(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104244
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20240726BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20240726BHJP
F02D 11/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
F02D11/02 Q
F02D11/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008383
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 文平
(72)【発明者】
【氏名】船津 基也
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 孝敏
【テーマコード(参考)】
3D030
3D054
3G065
【Fターム(参考)】
3D030DA11
3D030DA57
3D030DA66
3D030DA70
3D030DA78
3D030DA79
3D030DA80
3D030DB13
3D030DB48
3D030DB63
3D054AA02
3D054AA13
3D054BB05
3D054BB06
3G065CA22
3G065JA02
3G065JA11
(57)【要約】
【課題】アクセル操作とブレーキ操作の双方を行うことができる操作部を備えるステアリングホイールを提供する。
【解決手段】ステアリングホイール10は、操舵部1に対して一方の方向に揺動操作されることでアクセル操作を入力し、他方の方向に揺動操作されることでブレーキ操作を入力する操作レバー3、4と、プレート連結部30a1と軸支持部30a2と揺動軸30a3とを有し、上下方向から見たときに揺動軸30a3の少なくとも一部がプレート連結部30a1と重なる位置に配置された右連結部30aと、プレート連結部30b1と軸支持部30b2と揺動軸30b3とを有し、上下方向から見たときに揺動軸30b3の少なくとも一部がプレート連結部30b1と重なる位置に配置された左連結部30bと、右連結部30aと左連結部30bとの間の位置で折り畳まれた状態で収納されたエアバッグ91と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵中心軸に連結されるボス部と、
前記ボス部を支持する支持プレートと、
運転者に把持され、前記操舵中心軸を中心に回転操舵される操舵部と、
前記ボス部の右方に配置され、前記操舵部に対して揺動可能に構成され、第1の方向に揺動操作されることでアクセル操作を入力し、前記第1の方向とは反対の第2の方向に揺動操作されることでブレーキ操作を入力する右操作部と、
前記ボス部の左方に配置され、前記操舵部に対して揺動可能に構成され、第3の方向に揺動操作されることでアクセル操作を入力し、前記第3の方向とは反対の第4の方向に揺動操作されることでブレーキ操作を入力する左操作部と、
前記支持プレートと前記右操作部とを連結する右連結部であって、前記支持プレートの前記ボス部を支持する支持面に連結され、前記支持面に略直交する方向に延びる右プレート連結部と、前記右操作部の揺動軸である右揺動軸と、前記右プレート連結部から右方に延出し、前記右揺動軸を支持する右軸支持部とを有し、上下方向から見たときに前記右揺動軸の少なくとも一部が前記右プレート連結部と重なる位置に配置された右連結部と、
前記支持プレートと前記左操作部とを連結する左連結部であって、前記支持面に連結され、前記支持面に略直交する方向に延びる左プレート連結部と、前記左操作部の揺動軸である左揺動軸と、前記左プレート連結部から左方に延出し、前記左揺動軸を支持する左軸支持部とを有し、上下方向から見たときに前記左揺動軸の少なくとも一部が前記左プレート連結部と重なる位置に配置された左連結部と、
前記右連結部と前記左連結部との間の位置で折り畳まれた状態で収納され、前記車両の衝突時に膨張し、前記運転者を受け止めて保護するエアバッグと、
を備えることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記右プレート連結部には、前記右操作部に接触して前記右操作部の揺動角度を規制する右規制部が設けられており、
