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特開2024-104193折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法
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  • 特開-折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法 図1
  • 特開-折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法 図2
  • 特開-折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法 図3
  • 特開-折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法 図4
  • 特開-折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法 図5
  • 特開-折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法 図6
  • 特開-折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104193
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法
(51)【国際特許分類】
   B31F 1/36 20060101AFI20240726BHJP
   B31F 1/26 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B31F1/36 A
B31F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008298
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋志
【テーマコード(参考)】
3E078
【Fターム(参考)】
3E078AA15
3E078BB51
3E078BC04
3E078DD11
(57)【要約】
【課題】空間充填構造体の格子形状が正多角形に近い、異方性の小さな空間充填構造体の作製を可能にする折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成法を提供する。
【解決手段】本発明の折目付装置は、互いに噛み合う2つの歯車及び/又は歯付きベルト間に紙材を配置し、上記紙材に折り目を形成する。
そして、上記2つの歯車及び/又は歯付きベルトは、その歯面及び歯底の少なくとも一方に、その歯幅方向に延びる液体付与部を有することとしたため、紙材のスプリングバックを抑えることができ、格子形状が正多角形に近い、異方性の小さな空間充填構造体を可能にする折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成法を提供することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛み合う2つの歯車及び/又は歯付きベルト間に紙材を配置し、上記紙材に折り目を形成する折目付装置であって、
上記2つの歯車及び/又は歯付きベルトは、その歯面及び歯底の少なくとも一方に、その歯幅方向に延びる液体付与部を有することを特徴とする折目付装置。
【請求項2】
上記液体付与部は、上記2つの歯車及び/又は歯付きベルトが噛み合うことで上記紙材に液体を付与することを特徴とする請求項1に記載の折目付装置。
【請求項3】
上記液体付与部が、繊維材で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の折目付装置。
【請求項4】
上記液体付与部が、筒状の弾性材で形成され、
前記筒状の弾性材は、切れ目又は小孔を有することを特徴とする請求項2に記載の折目付装置。
【請求項5】
上記歯車及び/又は歯付きベルトの歯の少なくとも一つは、加熱部を有していることを特徴とする請求項1に記載の折目付装置。
【請求項6】
上記2つの歯車及び/又は歯付きベルトは、歯先及び歯面の少なくとも一方に、歯車の厚み方向に延びる凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の折目付装置。
【請求項7】
互いに噛み合う2つの歯車及び/又は歯付きベルトで紙材を挟み、上記紙材に折り目を形成する方法であって、
上記紙材に液体を付与するとともに、上記紙材に折り目を形成することを特徴とする紙材に折り目を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折目付装置、及び該折目付装置を用いた折目付け方法係り、更に詳細には、紙材を用いてハニカム構造などの格子構造を有する空間充填構造体を作製する際に、紙に折り目を形成する折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカムコアなどの立体図形を隙間なく並べた空間充填構造体は、軽量かつ高強度であるので構造材料として幅広く利用されている。
