(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104232
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】生タイヤの製造方法、空気入りタイヤの製造方法、生タイヤの製造装置及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B29D 30/72 20060101AFI20240726BHJP
B29D 30/60 20060101ALI20240726BHJP
B29D 30/10 20060101ALI20240726BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20240726BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B29D30/72
B29D30/60
B29D30/10
B29D30/06
B60C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008358
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】矢口 昌
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA39
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC47
3D131BC49
3D131DA34
3D131DA43
3D131GA01
4F215AH20
4F215VA02
4F215VD09
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4F215VK34
4F215VL11
4F215VP37
4F215VP38
4F501TA02
4F501TC09
4F501TC10
4F501TD37
4F501TE10
4F501TL36
4F501TL37
4F501TV21
(57)【要約】
【課題】隆起高さの高い凸状標章がサイドウォール部に配されていても、重量増と転がり抵抗の悪化を抑制できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】生タイヤ製造方法100は、円筒状または円環状の未加硫のカーカスを形成する第1工程S1と、カーカスの軸方向外側の一対の外周面のそれぞれに、未加硫のサイドウォールゴムを巻付ける第2工程S2と、少なくとも一方のサイドウォールゴムの外周面の一部に未加硫の帯状ゴムを局所的に貼付ける第3工程S3とを含む、
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤを製造する方法であって、
円筒状または円環状の未加硫のカーカスを形成する第1工程と、
前記カーカスの軸方向外側の一対の外周面のそれぞれに、未加硫のサイドウォールゴムを巻付ける第2工程と、
少なくとも一方の前記サイドウォールゴムの外周面の一部に未加硫の帯状ゴムを局所的に貼付ける第3工程とを含む、
生タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記第1工程は、剛性中子の外表面に、前記カーカスを含む未加硫のタイヤ構成部材を貼り付ける工程を含む、請求項1に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の生タイヤの製造方法によって製造された前記生タイヤを加硫して、空気入りタイヤを製造する方法であって、
前記生タイヤを加硫金型に装填し加硫する第4工程を含み、
前記加硫金型は、前記空気入りタイヤのサイドウォール部を成形するためのサイドウォール成形面と、前記サイドウォール成形面から陥没する凹部とを有し、
前記第4工程は、前記帯状ゴムと前記凹部とを位置合わせする工程を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
生タイヤを製造するための装置であって、
円筒状または円環状の未加硫のカーカスを形成する第1機構と、
前記カーカスの軸方向外側の一対の外周面のそれぞれに、未加硫のサイドウォールゴムを巻付ける第2機構と、
少なくとも一方の前記サイドウォールゴムの外周面の周方向の一部に未加硫の帯状ゴムを局所的に貼付ける第3機構とを含む、
生タイヤの製造装置。
【請求項5】
前記第3機構は、前記帯状ゴムを貼付け位置まで搬送するアプリケーターを含む、請求項4に記載の生タイヤの製造装置。
【請求項6】
前記アプリケーターは、前記生タイヤの軸方向及び半径方向に位置調整可能に構成されている、請求項5に記載の生タイヤの製造装置。
【請求項7】