前記左プレート連結部は、前記左操作部に接触して前記左操作部の揺動角度を規制する左規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記右操作部又は前記左操作部の揺動時の一方の動力を他方に機械的に伝達し、前記右操作部の前記第1の方向への揺動と前記左操作部の前記第3の方向への揺動、及び、前記右操作部の前記第2の方向への揺動と前記左操作部の前記第4の方向への揺動をそれぞれ同期させる動力伝達機構を備え、
前記動力伝達機構、前記右連結部、前記左連結部、前記右操作部、及び前記左操作部はユニット化されて前記支持プレートから取り外し可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記右連結部と前記左連結部とを連結する中央連結部を備え、
前記動力伝達機構は、前記中央連結部に固定されていることを特徴とする請求項3に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記動力伝達機構は、前記右操作部の前記第1の方向への揺動及び前記左操作部の前記第3の方向への揺動に伴って第1回転方向に回転し、前記右操作部の前記第2の方向への揺動及び前記左操作部の前記第4の方向への揺動に伴って前記第1回転方向と反対の第2回転方向に回転する回転部材と、
前記回転部材の前記第1回転方向及び前記第2回転方向へのそれぞれの回転により、前記回転部材の回転軸線に沿った方向に移動する移動部材と、
前記移動部材を介して前記回転部材を付勢するばね部材と、
を含み、
前記回転部材は、前記回転部材が前記第1回転方向と前記第2回転方向のいずれの方向に回転した場合であっても、前記ばね部材の付勢力に抗して前記ばね部材を弾性変形させる方向に前記移動部材を移動させ、前記右操作部の揺動操作、又は前記左操作部の揺動操作が解除された場合、前記ばね部材の付勢力によって回転前の位相に戻ることを特徴とする請求項3に記載のステアリングホイール。
【請求項6】
前記動力伝達機構は、
前記移動部材に設けられ、前記回転軸線に沿った方向に突出する突出部と、
前記突出部が挿入される穴部と、
を備え、
前記移動部材は、前記回転部材の回転に伴い、前記突出部にガイドされながら前記回転軸線に沿った方向に移動することを特徴とする請求項3に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
前記動力伝達機構は、
前記突出部である第1突出部と、
前記移動部材において前記第1突出部と異なる位置に設けられ、前記回転軸線に沿った方向に突出する第2突出部と、
前記穴部である第1穴部と、
前記第2突出部が挿入される第2穴部と、
を備え、
前記移動部材は、前記回転部材の回転に伴い、前記第1突出部と前記第2突出部にガイドされながら前記回転軸線に沿った方向に移動することを特徴とする請求項6に記載のステアリングホイール。
【請求項8】
前記右操作部は、前記運転者に押下されることで前記第1の方向に揺動し、前記運転者から引き上げられることで前記第2の方向に揺動し、
前記左操作部は、前記運転者に押下されることで前記第3の方向に揺動し、前記運転者から引き上げられることで前記第4の方向に揺動することを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項9】
前記右操作部は、前記運転者に押下されることで前記第2の方向に揺動し、前記運転者から引き上げられることで前記第1の方向に揺動し、
前記左操作部は、前記運転者に押下されることで前記第4の方向に揺動し、前記運転者から引き上げられることで前記第3の方向に揺動することを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項10】
前記ボス部と前記支持プレートは、一体成型されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル操作及びブレーキ操作を入力するための操作部を備えるステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載の構成のように、ステアリングホイールにおいて、アクセル操作を入力するための操作部と、ブレーキ操作を入力するための操作部とを別々に設ける構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成のように、アクセル操作を入力するための操作部とブレーキ操作を入力するための操作部とが別々に設けられている場合、運転者はアクセル操作とブレーキ操作を切り替える際に操作部を持ち替える必要があるため、運転者の操作が複雑化する。
