(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104213
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20240726BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240726BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20240726BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240726BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01F30/10 C
H01F30/10 M
H01F30/10 E
H01F30/10 A
H01F27/28 K
H01F27/30 160
H01F27/32 150
H01F27/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008328
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀川 俊之
(72)【発明者】
【氏名】黄 基浩
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5E044BA05
(57)【要約】
【課題】第1コイルと第2コイルとの間の結合度の調整が容易であり、小型のコイル装置を提供すること。
【解決手段】コイル装置1は、第1コイル10および第2コイル20と、第1コイル10および第2コイル20が設けられ、相互に組み合わされた複数のボビン30および40と、複数のボビン30および40に取り付けられたコア50aと、を有する。コア50aは、一対の外脚部52と、一対の外脚部52の間に位置する中脚部53と、外脚部52の一方と中脚部53との間に位置する突起54とを有する。第2コイル20は、中脚部53と突起54とを囲むように、第1コイル10とは異なる範囲に配置されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルおよび第2コイルと、
前記第1コイルおよび前記第2コイルが設けられ、相互に組み合わされた複数のボビンと、
複数の前記ボビンに取り付けられたコアと、を有し、
前記コアは、一対の外脚部と、一対の外脚部の間に位置する中脚部と、前記外脚部の一方と前記中脚部との間に位置する突起とを有し、
前記第2コイルは、前記中脚部と前記突起とを囲むように、前記第1コイルとは異なる範囲に配置されているコイル装置。
【請求項2】
前記第1コイルは、前記中脚部を囲むように配置されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記突起の横断面積は、前記中脚部の横断面積よりも小さい請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
複数の前記ボビンは、環状の第1ボビンと、前記第1ボビンに組み合わされる非環状の第2ボビンとを有し、
前記第2ボビンの延在方向の一端は、前記第1ボビンの周方向の第一位置に取り付けられており、
前記第2ボビンの延在方向の他端は、前記第1ボビンの周方向の第二位置に取り付けられている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記第2ボビンは、前記第1ボビンの周方向に沿って、C字状に湾曲している請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記第1コイルは、前記第1ボビンの外周面に設けられており、
前記第2コイルは、前記第1コイルの外周面に設けられる第1部分と、前記第2ボビンの外周面に設けられる第2部分とを有する請求項4に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記第1コイルを構成する第1ワイヤと前記第2コイルを構成する第2ワイヤとは、それぞれ絶縁被覆ワイヤである請求項6に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記第1ボビンの内側には、前記中脚部が配置されており、
前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の隙間には、前記突起が配置されている請求項4に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記突起は、前記中脚部と一方の前記外脚部との間に位置する第1突起と、前記中脚部と他方の前記外脚部との間に位置する第2突起とを有し、
前記第2コイルは、前記中脚部と前記第1突起と前記第2突起とを囲むように、前記第1コイルとは異なる範囲に配置されている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項10】
複数の前記ボビンは、環状の第1ボビンと、前記第1ボビンに組み合わされる非環状の第2ボビンと、前記第2ボビンとは異なる位置で、前記第1ボビンに組み合わされる非環状の第3ボビンとを有し、
前記第1ボビンの内側には、前記中脚部が配置されており、
前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の第1隙間には、前記第1突起が配置されており、
前記第1ボビンと前記第3ボビンとの間の第2隙間には、前記第2突起が配置されている請求項9に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リーケージトランスとして用いられるコイル装置として、以下の二つのタイプのコイル装置が開示されている。第一のコイル装置は、第1コイルと、第1コイルの径方向の外側に配置された第2コイルとを有する。第二のコイル装置は、第1コイルと、第1コイルの巻軸方向の一方側に配置された第2コイルとを有する。
【0003】
第一のコイル装置および第二のコイル装置のいずれにおいても、第1コイルと第2コイルとの間の結合度を調整するためには、第1コイルと第2コイルとの間の距離を調整する必要がある。すなわち、第一のコイル装置では、第1コイルと第2コイルとの間の距離を径方向に調整する必要があり、第二のコイル装置では、第1コイルと第2コイルとの間の距離を巻軸方向に調整する必要がある。
【0004】
しかしながら、所望の結合度が得られるように、第1コイルと第2コイルとの間の距離を調整することは容易ではない。また、第一のコイル装置においては、第1コイルまたは第2コイルの径方向に沿って、コイル装置が大型化するおそれがあり、第二のコイル装置においては、第1コイルまたは第2コイルの巻軸方向に沿って、コイル装置が大型化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、第1コイルと第2コイルとの間の結合度の調整が容易であり、小型のコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
