(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104229
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】着磁装置及び着磁方法
(51)【国際特許分類】
H01F 13/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
H01F13/00 350
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008353
(22)【出願日】2023-01-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕
(72)【発明者】
【氏名】石井 優治
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハルバッハ配列に従って配列された磁石を、容易、かつ、安全に作製する着磁装置及び着磁方法を提供する。
【解決手段】着磁装置は、4つの磁石材51~54から成る単位磁石材ユニットを含む磁石材ユニットをハルバッハ配列に従って着磁する装置であり、コイルユニット5と、コイルユニットに接続された少なくとも一つの電源回路と、を含む。コイルユニットは、第1方向D1に沿った軸線を中心として巻回された3の倍数の数のコイル11~16から成る単位コイルユニット10を含む。単位コイルユニット10のコイルは、第1方向D1に配列されている。単位コイルユニット10のコイル11~16の長さが互いに等しい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの磁石材から成る単位磁石材ユニットを含む磁石材ユニットをハルバッハ配列に従って着磁する着磁装置であって、
第1方向に沿った軸線を中心として巻回された3の倍数の数のコイルから成る単位コイルユニットを含むコイルユニットと、
前記コイルユニットに接続された少なくとも一つの電源回路と、
を備え、
前記単位コイルユニットの前記コイルは、前記第1方向に配列され、
前記単位コイルユニットの前記コイルの長さが互いに等しく、
前記第1方向に見て、前記単位コイルユニットのコイルの数を2で割った値以下の最大の整数と同じ数の当該単位コイルユニットのコイルの巻回方向が、当該単位コイルユニットの他のコイルの巻回方向と逆方向である、着磁装置。
【請求項2】
各コイルは、第1端部と第2端部とを有し、
前記第1端部から前記第2端部に向かう方向に見て、前記コイルの巻回方向は互いに同じ方向であり、
前記第1端部から前記第2端部へ流れる電流の値を正の値で表し、前記第2端部から前記第1端部へ流れる電流の値を負の値で表す場合、前記電源回路を通じて各コイルを流れる電流の値は、以下の式(1)~(4)のいずれかで表される基準値R(x)の、当該コイルの軸方向の中心位置における値である、請求項1に記載の着磁装置。
R(x)=αsin (2π(x-L/8)/L) ・・・(1)
R(x)=αsin (2π(x-3L/8)/L) ・・・(2)
R(x)=αsin (2π(x-5L/8)/L) ・・・(3)
R(x)=αsin (2π(x-7L/8)/L) ・・・(4)
ここで、αは任意の定数であり、Lは単位コイルユニットの全長であり、xは前記単位コイルユニットの一方の端部と前記軸方向における当該コイルの中心位置との前記第1方向に沿った距離である。
【請求項3】
前記単位コイルユニットは、第1コイル、第2コイル、第3コイル、第4コイル、第5コイル及び第6コイルから成り、
前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル、前記第4コイル、前記第5コイル及び前記第6コイルは、前記第1方向に沿ってこの順で配列されており、
前記第1方向に見て、前記第1コイル、前記第2コイル及び前記第6コイルの巻回方向は、前記第3コイル、前記第4コイル及び前記第5コイルの巻回方向と逆方向であり、
前記第1コイルと前記第4コイルとは、直列接続されて第1コイル対を形成し、
前記第2コイルと前記第5コイルとは、直列接続されて第2コイル対を形成し、
前記第3コイルと前記第6コイルとは、直列接続されて第3コイル対を形成し、
前記第2コイル対と前記第3コイル対は、並列接続され、
並列接続された前記第2コイル対と前記第3コイル対は、前記第1コイル対と直列接続され、
前記単位コイルユニットは、単一の電源回路に接続される、請求項2に記載の着磁装置。
【請求項4】
前記コイルユニットは、前記第1方向に沿って配列された複数の前記単位コイルユニットを有する、請求項1に記載の着磁装置。
【請求項5】
4つの磁石材から成る単位磁石材ユニットを含む磁石材ユニットをハルバッハ配列に従って着磁する着磁方法であって、
第1方向に沿った軸線を中心として巻回された3の倍数の数のコイルから成る単位コイルユニットを含むコイルユニットであって、前記コイルが前記第1方向に配列されたコイルユニットを形成するコイルユニット形成工程と、
少なくとも一つの電源回路を前記コイルユニットに接続する電源回路接続工程と、
前記磁石材を第2方向に沿って配列して磁石材ユニットを形成する磁石材ユニット形成工程と、
前記第2方向が前記第1方向に沿うように、前記磁石材ユニットを、前記コイルユニットの内周面または外周面に対面して配置する磁石材ユニット配置工程と、
前記磁石材ユニット配置工程の後に、前記電源回路を通じて各コイルに電流を流して各コイルを励磁させる励磁工程と、
を備え、
前記単位コイルユニットの前記コイルの前記第1方向に沿った長さが、互いに等しく、
前記磁石材ユニットの前記磁石材の前記第2方向に沿った長さが、互いに等しく、
前記単位コイルユニットの前記第1方向に沿った長さが、前記単位磁石材ユニットの前記第2方向に沿った長さに等しく、
前記第1方向に見て、前記単位コイルユニットのコイルの数を2で割った値以下の最大の整数と同じ数の当該単位コイルユニットのコイルの巻回方向が、当該単位コイルユニットの他のコイルの巻回方向と逆方向である、着磁方法。
【請求項6】
各コイルは、第1端部と第2端部とを有し、
前記第1端部から前記第2端部に向かう方向に見て、前記コイルの巻回方向は互いに同じ方向であり、
前記第1端部から前記第2端部へ流れる電流の値を正の値で表し、前記第2端部から前記第1端部へ流れる電流の値を負の値で表す場合、前記励磁工程において前記電源回路を通じて各コイルを流れる電流の値は、以下の式(1)~(4)のいずれかで表される基準値R(x)の、当該コイルの軸方向の中心位置における値であり、
前記磁石材ユニット配置工程において、前記磁石材ユニットは、各磁石材の前記第2方向における中心位置が、前記基準値R(x)が最大値、最小値又はゼロをとる位置と、前記第1方向において一致するように、前記コイルユニットの前記内周面または前記外周面に対面して配置される、請求項5に記載の着磁方法。
