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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010420
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
A47J37/06 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111748
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上村 聡子
(72)【発明者】
【氏名】羽山 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】朝生 祐司
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA03
4B040AA08
4B040AB02
4B040AD04
4B040AE13
4B040CA05
4B040LA04
4B040LA12
4B040LA20
(57)【要約】
【課題】 本発明は、適正調理仕上がり温度の幅が狭い調理メニューでも適切に自動調理することができる加熱長期を提供することを目的とする。
【解決手段】 調理容器を収納したグリル庫と、前記グリル庫内を加熱するヒータと、前記調理容器の温度である容器温度を検出する容器温度センサと、前記グリル庫内の温度である庫内温度を検出する庫内温度センサと、前記容器温度と前記庫内温度に基づいて前記ヒータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記庫内温度の初期温度が所定の基準温度より低ければ、前記ヒータの火力を第1火力に設定し、前記庫内温度の初期温度が所定の基準温度より高ければ、前記ヒータの火力を前記第1火力より小さい第2火力に設定する加熱調理器。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を収納したグリル庫と、
前記グリル庫内を加熱するヒータと、
前記調理容器の温度である容器温度を検出する容器温度センサと、
前記グリル庫内の温度である庫内温度を検出する庫内温度センサと、
前記容器温度と前記庫内温度に基づいて前記ヒータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記庫内温度の初期温度が所定の基準温度より低ければ、前記ヒータの火力を第1火力に設定し、
前記庫内温度の初期温度が所定の基準温度より高ければ、前記ヒータの火力を前記第1火力より小さい第2火力に設定することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1の加熱調理器において、
前記制御装置は、
前記ヒータに前記第1火力または前記第2火力を設定した後に、前記容器温度センサが検出した時系列の前記容器温度に基づいて、将来の容器温度を推定する容器温度推定式を算出し、
前記容器温度センサが検出した容器温度が、前記容器温度推定式を用いて推定した同時刻の容器温度よりも低いときに、前記ヒータの火力を前記第1火力より大きい第3火力に設定することを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2の加熱調理器において、
前記制御装置は、
前記ヒータに前記第1火力または前記第2火力を設定した後に、前記庫内温度センサが検出した時系列の前記庫内温度に基づいて、将来の庫内温度を推定する庫内温度推定式を算出し、
前記容器温度センサが検出した容器温度が所定の恒温工程移行温度より高く、かつ、
前記庫内温度センサが検出した庫内温度が、前記庫内温度推定式を用いて推定した同時刻の庫内温度よりも低いときに、昇温工程を終了して恒温工程に移行することを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の加熱調理器において、