第1コイルおよび第2コイルと、
前記第1コイルおよび前記第2コイルが設けられ、相互に組み合わされた複数のボビンと、
複数の前記ボビンに取り付けられたコアと、を有し、
前記コアは、一対の外脚部と、一対の外脚部の間に位置する中脚部と、前記外脚部の一方と前記中脚部との間に位置する突起とを有し、
前記第2コイルは、前記中脚部と前記突起とを囲むように、前記第1コイルとは異なる範囲に配置されている。
【0008】
本発明に係るコイル装置では、第2コイルは、中脚部と突起とを囲むように、第1コイルとは異なる範囲に配置されている。そのため、突起の位置、大きさあるいは形状等に基づいて、第1コイルと第2コイルとの間の漏れ磁束を調整することができる。これにより、第1コイルと第2コイルとの間の結合度を調整することができ、第1コイルと第2コイルとの間の結合度の調整が容易である。また、第1コイルと第2コイルとの間の距離を調整しなくても、第1コイルと第2コイルとの間の結合度を調整することができ、コイル装置の小型化を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係るコイル装置は、相互に組み合わされた複数のボビンを有する。そのため、例えば、複数のボビンを分離した状態で、単一のボビンにワイヤを巻回することができ、ワイヤの巻回作業が容易である。
【0010】
前記第1コイルは、前記中脚部を囲むように配置されていてもよい。この場合、第1コイルおよび第2コイルのいずれも中脚部を囲むように配置されるため、第1コイルと第2コイルとの間の結合度を適度に確保することができる。
【0011】
前記突起の横断面積は、前記中脚部の横断面積よりも小さくてもよい。この場合、第1コイルと第2コイルとの間に漏れ磁束が適度に生じるため、第1コイルと第2コイルとの間の結合度の調整が容易である。また、コアの大型化を防止し、コイル装置の小型化を図ることができる。
【0012】
複数の前記ボビンは、環状の第1ボビンと、前記第1ボビンに組み合わされる非環状の第2ボビンとを有し、前記第2ボビンの延在方向の一端は、前記第1ボビンの周方向の第一位置に取り付けられており、前記第2ボビンの延在方向の他端は、前記第1ボビンの周方向の第二位置に取り付けられていてもよい。非環状の第2ボビンを環状の第1ボビンに組み合わせることにより、小型のボビン組立体を構成することが可能となり、コイル装置の小型化を図ることができる。また、第1ボビンおよび第2ボビンを分離した状態では、単一のボビンにワイヤを巻回することができ、第1ボビンおよび第2ボビンを組み合わせた状態では、複数のボビンにワイヤを巻回することができる。そのため、ワイヤの巻回作業が容易である。
【0013】
前記第2ボビンは、前記第1ボビンの周方向に沿ってC字状に湾曲していてもよい。この場合、第1ボビンと第2ボビンとの間に隙間が形成され、その隙間にコアの突起を配置することができる。
【0014】
前記第1コイルは、前記第1ボビンの外周面に設けられており、前記第2コイルは、前記第1コイルの外周面に設けられる第1部分と、前記第2ボビンの外周面に設けられる第2部分とを有していてもよい。この場合、第1コイルの外周面と第2コイルの第1部分との間にボビンが配置されないため、その分、コイル装置の小型化を図ることができる。
【0015】
前記第1コイルを構成する第1ワイヤと前記第2コイルを構成する第2ワイヤとは、それぞれ絶縁被覆ワイヤでもよい。この場合、第1コイルの外周面と第2コイルの第1部分との間の絶縁が確保され、ショート不良の発生を防止することができる。
【0016】
前記第1ボビンの内側には、前記中脚部が配置されており、前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の隙間には、前記突起が配置されていてもよい。第1ボビンを囲むように第1コイルを設け、さらに第1ボビンおよび第2ボビンを囲むように第2コイルを設けることにより、中脚部が第1コイルで囲まれるとともに、中脚部および突起が第2コイルで囲まれる。これにより、第1コイルと第2コイルとの間に漏れ磁束を生じさせるとともに、突起の位置、大きさあるいは形状等に基づいて、第1コイルと第2コイルとの間の漏れ磁束を調整することができる。
【0017】
前記突起は、前記中脚部と一方の前記外脚部との間に位置する第1突起と、前記中脚部と他方の前記外脚部との間に位置する第2突起とを有し、前記第2コイルは、前記中脚部と前記第1突起と前記第2突起とを囲むように、前記第1コイルとは異なる範囲に配置されていてもよい。この場合、各突起の位置、大きさあるいは形状等に基づいて、第1コイルと第2コイルとの間の漏れ磁束を広範囲で調整することができる。
【0018】
複数の前記ボビンは、環状の第1ボビンと、前記第1ボビンに組み合わされる非環状の第2ボビンと、前記第2ボビンとは異なる位置で、前記第1ボビンに組み合わされる非環状の第3ボビンとを有し、前記第1ボビンの内側には、前記中脚部が配置されており、前記第1ボビンと前記第2ボビンとの間の第1隙間には、前記第1突起が配置されており、前記第1ボビンと前記第3ボビンとの間の第2隙間には、前記第2突起が配置されていてもよい。この場合、第1ボビンを囲むように第1コイルを設け、さらに第1ボビン、第2ボビンおよび第3ボビンを囲むように第2コイルを設けることにより、中脚部が第1コイルで囲まれるとともに、中脚部および各突起が第2コイルで囲まれる。これにより、第1コイルと第2コイルとの間に漏れ磁束を生じさせるとともに、各突起の位置、大きさあるいは形状等に基づいて、第1コイルと第2コイルとの間の漏れ磁束を広範囲で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の第1実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図4】
図4は
図2に示す第1ボビンおよび第2ボビンの斜視図である。
【
図5】
図5は
図4に示す第1ボビンおよび第2ボビンの組立体に第1コイルおよび第2コイルが配置された斜視図である。
【
図6】
図6は
図5に示す第1ボビンおよび第2ボビンの組立体にコアがさらに配置された平面図である。
【
図7】
図7は
図4に示す第1ボビンおよび第2ボビンの組立体にコアが配置された横断面図である。
【
図8】
図8は
図7に示す第1ボビンおよび第2ボビンの組立体に第1コイルおよび第2コイルがさらに配置された横断面図である。
【
図9】
図9は本発明の第2実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図11】
図11は
図10に示す第1ボビンおよび第2ボビンの組立体に第1コイルおよび第2コイルが配置された斜視図である。
【
図12】
図12は
図11に示す第1ボビンおよび第2ボビンの組立体にコアがさらに配置された横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示す本発明の第1実施形態に係るコイル装置1は、例えばリーケージトランスとして機能し、車載用充電器や各種電気機器の電源回路等に用いられる。
