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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104198
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】取付補助治具及び金具の取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240726BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
E04F13/08 101Z
E04F13/08 101D
E04G21/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008309
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 翔太
【テーマコード(参考)】
2E110
2E174
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AA43
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110BD23
2E110CA03
2E110CA07
2E110CA08
2E110CC03
2E110CC04
2E110DA10
2E110DB23
2E110DC02
2E110DC04
2E110FA06
2E110FA07
2E174BA01
2E174DA14
2E174DA34
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】固定具の打ち込み忘れを抑制し、金具を下地材に取り付ける作業性を高めることができる取付補助治具及び金具の取付方法を提供する。
【解決手段】取付補助治具1は、建物の下地材に固定具によって金具Fを取り付ける際に用いられ、固定具の打ち込みを補助する。取付補助治具1は、下地材の金具取付面に対向する対向面10Aを有する治具本体部10と、金具Fを着脱可能に保持する保持部20と、を備える。治具本体部10は、固定具を通過させる通過孔11と、通過孔11の貫通方向と直交し、金具Fを着脱する着脱方向に延びる切欠部12と、を有する。取付補助治具1は、保持部20によって金具Fを保持し、下地材に金具Fを取り付けたときに、打ち込まれた固定具の頭部を切欠部12に通過させることで、金具Fから取り外される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の下地材に固定具によって金具を取り付ける際に用いられ、前記固定具の打ち込みを補助する取付補助治具であって、
前記下地材の金具取付面に対向する対向面を有する治具本体部と、
前記治具本体部に設けられ、前記金具を着脱可能に保持する保持部と、を備え、
前記治具本体部は、
前記対向面において前記治具本体部を貫通するように形成され、前記固定具を通過させる通過孔と、
前記対向面において前記通過孔に連通するように形成され、前記通過孔の貫通方向と直交し、前記金具を着脱する着脱方向に延びる切欠部と、を有し、
前記取付補助治具は、前記保持部によって前記金具を保持し、前記下地材に前記金具を取り付けたときに、打ち込まれた前記固定具の頭部を前記切欠部に通過させることで前記金具から取り外されることを特徴とする取付補助治具。
【請求項2】
前記治具本体部は、
前記金具取付面に配置されるベース部と、
前記ベース部から前記着脱方向に沿って延び、前記金具と前記貫通方向において重なるガイド部と、を有し、
前記通過孔は、前記ガイド部に形成され、
前記保持部は、前記ベース部から前記着脱方向に沿って延び、前記ガイド部を間に挟む位置に設けられ、前記金具を挟持する一対のアーム部を有することを特徴とする請求項1に記載の取付補助治具。
【請求項3】
前記取付補助治具は、前記下地材と該下地材に取り付けられる面材とを接続する前記金具を、前記下地材と前記面材との隙間に取り付ける際に用いられ、
前記アーム部は、前記隙間に配置される先端部を有し、
前記先端部には、前記対向面と反対側の面から前記対向面側に向かって傾斜するテーパ面が形成されることを特徴とする請求項2に記載の取付補助治具。
【請求項4】
前記ガイド部には、複数の前記通過孔が形成され、
前記切欠部は、複数の前記通過孔に連通するように形成され、あるいは前記通過孔ごとに連通するように複数形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の取付補助治具。