【0003】
上記空間充填構造体は、紙材に接着剤を条線状に塗布し、積層、圧着して積層体とし、該積層体を所望の幅に切断し、積層方向に展張することで作製できる。
【0004】
このとき、紙材に接着剤を条線状に塗布するのみでは、紙材のスプリングバックによって展張後の格子形状が、展張方向と該展張方向と直交する方向との長さとが異なった、異方性が大きな形状になってしまう。
【0005】
特許文献1には、互いに噛み合う2つの歯車で紙材を挟むこと紙材に折り目を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001-518407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法によれば、歯車の歯型が紙材に転写され、折り目を形成することができる。
しかしながら、紙材のスプリングバックを充分抑えることができず、等方的な空間充填構造体を作製することはできない。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空間充填構造体の格子形状が正多角形に近い、異方性の小さな空間充填構造体の作製を可能にする折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、紙材を濡らして折り目を形成することにより、折り目の形状凍結性が向上し、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の折目付装置は、互いに噛み合う2つの歯車及び/又は歯付きベルト間に紙材を挟み、上記紙材に折り目を形成する。
そして、上記2つの歯車及び/又は歯付きベルトは、その歯面及び歯底の少なくとも一方に、その歯幅方向に延びる液体付与部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の折り目を形成する方法は、折目付装置を用いて、互いに噛み合う2つの歯車及び/又は歯付きベルトで紙材を挟み、上記紙材に折り目を形成する方法である。
そして、上記2つの歯車及び/又は歯付きベルトは、その歯面及び歯底の少なくとも一方に、その歯幅方向に延びる液体付与部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、紙材を濡らして折り目を形成することとしたため、紙材のスプリングバックを抑えることができ、格子形状が正多角形に近い、異方性の小さな空間充填構造体を可能にする折目付装置、及び該折目付装置を用いた折り目形成法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コルゲート法により空間充填構造体を作製する過程を説明する図である。
図2】折り紙法により空間充填構造体を作製する過程を説明する図である。
図3】紙材を歯車と歯付きベルトとで挟んで折り目を付ける状態を説明する図である。
図4】液体供給部を有する折目付装置の要部拡大図である。
図5】液体供給部がシリコンチューブである状態を説明する図である。
図6】ヒータを備えた歯車(歯付きベルト)の例を示す要部拡大図である。
図7】凸部を有する歯車(歯付きベルト)の例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、ハニカムコアなどの空間充填構造体の作製方法について説明する。
紙材からハニカムコアを作製する方法としては、図1に示すコルゲート法や、図2に示す折り紙工法などを挙げることができる。
【0015】
図1に示すコルゲート法は、平行な折り目を複数有し、周期的な山谷形状が複数形成された複数の紙材を、上記山谷形状が互い違いになるように並べ、隣り合う紙材の山部同士を接着し、紙材を接着面と直交する方向に展張させて形成する方法である。このコルゲート法では紙材の幅が空間充填構造体の高さとなる。
【0016】
また、図2に示す折り紙工法は、上記コルゲート法の紙材と同様に、紙材に周期的な山谷形状を複数形成した後、さらに上記折り目と直交する方向に一部を残して切れ込みを入れ、残した接続箇所を180°折り返し、対向する面同士を接着して形成する方法である。
【0017】
本発明の折目付装置は、図3に示すように、互いに噛み合う2つの歯車及び/又は歯付きベルト(以下、単に「歯車」ということがある。)の間に紙材を配置し、上記歯車で紙材を挟んで歯車の歯型形状を紙材に転写する。すなわち、歯車の歯面と歯底とで形成される角部で紙材に平行な折り目を形成し、該平行な折り目で形成された周期的な山谷形状を形成する。
【0018】
このような折目付装置は、回転する歯車間に紙材を送ることで長尺の紙材に対し、連続して折り目を付けて周期的な山谷形状を形成することができる。
【0019】