図2に示すように、コイル装置1は、第1コイル10と、第2コイル20と、第1ボビン30と、第2ボビン40と、コア50aおよび50bとを有する。コイル装置1は、さらにキャップ60aおよび60bと、ケース70とを有していてもよい。コイル装置1は、第1ボビン30の軸芯あるいは第1コイル10(または第2コイル20)の巻軸が、実装基板(図示略)に対して平行に配置されるコイル装置である。
【0022】
図2等において、X軸は、第1コイル10または第2コイル20の巻軸に平行な軸である。また、X軸は、コア50aまたは50bを平面視したときに、コア50aまたは50bの短手方向に平行な軸である。Y軸は、コア50aまたは50bを平面視したときに、コア50aまたは50bの長手方向に平行な軸である。Z軸は、X軸およびY軸に垂直な軸である。以下の説明では、X軸、Y軸およびZ軸の各々について、コイル装置1の中心に向かう方向を内側と呼び、コイル装置1の中心から離れる方向を外側と呼ぶ。
【0023】
図3に示すように、コア50aとコア50bとは、X軸に対して鏡面対称な形状を有する。コア50aおよび50b(ただし、後述する突起54を除いた部分)は、E型コアであり、第1ボビン30および第2ボビン40(
図2)の組立体に取り付けられる。コア50aおよび50bの形状は、
図3に示す形状に限定されない。例えば、コア50aは、複数の分割コア(例えば、複数のU型コア)の組立体でもよい。コア50bについても同様である。また、コア50aおよび50bの一方がE型コアであり、他方がI型コアでもよい。コア50aおよび50bの材質は、例えば金属あるいはフェライト等の磁性材料である。
【0024】
コア50aおよび50bは、それぞれ、一対の外脚部52と、中脚部53と、突起54とを有する。コア50aおよび50bは、それぞれ、ベース部51をさらに有していてもよい。ベース部51は、X軸方向に所定の厚みを有する板体である。ベース部51のZ軸方向の両側の側面55には、ベース部51のY軸方向の中心に向かってV字状に凹む凹部56が形成されている。凹部56は、Y軸に沿って、一方の外脚部52と他方の外脚部52との間に位置する。凹部56の底部57は、中脚部53の外周面と連続している。
【0025】
一対の外脚部52は、ベース部51のX軸方向の一方の面から、X軸に沿って突出している。一方の外脚部52は、ベース部51のY軸方向の一端に形成されており、他方の外脚部52は、ベース部51のY軸方向の他端に形成されている。
【0026】
中脚部53は、一対の外脚部52の間に位置する。中脚部53は、ベース部51のX軸方向の一方の面から、X軸に沿って突出している。中脚部53は、Y軸に沿って、ベース部51の中央よりも一方側(Y軸正方向側)に位置ずれしている。すなわち、中脚部53の中心と、ベース部51の中心とは、一致していない。ただし、中脚部53は、ベース部51のY軸方向の中央に位置していてもよい。中脚部53の横断面形状(中脚部53の軸方向に垂直な断面形状)は、楕円形であるが、円形あるいは多角形等でもよい。
【0027】
突起54は、一対の外脚部52の間に位置する。また、突起54は、一対の外脚部52の一方と中脚部53との間に位置する。突起54は、Y軸に沿って、ベース部51の中央よりも他方側(Y軸負方向側)に位置ずれしている。すなわち、Y軸方向に関して、突起54と中脚部53とは、ベース部51の中央に対して互いに反対側に位置ずれしている。ただし、突起54は、ベース部51のY軸方向の中央に位置していてもよい。また、突起54は、中脚部53と同様に、Y軸に沿って、ベース部51の中央よりも一方側(Y軸正方向側)に位置ずれしていてもよい。
【0028】
突起54のX軸に沿った突出長は、中脚部53のX軸方向に沿った突出長と等しくなっているが、これよりも短くてもよく、あるいは長くてもよい。また、突起54のX軸に沿った突出長は、外脚部52のX軸方向に沿った突出長と等しくなっているが、これよりも短くてもよく、あるいは長くてもよい。
【0029】
突起54の横断面形状(突起54の軸方向に垂直な断面形状)は、中脚部53の横断面形状とは異なっているが、これと等しくてもよい。本実施形態では、突起54の横断面形状は、C字状(弧状あるいはアーチ状)に湾曲した湾曲形状である。突起54は、V字状となるように、屈曲していてもよい。また、突起54の横断面形状は、突起54の延在方向の端部に向かうにしたがって先細となる先細形状である。突起54は、X軸方向から見て、細長くなるように形成されている。すなわち、X軸方向から見て、突起54のZ軸方向の長さ(全長)は、突起54のY軸方向の長さ(全長)よりも長い。なお、突起54の横断面形状は、
図3に示す形状に限定されず、楕円形、円形、半円形、半楕円形、四角形、その他の多角形あるいはその他の形状でもよい。
【0030】
突起54の外周面は、外脚部52に面する第1面541と、中脚部53に面する第2面542とを有する。第1面541および第2面542のいずれも、C字状(弧状あるいはアーチ状)に湾曲している。第1面541の少なくとも一部の曲率半径は、第2面542の曲率半径よりも小さくなっていてもよい。第2面542(および/または、第1面541)の曲率半径は、第2面542に面する中脚部53の第1面530(第1面530の少なくとも一部)の曲率半径と等しくてもよい。第1面541(および/または、第2面542)の曲率半径は、第1面541に面する外脚部52の第2面520(第2面520の少なくとも一部)の曲率半径と等しくてもよい。
【0031】
第1面541は、中脚部53が配置されている側とはY軸方向の反対側に向かって、突出するように湾曲している。同様に、第2面542は、中脚部53が配置されている側とはY軸方向の反対側に向かって、突出するように湾曲している。したがって、突起54は、全体として、中脚部53が配置されている側とはY軸方向の反対側に向かって、突出するように湾曲している。
【0032】
突起54のZ軸方向の長さ(全長)は、中脚部53のZ軸方向の長さ(全長)よりも長くなっているが、これと等しくてもよく、あるいはこれよりも短くてもよい。突起54のY軸方向の長さ(全長)は、中脚部53のY軸方向の長さ(全長)よりも短くなっているが、これと等しくてもよく、あるいはこれよりも長くてもよい。突起54の横断面積は、中脚部53の横断面積よりも小さくなっているが、これと等しくてもよく、あるいはこれよりも大きくてもよい。
【0033】
図2に示すように、第1コイル10は、巻回部11と、巻回部11から引き出された一対の引出部12aおよび12bとを有する。巻回部11は、第1ワイヤ13をコイル状に巻回することにより形成される。第2コイル20は、巻回部21と、巻回部20から引き出された一対の引出部22aおよび22bとを有する。巻回部21は、第2ワイヤ23をコイル状に巻回することにより形成される。第1コイル10および第2コイル20は、相互に組み合わされた第1ボビン30および第2ボビン40の組立体に設けられる。第1コイル10および第2コイル20の一方は一次側コイルであり、他方は二次側コイルである。