【請求項5】
前記取付補助治具は、前記治具本体部又は前記保持部に設けられ、前記貫通方向において前記対向面側と反対側に突出する突出部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の取付補助治具。
【請求項6】
建物の下地材に固定具によって金具を取り付ける際に用いられ、前記固定具の打ち込みを補助する取付補助治具を利用した、前記金具を前記下地材に取り付けるための取付方法であって、
前記取付補助治具に前記金具を保持させる保持工程と、
前記下地材の金具取付面と前記取付補助治具の対向面とを対向させて配置する配置工程と、
前記固定具を打ち込んで前記金具を前記下地材に固定する固定工程と、
前記固定工程で固定された前記金具から前記取付補助治具を取り外す取外工程と、を含み、
前記固定工程では、前記取付補助治具によって前記金具を保持した状態で、前記固定具を前記下地材及び前記金具に打ち込み、
前記取外工程では、前記金具取付面と前記対向面を対向させた状態で、打ち込まれた前記固定具の頭部を通過させるように、前記固定具の打ち込み方向と直交する方向に前記取付補助治具を移動させて、前記取付補助治具を前記金具から取り外すことを特徴とする金具の取付方法。
【請求項7】
前記取付補助治具は、前記下地材と該下地材に取り付けられる面材とを接続する前記金具を、前記下地材と前記面材との隙間に取り付ける際に用いられ、
前記保持工程では、前記取付補助治具に設けられ、前記打ち込み方向と直交する方向に沿って延びる一対のアーム部によって、前記金具を挟持し、
前記配置工程では、前記一対のアーム部を前記面材と前記下地材の間に差し込むことを特徴とする請求項6に記載の金具の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付補助治具及び金具の取付方法に係り、建物の下地材に固定具によって金具を取り付ける際に用いられ、固定具の打ち込みを補助する取付補助治具、及び取付補助治具を利用した金具を下地材に取り付けるための取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の外壁に用いられる仕上げ用の外装材として、サイディングボード(パネル材)が普及している。サイディングボードは、デザインのバリエーションが豊富であるという長所を有している。
建物の外壁パネルは、建物の胴縁等の下地材に複数のサイディングボードを留付金具によって取り付けることによって組み立てられる。具体的には、外壁パネルは、留付金具をサイディングボードの上下端に係止して、留付金具を下地材に固定することで、組み立てられる。留付金具は、サイディングボードと下地材の間に通気層を設けるように、サイディングボードに係止され、ビスや釘(固定具)が打ち込まれることによって下地材に固定される。
【0003】
特許文献1に記載のサイディングボードの留付金具は、サイディングボードの上下端に係止されるL字形の支承片を有する。留付金具によってサイディングボードを下地材に取り付けるには、サイディングボードの上端に形成された雄実を支承片に係止させ、サイディングボードの下端に形成された雌実を支承片に係止させる。
このように、留付金具をサイディングボードの上下端に係止させ、留付金具を下地材に固定することにより、サイディングボードを上下方向に並べて下地材に取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-257719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、下地材に取り付けられたサイディングボードに留付金具を係止させるときは、サイディングボードの端部に複数個の留付金具を係止させてから、下地材に留付金具をビス固定する作業が繰り返される。
そのため、サイディングボードに係止させた留付金具をビス固定せずに、誤って次のサイディングボードを係止させてしまうおそれがあった。留付金具を下地材にビス打ち固定せずに、次のサイディングボードを係止させてしまうと、留付金具が下地材から落下してサイディングボードが脱落する原因になってしまう。
【0006】
また、下地材へのビスの打ち込みが足りない状態で、次のサイディングボードを係止させてしまうと、下地材に対する留付金具の位置がずれてしまい、サイディングボードの取り付けが安定しないおそれがあった。また、ビスの打ち込みが足りないと、ビスが緩んでしまい留付金具が下地材から落下してしまうおそれもあった。
【0007】
