(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104236
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】炭化珪素基板の洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240726BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20240726BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20240726BHJP
C11D 7/08 20060101ALI20240726BHJP
C11D 7/34 20060101ALI20240726BHJP
C11D 1/12 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/26
C11D7/32
C11D7/08
C11D7/34
C11D1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008372
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】守田 菊恵
(72)【発明者】
【氏名】高中 亞鈴治
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003AB13
4H003BA12
4H003DA05
4H003DB01
4H003EB04
4H003EB07
4H003EB14
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA28
5F157AA28
5F157AA93
5F157AA96
5F157BD02
5F157BD04
5F157BD06
5F157BE12
5F157BF12
5F157BF45
5F157BF52
5F157BF58
5F157BF59
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】
安定性が高く、溶液の形態で製品を運搬できる、炭化珪素基板のマンガン汚染の洗浄組成物を提供する。
【解決手段】
マンガン化合物を含む研磨剤により研磨された炭化珪素基板、またはマンガン化合物を含むエッチング液によりエッチングされた炭化珪素基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、還元剤、pH調整剤および水を含み、pHが5未満であり、前記還元剤が、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物、グリオキシル酸およびジエチルヒドロキシルアミンからなる群から選択される1種または2種以上である、前記洗浄液組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガン化合物を含む研磨剤により研磨された炭化珪素基板、またはマンガン化合物を含むエッチング液によりエッチングされた炭化珪素基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、還元剤、pH調整剤および水を含み、pHが5未満であり、前記還元剤が、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物、グリオキシル酸およびジエチルヒドロキシルアミンからなる群から選択される1種または2種以上である、前記洗浄液組成物。
【請求項2】
以下の式(1)
【化1】
式中、
R
1~R
6は、それぞれ独立して、H、OH、COOH、炭素数が1~4個のアルキル、炭素数が2~4個のアルケニルまたは炭素数が1~4個のアルコキシであり、ここで、R
1~R
6の少なくとも2個がOHである、
で表される2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
没食子酸、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロールおよびメチルカテコールからなる群から選択される1種または2種以上の2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物を含む、請求項1または2に記載の洗浄液組成物。
【請求項4】
pH調整剤が無機酸または有機酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の洗浄液組成物。
【請求項5】
pH調整剤が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の洗浄液組成物。
【請求項6】
さらに、界面活性剤として、1種または2種以上のポリスルホン酸化合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄液組成物。
【請求項7】
還元剤の濃度が、0.001質量%以上1質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の洗浄液組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の洗浄液組成物用の原液組成物であって、10倍~1000倍に希釈することにより前記洗浄液組成物を得るために用いられる、前記原液組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の洗浄液組成物を、マンガン化合物を含む研磨剤により研磨された炭化珪素基板、またはマンガン化合物を含む組成物によりエッチングされた炭化珪素基板に接触させる工程を含む、炭化珪素基板の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素基板の洗浄組成物および炭化珪素基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、現在主流の半導体材料であるシリコンに比べて、広いバンドギャップ、高い絶縁破壊電界強度、高い熱伝導率等の優れた物性を有しているため、大電力制御や省エネルギーを可能とするパワーデバイス用の半導体材料として期待されている。
【0003】