【0034】
第1ワイヤ13および第2ワイヤ23は、それぞれ、例えば銅などで構成される丸線、平角線、撚り線、リッツ線、編組線などの導電性芯線、あるいはこれらの導電性芯線を絶縁性の被膜で被覆した絶縁被覆ワイヤである。第1ワイヤ13および第2ワイヤ23の各々の線径(直径)は、例えば1.0~3.0mmである。第1ワイヤ13および第2ワイヤ23の線径は、それぞれ等しくてもよいが、異なっていてもよい。たとえば、第1ワイヤ13および第2ワイヤ23のうち、電流が大きい一方のワイヤの線径を他方のワイヤの線径よりも太くしてもよい。
【0035】
図4に示すように、第1ボビン30は、環状の構造を有する。第1ボビン30は、例えばPPS、PET、PBT、LCP等のプラスチック、あるいはその他の絶縁部材(好ましくは、耐熱性を有する材料)で構成されている。第1ボビン30は、第1コイル10(
図2)が設けられる本体部31を有する。第1ボビン30は、鍔部32aおよび32bと、突出部33aおよび33bと、溝部34aおよび34bと、係合部35a~35dと、凹部36aおよび36bと、設置部37aおよび37bと、凸部38(
図6)とをさらに有していてもよい。
【0036】
本体部31は、筒状に形成されており、貫通孔310を有する。貫通孔310には、コア50aおよび50b(
図3)の各々の中脚部53が挿入される。本体部31は、中脚部53の外周面に沿って配置される。本体部31の一部は、突起54と中脚部53との間の隙間に配置される(
図7参照)。また、本体部31の一部は、中脚部53と外脚部52との間の隙間に配置される。本体部31の横断面形状は、中脚部53の横断面形状に即した形状、すなわち楕円形状(楕円リング状)である。ただし、本体部31の横断面形状は、
図4に示す形状に限定されず、円形あるいは多角形等でもよい。本体部31の外周面には、例えば第1ワイヤ13(
図2)が巻回されることにより、第1コイル10が設けられる。
【0037】
鍔部32aは、本体部31のX軸方向の一端に形成されており、鍔部32bは、本体部31のX軸方向の他端に形成されている。鍔部32aおよび32bは、本体部31の外周面から、その径方向の外側に向かって突出している。鍔部32aおよび32bは、本体部31に設けられた第1コイル10(
図2)のX軸方向への位置ずれを防止する機能を有する。また、鍔部32aおよび32bは、第1コイル10の外周面に設けられた第2コイル20(
図8)のX軸方向への位置ずれを防止する機能を有する。鍔部32aの径方向外側への突出長は、第1ワイヤ13および第2ワイヤ23の各々の線径の和と同等、あるいはこれよりも大きくてもよい。鍔部32bについても同様である。
【0038】
突出部33aおよび33bは、本体部31のZ軸方向の一端に形成されている。突出部33aは、X軸に沿って、本体部31の一方側から外側に向かって突出している。突出部33bは、X軸に沿って、本体部31の他方側から外側に向かって突出している。突出部33aおよび33bは、楕円形状を有する本体部31の頂部に形成されている。
図1に示すように、突出部33aは、第1コア50aの凹部56に配置される。詳細な図示は省略するが、突出部33bは、第2コア50bの凹部56に配置される。突出部33aおよび33bは、凹部56に向かって突出する突出形状(凸形状)を有していてもよい。
【0039】
図4に示すように、溝部34aは突出部33aに形成されており、溝部34bは突出部33bに形成されている。溝部34aは、突出部33aのX軸方向の一端から他端にかけて延在している。溝部34bは、突出部33bのX軸方向の一端から他端にかけて延在している。溝部34aおよび34bは、鍔部32aと鍔部32bとの間の空間に連通している。
図6に示すように、溝部34aには、第1コイル10の引出部12aを挿通させることが可能となっている。溝部34bには、第1コイル10の引出部12bを挿通させることが可能となっている。引出部12aおよび12bは、それぞれ溝部34aおよび34bを介して、本体部31の外側に引き出される。
【0040】
図4に示すように、係合部35aは突出部33aに形成されており、係合部35bは突出部33bに形成されている。係合部35aおよび35bは、それぞれ突出部33aおよび33bのY軸方向の一方側(第2ボビン40に近接する側)に位置する。係合部35aおよび35bは、それぞれ突出部33aおよび33bのX軸方向の内側の端部を切り欠くように形成されている。係合部35aおよび35bは、鉤状(L字状)に凹む凹形状を有し、それぞれ後述する第2ボビン40の係合部45aおよび45bに係合する(
図5参照)。なお、係合部35aおよび35bの形状は、
図4に示す形状に限定されず、例えば孔状でもよい。
【0041】
凹部36aは突出部33aに形成されており、凹部36bは突出部33bに形成されている。凹部36aおよび36bは、それぞれ突出部33aおよび33bのX軸方向の外側に位置している。凹部36aおよび36bには、それぞれ後述するキャップ60aおよび60b(
図2)の各々の内係合部63が係合する。
【0042】
設置部37aおよび37bは、本体部31のZ軸方向の他端(突出部33aとは反対側)に形成されている。設置部37aは、X軸に沿って、本体部31の一方側から外側に向かって突出している。設置部37bは、X軸に沿って、本体部31の他方側から外側に向かって突出している。設置部37aおよび37bは、楕円形状を有する本体部31の底部に形成されている。詳細な図示は省略するが、設置部37aは、第1コア50aの凹部56(
図2)に配置される。また、設置部37bは、第2コア50bの凹部56に配置される。設置部37aおよび37bは、凹部56に向かって突出する突出形状(凸形状)を有していてもよい。
【0043】
係合部35cは設置部37aに形成されており、係合部35dは設置部37bに形成されている。係合部35cおよび35dは、それぞれ設置部37aおよび37bのY軸方向の一方側(第2ボビン40に近接する側)に位置する。係合部35cおよび35dは、それぞれ設置部37aおよび37bのX軸方向の内側の端部を切り欠くように形成されている。係合部35cおよび35dは、鉤状(L字状)に凹む凹形状を有し、それぞれ後述する第2ボビン40の係合部45cおよび45dに係合する(
図5参照)。なお、係合部35cおよび35dの形状は、
図4に示す形状に限定されず、例えば孔状でもよい。
【0044】
図4および
図6に示すように、凸部38は、鍔部32aに隣接するように、本体部31の外周面に形成されている。凸部38は、本体部31の外周面から、本体部31の径方向の外側に突出しており、本体部31の周方向に沿って延在している。凸部38のX軸方向の長さW1は、例えば第1ワイヤ13の線径の1/3以上1以下である。凸部38は、本体部31の外周面に配置される第1コイル10の位置を調整する機能を有する。第1コイル10は、凸部38と鍔部32bとの間において、凸部38のX軸方向の長さW1に応じた距離だけ、X軸負方向側に位置ずれして配置される。
【0045】
