088】
以下に具体例を示すが、(C)シラン化合物はこれによって限定されるものではない。
【0089】
上記一般式(10)で示される化合物としては、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、又はこれらの置換された基が挙げられ、例えば、
【0090】
【0091】
などが挙げられる。
【0092】
その他、上記一般式(10)には属さないが、
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
なども使用し得る。
【0098】
また、特開平11-241029号公報に記載されているトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールあるいはソルビトールなどの水酸基数が3以上の多価アルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのR3SiOHを生成するシラン化合物を生成する化合物も好適に使用することができる。
【0099】
また、特開平7-258534号公報に記載されているようなオキシプロピレン重合体の誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのR3SiOHを生成するシラン化合物を生成する化合物も好適に使用することができる。さらに特開平6-279693号公報に記載されている架橋可能な加水分解性ケイ素含有基と加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基を有する重合体を使用することもできる。
【0100】
上記したシラン化合物の中では、
【0101】
【0102】
などの1価のアルコールやフェノールの誘導体が好ましい。また、アルコールのトリメチルシリル誘導体であって分子量が140、好ましくは150以上の化合物が好ましい。特開平11-241029号公報に記載されているトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールあるいはソルビトールなどの水酸基数が3以上の多価アルコールのトリメチルシリル誘導体、特開平7-258534号公報に記載されているようなオキシプロピレン重合体のトリメチルシリル誘導体が望ましい。特に、トリメチロールプロパンのトリメチルシリル誘導体とフェノキシトリメチルシラン([化7]の最初の化合物)の混合物も用いることができる。
【0103】
(C)シラン化合物の分子量は、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、200以下であることがさらに好ましい。(C)シラン化合物の分子量が500以下であると、工程(b)で共沸脱水され、組成物から除去され得る。また、(C)シラン化合物の分子量の下限は、特に限定されないが、例えば、100以上である。
【0104】
(C)シラン化合物の使用量(含有量)は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、0.2~5重量部であることがより好ましく、0.5~2.5重量部であることがさらに好ましい。シラン化合物の使用量(含有量)が(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部であると、伸び率保持との利点を有する。
【0105】
<その他の添加剤>
本製造方法における組成物には、上記成分の他に添加剤として、シラノール縮合触媒、充填剤、接着性付与剤、可塑剤、溶剤、希釈剤、タレ防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、粘着付与樹脂、エポキシ基を含有する化合物、光硬化性物質、酸素硬化性物質、エポキシ樹脂、その他の樹脂、を添加しても良い。また、本製造方法における組成物には、硬化性組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、表面性改良剤、発泡剤、硬化性調整剤、難燃剤、シリケート、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、防かび剤などが挙げられる。
【0106】
≪シラノール縮合触媒≫
本発明の一実施形態において、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体の反応性ケイ素基を加水分解・縮合させる反応を促進し、重合体を鎖延長または架橋させる目的で、シラノール縮合触媒を使用しても良い。
【0107】
シラノール縮合触媒としては、例えば有機錫化合物、カルボン酸金属塩、アミン化合物、カルボン酸、アルコキシ金属、などが挙げられる。
【0108】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物などが挙げられる。
【0109】
カルボン酸金属塩の具体例としては、カルボン酸錫、カルボン酸ビスマス、カルボン酸チタン、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウムなどが挙げられる。カルボン酸基としては下記のカルボン酸と各種金属を組み合わせることができる。
【0110】
アミン化合物の具体例としては、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、などのアミン類;ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)、などの含窒素複素環式化合物;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニドや1-フェニルビグアニドなどのビグアニド類;アミノ基含有シランカップリング剤;ケチミン化合物などが挙げられる。
【0111】
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸などが挙げられる。
【0112】
アルコキシ金属の具体例としては、テトラブチルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)などのチタン化合物や、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどのアルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物類が挙げられる。
【0113】
その他のシラノール縮合触媒として、フッ素アニオン含有化合物、光酸発生剤や光塩基発生剤も使用できる。
【0114】
シラノール縮合触媒は、異なる2種類以上の触媒を併用して使用してもよい。
【0115】
シラノール縮合触媒の使用量としては、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.001~20重量部が好ましく、更には0.01~15重量部がより好ましく、0.01~10重量部が特に好ましい。
【0116】
≪接着性付与剤≫
本製造方法における組成物には、接着性付与剤を添加することができる。