前記調理容器には、茶碗蒸しの素材、または、焼プリンの素材が収納されていることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶碗蒸しや焼プリンに代表される、適正調理仕上がり温度の幅が狭いメニューを自動調理する、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサの検出温度に基づいて火力を制御する加熱調理器として、特許文献1のグリルが知られている。例えば、同文献の段落0078には「運転制御部Wは、・・・、容器温度検出センサ11Aにて検出される容器温度Tsが設定火力減少温度(例えば、220℃)を超えると、上バーナ7Uを弱火に切替え、且つ、設定消火温度(例えば、230℃)を超えると、上バーナ7Uの燃焼を停止させる消火処理を実行し、・・・警報処理を実行する」と記載されており、段落0079には「運転制御部Wは、・・・、庫内温度検出センサ11Bにて検出される庫内温度Tnが設定火力減少温度(例えば、210℃)を超えると、上バーナ7Uを弱火に切替え、且つ、設定消火温度(例えば、220℃)を超えると、上バーナ7Uの燃焼を停止させる消火処理を実行し、・・・警報処理を実行する」と記載されている。
【0003】
このように、特許文献1には、容器温度検出センサ11Aが検出した容器温度Ts、または、庫内温度検出センサ11Bが検出した庫内温度Tnを火力制御に利用するグリルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-70963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の段落0059には、「「オートメニュー」の調理メニューとして、「魚:姿焼き」、「魚:切り身」、「鶏もも焼き」、「ホイル焼き」、「トースト」、及び、「ごはん」の調理メニューに順次切換えるように構成されている。」の記載がある。この記載から明らかなように、同文献の自動調理は、適正調理仕上がり温度が比較的高い魚や鶏のような食材を対象とするものに限定されている。そのため、同文献の要約書、図7のフローチャート、図8から図10のグラフ等のように、容器温度Tsだけを火力制御に利用し、庫内温度Tnを利用しなくても、各メニューの仕上がりには特段の問題がなかった。
【0006】
しかしながら、適正調理仕上がり温度が比較的低く、かつ、適切な調理仕上がり温度の幅が狭いメニューの自動調理に特許文献1の技術を利用すると、食材の初期温度や室温の高低によっては、調理中の食材温度が適正調理仕上がり温度に対して高すぎたり低すぎたりすることで異常な仕上がりになる可能性があった。具体的には、適正調理仕上がり温度が75~90℃である茶碗蒸しや焼プリンを特許文献1の技術により自動調理する場合、食材初期温度が冷凍温度や冷蔵温度であれば、調理仕上がり温度が適正仕上がり温度の下限である75℃に到達せず、卵液が十分に凝固しなかったり、食材初期温度が常温以上であれば、調理仕上がり温度が適正仕上がり温度の上限である90℃を超え、すだちが発生したりする虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、適正調理仕上がり温度の幅が狭い調理メニューでも適切に自動調理することができる加熱長期を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の加熱調理器は、調理容器を収納したグリル庫と、前記グリル庫内を加熱するヒータと、前記調理容器の温度である容器温度を検出する容器温度センサと、前記グリル庫内の温度である庫内温度を検出する庫内温度センサと、前記容器温度と前記庫内温度に基づいて前記ヒータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記庫内温度の初期温度が所定の基準温度より低ければ、前記ヒータの火力を第1火力に設定し、前記庫内温度の初期温度が所定の基準温度より高ければ、前記ヒータの火力を前記第1火力より小さい第2火力に設定する加熱調理器とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱調理器によれば、適正調理仕上がり温度の幅が狭い調理メニューであっても適切に加熱調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施例の加熱調理器をシステムキッチンに収納した状態の斜視図。
