(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104194
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ボタン構造及びインターホン機器
(51)【国際特許分類】
H01H 23/14 20060101AFI20240726BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20240726BHJP
H01H 23/30 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01H23/14
H04M1/02 G
H01H23/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008300
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135127
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 正己
(72)【発明者】
【氏名】上山 基希
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友哉
(72)【発明者】
【氏名】中島 賢志
【テーマコード(参考)】
5G035
5K023
【Fターム(参考)】
5G035AA24
5G035CA04
5G035CB01
5G035DA15
5K023AA05
5K023BB04
5K023GG07
5K023GG08
(57)【要約】
【課題】1つの操作部材で1つのスイッチを操作するボタン構造と、1つの操作部材で2つのスイッチを選択的に操作可能なボタン構造とで部品を共通化することによりコストの低減を図ることができるボタン構造を提供する。
【解決手段】操作部材11の操作部12に、後方へ突出する第1操作突起14、第2操作突起15、及び第3操作突起16を設けるとともに、操作部材11の鍔部13の上辺部に、後方へ突出する2つの第1支点突起17、17及び第2支点突起18、18を設け、さらに、鍔部13の下辺部に、後方へ突出する2つの第3支点突起19、19を設ける一方、シート部材20に、前後方向へ移動可能な中操作段部21、左操作段部22、及び右操作段部23を設けるとともに、前方へ突出する2つの第1支持凸部24、24と、左右の第1支持凸部24、24の間において前方へ突出する2つの第2支持凸部25、25とを設けた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にスイッチが搭載されたスイッチ基板の前側に配されるシート部材と、前記シート部材の前側に取り付けられる操作部材とを備えており、前記操作部材が後方へ押し込み操作されると、前記シート部材を介して前記スイッチが操作されるボタン構造であって、
前記操作部材に、後方へ突出する第1操作突起が設けられ、前記第1操作突起の左側に第2操作突起が、前記第1操作突起の右側に第3操作突起が夫々後方へ突設されているとともに、
後方へ突出する2つの第1支点突起と、前記第1支点突起よりも後方へ突出する第2支点突起とが設けられ、前記第1支点突起は、前記第1操作突起よりも左側及び右側となる箇所に設けられているとともに、前記第2支点突起は、左右の前記第1支点突起の間に設けられ、
さらに、前記第2支点突起から鉛直下方となる箇所に、後方へ突出する第3支点突起が設けられている一方、
前記シート部材に、前後方向へ移動可能な中操作段部が設けられ、前記中操作段部の左側に左操作段部が、前記中操作段部の右側に右操作段部が夫々前後方向へ移動可能に設けられているとともに、
前記中操作段部よりも上側で、且つ、前記中操作段部よりも左側及び右側となる箇所に前方へ突出する第1支持凸部が設けられ、さらに左右の前記第1支持凸部の間に前方へ突出する第2支持凸部が設けられており、
前記操作部材は、前記第1操作突起が前記中操作段部の前面に、前記第2操作突起が前記左操作段部の前面に、前記第3操作突起が前記右操作段部の前面に夫々当接するとともに、各前記第1支点突起が対応する前記第1支持凸部の前面に夫々当接し、且つ、前記第2支点突起と前記第2支持凸部とが干渉せず、さらに前記第3支点突起が前記シート部材の表面から離隔する第1姿勢と、
前記第1姿勢とは上下逆さで、前記第3操作突起が前記左操作段部の前面に、前記第2操作突起が前記右操作段部の前面に夫々当接するとともに、前記第3支点突起が前記第2支持凸部の前面に、前記第2支点突起が前記シート部材の表面に夫々近接し、且つ、前記第1操作突起及び前記第1支点突起が前記シート部材の表面から離隔する第2姿勢との何れかで選択的に取付可能であることを特徴とするボタン構造。