図4に示すように、第2ボビン40は、非環状の構造を有し、第1ボビン30に対して、Y軸方向の一方側から組み合わされる。より詳細には、第2ボビン40は、本体部31の長辺部分(Y軸方向の側部)に対してY軸方向に隣接するように、第2ボビン40に組み合わされる。第2ボビン40は、例えばPPS、PET、PBT、LCP等のプラスチック、あるいはその他の絶縁部材(好ましくは、耐熱性を有する材料)で構成されている。第2ボビン40は、本体部31の周方向に沿って、C字状(弧状あるいはアーチ状)に湾曲する湾曲形状を有する。第2ボビン40は、V字状となるように、屈曲していてもよい。第2ボビン40は、第2コイル10(
図2)の一部が設けられる本体部41を有する。第2ボビン40は、さらに鍔部42aおよび42bと、突出部43aおよび43bと、溝部44aおよび44bと、係合部45a~45dと、設置部47aおよび47bとを有していてもよい。
【0046】
本体部41は、C字状(弧状あるいはアーチ状)に湾曲しており、半リング状(半筒状)に形成されている。本体部41の曲率半径は、突起54の第1面541(
図3)の曲率半径と等しくてもよく、あるいは異なっていてもよい。また、本体部41の曲率半径は、外脚部52の第2面520(
図3)の曲率半径と等しくてもよく、あるいは異なっていてもよい。
図7に示すように、本体部41の少なくとも一部は、突起54と一方の外脚部52との間の空間に配置される。また、本体部41は、突起54の第1面541に沿って配置される。また、本体部41は、外脚部52の第2面520に沿って配置される。
図8に示すように、本体部41の外周面と外脚部52の第2面520との間には、第2コイル20を配置するための隙間が形成されている。第2ボビン40を第1ボビン30に組み合わせたとき、本体部41の少なくとも一部(本体部41のうち、本体部31に面する部分)は、本体部31に沿って配置される。
【0047】
図4に示すように、鍔部42aは、本体部41のX軸方向の一端に形成されており、鍔部42bは、本体部41のX軸方向の他端に形成されている。鍔部42aおよび42bは、本体部41の外周面から、その径方向の外側に向かって突出している。鍔部42aおよび42bは、本体部41に設けられた第2コイル20(
図2)のX軸方向への位置ずれを防止する機能を有する。鍔部42aの径方向外側への突出長は、第2ワイヤ23の線径と同等、あるいはこれよりも大きくてもよい。鍔部42bについても同様である。
【0048】
突出部43aおよび43bは、本体部41のZ軸方向の一端に形成されている。突出部43aは、X軸に沿って、本体部41の一方側から外側に向かって突出している。突出部43bは、X軸に沿って、本体部41の他方側から外側に向かって突出している。突出部43aおよび43bは、楕円形状を有する本体部41の頂部に形成されている。
図1に示すように、突出部43aは、第1コア50aの凹部56に配置される。詳細な図示は省略するが、突出部43bは、第2コア50bの凹部56(
図2)に配置される。突出部43aおよび43bは、凹部56に向かって突出する突出形状(凸形状)を有していてもよい。
【0049】
図4に示すように、溝部44aは突出部43aに形成されており、溝部44bは突出部43bに形成されている。溝部44aは、突出部43aのX軸方向の一端から他端にかけて延在している。溝部44bは、突出部43bのX軸方向の一端から他端にかけて延在している。溝部44aおよび44bは、鍔部42aと鍔部42bとの間の空間に連通している。
図6に示すように、溝部44aには、第2コイル20の引出部22aを挿通させることが可能となっている。溝部44bには、第2コイル20の引出部22bを挿通させることが可能となっている。引出部22aおよび22bは、それぞれ溝部44aおよび44bを介して、本体部41の外側に引き出される。
【0050】
図4に示すように、係合部45aは突出部43aに形成されており、係合部45bは突出部43bに形成されている。係合部45aおよび45bは、それぞれ突出部43aおよび43bのY軸方向の他方側(第1ボビン30に近接する側)に位置する。係合部45aおよび45bは、Y軸に沿って、突出部43aおよび43bの端部から内側(第1ボビン30に近接する側)に突出している。係合部45aおよび45bは、鉤状(L字状)に凹む凹形状を有し、それぞれ第1ボビン30の係合部35aおよび35bに係合する(
図5参照)。
【0051】
設置部47aおよび47bは、本体部41のZ軸方向の他端(突出部43aとは反対側)に形成されている。設置部47aは、X軸に沿って、本体部41の一方側から外側に向かって突出している。設置部47bは、X軸に沿って、本体部41の他方側から外側に向かって突出している。設置部47aおよび47bは、楕円形状を有する本体部41の底部に形成されている。詳細な図示は省略するが、設置部47aは、第1コア50aの凹部56(
図2)に配置される。また、設置部47bは、第2コア50bの凹部56に配置される。設置部47aおよび47bは、凹部56に向かって突出する突出形状(凸形状)を有していてもよい。
【0052】
係合部45cは設置部47aに形成されており、係合部45dは設置部47bに形成されている。係合部45cおよび45dは、それぞれ設置部47aおよび47bのY軸方向の他方側(第1ボビン30に近接する側)に位置する。係合部45cおよび45dは、Y軸に沿って、設置部47aおよび47bの端部から内側(第1ボビン30に近接する側)に突出している。係合部45cおよび45dは、鉤状(L字状)に凹む凹形状を有し、それぞれ第1ボビン30の係合部35cおよび35dに係合する(
図5参照)。
【0053】
図5に示すように、第1ボビン30と第2ボビン40との組立体において、第2ボビン40の延在方向の一端は、第1ボビン30の周方向の第一位置(
図4に示す本体部31の頂部に位置する突出部33aおよび33b)に取り付けられている。また、第2ボビン40の延在方向の他端は、第1ボビン30の周方向の第二位置(
図4に示す本体部31の底部に位置する設置部37aおよび37b)に取り付けられている。
【0054】
図7に示すように、本体部41は、本体部31の周方向に沿ってC字状に湾曲している。そのため、第1ボビン30と第2ボビン40との組立体において、本体部31と本体部41との間には隙間80が形成され、隙間80には突起54が配置されている。また、本体部31の内側には、中脚部53が配置されている。
【0055】
図8に示すように、第1コイル10は、中脚部53を囲むように、本体部31に配置されている。また、第2コイル10は、中脚部53を囲むように、第1コイル10の径方向の外側に配置されている。本実施形態では、第1コイル10および第2コイル20のいずれも中脚部53を囲むように配置されるため、第1コイル10と第2コイル20との間の結合度を適度に確保することができる。
【0056】
第1コイル10は、中脚部53と一方の外脚部52との間の隙間と、中脚部53と突起54との間の隙間とを通過している。他方、第2コイル20は、中脚部53と一方の外脚部52との間の隙間と、突起54と他方の外脚部52との間の隙間とを通過している。このように、第2コイル20は、中脚部53と突起54とをまとめて囲むように、第1コイル10とは異なる範囲(領域)に配置されている。また、第2コイル20は、中脚部53と突起54と第1コイル10とを囲むように、第1コイル10よりも広い範囲(領域)に配置されている。