デバイスの製造プロセスは、一般に基板を平坦化する研磨工程や、加工ダメージ層などを溶解除去するエッチング工程を含むが、炭化珪素は硬度が高いため、従来シリコン基板の加工で用いられてきたシリカスラリーによる研磨や、フッ硝酸などの強酸によるエッチングでは、ほとんど研磨やエッチングができず、加工に長時間を要する問題を有している。この問題に対応すべく、酸化剤として過マンガン酸イオンをスラリーやエッチング液に添加する方法や、スラリーの砥粒としてマンガン酸化物を用いる方法が提案されているが、研磨やエッチング後の炭化珪素には、高濃度のマンガン汚染が残留することになる。
【0004】
砥粒に用いられるマンガン酸化物としてはMnO2、Mn3O4等があるが、III価、IV価のマンガン化合物は不溶性であり、スラリーやエッチング液に添加される過マンガン酸化合物は、不溶性のマンガン化合物を生成すると推測される。このような不溶性のマンガン化合物は、一旦基板に付着すると洗浄が非常に困難である。
【0005】
炭化珪素の洗浄にはRCA洗浄が広く用いられており、その基本はパーティクル除去を目的としたアンモニア水-過酸化水素水からなるSC-1洗浄(Standard Clean 1)、金属不純物除去を目的とした塩酸-過酸化水素水からなるSC-2洗浄(Standard Clean 2)、およびフッ酸による洗浄を組み合わせた洗浄である。
RCA洗浄以外の洗浄方法として、特許文献1では、アスコルビン酸とエリソルビン酸の少なくとも一方を含む、pHが6以下の洗浄剤が提案されている。特許文献2では、アスコルビン酸等の還元剤と酸からなる半導体基板の洗浄方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/088928明細書
【特許文献2】特開平11-251280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
炭化珪素の洗浄のために広く使用されている前記RCA洗浄は、高濃度の強酸および強アルカリ性洗浄液を高温で使用したり、毒性の高いフッ酸を高濃度で使用したりするため、安全や環境への負荷が大きいという点に問題があった。特許文献1や2では、還元剤のアスコルビン酸またはエリソルビン酸を含む洗浄剤が提案されているが、強力な還元力を持つアスコルビン酸およびエリソルビン酸は溶液中で容易に酸化分解して急速に含有量が低下するため、洗浄剤製品を溶液の形態で運搬することが出来ない。このため、ユーザーサイトで、固体で輸送されたアスコルビン酸またはエリソルビン酸から洗浄液を調合しなければならず、洗浄液の調合設備やフィルトレーション設備の導入が必要になるなど、作業工数およびコストが増大するといった問題があった。
【0008】
本発明の目的は、安全性および安定性に優れ、溶液の形態で製品を運搬できる炭化珪素基板上のマンガン汚染を洗浄するための洗浄液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究する中で、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物、グリオキシル酸およびジエチルヒドロキシルアミンからなる群から選択される特定の還元剤が、酸性下で炭化珪素基板上のマンガン化合物を効果的に除去できることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]マンガン化合物を含む研磨剤により研磨された炭化珪素基板、またはマンガン化合物を含むエッチング液によりエッチングされた炭化珪素基板を洗浄するための洗浄液組成物であって、還元剤、pH調整剤および水を含み、pHが5未満であり、前記還元剤が、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物、グリオキシル酸およびジエチルヒドロキシルアミンからなる群から選択される1種または2種以上である、前記洗浄液組成物。
[2]
以下の式(1)
【化1】
式中、
R
1~R
6は、それぞれ独立して、H、OH、COOH、炭素数が1~4個のアルキル、炭素数が2~4個のアルケニルまたは炭素数が1~4個のアルコキシであり、ここで、R
1~R
6の少なくとも2個がOHである、
で表される2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物を含む、前記[1]に記載の組成物。
【0011】
[3]没食子酸、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロールおよびメチルカテコールからなる群から選択される1種または2種以上の2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物を含む、前記[1]または[2]に記載の洗浄液組成物。
[4]pH調整剤が無機酸または有機酸である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の洗浄液組成物。
[5]pH調整剤が塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸からなる群から選択される、前記[1]~[4]のいずれかに記載の洗浄液組成物。
【0012】
[6]さらに、界面活性剤として、1種または2種以上のポリスルホン酸化合物を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の洗浄液組成物。
[7]還元剤の濃度が、0.001質量%以上1質量%以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の洗浄液組成物。
[8]前記[1]~[7]のいずれかに記載の洗浄液組成物用の原液組成物であって、10倍~1000倍に希釈することにより前記洗浄液組成物を得るために用いられる、前記原液組成物。
