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  • 特開-内圧管 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104217
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】内圧管
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/08 20060101AFI20240726BHJP
   F16L 9/14 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
F16L9/08
F16L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008337
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】398062574
【氏名又は名称】カナフレックスコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金尾 茂樹
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111BA07
3H111BA15
3H111CA52
3H111CC07
3H111CC22
3H111DA07
3H111DB12
(57)【要約】
【課題】周囲を補強繊維入りのコンクリート層で覆うことにより、より高い内圧に耐えることが可能となり、より高い圧力を有する水等の流体を輸送又は貯留することができる、内圧管を提供する。
【解決手段】本発明に係る内圧管10は、内部の流体圧に対する耐久性を有する内圧管であり、外壁面が螺旋波形状である樹脂製の波形管12と、波形管12の外周を被覆する筒状であり、補強繊維を有するコンクリート層14と、少なくとも波形管12の中心軸C方向の両端に固定され、中央部が開口した円盤状の2個のフランジ16・16と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の流体圧に対する耐久性を有する内圧管であり、
外壁面が螺旋波形状である樹脂製の波形管と、
前記波形管の外周を被覆する筒状であり、補強繊維を有するコンクリート層と、
少なくとも前記波形管の中心軸方向の両端に固定され、中央部が開口した円盤状の2個のフランジと、を備える、内圧管。
【請求項2】
前記波形管は、外壁面が螺旋波形状である外側樹脂層と、前記外側樹脂層の内周に密着し又は一体となる内側樹脂層と、から構成された、請求項1に記載する内圧管。
【請求項3】
前記外側樹脂層の螺旋波形状を形成する凸部の内側が中空部を有し、該螺旋波形状に沿った鋼板が該中空部内面に密着された、請求項2に記載する内圧管。
【請求項4】
前記外側樹脂層の外壁面に沿った螺旋状の第一鉄筋を有する、請求項2又は3に記載する内圧管。
【請求項5】
前記コンクリート層は、前記中心軸方向に延びる第二鉄筋を有する、請求項2又は3に記載する内圧管。
【請求項6】
前記コンクリート層は、前記外側樹脂層の螺旋波形状に沿った螺旋中空部を有する、請求項2又は3に記載する内圧管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体による高い内圧に耐えることのできる内圧管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管壁をダブルピッチ状の螺旋凹凸波形に形成するとともに、金属薄板製の補強帯板を利用することにより、耐圧変形性能と可撓性とに優れた管路が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-11076
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、金属製帯板が配設されている山(谷)と金属製帯板が配設されていない山(谷)とが交互になって一体的に連結形成されている螺旋管構造とすることにより、管の耐圧変形性能と可撓性とを向上させる技術が記載されている。一方、輸送する流体の圧力増大等により、高い内圧に耐えることが求められている。そこで、本開示は、上記に関する課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る内圧管は、内部の流体圧に対する耐久性を有する内圧管であり、外壁面が螺旋波形状である樹脂製の波形管と、前記波形管の外周を被覆する筒状であり、補強繊維を有するコンクリート層と、少なくとも前記波形管の中心軸方向の両端に固定され、中央部が開口した円盤状の2個のフランジと、を備える。
【0006】
また、本発明に係る内圧管において、前記波形管は、外壁面が螺旋波形状である外側樹脂層と、前記外側樹脂層の内周に密着し又は一体となる内側樹脂層と、から構成される。
【0007】
また、本発明に係る内圧管は、前記外側樹脂層の螺旋波形状を形成する凸部の内側が中空部を有し、該螺旋波形状に沿った鋼板が該中空部内面に密着される。
【0008】