R(x)=αsin (2π(x-L/8)/L) ・・・(1)
R(x)=αsin (2π(x-3L/8)/L) ・・・(2)
R(x)=αsin (2π(x-5L/8)/L) ・・・(3)
R(x)=αsin (2π(x-7L/8)/L) ・・・(4)
ここで、αは任意の定数であり、Lは単位コイルユニットの全長であり、xは前記単位コイルユニットの一方の端部と前記軸方向における当該コイルの中心位置との前記第1方向に沿った距離である。
【請求項7】
前記単位磁石材ユニットは、第1磁石材、第2磁石材、第3磁石材及び第4磁石材から成り、
前記第1磁石材、前記第2磁石材、前記第3磁石材及び前記第4磁石材は、前記第2方向に沿ってこの順で配列され、
前記単位コイルユニットは、第1コイル、第2コイル、第3コイル、第4コイル、第5コイル及び第6コイルから成り、
前記第1方向に見て、前記第1コイル、前記第2コイル及び前記第6コイルの巻回方向は、前記第3コイル、前記第4コイル及び前記第5コイルの巻回方向と逆方向であり、
前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル、前記第4コイル、前記第5コイル及び前記第6コイルは、前記第1方向に沿ってこの順で配列されており、
前記第1コイルと前記第4コイルとは、直列接続されて第1コイル対を形成し、
前記第2コイルと前記第5コイルとは、直列接続されて第2コイル対を形成し、
前記第3コイルと前記第6コイルとは、直列接続されて第3コイル対を形成し、
前記第2コイル対と前記第3コイル対は、並列接続し、
並列接続された前記第2コイル対と前記第3コイル対は、前記第1コイル対と直列接続され、
前記単位コイルユニットは、単一の電源回路に接続される、請求項6に記載の着磁方法。
【請求項8】
前記コイルユニットは、前記第1方向に沿って配列された複数の前記単位コイルユニットを有し、
前記磁石材ユニットは、前記第1方向に沿って配列された複数の前記単位磁石材ユニットを有する、請求項5に記載の着磁方法。
【請求項9】
前記磁石材ユニット配置工程において、複数の前記磁石材ユニットを、前記コイルユニットの前記内周面及び/または前記外周面に対面して配置する、請求項5に記載の着磁方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、着磁装置及び着磁方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハルバッハ配列に従って配列された磁石の、種々の装置への適用が検討されている。ハルバッハ配列に従って配列された磁石は、磁石の一方の面の側に磁束を集中させることができる。この結果、磁化エネルギーを効率的に利用することができ、同じ体積の磁石でより強力な磁力を得ることができる。例えば、ハルバッハ配列に従って配列された磁石が渦電流式ブレーキ装置に適用される場合、レールに対向する側に磁石の磁束を集中させることで、制動力を効果的に働かせることができる。渦電流式ブレーキ装置は、エレベータや鉄道への適用が検討されている。
【0003】
ここで、複数の磁石をハルバッハ配列に従って配列する場合、次のような問題が存在する。ハルバッハ配列では、隣り合う磁石の磁化方向が90°異なる。このため、隣り合う磁石間に働く磁力によって、磁石が回転しやすい。したがって、磁石をハルバッハ配列に従って配列することは、困難である。また、磁石を手作業で配列する場合、磁石の間に手を挟んで怪我をする危険性がある。
【0004】
これらの問題を考慮して、特許文献1では次のようにしてハルバッハ配列に従って配列された磁石を作製する。すなわち、まず、複数の磁石材を一列に並べて屈曲可能な母材に固定することで、磁石材ユニットを作製する。次に、母材を曲げて磁石材ユニット折り畳むことで、隣り合う磁石を互いに対して90°回転させる。磁石材ユニットを折り畳んだ状態で一様な磁場に置き、着磁する。その後、母材を展開して隣り合う磁石を互いに対して回転させることで、磁化方向がハルバッハ配列に従った磁石ユニットを形成する。しかしながら、エレベータや鉄道に適用される渦電流式ブレーキ装置に用いられる磁石は磁力が強く、母材の展開が困難である。また、母材を展開する際に、母材が破損する虞がある。
【0005】
また、特許文献2では、単一の磁石材を3つの領域に分け、これらの領域を互いに異なる磁化方向で着磁する。しかしながら、この方法によれば、各領域の磁化方向を制御するため、複雑な装置が必要であるだけでなく、一つの磁石材に対して複数回の着磁操作を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-347121号公報
【特許文献2】特開2010-130819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
その一方で、ハルバッハ配列に従って配列された磁石を、容易かつ安全に作製することが求められている。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ハルバッハ配列に従って配列された磁石を、容易かつ安全に作製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態による着磁装置は、4つの磁石材から成る単位磁石材ユニットを含む磁石材ユニットをハルバッハ配列に従って着磁する着磁装置であって、
第1方向に沿った軸線を中心として巻回された3の倍数の数のコイルから成る単位コイルユニットを含むコイルユニットと、
前記コイルユニットに接続された少なくとも一つの電源回路と、
を備え、
前記単位コイルユニットの前記コイルは、前記第1方向に配列され、
前記単位コイルユニットの前記コイルの長さが互いに等しく、
前記第1方向に見て、前記単位コイルユニットのコイルの数を2で割った値以下の最大の整数と同じ数の当該単位コイルユニットのコイルの巻回方向が、当該単位コイルユニットの他のコイルの巻回方向と逆方向である。
【0010】
あるいは、本実施の形態による着磁方法は、4つの磁石材から成る単位磁石材ユニットを含む磁石材ユニットをハルバッハ配列に従って着磁する着磁方法であって、
第1方向に沿った軸線を中心として巻回された3の倍数の数のコイルから成る単位コイルユニットを含むコイルユニットであって、前記コイルが前記第1方向に配列されたコイルユニットを形成するコイルユニット形成工程と、
少なくとも一つの電源回路を前記コイルユニットに接続する電源回路接続工程と、
前記磁石材を第2方向に沿って配列して磁石材ユニットを形成する磁石材ユニット形成工程と、
前記第2方向が前記第1方向に沿うように、前記磁石材ユニットを、前記コイルユニットの内周面または外周面に対面して配置する磁石材ユニット配置工程と、