【請求項2】
請求項1に記載のボタン構造として呼出ボタンが設けられたインターホン機器であって、
前記操作部材が前記第1姿勢で取り付けられているとともに、前記スイッチ基板に第1スイッチが搭載されており、
前記操作部材を押し込み操作すると、前記第1支点突起と前記第1支持凸部との当接箇所を支点として前記操作部材が後方へ回動することにより、前記中操作段部が前記第1操作突起に押圧されて後方へ移動し、当該中操作段部により前記第1スイッチが操作されることを特徴とするインターホン機器。
【請求項3】
請求項1に記載のボタン構造として呼出ボタンが設けられたインターホン機器であって、
前記操作部材が前記第2姿勢で取り付けられているとともに、前記スイッチ基板に第2スイッチ及び第3スイッチが搭載されており、
前記操作部材の左部を押し込み操作すると、前記第3支点突起が前記第2支持凸部の前面に、前記第2支点突起が前記シート部材の表面に夫々当接し、当該当接箇所を支点として前記操作部材が左側に傾動することにより、前記左操作段部が前記第3操作突起に押圧されて後方へ移動し、当該左操作段部により前記第2スイッチが操作される一方、
前記操作部材の右部を押し込み操作すると、前記第3支点突起が前記第2支持凸部の前面に、前記第2支点突起が前記シート部材の表面に夫々当接し、当該当接箇所を支点として前記操作部材が右側に傾動することにより、前記右操作段部が前記第2操作突起に押圧されて後方へ移動し、当該右操作段部により前記第3スイッチが操作されることを特徴とするインターホン機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばインターホン機器に設けられた来訪者が居住者を呼び出すための呼出ボタン等のボタン構造、及び当該ボタン構造を採用する呼出ボタンが設けられたインターホン機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般的なインターホン機器には、ユーザーが押し込み操作可能な操作部材を備えた操作部が設けられている。そのような操作部としては、たとえば特許文献1に記載されている呼出ボタンのように1つの操作部材で1つのスイッチを操作するように構成されているものや、たとえば特許文献2に記載されている音量調整ボタンように1つの操作部材で2つのスイッチを選択的に操作可能に構成されているものがある。そして、呼出ボタンような操作部と音量調整ボタンのような操作部とでは構造が全く異なっており、当然ながら操作部材も全くの別部品で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-197967号公報
【特許文献2】特開2020-27789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、たとえば2つのスイッチを選択的に操作可能な呼出ボタンが設けられた二世帯住宅向けのインターホン機器等の需要がある。しかしながら、そのような二世帯住宅向けのインターホン機器と従来周知の1つのスイッチしか操作できない呼出ボタンを備えたインターホン機器とで操作部に係る部品を共通化できず、コスト高を招く要因となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、1つの操作部材で1つのスイッチを操作するボタン構造と、1つの操作部材で2つのスイッチを選択的に操作可能なボタン構造とで部品を共通化することによりコストの低減を図ることができるボタン構造、及びそのボタン構造を採用する呼出ボタンが設けられたインターホン機器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、前面にスイッチが搭載されたスイッチ基板の前側に配されるシート部材と、シート部材の前側に取り付けられる操作部材とを備えており、操作部材が後方へ押し込み操作されると、シート部材を介してスイッチが操作されるボタン構造であって、操作部材に、後方へ突出する第1操作突起が設けられ、第1操作突起の左側に第2操作突起が、第1操作突起の右側に第3操作突起が夫々後方へ突設されているとともに、後方へ突出する2つの第1支点突起と、第1支点突起よりも後方へ突出する第2支点突起とが設けられ、第1支点突起は、第1操作突起よりも左側及び右側となる箇所に設けられているとともに、第2支点突起は、左右の第1支点突起の間に設けられ、さらに、第2支点突起から鉛直下方となる箇所に、後方へ突出する第3支点突起が設けられている一方、シート部材に、前後方向へ移動可能な中操作段部が設けられ、中操作段部の左側に左操作段部が、中操作段部の右側に右操作段部が夫々前後方向へ移動可能に設けられているとともに、中操作段部よりも上側で、且つ、中操作段部よりも左側及び右側となる箇所に前方へ突