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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010422
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】裸眼立体映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/10 20200101AFI20240117BHJP
   H04N 13/307 20180101ALI20240117BHJP
【FI】
G02B30/10
H04N13/307
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111751
(22)【出願日】2022-07-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「3次元視覚システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】掛谷 英紀
【テーマコード(参考)】
2H199
5C061
【Fターム(参考)】
2H199BA19
2H199BB03
2H199BB06
2H199BB52
2H199BB59
2H199BB60
2H199BB63
5C061AA06
5C061AB16
(57)【要約】
【課題】裸眼立体画像表示装置において、複数の要素レンズどうしの接続部分の継ぎ目を目立たなくして、輝度が一様な高解像度の立体画像を表示することが可能な裸眼立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の態様1の裸眼立体画像表示装置は、画像表示面に多数の異なる視点位置から観察される要素画像を並べて表示する画像表示部と、前記画像表示部の投影光が出射される前面側に配される集光系アレイ部と、を有し、前記集光系アレイ部は、複数の要素集光系領域で構成され、前記集光系アレイ部は、前記要素集光系領域の中心部から一方の端部までの領域に、隣接する前記要素集光系領域の中心部から他方の端部までの領域が重なる入り会い構造部を成す領域を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面に多数の異なる視点位置から観察される要素画像を並べて表示する画像表示部と、
前記画像表示部の投影光が出射される前面側に配される集光系アレイ部と、を有し、
前記集光系アレイ部は、複数の要素集光系領域で構成され、
前記集光系アレイ部は、前記要素集光系領域の中心部から一方の端部までの領域に、隣接する前記要素集光系領域の中心部から他方の端部までの領域が重なる入り会い構造部を成す領域を有することを特徴とする裸眼立体映像表示装置。
【請求項2】
前記集光系アレイ部は、複数のリニアフレネルレンズが溝の延長方向を互いに揃えて周期的に配置された構造を持つリニアフレネルレンズアレイを2枚直交させて重ねたものであって、
前記リニアフレネルレンズアレイの前記入り会い構造部は、前記リニアフレネルレンズの前記延長方向に直角な断面において、中心部から一方の端部付近までの右領域の溝構造に、中心部から他方の端部付近までの左領域の溝構造を重ね合わせた入り会い溝構造を成すことを特徴とする請求項1に記載の裸眼立体映像表示装置。
【請求項3】
前記入り会い溝構造は、前記リニアフレネルレンズの前記延長方向に直角な断面において、前記中心部に三角形状の左右対称な山か谷が形成され、その中心部が山または谷の場合は、その両側に、その山または谷に近い側の斜面が遠い側に比べて緩やかな三角形状の山が形成された断面構造であることを特徴とする請求項2に記載の裸眼立体映像表示装置。
【請求項4】
前記入り会い溝構造は、前記リニアフレネルレンズの部分それぞれが当該リニアフレネルレンズの溝毎に交互に配置されて構成されることを特徴とする請求項2または3に記載の裸眼立体映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸眼立体映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、立体視専用の眼鏡を使用せずに、任意の画像を立体視させる画像表示装置である裸眼立体画像表示装置についての研究開発が行われている。こうした裸眼立体画像表示装置の一例として、レンズアレイと垂直方向に指向をもつ指向性拡散板とを用いた時分割指向性バックライト式裸眼立体ディスプレイが知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
また、レンズアレイを用いた他の裸眼立体画像表示装置として、レンズアレイを構成する要素レンズごとに異なる視点から見える要素画像を並べて表示する多視点立体ディスプレイが知られている(例えば、特許文献3、4を参照)。さらに、要素レンズの端部において、隣り合うフレネルレンズのプリズムユニットを交互に並べた集光系アレイを画像表示面の前面に配置して、レンズアレイの要素レンズの継ぎ目を目立たないようにした裸眼立体画像表示装置が知られている(例えば、特許文献5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-161035号公報