前記磁石材ユニット配置工程の後に、前記電源回路を通じて各コイルに電流を流して各コイルを励磁させる励磁工程と、
を備え、
前記単位コイルユニットの前記コイルの前記第1方向に沿った長さが、互いに等しく、
前記磁石材ユニットの前記磁石材の前記第2方向に沿った長さが、互いに等しく、
前記単位コイルユニットの前記第1方向に沿った長さが、前記単位磁石材ユニットの前記第2方向に沿った長さに等しく、
前記第1方向に見て、前記単位コイルユニットのコイルの数を2で割った値以下の最大の整数と同じ数の当該単位コイルユニットのコイルの巻回方向が、当該単位コイルユニットの他のコイルの巻回方向と逆方向である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態による着磁装置のコイルユニットを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態による着磁装置の全体構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電源回路の全体構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態による着磁方法を説明するための図であって、コイルユニットの各コイルを流れる電流の値と、磁石材ユニットの磁化方向を説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す方法で着磁された磁石材ユニットの着磁状態を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態による着磁装置のコイルユニットを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態による着磁方法を説明するための図であって、コイルユニットの各コイルを流れる電流の値と、磁石材ユニットの磁化方向を説明するための図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す方法で着磁された磁石材ユニットの着磁状態を示す図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態による着磁装置の全体構成を示す回路図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態による着磁方法を説明するための図であって、コイルユニットの各コイルを流れる電流の値と、磁石材ユニットの磁化方向を説明するための図である。
【
図12】
図12は、
図1に対応する図であって、着磁装置及び着磁方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態による着磁装置1のコイルユニット5を示す斜視図であり、
図2は、着磁装置1の全体構成を示す回路図である。図示された着磁装置1は、複数の磁石材51~54を含む磁石材ユニット6を、ハルバッハ配列に従って着磁するための装置である。
【0013】
着磁装置1は、コイルユニット5と、コイルユニット5に接続された電源回路31,32,33と、を備えている。
【0014】
コイルユニット5は、3の倍数の数のコイルから成る単位コイルユニット10を含んでいる。図示された例では、コイルユニット5は、6つのコイルから成る単位コイルユニット10を含んでいる。単位コイルユニット10は、第1コイル11と、第2コイル12と、第3コイル13と、第4コイル14と、第5コイル15と、第6コイル16と、を含む。単位コイルユニット10は、一方の端部10aと他方の端部10bとを有する。
【0015】
コイルユニット5に含まれるコイル11,12,13,14,15,16の各々は、任意の軸線を中心として巻回されている。各コイル11,12,13,14,15,16は、その軸線が延びる方向(以下、「軸方向」とも称する。)が第1方向D1に沿うように配置されている。また、第1コイル11、第2コイル12、第3コイル13、第4コイル14、第5コイル15、及び第6コイル16は、第1方向D1に沿ってこの順で配列されている。単位コイルユニット10の第1方向D1に沿った長さは、Lである。
【0016】
各コイル11,12,13,14,15,16は、第1端部18と第2端部19とを有する。第1端部18から第2端部19に向かう方向に見て、コイル11,12,13,14,15,16の巻回方向は互いに同じ方向である。図示された例では、各コイル11,12,13,14,15,16は空芯コイルである。各コイル11,12,13,14,15,16は、非磁性かつ非導電性の芯材に巻き掛けられていてもよい。コイル11,12,13,14,15,16の芯材が非磁性かつ非導電性であることにより、コイルユニット5が磁場を生成する際に芯材に渦電流が発生することを抑制することができ、磁場を効率よく磁石材51~54の着磁に用いることができる。
【0017】
コイルユニット5に含まれるコイル11,12,13,14,15,16の軸方向に沿った長さ及び軸方向に垂直な断面積は、互いに同じである。コイル11,12,13,14,15,16を構成する導線の長さ、太さ及び巻き数も、互いに同じである。単位コイルユニット10内のコイル11,12,13,14,15,16は、長さLの領域内に第1方向D1に沿って均等に配置されている。また、隣り合うコイル11,12;12,13;13,14;14,15;15,16間の隙間は、十分に小さい。
【0018】
コイル11,12,13,14,15,16の相対位置が変化することを抑制するため、コイルユニット5は図示しない型に嵌め込まれていてもよい。これにより、コイル11,12,13,14,15,16の変形も抑制される。
【0019】
第1方向D1に見て、単位コイルユニット5の一部のコイルの巻回方向は、当該単位コイルユニット5の他の一部のコイルの巻回方向とは逆方向である。より具体的には、第1方向D1に見て、単位コイルユニット5のコイルの数を2で割った値以下の最大の整数と同じ数の当該単位コイルユニット5のコイルの巻回方向は、当該単位コイルユニット5の他のコイルの巻回方向と逆方向である。図示された例では、第1方向D1に見て、第1コイル11と第2コイル12と第6コイル16とが第1巻回方向に巻回されており、第3コイル13と第4コイル14と第5コイル15とが第1巻回方向とは逆方向の第2巻回方向に巻回されている。
【0020】
図2に示すように、第1コイル11及び第4コイル14が直列接続されて、第1コイル対21を形成している。より具体的には、第1コイル11の第2端部19と第4コイル14の第2端部19とが接続されている。また、第2コイル12及び第5コイル15が直列接続されて、第2コイル対22を形成している。より具体的には、第2コイル12の第2端部19と第5コイル15の第2端部19とが接続されている。また、第3コイル13及び第6コイル16が直列接続されて、第3コイル対23を形成している。より具体的には、第3コイル13の第1端部18と第6コイル16の第1端部18とが接続されている。