【0117】
接着性付与剤としては、シランカップリング剤、シランカップリング剤の反応物を添加することができる。
【0118】
シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シラン類;γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、α-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、α-イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類、が挙げられる。
【0119】
また、アミノシランの縮合物、アミノシランと他のアルコキシシランとの縮合物、等の各種シランカップリング剤の縮合物;アミノシランとエポキシシランの反応物、アミノシランと(メタ)アクリル基含有シランの反応物、等の各種シランカップリング剤の反応物も使用できる。
【0120】
上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0121】
シランカップリング剤の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、特に0.5~10重量部が好ましい。
【0122】
≪可塑剤≫
本製造方法における組成物には、可塑剤を添加することができる。可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル化合物;ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレートなどのテレフタル酸エステル化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルなどの非フタル酸エステル化合物;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、アセチルクエン酸トリブチルなどの脂肪族多価カルボン酸エステル化合物;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチルなどの不飽和脂肪酸エステル化合物;アルキルスルホン酸フェニルエステル;リン酸エステル化合物;トリメリット酸エステル化合物;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤、などをあげることができる。
【0123】
また、高分子可塑剤を使用することができる。高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系重合体;ポリエステル系可塑剤;数平均分子量500以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、これらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;ポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレン等があげられる。
【0124】
可塑剤の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、5~150重量部が好ましく、10~120重量部がより好ましく、特に20~100重量部が好ましい。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなり、150重量部を超えると硬化物の機械強度が不足する。可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
≪溶剤、希釈剤≫
本製造方法における組成物には、溶剤または希釈剤を添加することができる。溶剤及び希釈剤としては、特に限定されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、エーテルなどを使用することができる。溶剤または希釈剤を使用する場合、組成物を屋内で使用した時の空気への汚染の問題から、溶剤の沸点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。上記溶剤または希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0126】
≪タレ防止剤≫
本製造方法における組成物には、必要に応じてタレを防止し、作業性を良くするためにタレ防止剤を添加しても良い。また、タレ防止剤としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。これらタレ防止剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0127】
タレ防止剤の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましい。
【0128】
≪酸化防止剤≫
本製造方法における組成物には、酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐候性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が例示できる。酸化防止剤の具体例は特開平4-283259号公報や特開平9-194731号公報にも記載されている。
【0129】
酸化防止剤の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、特に0.2~5重量部が好ましい。
【0130】
≪光安定剤≫
本製造方法における組成物には、光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。
【0131】
光安定剤の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、特に0.2~5重量部が好ましい。
【0132】
≪紫外線吸収剤≫
本製造方法における組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換アクリロニトリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系が好ましく、市販名チヌビンP、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン571(以上、BASF製)が挙げられる。
【0133】
紫外線吸収剤の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、特に0.2~5重量部が好ましい。
【0134】
≪物性調整剤≫