前記アプリケーターは、前記帯状ゴムの搬送方向の廻りに回転可能に構成されている、請求項5に記載の生タイヤの製造装置。
【請求項8】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
前記ビードコアに跨るように前記一対のビード部間を延びるカーカスとを含み、
少なくとも一方の前記サイドウォール部は、前記カーカスの外面に沿ったサイドウォール仮想輪郭面から隆起した文字、記号又は図形からなる凸状標章を有し、
前記凸状標章は、前記サイドウォール部の周方向の一部に局所的に形成され、
前記凸状標章が形成された第1部分における前記カーカスの外面から前記サイドウォール仮想輪郭面に至るサイドウォールゴムの第1厚さと、前記凸状標章が形成されていない第2部分における前記カーカスの外面からサイドウォール輪郭面に至る前記サイドウォールゴムの第2厚さとが等しい、
空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第1厚さに対する前記第2厚さの比は、90~110%である、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記凸状標章が前記サイドウォール仮想輪郭面から隆起する高さは、1~10mmである、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記凸状標章は複数設けられ、それぞれの前記凸状標章は、タイヤ周方向に均等に分散して配されている、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤの製造方法、空気入りタイヤの製造方法、生タイヤの製造装置及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サイドウォール部に文字、記号又は図形からなる凸状標章が形成された空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空気入りタイヤのデザイン性を高めるために、凸状標章の隆起高さが高く設計される傾向がある。一方、従来の生タイヤの製造技術では、サイドウォールゴム厚さが全周にわたって均一に成形されるため、加硫済みタイヤの凸状標章が形成された領域では、ゴム厚さが不足するおそれがある。凸状標章が形成された領域のゴム厚さを基準として、生タイヤを製造した場合、凸状標章が形成されていない領域でのゴム厚さが過大となり、重量増と転がり抵抗の悪化を招いていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、隆起高さの高い凸状標章がサイドウォール部に配されていても、重量増と転がり抵抗の悪化を抑制できる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生タイヤを製造する方法であって、
円筒状または円環状の未加硫のカーカスを形成する第1工程と、
前記カーカスの軸方向外側の一対の外周面のそれぞれに、未加硫のサイドウォールゴムを巻付ける第2工程と、
少なくとも一方の前記サイドウォールゴムの外周面において、周方向の一部に未加硫の帯状ゴムを局所的に貼付ける第3工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の前記生タイヤ製造方法は、前記第3工程で貼付けられた前記帯状ゴムが、前記凸状標章で不足するゴムボリュームを補う。これにより、加硫済みタイヤの前記凸状標章が形成された領域での、ゴム厚さの不足が抑制される。また、前記凸状標章が形成されていない領域でのゴム厚さが適正に維持され、前記空気入りタイヤの重量増と転がり抵抗の悪化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤの子午断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である生タイヤの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態である空気入りタイヤの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図2の空気入りタイヤで凸状標章が形成された第1部分を含むサイドウォール部の子午断面図である。
【
図11】
図2の空気入りタイヤで凸状標章が形成されていない第2部分を含むサイドウォール部の子午断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1、2は、本発明の一実施形態である空気入りタイヤを示している。空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、それぞれにビードコア5が埋設された一対のビード部4とを含んでいる。