【0005】
そこで本発明は、アクセル操作とブレーキ操作の双方を行うことができる操作部を備えるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係るステアリングホイールの代表的な構成は、車両の操舵中心軸に連結されるボス部と、前記ボス部を支持する支持プレートと、運転者に把持され、前記操舵中心軸を中心に回転操舵される操舵部と、前記ボス部の右方に配置され、前記操舵部に対して揺動可能に構成され、第1の方向に揺動操作されることでアクセル操作を入力し、前記第1の方向とは反対の第2の方向に揺動操作されることでブレーキ操作を入力する右操作部と、前記ボス部の左方に配置され、前記操舵部に対して揺動可能に構成され、第3の方向に揺動操作されることでアクセル操作を入力し、前記第3の方向とは反対の第4の方向に揺動操作されることでブレーキ操作を入力する左操作部と、前記支持プレートと前記右操作部とを連結する右連結部であって、前記支持プレートの前記ボス部を支持する支持面に連結され、前記支持面に略直交する方向に延びる右プレート連結部と、前記右操作部の揺動軸である右揺動軸と、前記右プレート連結部から右方に延出し、前記右揺動軸を支持する右軸支持部とを有し、上下方向から見たときに前記右揺動軸の少なくとも一部が前記右プレート連結部と重なる位置に配置された右連結部と、前記支持プレートと前記左操作部とを連結する左連結部であって、前記支持面に連結され、前記支持面に略直交する方向に延びる左プレート連結部と、前記左操作部の揺動軸である左揺動軸と、前記左プレート連結部から左方に延出し、前記左揺動軸を支持する左軸支持部とを有し、上下方向から見たときに前記左揺動軸の少なくとも一部が前記左プレート連結部と重なる位置に配置された左連結部と、前記右連結部と前記左連結部との間の位置で折り畳まれた状態で収納され、前記車両の衝突時に膨張し、前記運転者を受け止めて保護するエアバッグと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、右操作部が第1の方向に揺動操作されることでアクセル操作が入力され、第2の方向に揺動操作されることでブレーキ操作が入力される。また、左操作部が第3の方向に揺動操作されることでアクセル操作が入力され、第4の方向に揺動操作されることでブレーキ操作が入力される。このため、運転者は右操作部又は左操作部によってアクセル操作とブレーキ操作の双方を行うことができ、運転者の操作が複雑化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの平面図である。
【
図2】パッドとエアバッグ装置を取り外した状態のステアリングホイールの平面図である。
【
図3】ロアカバーを取り外した状態のステアリングホイールの斜視図である。
【
図4】ステアリングホイールを
図1に示すA1-A1断面で切断した断面図である。
【
図5】ステアリングホイールを
図1に示すA2-A2断面で切断した断面図である。
【
図6】ステアリングホイールが備える操作レバーの斜視図である。
【
図8】リンク機構が有するカムユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るステアリングホイール10について説明する。ステアリングホイール10は、不図示の車両に搭載されている。なお、以下の説明において、特定的な記載がない限り、上下方向は不図示のステアリングシャフトの軸線方向に沿った上下方向を意味し、前後方向は車両の直進操舵時のステアリングシャフトの軸線方向と直交する前後方向を意味し、左右方向は車両の直進操舵時のステアリングシャフトの軸線方向と直交する左右方向を意味する。
【0010】
図1は、ステアリングホイール10の平面図である。
図2は、パッド5とエアバッグ装置90を取り外した状態のステアリングホイール10の平面図である。
図3は、ロアカバー6を取り外した状態のステアリングホイール10を下方から見た斜視図である。
図4は、ステアリングホイール10を
図1に示すA1-A1断面で切断した断面図である。
図5は、ステアリングホイール10を
図1に示すA2-A2断面で切断した断面図である。
図6は、ステアリングホイール10が備える操作レバー3、4の斜視図である。
【0011】
図1~
