(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104200
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01J 23/89 20060101AFI20240726BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240726BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B01J23/89 A ZAB
B01D53/86 222
B01D53/86 245
B01D53/86 280
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008314
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 圭
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
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4G169FB14
4G169FB30
4G169FC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硫黄化合物スメルの発生を低減し、NOx浄化性能とNH
3浄化性能に優れる排ガス浄化用触媒及び装置を提供する。
【解決手段】基材11と、基材に設けた触媒層21を少なくとも備え、触媒層は、基材上に設けた第1触媒層L1、その上に設けられた第2触媒層L2、その上に設けられた第3触媒層L3を有する第1積層構造、並びに基材上に設けられた第2触媒層、その上に設けられた第1触媒層、その上に設けられた第3触媒層を有する第2積層構造より選択される積層構造を有し、第1触媒層は、母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第1複合触媒粒子を少なくとも含み、第2触媒層は、Niと第2母材粒子とを少なくとも含み、白金族元素を実質的に含まず、第2母材粒子はAl
2O
3含有割合が50質量%以下の酸化物粒子であり、第3触媒層は、母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第3複合触媒粒子を少なくとも含む、排ガス浄化用触媒。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に設けられた触媒層とを少なくとも備え、
前記触媒層は、前記基材上に設けられた第1触媒層、前記第1触媒層上に設けられた第2触媒層、及び前記第2触媒層上に設けられた第3触媒層を有する第1積層構造、並びに、前記基材上に設けられた第2触媒層、前記第2触媒層上に設けられた第1触媒層、及び前記第1触媒層上に設けられた第3触媒層を有する第2積層構造よりなる群から選択される積層構造を有し、
前記第1触媒層は、第1母材粒子、及び前記第1母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第1複合触媒粒子を少なくとも含み、
前記第2触媒層は、Niと第2母材粒子とを少なくとも含み、白金族元素を実質的に含まず、前記第2母材粒子はAl2O3含有割合が50質量%以下の酸化物粒子であり、
前記第3触媒層は、第3母材粒子、及び前記第3母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第3複合触媒粒子を少なくとも含む、
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記第2触媒層中のNiの含有量が、前記基材の容積あたり、3.0g/L以上である
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記第2触媒層が、白金族元素を実質的に含まない
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記第1触媒層が、Niを実質的に含まない
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記第1触媒層は、セリア系複合酸化物粒子及びアルミナ粒子を含み、Baをさらに含有する
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記第3触媒層が、Niを実質的に含まない
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記3母材粒子が、セリアジルコニア系複合酸化物粒子及びアルミナ粒子を含む
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記基材が、フロースルー型ハニカム担体、及び/又はウォールフロー型ハニカム担体である
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
ガソリンエンジンの排ガス流路の下流側に配置された三元触媒を備え、
前記三元触媒が、請求項1~8のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒である、
排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒活性成分として白金族元素及びNiを含有する排ガス浄化用触媒並びにこれを用いた排ガス浄化装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関、例えばエンジンから排出される炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)等は、大気汚染防止法等の放出規制基準を満たすために減少されなければならない。従来、これらの排ガスの浄化において、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)等の白金族元素(PGM:Platinum Group Metal)を触媒活性成分として用いた三元触媒(TWC:Three-Way Catalyst)が広く用いられている。
【0003】
三元触媒としては、比較的に高価なPGMの使用量を削減するとともに高い触媒活性を確保するため、微細な粒子の状態で触媒活性成分を母材粒子上に高分散に担持させた複合粒子構造の三元触媒が広く用いられている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、セリア等の金属酸化物からなる母材粒子と、この母材粒子上に担持されたPtやPd等の白金族元素と、の複合触媒粒子を含有する三元触媒等が例示される。また、粒子状物質(PM:Particulate Matter)をトラップするフィルターとして機能するウォールフロー型ハニカム担体に、触媒材料としてこれらの三元触媒を塗工した、触媒塗工ガソリンパティキュレートフィルター(触媒塗工GPF:Gasoline Particulate Filter)等も実用段階に入っている。
【0004】
一方、大気汚染物質の削減の観点から、燃料中に含まれる有害物質を予め低減する試みも従来から行われている。例えば、燃料中に含まれる硫黄及び硫黄含有化合物(以降において、「硫黄分」と称する場合がある。)は硫化水素(H2S)や硫黄酸化物(SOx)の排出量の増大等を引き起こすため、燃料中の硫黄分は予めほとんど取り除かれている。そして現在においては、硫黄分の含有割合が10ppm以下とされた燃料、すなわちサルファーフリー燃料が幅広く使用されている。
【0005】
他方、依然として燃料中に含まれ得る極少量の硫黄分の浄化のために、Cu、Ni、Fe、Mn、Co等の遷移金属を触媒活性成分として使用することが検討されている。しかしながら、これらの遷移金属のみでは、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)等に対して十分な浄化性能を有していないため、PGMと遷移金属とを併用した三元触媒が検討されている。
【0006】
例えば特許文献1には、セリア、ジルコニアおよび希土類酸化物を含んだ担体を備える酸素貯蔵材であって、約0.1重量%から約10重量%の範囲の、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化銀、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化インジウム、酸化金、酸化ビスマスおよび酸化スズ、ならびに、これらの組み合わせからなるグループから選択された遷移金属酸化物によって、活性化される酸素貯蔵材と、パラジウム、ロジウム、プラチナおよびこれらの組み合わせからなるグループから選択された白金族金属部材と、の併用が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、(a)1種またはそれ以上の貴金属成分を含有する少なくとも1つのウォッシュコート層で被覆された基材と、(b)多孔質耐火性酸化物と、1種またはそれ以上の卑金属酸化物とを含む上塗層であって、前記ウォッシュコート層の少なくとも1つは、さらに酸素貯蔵成分を有し、オイルおよび/または燃料に由来する添加剤の毒性に対して、前記貴金属成分の耐性を高めるために、前記貴金属成分を含有する少なくとも1つのウォッシュコート層上に被覆され、前記卑金属酸化物が、酸化ランタンである場合、前記酸化ランタンは0.2g/in3下の量で存在する、上塗層と、を有する自動車排気ガス処理触媒が記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、白金族金属を含む第一の触媒コーティングと、Cu、Ni、Fe、MnおよびCoからなる群から選択される1種以上の非白金族金属を含む第二の触媒コーティングと、1種以上の基材とを含む排出物質浄化のための触媒物品であって、前記第一の触媒コーティングは、Cu、Ni、Fe、Mn、V、Co、Ga、Mo、Mg、CrおよびZnを本質的に含まず、前記第二の触媒コーティングは、白金族金属を本質的に含まず、前記第一の触媒コーティングは、前記第二の触媒コーティングから隔離されている、触媒物品であって、前記第一の触媒コーティングと第二の触媒コーティングの間にバリヤ層を更に含み、前記バリヤ層は、安定化アルミナ、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア複合物、チタニアおよびそれらの組み合わせから選択される担体を含み、前記担体は、La、Ba、Y、Pr、Srおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される元素によって安定化されており、前記第一の触媒コーティングが第二の触媒コーティングの上にあるか、または前記第一の触媒コーティングが第二の触媒コーティングの上流にある、前記触媒物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2013-500149号公報