【0021】
図2に示すように、着磁装置1は、第1電源回路31と、第2電源回路32と、第3電源回路33と、を含む。第1電源回路31は、第1コイル対21に接続されている。第2電源回路32は、第2コイル対22に接続されている。第3電源回路33は、第3コイル対23に接続されている。
【0022】
図3は、電源回路31,32,33の全体構成を示す回路図である。電源回路31,32,33は、当該電源回路31,32,33に接続されたコイル11,14;12,15;13,16に後述する大きさの電流を流すものであれば、図示されたものに限定されない。
図3に示す例では、各電源回路31,32,33は、昇圧回路41と、整流器42と、コンデンサ43と、スイッチ44と、を含んでいる。各電源回路31,32,33の昇圧回路41は、
図2に示す充電制御回路46を介して交流電源47に接続される。
【0023】
図示された電源回路31,32,33において、スイッチ44を開いた状態でコンデンサ43を充電すると、充電制御回路46を通過した交流電力は昇圧回路41によって昇圧され、整流器42を通り正の電圧となって、コンデンサ43を充電する。コンデンサ43の充電が完了した後、スイッチ44を閉じることでコンデンサ43から電源回路31,32,33の出力端に接続されたコイル11,14;12,15;13,16へ、瞬間的に大電流が放出される。この結果、コイル11,14;12,15;13,16の周りに強磁場が発生し、コイルユニット5の近傍に置かれた磁石材51~54が着磁される。
図3に示すように、コンデンサ5とコイル11,14;12,15;13,16との間には、各コイル11,12,13,14,15,16を流れる電流の大きさが意図した大きさになるよう、電流調整用負荷45が挿入されていてもよい。
【0024】
第1電源回路31、第2電源回路32及び第3電源回路33は、各々に接続されたコイル11,14;12,15;13,16に所定の値の電流が流れるように、構成されている。図示された例では、各電源回路31,32,33を通じて当該電源回路31,32,33に接続されたコイル11,14;12,15;13,16を流れる電流の値は、以下の式(1)~(4)のいずれかで表される基準値R(x)の、当該コイル11,14;12,15;13,16の軸方向の中心位置における値である。
R(x)=αsin (2π(x-L/8)/L) ・・・(1)
R(x)=αsin (2π(x-3L/8)/L) ・・・(2)
R(x)=αsin (2π(x-5L/8)/L) ・・・(3)
R(x)=αsin (2π(x-7L/8)/L) ・・・(4)
ここで、上記の式(1)~(4)において、αは任意の定数であり、Lは単位コイルユニット10の全長であり、xは単位コイルユニット10の一方の端部10aと軸方向における各コイル11,12,13,14,15,16の中心位置との、第1方向D1に沿った距離である。また、上記の式(1)~(4)において、第1端部18から第2端部19へ流れる電流の電流値が正の値で表され、第2端部19から第1端部18へ流れる電流の電流値が負の値で表されている。
【0025】
図4に示す例では、各コイル11,12,13,14,15,16を流れる電流の値は、上記の式(4)で表される基準値R(x)の、当該コイル11,12,13,14,15,16の軸方向の中心位置における値である。
図4のグラフにおいて、基準値R(x)が破線で示されており、各コイル11,12,13,14,15,16を流れる電流の値が実線で示されている。より具体的には、第1コイル11流れる電流の値I1はR(L/12)であり、第2コイル12を流れる電流の値I2はR(L/4)であり、第3コイル13を流れる電流の値I3はR(5L/12)であり、第4コイル14を流れる電流の値I4はR(7L/12)であり、第5コイル15を流れる電流の値I5はR(3L/4)であり、第6コイル16を流れる電流の値I6はR(11L/12)である。また、
図4に示す例では、I1とI2とI3とI4とI5とI6との比を有効数字二桁で表すと、I1:I2:I3:I4:I5:I6=0.97:0.71:-0.26:-0.97:-0.71:0.26である。第1~第6コイル11~16に、このように電流を流すことにより、コイルユニット5に対面して配置された磁石材ユニット6を、ハルバッハ配列に従って着磁することができる。
【0026】
次に、磁石材ユニット6について説明する。磁石材ユニット6は、単位磁石材ユニット50を含む。単位磁石材ユニット50は、4つの磁石材51,52,53,54から成る。単位磁石材ユニット50は、第1磁石材51と、第2磁石材52と、第3磁石材53と、第4磁石材54と、を含む。磁石材51,52,53,54は、磁石または永久磁石の材料として一般的な磁性材料で形成されていてよい。
図1に示すように、磁石材51,52,53,54は直方体であってよい。
【0027】
第1磁石材51、第2磁石材52、第3磁石材53及び第4磁石材54は、第2方向D2に沿ってこの順で配列されている。磁石材51,52,53,54は、互いに対して固定されている。例えば、磁石材51,52,53,54は、図示しない母材に接着されることにより、互いに対して固定されていてよい。この場合、磁石材51,52,53,54が着磁された後に互いに対して移動することのないよう、母材は剛性の高い材料で形成されていることが好ましい。単位磁石材ユニット50は、一方の端部50aと他方の端部50bとを有する。
【0028】
単位磁石材ユニット50の第2方向D2に沿った長さは、Lである。磁石材51,52,53,54の第2方向D2に沿った長さは、互いに等しい。単位磁石材ユニット50内の磁石材51,52,53,54は、長さLの領域内に第2方向D2に沿って均等に配置されている。また、隣り合う磁石材51,52;52,53;53,54間の隙間は、十分に小さい。
【0029】
単位磁石材ユニット50は、第2方向D2と直交する第3方向D3並びに第2方向D2及び第3方向D3と直交する第4方向D4を規定した場合、第2方向D2及び第3方向D3に広がる第1面50i及び第2面50iiと、第2方向D2及び第4方向D4に広がる第3面50iii及び第4面50ivと、第3方向D3及び第4方向D4に広がる第5面50v及び第6面50viを有する。第5面50v及び第6面50viは、それぞれ、単位磁石材ユニット50の一方の端部50a及び他方の端部50bを形成する。
【0030】