図6に示す様に、ステアリングホイール10は、車両の操舵中心軸としての不図示のステアリングシャフトに連結されるボス部2と、運転者に把持され、ステアリングシャフトを中心に回転操舵される操舵部1を備える。また、ステアリングホイール10は、エアバッグ装置90と、エアバッグ装置90の上方を覆うパッド5と、ステアリングホイール10の下面側に配置されるロアカバー6を備える。また、ステアリングホイール10は、ボス部2の右方と左方にそれぞれ配置され、アクセル操作及びブレーキ操作を入力するための操作レバー3、4を備える。
【0012】
操舵部1は、左右方向に長い略楕円環状の部材であって、金属製の芯金1aと芯金1aを覆う樹脂カバー1bから形成されている。操舵部1の樹脂カバー1bにおけるボス部2の左右両側の部位は、運転者が運転時に通常把持する把持部1b1、1b2となっている。運転者は、把持部1b1、1b2を把持し、ボス部2に連結されたステアリングシャフトを中心として操舵部1を回転操舵することによって車両の進行方向を変更する。
【0013】
ボス部2は、操舵部1の中心に配置されており、支持プレート20に支持されている。支持プレート20は、前後方向及び左右方向に延びる板金であって、不図示のビスによってロアカバー6に連結されている。ボス部2は、ステアリングシャフトが挿通されて嵌合される軸穴2aを有し、この軸穴2aにステアリングシャフトの先端が挿通されて嵌合した状態で、ステアリングシャフトの先端がナット止めされることにより、ボス部2とステアリングシャフトとが連結される。なお、本実施形態では、ボス部2はダイキャスト加工によって支持プレート20と一体成型されている。支持プレート20によるボス部2の支持方法はこれに限られず、例えば支持プレート20にボス部2をビス等によって固定して支持させる構成としてもよい。
【0014】
また、操舵部1とボス部2は、連結部材21a~21dによって連結されている。連結部材21a~21dは、それぞれ略S字状に曲げ加工が施された金属製の部材である。連結部材21aの上端部21a1は操舵部1の芯金1aの下部にビス41aにより固定され、下端部は支持プレート20におけるボス部2を支持する支持面20aに不図示のビスにより固定され、これによって両者が連結されている。同様に、連結部材21b~21dの上端部21b1~21d1は操舵部1の芯金1aの下部にビス41b~41dにより固定され、下端部は支持プレート20の支持面20aに不図示のビスにより固定され、これによって両者が連結されている。このようにしてボス部2と操舵部1は連結されている。
【0015】
また、支持プレート20の支持面20aには、支持プレート20と操作レバー3、4とを連結する金属製のレバー連結部材30が取り付けられている。レバー連結部材30は、操作レバー3と支持プレート20とを連結する右連結部30aと、操作レバー4と支持プレート20とを連結する左連結部30bと、右連結部30aと左連結部30bとを連結する中央連結部30cから構成されている。中央連結部30cは、ビス45によって支持プレート20の支持面20aに連結されている。なお、本実施形態では、右連結部30aと左連結部30bと中央連結部30cとがレバー連結部材30として一体成型されているものの、これらを別体としてビスや溶接などで連結する構成としてもよい。
【0016】
右連結部30aは、支持プレート20の支持面20aに連結され、支持面20aに略直交する方向である略上下方向に延びるプレート連結部30a1を有する。本実施形態では、プレート連結部30a1の下部は中央連結部30cにビス46によって連結されており、プレート連結部30a1は中央連結部30cを介して支持プレート20の支持面20aに間接的に連結されている。しかし本発明はこれに限られず、プレート連結部30a1を支持プレート20の支持面20aに直接連結する構成としてもよい。即ち、ここでいうプレート連結部30a1が支持プレート20の支持面20aに連結されるとは、プレート連結部30a1が支持プレート20の支持面20aに直接連結される構成と間接的に連結される構成とを含むものである。また、右連結部30aは、揺動軸30a3(右揺動軸)と、プレート連結部30a1(右プレート連結部)から右方に延出し、揺動軸30a3を支持する軸支持部30a2(右軸支持部)とを有する。軸支持部30a2は、内部に不図示のベアリングを有し、このベアリングを介して揺動軸30a3を