本製造方法における組成物には、必要に応じて生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、フェノキシトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのアリールアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン;トリス(トリメチルシリル)ボレート、トリス(トリエチルシリル)ボレートなどのトリアルキルシリルボレート類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。前記物性調整剤を用いることにより、本製造方法における組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、逆に硬度を下げ、破断伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0135】
特に、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、ヘキサノール、オクタノール、フェノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのアルコールの誘導体であって加水分解によりシランモノオールを生成するシラン化合物を挙げることができる。具体的には、フェノキシトリメチルシラン、トリス((トリメチルシロキシ)メチル)プロパン等が挙げられる。
【0136】
物性調整剤の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、特に0.5~5重量部が好ましい。
【0137】
≪粘着付与樹脂≫
本発明の一実施形態において、基材への接着性や密着性を高める目的、あるいはその他必要に応じて粘着付与樹脂を添加できる。粘着付与樹脂としては、特に制限はなく通常使用されているものを使うことが出来る。
【0138】
具体例としては、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロック共重合体及びその水素添加物、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、DCPD樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0139】
粘着付与樹脂の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して2~100重量部が好ましく、5~50重量部であることがより好ましく、5~30部であることがさらに好ましい。2重量部より少ないと基材への接着、密着効果が得られにくく、また100重量部を超えると組成物の粘度が高くなりすぎ取扱いが困難となる場合がある。
【0140】
≪エポキシ基を含有する化合物≫
本製造方法における組成物においてはエポキシ基を含有する化合物を使用できる。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としてはエポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環族エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物及びそれらの混合物等が例示できる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、ビス(2-エチルヘキシル)-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカーボキシレート(E-PS)、エポキシオクチルステアレ-ト、エポキシブチルステアレ-ト等があげられる。エポキシ化合物は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して0.5~50重量部の範囲で使用するのがよい。
【0141】
≪光硬化性物質≫
本製造方法における組成物には光硬化性物質を使用できる。光硬化性物資を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや硬化物の耐候性を改善できる。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂或いはそれらを含む組成物等多くのものが知られており、代表的なものとしては、アクリル系又はメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー或いはそれ等の混合物である不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が使用できる。
【0142】
光硬化性物質は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部の範囲で使用するのがよく、0.1重量部以下では耐候性を高める効果はなく、20重量部以上では硬化物が硬くなりすぎて、ヒビ割れを生じる傾向がある。
【0143】
≪酸素硬化性物質≫
本製造方法における組成物には酸素硬化性物質を使用することができる。酸素硬化性物質には空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示でき、空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜を形成し表面のべたつきや硬化物表面へのゴミやホコリの付着を防止するなどの作用をする。酸素硬化性物質の具体例には、キリ油、アマニ油などで代表される乾性油や、該化合物を変性してえられる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3-ペンタジエンなどのジエン系化合物を重合または共重合させてえられる1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、C5~C8ジエンの重合体などの液状重合体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0144】
酸素硬化性物質の使用量は、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して0.1~20重量部の範囲で使用するのがよく、さらに好ましくは0.5~10重量部である。前記使用量が0.1重量部未満になると汚染性の改善が充分でなくなり、20重量部をこえると硬化物の引張り特性などが損なわれる傾向が生ずる。特開平3-160053号公報に記載されているように酸素硬化性物質は光硬化性物質と併用して使用するのがよい。
【0145】
≪エポキシ樹脂≫
本製造方法における組成物にはエポキシ樹脂を併用することができる。エポキシ樹脂を添加した組成物は、特に接着剤、殊に外壁タイル用接着剤として好ましい。エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂類またはノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0146】
これらのエポキシ樹脂と、(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体の使用割合は、重量比で(A)/エポキシ樹脂=100/1~1/100の範囲である。(A)/エポキシ樹脂の割合が1/100未満になると、エポキシ樹脂硬化物の衝撃強度や強靱性の改良効果が得られがたくなり、(A)/エポキシ樹脂の割合が100/1をこえると、重合体硬化物の強度が不十分となる。