【0010】
図1では、正規リムに組み込まれ、正規内圧が充填された正規状態の空気入りタイヤ1のビード部4のタイヤ軸を含む子午断面が示されている。以下、空気入りタイヤ1の各寸法は、特に断りのない限り、正規状態で測定されるものとする。但し、内部構造等の測定できない寸法については、カットセクションを用いて正規状態に近似させた状態で測定されるものとする。
【0011】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムRであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。本願では、特に断りのない場合、リムRとは、正規リムを示している。
【0012】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
ビードコア5は、一対のビード部4に配されている。ビードコア5は、例えば、スチール製のビードワイヤ(図示省略)を多列多段に巻回した断面多角形状に形成されている。
【0014】
一対のビード部4間には、カーカス6が一対のビードコア5に跨るように延びている。一対のサイドウォール部3は、カーカス6のタイヤ軸方向外側にサイドウォールゴム3Gを有している。
【0015】
カーカス6は、少なくとも1枚のカーカスプライを有する。カーカスプライは、例えば、カーカスコードの配列体がトッピングゴムで被覆されて形成されている。カーカスコードには、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維等の有機繊維やスチールが適用される。
【0016】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部2にベルト層7が設けられている。ベルト層7は、カーカス6のタイヤ半径方向外側に配されている。ベルト層7は、少なくとも1枚、本実施形態では、タイヤ半径方向の内外に2枚のベルトプライから構成されている。ベルトプライは、例えば、ベルトコードの配列体がトッピングゴムで被覆されて形成されている。ベルトコードは、タイヤ周方向に配されている。すなわち、ベルトコードは、タイヤ赤道Cに対して、例えば、15~45゜の角度で傾斜して配列されるのが望ましい。ベルトコードは、スチールコード等の高弾性のものが望ましい。
【0017】
ベルト層7のタイヤ半径方向外側には、バンド層が配されていてもよい。該バンド層は、有機繊維コードをタイヤ周方向に対して、例えば10度以下となるように、小さい角度で配列された少なくとも1枚のバンドプライで構成される。バンドプライには、バンドコード又はリボン状の帯状プライを螺旋状に巻き付けることにより形成されたジョイントレスバンドやプライをスプライスしたもののいずれでもよい。
【0018】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、カーカス6のタイヤ半径方向内側及びタイヤ軸方向内側には、インナーライナー9が設けられている。
【0019】
サイドウォール部3は、文字、記号又は図形からなる凸状標章36を有している。凸状標章36は、カーカス6の外面に沿ったサイドウォール仮想輪郭面34(後述する
図10参照)からタイヤ軸方向外側に隆起して形成されている。このような凸状標章36によって空気入りタイヤ1のデザイン性が高められる。
【0020】
本実施形態の凸状標章36は、一対のサイドウォール部3に形成されている。凸状標章36は、一方のサイドウォール部3のみに形成されていてもよい。
【0021】
凸状標章36は、サイドウォール部3の周上の一部に局所的に形成されている。従って、サイドウォール部3は、凸状標章36が形成された第1部分31と凸状標章36が形成されていない第2部分32とを有する。
【0022】
凸状標章36は、タイヤ周方向に特定の長さで連続して形成されている。凸状標章36は、タイヤ周方向に断続的に形成されていてもよい。特定の間隔を隔てた一連の文字の集合によって凸状標章36が構成されていてもよい。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態である生タイヤの製造方法を示している。生タイヤ製造方法100によって製造された生タイヤ1gを加硫成型することにより、空気入りタイヤ1が製造される。
【0024】
生タイヤ製造方法100は、第1工程S1ないし第3工程S3を含んでいる。
【0025】
第1工程S1では、円筒状または円環状の未加硫のカーカス6g(
図4参照)が形成される。第2工程S2では、カーカス6gの軸方向外側の一対の外周面のそれぞれに、未加硫のサイドウォールゴム3gが巻付けられる。第1工程S1及び第2工程S2は、従来の生タイヤ製造方法と同様である。従って、第1工程S1及び第2工程S2は、従来の生タイヤ製造装置を用いても実行可能である。