磁石材ユニット6を着磁装置1で着磁する際、磁石材ユニット6は、第2方向D2が第1方向D1に沿うように配置される。磁石材ユニット6は、第1面50iがコイルユニット5の外周面5a又は内周面5bに対面するように配置される。言い換えると、磁石材ユニット6は、磁石材ユニット6からコイルユニット5に向かう方向が、第4方向D4に沿うように、配置される。
【0031】
磁石材ユニット6を着磁する際、磁石材ユニット6は、各磁石材51,52,53,54の第2方向D2における中心位置が、上記基準値R(x)が最大値、最小値又はゼロをとる位置と第1方向D1において一致するように(すなわち、第4方向D4に対面するように)、コイルユニット5に対して位置決めされる。
図4に示す例では、第1方向D1において、単位磁石材ユニット50の一方の端部50a及び他方の端部50bの位置が、それぞれ、単位コイルユニット10の一方の端部10a及び10bの位置と、第1方向D1において一致するように、磁石材ユニット6はコイルユニット5に対して位置決めされる。
【0032】
磁石材51,52,53,54は、等方性磁石であってもよいし、異方性磁石であってもよい。磁石材51,52,53,54が異方性磁石である場合、磁石材51,52,53,54は、その磁化容易方向が、第2方向D2又は第4方向D4に沿うように、配置される。
図1及び
図4において、各磁石材51,52,53,54の磁化容易方向が実線の両矢印で示されている。
図1及び
図4に示すように、磁石材ユニット6 内の隣り合う磁石材51,52;52,53;53,54の磁化容易方向は、互いに対して90°を成す。
【0033】
また、磁石材51,52,53,54が異方性磁石である場合、各磁石材51,52,53,54の磁化容易方向が、磁石材ユニット6をコイルユニット5に対して位置決めした際に、上記基準値R(x)に応じた方向になるように、磁石材51,52,53,54を配列する。具体的には、
図4に示すように、基準値R(x)が最大値又は最小値をとる位置と第1方向D1において一致する位置(第4方向に対面する位置)に配置される磁石材51,53の磁化容易方向が第2方向D2に沿うように、且つ、基準値R(x)がゼロをとる位置と第1方向D1において一致する位置(第4方向に対面する位置)に配置される磁石材52,54の磁化容易方向が第4方向D4に沿うように、磁石材51,52,53,54を配列する。図示された例では、基準値R(x)は式(4)となっており、
図1に示すように、第1磁石材51及び第3磁石材53の磁化容易方向が第2方向D2に沿うように、且つ、第2磁石材52及び第4磁石材54の磁化容易方向が第4方向D4に沿うように、磁石材51,52,53,54を配列する。なお、基準値R(x)が上記の式(2)で表される場合も、第1磁石材51及び第3磁石材53の磁化容易方向が第2方向D2に沿うように、且つ、第2磁石材52及び第4磁石材54の磁化容易方向が第4方向D4に沿うように、磁石材51,52,53,54を配列する。一方、基準値R(x)が上記の式(1)又は(3)で表される場合は、第1磁石材51及び第3磁石材53の磁化容易方向が第4方向D4に沿うように、且つ、第2磁石材52及び第4磁石材54の磁化容易方向が第2方向D2に沿うように、磁石材51,52,53,54を配列する。
【0034】
次に、着磁装置1を用いた磁石材ユニット6の着磁方法について説明する。
【0035】
まず、コイルユニット形成工程を実施する。具体的には、コイル11~16を第1方向D1に沿って配列する。このとき、コイル11~16の軸方向が第1方向D1に沿うように、コイル11~16を配列する。また、第1コイル11及び第4コイル14を直列接続して、第1コイル対21を作製する。また、第2コイル12及び第5コイル15を直列接続して、第2コイル対22を作製する。また、第3コイル13及び第6コイル16を直列接続して、第3コイル対23を作製する。
【0036】
また、電源回路接続工程を実施する。具体的には、第1~第3電源回路31~33を、それぞれ第1~第3コイル対21~23に接続する。
【0037】
また、磁石材ユニット形成工程を実施する。具体的には、磁化されていない複数の磁石材51,52,53,54を第2方向D2に沿って配列し、互いに対して固定する。
【0038】
次に、磁石材ユニット配置工程を実施する。具体的には、磁石材ユニット6を、着磁装置1のコイルユニット5に対面して配置する。このとき、
図1に示すように、磁石材ユニット6の第2方向D2が第1方向D1に沿うように、磁石材ユニット6を配置する。また、単位磁石材ユニット50の第1面50iがコイルユニット5の外周面5a又は内周面5bに対面するように、磁石材ユニット6を配置する。また、
図4に示すように、各磁石材51,52,53,54の第2方向D2における中心位置が、上記基準値R(x)が最大値、最小値又はゼロをとる位置と第1方向D1において一致するように、磁石材ユニット6を配置する。
図4に示す例では、単位磁石材ユニット50の一方の端部50a及び他方の端部50bの位置が、第1方向D1において、単位コイルユニット10の一方の端部10a及び他方の端部10bの位置と一致するように、磁石材ユニット6を配置する。コイルユニット5と磁石材ユニット6との間に非磁性かつ非導電性の材料からなる板材(図示せず)を配置することにより、コイルユニット5と磁石材ユニット6との間隔を一定に保ってもよい。
【0039】
次に、励磁工程を実施する。具体的には、第1~第3電源回路31~33のコンデンサ43を充電する。コンデンサ43を充電し、且つ、磁石材ユニット6をコイルユニット5に対して適切な位置に配置した後、第1~第3電源回路31~33のスイッチ44を同時に閉じ、コイル11~16を励磁する。これにより、磁石材ユニット6の磁石材51~54が着磁される。
【0040】
図4において、各磁石材51~54の磁化方向が破線の矢印で示されている。
図4に示すように、第1磁石材51及び第3磁石材53は、磁化方向が第2方向D2に沿った方向になるように、着磁される。第1磁石材51の磁化方向と第3磁石材53の磁化方向とは、180°異なる。また、第2磁石材52及び第4磁石材54は、磁化方向が第4方向D4に沿った方向になるように、着磁される。第2磁石材52の磁化方向と第4磁石材54の磁化方向とは、180°異なる。
【0041】
図5は、磁石材ユニット6が第1実施形態による着磁装置1及び着磁方法で着磁されて作製された磁石ユニットの着磁状態と、着磁後の磁石をハルバッハ配列に従って配列することにより作製された従来の磁石ユニットの着磁状態とを解析した結果を示すグラフである。より具体的には、
図5は、第1面50iからa/2離れた位置での磁束密度の第4方向成分By
D4の分布を示している。ここで、aは、磁石材ユニット6の第4方向D4 における寸法である。
図5において、第1実施形態による着磁装置1及び着磁方法で着磁された磁石材ユニット6の着磁状態は、実線で示されている。また、
図5において、従来の磁石ユニットの着磁状態は、破線で示されている。