また、手作業で留付金具を下地材に取り付ける場合、一方の手で留付金具をサイディングボードに係止させた状態で留付金具を保持しつつ、他方の手でビス打ちをする必要があり、作業効率や取付精度が低下するおそれがあった。また、作業者の手によって留付金具を保持するので、ビス打ち時に作業者の手を傷つけてしまうおそれもあった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、固定具の打ち込み忘れを抑制し、金具を下地材に取り付ける作業性を高めることができる取付補助治具及び金具の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の取付治具によれば、建物の下地材に固定具によって金具を取り付ける際に用いられ、前記固定具の打ち込みを補助する取付補助治具であって、前記下地材の金具取付面に対向する対向面を有する治具本体部と、前記治具本体部に設けられ、前記金具を着脱可能に保持する保持部と、を備え、前記治具本体部は、前記対向面において前記治具本体部を貫通するように形成され、前記固定具を通過させる通過孔と、前記対向面において前記通過孔に連通するように形成され、前記通過孔の貫通方向と直交し、前記金具を着脱する着脱方向に延びる切欠部と、を有し、前記取付補助治具は、前記保持部によって前記金具を保持し、前記下地材に前記金具を取り付けたときに、打ち込まれた前記固定具の頭部を前記切欠部に通過させることで前記金具から取り外されること、により解決される。
【0010】
上記構成により、下地材に留付金具をビスで固定するときに、下地材に対するビスの打ち込み忘れを抑制しつつ、留付金具を下地材に取り付ける作業性を高めることができる。
詳しく述べると、保持部によって留付金具を保持しているため、留付金具を下地材に固定していないと、取付補助治具を留付金具から取り外すことができない。また、留付金具を下地材に固定させるときに、ビスの打ち込みが完了していない場合には、通過孔とビスの頭部が干渉し、取付補助治具を留付金具から取り外すことができない。
したがって、ビスの打ち込みが完了した場合にのみ、取付補助治具を留付金具から取り外すことができる。
【0011】
このように、取付補助治具が留付金具に取り付いている状態を見れば、打ち込みが完了していないと判別することができるため、ビスの打ち込み忘れを抑制できる。
また、保持部によって留付金具を保持した状態でビスを打込むことができるので、作業効率及び安全性を向上させることができる。
【0012】
このとき、前記治具本体部は、前記金具取付面に配置されるベース部と、前記ベース部から前記着脱方向に沿って延び、前記金具と前記貫通方向において重なるガイド部と、を有し、前記通過孔は、前記ガイド部に形成され、前記保持部は、前記ベース部から前記着脱方向に沿って延び、前記ガイド部を間に挟む位置に設けられ、前記金具を挟持する一対のアーム部を有すると良い。
上記構成により、留付金具をアーム部によって挟持するため、留付金具を保持しつつガイド部の通過孔を介してビスを打ち込むことができる。そして、ビスの打ち込みが完了したときには、取付補助治具を留付金具から容易に取り外すことができる。
【0013】
このとき、前記取付補助治具は、前記下地材と該下地材に取り付けられる面材とを接続する前記金具を、前記下地材と前記面材との隙間に取り付ける際に用いられ、前記アーム部は、前記隙間に配置される先端部を有し、前記先端部には、前記対向面と反対側の面から前記対向面側に向かって傾斜するテーパ面が形成されると良い。
上記構成により、アーム部をサイディングボード(面材)と下地材との隙間に差し込むことで、サイディングボードと下地材との隙間に留付金具を配置させ易くなる。
サイディングボードと下地材の間には通気層を設ける必要がある。具体的には、床に寝かせた下地材の上にサイディングボードを載置して外壁パネルを組み立てる場合に、留付金具をサイディングボードと下地材の隙間に差し込む。そのため、サイディングボードを持ち上げて、留付金具をサイディングボードに係止させる必要がある。したがって、取付方向に延びるアーム部をサイディングボードと下地材の隙間に差し込むことで、サイディングボードを容易に持ち上げることができる。
【0014】
このとき、前記ガイド部には、複数の前記通過孔が形成され、前記切欠部は、複数の前記通過孔に連通するように形成され、あるいは前記通過孔ごとに連通するように複数形成されると良い。
上記構成により、ガイド部には通過孔が複数形成されているため、下地材における複数の位置で留付金具を取り付けることができる。したがって、任意の位置においてビスを精度良く打ち込むことができる。
【0015】