【0026】
図4ないし
図7は、第3工程S3を示している。第3工程S3では、サイドウォールゴム3gの外周面に未加硫の帯状ゴム36gが貼付けられる。
図4及び5において、破線で囲まれた領域は、第3工程S3で帯状ゴム36gが貼付けられる領域である。
【0027】
帯状ゴム36gのタイヤ周方向長さは、凸状標章36のタイヤ周方向長さと対応している。生タイヤ1gが加硫成型される加硫工程では、金型内で帯状ゴム36gが流動する。従って、帯状ゴム36gのタイヤ周方向長さと凸状標章36のタイヤ周方向長さとが厳密に一致している必要はない。
【0028】
図4ないし
図7では、一層の帯状ゴム36gがサイドウォール部3に貼付けられる例が示されている。帯状ゴム36gは、より薄い厚さのストリップゴムが複数回積層されることにより、構成されていてもよい。
【0029】
生タイヤ製造方法100は、第3工程S3で貼付けられた帯状ゴム36gが、凸状標章36で不足するゴムボリュームを補う。これにより、加硫済みタイヤ(空気入りタイヤ1)の凸状標章36が形成された第1部分31での、ゴム厚さの不足が抑制される。また、凸状標章36が形成されていない第2部分32でのゴム厚さが適正に維持され、空気入りタイヤ1の重量増と転がり抵抗の悪化が抑制される。
【0030】
第1工程S1は、通常、成形ドラムの外周面にカーカス6gを含む未加硫のタイヤ構成部材(例えば、インナーライナー等)が貼り付けられる工程を含んでいる。
【0031】
本願発明の第1工程S1は、剛性中子の外表面に、カーカス6gを含む上記タイヤ構成部材を貼り付ける工程を含んでいてもよい。
【0032】
本願発明の第3工程S3は、カーカス6gの半径方向の外側にベルト層7を構成する未加硫のベルト部材が巻付けられる前に実行されてもよく、カーカス6gの半径方向の外側に未加硫のベルト部材が巻付けられた後に実行されてもよい。また、本願発明の第3工程S3は、カーカス6gの半径方向の外側に未加硫のトレッドゴム部材が巻付けられる前に実行されてもよく、カーカス6gの半径方向の外側に未加硫のトレッドゴム部材が巻付けられた後に実行されてもよい。
【0033】
図8は、本発明の一実施形態である空気入りタイヤ1の製造方法200を示している。空気入りタイヤ1の製造方法200は、第1工程S1ないし第4工程S4を含んでいる。
【0034】
既に述べたように、生タイヤ製造方法100によって製造された生タイヤ1gを加硫成型することにより、空気入りタイヤ1が製造される。空気入りタイヤ1の製造方法200において、第1工程S1ないし第3工程S3は、生タイヤ製造方法100と同様である。
【0035】
第4工程S4では、第1工程S1ないし第3工程S3を経て製造された生タイヤ1gが加硫金型に装填され加硫される。これにより、加硫済みの空気入りタイヤ1が製造される。
【0036】
図9は、第4工程S4を示している。生タイヤ1gを加硫するための加硫金型Mは、空気入りタイヤ1のサイドウォール部3を成形するためのサイドウォール成形面M3と、サイドウォール成形面M3から陥没する凹部M4とを有している。凹部M4は、凸状標章36に対応する形状に形成され、空気入りタイヤ1のサイドウォール部3に凸状標章36を形成する。なお、同図では、第4工程S4を説明する便宜上、加硫金型Mの天面からキャビティ空間が透視されて描かれている。
【0037】
図9では、生タイヤ1gが回転される前の帯状ゴム36gが破線にて示されている。第4工程S4において、生タイヤ1gが加硫金型Mに装填される際に、生タイヤ1gは、その軸廻りに適宜回転される。これにより、生タイヤ1gの帯状ゴム36gの位置と加硫金型Mの凹部M4の位置とが合致される。すなわち、第4工程S4は、帯状ゴム36gと凹部M4とを位置合わせする工程を含む。これにより、空気入りタイヤ1の凸状標章36が形成された第1部分31での、ゴム厚さの不足が抑制される。また、凸状標章36が形成されていない第2部分32でのゴム厚さが適正に維持される。
【0038】
生タイヤ1gの製造に剛性中子が用いられる場合、第4工程S4では、生タイヤ1gが剛性中子と共に、加硫金型Mに装填されるのが望ましい。通常、剛性中子には、生タイヤ1gの製造及び加硫時に剛性中子及び生タイヤ1gの位相角を特定するためのエンコーダーが設けられている。従って、剛性中子と共に生タイヤ1gを回転させることにより、帯状ゴム36gと凹部M4との位置合わせは容易に実行される。これにより、加硫時のゴム流れが抑制されるので、設計通りの形状の空気入りタイヤ1が容易に製造される。
【0039】
図4ないし