[9]前記[1]~[7]のいずれかに記載の洗浄液組成物を、マンガン化合物を含む研磨剤により研磨された炭化珪素基板、またはマンガン化合物を含む組成物によりエッチングされた炭化珪素基板に接触させる工程を含む、炭化珪素基板の洗浄方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗浄液組成物によれば、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物、グリオキシル酸およびジエチルヒドロキシルアミンからなる群から選択される還元剤を酸性下で用いることで、炭化珪素基板上のマンガン化合物を安全に、簡便に除去することができる。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明に用いる還元剤が、酸性下で、不溶性のマンガン化合物に安定して作用し、III価、IV価の不溶性マンガン化合物を溶解性が高いII価のマンガン化合物に還元し、II価のマンガン化合物が洗浄組成物に溶解することで、マンガン化合物が除去されると考えられる。
【0014】
本発明の洗浄液組成物は、毒性の高い成分を含まず、RCA洗浄のように複数の洗浄液を用いた洗浄工程を必要としない。また本発明の洗浄液組成物は、還元剤の酸化分解等を考慮する必要がないため、溶液の形態で運搬することができ、使用時に洗浄液を調合する必要がない。したがって、本発明の洗浄液組成物は各ユーザーでの調合設備の導入および調合の手間を省略することができ、炭化珪素デバイスの製造コストの削減にも大いに貢献するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る炭化珪素基板の洗浄組成物および炭化珪素基板の洗浄方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の洗浄液組成物は、マンガン化合物を含む研磨剤により研磨された炭化珪素基板、またはマンガン化合物を含むエッチング液によりエッチングされた炭化珪素基板を洗浄するために使用される。
【0016】
本発明の洗浄組成物は、マンガン化合物を含む研磨剤およびエッチング液によって処理された炭化珪素基板に残存する炭化珪素基板上のマンガン汚染を除去することができる。炭化珪素基板は、特に限定されないが、炭化珪素層を基板の表面に有していればよく、また、炭化珪素は、単結晶炭化珪素であってもよいしエピタキシャル炭化珪素であってもよい。
【0017】
研磨剤およびエッチング液に含まれるマンガン化合物としては、通常研磨剤およびエッチング液に使用されるマンガン化合物であって、例えば二酸化マンガン、三酸化二マンガン、過マンガン酸塩などが挙げられる。
炭化珪素基板に残存するマンガン化合物としては、前記マンガン化合物に加えて、マンガンイオンおよび過マンガンイオンなどのイオンの形態のものも含まれ得る。
【0018】
本発明の洗浄液組成物に含まれる還元剤は、不溶性マンガン化合物の価数を変化させることができるものであればよく、酸性下で安定して不溶性マンガン化合物を効果的に還元できるという観点から、2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物、グリオキシル酸およびジエチルヒドロキシルアミンが好ましい。還元剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物は、不溶性マンガン化合物を効果的に還元できるものであれば特に限定されないが、例えば以下の式(1)で表される化合物である。
【化2】
式中、
R
1~R
6は、それぞれ独立して、H、OH、COOH、炭素数が1~4個のアルキル、炭素数が2~4個のアルケニルまたは炭素数が1~4個のアルコキシであり、ここで、R
1~R
6の少なくとも2個、好ましくは2個または3個がOHである。
【0020】
2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物は、酸性下で還元剤として不溶性マンガン化合物に安定して作用し、これを還元することができる。2以上のヒドロキシル基が環に直接結合する六員環化合物としては、具体的には、没食子酸、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、メチルカテコール、メチルヒドロキノン、またはtert-ブチルヒドロキノンが挙げられ、特に没食子酸、ピロガロールが好ましい。
【0021】
還元剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。これにより、十分かつ効率よくマンガン化合物をIII価またはIV価からII価へ還元することができる。また、還元剤の濃度の上限は、特に限定されないが、例えば10質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。本発明の一態様において、還元剤の濃度は、0.0001質量%以上10質量%以下であり、好ましい一態様において、還元剤の濃度は、0.001質量%以上1質量%以下である。
【0022】
本発明の洗浄液組成物に含まれるpH調整剤は、洗浄組成物のpHを酸性に調整できるものであれば特に限定されないが、pH調整剤は、還元剤と相俟って炭化珪素基板上に残留するマンガン化合物を基板表面から離脱させ、洗浄組成物に溶解させる作用を有する。このようなpH調整剤としては、例えば、無機酸または有機酸が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
無機酸としては、フッ化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸が挙げられ、好ましくは、本発明の洗浄液組成物は塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸からなる群から選択される1種以上の無機酸を含む。
【0024】
有機酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの有機スルホン酸や蟻酸、酢酸、プロピオン酸などの脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等のジカルボン酸類、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などのオキシポリカルボン酸類が挙げられ、好ましくは本発明の洗浄液組成物はメタンスルホン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸からなる群から選択される1種以上の有機酸を含む。
【0025】
好ましい態様において、本発明の洗浄液組成物は、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸から群から選択される、少なくとも1種のpH調整剤を含む。