このとき、前記取付補助治具は、前記治具本体部又は前記保持部に設けられ、前記貫通方向において前記対向面側と反対側に突出する突出部を備えると良い。
上記構成により、作業者は突出部を把持することによって、正面からビスを打込むことができるので、作業性をより向上させることができる。
【0016】
また、前記課題は、本発明の金具の取付方法によれば、建物の下地材に固定具によって金具を取り付ける際に用いられ、前記固定具の打ち込みを補助する取付補助治具を利用した、前記金具を前記下地材に取り付けるための取付方法であって、前記取付補助治具に前記金具を保持させる保持工程と、前記下地材の金具取付面と前記取付補助治具の対向面とを対向させて配置する配置工程と、前記固定具を打ち込んで前記金具を前記下地材に固定する固定工程と、前記固定工程で固定された前記金具から前記取付補助治具を取り外す取外工程と、を含み、前記固定工程では、前記取付補助治具によって前記金具を保持した状態で、前記固定具を前記下地材及び前記金具に打ち込み、前記取外工程では、前記金具取付面と前記対向面を対向させた状態で、打ち込まれた前記固定具の頭部を通過させるように、前記固定具の打ち込み方向と直交する方向に前記取付補助治具を移動させて、前記取付補助治具を前記金具から取り外すこと、により解決される。
上記構成により、下地材に留付金具をビスで固定するときに、下地材に対するビスの打ち込み忘れを抑制しつつ、留付金具を下地材に取り付ける作業性を高めることができる。
詳しく述べると、留付金具を保持した状態で固定具を打ち込むため、留付金具を下地材に固定していないと、取付補助治具を留付金具から取り外すことができない。また、留付金具を下地材に固定させるときに、ビスの打ち込みが完了していない場合には、取付補助治具とビスの頭部が干渉し、取付補助治具を留付金具から取り外すことができない。
したがって、ビスの打ち込みが完了した場合にのみ、取付補助治具を留付金具から取り外すことができる。
【0017】
このとき、前記取付補助治具は、前記下地材と該下地材に取り付けられる面材とを接続する前記金具を、前記下地材と前記面材との隙間に取り付ける際に用いられ、前記保持工程では、前記取付補助治具に設けられ、前記打ち込み方向と直交する方向に沿って延びる一対のアーム部によって、前記金具を挟持し、前記配置工程では、前記一対のアーム部を前記面材と前記下地材の間に差し込むと良い。
上記構成により、アーム部をサイディングボードと下地材との隙間に差し込むことで、サイディングボードと下地材との間に留付金具を配置させ易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の取付補助治具及び金具の取付方法によれば、固定具の打ち込み忘れを抑制し、金具を下地材に取り付ける作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】取付補助治具によって留付金具を下地材に取り付けた状態を示す図である。
図2】外壁パネルの断面図であって、留付金具を介して複数のパネル材を下地材に取り付けた状態を示す図である。
図3】取付補助治具と留付金具の斜視図である。
図4】取付補助治具の上面図である。
図5】取付補助治具の正面図である。
図6】留付金具の取付方法を示す工程図である。
図7】保持工程を示す図である。
図8】配置工程を示す図である。
図9】固定工程を示す図である。
図10A】固定工程において、固定具が打込未了位置にある状態を示す図である。
図10B】固定工程において、固定具が打込完了位置にある状態を示す図である。
図11】取外工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図11に基づき、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)の取付補助治具1について説明する。以下の説明中、図1に記載の矢印で示すように、「上下方向」とは、床に寝かせた下地材Bの上にパネル材Pを載置して外壁パネルを組み立てる際の上下方向を意味する。「前後方向」とは、床に寝かせた外壁パネルの長さ方向、及び床に寝かせた下地材Bの長さ方向を意味する。「左右方向」とは、床に寝かせた外壁パネルの幅方向、及び床に寝かせた下地材Bの幅方向であって、「上下方向」及び「前後方向」それぞれと直交する方向である。
なお、建物に設置された際の外壁パネルの鉛直方向は、「前後方向」と一致し、建物に設置された際の外壁パネルを屋外から正面視した際の幅方向は、「左右方向」と一致する。
【0021】
<外壁パネル>