出する第1支持凸部が設けられ、さらに左右の第1支持凸部の間に前方へ突出する第2支持凸部が設けられており、操作部材は、第1操作突起が中操作段部の前面に、第2操作突起が左操作段部の前面に、第3操作突起が右操作段部の前面に夫々当接するとともに、各第1支点突起が対応する第1支持凸部の前面に夫々当接し、且つ、第2支点突起と第2支持凸部とが干渉せず、さらに第3支点突起がシート部材の表面から離隔する第1姿勢と、第1姿勢とは上下逆さで、第3操作突起が左操作段部の前面に、第2操作突起が右操作段部の前面に夫々当接するとともに、第3支点突起が第2支持凸部の前面に、第2支点突起がシート部材の表面に夫々近接し、且つ、第1操作突起及び第1支点突起がシート部材の表面から離隔する第2姿勢との何れかで選択的に取付可能であることを特徴とする。
本発明によれば、1つの操作部材で1つのスイッチを操作するボタン構造と、1つの操作部材で2つのスイッチを選択的に操作可能なボタン構造とで部品を共通化することができるため、部品点数の削減に伴う製造コスト及び管理コストを低減することができる。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のボタン構造として呼出ボタンが設けられたインターホン機器であって、操作部材が第1姿勢で取り付けられているとともに、スイッチ基板に第1スイッチが搭載されており、操作部材を押し込み操作すると、第1支点突起と第1支持凸部との当接箇所を支点として操作部材が後方へ回動することにより、中操作段部が第1操作突起に押圧されて後方へ移動し、当該中操作段部により第1スイッチが操作されることを特徴とする。
さらに、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のボタン構造として呼出ボタンが設けられたインターホン機器であって、操作部材が第2姿勢で取り付けられているとともに、スイッチ基板に第2スイッチ及び第3スイッチが搭載されており、操作部材の左部を押し込み操作すると、第3支点突起が第2支持凸部の前面に、第2支点突起がシート部材の表面に夫々当接し、当該当接箇所を支点として操作部材が左側に傾動することにより、左操作段部が第3操作突起に押圧されて後方へ移動し、当該左操作段部により第2スイッチが操作される一方、操作部材の右部を押し込み操作すると、第3支点突起が第2支持凸部の前面に、第2支点突起がシート部材の表面に夫々当接し、当該当接箇所を支点として操作部材が右側に傾動することにより、右操作段部が第2操作突起に押圧されて後方へ移動し、当該右操作段部により第3スイッチが操作されることを特徴とする。
請求項2及び3に記載の発明によれば、ボタン構造に係る製造コスト及び管理コストが低減されているため、結果としてインターホン機器全体に係る製造コスト及び管理コストについても低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作部材に、後方へ突出する第1操作突起を設け、第1操作突起の左側に第2操作突起を、第1操作突起の右側に第3操作突起を夫々後方へ突設するとともに、後方へ突出する2つの第1支点突起と、第1支点突起よりも後方へ突出する第2支点突起とを設け、第1支点突起を、第1操作突起よりも左側及び右側となる箇所に設けるとともに、第2支点突起を、左右の第1支点突起の間に設け、さらに、第2支点突起から鉛直下方となる箇所に、後方へ突出する第3支点突起を設ける一方、シート部材に、前後方向へ移動可能な中操作段部を設け、中操作段部の左側に左操作段部を、中操作段部の右側に右操作段部を夫々前後方向へ移動可能に設けるとともに、中操作段部よりも上側で、且つ、中操作段部よりも左側及び右側となる箇所に前方へ突出する第1支持凸部を設け、さらに左右の第1支持凸部の間に前方へ突出する第2支持凸部を設けた。そして、操作部材を、第1操作突起が中操作段部の前面に、第2操作突起が左操作段部の前面に、第3操作突起が右操作段部の前面に夫々当接するとともに、各第1支点突起が対応する第1支持凸部の前面に夫々当接し、且つ、第2支点突起と第2支持凸部とが干渉せず、さらに第3支点突起がシート部材の表面から離隔する第1姿勢と、第1姿勢とは上下逆さで、第3操作突起が左操作段部の前面に、第2操作突起が右操作段部の前面に夫々当接するとともに、第3支点突起が第2支持凸部の前面に、第2支点突起がシート部材の表面に夫々近接し、且つ、第1操作突起及び第1支点突起がシート部材の表面から離隔する第2姿勢との何れかで選択的に取付可能とした。したがって、1つの操作部材で1つのスイッチを操作するボタン構造と、1つの操作部材で2つのスイッチを選択的に操作可能なボタン構造とで部品を共通化することができるため、部品点数の削減に伴う製造コスト及び管理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】操作部材が第1姿勢で取り付けられた第1のインターホン子機を正面から示した説明図である。