図4に示す矢印R1、R2方向に揺動可能に支持する。揺動軸30a3は、その揺動軸線方向が前後方向に沿って配置され、且つ、上下方向から見たときに少なくとも一部がプレート連結部30a1と重なる位置に配置されている。また、右連結部30aにおける揺動軸30a3の近傍には、揺動軸30a3の揺動角度を検出する磁気式の不図示の回転角センサが設けられている。回転角センサは、不図示のCPUに電気的に接続されている。なお、本実施形態では、揺動軸30a3の後端側の径が前端側の径より細くなっており、それに合わせてプレート連結部30a1の後端側の左右方向の幅も狭くなっているため、後端側では上下方向から見たときに揺動軸30a3とプレート連結部30a1とが重なる位置に配置されていないものの、前端側では両者は重なる位置に配置されている。
【0017】
左連結部30bは、支持プレート20の支持面20aに連結され、支持面20aに略直交する方向である略上下方向に延びるプレート連結部30b1を有する。本実施形態では、プレート連結部30b1の下部は中央連結部30cにビス47によって連結されており、プレート連結部30b1は中央連結部30cを介して支持プレート20の支持面20aに間接的に連結されている。しかし本発明はこれに限られず、プレート連結部30b1を支持プレート20の支持面20aに直接連結する構成としてもよい。即ち、ここでいうプレート連結部30b1が支持プレート20の支持面20aに連結されるとは、プレート連結部30b1が支持プレート20の支持面20aに直接連結される構成と間接的に連結される構成とを含むものである。また、左連結部30bは、揺動軸30b3(左揺動軸)と、プレート連結部30b1(左プレート連結部)から左方に延出し、揺動軸30b3を支持する軸支持部30b2(左軸支持部)とを有する。軸支持部30b2は、内部に不図示のベアリングを有し、このベアリングを介して揺動軸30b3を
図4に示す矢印R3、R4方向に揺動可能に支持する。揺動軸30b3は、その揺動軸線方向が前後方向に沿って配置され、且つ、上下方向から見たときに少なくとも一部がプレート連結部30b1と重なる位置に配置されている。なお、本実施形態では、揺動軸30b3の後端側の径が前端側の径より細くなっており、それに合わせてプレート連結部30b1の後端側の左右方向の幅も狭くなっているため、後端側では上下方向から見たときに揺動軸30b3とプレート連結部30b1とが重なる位置に配置されていないものの、前端側では両者は重なる位置に配置されている。
【0018】
エアバッグ装置90は、左右方向において右連結部30aと左連結部30bとの間に配置されている。エアバッグ装置90は、エアバッグ91と、エアバッグ91に膨張用ガスを供給するインフレーター94と、エアバッグ91とインフレーター94を保持するケース95と、エアバッグ91の内部に収容され、エアバッグ91やインフレーター94をケース95に固定するための略四角環状のリテーナ92を備える。
【0019】
インフレーター94は、膨張用ガスを発生させる略円柱形状の部材であって、膨張用ガスを吐出するための吐出口94aを上部に有する。また、インフレーター94は、吐出口94aが形成された面から上記円柱形状の径方向に延出するフランジ部94bを備える。インフレーター94は、不図示の制御装置と不図示のリード線を介して電気的に接続されており、車両の衝突時に制御装置から作動信号が入力されることによって作動して膨張用ガスを発生させる。
【0020】
エアバッグ91は、折り畳まれた状態で収納され、車両の衝突時にインフレーター94から膨張用ガスが供給されることによって膨張し、パッド5を破断させて運転者側に繰り出して運転者を受け止めて保護する部材である。エアバッグ91の下面には、インフレーター94の吐出口94aが形成された上部側の部位を挿通させるための開口部91aが設けられている。
【0021】
ケース95は、円板状の底壁部95aと、底壁部95aの外縁から上方に延びる側壁部95bとを有する金属製の部材である。底壁部95aには、インフレーター94が挿通される挿通孔95a1が形成されている。側壁部95bは、不図示の連結部材によって操舵部1の芯金1aに連結されている。エアバッグ91とインフレーター94は、エアバッグ91の内部に設けられたリテーナ92を介して、ケース95の底壁部95aに固定される。具体的には、エアバッグ91の開口部91aの周縁はリテーナ92の下面とケース95の底壁部95aの上面によって挟持される。また、インフレーター94のフランジ部94bの上面はケース95の底壁部95aの下面に押し付けられる。この状態で、エアバッグ91の開口部91aの周縁、ケース95の底壁部95a、及びインフレーター94のフランジ部94bにボルト99が挿通されてナット止めされる。これによりケース95の底壁部95aにエアバッグ91とインフレーター94とが固定される。