【0026】
本発明の洗浄液組成物のpHは、酸性が好ましく、好ましくは5未満、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。これにより、炭化珪素基板表面のマンガン化合物を洗浄液組成物中に適切に溶解させ、炭化珪素基板表面のマンガン化合物を除去することができる。pHが5以上になると溶解性が低下し、除去性が悪化する。
【0027】
pH調整剤の濃度は、pHを酸性に調整するために必要な量であれば特に限定されないが、例えば0.0001~10質量%、好ましくは0.001~1.0質量%、とくに好ましくは0.01~1.0質量%である。上記範囲を超えると設備を腐食する恐れがある。
【0028】
また、本発明の洗浄液組成物は微粒子の除去性を向上させるために、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の種類は適宜選択され、これに限定されないが、ポリスルホン酸化合物が好ましい。ポリスルホン酸化合物としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、リグニンスルホン酸およびそれらの塩などが挙げられる。好ましい態様において、本発明の洗浄液組成物は1種または2種以上のポリスルホン酸化合物を含む。
【0029】
本発明の洗浄液組成物中の界面活性剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.0001~10質量%、好ましくは0.001~1.0質量%、とくに好ましくは0.001~0.1質量%である。上記範囲を超えると微粒子の除去性を向上させる効果の上昇が少なくなることから、上記範囲内での界面活性剤の使用は経済的である。
【0030】
また、本発明の洗浄液組成物は、通常溶媒を含む。溶媒としては、特に限定されないが、一般には水が用いられる。しかしながら、本発明の洗浄液組成物は、溶媒として有機溶媒を含んでもよい。
【0031】
このような有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒等の各種水と混合可能な有機溶媒が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール系溶媒、エチレングリコール等のグリコール系溶媒等や、グリセリン等のその他多価アルコールが挙げられる。
【0033】
本発明の洗浄液組成物中の水の濃度は、特に限定されないが、例えば、10~99.99質量%、好ましくは50~99.99質量%、とくに好ましくは80~99.99質量%である。
本発明の有機溶媒の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.0001~20質量%、好ましくは0.001~10質量%、とくに好ましくは0.01~1質量%である。
【0034】
本発明の洗浄液組成物は、各成分を上述の濃度で使用することが好ましいが、各成分濃度を10~1000倍とした高濃度品も安定であるため、保存、運搬等のために高濃度品とすることができ、該高濃度品を使用時に希釈して使用することも可能である。
したがって、本発明はまた、本発明の洗浄液組成物用の原液組成物であって、10倍~1000倍に希釈することにより本発明の洗浄液組成物を得るために用いられる、前記原液組成物に関する。
原液組成物を希釈して使用する場合には、上述の水または有機溶媒、あるいは水と有機溶媒との混合物で原液組成物を10倍~1000倍に希釈して使用することができる。
【0035】
次に、本発明の炭化珪素基板の洗浄方法について説明する。本発明の洗浄方法は、上述した本発明の洗浄組成物を炭化珪素基板に接触させる工程を含む。接触させる工程としては、これに限定されないが、例えば、エッチングまたはCMPなどの研磨後の洗浄工程が挙げられる。接触させるための方法としては、これに限定されないが、例えば、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法、バッチ式スプレー洗浄法、およびバッチ式洗浄法などが挙げられる。
【0036】
接触させる雰囲気としては、これに限定されないが、例えば、空気中、窒素雰囲気中および真空中などが挙げられる。このうち、好ましくは、空気中および窒素雰囲気中である。接触時間は目的に応じて適宜選択されるため、これに限定されないが、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法およびスプレーやノズルより洗浄液が噴霧させる枚葉洗浄法の場合には、0.5~5分間であり、パッチ式スプレー洗浄法およびパッチ式浸漬洗浄法の場合には、0.5~30分間である。
温度は、これに限定されないが、ブラシスクラブを併用した枚葉洗浄法およびスプレーやノズルより洗浄液が噴霧させる枚葉洗浄法の場合には、20~50℃であり、パッチ式スプレー洗浄法およびパッチ式浸漬洗浄法の場合には、20~100℃である。上述の条件は、目的に応じて適宜組み合わせることができる。
【0037】
以上、本発明について好適な実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0039】
(実施例1~6および比較例1~4)
<洗浄組成物の洗浄性(Mn表面濃度)>
(1)洗浄組成物の調製
表1に示す成分を表1に示す濃度となるように水と混合し、実施例1~6および比較例1~4の洗浄組成物を得た。
【0040】
(2)評価基板の準備
炭化珪素基板を過酸化水素水(30重量%)-硫酸(96重量%)混合液(体積比1:6)で洗浄後、回転塗布法にてマンガン(Mn)の表面濃度が1013atoms/cm2になるように過マンガン酸カリウムを水に溶解した汚染水で汚染した。汚染した基板を各洗浄液に室温、3分間無撹拌浸漬後、基板を取り出して超純水にて3分間流水リンス処理、乾燥し、測定用の基板を得た。
【0041】
(3)Mn洗浄性評価
上記測定用の基板表面のMn濃度をTXRF(全反射蛍光X線分析装置、リガク社製、型番:3800e)により測定し、洗浄組成物の洗浄性を評価した。Mn濃度は基板1cm2当たりのMn原子数で評価した。各洗浄組成物に対応する結果を表1に示す。
得られた結果は、本発明の洗浄組成物が酸性下で良好にマンガンを除去することを示している。
【0042】