【
図2】第1のインターホン子機を分解した状態を示した斜視説明図である。
【
図3】第1姿勢にある操作部材及びシート部材を前方から示した斜視説明図である。
【
図4】第1姿勢にある操作部材及びシート部材を後方から示した斜視説明図である。
【
図5】
図1中のA-A線断面における呼出ボタン部分を拡大して示した説明図である。
【
図6】
図1中のB-B線断面における呼出ボタン部分を拡大して示した説明図である。
【
図7】
図1中のC-C線断面における呼出ボタン部分を拡大して示した説明図である。
【
図8】操作部材が第2姿勢で取り付けられた第2のインターホン子機を正面から示した説明図である。
【
図9】第2のインターホン子機を分解した状態を示した斜視説明図である。
【
図10】第2姿勢にある操作部材及びシート部材を前方から示した斜視説明図である。
【
図11】第2姿勢にある操作部材及びシート部材を後方から示した斜視説明図である。
【
図12】
図8中のD-D線断面における呼出ボタン部分を拡大して示した説明図である。
【
図13】
図8中のE-E線断面における呼出ボタン部分を拡大して示した説明図である。
【
図14】
図8中のF-F線断面における呼出ボタン部分を拡大して示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態となるインターホン子機について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0011】
図1は、操作部材が第1姿勢で取り付けられた第1のインターホン子機1を正面から示した説明図である。
図2は、インターホン子機1を分解した状態を示した斜視説明図である。
図3は、第1姿勢にある操作部材11及びシート部材20を前方から示した斜視説明図である。
図4は、第1姿勢にある操作部材11及びシート部材20を後方から示した斜視説明図である。
図5は、
図1中のA-A線断面における呼出ボタン10部分を拡大して示した説明図である。
図6は、
図1中のB-B線断面における呼出ボタン10部分を拡大して示した説明図である。
図7は、
図1中のC-C線断面における呼出ボタン10部分を拡大して示した説明図である。
図8は、操作部材が第2姿勢で取り付けられた第2のインターホン子機51を正面から示した説明図である。
図9は、インターホン子機51を分解した状態を示した斜視説明図である。
図10は、第2姿勢にある操作部材11及びシート部材20を前方から示した斜視説明図である。
図11は、第2姿勢にある操作部材11及びシート部材20を後方から示した斜視説明図である。
図12は、
図8中のD-D線断面における呼出ボタン50部分を拡大して示した説明図である。
図13は、
図8中のE-E線断面における呼出ボタン50部分を拡大して示した説明図である。
図14は、
図8中のF-F線断面における呼出ボタン50部分を拡大して示した説明図である。
【0012】
まず、1つの中スイッチ31を操作する呼出ボタン10が設けられたインターホン子機1について説明する。
インターホン子機1は、前側に配置される前ケース2及び後側に配置される後ケース3を組み付けた本体ケースと、その本体ケースを前方から覆うように組み付けられた化粧カバー4とを有してなる。また、インターホン子機1の前面上部には、インターホン子機1の前方を撮像するためのカメラ部5が設けられている。さらに、インターホン子機1の前面におけるカメラ部5の右側には、通話のためのマイク部6が設けられている。加えて、インターホン子機1の前面におけるカメラ部5の下側には、居住者の氏名等を表示可能であるとともに通話のためのスピーカ部としての機能や夜間照明としての機能をも兼ね備えたネーム表示部7と、来訪者が居住者を呼び出す際に押し込み操作する呼出ボタン10とが設けられている。そして、このようなインターホン子機1は、住戸の玄関の壁面等に設置されており、来訪者によって操作部材11が押し込み操作されると、本体ケース内に設置された中スイッチ31が操作され、住戸内に設置されているインターホン親機(図示せず)を呼び出すとともに、カメラ部5を作動させて来訪者等を含んだインターホン子機1前方の映像を撮像する。また、インターホン親機において応答ボタンが操作される等の応答操作がなされると、マイク部6及びスピーカ部を作動させ、インターホン親機との間で通話可能な状態とする。
【0013】
次に、2つのスイッチ(左スイッチ36及び右スイッチ37)を選択的に操作可能な呼出ボタン50が設けられたインターホン子機51について説明する。