【特許文献2】特開2015-006663号公報
【特許文献3】特表2017-522176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年の環境問題への配慮の高まりから、より高い浄化性能が求められている。例えば、ガソリンエンジンにおいて従来においては規制対象外であったNH3についても、可能な限り浄化されるべきである。しかしながら、特許文献1~3において、NH3の排出量の削減について何ら検討されていない。
【0011】
そして、特許文献1及び2においては、セリア等の酸素吸蔵放出材料と遷移金属とPGMとの3種併用が開示されているが、本発明者らの知見によれば、さらなる改良が必要であることが判明した。
【0012】
また、硫黄分の含有割合が10ppm以下のサルファーフリー燃料を使用したとしても、依然として燃料中に微量に含まれる硫黄分は、可能な限り浄化されるべきである。本発明者らの知見によれば、硫黄分が例えばH2S等として排出された場合、臭気(硫黄化合物スメル)が発生する等の問題が生じることが判明した。
【0013】
また、特許文献3においては、炭化水素、CO、NOx化合物を除去するためにPGMと遷移金属とを別の触媒層に分けて配置することが開示されているが、特許文献3の実施例の非白金族金属コーティングA及びBに示されているように、遷移金属は、セリア及びアルミナとともに配合されている。本発明者らの知見によれば、このように遷移金属をセリア及びアルミナとともに配合すると、高温に曝された際に意図せぬことに、これらが反応してPGMと合金化する、アルミナと複合酸化物を形成する、セリアのシンタリングを生じさせる等によりCO、NOx、NH3の浄化性能が低下することがあり、さらなる改良が必要であることが判明した。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明の目的は、硫黄化合物スメルの発生が低減され、NOx浄化性能とNH3浄化性能に優れる、排ガス浄化用触媒及びこれを用いた排ガス浄化装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、基材上に所定の層構成の触媒層を設けることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)基材と、前記基材に設けられた触媒層とを少なくとも備え、前記触媒層は、前記基材上に設けられた第1触媒層、前記第1触媒層上に設けられた第2触媒層、及び前記第2触媒層上に設けられた第3触媒層を有する第1積層構造、並びに、前記基材上に設けられた第2触媒層、前記第2触媒層上に設けられた第1触媒層、及び前記第1触媒層上に設けられた第3触媒層を有する第2積層構造よりなる群から選択される積層構造を有し、前記第1触媒層は、第1母材粒子、及び前記第1母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第1複合触媒粒子を少なくとも含み、前記第2触媒層は、Niと第2母材粒子とを少なくとも含み、白金族元素を実質的に含まず、前記第2母材粒子はAl2O3含有割合が50質量%以下の酸化物粒子であり、前記第3触媒層は、第3母材粒子、及び前記第3母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第3複合触媒粒子を少なくとも含む、排ガス浄化用触媒。
【0017】
(2)前記第2触媒層中のNiの含有量が、前記基材の容積あたり、3.0g/L以上である上記(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
【0018】
(3)前記第1触媒層が、Niを実質的に含まない上記(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
【0019】
(4)前記第1触媒層は、セリア系複合酸化物粒子及びアルミナ粒子を含み、Baをさらに含有する(1)~(3)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【0020】
(5)前記第3触媒層が、Niを実質的に含まない上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【0021】
(6)前記3母材粒子が、セリアジルコニア系複合酸化物粒子及びアルミナ粒子を含む上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【0022】
(7)前記基材が、フロースルー型ハニカム担体、及び/又はウォールフロー型ハニカム担体である上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【0023】
(8)ガソリンエンジンの排ガス流路の下流側に配置された三元触媒を備え、前記三元触媒が、上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒である、排ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、硫黄化合物スメルの発生が低減され、NOx浄化性能とNH3浄化性能に優れる、排ガス浄化用触媒及びこれを用いた排ガス浄化装置等を実現することができる。そして、本発明の排ガス浄化用触媒等は、排ガス中のNOx、CO、HC等を削減する三元触媒(TWC:Three Way Catalyst)であって、NOx浄化性能の過度な劣化等を引き起こすことなく、NH3浄化率にも優れ且つ硫黄化合物スメルの発生が低減された三元触媒として、次世代の環境基準にも適合可能なものである。また、本発明によれば、空燃比(A/F)が大きく変動するような過酷な使用環境下においても、NOx浄化性能の過度な劣化等を抑制でき、安定したNH3浄化率及び硫黄化合物スメルの低減を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、一実施形態の排ガス浄化用触媒100の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の排ガス浄化用触媒200の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、応用実施例1~2及び応用比較例1~4の排ガス浄化用触媒のLA4(FTP75)モードでのNH
3浄化率を示すグラフである。
【
図4】
図4は、応用実施例1~2及び応用比較例1~4の排ガス浄化用触媒のLA4(FTP75)モードでのNOx浄化率を示すグラフである。
【
図5】
図5は、応用実施例1~2及び応用比較例1~4の排ガス浄化用触媒のUS06モードでのNH
3浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0027】
ここで、本明細書において、「D90粒子径」とは、体積基準の粒子径の累積分布において小粒径からの積算値が全体の90%に達したときの粒子径をいい、レーザー回折式粒子径分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-3100等)で測定した値を意味する。また、BET比表面積は、比表面積/細孔分布測定装置(商品名:BELSORP-mini II、マイクロトラック・ベル株式会社製)及び解析用ソフトウェア(商品名:BEL_Master、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、BET一点法により求めた値とする。
【0028】
図1は、本発明の好適な一実施形態の排ガス浄化用触媒100の概略構成を示す模式図である。この排ガス浄化用触媒100は、基材11と、この基材11の少なくとも一方の面11a側に設けられた触媒層21とを備える。本実施形態において、触媒層21は、第1触媒層L1、第2触媒層L2、及び第3触媒層L3をこの順に備える積層構造を有する。第1触媒層L1は、第1母材粒子及びこの第1母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第1複合触媒粒子を少なくとも含む。第2触媒層L2は、Niと第2母材粒子とを少なくとも含み、白金族元素を実質的に含まず、第2母材粒子はAl
2O
3含有割合が50質量%以下の酸化物粒子である。第3触媒層L3は、第3母材粒子及びこの第3母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第3複合触媒粒子を少なくとも含む。以下、各構成要素について詳述する。
【0029】
図2は、本発明の他の好適な一実施形態の排ガス浄化用触媒200の概略構成を示す模式図である。この排ガス浄化用触媒200は、基材11と、この基材11の少なくとも一方の面11a側に設けられた触媒層21とを備える。本実施形態において、触媒層21は、第2触媒層L2、第1触媒層L1、及び第3触媒層L3をこの順に備える積層構造を有する。第1触媒層L1は、第1母材粒子及びこの第1母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第1複合触媒粒子を少なくとも含む。第2触媒層L2は、Niと第2母材粒子とを少なくとも含み、白金族元素を実質的に含まず、第2母材粒子はAl
2O
3含有割合が50質量%以下の酸化物粒子である。第3触媒層L3は、第3母材粒子及びこの第3母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第3複合触媒粒子を少なくとも含む。以下、各構成要素について詳述する。
【0030】
(基材)
基材11は、触媒層21を支持するための支持部材である。基材11上に触媒層21を設けた一体構造型排ガス浄化用積層触媒部材として用いることで、装置への組み込みが容易となる等、種々の用途への適用可能性が増大する。例えば排ガス浄化用途においては、基材11としてハニカム構造担体等を用い、ガス流が通過する流路内にこの一体構造型積層触媒部材を設置し、ハニカム構造担体のセル内にガス流を通過させることで、高効率に排ガス浄化を行うことができる。
【0031】