また、本発明に係る内圧管は、前記外側樹脂層の外壁面に沿った螺旋状の第一鉄筋を有する。
【0009】
また、本発明に係る内圧管において、前記コンクリート層は、前記中心軸方向に延びる第二鉄筋を有する。
【0010】
また、本発明に係る内圧管において、前記コンクリート層は、前記外側樹脂層の螺旋波形状に沿った螺旋中空部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る内圧管によれば、周囲を補強繊維入りのコンクリート層で覆うことにより、高い内圧に耐えることが可能となる。このため、高い圧力を有する水等の流体を輸送又は貯留することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は第1実施形態に係る内圧管を示す図、(b)は内圧管の拡大断面図。
図2】(a)は第2実施形態に係る内圧管を示す図、(b)は内圧管の拡大断面図。
図3】第3実施形態に係る内圧管の拡大断面図。
図4】第4実施形態に係る内圧管の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、図1に基づき、本発明の第1実施形態に係る内圧管の構造を詳細に説明する。本明細書又は特許請求の範囲において、螺旋とは、内圧管の中心軸を巻く形状の螺旋を言う。符号10は、内部の流体圧に対する耐久性を有する内圧管を示す。流体とは、主として、水若しくは石油等の液体、又はガス等の気体である。
【0014】
内圧管10は、外壁面が螺旋波形状である樹脂製の波形管12と、波形管12の外周を被覆する筒状であり、補強繊維を有するコンクリート層14と、を有する。また、内圧管10は、波形管12の中心軸C方向の両端に固定され、中央部が開口した円盤状の2個のフランジ16を有する。内圧管10の寸法は、特に限定されず、例えば、円柱状の中空部の内径が約1200mmである。フランジ16は、つば部(図示しない)が中空部に嵌入され固定されている。フランジ16は、鉄、アルミ、ステンレス等の金属から形成される。
【0015】
波形管12は、外壁面が螺旋波形状である外側樹脂層18と、外側樹脂層18の内周に密着し又は一体となる内側樹脂層22と、から構成される。外側樹脂層18の螺旋波形状を形成する凸部26の内側が中空部28を有し、螺旋波形状に沿った鋼板20が中空部28内面(上面)に密着されている。
【0016】
波形管12の成形は、押出成型された外側樹脂層18に対し、鋼板20が螺旋状に連続的に供給され、合着されて行われる。また、内側樹脂層22が内側から連続的に供給され、加熱装置等により外側樹脂層18に密着される。
【0017】
コンクリート層14は、外側樹脂層18の外壁面に沿った螺旋状の第一鉄筋24が内蔵されている。第一鉄筋24の両端は、2個のフランジ16に固定されている。コンクリート層14は、波形管12を筒状の型枠(図示しない)に入れて、型枠と波形管12との隙間にコンクリートを充填して固化させた後に、型枠を取り外すことによって形成される。
【0018】
コンクリート層14は、例えばセメント、水、補強繊維を混練した混練物を成形型内に充填して、養生固化することで得られる比較的に軽量で高い圧縮強度と、0.9~1.5程度の比重とを有する繊維補強コンクリート材を主体として形成されたものである。
【0019】
前記セメントの材質は、特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等、各種セメントを使用できる。また、前記補強繊維としては、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維、バサルト繊維等が挙げられる。
【0020】
外側樹脂層18の材質は、ポリオレフィン系樹脂、特には、高密度ポリエチレンが好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、高密度ポリエチレン以外に、他の樹脂成分を含んでもよい。かかる樹脂成分としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。他の樹脂成分の含有率は、ポリオレフィン系樹脂100質量%中、10質量%以下であることが好ましい。
【0021】
内側樹脂層22の材質は、上記高密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンである。低密度ポリエチレンとしては、例えばポリオレフィン樹脂である。他の低密度ポリエチレン、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等)などが配合されていてもよい。とくに可撓性が要求される場合には、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマーを使用することが好ましい。鋼板20の材質は、例えば、鉄、アルミ又はステンレス等の金属である。
【0022】