インターホン子機51は、インターホン子機1と略同様に構成されるもので、呼出ボタン50周りの構造のみ異なっており、後述するようにインターホン子機1における呼出ボタン10の操作部材11を上下逆さとすることで呼出ボタン50が構成されている。そして、インターホン子機51は、たとえば二世帯住宅の玄関の壁面等に設置されており、来訪者によって操作部材11の左部が押し込み操作されると、本体ケース内に設置された左スイッチ36が操作され、左スイッチ36に対応づけられたインターホン親機(一方の世帯に設置されているもので、図示しない)を呼び出す。一方、操作部材11の右部が押し込み操作されると、本体ケース内に設置された右スイッチ37が操作され、右スイッチ37に対応づけられたインターホン親機(他方の世帯に設置されているもので、図示しない)を呼び出す。
【0014】
ここで、本発明の要部となる呼出ボタン10、50周りの構造について説明する。なお、操作部材11の説明における上下左右は、呼出ボタン10とする際の姿勢(第1姿勢)を基準とする。
呼出ボタン10、50は、中スイッチ31が前面に搭載されたメイン基板30若しくは左スイッチ36及び右スイッチ37が搭載されたメイン基板35と、メイン基板30、35の前側に配置されるシート部材20と、シート部材20の前側に取り付けられる操作部材11とを備えてなる。そして、呼出ボタン10における操作部材11の姿勢は、後述するように第1支点突起17、17が上側に位置する第1姿勢となっている一方、呼出ボタン50における操作部材11の姿勢は、第1姿勢とは上下逆さとなる第2姿勢、すなわち第1支点突起17、17が下側に位置する第2姿勢とされている。
【0015】
メイン基板30、35は、インターホン子機1の主たる動作(インターホン親機との間での通話や映像の送信に係る動作)を制御するものである。そして、メイン基板30の前面下部における左右方向で略中央となる位置には、第1姿勢にある操作部材11によって操作可能な中スイッチ31が搭載されている。また、メイン基板35の前面下部には、第2姿勢にある操作部材11によって操作可能な左スイッチ36及び右スイッチ37が左右方向に所定の間隔を空けて搭載されている。
【0016】
シート部材20は、弾性を有する合成樹脂(たとえばシリコンゴム)により成形されたシート状の部材である。該シート部材20の左右方向における略中央の下部で、メイン基板30の前側に配置した際に中スイッチ31の前方となる箇所には、薄肉部を介して周囲よりも前方へ持ち上げられた状態にある中操作段部21が設けられている。そして、中操作段部21は、後述するように第1姿勢にある操作部材11の押し込み操作に伴い前後方向へ移動可能となっている。また、シート部材20の左部(中操作段部21よりも左側)で、メイン基板35の前側に配置した際に左スイッチ36の前方となる箇所には、薄肉部を介して周囲よりも前方へ持ち上げられた状態にある左操作段部22が設けられている。そして、左操作段部22は、第2姿勢にある操作部材11の左部の押し込み操作に伴い前後方向へ移動可能となっている。さらに、シート部材20の右部(中操作段部21よりも右側)で、メイン基板35の前側に配置した際に右スイッチ37の前方となる箇所には、薄肉部を介して周囲よりも前方へ持ち上げられた状態にある右操作段部23が設けられている。そして、右操作段部23は、第2姿勢にある操作部材11の右部の押し込み操作に伴い前後方向へ移動可能となっている。なお、左操作段部22と右操作段部23とは、中操作段部21よりも上寄りで、且つ、上下方向において同じ高さ位置に設けられている。
【0017】
加えて、シート部材20の前面における左操作段部22及び右操作段部23の鉛直上方には、前方へ突出する第1支持凸部24が夫々設けられている。各第1支持凸部24は左右方向へ長い凸条として形成されている。一方、シート部材20の前面における左操作段部22及び右操作段部23よりも上側で、且つ、第1支持凸部24、24よりも下側であり、さらに左右方向において左操作段部22と中操作段部21との間及び右操作段部23と中操作段部21との間となる箇所には、前方へ突出する第2支持凸部25が夫々設けられている。なお、シート部材20の上端部には、メイン基板30、35の位置決め孔33に挿入可能であるとともに前ケース2から後方へ突設された位置決め突起が嵌入可能な位置決め筒部26が後方へ突設されている。また、シート部材20の左右両端部には、前ケース2から後方へ突設された取付突起(図示せず)が挿入可能な取付孔27、27が夫々穿設されている。
【0018】