ここで用いる基材11としては、当業界で公知のものを適宜選択することができる。具体的には、当業界で公知の一体構造型ハニカム担体、例えばコージェライト、コージェライトアルミナ、シリコンカーバイド、炭化ケイ素、窒化珪素等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体、ステンレス製等のワイヤメッシュ担体、スチールウール状のニットワイヤ担体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、その形状も、特に限定されず、例えば角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状を選択可能である。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
なお、一体構造型ハニカム担体等の基材11としては、一方の開放端面から他方の開口端面に向けて開口する多数の通孔(気体流路)を有する構造を有するフロースルー型ハニカム担体と、一方の開放端面と他方の開口端面が互い違いに目封じされ且つ多孔質の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型ハニカム担体とが広く知られており、これらはいずれも適用可能である。フロースルー型ハニカム担体は、酸化触媒、還元触媒、三元触媒(TWC)等に広く用いられている。ウォールフロー型ハニカム担体は、排ガス中の煤やSOF等の固形成分や粒子状成分を濾し取るフィルターとしての働きを有し、Diesel Particulate Filter(DPF)やGasoline Particulate Filter(GPF)等として広く用いられている。
【0033】
基材11のサイズは、用途や要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが使用できる。一体構造型ハニカム担体等の基材11としては、さらに開口部の孔数についても、処理すべき排ガスの種類、ガス流量、圧力損失或いは除去効率等を考慮して適当な孔数が設定される。そのセル密度は、特に限定されないが、強度を維持しつつガス流に対する触媒の接触面積(表面積)を高く維持し圧力損失の増大を抑制する等の観点から、セル密度100~1500cell/inch2(155k~2325k/m2)であり、特に200~1200cell/inch2(310k~1400k/m2)が好ましく、300~900cell/inch2(465k~933k/m2)がより好ましい。なお、セル密度とは、一体構造型ハニカム担体等の基材11を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことを意味する。
【0034】
(触媒層)
触媒層21は、第1触媒層L1と、第2触媒層L2と、第3触媒層L3とをこの順に少なくとも備える第1積層構造を有するか、又は、第2触媒層L2と、第1触媒層L1と、第3触媒層L3とをこの順に少なくとも備える第2積層構造を有する。このように、PGMを含有する触媒層とは別個にNiを含む触媒層を設けることにより、PGMとNiの併用による浄化性能の劣化を抑制することができ、隣接する触媒層へのNiの拡散を抑制することができる。ここで、本明細書において、「この順に少なくとも備える」とは、第1触媒層L1、第2触媒層L2、及び第3触媒層L3がこの順に配置されていることを意味し、この順に配列されている限り、これらの層間に任意の他の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在していてもよい。すなわち、触媒層21の積層構造は、第1触媒層L1、第2触媒層L2、及び第3触媒層L3が直接載置された態様(第1触媒層L1/第2触媒層L2/第3触媒層L3)、第1触媒層L1、第2触媒層L2、及び第3触媒層L3が任意の他の層を介して離間して配置された態様(例えば、第1触媒層L1/他の層/第2触媒層L2/他の層/第3触媒層L3、第1触媒層L1/他の層/第2触媒層L2/第3触媒層L3、第1触媒層L1/第2触媒層L2/他の層/第3触媒層L3)のいずれであってもよい。
【0035】
また、本明細書において、「基材11の少なくとも一方の面側に設けられた」とは、
図1に示すように基材11の一方の面11a(又は他方の面11b)のみに触媒層21が設けられた態様、基材11の双方の面11a,11bに触媒層21が設けられた態様、のいずれをも包含する意味である。このとき、基材11と触媒層21との間に、任意の他の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在していてもよく、「一方の面側に設ける」とは、基材11と触媒層21とが直接載置された態様、基材11と触媒層21とが任意の他の層を介して離間して配置された態様、の双方を含む意味で用いている。
【0036】
(第1触媒層L1)
第1触媒層L1は、第1母材粒子と、この第1母材粒子上に担持された白金族元素を含有する第1複合触媒粒子を少なくとも含む。
【0037】
第1母材粒子は、触媒活性成分である白金族元素を、表面に高分散に担持する担体粒子である。第1母材粒子としては、当業界で公知のものから適宜選択して用いることができ、その種類は特に限定されない。例えばγ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア、セリアアルミナ、酸化セリウム(セリア:CeO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、セリアジルコニア系複合酸化物(CZ複合酸化物:CeO2/ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。また、β型やMFI型のゼオライトをはじめ、A、X、Y、MOR、CHA、SAPO等のゼオライト及び類縁体を用いることもできる。なお、これらの母材粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。第1母材粒子としては、高表面積を有する耐熱性無機酸化物であるアルミナ粒子や、酸素吸放出能(Oxygen Storage Capacity)及び白金族の高分散化機能を有する耐熱性無機酸化物であるセリア系複合酸化物粒子が好ましく用いられる。
【0038】
セリア系複合酸化物粒子としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。ここで、セリア系複合酸化物とは、セリウム(Ce)を含み、必要に応じてセリウム以外の他元素がドープされた、複合酸化物或いは固溶体を包含する概念として用いている。セリア系複合酸化物は、耐熱性に優れる酸素吸放出材料として知られている。セリア系複合酸化物粒子は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。セリア系複合酸化物の具体例としては、セリウム複合酸化物、セリウム-ジルコニウム複合酸化物、セリウム-ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素複合酸化物、セリウム-ジルコニウム-遷移金属元素複合酸化物、セリウム―アルミニウム複合酸化物、セリウム-ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素-遷移金属元素複合酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0039】
第1の触媒層L1中に含まれるセリア系複合酸化物粒子の平均粒子径は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、D90粒子径が、1μm~30μmが好ましく、より好ましくは3μm~25μm、さらに好ましくは5μm~20μmである。
【0040】
第1触媒層L1中のセリア系複合酸化物粒子の塗工量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸素吸放出性能と耐熱性、圧力損失の観点から、セリア系複合酸化物粒子の固形分換算で、基材11の単位体積あたり、合計で5g/L~200g/Lが好ましく、10g/L~100g/Lがより好ましい。
【0041】
アルミナ粒子としては、表面積の大きな、γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、ベーマイト等が好ましく用いられる。とりわけ、γ-アルミナはその他のアルミナに比べ1000℃以上での耐久性は劣るものの、通常1000℃以下で使用される排ガス浄化用触媒としては十分な耐熱性を有する上に、表面積がこれらすべてのアルミナの中で最も高い。したがって、アルミナ粒子としてはγ-アルミナが特に好ましい。アルミナ粒子は、ジルコニウム、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。アルミナ粒子は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0042】
アルミナ粒子の平均粒子径は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、D90粒子径が、1μm~30μmが好ましく、より好ましくは3μm~25μm、さらに好ましくは5μm~20μmである。
【0043】
また、アルミナ粒子のBET比表面積は、特に限定されないが、母材粒子としての高い表面積を維持し、PGMを高分散状態で安定担持する観点から、30m2/g~300m2/gが好ましく、40m2/g~250m2/gがより好ましく、50m2/g~200m2/gがさらに好ましい。
【0044】
第1触媒層L1中のアルミナ粒子の塗工量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、耐熱性と圧力損失の観点から、アルミナ粒子の固形分換算で、基材11の単位体積あたり、合計で5g/L~200g/Lが好ましく、10g/L~100g/Lがより好ましい。
【0045】
なお、第1触媒層L1に含まれる第1母材粒子としては、上述したセリア系複合酸化物粒子とアルミナ粒子以外の母材粒子(以降において、「他の母材粒子」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の母材粒子としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えばシリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。また、他の母材粒子として、β型やMFI型のゼオライトをはじめ、A、X、Y、MOR、CHA、SAPO等のゼオライト及び類縁体を用いることもできる。なお、これら他の母材粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0046】