【0147】
エポキシ樹脂を添加する場合、本硬化性組成物には、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を併用できる。使用し得るエポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はなく、一般に使用されているエポキシ樹脂硬化剤を使用できる。
【0148】
エポキシ樹脂の硬化剤を使用する場合、その使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、0.1~300重量部の範囲が好ましい。
【0149】
(工程(b))
工程(b)は、前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物を含む組成物を、最高温度が50~90℃の範囲で混合しながら減圧脱気する脱水工程である。工程(b)において、組成物を特定の温度で混合しながら減圧脱気することにより、(C)シラン化合物と水分とを、除去する。すなわち、工程(b)では、組成物を混合(撹拌混合)することにより生じた攪拌熱を利用して、(C)シラン化合物と水分とを、共沸脱水させる。
【0150】
工程(b)における最高温度(最高加熱温度)は、50~90℃であり、52~88℃であることが好ましく、54~86℃であることがより好ましく、56~84℃であることがさらに好ましい。工程(b)における最高温度が50~90℃であると、撹拌熱により水分を除去できると共に、次工程での冷却時間を減らすことができる。工程(b)における最高温度(最高加熱温度)は、撹拌速度や組成物の粘度により、調整し得る。組成物の粘度が高いほど、また撹拌速度が大きいほど、温度が高くなる傾向がある。
【0151】
工程(b)において、混合および減圧脱気の方法は特に限定されず、公知である任意の技術が使用できる。具体的には、混錬機内を減圧しながら、混合することが好ましい。本発明における「混合」とは、異なる成分を混ぜ合わせる操作であれば良く、例えば容器を回転することによる混合、攪拌による混合、機械的剪断力を加えて均一に混合する混錬操作も含まれる。例えば、プラネタリーミキサー、一軸あるいわ二軸連続混合機などの密閉可能な混錬機を使用することができる。
【0152】
本発明の一実施形態において、工程(b)は、加熱設備を使用せず、攪拌熱を利用して組成物の温度を上昇させる工程を含むことが好ましい。
【0153】
本製造方法において、脱水工程前の組成物の水分値は、5000ppm以下であることが好ましく、3000ppm以下であることがより好ましく、2400ppm以下であることがさらに好ましい。脱水工程前の組成物の水分値が5000ppm以下であると、脱水工程を短縮できる利点を有する。
【0154】
また、本製造方法において、脱水工程後の組成物の水分値は、少ない程よく、1000ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることがより好ましく、650ppm以下であることがさらに好ましく、600ppm以下であることが特に好ましい。
【0155】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0156】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーを含む組成物の製造方法であって、
前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、および(B)無機フィラーと、(C)シラン化合物と、を含む組成物を混合する準備工程、ならびに
前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)無機フィラー、および(C)シラン化合物を含む組成物を、最高温度が50~90℃の範囲で混合しながら減圧脱気する脱水工程、を有し、
前記(C)シラン化合物の分子量は、500以下である、組成物の製造方法。
<2>前記(C)シラン化合物の含有量が、前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、0.1~10重量部である、<1>に記載の製造方法。
<3>前記脱水工程前の組成物の水分値が、5000ppm以下である、<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>前記脱水工程後の組成物の水分値が、1000ppm以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5>前記(B)無機フィラーが、少なくとも、平均粒子径10μm以下の炭酸カルシウムを含み、
前記(B)無機フィラー中の前記炭酸カルシウムの含有量が、重量換算で10~50重量%である、<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6>前記(B)無機フィラーの含有量が、前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して、10~1000重量部である、<1>~<5>のいずれかに記載の製造方法。
<7>前記(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体が、オキシプロピレン系重合体、および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体である、<1>~<6>のいずれかに記載の製造方法。
<8>前記脱水工程が、加熱設備を使用せず、攪拌熱を利用して組成物の温度を上昇させる工程を含む、<1>~<7>のいずれかに記載の製造方法。
【実施例0157】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0158】
〔材料〕
実施例および比較例で使用した材料は、以下の通りである。
【0159】
((A)成分)
A-1:下記の合成例1に基づき製造した、反応性ケイ素基を有する有機重合体
A-2:下記の合成例2に基づき製造した、反応性ケイ素基を有する有機重合体
((B)成分)
B-1:KALFINE200A(丸尾カルシウム社製、膠質炭酸カルシウム、平均粒子径0.08μm)
B-2:Omya-1T(丸尾カルシウム社製、重質炭酸カルシウム、平均粒子径1.8μm)
((C)成分)
A-171(Momentive社製、ビニルトリメトキシシラン、分子量148.23)
(その他の成分)
アスファルト:AS200(中石油社製)
カーボンブラック:Hiblack30(Orion社製)
可塑剤:DINP(ジェイ・プラス社製、フタル酸ジイソノニル)
酸化防止剤:Irganox 245(BASF社製:ビス[3―(3―tert―ブチル-4-ヒドロキシ-5―メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)])
〔合成例1〕