操作部材11は、左右方向へ長い略方体箱状に成形され、且つ、後側に開口する操作部12と、操作部12の外周面(上面、左右両側面、及び下面)の後端から夫々外方へ突出する鍔部13とを備えてなる。操作部12の前面は、前後方向を軸として180度回転させた際に同一形状となる回転対称形状とされていて、本実施形態では左右方向へ長い長方形に成形されている。また、操作部12の左右長さは、シート部材20における左操作段部22から右操作段部23までの左右長さよりも長く成形されており、操作部12の左右方向における中央下部で、第1姿勢としてシート部材20の前側に配置した際に中操作段部21の前方となる箇所には、操作部12の前板から後方へ突出する第1操作突起14が設けられている。さらに、操作部12の左端部における上下方向中央で、第1姿勢としてシート部材20の前側に配置した際に左操作段部22の前方となる箇所には、操作部12の前板から後方へ突出する第2操作突起15が設けられている。加えて、操作部12の右端部における上下方向中央で、第1姿勢としてシート部材20の前側に配置した際に右操作段部23の前方となる箇所には、操作部12の前板から後方へ突出する第3操作突起16が設けられている。
【0019】
一方、鍔部13の上辺部(操作部12から上方へ突出する箇所)における左右両端部には、後方へ突出する2つの第1支点突起17、17が設けられている。各第1支点突起17は、第1支持凸部24と同じく左右方向へ長い凸条として形成されている。そして、操作部材11を第1姿勢としてシート部材20の前側に配置した際、各第1支点突起17の先端が、対応する第1支持凸部24の前面に当接可能となっている。また、鍔部13の上辺部における第1支点突起17、17間となる箇所には、後方へ突出する2つの第2支点突起18、18が、第2支持凸部25、25の左右間隔と同じだけ左右に離されて設けられている。第2支点突起18、18は、第1支点突起17、17よりも後方へ突出している。そして、操作部材11を第1姿勢としてシート部材20の前側に配置した際、各第2支点突起18の先端は、対応する第2支持凸部25の鉛直上方(すなわち、第2支持凸部25と干渉しない位置)に位置するようになっている。さらに、鍔部13の下辺部(操作部12から下方へ突出する箇所)で、第2支点突起18、18から鉛直下方となる位置には、後方へ突出する2つの第3支点突起19、19が設けられている。そして、操作部材11を第2姿勢としてシート部材20の前側に配置した際、各第3支点突起19の先端が、対応する第2支持凸部25の前面に近接可能となっている。
【0020】
なお、前ケース2には、操作部12を挿通可能なケース操作窓8が開設されており、操作部材11は、前ケース2の前板後面におけるケース操作窓8の開口周縁とシート部材20とにより前後から挟持されて取り付けられる。また、化粧カバー4には、操作部12を露出させるためのカバー操作窓9が開設されている。
【0021】
そして、中スイッチ31を操作する呼出ボタン10を組み立てる際には、メイン基板30を後ケース3にネジ止めする一方、操作部材11は第1姿勢として、ケース操作窓8を介して操作部12が前方へ突出するように、前ケース2の後面側から操作部材11を配置し、更に位置決め筒部26に位置決め突起を嵌入させる等して操作部材11の後側を覆うようにシート部材20を配置する。それから前ケース2と後ケース3とを一体化すれば、中スイッチ31の前方に中操作段部21が位置した状態でシート部材20がメイン基板30の前側に配置され、且つ、中操作段部21の前面に第1操作突起14が当接する(
図7に示す)とともに、左操作段部22の前面に第2操作突起15が、
図5に示すように右操作段部23の前面に第3操作突起16が夫々当接した状態で第1姿勢にある操作部材11がシート部材20の前側に配置されて、呼出ボタン10が組み立てられる。
【0022】
また、上述のようにして組み立てられた呼出ボタン10においては、
図5に示すように第1支点突起17、17が第1支持凸部24、24の前面に当接している。一方、
図6に示すように第2支点突起18、18の先端は第2支持凸部25、25よりも上側に位置していて(すなわち、第2支持凸部25、25に干渉していない)、シート部材20の表面から離隔している。さらに、第3支点突起19、19についてもシート部材20の表面から離隔している。したがって、呼出ボタン10では、操作部材11を後方へ押し込み操作すると、第1支点突起17、17の先端(第1支点突起17、17と第1支持凸部24、24との当接箇所)が支点となって操作部材11が後方へ回動する。そのため、第1操作突起14によって中操作段部21が押圧され、中操作段部21が後方へ移動して中スイッチ31に接触し、結果として中スイッチ31が操作される。
【0023】