第1触媒層L1の触媒活性成分としては、白金族元素が必須とされる。白金族元素は、主として、排ガス中のHCやCO等を酸化浄化する、あるいは燃料希薄動作期間中にNOxを酸化変換する、また燃料過剰動作期間中にNOxを還元浄化するための触媒活性成分として使用される。なお、白金族元素は、上述した第1母材粒子上に担持されていればよいが、他の母材粒子上にも担持されていてもよい。また、第1触媒層L1中の白金族元素、さらには他の触媒活性成分は、金属(金属状態)で存在していることが好ましいが、外部環境等に応じてその一部が酸化物となっていてもよい。
【0047】
第1触媒層L1中の白金族元素の総含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸化反応と還元反応のバランスの観点から、金属(Pt等)換算で、基材11の単位体積あたり、0.01g/L~15.00g/Lが好ましく、0.05g/L~12.00g/Lがより好ましく、0.10g/L~10.00g/Lがさらに好ましい。
【0048】
なお、白金族元素としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等が挙げられる。白金族元素は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。例えば第1触媒層L1は、白金族元素としてPtのみを含んでいてもよい。また、Pt以外の白金族元素を含んでいてもよく、白金族元素としてPdのみ含んでいてもよい。他の白金族元素としては、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等が挙げられる。
【0049】
また、第1触媒層L1は、白金族元素以外の触媒活性成分(以降において、「他の触媒活性成分と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の触媒活性成分としては、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属元素、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)等の遷移金属元素、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等の希土類金属元素等が挙げられるが、これらに特に限定されない。但し、ニッケル(Ni)は、白金族元素との併用で触媒毒として作用して、NOx浄化性能の劣化等を引き起こすため、第1触媒層L1は実質的にNiを含まないことが好ましい。ここで、本明細書において、第1触媒層L1がNiを実質的に含まないとは、第1触媒層L1中に含まれるNiの含有量が、第1触媒層L1の総量に対して酸化物換算(NiO)で1.0質量%未満であることを意味し、好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満である。第1触媒層L1にNiを意図的に添加しない実施態様とすることもでき、このとき、第1触媒層L1中にはNiがまったく存在しない(酸化物換算(NiO)で0.0質量%)。
【0050】
また、第1触媒層L1は、NOx吸蔵機能および母材の耐熱性向上機能を有するBaを含むことが好ましい。NOx吸蔵材であるBa成分は、酸素が多い(Lean)状態では、硝酸バリウムとしてNOxを吸蔵し、酸素が少ない(Rich)状態では、硝酸バリウムが炭酸バリウムに変化する際に、吸蔵したNOxを放出する。このように放出されたNOxは、還元剤のHC、CO、或いはスチームリフォーミング反応によって発生した水素等を利用して、白金族元素等の触媒活性成分による触媒反応により浄化される。また、母材成分の結晶中にBaが添加されることで、母材自身のシンタリングが抑制され、母材の耐熱性を向上させることができる。そのため、第1触媒層L1にBaを含ませることで、耐熱性の向上、及び触媒性能の活性化を期待できる。
【0051】
本実施形態において、Baは、上述したセリア複合酸化物粒子やアルミナ粒子上に担持されていることが好ましい。Baを上述した母材粒子に担持することで、Ba自身が高い分散状態に維持される、また母材粒子の耐熱性を向上させることができる。なお、第1母材粒子の表面上のBaは、後述する製造工程中の焼成や排ガスの浄化過程において高温に曝されて酸化され得るため、その酸化物であるBaOの状態で存在していてもよく、また、外部環境に応じて、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の各種塩の状態で存在していてもよい。より具体的には、BaO、Ba(CH3COO)2、BaO2、BaSO4、BaCO3、BaZrO3、BaAl2O4等が挙げられる。なお、Baは、セリア複合酸化物粒子やアルミナ粒子以外の他の母材粒子上にも担持されていてもよい。
【0052】
第1触媒層L1中のBaの含有割合は、第1触媒層L1の総量に対して酸化物換算(BaO)で、好ましくは1~30質量%、より好ましくは3~20質量%である。
【0053】
なお、第1触媒層L1中の第1母材粒子の表面に担持された白金族元素の粒子が、高温時、凝集して粒子成長することで表面積が下がり、活性を悪化させることを防止するために、白金族元素の粒子の周囲を微粒子で囲って白金族元素の粒子同士の接触機会を減らすことができる。このような微粒子としては、例えば、セリア複合酸化物粒子やアルミナ粒子以外の他のアルミナ、ジルコニア、シリカ、シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア、ゼオライト、チタニア、マグネシア、酸化タングステン、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジウム等の微粒子が挙げられるが、これらに特に限定されない。ここで用いる微粒子はそれ自体が高温時に母材粒子上を移動しないよう、耐熱性が高く予め焼結されたものが好ましく、かかる観点から、希土類(複合)酸化物(希土類酸化物、希土類複合酸化物)や遷移金属酸化物が好ましい。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を任意の組み合わせで用いることができる。このような凝集抑制のための微粒子の使用量は、白金族元素の使用量に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、白金族元素の総量に対して、10~300質量%が好ましく、20~200質量%がより好ましい。
【0054】
また、第1触媒層L1と基材11或いは第2触媒層L2とのより高い密着強度を得るため、必要に応じて、第1触媒層L1に当業界で公知のバインダー成分を含有させてもよい。バインダー成分としては、ベーマイト、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾルが挙げられるが、これらに特に限定されない。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーの使用量は、特に限定されず、十分な密着強度が得られる程度の量であれば構わない。
【0055】
なお、第1触媒層L1は、上述した成分以外に、当業界で公知の触媒や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0056】
(第2触媒層L2)
第2触媒層L2は、Niと第2母材粒子とを少なくとも含む。第2触媒層L2中に含有されるNiは、硫黄化合物を酸化する触媒活性成分である。また、第2触媒層L2中に含有されるNiは、NH3を生成抑制ないしは分解するものであってもよい。第2触媒層L2の第2母材粒子としては、Al2O3含有割合が50質量%以下の酸化物粒子(以降において、「Ni母材粒子」と称する場合がある。)を含むことが必須とされる。第2触媒層L2中のNiは、Ni母材粒子上に担持されていてもよく、Ni母材粒子上に担持されていなくてもよい。また、第2触媒層L2はNi母材粒子以外の他の母材粒子を含んでいてもよい。この場合、第2触媒層L2中のNiは、他の母材粒子上に担持されていてもよく、他の母材粒子上に担持されていなくてもよい。
【0057】
第2母材粒子は、触媒活性成分であるNiを、表面に高分散に担持する担体粒子である。第2母材粒子としては、当業界で公知のものから適宜選択して用いることができ、その種類は特に限定されない。なお、第2母材粒子は、1種を単独で用いることができ、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
Ni母材粒子としては、Al2O3含有割合が50質量%以下の酸化物粒子である限り、要求性能に応じて当業界で公知のものから適宜選択することができ、その種類は特に限定されない。例えば、Ni母材粒子として、酸素吸放出能(Oxygen Storage Capacity)を有するセリア系複合酸化物を用いることができる。
【0059】
酸素吸放出能を有するセリア系複合酸化物材料としては、要求性能に応じて当業界で公知のものから適宜選択することができ、その種類は特に限定されない。例えば、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム等の金属酸化物乃至は金属複合酸化物又はこれらに希土類元素や遷移元素等をドープした安定化複合酸化物;ペロブスカイト型酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの素材は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの中でも、セリア系酸素吸蔵放出材料(例えばセリア系(複合)酸化物)、ジルコニア系高耐熱性材料(例えばジルコニア系(複合)酸化物)が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0060】
ここで、本明細書において、「セリア系(複合)酸化物」は、セリア系酸化物及びセリア系複合酸化物の双方を包含する用語として用いており、具体的には、セリア(CeO2)又はこれに他元素がドープされた複合酸化物或いは固溶体を包含する概念として用いている。同様に、「ジルコニア系(複合)酸化物」は、ジルコニア系酸化物及びジルコニア系複合酸化物の双方を包含する用語として用いており、具体的には、ジルコニア(ZrO2)又はこれにセリウム以外の他元素がドープされた複合酸化物或いは固溶体を包含する概念として用いている。なお、セリウム及びジルコニウムの双方を含有するセリウム-ジルコニウム系複合酸化物は、前者のセリア系複合酸化物に該当するものとし、後者のジルコニア系複合酸化物には該当しないものとして取り扱う。