A-1の合成例を以下に示す。
【0160】
数平均分子量が約4500のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、両末端に水酸基を有する数平均分子量14,300(末端基換算分子量9,132)、分子量分布Mw/Mn=1.21のポリオキシプロピレン(P-1)を得た。得られた水酸基末端ポリオキシプロピレン(P-1)の水酸基に対して1.2モル当量のナトリウムメトキシドを28%メタノール溶液として添加した。真空脱揮によりメタノールを留去した後、重合体(P-1)の水酸基に対して、さらに1.5モル当量の塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去した。得られた未精製のポリオキシプロピレンをn-ヘキサンと、水を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮することでポリマー中の金属塩を除去した。以上により、末端にアリル基を有するポリオキシプロピレン(Q-1)を得た。この重合体(Q-1)500gに対して白金ジビニルジシロキサン錯体溶液(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)50μlを加え、撹拌しながら、ジメトキシメチルシラン8.4gをゆっくりと滴下した。100℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去する事により、末端にジメトキシメチルシリル基を有する数平均分子量14,600のポリオキシプロピレン(反応性ケイ素基を有する有機重合体)(A-1)を得た。反応性ケイ素基を有する有機重合体(A-1)はジメトキシメチルシリル基を1つの末端に平均0.8個、1分子中に平均1.5個有することが分かった。
【0161】
〔合成例2〕
A-2の合成例を以下に示す。
【0162】
数平均分子量が約4500のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、両末端に水酸基を有する数平均分子量27,900(末端基換算分子量17700)、分子量分布Mw/Mn=1.21のポリオキシプロピレン(P-1)を得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレン(P-1)の水酸基に対して1.0モル当量のナトリウムメトキシドを28%メタノール溶液として添加した。真空脱揮によりメタノールを留去した後、重合体(P-1)の水酸基に対して、1.0モル当量のアリルグリシジルエーテルを添加して130℃で2時間反応を行った。その後、0.28モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加してメタノールを除去し、さらに1.79モル当量の塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。得られた未精製のポリオキシプロピレンをn-ヘキサンと、水を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮することでポリマー中の金属塩を除去した。以上により、末端に複数の炭素-炭素不飽和結合を有するポリオキシプロピレン(Q-1)を得た。重合体(Q-1)は1つの末端に炭素-炭素不飽和結合が平均2.0個導入されていることがわかった。
【0163】
得られた(Q-1)500gに対し白金ジビニルジシロキサン錯体溶液(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)50μlを加え、撹拌しながらジメトキシメチルシラン9.6gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を100℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去する事により、末端に複数のジメトキシメチルシリル基を有する数平均分子量28,500のポリオキシプロピレン(反応性ケイ素基を有する有機重合体)(A-2)を得た。反応性ケイ素基を有する有機重合体(A-2)はジメトキシメチルシリル基を1つの末端に平均1.7個、一分子中に平均3.4個有することが分かった。
【0164】
〔実施例1〕
表1に記載した分量で(以下、各成分の添加量について同様。)、(A)成分、(B)成分、アスファルト、カーボンブラック、および酸化防止剤を添加し、5L二軸ミキサー(井上製作所社製)で5分間、低速(ディスパーサー:480rpm、ブレード:46rpm)で混錬した。その後、カールフィッシャー水分計(MKH-700:京都電子工業社製)を用いて、得られた組成物の水分値を測定した。
【0165】
続いて、(C)成分を添加した後、減圧脱気しながら高速(ディスパーサー:1200rpm、ブレード:113rpm)で60分間攪拌した。その後、可塑剤を添加して、50℃以下になるまで低速で混錬した。脱水工程の終了後、カールフィッシャー水分計(MKH-700:京都電子工業社製)を用いて、組成物の水分値を測定した。
【0166】
〔実施例2〕
(C)成分の添加量を表1に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で、組成物の製造を行った。
【0167】
〔実施例3〕
(C)成分の添加量を表1に記載の通り変更したこと、および減圧脱気の速度を中速(ディスパーサー:800rpm、ブレード:85rpm)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成物の製造を行った。
【0168】
〔比較例1〕
(C)成分を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成物の製造を行った。
【0169】
〔比較例2〕
(C)成分を添加しなかったこと、減圧脱気の速度を中速(ディスパーサー:550rpm、ブレード:70rpm)としたこと、および可塑剤の添加後に低速で10分間混錬したこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成物の製造を行った。
【0170】
〔比較例3〕
減圧脱気の速度を中速(ディスパーサー:550rpm、ブレード:70rpm)としたこと、および可塑剤の添加後に低速で10分間混錬したこと以外は、実施例1と同様の方法で、組成物の製造を行った。
【0171】
〔結果〕
結果を表1に示す。
【0172】
【0173】
表1より、(C)成分を含まない組成物(すなわち、比較例1および2)、ならびに(C)成分を含むが、脱水工程における最大温度が50℃以下の組成物(すなわち、比較例3)は、実施例1~3に対して水分値が高かった。この結果より、本発明の一態様では、加熱装置や多量の脱水剤を必要とすることなく、簡便に水分を除去し得ることが示された。
本製造方法によれば、水分の少ない、反応性ケイ素基を有する有機重合体を含む組成物が簡便に得られるため、例えば、塗料、インク、離型剤、接着剤、粘着剤、シーリング材、コーティング材、化粧品等の分野で好適に利用することができる。