【0022】
右操作部としての操作レバー3は、ボス部2の右方において操舵部1に隣接して配置され、操舵部1に対して揺動可能に構成された部材であって、金属製の芯金3aと樹脂製の操作カバー3bから構成されている。芯金3aは、左右方向に延びて右連結部30aの揺動軸30a3に軸支される軸支部3a1と、軸支部3a1の一端側から略直交する方向に延出し、操作カバー3bが取り付けられるカバー取付部3a2と、軸支部3a1の他端側から下方に延出し、後述するリンク機構50に接続される接続部3a3を有する。
【0023】
芯金3aの軸支部3a1には、軸穴3a1aが形成されており、この軸穴3a1aに揺動軸30a3が挿通されることによって操作レバー3が揺動軸30a3に軸支される。軸支部3a1と揺動軸30a3は、ビス73とピン74によって相対移動が規制されている。このように操作レバー3が揺動軸30a3に軸支されることにより、操作レバー3は揺動軸30a3を中心に
図4に示す矢印R1方向、及びその反対の矢印R2方向に揺動可能に構成される。操作レバー3は、芯金3aの軸支部3a1に形成された規制面3a1bがプレート連結部30a1に形成された揺動規制部30a1a(右規制部)に当接することによって矢印R1方向への揺動が所定の揺動角度で規制され、規制面3a1cがプレート連結部30a1に形成された揺動規制部30a1b(右規制部)に当接することによって矢印R2方向への揺動が所定の揺動角度で規制される。
【0024】
操作カバー3bは、その上面側の部位であり運転者がアクセル操作を行う際に右手の掌や親指で押下する部位であるアクセル操作面3b1と、下面側の部位であり運転者がブレーキ操作を行う際に親指以外の他の四指によって引き上げる部位であるブレーキ操作面3b2と、芯金3aのカバー取付部3a2が嵌め込まれて不図示のビスで固定される嵌合穴3b3を有する。
【0025】
操作レバー3は、運転者の右手の掌や親指で操作カバー3bのアクセル操作面3b1が押下されて矢印R1方向(第1の方向)に揺動操作されることによってアクセル操作を入力し、操作カバー3bのブレーキ操作面3b2が親指以外の他の四指によって引き上げられて矢印R2方向(第2の方向)に揺動操作されることによってブレーキ操作を入力する。具体的には、操作レバー3が揺動操作されると、揺動軸30a3の揺動角度が不図示の回転角センサに検出され、不図示のCPUは回転角センサから受信した検出信号に基づいて車両の加速減速装置を制御して車両を加速又は減速させる。つまりCPUは、回転角センサによって揺動軸30a3が矢印R1方向に揺動したことが検出された場合、揺動軸30a3の揺動角度に応じて車両の加速減速装置を制御して車両を加速させる。また、CPUは、回転角センサによって揺動軸30a3が矢印R2方向に揺動したことが検出された場合、揺動軸30a3の回転角度に応じて車両の加速減速装置を制御して車両を減速させる。
【0026】
左操作部としての操作レバー4は、ボス部2を基準として操作レバー3と左右対称の位置に配置された左右対称形状の部材であり、操作レバー3と左右対称の動作を行う。即ち、操作レバー4は、ボス部2の左方において操舵部1に隣接して配置され、操舵部1に対して揺動可能に構成された部材であって、金属製の芯金4aと樹脂製の操作カバー4bから構成されている。芯金4aは、左右方向に延びて左連結部30bの揺動軸30b3に軸支される軸支部4a1と、軸支部4a1の一端側から略直交する方向に延出し、操作カバー4bが取り付けられるカバー取付部4a2と、軸支部4a1の他端側から下方に延出し、後述するリンク機構50に接続される接続部4a3を有する。
【0027】
芯金4aの軸支部4a1には、軸穴4a1aが形成されており、この軸穴4a1aに揺動軸30b3が挿通されることによって操作レバー4が揺動軸30b3に軸支される。軸支部4a1と揺動軸30b3は、ビス75とピン76によって相対移動が規制されている。このように操作レバー4が揺動軸30b3に軸支されることにより、操作レバー4は揺動軸30b3を中心に