【0061】
セリア系(複合)酸化物の具体例としては、酸化セリウム(IV)、セリウム-セリウムを除く希土類元素複合酸化物、セリウム-遷移元素複合酸化物、セリウム-セリウムを除く希土類元素-遷移元素複合酸化物等が挙げられる。これらの中でも、セリア系酸素吸蔵放出材料としては、酸素吸放出能及び耐熱性のバランスに優れるセリア-ジルコニア系複合酸化物が好ましく、セリウム及びジルコニウム以外の他の希土類元素が固溶したセリア-ジルコニア系複合酸化物がより好ましい。なお、セリア系(複合)酸化物としては、Ce及びZrの質量割合が、酸化物(CeO2及びZrO2)換算で、合計50質量%以上95質量%以下のものが好ましく用いられる。
【0062】
また、ジルコニア系(複合)酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素複合酸化物、ジルコニウム-遷移元素複合酸化物、ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素-遷移元素複合酸化物等が挙げられる。これらの中でも、ジルコニア系高耐熱性材料としては、耐熱性や靱性等のバランスの観点等から、セリウム及びジルコニウム以外の他の希土類元素が固溶したジルコニア系複合酸化物がより好ましい。なお、ジルコニア系(複合)酸化物としては、Zrの質量割合が、酸化物(ZrO2)換算で、50質量%以上80質量%以下のものが好ましく用いられる。
【0063】
ここで、セリア系(複合)酸化物やジルコニア系(複合)酸化物は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム等の、セリウム及びジルコニウム以外の希土類元素(以降において、「他の希土類元素」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。これらの中でも、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジムが好ましい。他の希土類元素は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。他の希土類元素が含まれる場合、その含有割合は、特に限定されないが、母材粒子の総量に対して、上述した他の希土類元素の酸化物換算の総量(例えばLa2O3、Nd2O3、Pr5O11等の総和)で、0.1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
【0064】
またに、セリア系(複合)酸化物やジルコニア系(複合)酸化物は、クロム、コバルト、鉄、ニッケル、チタン、マンガン及び銅等の遷移元素を含んでいてもよい。遷移元素は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。遷移元素が含まれる場合、その含有割合は、特に限定されないが、母材粒子の総量に対して、上述した遷移元素の酸化物換算の総量(例えばFe2O3、TiO2等の総和)で、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0065】
なお、上記のセリア系(複合)酸化物及びジルコニア系(複合)酸化物において、セリウムやジルコニウムの一部が、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属元素や、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属元素等で置換されていてもよい。ここで、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び割合で用いることができる。また、上記のセリア系(複合)酸化物及びジルコニア系(複合)酸化物は、ジルコニア鉱石中に通常1~2質量%程度含まれているハフニウム(Hf)を不可避不純物として含有していても構わない。
【0066】
また、Ni母材粒子として、Al2O3含有割合が50質量%以下のアルミナ系(複合)酸化物等を用いることもできる。Al2O3含有割合が50質量%以下のアルミナ系(複合)酸化物の具体例としては、シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア、セリア-アルミナやこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、Ba等のアルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。
【0067】
これらの中でも、Ni母材粒子としては、セリア系(複合)酸化物、ジルコニア系(複合)酸化物、アルミナ系(複合)酸化物が好ましい。このとき、Al2O3含有割合は、50質量%以下であればよいが、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下がより特に好ましく、20質量%以下が最も好ましい。好ましいNi母材粒子としては、セリアジルコニア、セリア、ジルコニア、アルミナ、セリアアルミナ、及びこれらに希土類元素或いはアルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体である。
【0068】
第2母材粒子の平均粒子径(D50)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましく、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、第2母材粒子の平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-3100等)で測定されるメディアン径を意味する。
【0069】
第2母材粒子のBET比表面積は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、高い触媒性能を得る等の観点から、3m2/g~300m2/gが好ましく、5m2/g~250m2/gがより好ましく、10m2/g~200m2/gがさらに好ましい。
【0070】
なお、第2触媒層L2のNi母材粒子とNiの使用割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、硫黄化合物スメルの抑制、NOx浄化性能、NH3浄化性能等の観点から、Ni母材粒子/Niの質量比で1.0以上であることが好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。
【0071】
なお、第2触媒層L2に含まれる第2母材粒子としては、上述したNi母材粒子以外の母材粒子(以降において、「他の母材粒子」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の母材粒子としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。また、他の母材粒子として、β型やMFI型のゼオライトをはじめ、A、X、Y、MOR、CHA、SAPO等のゼオライト及び類縁体を用いることもできる。なお、これら他の母材粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0072】
第2触媒層L2中のNi母材粒子の塗工量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、Niを高分散状態で安定担持する観点から、固形分換算で、基材11の単位体積あたり、合計で5g/L~100g/Lが好ましく、10g/L~80g/Lがより好ましい。
【0073】
また、第2触媒層L2と第1触媒層L1或いは第3触媒層L3とのより高い密着強度を得るため、必要に応じて、第2触媒層L2に当業界で公知のバインダー成分を含有させてもよい。バインダー成分としては、ベーマイト、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾルが挙げられるが、これらに特に限定されない。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーの使用量は、特に限定されず、十分な密着強度が得られる程度の量であれば構わない。
【0074】
第2触媒層L2の触媒活性成分としては、Niが必須とされる。Niは、主として、硫黄化合物を酸化する触媒活性成分として使用される。なお、第2触媒層L2中のNi、さらには他の触媒活性成分は、金属(金属状態)で存在していることが好ましいが、外部環境等に応じてその一部が酸化物となっていてもよい。
【0075】
第2触媒層L2中のNiの総含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、硫黄化合物の酸化性能とNH3の浄化性能のバランスの観点から、酸化物換算(NiO)で、基材11の単位体積あたり、0.1g/L~30.0g/Lが好ましく、0.5g/L~25.0g/Lがより好ましく、1.0g/L~20.0g/Lがさらに好ましく、2.0g/L~20.0g/Lが特に好ましい。
【0076】
なお、第2触媒層L2は、Ni以外の触媒活性成分を含んでいてもよい。他の触媒活性成分としては、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属元素、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)等の遷移金属元素、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等の希土類金属元素等が挙げられるが、これらに特に限定されない。但し、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等の白金族元素は、Niとの併用で触媒毒として作用して、NOx浄化性能の劣化等を引き起こすため、第2触媒層L2は実質的に白金族元素を含まないことが好ましい。ここで、本明細書において、第2触媒層L2が白金族元素を実質的に含まないとは、第2触媒層L2中に含まれる白金族元素の含有量が、第2触媒層L2の総量に対して金属換算で1.0質量%未満であることを意味し、好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満である。第2触媒層L2に白金族元素を意図的に添加しない実施態様とすることもでき、このとき、第2触媒層L2中には白金族元素がまったく存在しない(0.0質量%)。