図2】一実施例のグリルの断面図。
図3】比較例の加熱調理器による自動調理時の容器温度変化を示すグラフ。
図4】一実施例の加熱調理器による自動調理時の容器温度変化を示すグラフ。
図5】一実施例の加熱調理器による自動調理制御のフローチャート。
図6】容器温度の推定式の算出手順を説明するグラフ。
図7】庫内温度の推定式の算出手順を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る加熱調理器100を、図1から図7を用いて説明する。
【0012】
<加熱調理器100の概略構造>
図1は、本実施例の加熱調理器100の斜視図であり、システムキッチンの上面開口から本体を落とし込んで設置したビルトイン型の調理器を例示している。なお、本実施例の加熱調理器100は、ビルトイン型でなく据置型の調理器であっても良い。
【0013】
図1に示すように、本実施例の加熱調理器100は、上面を耐熱ガラス製のプレート1で覆った誘導加熱調理器である。プレート1の上面には、鍋の載置位置を示す鍋載置部1aを3箇所に表示しており、鍋載置部1aに載置した金属鍋をプレート1の下方に配置した加熱コイルで誘導加熱する。また、プレート1の手前には、鍋載置部1aに載置した金属鍋を誘導加熱する際に操作する上面操作表示部1bが設けられている。さらに、プレート1の右奥には外気を本体内に吸気するための吸気口1cを設けており、プレート1の左奥には本体内の熱を排気するための排気口1dを設けている。
【0014】
また、システムキッチンの前面開口からは、グリル2と、主にグリル2を操作するための前面操作部3を露出させている。グリル2の前面開口は、引き出し可能なグリルドア2aで塞がれており、このグリルドア2aにはドア開閉時に調理者が把持するためのハンドル2bが設けられている。
【0015】
なお、図1に例示する加熱調理器100は誘導加熱調理器であるが、本発明の加熱調理器100は五徳に載置した鍋をガスバーナーで加熱するガス調理器であっても良いし、グリル2を備える限り、上面に載置した鍋を加熱する機能を持たない調理器であっても良い。
【0016】
<グリル2の詳細構造>
図2は、本実施例のグリル2の断面図である。図示するように、グリルドア2aの後方には、前面が開放された略箱状のグリル庫21が配置されており、調理容器4を内蔵できるようになっている。グリル庫21の後部底面には、調理容器4の底面と接触して調理容器4の温度(容器温度Ts)を検出する容器温度センサ22が設けられており、グリル庫21の後部には、グリル庫内の温度(庫内温度Tn)を検出する庫内温度センサ23が設けられている。また、グリル庫21の上下には、グリル庫内を加熱する上ヒータ24と下ヒータ25が設置されている。さらに、上ヒータ24と下ヒータ25の火力(通電率)を制御するグリル制御装置26(図示せず)も設けられている。
【0017】
本実施例のグリル2は、調理者が前面操作部3で設定した調理メニューに応じて上ヒータ24と下ヒータ25の火力を制御し、調理容器4内の食材を自動調理するオートメニュー機能を搭載している。そのため、グリル制御装置26は、前面操作部3で設定された調理メニューと、容器温度センサ22と庫内温度センサ23の検出温度(容器温度Ts、庫内温度Tn)に基づいて、上ヒータ24と下ヒータ25の火力を制御する。この際、グリル制御装置26は、食材の初期温度や室温の高低の影響を受けぬように、オートメニュー機能による自動調理制御を実行する。
【0018】
<比較例の自動調理制御>
ここで、本実施例の自動調理制御の説明に先立ち、適正調理仕上がり温度の幅が狭いメニュー(茶碗蒸し、焼プリン等)を自動調理する際の昇温工程制御に容器温度Tsのみを利用する、換言すれば、昇温工程制御に庫内温度Tnを利用しない、比較例の自動調理制御を説明する。
【0019】
図3は、比較例の加熱調理器101による自動調理時の容器温度変化を示すグラフである。比較例の加熱調理器101では、容器温度センサ22で検出した容器温度Tsが初期温度と所定値(例えば20℃)の和である温度に達したタイミングまでを昇温工程とし、また、同タイミング以降を恒温工程として、上ヒータ24と下ヒータ25の火力を制御する。なお、恒温工程は、ヒータのオンオフを繰り返す等して容器温度Tsを略一定に維持する従来同等の調理工程であり、メニューに応じた既定時間だけ継続されるものとする。