【0057】
第2コイル20が配置される範囲(領域)は、一方の外脚部52と他方の外脚部52との間であり、かつ、中脚部53および突起54の外側である。したがって、第2コイル20が配置される範囲には、中脚部53と突起54とが含まれている。他方、第1コイル10が配置される範囲(領域)は、一方の外脚部52(Y軸正方向側の外脚部52)と突起54との間である。したがって、第1コイル10が配置される範囲には、中脚部53が含まれている。
【0058】
第2コイル20は、第1コイル10の外周面に設けられる第1部分25と、第2ボビン40の本体部41の外周面に設けられる第2部分26とを有する。第1部分25は、第1コイル10の周方向に沿って、第1コイルの10の外周面の一部(第1コイル10の外周面のうち、Y軸正方向側の領域)に配置(積層)されている。第1部分25の少なくとも一部は、中脚部53と外脚部52との間に配置されている。第1部分25と第1コイル10の外周面との間には、第1ボビン30および第2ボビン40のいずれも配置されておらず、第1部分25は、第1コイル10の外周面と直接的に接触している。そのため、これらのボビンの肉厚に応じた分だけ、コイル装置1の小型化を図ることができる。また、第1ワイヤ13および第2ワイヤ23は、それぞれ絶縁被覆ワイヤで構成されているため、第1コイル10の外周面と第2コイル20の第1部分25との間の絶縁が確保され、ショート不良の発生を防止することができる。
【0059】
第2部分26は、本体部41の周方向に沿って、本体部41の全域に配置されている。第2部分26は、本体部41の周方向に沿って、本体部41の一部に配置されていてもよい。第2部分26の少なくとも一部は、突起54と外脚部52との間に配置されている。第1部分25と第2部分26との間に位置する第2コイル20の一部は、第1コイル10の外周面と本体部41の外周面との間において、第2コイル20の周方向に沿って、空中配線されていてもよい。
【0060】
本体部41の外周面は、第1コイル10の周方向に沿って、第1コイル10の外周面を仮想的に延長した先に配置されている。そのため、第2コイル20は、第2コイル20の頂部または底部において、第1コイル10の外周面から本体部41の外周面にかけて、一定の曲率で湾曲している。
【0061】
図6に示すように、引出部12aは、溝部34aを介して、本体部31から引き出され、X軸に沿って、突出部33aの一端よりも外側へさらに引き出されている。また、引出部12bは、溝部34bを介して、本体部31から引き出され、X軸に沿って、突出部33bの他端よりも外側へさらに引き出されている。また、引出部22aは、溝部44aを介して、本体部41から引き出され、X軸に沿って、突出部43aの一端よりも外側へさらに引き出されている。また、引出部22bは、溝部44bを介して、本体部41から引き出され、X軸に沿って、突出部43bの他端よりも外側へさらに引き出されている。
図1に示すように、引出部12a、12b、22aおよび22bの各々の先端には端子100が取り付けられいてもよい。
【0062】
第2コイル20は、全体として、第1コイル10に対して、X軸方向の一方側(突出部33aが位置する側)に位置ずれしている。第2コイル20の一部は、凸部38の上に配置されている。ただし、第2コイル20の位置は、
図6に示す位置に限定されない。
【0063】
図2に示すように、ケース70は、側部71と、底部72と、ボス部73とを有する。ケース70は、アルミ等の冷却性に優れた金属等で構成されている。ケース70には、第1ボビン30および第2ボビン40などを収容するための開口部が形成されている。第1ボビン30、第2ボビン40、コア50aおよびコア50bなど、コイル装置1の一部は、ケース70の開口部から露出している(
図1参照)。ボス部73には、ネジなどの留め具を固定することが可能であり、これにより、ケース70を実装基板(図示略)に取り付けることができる。
【0064】
図1に示すように、ケース70の内部には、ポッティング樹脂90を充填することが可能となっている。ポッティング樹脂90は、放熱性樹脂であり、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂あるいはエポキシ樹脂等で構成される。ポッティング樹脂90は、ケース70の開口部付近、例えば側部71の高さの70~90%程度まで充填される。
【0065】
本実施形態では、ケース70およびポッティング樹脂90を介して、第1コイル10、第2コイル20、第1ボビン30、第2ボビン40、コア50aおよびコア50b等の熱を外部に効率よく放熱し、コイル装置1の冷却効率を高めることが可能となっている。
【0066】
図2に示すように、キャップ60aおよび60bは、それぞれ、被覆部61と、一対の外係合部62と、内係合部63とを有する。被覆部61は、扁平な板体からなり、平面視において長方形状を有する。一対の外係合部62は、それぞれ、被覆部61のY軸方向の一端および他端に形成されており、Z軸に沿って、被覆部61の一端から内側に突出している。内係合部63は、一対の外係合部62の間に位置しており、Z軸に沿って、被覆部61の一端から内側に突出している。
【0067】
キャップ60aの内係合部63は、第1ボビン30の凹部36aに係合する。キャップ60aの一方の外係合部62は、第1ボビン30の突出部33aのY軸方向の端部に係合する。キャップ60aの他方の外係合部62は、第2ボビン40の突出部43aのY軸方向の端部に係合する。被覆部61は、突出部33aおよび43aを覆うように、突出部33aおよび43aのZ軸方向の端部に取り付けられる(
図1参照)。
【0068】
キャップ60bの内係合部63は、第1ボビン30の凹部36bに係合する。キャップ60bの一方の外係合部62は、第1ボビン30の突出部33bのY軸方向の端部に係合する。キャップ60bの他方の外係合部62は、第2ボビン40の突出部43bのY軸方向の端部に係合する。被覆部61は、突出部33bおよび43bを覆うように、突出部33bおよび43bのZ軸方向の端部に取り付けられる。
【0069】
次に、コイル装置1の製造方法について説明する。まず、
図2に示す各部材を準備する。次に、第1ボビン30の本体部31に第1ワイヤ13を巻回し、本体部31に巻回部11を形成する。このとき、
図6に示すように、溝部34aを介して、引出部12aを突出部33aよりもX軸方向の外側に引き出してもよい。また、溝部34bを介して、引出部12bを突出部33bよりもX軸方向の外側に引き出してもよい。
【0070】
次に、
図5に示すように、第1コイル10が形成された第1ボビン30に第2ボビン40を組み合わせる。例えば、
図4中の矢印の方向に、第2ボビン40の係合部45a~45dを第1ボビン30の係合部35a~35dに嵌め込むことにより、第1ボビン30に第2ボビン40を組み合わせる。
【0071】
次に、