【0077】
なお、第2触媒層L2は、上述した成分以外に、当業界で公知の触媒や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0078】
(第3触媒層L3)
第3触媒層L3は、第3母材粒子と、この第3母材粒子上に少なくとも担持された白金族元素を含有する第3複合触媒粒子を少なくとも含む。
【0079】
第3母材粒子は、触媒活性成分である白金族元素を、表面に高分散に担持する担体粒子である。第3母材粒子としては、当業界で公知のものから適宜選択して用いることができ、その種類は特に限定されない。例えばγ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア、セリアアルミナ、酸化セリウム(セリア:CeO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、セリアジルコニア系複合酸化物(CZ複合酸化物:CeO2/ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。また、β型やMFI型のゼオライトをはじめ、A、X、Y、MOR、CHA、SAPO等のゼオライト及び類縁体を用いることもできる。なお、これらの母材粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。第3母材粒子としては、酸素吸放出能(Oxygen Storage Capacity)を有する耐熱性無機酸化物であるセリアジルコニア系複合酸化物粒子と、高表面積を有する耐熱性無機酸化物であるアルミナ粒子が好ましく用いられる。
【0080】
セリアジルコニア系複合酸化物粒子としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。ここで、セリアジルコニア系複合酸化物とは、セリウム(Ce)及びジルコニウム(Zr)を含み、必要に応じてセリウム及びジルコニウム以外の他元素がドープされた、複合酸化物或いは固溶体を包含する概念として用いている。セリアジルコニア系複合酸化物は、耐熱性に優れる酸素吸放出材料として知られている。セリアジルコニア系複合酸化物粒子は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。セリアジルコニア系複合酸化物の具体例としては、セリウム-ジルコニウム複合酸化物、セリウム-ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素複合酸化物、セリウム-ジルコニウム-遷移金属元素複合酸化物、アルミニウム-セリウム-ジルコニウム複合酸化物、セリウム-ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素-遷移金属元素複合酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0081】
セリアジルコニア系複合酸化物粒子の平均粒子径は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、D90粒子径が、1μm~30μmが好ましく、より好ましくは3μm~25μm、さらに好ましくは5μm~20μmである。
【0082】
第3触媒層L3中のセリアジルコニア系複合酸化物粒子の塗工量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸素吸放出性能と耐熱性、圧力損失の観点から、セリアジルコニア系複合酸化物粒子の固形分換算で、基材11の単位体積あたり、合計で5g/L~80g/Lが好ましく、10g/L~60g/Lがより好ましい。
【0083】
アルミナ粒子としては、表面積の大きな、γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、ベーマイト等が好ましく用いられる。とりわけ、γ-アルミナはその他のアルミナに比べ1000℃以上での耐久性は劣るものの、通常1000℃以下で使用される排ガス浄化用触媒としては十分な耐熱性を有する上に、表面積がこれらすべてのアルミナの中で最も高い。したがって、アルミナ粒子としてはγ-アルミナが特に好ましい。アルミナ粒子は、ジルコニウム、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。アルミナ粒子は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0084】
アルミナ粒子の平均粒子径は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、D90粒子径が、1μm~30μmが好ましく、より好ましくは3μm~25μm、さらに好ましくは5μm~20μmである。
【0085】
また、アルミナ粒子のBET比表面積は、特に限定されないが、母材粒子としての高い表面積を維持し、PGMを高分散状態で安定担持する観点から、30m2/g~300m2/gが好ましく、40m2/g~250m2/gがより好ましく、50m2/g~200m2/gがさらに好ましい。
【0086】
第3触媒層L3中のアルミナ粒子の塗工量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、耐熱性と圧力損失の観点から、アルミナ粒子の固形分換算で、基材11の単位体積あたり、合計で5g/L~80g/Lが好ましく、10g/L~60g/Lがより好ましい。
【0087】
なお、第3触媒層L3に含まれる第3母材粒子としては、上述したセリアジルコニア系複合酸化物粒子とアルミナ粒子以外の母材粒子(以降において、「他の母材粒子」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の母材粒子としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えばシリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア、酸化セリウム(セリア:CeO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。また、他の母材粒子として、β型やMFI型のゼオライトをはじめ、A、X、Y、MOR、CHA、SAPO等のゼオライト及び類縁体を用いることもできる。なお、これら他の母材粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0088】
第3触媒層L3の触媒活性成分としては、白金族元素が必須とされる。白金族元素としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等が挙げられる。白金族元素は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。例えばPt及びRhは、主として、排ガス中のHCやCO等を酸化浄化する、あるいは燃料希薄動作期間中にNOxを酸化変換する、また燃料過剰動作期間中にNOxを還元浄化するための触媒活性成分として使用される。
【0089】
例えば第3触媒層L3は、白金族元素としてRhのみ含んでいてもよく、Rh以外の白金族元素を含んでいてもよい。例えば第3触媒層L3は、Rh及びPtを含んでいてもよい。なお、この場合、Pt及びRhは、上述した第3母材粒子上に担持されていればよいが、浄化性能の観点から、Ptはセリアジルコニア系複合酸化物粒子上に担持されていることが好ましく、Rhはアルミナ粒子上に担持されていることが好ましい。また、白金族元素は、他の母材粒子上にも担持されていてもよい。なお、第3触媒層L3中の白金族元素、さらには他の触媒活性成分は、金属(金属状態)で存在していることが好ましいが、外部環境等に応じてその一部が酸化物となっていてもよい。
【0090】
第3触媒層L3中のPtの総含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸化反応と還元反応のバランスの観点から、金属(Pt)換算で、基材11の単位体積あたり、0.01g/L~15.00g/Lが好ましく、0.05g/L~12.00g/Lがより好ましく、0.10g/L~10.00g/Lがさらに好ましい。
【0091】
第3触媒層L3中のRhの総含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸化反応と還元反応のバランスの観点から、金属(Rh)換算で、基材11の単位体積あたり、0.01g/L~5.00g/Lが好ましく、0.03g/L~4.00g/Lがより好ましく、0.05g/L~3.00g/Lがさらに好ましい。
【0092】
なお、第3触媒層L3は、白金族元素としてPt及びRhのみ含んでいてもよく、Pt及びRh以外の白金族元素を含んでいてもよい。他の白金族元素としては、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等が挙げられる。また、第3触媒層L3は、白金族元素以外の触媒活性成分(以降において、「他の触媒活性成分と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の触媒活性成分としては、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属元素、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)等の遷移金属元素、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等の希土類金属元素等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0093】
但し、ニッケル(Ni)は、白金族元素との併用で触媒毒として作用して、NOx浄化性能の劣化等を引き起こすため、第3触媒層L3は実質的にNiを含まないことが好ましい。ここで、本明細書において、第3触媒層L3がNiを実質的に含まないとは、第3触媒層L3中に含まれるNiの含有量が、第3触媒層L3の総量に対して酸化物換算(NiO)で1.0質量%未満であることを意味し、好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満である。第3触媒層L3にNiを意図的に添加しない実施態様とすることもでき、このとき、第3触媒層L3中にはNiがまったく存在しない(酸化物換算(NiO)で0.0質量%)。