【特許文献2】特開2014-153705号公報
【特許文献3】特開2008-15121号公報
【特許文献4】特開2009-8722号公報
【特許文献5】特開2016-18108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載されるような時分割指向性バックライト式裸眼立体ディスプレイでは、同時に複数人が固有視点からの立体像を観察することができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献3、4に記載されるような裸眼立体画像表示装置では、要素レンズの継ぎ目が目立って画質が低下するという問題があり、特許文献5に記載される裸眼立体画像表示装置では、その問題は緩和されるものの、継ぎ目の連続さが不十分であるという問題があり、より自然な立体画像を表示することが求められていた。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、裸眼立体画像表示装置において、複数の要素レンズどうしの接続部分の継ぎ目を目立たなくして、輝度が一様で滑らかな運動視差が再現される立体画像を表示することが可能な裸眼立体画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態の裸眼立体画像表示装置は、以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の裸眼立体画像表示装置は、画像表示面に多数の異なる視点位置から観察される要素画像を並べて表示する画像表示部と、前記画像表示部の投影光が出射される前面側に配される集光系アレイ部と、を有し、前記集光系アレイ部は、複数の要素集光系領域で構成され、前記集光系アレイ部は、前記要素集光系領域の中心部から一方の端部までの領域に、隣接する前記要素集光系領域の中心部から他方の端部までの領域が重なる入り会い構造部を成す領域を有することを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の態様2は、態様1の裸眼立体画像表示装置において、前記集光系アレイ部は、複数のリニアフレネルレンズが溝の延長方向を互いに揃えて周期的に配置された構造を持つリニアフレネルレンズアレイを2枚直交させて重ねたものであって、前記リニアフレネルレンズアレイの前記入り会い構造部は、前記リニアフレネルレンズの前記延長方向に直角な断面において、中心部から一方の端部付近までの右領域の溝構造に、中心部から他方の端部付近までの左領域の溝構造を重ね合わせた入り会い溝構造を成すことを特徴とする。
【0010】
(3)本発明の態様3は、態様2の裸眼立体画像表示装置において、前記入り会い溝構造は、前記リニアフレネルレンズの前記延長方向に直角な断面において、前記中心部に三角形状の左右対称な山か谷が形成され、その中心部が山または谷の場合は、その両側に、その山または谷に近い側の斜面が遠い側に比べて緩やかな三角形状の山が形成された断面構造であることを特徴とする。
【0011】
(4)本発明の態様4は、態様2または3の裸眼立体画像表示装置において、前記入り会い溝構造は、前記リニアフレネルレンズの部分それぞれが当該リニアフレネルレンズの溝毎に交互に配置されて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の要素レンズどうしの接続部分の継ぎ目を目立たなくして、輝度が一様な高解像度の立体画像を表示することが可能な裸眼立体画像表示装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る裸眼立体画像表示装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】画像表示部に表示する画像の一例を示す写真である。
図3】本発明の従来のリニアフレネルレンズの一例を示す斜視図である。
図4】本発明の従来のリニアフレネルレンズの断面の一例を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るリニアフレネルレンズの構成を説明する説明図である。
図6】本発明の一実施形態のリニアフレネルレンズの断面の一例を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る凸レンズアレイを側面から見た時の平面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る凸レンズアレイの上面から見た時の平面図である。
図9】本発明、および従来例の凸レンズアレイを用いる場合の結像の明るさの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の裸眼立体画像表示装置について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