図6は、生タイヤ製造方法100を実行して、生タイヤを製造するための生タイヤ製造装置10を示している。生タイヤ製造装置10は、円筒状または円環状のカーカスを形成する第1機構と、カーカスの軸方向外側の一対の外周面のそれぞれに、サイドウォールゴムを巻付ける第2機構と、サイドウォールゴム3gの外周面の一部に帯状ゴムを局所的に貼付ける第3機構11とを含んでいる。生タイヤ製造装置10のうち、上記第1機構及び上記第2機構は、従来の生タイヤ製造装置と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0040】
第3機構11は、帯状ゴム36gを生タイヤ1gの貼付け位置Pまで搬送するアプリケーター12を含んでいる。
【0041】
アプリケーター12は、長尺の帯状ゴム36gを切断するためのカッター13と、帯状ゴム36gを搬送するためのコンベア14と、搬送された帯状ゴム36gをサイドウォールゴム3gに押付けるための押えローラー15とを含んでいる。コンベア14の帯状ゴム36gの幅方向の両側には、ガイド16が設けられている。
【0042】
本実施形態のアプリケーター12は、生タイヤ1gの軸方向及び半径方向に位置調整可能に構成されている。このような構成は、例えば、アプリケーター12を軸方向及び半径方向に移動可能に支持する機構により実現される。これにより、第3工程S3を実行するにあたって、帯状ゴム36gが生タイヤ1gの貼付け位置Pに正確に搬送されるようになる。また、サイズ違いの複数種類の生タイヤ1gを容易に製造することが可能となる。
【0043】
本実施形態のアプリケーター12は、帯状ゴムの搬送方向の廻りに回転可能に構成されている。プロファイルが異なるサイズ違いの複数種類の生タイヤ1gを容易に製造することが可能となる。
【0044】
図10、11は、
図2の空気入りタイヤ1の子午断面の一部を示している。
図10は、サイドウォール部3の凸状標章36が形成された第1部分31を含む断面Xであり、
図11は、サイドウォール部3の凸状標章36が形成されていない第2部分32を含む断面Yである。
【0045】
第1部分31では、サイドウォール仮想輪郭面34を描くことができる。サイドウォール仮想輪郭面34は、凸状標章36が形成されていない第2部分32でのサイドウォール輪郭面35を、カーカス6の外面に沿って凸状標章36が形成された第1部分31に滑らかに延長することにより描かれる。
【0046】
空気入りタイヤ1は、凸状標章36が形成された第1部分31におけるカーカス6の外面からサイドウォール仮想輪郭面34に至るサイドウォールゴムの第1厚さT1と、凸状標章36が形成されていない第2部分32におけるカーカス6の外面からサイドウォール輪郭面35に至るサイドウォールゴムの第2厚さT2とが等しい。
【0047】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、凸状標章36は、空気入りタイヤ1の最大幅部を含む領域に配されている。従って、
図10及び
図11では、第1厚さT1及び第2厚さT2は、最大幅部におけるサイドウォールゴム3Gの厚さを示している。第1厚さT1及び第2厚さT2は、タイヤ半径方向の位置が同一であれば、これに限られない。
【0048】
ここで、「カーカス6の外面」とは、カーカス6のトッピングゴムを含まず、カーカスコードの外面を意図している。「第1厚さT1と第2厚さT2とが等しい」とは、厳密な意味での同一性までを要求する意図はなく、空気入りタイヤにおいて通常想定される製造上の誤差を許容する趣旨である。
【0049】
このような空気入りタイヤ1では、凸状標章36が形成された第1部分31でのゴム厚さの不足に起因するサイドウォール部3の不良が抑制される。また、凸状標章36が形成されていない第2部分32でのゴム厚さが適正に維持され、空気入りタイヤ1の重量増と転がり抵抗の悪化が抑制される。
【0050】
空気入りタイヤ1において、第1厚さT1に対する第2厚さT2の比T2/T1は、90~110%が望ましい。
【0051】
上記比T2/T1が90~110%であることにより、第1厚さT1と第2厚さT2とがより一層近似し、上記作用効果が顕著に得られる。
【0052】
凸状標章36がサイドウォール仮想輪郭面34から隆起する高さhは、1~10mmが望ましい。
【0053】
上記高さhが1mm以上であることにより、空気入りタイヤ1のデザイン性が高められる。上記高さhが10mm以下であることにより、空気入りタイヤ1のユニフォミティが良好に維持される。
【0054】
凸状標章36は、サイドウォール部3に複数設けられていてもよい。この場合、それぞれの凸状標章36は、タイヤ周方向に均等に、すなわち等しい角度で、分散して配されている、のが望ましい。
【0055】
凸状標章36は、一対のサイドウォール部3の両側、すなわち、タイヤ軸方向で一方のサイドウォール部3及び他方のサイドウォール部3の両側に形成されていてもよい。このような空気入りタイヤ1では、リムへの装着向きを指定することなく、良好なデザイン性が得られる。
【0056】