図5に示すように、第4方向D4における第1実施形態の方法で作製された磁石ユニットの磁束密度の分布は、従来の方法で作製された磁石ユニットと同様に、ひずみの少ない正弦波形状を示している。また、第1実施形態の方法で作製された磁石ユニットの磁束密度の大きさは、従来の方法で作製された磁石材ユニットと同等である。
【0042】
このように、第1実施形態によれば、磁化されていない磁石材51~54を配列して互いに対して固定した後に着磁するため、磁石材51~54を着磁後にその磁力に抗して配列する必要がない。また、複数の磁石材51~54を含む磁石材ユニット6を、一回の着磁操作で着磁することができる。また、磁石材ユニット6を着磁するための複雑な治具や装置を必要としない。
【0043】
<第2実施形態>
次に、
図6乃至
図8を参照して、第2実施形態による着磁装置1及び着磁方法について説明する。
図6は、第2実施形態による着磁装置1のコイルユニット5を示す斜視図である。
図7は、
図4に対応する図である。
図8は、
図5に対応する図である。
図6乃至
図8に示す第2実施形態では、単位コイルユニット10が3つのコイル11,12,13から成る点で、第1実施形態と異なる。その他の構成は、
図1乃至
図5に示す第1実施形態と略同一である。
図6乃至
図8に示す第2実施形態において、
図1乃至
図5に示す第1実施形態と同様の部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
コイルユニット5は、3つのコイル11~13から成る単位コイルユニット10を含んでいる。単位コイルユニット10は、第1コイル11と、第2コイル12と、第3コイル13とを含む。
【0045】
コイルユニット5に含まれるコイル11,12,13の各々は、任意の軸線を中心として巻回されている。各コイル11,12,13、軸方向が第1方向D1に沿うように配置されている。また、第1コイル11,第2コイル12及び第3コイル13は、第1方向D1に沿ってこの順で配列されている。単位コイルユニット5の第1方向D1に沿った長さはLである。
【0046】
各コイル11,12,13,14,15,16は、第1端部18と第2端部19とを有する。第1端部18から第2端部19に向かう方向に見て、コイル11,12,13,14,15,16の巻回方向は互いに同じ方向である。
【0047】
コイルユニット5に含まれるコイル11,12,13,14,15,16の軸方向に沿った長さ及び軸方向に垂直な断面積は、互いに同じである。コイル11,12,13,14,15,16を構成する導線の長さ、太さ及び巻き数も、互いに同じである。単位コイルユニット10内のコイル11,12,13,14,15,16は、長さLの領域内に第1方向D1に沿って均等に配置されている。また、隣り合うコイル11,12;12,13;13,14;14,15;15,16間の隙間は、十分に小さい。
【0048】
第2実施形態においても、第1方向D1に見て、単位コイルユニット5のコイルの数を2で割った値以下の最大の整数と同じ数の当該単位コイルユニット5のコイルの巻回方向は、当該単位コイルユニット5の他のコイルの巻回方向と逆方向である。図示された例では、第1方向D1に見て、第1コイル11と第3コイル13とが第1巻回方向に巻回されており、第2コイル12が第2巻回方向に巻回されている。
【0049】
第1コイル11は、第1電源回路31に接続されている。第2コイル12は、第2電源回路32に接続されている。第3コイル13は、第3電源回路33に接続されている。
【0050】
第2実施形態においても、各電源回路31,32,33を通じて当該電源回路31,32,33に接続されたコイル11,12,13を流れる電流の値は、上記の式(1)~(4)のいずれかで表される基準値R(x)の、当該コイル11,12,13の軸方向の中心位置における値である。
【0051】
図7に示す例では、各コイル11,12,13を流れる電流の値は、上記の式(4)で表される基準値R(x)の、当該コイル11,12,13の軸方向の中心位置における値である。
図7のグラフにおいて、基準値R(x)が破線で示されており、各コイル11,12,13を流れる電流の値が実線で示されている。より具体的には、第1コイル11を流れる電流の値I1はR(L/6)であり、第2コイル12を流れる電流の値I2はR(L/2)であり、第3コイル13を流れる電流の値I3はR(5L/6)である。また、
図7に示す例では、I1とI2とI3との比を有効数字二桁で表すと、I1:I2:I3=0.97:-0.71:-0.26である。第1~第3コイル11~13に、このように電流を流すことにより、コイルユニット5に対面して配置された磁石材ユニット6を、ハルバッハ配列に従って着磁することができる。
【0052】
次に、第2実施形態による着磁装置1を用いた磁石材ユニット6の着磁方法について説明する。
【0053】
まず、コイルユニット形成工程を実施する。具体的には、コイル11~13を第1方向D1に沿って配列する。このとき、コイル11~16の軸方向が第1方向D1に沿うように、コイル11~13を配列する。
【0054】
また、電源回路接続工程を実施する。具体的には、第1~第3電源回路31~33を、それぞれ第1~第3コイル11~13に接続する。
【0055】
また、磁石材ユニット形成工程を実施する。具体的には、磁化されていない複数の磁石材51,52,53,54を第2方向D2に沿って配列し、互いに対して固定する。
【0056】
次に、磁石材ユニット配置工程を実施する。具体的には、磁石材ユニット6を、着磁装置1のコイルユニット5に対面して配置する。このとき、
図6に示すように、磁石材ユニット6の第2方向D2が第1方向D1に沿うように、磁石材ユニット6を配置する。また、単位磁石材ユニット50の第1面50iがコイルユニット5の外周面5a又は内周面5bに対面するように、磁石材ユニット6を配置する。また、
図7に示すように、各磁石材51,52,53,54の第2方向D2における中心位置が、上記基準値R(x)が最大値、最小値又はゼロをとる位置と、第1方向D1において一致するように、磁石材ユニット6を配置する。
図7に示す例では、単位磁石材ユニット50の一方の端部50a及び他方の端部50bの位置が、第1方向D1において、単位コイルユニット10の一方の端部10a及び他方の端部10bの位置と一致するように、磁石材ユニット6を配置する。
【0057】
次に、励磁工程を実施する。具体的には、第1~第3電源回路31~33のコンデンサ43を充電する。コンデンサ43を充電し、且つ、磁石材ユニット6をコイルユニット5に対して適切な位置に配置した後、第1~第3電源回路31~33のスイッチ44を同時に閉じ、コイル11~13を励磁する。これにより、磁石材ユニット6の磁石材51~54が着磁される。
【0058】