図5に示すように、第1ボビン30および第2ボビン40の組立体に第2コイル20を形成する。より詳細には、
図8に示すように、第1コイル10の外周面の一部と第2ボビン40の本体部41の外周面とに跨るように、第1コイル10の外周面上および本体部41上に、第2ワイヤ23を巻回する。このとき、
図6に示すように、溝部44aを介して、引出部22aを突出部43aよりもX軸方向の外側に引き出してもよい。また、溝部44bを介して、引出部22bを突出部43bよりもX軸方向の外側に引き出してもよい。
【0072】
次に、第1コイル10および第2コイル20が設けられた第1ボビン30および第2ボビン40の組立体に、
図2に示すコア50aおよび50bを取り付ける。より詳細には、
図8に示すように、第1ボビン30の貫通孔310の内部に、コア50aおよび50bの各々の中脚部53を挿入する。また、本体部31と本体部41との間の隙間80の内部に、コア50aおよび50bの各々の突起54を挿入する。また、第1ボビン30および第2ボビン40の組立体のY軸方向の両側に、一対の外脚部52を配置する。必要に応じて、コア50aとコア50bとを接着剤等で接着してもよい。
【0073】
次に、
図1に示すように、キャップ60aを突出部33aおよび43aに跨るように、これらに取り付ける。また、キャップ60bを突出部33bおよび43b(
図4)に跨るように、これらに取り付ける。なお、キャップ60aおよび60bを取り付けるタイミングは適宜変更してもよい。
【0074】
次に、
図2に示すケース70に、コア50aおよび50bが取り付けられた第1ボビン30および第2ボビン40の組立体を収容する。次に、
図1に示すように、ケース70の内部にポッティング樹脂90を充填する。以上のようにして、コイル装置1を製造することができる。
【0075】
以上で説明したように、本実施形態では、
図8に示すように、第2コイル20が、中脚部53と突起54とを囲むように、第1コイル10とは異なる範囲に配置されている。そのため、突起54の位置、大きさあるいは形状等に基づいて、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束を調整することができる。これにより、第1コイル10と第2コイル20との間の結合度を調整することができ、第1コイル10と第2コイル20との間の結合度の調整が容易である。また、第1コイル10と第2コイル20との間の軸方向の距離を調整することなく、第1コイル10と第2コイル20との間の結合度を調整することができるため、コイル装置1の小型化を図ることができる。さらに、第1コイル10と第2コイル20との間の径方向の距離を、全周にわたって調整することなく、第1コイル10と第2コイル20との間の結合度を調整することができ、この点においても、コイル装置1の小型化を図ることができる。また、本実施形態のコイル装置1では、交流抵抗特性の劣化を防止し、銅損を低減することができる。
【0076】
また、コイル装置1は、相互に組み合わされた第1ボビン30および第2ボビン40を有する。そのため、例えば、第1ボビン30と第2ボビン40とを分離した状態で、単一のボビン(第1ボビン30)に第1ワイヤ13を巻回することができ、第1ワイヤ13の巻回作業が容易である。
【0077】
また、突起54の横断面積は、中脚部53の横断面積よりも小さい。そのため、第1コイル10と第2コイル20との間に漏れ磁束が適度に生じるため、第1コイル10と第2コイル20との間の結合度の調整が容易である。また、コア50aおよび50bの大型化を防止し、コイル装置1の小型化を図ることができる。
【0078】
また、
図4および
図5に示すように、コイル装置1は、環状の第1ボビン30と、第1ボビン30に組み合わされる非環状の第2ボビン40とを有し、第2ボビン40の延在方向の一端は、第1ボビン30の周方向の頂部に取り付けられており、第2ボビン40の延在方向の他端は、第1ボビン30の周方向の底部に取り付けられている。非環状の第2ボビン40を環状の第1ボビン30にY軸方向の側方から組み合わせる場合、環状の第2ボビンを環状の第1ボビンに組み合わせる場合に比べて、小型のボビン組立体を構成することが可能となり、コイル装置1の小型化を図ることができる。また、第1ボビン30と第2ボビン40とが分離された状態では、単一のボビン(第1ボビン30)に第1ワイヤ13を巻回することができ、第1ボビン30と第2ボビン40とが組み合わされた状態では、複数のボビン(第1ボビン30および第2ボビン40)に第2ワイヤ23を巻回することができる。そのため、第1ワイヤ13および第2ワイヤ23の巻回作業が容易である。
【0079】
また、本体部31の内側には、中脚部53が配置されており、本体部31と本体部41との間の隙間80には、突起54が配置されている。本体部31を囲むように第1コイル10を設け、さらに本体部31および本体部41をまとめて囲むように第2コイル20を設けることにより、中脚部53が第1コイル19で囲まれるとともに、中脚部53および突起54が第2コイル20で囲まれる。これにより、第1コイル10と第2コイル20との間に漏れ磁束を生じさせるとともに、突起54の位置、大きさあるいは形状等に基づいて、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束を調整することができる。
【0080】
(第2実施形態)
図9に示す第2実施形態のコイル装置1Aは、以下に示す点を除いて、第1実施形態のコイル装置1と同様の構成を有する。第1実施形態のコイル装置1と重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0081】
図10に示すように、コイル装置1Aは、第1ボビン30Aと、2つの第2ボビン40aおよび40bと、コア50aAおよび50bAとを有する。コア50aAおよび50bAは、それぞれ、2つの突起54を有する。一方の突起54は、中脚部53と一方の外脚部52との間に位置する。他方の突起54は、中脚部53と他方の外脚部52との間に位置する。
【0082】
第1ボビン30Aは、2つの係合部35aと、2つの係合部35bと、2つの係合部35cと、2つの係合部35dとを有する。2つの係合部35aは、Y軸に沿って相互に反対側に位置するように、突出部33aに形成されている。2つの係合部35bは、Y軸に沿って相互に反対側に位置するように、突出部33bに形成されている。2つの係合部35cは、Y軸に沿って相互に反対側に位置するように、設置部37aに形成されている。2つの係合部35dは、Y軸に沿って相互に反対側に位置するように、設置部37bに形成されている。
【0083】
第2ボビン40aおよび40bは、第1実施形態の第2ボビン40と同一の構成を有する。第2ボビン40aは、第1ボビン30Aに対して、Y軸方向の一方側から組み合わされる。また、第2ボビン40aは、本体部31の長辺部分(側部)に対してY軸方向に隣接するように、第1ボビン30Aに組み合わされる。
【0084】