本発明の一実施形態の裸眼立体画像表示装置について説明する。
図1は、本実施形態の裸眼立体映像表示装置の基本構成を示す模式図である。
本実施形態の裸眼立体映像表示装置10は、粗インテグラルイメージング方式のものである。表示制御器16で制御された画像表示部11に粗インテグラルイメージング用の画像が表示される。照射部(バックライト)17は、画像表示部11の裏面11b側に向けて照明光Q1を照明する。この照明光Q1が画像表示部11を透過し、画像表示部11に表示された画像を含む画像光Q2が、画像表示部11の表面11a側から出射される。画像光は、集光系アレイ12で、それぞれの位置の観察者15用に選択され、大口径集光系13で空間に形成される像面14に立体像である実像が結像される。この像面14を観察者15が立体像として観察する。
【0016】
なお、本実施形態の他にも、例えば、上述した特許文献3の図12に示すように、画像表示部として透過型の画像表示面を複数重ねた構成を用いることもできる。また、上述した特許文献4の図2に示すように、画像表示部と集光系アレイ部の間の距離を短くし、遠方に虚像を生成する構成を用いることもできる。
【0017】
更に、多視点型の裸眼立体映像表示装置であって、複数の要素画像を並べて表示する表示面とそれを制御する表示制御器とを備える要素画像表示部と、複数の要素集光系領域からなるアレイを含む集光系アレイ部と、を備え、この集光系アレイ部を通してそれぞれの要素画像を観察者に提示するものであれば、本発明の裸眼立体映像表示装置10の構成として用いることができる。
【0018】
画像表示部11としては、例えば、通常のカラー画像の表示装置である液晶表示パネルを用いることができるほか、自発光型の有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、レーザー描画装置などを用いることもでき、その場合は照射部17は特に設けなくてもよい。
【0019】
本実施形態の画像表示部11は、複数の表示素子がマトリクス状に配置された透過型の画像表示面D1を備える。画像表示部11は、例えば、透過型の液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)を含んで構成される。画像表示部11は、画像表示面D1は、右眼用画像と左眼用画像とをそれぞれ同時に表示する所定数の画素からなる画素組を複数マトリクス状に配列したものからなる。
図2に、後述する凸レンズアレイA1の要素レンズE1の数が11×6の場合に、画像表示部11に表示する画像の一例を示す。
【0020】
照射部17は、画像表示部11の裏面11b側に照明光を照射する。照射部17は、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いたバックライトであればよい。照射部17から出射される照明光は、例えば、白色であればよい。なお、照射部17は、上述したLED以外にも、他の光源を用いたバックライトであってもよく、限定されるものではない。
【0021】
大口径集光系13は、集光系アレイ12から出射された画像光を集光して、像面14に立体像を結像させる。この結像を観察者15が立体像として観察する。
【0022】
集光系アレイ12は、画像表示部11の前面側、即ち、画像表示部11と大口径集光系13との間に配置される。こうした集光系アレイ12は、凸レンズアレイA1を備える。凸レンズアレイA1は、平面状に配置された複数の要素レンズE1を備える。要素レンズE1は、要素集光系領域の一例である。
【0023】
本実施形態では、要素集光系領域は、リニアフレネルレンズを縦横に重ねて使用し、その交点として実現する。アレイ状の要素レンズ領域は、複数のリニアフレネルレンズが縦方向に並行するリニアフレネルレンズ群と、それらが横方向に並行するリニアフレネルレンズ群との交点で実現するものである。
【0024】
画像表示部11と凸レンズアレイA1との距離は、複数の要素レンズE1それぞれの焦点距離に略等しい。そのため、集光系アレイ12は、画像表示部11から画像光が入射すると、当該画像光を平行光にして大口径集光系13の側に出射にさせる。
したがって、大口径集光系13から出射される画像光は、実像14を形成する。
【0025】
次に、集光系アレイ12を構成する凸レンズアレイA1の構成の詳細について説明する。凸レンズアレイA1は、複数のリニアフレネルレンズを備える。本実施形態の凸レンズアレイA1に備えたリニアフレネルレンズの説明に先立って、まず、従来のリニアフレネルレンズの構成について説明する。
【0026】
図3は、従来のリニアフレネルレンズの一例を示す斜視図である。従来のリニアフレネルレンズL10は、複数の柱状のプリズムが高さ方向と垂直な方向に並べられて構成される。
リニアフレネルレンズL10では、隣接するプリズムによって直線状の溝が形成される。
図4に従来のリニアフレネルレンズL10の断面S10を示す。断面S10は、柱状の凸レンズを光軸と垂直な方向について分割し、表面付近の部分だけを残して厚みを減らして得られる。