コンクリート層14に含まれる補強繊維は、例えば、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等である。これらの繊維の中でも、ビニロン繊維は、耐久性が高く、セメントとの親和性に優れるので好ましい。補強繊維の繊維長は特に限定されないが、短繊維であることが好ましく、例えば15~45mmの範囲が好ましい。補強繊維の繊維長が15mm未満では補強効果が不足する傾向がみられる。補強繊維の繊維長が長い方が補強効果の点では有利である。一方で、繊維長が長くなるほど分散性が低下し、成形体内で補強繊維が偏在して、却って強度を低下させる場合もある。また、補強繊維の太さにも特に限定はないが、通常、10~1000μmのものが用いられる。
【0023】
コンクリート層14に含まれる補強繊維の配合量は、前記セメント100重量部に対して0.2~6重量部とすることが好ましい。補強繊維の配合量が少ないと、補強効果も低く、強度も低くなる。補強繊維の配合量が多いほど補強効果においては有利であるものの、補強繊維の配合量が過剰であるとセメント混練物中での分散性が悪くなり、補強繊維が偏在して、強度が不均一になり、却って強度を低下させるおそれがある。このような観点から、補強繊維の配合量のより好ましい範囲は、セメント100重量部に対して0.4~4重量部である。コンクリート層14の強度の具体的な数値は、例えば、圧縮強度において、40~120N/mmである。
【0024】
本願発明の内圧管10によれば、樹脂製の波形管12を、補強繊維を有するコンクリート層14で被覆することにより、強度を高めることができる。このため、内部の流体による高い内圧に対する耐久性を有することが可能となる。例えば、1.3メガパスカル~3メガパスカルの内圧に対する耐久性を有することが可能となる。しかも、コンクリート層14は軽量であるため、内圧に対する耐久性を高めながらも施工の容易性を確保できる。また、コンクリート層14を有することにより、負荷による波形管12の負担を軽減できる。
【0025】
また、本願発明の内圧管10によれば、波形管12は、主として樹脂から形成され、曲げやすい波形形状である。このため、波形管12を湾曲形状に形成した後に、湾曲形状の型枠に波形管を入れて、型枠内にコンクリートを充填すれば、湾曲形状の内圧管10を容易に形成することができる。また、本願発明の内圧管10によれば、第一鉄筋24を有するため、内圧管10全体を補強できる。このため、内部の流体による更に高い内圧に対する耐久性を有することが可能となる。また、第一鉄筋24がコイル形状の螺旋状であるため、波形管12の強度を高めながらも弾性を維持することができる。
【0026】
次に、図2に基づき、第2実施形態に係る内圧管10について説明する。第2実施形態に係る内圧管10は、コンクリート層14内に、中心軸C方向に延びる第二鉄筋30が設けられている。第二鉄筋30の両端は、フランジ16に固定されている。第二鉄筋30は、フランジ16の円周方向に沿って、中心軸Cのまわりに、複数本、例えば32本設けられている。第二鉄筋30を設けることにより、比較的に引張方向(中心軸C方向)に脆弱なコンクリート層14の強度を高めることができる。
【0027】
次に、図3に基づき、第3実施形態に係る内圧管10について説明する。第3実施形態に係る内圧管10は、コンクリート層14内に、螺旋状に形成された螺旋中空部32が設けられている。螺旋中空部32は、外壁面の螺旋波形状に沿って螺旋状のパイプ(図示しない)を配置した波形管12を入れた型枠内にコンクリートを流し込んだ後にパイプを抜き取ることにより形成される。コンクリート層14内に螺旋中空部32を設けておくことにより、軽量化を図ることができる。パイプを抜き取らないで設けておいてもよい。
【0028】
次に、図4に基づき、第4実施形態に係る内圧管10について説明する。第4実施形態に係る内圧管10は、フランジ16がレジンコンクリートから形成され、フランジ16内に複数本の第三鉄筋34が内蔵されている。第三鉄筋34は、フランジ16の円周方向に複数本配列されている。第三鉄筋34は、第一鉄筋24に連結固定されることが好ましい。フランジ16が鉄よりも約7割軽量のレジンコンクリートから形成されることにより、フランジ16を軽量化することができる。一方で、第三鉄筋34によってフランジ16付近を補強することができる。第三鉄筋34は、異形鉄筋であることが好ましい。
【0029】
以上、本発明の各実施形態について図面に基づいて説明したが、本発明は図示したものには限定されない。例えば、内圧管の外周面に、鉄板又はFRP層等の補強層を設けてもよい。また、波形管12内、コンクリート層14内、又は、波形管12とコンクリート層14との間に、網状又は多孔質の金属又は布を設けてもよい。また、メタルラス、ガラスストランド、又はガラスヤーンをメッシュ状に製織したガラスネットを、外側樹脂層18又は内側樹脂層22内に埋設してもよい。また、外側樹脂層18と内側樹脂層22との間に、中心軸C方向の複数の縦紐、中心軸C方向に対して直角又は斜め方向の複数の横紐、又はメッシュ状に編んだ紐、合成繊維を設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 内圧管 12 波形管
14 コンクリート層 16 フランジ
18 外側樹脂層 20 鋼板
22 内側樹脂層 24 第一鉄筋
26 凸部 28 中空部
30 第二鉄筋 32 螺旋中空部
34 第三鉄筋 C 中心軸

図1
図2
図3
図4