【0020】
図3の自動調理制御によれば、容器温度Tsの初期温度が30℃であれば、恒温工程中の容器温度Tsを適正仕上がり温度内に維持できるが、適正仕上がり温度上限に近い容器温度Tsとなるため、調理容器4内の茶碗蒸しや焼プリンは、ややす立ちのある仕上がりになる可能性がある。一方、容器温度Tsの初期温度が5℃であれば、恒温工程中の容器温度Tsが適正仕上がり温度下限に達しないため、卵液が十分に凝固しない可能性がある。このように、比較例の自動調理制御では、茶碗蒸しや焼プリンの仕上がり品質を十分に保証できない可能性が高かった。
【0021】
<本実施例の自動調理制御>
これに対し、図4は、本実施例の加熱調理器100による自動調理時の容器温度変化を示すグラフである。本実施例の加熱調理器100は、昇温工程の火力制御に容器温度Tsと庫内温度Tnの双方を利用することで、恒温工程開始時の容器温度Tsをその初期温度によらず略等しくできるものである。その結果、本実施例では、恒温工程中の容器温度Tsの変動を適正仕上がり温度内の略中央の温度域に維持できるため、茶碗蒸しや焼プリンの仕上がり品質を向上させることができる。以下、昇温工程中の火力制御を中心に、本実施例の自動調理制御の詳細を説明する。
【0022】
図5は、調理者が、ハンドル2bを把持してグリルドア2aを引き出し、茶碗蒸しの素材を入れた器を調理容器4内に配置し、グリルドア2aを閉じ、前面操作部3を操作して茶碗蒸しの自動調理開始の指令を入力した後に実行される、本実施例の自動調理制御フローチャートである。なお、図4図5の関係を概説すれば、図4の昇温工程は図5のステップS1からステップS7に相当し、図4の恒温工程は図5のステップS8に相当する。
【0023】
まず、ステップS1では、グリル制御装置26は、庫内温度センサ23を用いて調理開始時の庫内温度Tnを検出する。そして、庫内温度Tnの初期温度が所定の基準温度Tc(例えば、20℃)より低ければ(例えば、食材が冷蔵や冷凍である場合)ステップS2aに進み、そうでなければ(例えば、食材が常温である場合)ステップS2bに進む。
【0024】
次に、ステップS2aでは、グリル制御装置26は、上ヒータ24と下ヒータ25の通電率を90%に設定してグリル庫内を加熱する。
【0025】
ステップS3aでは、グリル制御装置26は、90%のヒータ通電を継続した場合の所定時間後の容器温度Tsを推定するための式1と、庫内温度Tnを推定するための式2を算出する。
【0026】
Ts’=at+b ・・・ (式1)
Tn’=ct+d ・・・ (式2)
なお、式1、式2において、Ts’は容器温度Tsの推定値、Tn’は庫内温度Tnの推定値、tは加熱開始からの経過時間、a、b、c、dは定数である。
【0027】
ここで、図6を用いて、式1の算出手順を説明する。同図において、横軸は時間t、縦軸は容器温度Tsである。本実施例では、所定時間Δt(例えば、30秒)毎に容器温度Tsを検出するので、例えば、加熱開始から30秒後の時刻tに容器温度Tsを検出し、加熱開始から60秒後の時刻tに容器温度Tsを検出する。その後、グリル制御装置26は、黒丸で示した容器温度Tsと容器温度Tsを結ぶ直線の式として式1を算出する。なお、図6中の白丸は、グリル制御装置26が、式1を用いて推定した任意時間経過後の容器温度Ts’であり、後述するステップS4a、S4bで利用される。
【0028】
同様に、図7を用いて、式2の算出手順を説明する。同図において、横軸は時間t、縦軸は庫内温度Tnである。本実施例では、所定時間Δt(例えば、30秒)毎に庫内温度Tnを検出するので、例えば、加熱開始から30秒後の時刻tに庫内温度Tnを検出し、加熱開始から60秒後の時刻tに庫内温度Tnを検出する。その後、グリル制御装置26は、黒丸で示した庫内温度Tnと庫内温度Tnを結ぶ直線の式として式2を算出する。なお、図7中の白丸は、グリル制御装置26が、式2を用いて推定した任意時間経過後の庫内温度Tn’であり、後述するステップS7で利用される。
【0029】