第2ボビン40bは、第2ボビン40aとは異なる位置で、第1ボビン30Aに組み合わされる。より詳細には、第2ボビン40bは、第1ボビン30Aに対して、Y軸方向の他方側から組み合わされる。また、第2ボビン40bは、本体部31の長辺部分(側部)に対してY軸方向に隣接するように、第1ボビン30Aに組み合わされる。
【0085】
図11に示すように、第2ボビン40aの係合部45aは、これとY軸方向に対向する第1ボビン30Aの係合部35aに係合する。第2ボビン40aの係合部45bは、これとY軸方向に対向する第1ボビン30Aの係合部35bに係合する。第2ボビン40aの係合部45cは、これとY軸方向に対向する第1ボビン30Aの係合部35cに係合する。第2ボビン40aの係合部45dは、これとY軸方向に対向する第1ボビン30Aの係合部35dに係合する。
【0086】
また、第2ボビン40bの係合部45aは、これとY軸方向に対向する第1ボビン30Aの係合部35aに係合する。第2ボビン40bの係合部45bは、これとY軸方向に対向する第1ボビン30Aの係合部35bに係合する。第2ボビン40bの係合部45cは、これとY軸方向に対向する第1ボビン30Aの係合部35cに係合する。第2ボビン40bの係合部45dは、これとY軸方向に対向する第1ボビン30Aの係合部35dに係合する。
【0087】
図12に示すように、本体部31の内側には、中脚部53が配置されている。また、本体部31と第2ボビン40aの本体部41との間の隙間80aには、一方の突起54が配置されている。また、本体部31と第2ボビン40bの本体部41との間の隙間80bには、他方の突起54が配置されている。
【0088】
第1コイル10は、中脚部53を囲むように、本体部31の外周面に配置されている。他方、第2コイル20は、中脚部53と一対の突起54とを囲むように、第1コイル10とは異なる範囲(第1コイル10よりも広い範囲)に配置されている。第2コイル20は、中脚部53および一対の突起54に加えて、第1コイル10を囲むように、第1コイル10の径方向の外側に配置されている。
【0089】
第2コイル20は、第1コイル10の外周面に配置されている第1部分25と、第2ボビン40aの本体部41の外周面に配置されている第2部分26aと、第2ボビン40bの本体部41の外周面に配置されている第2部分26bとを有する。第2部分26aの少なくとも一部は、一方の突起54と一方の外脚部52との間に配置されている。第2部分26bの少なくとも一部は、他方の突起54と他方の外脚部52との間に配置されている。第1部分25は、主として、第1コイル10のZ軸方向の頂部および底部に配置されている。第1部分25と第2部分26aとの間に位置する第2コイル20の一部は、第1コイル10の外周面と第2ボビン40aの本体部41の外周面との間において、第2コイル20の周方向に沿って、空中配線されていてもよい。また、第1部分25と第2部分26bとの間に位置する第2コイル20の一部は、第1コイル10の外周面と第2ボビン40bの本体部41の外周面との間において、第2コイル20の周方向に沿って、空中配線されていてもよい。
【0090】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態では、第2コイル20が、中脚部53と一対の突起54とを囲むように、第1コイル10とは異なる範囲に配置されている。そのため、各突起54の位置、大きさあるいは形状等に基づいて、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束を広範囲で調整することができる。
【0091】
また、コイル装置1Aは、環状の第1ボビン30Aと、第1ボビン30Aに組み合わされる非環状の第2ボビン40aと、第2ボビン40aとは異なる位置で、第1ボビン30Aに組み合わされる非環状の第2ボビン40bとを有する。そして、本体部31の内側には、中脚部53が配置されており、本体部31と第2ボビン40aの本体部41との間の隙間80aには、一方の突起54が配置されており、本体部31と第2ボビン40bの本体部41との間の隙間80bには、他方の突起54が配置されている。そのため、本体部31を囲むように第1コイル10を設け、さらに第1ボビン30A、第2ボビン40aおよび40bをまとめて囲むように第2コイル20を設けることにより、中脚部53が第1コイル10で囲まれるとともに、中脚部53および各突起54が第2コイル20で囲まれる。これにより、第1コイル10と第2コイル20との間に漏れ磁束を生じさせるとともに、各突起54の位置、大きさあるいは形状等に基づいて、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束を広範囲で調整することができる。
【0092】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。例えば、上記各実施形態では、本発明のトランスへの適用例について説明したが、本発明をトランス以外のコイル装置に適用してもよい。
【0093】
上記第1実施形態では、
図3に示すように、コア50aおよび50bの各々に突起54が設けられていたが、突起54は、コア50aおよび50bのいずれか一方にのみ設けられていてもよい。また、上記第2実施形態において、
図10に示すコア50aAおよび50bAのいずれかにのみ、各突起54が設けられていてもよい。
【0094】
上記第1実施形態において、
図3に示すコア50aまたは50bの突起54の数は、2つ以上でもよい。この場合、2つ以上の突起54が、Y軸に沿って、所定の間隔で隣接して配置されていてもよい。また、
図2に示す第2ボビン40の数は、2つ以上でもよい。この場合、2つ以上の第2ボビン40が、Y軸に沿って、所定の間隔で隣接して配置されていてもよい。
【0095】
図1および
図2に示すように、上記第1実施形態のコイル装置1は、第1コイル10および第2コイル20の巻軸が、実装基板(図示略)に対して平行に配置されるコイル装置であった。しかしながら、コイル装置1は、第1コイル10および第2コイル20の巻軸が、実装基板(図示略)に対して垂直に配置されるコイル装置でもよい。上記第2実施形態のコイル装置1Aについても同様である
【符号の説明】
【0096】
1,1A…コイル装置
10…第1コイル
11…巻回部
12a,12b…引出部
13…第1ワイヤ
20…第2コイル
21…巻回部
22a,22b…引出部
23…第2ワイヤ
30,30A…第1ボビン
31…本体部
32a,32b…鍔部
33a,33b…突出部
34a,34b…溝部
35a,35b,35c,35d…係合部
36a,36b…凹部
37a,37b…設置部
38…凸部
40…第2ボビン
41…本体部
42a,42b…鍔部
43a,43b…突出部
44a,44b…溝部
45a,45b,45c,45d…係合部
47a,47b…設置部
50a,50b…コア
51…ベース部
52…外脚部
53…中脚部
54…突起
55…側面
56…凹部
57…底部
60a,60b…キャップ
61…被覆部
62…外係合部
63…内係合部
70…ケース
71…側部
72…底部
73…ボス部
80,80a,80b…隙間
90…ポッティング樹脂