外壁パネルは、図1に示すように、外壁パネルの長さ方向(図1に示す前後方向)に並べられた複数のパネル材P(面材)と、外壁パネルの幅方向(図1に示す左右方向)に並べられた複数の下地材Bと、下地材Bに固定される複数の留付金具F(金具)と、から主に構成される。外壁パネルは、留付金具FがビスS(固定具)によって下地材Bに固定され、パネル材Pが留付金具Fに係止されることで組み立てられる。
外壁パネルは、下地材BにビスSによって留付金具Fを取り付ける際に用いられ、ビスSの打ち込みを補助する取付補助治具1を使用して組み立てられる。
【0022】
パネル材Pは、図1に示す左右方向に長尺な板状部材であって、例えばサイディングボードである。パネル材Pは、セメントを主な原料とし、さらに補強材である繊維質を混合して成型された窯業系の外壁パネル材である。パネル材Pにおいては、設置された際に屋外側に位置する外壁面(図1における上面)に、意匠性、及び耐候性を高めるための加工が施されている。
なお、パネル材Pは、金属、又は樹脂を主な原料とする金属系サイディングボード又は樹脂系サイディングボードであってもよい。
【0023】
複数のパネル材Pは、図1に示す前後方向(建物に設置された際の外壁パネルの鉛直方向)において互いに隣り合うように並べて配置され、「相じゃくり」と呼ばれる接合方法によって接合され、建物の外壁を構成する。
具体的には、パネル材Pの前端部には前方に突出する雄実Paが形成され、後端部には隣り合うパネル材Pの雄実Paと接続するように窪んだ雌実Pbが形成される。雄実Pa及び雌実Pbは、パネル材Pの略半分の厚み寸法を有するように成型されている。そして、雄実Pa及び雌実Pbは、パネル材Pの厚み方向に互いに重なり合うように接合されて配設される。これにより、外壁パネルが建物に設置された際に、鉛直方向に互いに隣り合うパネル材Pの間に目地(隙間)が形成されることがなく、意匠性及び防水性の向上を図ることができる。
【0024】
下地材Bは、図1に示す前後方向に長尺な施工部材であって、例えば建物の胴縁である。下地材Bは、左右方向において互いに離間するように並べて配置され、上面BAに複数の留付金具F及び複数のパネル材Pが取り付けられる。
留付金具Fは、パネル材Pを下地材Bに取り付けるための金具であって、下地材Bの上面BA(金具取付面)に取り付けられる。
【0025】
外壁パネルは、図1に示すように、先に下地材Bに取り付けられたパネル材P(第一サイディングP1)の第一雄実P1aに留付金具Fを係止させて、留付金具FをビスSで下地材Bに固定する。そして、新たに取り付けるパネル材P(第二サイディングP2)の第二雌実P2bを留付金具Fに係止させる作業が繰り返されることで、組み立てられる。
【0026】
図2は外壁パネルの断面図であって、第一サイディングP1の第一雄実P1aに留付金具Fが係止され、留付金具FがビスSで下地材Bに固定され、第二サイディングP2の第二雌実P2bが留付金具Fに係止された状態を示す。
留付金具Fは、図2図3に示すように、下地材Bに固定される固定部F1と、パネル材Pに係止される係止部F2と、係止部F2よりも固定部F1側に形成される固定側リブF3と、固定部F1とは反対側に形成される挿入側リブF4と、から主に構成される。
留付金具Fは、パネル材Pと下地材Bの間に通気層V(隙間)を設けるように、パネル材Pを係止した状態で、下地材Bに固定される。
【0027】
固定部F1には、図2に示すように、ビスSの胴部S2を貫通させるための固定孔F1aが形成される。下地材Bの上面BAに固定部F1が配置され、固定孔F1aに胴部S2が貫通されることで、留付金具Fが下地材Bに固定される。
つまり、ビスSの頭部S1が下地材Bから露出し、胴部S2が下地材Bに埋没した位置まで挿入されることで、留付金具Fの固定が完了する。
【0028】
係止部F2は、図2に示すように、第一サイディングP1の第一雄実P1aに係止される雄実係止片F2aと、第二サイディングP2の第二雌実P2bに係止される雌実係止片F2bと、を有する。雄実係止片F2a及び雌実係止片F2bは、第二雌実P2bによって上方が覆われる。
このように、外壁パネルが建物に設置された際に、留付金具Fは、第二雌実P2bによって係止部F2が覆われることで、鉛直方向に互いに隣り合うパネル材Pの間から留付金具Fを隠すことができる。そのため、意匠性及び防水性の向上を図ることができる。
【0029】
固定側リブF3及び挿入側リブF4は、図2図3に示すように、パネル材Pと下地材Bの間に通気層Vを設けるためのリブである。雄実係止片F2a及び挿入側リブF4における上側の屈曲部分によって、第二サイディングP2が支持され、雌実係止片F2b及び固定側リブF3における上側の屈曲部分によって第一サイディングP1が支持される。