一方、左スイッチ36及び右スイッチ37を選択的に操作可能な呼出ボタン50を組み立てる際には、メイン基板35を後ケース3にネジ止めする一方、操作部材11は第2姿勢として、ケース操作窓8を介して操作部12が前方へ突出するように、前ケース2の後面側から操作部材11を配置し、更に位置決め筒部26に位置決め突起を嵌入させる等して操作部材11の後側を覆うようにシート部材20を配置する。それから前ケース2と後ケース3とを一体化すれば、左スイッチ36の前方に左操作段部22が位置するとともに右スイッチ37の前方に右操作段部23が位置した状態でシート部材20がメイン基板35の前側に配置され、且つ、左操作段部22の前面に第3操作突起16が当接するとともに右操作段部23の前面に第2操作突起15が当接した状態(
図12に示す)で第2姿勢にある操作部材11がシート部材20の前側に配置されて、呼出ボタン50が組み立てられる。なお、第1操作突起14については、当然ながら中操作段部21の前面に当接しておらず、シート部材20の表面から離隔している(
図14に示す)。
【0024】
また、上述のようにして組み立てられた呼出ボタン50においては、
図13に示すように第3支点突起19、19が第2支持凸部25、25の前面に近接しているとともに、第2支点突起18、18がシート部材20の下端部表面に近接している。一方、第1支点突起17、17については、第2支点突起18、18と比べるとシート部材20の下端部表面から大きく離隔している。そして、呼出ボタン50では、操作部材11の左部を後方へ押し込み操作すると、左側の第3支点突起19が左側の第2支持凸部25の表面に、左側の第2支点突起18がシート部材20の表面に夫々当接するとともに、該当接箇所が支点となって操作部材11が左方へ傾動する。したがって、第3操作突起16によって左操作段部22が押圧され、該左操作段部22が後方へ移動して左スイッチ36に接触し、左スイッチ36が操作される。一方、操作部材11の右部を後方へ押し込み操作すると、右側の第3支点突起19が右側の第2支持凸部25の表面に、右側の第2支点突起18がシート部材20の表面に夫々当接するとともに、該当接箇所が支点となって操作部材11が右方へ傾動する。したがって、第2操作突起15によって右操作段部23が押圧され、該右操作段部23が後方へ移動して右スイッチ37に接触し、右スイッチ37が操作される。なお、操作部材11の左右方向で中央部分が押し込み操作されたとしても、左右両第3支点突起19、19が第2支持凸部25、25の前面に、左右両第2支点突起18、18がシート部材20の表面に夫々当接するため、操作部材11が左右何れかに傾倒することはなく、ひいては左スイッチ36と右スイッチ37との何れも操作されない。
【0025】
以上のような構成を有するインターホン子機1、50によれば、操作部材11に、後方へ開口するとともに左右方向へ長い方体箱状に形成された操作部12と、操作部12の外周面の後端から夫々外方へ突出する鍔部13とを備え、操作部12に、後方へ突出する第1操作突起14、第2操作突起15、及び第3操作突起16を設けるとともに、鍔部13の上辺部に、後方へ突出する2つの第1支点突起17、17と、第1支点突起17よりも後方へ突出する2つの第2支点突起18、18とを設け、さらに、鍔部13の下辺部で、第2支点突起18、18から鉛直下方となる箇所に、後方へ突出する2つの第3支点突起19、19を設ける一方、シート部材20に、前後方向へ移動可能な中操作段部21、左操作段部22、及び右操作段部23を設けるとともに、前方へ突出する2つの第1支持凸部24、24と、左右の第1支持凸部24、24の間において前方へ突出する2つの第2支持凸部25、25とを設けた。
【0026】
そして、インターホン子機1においては第1支点突起17及び第2支点突起18が上方に位置する第1姿勢で操作部材11を配し、第1操作突起14が中操作段部21の前面に、第2操作突起15が左操作段部22の前面に、第3操作突起16が右操作段部23の前面に夫々当接するとともに、左側の第1支点突起17が左側の第1支持凸部24の前面に、右側の第1支点突起17が右側の第1支持凸部24の前面に夫々当接し、且つ、第2支点突起18、18と第2支持凸部25、25とが干渉せず、さらに第3支点突起19、19がシート部材20の表面から離隔しており、操作部12が後方へ押し込み操作されると、第1支点突起17、17と第1支持凸部24、24との当接箇所を支点として操作部材11が後方へ回動することにより、中操作段部21が第1操作突起14に押圧されて後方へ移動し、当該中操作段部21による中スイッチ31の操作が可能となるようにした。
【0027】