【0027】
図5は、本実施形態に係るリニアフレネルレンズの形態の一例を示す図である。
本実施形態のリニアフレネルレンズL1は、断面S1が左右対称である(図5(c))。なお、断面S1が左右非対称の場合であってもよい。このリニアフレネルレンズL1は、設計の元となるリニアフレネルレンズLRを、溝の延長方向に直角な断面S2において、中心部N1から一方の端部N2付近までの右領域のリニアフレネルレンズL2と、中心部N1から他方の端部N3付近までの左領域のリニアフレネルレンズL3とに設計上分割する(図5(a))。
【0028】
そして、このリニアフレネルレンズL2とリニアフレネルレンズL3とを全幅に渡って重ね合わせる(図5(b))。そして、リニアフレネルレンズL2とリニアフレネルレンズL3の溝形状を合成することによって、全幅に渡って入り会い溝構造C1を成すリニアフレネルレンズL1が得られる(図5(c))。
【0029】
こうした入り会い溝構造C1は、リニアフレネルレンズLRの右領域であるリニアフレネルレンズL2の溝形状と、リニアフレネルレンズLRの左領域であるリニアフレネルレンズL3の溝形状とを合成してなる構造を成している。
【0030】
図6に示すように、本実施形態のリニアフレネルレンズL1の入り会い溝構造C1は、リニアフレネルレンズL2を構成する柱状のプリズム(溝形状)と、リニアフレネルレンズL3を構成する柱状のプリズム(溝形状)とがそれぞれ、リニアフレネルレンズL2及びリニアフレネルレンズL3それぞれの溝毎に交互に配置される。
【0031】
この配置によれば、リニアフレネルレンズL2の溝と、リニアフレネルレンズL3の溝とは、方向が互いに揃えられている。実際には、入り会い溝構造C1における個々のプリズムの幅は、リニアフレネルレンズL1の幅に対して十分細かい(幅数十から数百マイクロメートル程度)値に設定することが望ましい。
【0032】
断面S1が示すように、入り会い溝構造C1において、リニアフレネルレンズL2及びリニアフレネルレンズL3をそれぞれ構成する柱状のプリズムは、当該プリズムの底面を一致させて互いに背中合わせの向きにおいて交互に配置されている。
【0033】
断面S1では、入り会い溝構造C1の中心部に三角形状の左右対称な山が形成される。入り会い溝構造C1の中心部に形成される当該山の斜面の傾きのうち、リニアフレネルレンズL2によって形成される部分では、入り会い溝構造C1の左側から右側へゆくにつれて緩やかになっている。一方、当該山の斜面の傾きのうち、リニアフレネルレンズL3によって形成される部分では、入り会い溝構造C1の左側から右側へゆくにつれて急になっている。
【0034】
また、リニアフレネルレンズL2の入り会い溝構造C1におけるレンズの幅は、プリズム角が緩やかなものほど広く、急なものほど狭くなっている。これにより、輝度を一様にする効果が増すとともに、プリズムの先端位置が近づくという効用もある。
こうしたリニアフレネルレンズL1を左右に隣接させて並べて形成することにより、リニアフレネルレンズ群が形成される。
【0035】
図7及び図8に、図1に示した凸レンズアレイA1の構成の詳細を示す。図7は、側面図を示し、図8は上面図を示す。凸レンズアレイA1は、横向きレンズアレイA11と、縦向きレンズアレイA12とを備える。横向きレンズアレイA11と、縦向きレンズアレイA12とは、奥行き方向(Z軸方向)に重ねられて配置される。横向きレンズアレイA11、及び縦向きレンズアレイA12は、互いに同じ形状である。
【0036】
横向きレンズアレイA11、及び縦向きレンズアレイA12はそれぞれ、図6に示したリニアフレネルレンズL1が複数、溝の方向を互いに揃えて周期的に配置されたものである。リニアフレネルレンズL1が複数、溝の方向を互いに揃えて周期的に配置されたものとは、即ち、リニアフレネルレンズL2の溝構造とリニアフレネルレンズL3の溝構造とを一面上の1つの領域に重ねて合成してなるリニアフレネルレンズL1を左右に隣接させて繰り返し並べたものである。
【0037】
本実施形態では、リニアフレネルレンズL1を構成するリニアフレネルレンズL2の溝構造またはリニアフレネルレンズL3の溝構造が要素レンズE1に相当する。横向きレンズアレイA11、及び縦向きレンズアレイA12それぞれにおいて、リニアフレネルレンズL1は、レンズアレイの要素レンズに相当する。ここでリニアフレネルレンズL1は、図6において説明したように、全体が入り会い溝構造C1によって構成されている。
【0038】
凸レンズアレイA1において、横向きレンズアレイA11と、縦向きレンズアレイA12とは、それぞれに含まれるリニアフレネルレンズの溝の方向について直交させて重ねられて配置されている。凸レンズアレイA1において、要素レンズE1は、横向きレンズアレイA11に含まれるリニアフレネルレンズL1と、縦向きレンズアレイA12に含まれるリニアフレネルレンズL1が重なった部分である。この重なった部分は、横向きレンズアレイA11に含まれるリニアフレネルレンズL1の入り会い溝構造C1と、縦向きレンズアレイA12に含まれるリニアフレネルレンズL1の入り会い溝構造C1とが重なって構成されている。