【0094】
また、第3触媒層L3と第2触媒層L2とのより高い密着強度を得るため、必要に応じて、第3触媒層L3に当業界で公知のバインダー成分を含有させてもよい。バインダー成分としては、ベーマイト、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾルが挙げられるが、これらに特に限定されない。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーの使用量は、特に限定されず、十分な密着強度が得られる程度の量であれば構わない。
【0095】
なお、第3触媒層L3は、上述した成分以外に、当業界で公知の触媒や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0096】
ここで、本実施形態の排ガス浄化用触媒100,200は、その触媒層が、第1触媒層L1と第2触媒層L2と第3触媒層L3とがこの順に積層された第1積層構造、又は、第2触媒層L2と第1触媒層L1と第3触媒層L3とがこの順に積層された第21積層構造、を有している。本発明者らの知見によれば、NH3の排出削減のために、PGMと共に遷移金属を使用することが考えられたが、遷移金属はPGMを含む触媒材料にとって触媒毒となるため、単にPGMと共に遷移金属を用いると、NOx浄化性能の劣化等を引き起こす。本実施形態においては、このような多層構造を採用し、PGMを含有する触媒層とは別個にNiを含む触媒層を設けることにより、PGMとNiの併用による浄化性能の劣化を抑制することができる。また、PGMを含有する触媒層とは別個にNiを含む触媒層を設けることにより、例えば900℃以上の高温に曝された場合でも、隣接する触媒層へのNiの拡散を抑制することができる。しかも、本実施形態の好適態様では、Ni及びAl2O3含有割合が50質量%以下の酸化物粒子を含有する触媒層を設けることにより、燃料中に含まれ得る極少量の硫黄分による硫黄化合物スメルの発生も抑制できる。これにより、三元触媒としての触媒性能に優れるのみならず、NH3浄化率にも優れ且つ硫黄化合物スメルの発生を低減することができる。
【0097】
また、本実施形態の排ガス浄化用触媒100,200は、第1触媒層L1と第2触媒層L2と第3触媒層L3の積層構造を最小の触媒組成物構成単位とするもので、このような層構成とすることが、作業効率上だけでなくコスト上も望ましい。必要に応じて、第1触媒層L1、第2触媒層L2、第3触媒層L3は、基材11上の一部のみにコート(ゾーンコート)されていてもよい。
【0098】
上述した層構成を有する排ガス浄化用触媒100,200は、当業界で公知の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されない。例えば、上述したセラミックモノリス担体等の基材11上に、常法にしたがって各触媒層L1,L2,L3を所定の配列で順次設けることで製造可能である。例えば、基材11の表面に、各触媒層L1,L2,L3の水又は水系媒体のスラリー状混合物を順次被覆(コート)させることで、本実施形態の排ガス浄化用触媒100,200を得ることができる。基材11へのスラリー状混合物の付与方法は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。各種公知のコーティング法、ウォッシュコート法、ゾーンコート法を適用することができる。ウォッシュコート等による塗工は、2回以上繰り返すことができる。また、乾燥工程前の塗工を2回以上繰り返してもよく、乾燥工程までを2回以上繰り返してもよい。そして、スラリー状混合物の付与後においては、常法にしたがい乾燥や焼成を行うことができる。なお、乾燥温度は、特に限定されないが、例えば50~250℃が好ましく、80~230℃がより好ましい。また、焼成温度は、特に限定されないが、例えば300~700℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。このとき用いる加熱手段については、特に限定されないが、例えば電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行うことができる。
【0099】
スラリー状混合物の調製時に用いる水又は水系媒体は、スラリー中で各成分が均一に分散できる量を用いればよい。このとき、必要に応じてpH調整のための酸や塩基を配合したり、粘性の調整や分散性向上のための分散材や界面活性剤や分散用樹脂等を配合したりすることができる。スラリーの混合方法としては、ボールミル等による粉砕混合等、公知の粉砕方法又は混合方法を適用することができる。
【0100】
ここで、スラリー状混合物の調製前或いは調製前時には、均一分散させる又は所望の粒度を得る等を目的として、ボールミルやビーズミル等による、乾式或いは湿式の粉砕処理、混合処理、又は分散処理を行うことができる。これらの処理条件は、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、必要成分を担持したアルミナ粒子のD90粒子径が好ましくは1μm~30μm、より好ましくは2μm~25μm、さらに好ましくは3μm~20μmとなるようにすることができる。
【0101】
第1触媒層L1、第2触媒層L2、第3触媒層L3の総塗工量(但し、各触媒層L1,L2,L3中に含まれる白金族元素を除く。)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、触媒性能やコスト等の観点から、基材11の容積あたり、合計で100g/L以上500g/L以下、合計で150g/L以上400g/L以下が好ましく、より好ましくは合計で180g/L以上300g/L以下である。
【0102】
本実施形態の排ガス浄化用触媒100,200は、排ガス排出物の処理のための1つ以上の追加の成分を含む統合された排ガス浄化装置及び排ガス浄化システムにおいて用いることができる。例えば、ガソリンエンジン等の内燃機関の排ガス浄化用触媒、とりわけ自動車の排ガス浄化用三元触媒として有用である。本実施形態の排ガス浄化用触媒100,200は、各種エンジンの排気系に配置することができる。設置個数及び設置箇所は、排ガスの規制に応じて適宜設計できる。例えば、排ガスの規制が厳しい場合には、設置箇所を2以上とし、設置箇所は排気系の直下触媒の後方の床下位置に配置することができる。いずれの場合であっても、各々の触媒は、隣接して配置されていてもよく、また、離間して配置されていてもよい。
【実施例0103】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0104】
(実施例1)
酸素吸蔵放出材料であるセリアジルコニア系複合酸化物(CeZr酸化物と記載、CeO2:40質量%、ZrO2他:60質量%、BET比表面積60m2/g、平均粒子径D90=25μm)を用いた。このCeZr酸化物粒子95質量部に、硝酸ニッケル(II)溶液(Ni換算で10質量%含有)を含浸させ、600℃で30分間焼成して、CeZr酸化物粒子上にNiが担持された第2複合触媒粒子であるNi担持CeZr酸化物粒子を得た。Ni担持量はNi元素換算で5.00質量%である。
【0105】
(実施例2)
セリア(BET比表面積150m2/g、平均粒子径D90=20μm)を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でNi担持セリア粒子を得た。
【0106】
(実施例3)
ジルコン酸バリウム(BET比表面積10m2/g、平均粒子径D90=50μm)を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でNi担持ジルコン酸バリウム粒子を得た。
【0107】
(実施例4)
アルミン酸ランタン(BET比表面積10m2/g、平均粒子径D90=50μm)を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でNi担持アルミン酸ランタン粒子を得た。
【0108】
(実施例5)
バリウム-セリア-アルミナ(BaO:16質量%、CeO2:42質量%、Al2O3:42質量%、BET比表面積150m2/g、平均粒子径D90=25μm)を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でNi担持バリウムーセリアーアルミナ粒子を得た。
【0109】
(実施例6)
セリア-アルミナ1(CeO2:50質量%、Al2O3:50質量%、BET比表面積150m2/g、平均粒子径D90=25μm)を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でNi担持セリア-アルミナ粒子1を得た。
【0110】
(比較例1)
セリア-アルミナ2(CeO2:30質量%、Al2O3:70質量%、BET比表面積150m2/g、平均粒子径D90=25μm)を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でNi担持セリア-アルミナ粒子2を得た。
【0111】
(比較例2)
ランタン-アルミナ(La2O3:4質量%、Al2O3:96質量%、BET比表面積200m2/g、平均粒子径D90=50μm)を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でNi担持ランタン-アルミナ粒子を得た。
【0112】
(比較例3)
γ―アルミナ(BET比表面積150m2/g、平均粒子径D90=50μm)を使用したこと以外は実施例1と同様な方法でNi担持アルミナ粒子を得た。
【0113】
〔Ni担持粒子におけるNH
3浄化率の測定〕
耐久処理前及び耐久処理後のNi担持粒子を用いてNH
3浄化率を測定した。Ni担持粒子20mgを触媒評価装置(商品名:BELCAT-A、マイクロトラック・ベル株式会社製)にセットし、酸素流通下、600℃で30分間処理した後、70℃まで降温することで前処理を実施した。前処理後のNi担持粒子にNH
3含有気体を流通させることで、NH
3浄化率を測定した。耐久、及びNH
3浄化試験の条件は以下の通りとした。
【表1】
【0114】
なお、分析計としては岩田電業社製のFT-IRを用い、Ni担持粒子を通過する前の入口側のNH3濃度とNi担持粒子を通過した出口側のNH3濃度を測定し、その差からNH3浄化率を算出した。上記方法で取得した800℃におけるNH3浄化率の結果を表2にまとめた。
【0115】
【0116】