次に、ステップS4aでは、グリル制御装置26は、容器温度センサ22で検出した容器温度Tsと、式1を用いて推定した同時刻の容器温度Ts’を比較し、Ts<Ts’を満たすか判断する。そして、条件を満たす場合はステップS5へ進み、条件を満たさない場合は所定時間Δtの経過後にステップS4aを再度実行する。図6を参照しながら具体的に説明すれば、例えば、時刻tに検出した容器温度Tsが、推定した容器温度Ts’より低い容器温度Ts3-であった場合はステップS5に進み、推定した容器温度Ts’より高い容器温度Ts3+であった場合は次の時刻tのタイミングでステップS4aを再度実行する。なお、図6から明らかなように、推定される容器温度Ts’は経過時間に比例して単調増加するため、検出される容器温度Tsはいずれ容器温度Ts’より小さくなり(ステップS4aの条件を満たし)、ステップS5に進むことになる。
【0030】
一方、ステップS1の条件を満たさなかった場合(例えば、食材が常温である場合)には、ステップS2b~S4bが実施されるが、これらの処理は、ヒータの通電率を80%に設定することで庫内温度の上昇速度を相対的に抑制すること以外、ステップS2a~S4aの処理と同等であるので、重複する詳細説明は省略することとする。なお、ステップS2a、S2bに示した通電率は一例であり、ステップS2aの設定通電率がステップS2bの設定通電率より高い限り、各ステップの設定通電率の値を適宜変更しても良い。
【0031】
ステップS5では、グリル制御装置26は、上ヒータ24と下ヒータ25の通電率を100%にしてグリル庫内を加熱する。
【0032】
ステップS6では、グリル制御装置26は、容器温度センサ22で検出した容器温度Tsと、既定の恒温工程移行温度Taを比較し、Ta<Tsを満たすか判断する。そして、条件を満たす場合はステップS7へ進み、条件を満たさない場合は所定時間Δtの経過後にステップS6を再度実行する。
【0033】
ステップS7では、グリル制御装置26は、庫内温度センサ23で検出した庫内温度Tnと、式2を用いて推定した庫内温度Tn’を比較し、Tn<Tn’を満たすか判断する。そして、条件を満たす場合はステップS8へ進み、条件を満たさない場合は所定時間Δtの経過後にステップS7を再度実行する。図7を参照しながら具体的に説明すれば、例えば、時刻tに検出した庫内温度Tsが、推定した庫内温度Tn’より低い庫内温度Tn6-であった場合はステップS8に進み、推定した庫内温度Tn’より高い庫内温度Tn6+であった場合は次の時刻tのタイミングでステップS7を再度実行する。ステップS6の後でステップS7の工程を入れることで、下ヒータに近い容器温度Tsと庫内温度Tnの温度差分を補正して食材のムラを含む仕上がりを安定させることができる。なお、図7から明らかなように、推定される庫内温度Tn’は経過時間に比例して単調増加するため、検出される庫内温度Tnはいずれ庫内温度Tn’より小さくなり(ステップS7の条件を満たし)、ステップS8に進むことになる。
【0034】
ステップS8では、グリル制御装置26は、恒温工程用に用意された所定のヒータ制御により上ヒータ24と下ヒータ25の通電を制御して、恒温工程中の容器温度Tsの変動を適正仕上がり温度内の略中央の温度域に維持する。なお、恒温工程のヒータ制御は従来同等で良いので、本実施例では本ステップの詳細説明を省略することとする。
【0035】
以上で説明した図5のフローチャートによれば、図4に例示したように、容器温度Tsの初期温度によらず昇温工程終了時(恒温工程開始時)の容器温度Tsを略等しくできるため、茶碗蒸しや焼プリンのように適正仕上がり温度帯の狭いメニューを自動調理する場合の仕上がり品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0036】
100、101 加熱調理器
1 プレート
1a 鍋載置部
1b 上面操作表示部
1c 吸気口
1d 排気口
2 グリル
2a グリルドア
2b ハンドル
21 グリル庫
22 容器温度センサ
23 庫内温度センサ
24 上ヒータ
25 下ヒータ
26 グリル制御装置
3 前面操作部
4 調理容器
Ts 容器温度の実測値
Ts’ 容器温度の推定値
Tn 庫内温度の実測値
Tn’ 庫内温度の推定値
Tc 基準温度
Ta 恒温工程移行温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7