図7において、各磁石材51~54の磁化方向が破線の矢印で示されている。
図7に示すように、第1磁石材51及び第3磁石材53は、磁化方向が第2方向D2に沿った方向になるように、着磁される。第1磁石材51の磁化方向と第3磁石材53の磁化方向とは、180°異なる。また、第2磁石材52及び第4磁石材54は、磁化方向が第4方向D4に沿った方向になるように、着磁される。第2磁石材52の磁化方向と第4磁石材54の磁化方向とは、180°異なる。
【0059】
図8は、磁石材ユニット6が第2実施形態による着磁装置1及び着磁方法で着磁されて作製された磁石ユニットの着磁状態と、着磁後の磁石をハルバッハ配列に従って配列することにより作製された従来の磁石ユニットの着磁状態とを解析した結果を示すグラフである。より具体的には、
図8は、第1面50iからa/2離れた位置での磁束密度の第4方向成分By
D4の分布を示している。ここで、aは、磁石材ユニット6の第4方向D4 における寸法である。
図8において、第2実施形態による着磁装置1及び着磁方法で着磁された磁石材ユニット6の着磁状態は、実線で示されている。また、
図8において、従来の磁石ユニットの着磁状態は、破線で示されている。
図8に示すように、第4方向D4における第1実施形態の方法で作製された磁石ユニットの磁束密度の分布は、従来の方法で作製された磁石ユニットと同様に、ひずみの少ない正弦波形状を示している。また、第2実施形態の方法で作製された磁石ユニットの磁束密度の大きさは、従来の方法で作製された磁石材ユニットと同等である。
【0060】
このように、第2実施形態によれば、磁化されていない磁石材51~54を配列して互いに対して固定した後に着磁するため、磁石材51~54を着磁後にその磁力に抗して配列する必要がない。また、複数の磁石材51~54を含む磁石材ユニット6を、一回の着磁操作で着磁することができる。また、磁石材ユニット6を着磁するための複雑な治具や装置を必要としない。
【0061】
<第3実施形態>
次に、
図9乃至
図11を参照して、第3実施形態による着磁装置1及び着磁方法について説明する。
図9は、第3実施形態による着磁装置1を示す回路図である。
図10は、
図4に対応する図である。
図11は、
図5に対応する図である。
図9乃至
図11に示す第3実施形態では、着磁装置1が1つの単位コイルユニット10に対して1つの電源回路31を有する点で、第1実施形態と異なる。その他の構成は、
図1乃至
図5に示す第1実施形態と略同一である。
図9乃至
図11に示す第3実施形態において、
図1乃至
図5に示す第1実施形態と同様の部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
着磁装置1は、コイルユニット5と、コイルユニット5に接続された電源回路31と、を備えている。
【0063】
コイルユニット5は、6つのコイルから成る単位コイルユニット10を含んでいる。単位コイルユニット10は、第1コイル11と、第2コイル12と、第3コイル13と、第4コイル14と、第5コイル15と、第6コイル16と、を含む。
【0064】
コイルユニット5に含まれるコイル11,12,13,14,15,16の各々は、任意の軸線を中心として巻回されている。各コイル11,12,13,14,15,16は、その軸方向が第1方向D1に沿うように配置されている。また、第1コイル11、第2コイル12、第3コイル13、第4コイル14、第5コイル15、及び第6コイル16は、第1方向D1に沿ってこの順で配列されている。単位コイルユニット10の第1方向D1に沿った長さは、Lである。
【0065】
各コイル11,12,13,14,15,16は、第1端部18と第2端部19とを有する。第1端部18から第2端部19に向かう方向に見て、コイル11,12,13,14,15,16の巻回方向は互いに同じ方向である。
【0066】
コイルユニット5に含まれるコイル11,12,13,14,15,16の軸方向に沿った長さ軸方向に垂直な断面積は、互いに同じである。コイル11,12,13,14,15,16を構成する導線の長さ、太さ及び巻き数も、互いに同じである。単位コイルユニット10内のコイル11,12,13,14,15,16は、長さLの領域内に第1方向D1に沿って均等に配置されている。また、隣り合うコイル11,12;12,13;13,14;14,15;15,16間の隙間は、十分に小さい。
【0067】
第3実施形態においても、第1方向D1に見て、単位コイルユニット5のコイルの数を2で割った値以下の最大の整数と同じ数の当該単位コイルユニット5のコイルの巻回方向は、当該単位コイルユニット5の他のコイルの巻回方向と逆方向である。図示された例では、第1方向D1に見て、第1コイル11と第2コイル12と第6コイル16とが第1巻回方向に巻回されており、第3コイル13と第4コイル14と第5コイル15とが第2巻回方向に巻回されている。
【0068】
図9に示すように、第1コイル11及び第4コイル14が直列接続されて、第1コイル対21を形成している。より具体的には、第1コイル11の第2端部19と第4コイル14の第2端部19とが接続されている。また、第2コイル12及び第5コイル15が直列接続されて、第2コイル対22を形成している。より具体的には、第2コイル12の第2端部19と第5コイル15の第2端部19とが接続されている。また、第3コイル13及び第6コイル16が直列接続されて、第3コイル対23を形成している。より具体的には、第3コイル13の第1端部18と第6コイル16の第1端部18とが接続されている。
【0069】
第2コイル対22と第3コイル対23は、並列接続されている。また、並列接続された第2コイル対22と第3コイル対23は、第1コイル対21と直列接続されている。
図9に示す例では、第2コイル12の第1端部18と第3コイル13の第2端部19とが接続されている。また、第5コイル15の第1端部18と第6コイル16の第2端部19とが接続されている。また、第4コイル14の第1端部18は、第2コイル12及び第3コイル13の接続点に接続されている。そして、第1コイル11の第1端部18と、第5コイル15及び第6コイル16の接続点が、それぞれ、電源回路31に接続されている。言い換えると、第1~第6コイル11~16には、共通の電源回路31を通じて電流が供給される。
【0070】
コイルユニット5がこのように構成されている場合、第1コイル11を流れる電流の値をI1とすると、第4コイル14を流れる電流の値I4は-I1となる。また、第2コイル12を流れる電流の値I2及び第6コイル16を流れる電流の値I6は、共にI/2となる。また、第3コイル13を流れる電流の値I3及び第5コイル15を流れる電流の値I5は、共に-I/2となる。すなわち、I1:I2:I3:I4:I5:I6=1:0.5:-0.5:-0.1:-0.5:0.5である。ここで、第1端部18から第2端部19へ流れる電流の値が正の値で表され、第2端部19から第1端部18へ流れる電流の値が負の値で表されている。