【0030】
<取付補助治具>
取付補助治具1は、図1に示すように、建物の下地材BにビスSによって留付金具Fを取り付ける際に用いられ、ビスSの打ち込みを補助するものである。
具体的には、取付補助治具1は、留付金具Fを下地材Bの上面BAに沿って第一サイディングP1の第一雄実P1aに係止させる。そして、留付金具Fを第一サイディングP1に係止させた状態で、ビスSを貫通方向(図1に示す上下方向)にガイドし、下地材Bに対するビスSの打ち込みを補助する。
【0031】
取付補助治具1は、下地材Bと、下地材Bに取り付けられるパネル材Pとを接続する留付金具Fを、下地材Bとパネル材Pとの隙間に差し込んで取り付ける。
取付補助治具1は、留付金具Fを着脱する着脱方向(図1に示す前後方向)に移動されて下地材Bに対して留付金具Fを取り付ける。具体的には、取付補助治具1は、留付金具Fが取り付けられた状態で、図1に示す後方向に向かって移動されることで、下地材Bとパネル材Pとの隙間に留付金具Fを差し込む。そして、取付補助治具1は、図1に示す前方向に向かって移動されることで、下地材Bに固定された留付金具Fから取り外される。
【0032】
取付補助治具1は、留付金具Fを下地材Bに取り付けたときに、ビスSの打ち込みが完了していない場合には、留付金具Fから取り外すことができないように構成される。すなわち、取付補助治具1は、ビスSの打ち込みが完了した場合にのみ、留付金具Fから取り外すことができる。
このように、取付補助治具1が留付金具Fに取り付いている状態を見れば、打ち込みが完了していないと判断することができるため、ビスSの打ち込み忘れを抑制できる。
【0033】
取付補助治具1は、例えば樹脂製であって、留付金具Fの形状に対応するように一体成型される。取付補助治具1は、外壁パネル(パネル材P、下地材B、留付金具F)に対する着脱状態を容易に判別可能にするため、外壁パネルとは異なる色で形成されると良い。外壁パネルに対して目立つ色で形成することで、取付補助治具1が留付金具Fに取り付いているかを視認し易くし、打ち込みが完了していないことを容易に判別できる。
【0034】
取付補助治具1は、図1に示すように、下地材Bの上面BA(金具取付面)に対向するように治具本体部10の下面(対向面10A)が配置される。そして、取付補助治具1は、上面BAと対向面10Aが対向した状態で、下地材Bに沿って着脱方向における後方向に移動されることで、下地材Bとパネル材Pとの隙間に留付金具Fを差し込む。
また、取付補助治具1は、下地材Bの上面BAと対向面10Aが対向した状態で、着脱方向における前方向に移動されることで、留付金具Fから取り外される。
【0035】
取付補助治具1は、図3図5に示すように、下地材Bの上面BAに対向する対向面10Aを有する治具本体部10と、留付金具Fを着脱可能に保持する保持部20と、上下方向(貫通方向)において対向面10A側と反対側に突出する突出部30と、を備える。
【0036】
治具本体部10は、上下方向に厚みを有する板状部材であって、図3図5に示すように、対向面10Aにおいて治具本体部10を貫通するように形成される複数の通過孔11と、対向面10Aにおいて通過孔11に連通するように形成される切欠部12と、を有する。切欠部12は、複数の通過孔11の全てに連通するように治具本体部10の対向面10Aに形成される。
なお、本実施形態では、切欠部12は、複数の通過孔11の全てに連通するように形成されるが、通過孔11ごとに連通するように複数の切欠部12が形成されても良い。
【0037】
通過孔11は、上下方向に貫通するように治具本体部10の対向面10Aに形成され、ビスSを通過させる。つまり、ビスSは、通過孔11によって上下方向にガイドされる。
切欠部12は、通過孔11の通過孔下端部11bに連通するように形成され、通過孔11の貫通方向と直交する着脱方向に延びる。具体的には、切欠部12は、通過孔下端部11bから後方へ向かって延び、治具本体部10の後端面10Bが開放するように、治具本体部10の対向面10Aに形成される。
【0038】
取付補助治具1は、留付金具Fが取り付けられるときに、保持部20によって留付金具Fを保持する。そして、取付補助治具1は、下地材Bに留付金具Fを取り付けたときに、打ち込まれたビスSの頭部S1を切欠部12に通過させることで、留付金具Fから取り外される。
【0039】
具体的には、取付補助治具1は、保持部20によって留付金具Fを保持した状態で、下地材Bの上面BAと取付補助治具1の対向面10Aが対向するように下地材Bに配置される。そして、取付補助治具1は、上面BAと対向面10Aが対向した状態で、後方向に移動されて留付金具Fを取り付ける。