【0039】
次に、集光系アレイ12から出射された画像光を大口径集光系13で集光して、空間の像面14(図1を参照)に結像される立体像の鮮明度(主に明るさ)について説明する。
図9は、従来の実施形態、および本実施形態に係る、立体像の明るさを模式的に示した説明図である。図9(A)、(B)、(C)は本実施形態との比較例として従来のリニアフレネルレンズ(例えば、図3を参照)が並べられたリニアフレネルレンズアレイの例である。図9(D)、(E)、(F)は、本実施形態に係る凸レンズアレイA1の例である。
【0040】
図9(A)では、2枚のリニアフレネルレンズアレイが、リニアフレネルレンズの溝の方向について直交させて重ねて配置されて凸レンズアレイが構成されている。2枚のリニアフレネルレンズアレイにはそれぞれ従来のリニアフレネルレンズが配列されている。
【0041】
図9(A)に示すリニアフレネルレンズの配置は、図9(B)に示すように球面レンズが格子状に並べられた配置に、立体像の明るさの分布としては等価である。図9(A)に示すリニアフレネルレンズの配置は、球面レンズを要素レンズとするレンズアレイに相当する。図9(A)に示すリニアフレネルレンズアレイを用いた場合、立体像の明るさは、図9(C)に示すように、球面レンズの形状を反映した分布となり、明るさにムラがある状態となる。なお、この図9(C)、(F)においては、色が濃い部分ほど明るいことを表している。
【0042】
従来のリニアフレネルレンズL10では、結像した立体像の周辺付近は中心付近に比べて暗くなる傾向があった。つまり、従来のリニアフレネルレンズL10では、中心付近と周辺付近とで、結像した立体像の明るさに差があった。
【0043】
図9(D)は、凸レンズアレイA1におけるリニアフレネルレンズの配置を示す。図9(D)に示すリニアフレネルレンズの配置は、図9(E)に示すように、球面レンズを分割して重ねたレンズを配置したものに光学的に等しい。図9(D)に示すリニアフレネルレンズ(つまり、凸レンズアレイA1)を用いた場合、結像した立体像の明るさは、図9(F)に示すように、球面レンズが互いに重なった部分を有さない場合に比べて一様となる。これにより、複数の要素レンズどうしの接続部分の継ぎ目を目立たなくして、輝度が一様な高解像度の立体像を得ることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、凸レンズアレイA1が、リニアフレネルレンズの溝について直交させて重ねられた横向きレンズアレイA11と縦向きレンズアレイA12とを備える場合の一例について説明したが、これに限られない。例えば、縦向きレンズアレイA12が鉛直方向と一定の角度で傾いた状態で横向きレンズアレイA11と直交するよう構成されていてもよい。
【0045】
なお、本実施形態では、入り会い溝構造C1は、入り会い溝構造C1を構成するリニアフレネルレンズの部分それぞれが当該リニアフレネルレンズの溝毎に交互に配置されて構成される場合の一例について説明したが、これに限られない。入り会い溝構造C1は、入り会い溝構造C1を構成するリニアフレネルレンズの部分それぞれが当該リニアフレネルレンズの溝の幅よりも狭いまたは広い長さを単位として交互に配置されて構成されてもよい。
【0046】
図1に示す本実施形態の裸眼立体映像表示装置10では、大口径集光系13の焦点の外側に像面14を設定し、この像面14に画像表示部11で表示される像の実像を結像させる構成であるが、虚像を表示させる構成にすることもできる。
例えば、大口径集光系13の焦点の内側に像面14を設定し、この像面14に画像表示部11で表示される像の虚像を表示することにより、観察者15は、実際の像と同じ向きで、かつ、大きく見える虚像を観察することができる。
また、実像を生成する場合も虚像を生成する場合も、画像表示部11として複数の透過型パネルを積層することで、実像面または虚像面を多重化し、焦点のあう奥行きを広げた立体表示を行うこともできる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。こうした実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の裸眼立体映像表示装置によれば、例えば、医療用の三次元ディスプレイとして適用した場合に、従来よりも鮮明な立体像を空間に表示することができ、より的確な観察、治療に寄与することができる。また、自動車用のヘッドアップディスプレイとして適用した場合に、運転に必要な各種情報を鮮明な立体像として表示することができ、自動車運転時の操作性の向上に寄与する。従って、本発明は産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0049】
10…裸眼立体映像表示装置
11…画像表示部
12…集光系アレイ
13…大口径集光系
14…像面
15…観察者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9