【0071】
次に、第3実施形態による着磁装置1を用いた磁石材ユニット6の着磁方法について説明する。
【0072】
まず、コイルユニット形成工程を実施する。具体的には、コイル11~16を第1方向D1に沿って配列する。このとき、コイル11~16の軸方向が第1方向D1に沿うように、コイル11~16を配列する。また、第1コイル11及び第4コイル14を直列接続して、第1コイル対21を作製する。また、第2コイル12及び第5コイル15を直列接続して、第2コイル対22を作製する。また、第3コイル13及び第6コイル16を直列接続して、第3コイル対23を作製する。また、第2コイル対22と第3コイル対23を並列接続する。並列接続された第2コイル対22及び第3コイル対23を、第1コイル対11と直列接続する。
【0073】
また、電源回路接続工程を実施する。具体的には、電源回路31を、第1コイル11の第1端部18と、第5コイル15及び第6コイル16の接続点に接続する。
【0074】
また、磁石材ユニット形成工程を実施する。具体的には、磁化されていない複数の磁石材51,52,53,54を第2方向D2に沿って配列し、互いに対して固定する。
【0075】
次に、磁石材ユニット配置工程を実施する。具体的には、磁石材ユニット6を、着磁装置1のコイルユニット5に対面して配置する。このとき、
図10に示すように、磁石材ユニット6の第2方向D2が第1方向D1に沿うように、磁石材ユニット6を配置する。また、単位磁石材ユニット50の第1面50iがコイルユニット5の外周面5a又は内周面5bに対面するように、磁石材ユニット6を配置する。また、
図10に示すように、各磁石材51,52,53,54の第2方向D2における中心位置が、上記基準値R(x)が最大値、最小値又はゼロをとる位置と、第1方向D1において一致するように、磁石材ユニット6を配置する。
図10に示す例では、単位磁石材ユニット50の一方の端部50a及び他方の端部50bの位置が、単位コイルユニット10の一方の端部10a及び他方の端部10bの位置から、第1方向D1にL/24だけ離れるように、磁石材ユニット6を配置する。
【0076】
次に、励磁工程を実施する。具体的には、電源回路31のコンデンサ43を充電する。コンデンサ43を充電し、且つ、磁石材ユニット6をコイルユニット5に対して適切な位置に配置した後、電源回路31のスイッチ44を閉じ、コイル11~16を励磁する。これにより、磁石材ユニット6の磁石材51~54が着磁される。
【0077】
図10において、各磁石材51~54の磁化方向が破線の矢印で示されている。
図10に示すように、第1磁石材51及び第3磁石材53は、磁化方向が第2方向D2に沿った方向になるように、着磁される。第1磁石材51の磁化方向と第3磁石材53の磁化方向とは、180°異なる。また、第2磁石材52及び第4磁石材54は、磁化方向が第4方向D4に沿った方向になるように、着磁される。第2磁石材52の磁化方向と第4磁石材54の磁化方向とは、180°異なる。
【0078】
図11は、磁石材ユニット6が第3実施形態による着磁装置1及び着磁方法で着磁されて作製された磁石ユニットの着磁状態と、着磁後の磁石をハルバッハ配列に従って配列することにより作製された従来の磁石ユニットの着磁状態とを解析した結果を示すグラフである。より具体的には、
図11は、第1面50iからa/2離れた位置での磁束密度の第4方向成分By
D4の分布を示している。ここで、aは、磁石材ユニット6の第4方向D4 における寸法である。
図11において、第3実施形態による着磁装置1及び着磁方法で着磁された磁石材ユニット6の着磁状態は、実線で示されている。また、
図11において、従来の磁石ユニットの着磁状態は、破線で示されている。
図11に示すように、第4方向D4における第3実施形態の方法で作製された磁石ユニットの磁束密度の分布は、従来の方法で作製された磁石ユニットと同様に、ひずみの少ない正弦波形状を示している。また、第3実施形態の方法で作製された磁石ユニットの磁束密度の大きさは、従来の方法で作製された磁石材ユニットと同等である。
【0079】
このように、第3実施形態によれば、磁化されていない磁石材51~54を配列して互いに対して固定した後に着磁するため、磁石材51~54を着磁後にその磁力に抗して配列する必要がない。また、複数の磁石材51~54を含む磁石材ユニット6を、一回の着磁操作で着磁することができる。また、磁石材ユニット6を着磁するための複雑な治具や装置を必要としない。
【0080】
<変形例>
なお、上述してきた実施形態に対して、さらに様々な変更を加えることが可能である。
【0081】
例えば、
図12に示すように、コイルユニット5は、第1方向D1に沿って並ぶ複数の単位コイルユニット10を含んでよい。この場合、磁石材ユニット6は、第2方向D2に沿って並ぶ複数の単位磁石材ユニット50を含んでよい。
【0082】
また、
図13及び
図14に示すように、一つのコイルユニット5によって複数の磁石材ユニット6を着磁してもよい。この場合、
図13に示すように、複数の磁石材ユニット6は、コイルユニット5の周方向において互いに異なる位置に配置されてもよい。あるいは、
図14に示すように、複数の磁石材ユニット6は、コイルユニット5の外側及び内側に配置されてもよい。
【0083】
また、図示された例において、第1方向D1及び第2方向D2は直線に沿った方向であるが、これに限られない。例えば、第1方向D1および第2方向D2は、円の周方向に沿った方向であってもよい。この場合、円弧状または円筒状の磁石ユニットを作製することができる。
【0084】
上述した実施形態及び変形例による着磁装置1または着磁方法は、種々の装置で用いられるハルバッハ配列に従って配列された磁石ユニットの作製に適用可能である。例えば、エレベータや、鉄道、リニアモータ、回転モータ、発電機、電子加速器で用いられる磁石ユニットの作製に適用可能である。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内でこれらの実施形態および変形例を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1:着磁装置、5:コイルユニット、6:磁石材ユニット、10:単位コイルユニット、11:第1コイル、12:第2コイル、13:第3コイル、14:第4コイル、15:第5コイル、16:第6コイル、21:第1コイル対、22:第2コイル対、23:第3コイル対、31:第1電源回路、32:第2電源回路、33:第3電源回路、50:単位磁石材ユニット、51:第1磁石材、52:第2磁石材、53:第3磁石材、54:第4磁石材、D1:第1方向、D2:第2方向、D3:第3方向、D4:第4方向