留付金具Fが下地材Bに固定された後、取付補助治具1は、下地材Bの上面BAと取付補助治具1の対向面10Aが対向した状態で、前方向に移動される。そして、保持部20による留付金具Fの保持が解除されて、留付金具Fから取り外される。
【0040】
治具本体部10は、図3図5に示すように、上下方向に厚みを有する板状部材であって、下地材Bの上面BA(金具取付面)に配置されるベース部10aと、ベース部10aから着脱方向に沿って延び、留付金具Fと貫通方向において重なるガイド部10bと、から構成される。
ベース部10aには、左右方向における両端部から後方に向かって延びる保持部20と、前方端部から上方に向かって延びる突出部30と、が設けられる。
ガイド部10bには、複数の通過孔11が形成される。つまり、取付補助治具1は、留付金具Fの固定孔F1aと重なる通過孔11によってビスSをガイドし、下地材Bに対するビスSの打ち込みを補助する。
【0041】
保持部20は、図3図5に示すように、ベース部10aから着脱方向に沿って延び、ガイド部10bを間に挟む位置に設けられ、留付金具Fを挟持する一対のアーム部21を有する。
アーム部21は、ベース部10aの左右方向における両端部に設けられる基端部21aと、基端部21aから後方向へ延びる中間部21bと、中間部21bから後方向へ延びる先端部21cと、を有する。
【0042】
基端部21aは、留付金具Fの固定側リブF3を挟持する。基端部21aとガイド部10bの間にはスリット20aが設けられ、スリット20aに固定側リブF3が挿入される。
中間部21bは、留付金具Fの挿入側リブF4を挟持する。基端部21aと中間部21bによって、留付金具Fを強固に保持することができる。
先端部21cは、留付金具Fよりも後方向に延出した部分であり、パネル材Pと下地材Bの間に配置される。先端部21cには、対向面10Aと反対側の面から対向面10A側に向かって下方傾斜するテーパ面21Cが形成される。先端部21cにテーパ面21Cが形成されることで、パネル材Pと下地材Bの間に取付補助治具1を容易に差し込むことができる。
【0043】
突出部30は、図3図5に示すように、作業者によって把持される部分であって、ベース部10aの前方端部に連接される。突出部30は、作業者が先端部21cをパネル材Pと下地材Bの間に差し込む際に把持し易いように、ベース部10aから上方に向かって延びている。
なお、本実施形態では、突出部30が治具本体部10のベース部10aに設けられているが、これに限らない。突出部30は、治具本体部10のアーム部21や保持部20に設けられていても良い。
【0044】
<金具の取付方法>
次に、取付補助治具1を用いた留付金具Fの取付方法について、図6図11に基づいて説明する。
当該方法は、図6に示すように、取付補助治具1に留付金具Fを保持させる「保持工程(S1)」と、下地材Bの上面BAと取付補助治具1の対向面10Aとを対向させて配置する「配置工程(S2)」と、ビスSを打ち込んで留付金具Fを下地材Bに固定する「固定工程(S3)」と、固定工程で固定された留付金具Fから取付補助治具1を取り外す「取外工程(S4)」と、を少なくとも含むものである。以下、詳しく説明する。
なお、留付金具Fの取付作業にあたって、その他の工程については、説明を省略する。
【0045】
「保持工程(S1)」では、作業者は、取付補助治具1に設けられ、ビスSの打ち込み方向と直交する方向に沿って延びる一対のアーム部21によって、留付金具Fを挟持させる。
具体的には、図7に示すように、作業者は、ガイド部10bと固定部F1を対向させるように、基端部21a及び中間部21bによって固定側リブF3及び挿入側リブF4を挟持させる。留付金具Fが取付補助治具1に取り付けられたとき、通過孔11と固定孔F1aは、対向した状態となる。
【0046】
「配置工程(S2)」では、作業者は、一対のアーム部21をパネル材Pと下地材Bの間に配置させる。
具体的には、図8に示すように、作業者は、突出部30を把持し、取付補助治具1を矢印A1の方向(後方向)に移動させ、先端部21cをパネル材Pと下地材Bの間に挿入させる。このとき、留付金具Fの雄実係止片F2aは、第一サイディングP1の第一雄実P1aに係止された状態となる。
【0047】
「固定工程(S3)」では、作業者は、取付補助治具1によって留付金具Fを保持した状態で、ビスSを下地材B及び留付金具Fに打ち込む。具体的には、図9に示すように、作業者は、ビスSを通過孔上端部11aから挿入し、通過孔11を通過させて留付金具Fの固定孔F1a及び下地材Bに打ち込む。