一方、インターホン子機51においては第1姿勢とは上下逆さとなる第2姿勢で操作部材11を配し、第3操作突起16が左操作段部22の前面に、第2操作突起15が右操作段部23の前面に夫々当接するとともに、第3支点突起19、19が第2支持凸部25、25の前面に、第2支点突起18、18がシート部材20の表面に夫々近接し、且つ、第1操作突起14及び第1支点突起17、17がシート部材20の表面から離隔しており、操作部12の左端部を押し込み操作すると、第2姿勢において左側の第3支点突起19が左側の第2支持凸部25の前面に、同様に左側の第2支点突起18がシート部材20の表面に夫々当接し、当該当接箇所を支点として操作部12が左側に傾動することにより、左操作段部22が第3操作突起16に押圧されて後方へ移動し、当該左操作段部22による左スイッチ36の操作が可能となり、操作部12の右端部を押し込み操作すると、第2姿勢において右側の第3支点突起19が右側の第2支持凸部25の前面に、同様に右側の第2支点突起18がシート部材20の表面に夫々当接し、当該当接箇所を支点として操作部12が右側に傾動することにより、右操作段部23が第2操作突起15に押圧されて後方へ移動し、当該右操作段部23による右スイッチ37の操作が可能となるようにした。
【0028】
したがって、1つの操作部材11で1つのスイッチを操作するインターホン子機1と、1つの操作部材11で2つのスイッチを選択的に操作可能なインターホン子機51とで部品を共通化することができるため、部品点数の削減に伴う製造コスト及び管理コストを低減することができる。
【0029】
また、操作部12の前面を、前後方向を軸として180度回転させた際に同一形状となる回転対称形状としているとともに、第2操作突起15及び第3操作突起16について、操作部12の上下方向中央に設けているため、第1姿勢で操作部材11を配する際と第2姿勢で操作部材11を配する際とで操作部12の位置及び形状が変化しない。したがって、操作部材11やシート部材20のみならず、前ケース2や化粧カバー4についても共通化することができ、インターホン子機1、51の更なるコスト低減を図ることができる。
【0030】
さらに、第2姿勢で操作部材11を配した際、操作部材11の左右方向で中央部分が押し込み操作されると、左右両第3支点突起19、19が第2支持凸部25、25の前面に、左右両第2支点突起18、18がシート部材20の表面に夫々当接し、操作部材11が左右何れにも傾倒せず、ひいては左スイッチ36と右スイッチ37との何れも操作されないようにしている。したがって、ユーザーが操作部12の中央部分を操作してしまい、左スイッチ36と右スイッチ37との何れが操作されたか分からない等の事態が起こりにくく、使い勝手の良いインターホン子機51とすることができる。
【0031】
なお、本発明に係るボタン構造及びインターホン機器は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、インターホン機器の全体的な構成は勿論、操作部材やシート部材の構成等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0032】
たとえば、上記実施形態では、第2支点突起及び第3支点突起を2つずつ設けているが、それぞれ1つとしても本発明を構成することは可能である。
また、上記実施形態では、操作部材の鍔部に関して、操作部の外周面の後端から夫々外方へ突出するように鍔部を設けている、すなわち鍔部を周設しているが、そのように周設された鍔部ではなくても、操作部から少なくとも上方及び下方に突出するように設けられていればよい。
【0033】
さらに、上記実施形態では、操作部の前面を、前後方向を軸として180度回転させた際に同一形状となる回転対称形状としているとともに、第2操作突起及び第3操作突起について、操作部の上下方向中央に設けているが、操作部の前面をそのような回転対称形状としなくてもよいし、第2操作突起及び第3操作突起の位置についてもそれらの位置に限定されない。そうすることで、前ケースや化粧カバーについて共通化できない場合もあるが、操作部材及びシート部材については依然として部品の共通化を図ることができ、低コスト化に関して一定の効果を奏することができる。
【0034】
加えて、上記実施形態では、インターホン機器の一例であるインターホン子機について説明しているが、本発明は、インターホン親機や集合玄関機等の他のインターホン機器に係るボタン構造としても好適に採用することができ、その際、設定ボタンや音量調整ボタン等の他のボタンに係るボタン構造であっても何ら問題はない。
【符号の説明】
【0035】
1、51・・インターホン子機(インターホン機器)、10、50・・呼出ボタン(ボタン構造)、11・・操作部材、12・・操作部、13・・鍔部、14・・第1操作突起、15・・第2操作突起、16・・第3操作突起、17・・第1支点突起、18・・第2支点突起、19・・第3支点突起、20・・シート部材、21・・中操作段部、22・・左操作段部、23・・右操作段部、24・・第1支持凸部、25・・第2支持凸部、30、35・・メイン基板(スイッチ基板)、31・・中スイッチ(スイッチ)、36・・左スイッチ(スイッチ)、36・・右スイッチ(スイッチ)。