しかし、所望の角度の折り目、例えば、120°の折り目を形成するために、歯面と歯先の頂面とのなす角度が、120°である歯車で挟んだのでは、紙材のスプリングバックによって折り目が拡がってしまい、120°の折り目を形成することはできない。
【0020】
本発明の折目付装置は、図4に示すように、紙材に折り目を形成する部位、すなわち、歯車の屈曲した部位である、歯底と歯面との境目や歯面と歯先との境目などの少なくとも一方に、歯幅方向に延びる液体付与部を有し、上記紙材を濡らすこととしたため、紙材のスプリングバックが抑制されて等方的な空間充填構造体を形成できる。
【0021】
上記液体付与部は、2つの歯車の噛み合いにより上記紙材に液体を付与すること、すなわち、歯車同士が噛み合って液体付与部が押圧され、該液体付与部から液体が滲みだすことで歯車間の紙材を濡らすことが好ましい。
【0022】
このように、歯車同士が噛み合うことにより紙材を濡らすことで、紙材の全体を濡らすことなく、紙材の折り目を形成する部位のみを条線状に濡らすことができ、紙材に皺が生じることを抑制することができる。
【0023】
つまり、歯車同士が噛み合い回転することで、紙材は引っ張られたり押し出されたりして搬送される。このとき、濡れた紙材はその剛性が低下し軟化しているので、歯車の搬送力によって皺が発生し易い。
【0024】
紙材に折り目を形成する部位のみを濡らすことで、紙材のスプリングバックの抑制と皺の発生防止とを両立させることができると共に、紙材の全体を濡らす場合に比して乾燥が容易になる。
【0025】
上記液体付与部としては、繊維材やシリコンチューブなどの筒状の弾性材に切れ目や小孔を形成したものの他、歯車自体に微細な裂け目を形成し毛細管現象によって液体を供給可能にした構造などを挙げることができる。
【0026】
上記繊維材は、その一部が液体に濡れることで毛細管現象によって繊維材の全体が濡れるので、折り目を形成する部位に繊維材を配置することにより、歯車の回転によって上記繊維材が紙材と接触して紙材を濡らすことができる。
【0027】
上記シリコンチューブは、そのチューブ内部に達する切れ目を入れたものを使用することができる。
【0028】
シリコンチューブは切れ目入れただけであると、その形状を維持するので、押圧されていないときは上記切れ目が塞がった状態を維持するためチューブ内の液体は漏れ出さないが、押圧されてシリコンチューブが変形すると、上記切れ目が拡がって液体が漏れ出すので、歯車の回転によって紙材を濡らすことができる。
また、シリコンチューブに形成された小孔では表面張力により、水が漏れだし難く、歯車の回転によって紙材を濡らすことができる。
【0029】
また、シリコンチューブ内への液体の供給は、図5に示すように、上流端と下流端とに逆止弁を設け、下流側に設けたポンプでシリコンチューブ内を吸引し、上流側からチューブ内に液体を流れ込ませることによって行うことができる。
【0030】
なお、液体付与部がシリコンチューブである場合は、チューブ内に水蒸気を供給して紙材を濡らすことも可能である。
【0031】
本発明の折目付装置は、濡らした紙材を加熱・乾燥させる手段を有することが好ましい。
【0032】
紙材を加熱・乾燥させる手段としては、折り目を付けた紙材に温風を当ててもよいが、歯車自体が加熱部を有していることが好ましい。
【0033】
具体的には、図6に示すように、歯車の歯の内部に設けたヒータを挙げることができ、これにより紙材を瞬時に乾燥させることができる。上記ヒータの温度としては、紙材を濡らす液体の沸点にもよるが、液体が水である場合は、120℃~150℃であることが好ましい。
【0034】
歯車自体が加熱部を有することで、歯車間で紙材が折れ曲がった状態のまま乾燥させることができ、乾燥前に折り目が拡がることが防止されて折り目の形状凍結性が向上する。
【0035】
さらに、上記2つの歯車及び/又は歯付きベルトの少なくとも一方が歯付きベルトであると、紙材が生乾きの状態であっても、歯付きベルト上でその形状を維持したまま完全に乾燥させることができるため、さらに折り目の形状凍結性が向上すると共に、歯車の回転速度を速めることが可能になって、生産性が向上する。
【0036】
上記歯車は、図7に示すように、各歯の歯先及び/又は歯面に、少なくとも1つの歯幅方向に延びる凸部と該凸部に対応する位置に凹部を有することが好ましい。
【0037】
上記歯車の凸部が紙材に当接して紙材を凹部に押し込み、紙材を局所的に強く押圧するので、紙材を歯車の歯面と歯先とのなす角度よりも小さな角度まで折り曲げることができ、紙材のスプリングバックによって折り目の角度が拡がったとしても、紙材に所望の角度の折り目を形成することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 紙材
2a 歯車
2b 歯付きベルト
21 歯
22 歯先
23 歯面
24 歯底
25 凸部
26 凹部
3 液体供給部
31 切れ目
4 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7