表2から明らかなとおり、第2母材粒子中のアルミナ含有割合の低下に伴い、NH3浄化率が向上していることが確認された。アルミナ含有割合が50質量%以下である実施例1~6では、優れたNH3浄化率を示す一方、アルミナ含有割合が70質量%以上である比較例1~3では、Niが母材粒子と化合物を形成したりする等して、NH3浄化率が低下した。このことから、第2母材粒子中のアルミナ含有割合を50質量%以下とすることにより、優れたNH3浄化性能を発揮できることが確認された。
【0117】
(応用実施例1)
第1触媒層L1
γ-アルミナ(BET比表面積150m2/g、平均粒子径D90=50μm)、並びに、セリア系複合酸化物(BET比表面積150m2/g、平均粒子径D90=25μm)に酢酸バリウム水溶液を含侵し、表面にBaを担持させ、110℃で乾燥し、720℃で焼成することで、Ba担持第1母材粒子を得た。得られた複合粒子にヘキサヒドロキシ白金酸水溶液を含浸し、白金を粒子の表面に担持し、第1複合触媒粒子であるPt/Ba担持第1母材粒子を得た。得られたPt/Ba担持第1母材粒子85質量部と、バインダー15質量部とを混合し、純水で希釈し、湿式ミリング法により混練し、第1触媒層L1用のスラリー状混合物を得た。
得られた第1触媒層L1用のスラリー状混合物を、基材11であるハニカムフロースルー型コージェライト担体にウォッシュコート法で塗工し、200℃で30分乾燥させた後、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成することで、基材11上に第1触媒層L1(塗工量:基材11の単位体積あたり、Pt:0.6g/L、Ptを除く第1触媒層の成分:130g/L)を形成した。
【0118】
第2触媒層L2
第2母材粒子として上記実施例1のCeZr酸化物粒子82質量部と、酸化ニッケル粉末(平均粒子径D90=20μm)10質量部と、ベーマイト8質量部を混合し、純水で希釈し、湿式ミリング法により混錬し、第2触媒層L2用のスラリー状混合物を得た。
得られた第2触媒層L2用のスラリー状混合物を、第1触媒層L1が形成された基材11の第1触媒層L1上にウォッシュコート法で塗工し、200℃で30分乾燥させた後、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成することで、第1触媒層L1上に第2触媒層L2(塗工量:基材11の単位体積あたり、Ni:3.0g/L、Niを含む第2触媒層の成分:40g/L)を形成した。
【0119】
第3触媒層L3
第3母材粒子としてのセリアジルコニア系複合酸化物粒子(CeO2:30質量%、ZrO2他:70質量%、BET比表面積:80m2/g、平均粒子径D90=30μm)にヘキサヒドロキシ白金酸水溶液を含浸し、白金をセリアジルコニア系複合酸化物粒子の表面に担持し、第3複合触媒粒子であるPt担持セリアジルコニア系複合酸化物粒子を得た。
また、第3母材粒子としてのアルミナ粒子(BET比表面積150m2/g、平均粒子径D90=50μm)に硝酸ロジウム水溶液を含浸し、ロジウムをアルミナ粒子の表面に担持し、第3複合触媒粒子であるRh担持アルミナ粒子を得た。
得られたPt担持セリアジルコニア系複合酸化物粒子50質量部と、Rh担持アルミナ粒子50質量部とを混合し、純水で希釈し、湿式ミリング法により混錬し、第3触媒層L3用のスラリー状混合物を得た。
得られた第3触媒層L3用のスラリー状混合物を、第1触媒層L1及び第2触媒層L2が形成された基材11の第2触媒層L2上にウォッシュコート法で塗工し、200℃で30分乾燥させた後、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成することで、第2触媒層L2上に第3触媒層L3(塗工量:基材11の単位体積あたり、Pt:0.3g/L、Rh:0.1g/L、PtとRhを除く第3触媒層の成分:80g/L)を形成した。
【0120】
これにより、基材11上に、第1触媒層L1、第2触媒層L2、及び第3触媒層L3がこの順に設けられた、触媒層が3層構成を有する、応用実施例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0121】
(応用実施例2及び応用比較例1)
Niの含有量を表4に示すとおりに変更する以外は、応用実施例1と同様に行い、応用実施例2及び応用比較例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0122】
(応用実施例3)
触媒層の形成順序を、第2触媒層L2、第1触媒層L1、及び第3触媒層L3の順に変更する以外は、応用実施例1と同様に行い、基材11上に、第2触媒層L2、第1触媒層L1、及び第3触媒層L3がこの順に設けられた、触媒層が3層構成を有する、応用実施例3の排ガス浄化用触媒を得た。
【0123】
(応用比較例2)
第2触媒層L2の形成を省略する以外は、応用比較例1と同様に行った。
これにより、基材11上に、第1触媒層L1及び第3触媒層L3がこの順に設けられた、触媒層が2層構成を有する、応用比較例2の排ガス浄化用触媒を得た。
【0124】
(応用比較例3)
第1触媒層L1の形成時に、第1母材粒子と酸化ニッケル粉末を混合させる以外は、実施例1と同様にして第1触媒層L1用の対照用スラリー状混合物を得た。
第1触媒層L1用のスラリー状混合物に代えて上記の対照用スラリー状混合物を用い、さらに第2触媒層L2の形成を省略する以外は、応用実施例1と同様に行った。
これにより、基材11上に、第1触媒層L1及び第3触媒層L3がこの順に設けられた、触媒層が2層構成を有する、応用比較例3の排ガス浄化用触媒を得た。
【0125】
(応用比較例4)
Niの含有量を表4に示すとおりに変更する以外は、応用比較例3と同様に行い、応用比較例4の排ガス浄化用触媒を得た。
【0126】
耐久処理及び被毒処理
次いで、得られた各排ガス浄化用触媒TWC2を個別にコンバーターに格納した。そして、ガソリンエンジンの排気口の後流に特許第7026530号の実施例に記載の触媒層が3層構造の一体構造型積層触媒をTWC1として配置し、ガソリンエンジンの排気口のさらに後流側、TWC1の後段に、TWC2をそれぞれ配置した。その後、定常、減速、加速のサイクルを100時間繰り返した。温度は定常時に前段TWC1が950℃となるよう設定し、熱耐久処理を行った。上記熱処理ののち、被毒処理を行った。被毒処理はPが微量含まれたオイルをガソリンと混合し、定常、減速、加速のサイクルを50時間繰り返した。温度は定常時700℃となるよう設定し、耐久処理後及び被毒処理後の応用実施例1~3及び応用比較例1~4の排ガス浄化用触媒をそれぞれ得た。なお、耐久処理及び被毒処理におけるPの総通過量はP2O5換算で約10gであった。
【0127】
〔NH3浄化率の測定〕
耐久処理及び被毒処理後の排ガス浄化用触媒をそれぞれ用いて、NH3浄化率を測定した。ここでは、1.5L直噴ターボエンジンを用い、上記と同様にガソリンエンジンの排気口の後流にTWC1を配置し、TWC1の後段にTWC2をそれぞれ配置し、LA4(FTP75)モード(コールドスタート)及びUS06モード(ホットスタート)に準拠して測定を行った。ここでは、エンジン直下に排ガス浄化用触媒が配置された1.5Lガソリンエンジンを用いて、エンジンダイナモメータを使って評価を実施した。そして、排ガス浄化用触媒TWC2の流入側ガス(TWC1の排出側ガス)とTWC2排出側ガスとをサンプリングしてガス分析をそれぞれ行い、その差からTWC2のLA4モード全域のNH3浄化率、並びに、TWC2のUS06モード200~350sec区間のNH3浄化率をそれぞれ算出した。なお、分析計として岩田電業社製のFT-IRを用い、測温位置は、排ガス浄化用触媒のフロント側から1インチの触媒層内とした。
【0128】
〔NOx浄化率の測定〕
耐久処理及び被毒処理後の排ガス浄化用触媒をそれぞれ用いて、NOx浄化率を測定した。ここでは、1.5L直噴ターボエンジンを用い、上記と同様にガソリンエンジンの排気口の後流にTWC1を配置し、TWC1の後段にTWC2をそれぞれ配置し、LA4(FTP75)モード(コールドスタート)に準拠して測定を行った。ここでは、エンジン直下に排ガス浄化用触媒が配置された1.5Lガソリンエンジンを用いて、エンジンダイナモメータを使って評価を実施した。そして、排ガス浄化用触媒TWC2の流入側ガス(TWC1の排出側ガス)とTWC2の排出側ガスとをサンプリングしてガス分析をそれぞれ行い、その差からTWC2のLA4モード全域NOx浄化率をそれぞれ算出した。なお、分析計としてHORIBA社製のMEXA-ONEを用い、測温位置は、排ガス浄化用触媒のフロント側から1インチの触媒層内とした。
【0129】
〔硫黄化合物スメルのラボ測定〕
耐久処理及び被毒処理を行っていないFreshの排ガス浄化用触媒TWC2をそれぞれ用いて、硫黄化合物スメルを測定した。ここでは、管状炉と昇温脱離装置を用いて、S成分の吸着と脱離の試験を実施した。まず管状炉を用いて、所定の量のS成分を触媒に流通させ、S成分を触媒に吸着させた。その後、S成分を吸着させた触媒を乳鉢等で粉砕し、昇温脱離装置(TPD Type-R)にセットして、還元ガス雰囲気下で昇温させ、脱離してくる含硫黄ガス成分であるH
2Sを質量分析計で検出した。このときの試験条件を表3に示す。
【表3】
なお、硫黄化合物スメルの評価基準は、以下のとおりである。
×(Bad) :基準(硫黄化合物スメルあり)
〇(Good) :Ni=0のH
2S発生量を基準として、50%以下
◎(Excellent):Ni=0のH
2S発生量を基準として、5%以下又は未検出
【0130】
【0131】
表4から明らかなとおり、Ni量の増加に伴い、H2Sの発生が抑制されていることやUS06モードにおけるNH3浄化率の向上が確認された。一方、PGM層とNi層が同一層に含まれている2層構成の応用比較例2~4では、NiがPGMと合金化したり、母材粒子と化合物を形成したりする等して、NOx浄化性能やNH3浄化性能が低下した。このことから、PGMを含有する触媒層とは別個にNiを含む触媒層を設けた層構成とし、Ni層にアルミナ含有率が50質量%以下の酸化物粒子を用いることにより、H2S生成を抑制しながら、優れたNOx浄化性能、NH3浄化性能を発揮できることが確認された。
本発明の排ガス浄化用触媒は、排ガス中のNOx、CO、HC等を削減する三元触媒として、広く且つ有効に利用することができ、例えばガソリンエンジン等の内燃機関の排ガスを浄化するための触媒用途において殊に有効に利用可能である。また、本発明の排ガス浄化用触媒は、エンジン直下型触媒コンバーターやタンデム配置の直下型触媒コンバーター等のTWCとして有効に利用することができる。