【0048】
図10Aは、ビスSの頭部S1及び胴部S2が下地材Bから露出した打込未了位置にある状態を示す図である。打込未了位置において、矢印A2の方向にビスSを打ち込むとき、ビスSが通過孔11によってガイドされることで、精度良く下地材Bに打ち込むことができる。
また、打ち込みが完了していない打込未了位置では、通過孔11が頭部S1と当接することで、取付補助治具1の前後方向への移動が規制される。そのため、打ち込みが完了していない場合には、通過孔11とビスSの頭部S1が干渉し、取付補助治具1を留付金具Fから取り外すことができない。したがって、ビスSの打ち込みが完了した場合にのみ、取付補助治具1を留付金具Fから取り外すことができるので、ビスSの打ち込み忘れを抑制できる。
【0049】
図10Bは、ビスSの頭部S1が下地材Bから露出し、かつ、ビスSの胴部S2が下地材Bに埋没した打込完了位置にある状態を示す図である。打込完了位置では、ビスSの頭部S1が切欠部12を通過することで、矢印A3の方向(前方向)への移動が可能となる。
具体的には、切欠部12の高さHは、ビスSの頭部S1が露出する高さh(頭部S1の高さ及び固定部F1の厚さ)よりも大きく形成される。したがって、ビスSの打ち込みが完了した場合(つまり切欠部12の高さHよりも頭部S1が露出する高さhが小さくなったとき)のみ、取付補助治具1を留付金具Fから取り外すことができる。
【0050】
「取外工程(S4)」では、作業者は、下地材Bの上面BAと取付補助治具1の対向面10Aを対向させた状態で、打ち込まれたビスSの頭部S1を通過させるように、ビスSの打ち込み方向と直交する方向に取付補助治具1を移動する。そして、取付補助治具1を留付金具Fから取り外す。
具体的には、図11に示すように、作業者は、突出部30を把持し、取付補助治具1を矢印A4の方向(前方向)に移動させ、打ち込まれたビスSの頭部S1を切欠部12に通過させることで、留付金具Fから取付補助治具1を取り外す。
【0051】
このように、作業者は、ビスSの打ち込みを補助する取付補助治具1によって、下地材Bに留付金具Fを取り付ける。そして、作業者は、留付金具Fにパネル材Pを係止させて、下地材Bの上面BAにパネル材Pを取り付ける作業を繰り返すことで、外壁パネルを組み立てる。
こうすることで、取付補助治具1が留付金具Fに取り付いている状態を見れば、打ち込みが完了していないと判別することができるため、ビスSの打ち込み忘れを抑制できる。
また、留付金具Fを保持した状態でビスSを打込むことができるので、作業効率及び安全性を向上させることができる。
【0052】
上記取付補助治具1を用いた留付金具Fの取付方法であれば、下地材Bに留付金具FをビスSで固定するときに、下地材Bに対するビスSの打ち込み忘れを抑制しつつ、留付金具Fを下地材Bに取り付ける作業性を高めることができる。
【0053】
<その他の実施形態>
本発明の取付補助治具及び金具の取付方法は、上記の実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、外壁パネルを組み立てる際に、留付金具Fを下地材Bに取り付ける場合を例示して説明を行った。しかし外壁パネルに限らず、建物内部の施工部材であっても良い。また、床に寝かせた下地材Bの上にパネル材Pを載置して外壁パネルを組み立てる場合に限らず、建物に設置された状態の下地材Bにパネル材Pを取り付けて外壁パネルを組み立てる場合にも好適である。
【0054】
上記実施形態では、主として本発明に係る取付補助治具及び金具の取付方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 取付補助治具
10 治具本体部
10A 取付面
10B 後端面
10a ベース部
10b ガイド部
11 通過孔
11a 通過孔上端部
11b 通過孔下端部
12 切欠部
20 保持部
20a スリット
21 アーム部
21a 基端部
21b 中間部
21c 先端部
21C テーパ面
30 突出部
P パネル材(面材)
Pa 雄実
Pb 雌実
P1 第一サイディング
P1a 第一雄実
P2 第二サイディング
P2b 第二雌実
F 留付金具(金具)
F1 固定部
F1a 固定孔
F2 係止部
F2a 雄実係止片
F2b 雌実係止片
F3 固定側リブ
F4 挿入側リブ
B 下地材
BA 上面(金具取付面)
S ビス(固定具)
S1 頭部
S2 胴部
V 通気層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11