以上、本発明の生タイヤ製造方法100等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例0057】
図1の基本構造を有するサイズ:37×12.50R20の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づきそれぞれ50本ずつ試作され、外観不良、静的バランス、重量が測定された。実施例2~4の凸状標章は、周方向に均等に分散して配されている(例えば、実施例2では180゜ずつ、実施例3では120゜ずつ分散して配されている)。テスト方法は、以下の通りである。
【0058】
<外観不良>
サイドウォール部の凸状標章の外観が作業者の目視で確認された。外観が良好なタイヤは〇で表示され、外観に不良が生じたタイヤは×で表示される。当該不良タイヤは、商品として出荷できないため、外観不良は最も優先される評価項目である。
【0059】
<静的バランス>
各タイヤの静的バランスが測定された。静的バランスが30N・cm未満のタイヤは〇で表示され、静的バランスが30N・cm以上のタイヤは×で表示される。
【0060】
<重量>
各タイヤの重量が測定された。重量が36kg未満のタイヤは〇で表示され、重量が36kg以上のタイヤは×で表示される。
【0061】
【0062】
表1から明らかなように、実施例の空気入りタイヤは、比較例に比べて外観不良が少なく、静的バランスも良好で、軽量であることが確認できた。
【0063】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0064】
[本発明1]
生タイヤを製造する方法であって、
円筒状または円環状の未加硫のカーカスを形成する第1工程と、
前記カーカスの軸方向外側の一対の外周面のそれぞれに、未加硫のサイドウォールゴムを巻付ける第2工程と、
少なくとも一方の前記サイドウォールゴムの外周面の一部に未加硫の帯状ゴムを局所的に貼付ける第3工程とを含む、
生タイヤの製造方法。
[本発明2]
前記第1工程は、剛性中子の外表面に、前記カーカスを含む未加硫のタイヤ構成部材を貼り付ける工程を含む、本発明1に記載の生タイヤの製造方法。
[本発明3]
本発明1に記載の生タイヤの製造方法によって製造された前記生タイヤを加硫して、空気入りタイヤを製造する方法であって、
前記生タイヤを加硫金型に装填し加硫する第4工程を含み、
前記加硫金型は、前記空気入りタイヤのサイドウォール部を成形するためのサイドウォール成形面と、前記サイドウォール成形面から陥没する凹部とを有し、
前記第4工程は、前記帯状ゴムと前記凹部とを位置合わせする工程を含む、空気入りタイヤの製造方法。
[本発明4]
生タイヤを製造するための装置であって、
円筒状または円環状の未加硫のカーカスを形成する第1機構と、
前記カーカスの軸方向外側の一対の外周面のそれぞれに、未加硫のサイドウォールゴムを巻付ける第2機構と、
少なくとも一方の前記サイドウォールゴムの外周面の周方向の一部に未加硫の帯状ゴムを局所的に貼付ける第3機構とを含む、
生タイヤの製造装置。
[本発明5]
前記第3機構は、前記帯状ゴムを貼付け位置まで搬送するアプリケーターを含む、本発明4に記載の生タイヤの製造装置。
[本発明6]
前記アプリケーターは、前記生タイヤの軸方向及び半径方向に位置調整可能に構成されている、本発明5に記載の生タイヤの製造装置。
[本発明7]
前記アプリケーターは、前記帯状ゴムの搬送方向の廻りに回転可能に構成されている、本発明5または6に記載の生タイヤの製造装置。
[本発明8]
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
前記ビードコアに跨るように前記一対のビード部間を延びるカーカスとを含み、
少なくとも一方の前記サイドウォール部は、前記カーカスの外面に沿ったサイドウォール仮想輪郭面から隆起した文字、記号又は図形からなる凸状標章を有し、
前記凸状標章は、前記サイドウォール部の周方向の一部に局所的に形成され、
前記凸状標章が形成された第1部分における前記カーカスの外面から前記サイドウォール仮想輪郭面に至るサイドウォールゴムの第1厚さと、前記凸状標章が形成されていない第2部分における前記カーカスの外面からサイドウォール輪郭面に至る前記サイドウォールゴムの第2厚さとが等しい、
空気入りタイヤ。
[本発明9]
前記第1厚さに対する前記第2厚さの比は、90~110%である、本発明8に記載の空気入りタイヤ。
[本発明10]
前記凸状標章が前記サイドウォール仮想輪郭面から隆起する高さは、1~10mmである、本発明8または9に記載の空気入りタイヤ。
[本発明11]
前記凸状標章は複数設けられ、それぞれの前記凸状標章は、タイヤ周方向に均等に分散して配されている、本発明8ないし10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。