図4に示す矢印R3方向、及びその反対の矢印R4方向に揺動可能に構成される。操作レバー4は、芯金4aの軸支部4a1に形成された規制面4a1bがプレート連結部30b1に形成された揺動規制部30b1a(左規制部)に当接することによって矢印R3方向への揺動が所定の揺動角度で規制され、規制面4a1cがプレート連結部30b1に形成された揺動規制部30b1b(左規制部)に当接することによって矢印R4方向への揺動が所定の揺動角度で規制される。
【0028】
操作カバー4bは、その上面側の部位であり運転者がアクセル操作を行う際に左手の掌や親指で押下する部位であるアクセル操作面4b1と、下面側の部位であり運転者がブレーキ操作を行う際に親指以外の他の四指によって引き上げる部位であるブレーキ操作面4b2と、芯金4aのカバー取付部4a2が嵌め込まれて不図示のビスで固定される嵌合穴4b3を有する。
【0029】
操作レバー4は、運転者の左手の掌や親指で操作カバー4bのアクセル操作面4b1が押下されて矢印R3方向(第3の方向)に揺動操作されることによってアクセル操作を入力し、操作カバー4bのブレーキ操作面4b2が親指以外の他の四指によって引き上げられて矢印R4方向(第4の方向)に揺動操作されることによってブレーキ操作を入力する。本実施形態では、後述する通り、操作レバー3の矢印R1方向への揺動動作と操作レバー4の矢印R3方向への揺動動作、及び、操作レバー4の矢印R2方向への揺動動作と操作レバー4の矢印R4方向への揺動動作がそれぞれ同期されている。従って、操作レバー4がR3方向に揺動操作されると、当該揺動操作に連動して操作レバー3がR1方向に揺動し、操作レバー3の揺動軸30a3の揺動角度が回転角センサによって検出され、CPUが当該揺動角度に応じて上述した制御を行うことにより車両が加速する。また、操作レバー4がR4方向に揺動操作されると、当該揺動操作に連動して操作レバー3がR2方向に揺動し、操作レバー3の揺動軸30a3の揺動角度が回転角センサによって検出され、CPUが当該揺動角度に応じて上述した制御を行うことにより車両が減速する。なお、操作レバー3、4の揺動動作が同期されていない場合、操作レバー4の揺動軸30b3の揺動角度を検出する回転角センサを別途設け、CPUが当該回転角センサの検出結果に応じて上述した制御を行うことにより同様の動作を行うことができる。
【0030】
このように本実施形態の構成によれば、操作レバー3が矢印R1方向に揺動操作されることでアクセル操作が入力され、矢印R2方向に揺動操作されることでブレーキ操作が入力される。同様に、操作レバー4が矢印R3方向に揺動操作されることでアクセル操作が入力され、矢印R4方向に揺動操作されることでブレーキ操作が入力される。このため、運転者は操作レバー3又は操作レバー4によってアクセル操作とブレーキ操作の双方を行うことができ、操作レバー3、4を持ち替えずにアクセル操作とブレーキ操作とを行うことができるため、運転者の操作が複雑化することを抑制することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、運転者の手の掌や親指によって操作レバー3、4が矢印R1方向や矢印R3方向に押下されることによってアクセル操作を入力し、運転者の親指以外の他の四指によって矢印R2方向や矢印R4方向に引き上げられることによってブレーキ操作を入力する構成について説明した。しかし本発明はこれに限られず、操作レバー3、4のアクセル操作時とブレーキ操作時の揺動方向を逆転させてもよい。つまり運転者の手の掌や親指によって操作レバー3、4が矢印R1方向や矢印R3方向に押下されることによってブレーキ操作を入力し、運転者の親指以外の他の四指によって矢印R2方向や矢印R4方向に引き上げられることによってアクセル操作を入力する構成としてもよい。
【0032】
これは例えば次の点が考慮されて決定される。即ち、運転時においては、ブレーキ操作の頻度よりもアクセル操作の頻度の方が多いことが一般的である。また、運転者は前傾姿勢で運転するため、自己の体重を利用して掌や親指を使って操作レバー3、4を押下する方が親指以外の他の四指を使って操作レバー3、4を引き上げるよりも楽に揺動させやすい。従って、本実施形態の揺動方向とすることにより、運転者は相対的に操作頻度が多いアクセル操作を楽に操作できるため、運転者の操作負担を軽減することができる。一方、例えば車両が運転手によって設定された速度で走行する定速制御機能を有している場合、この制御中はアクセル操作の頻度よりもブレーキ操作の頻度の方が多くなる。この場合、アクセル操作時とブレーキ操作時の揺動方向を本実施形態の構成と逆の構成とすることにより、運転者は相対的に操作頻度が多いブレーキ操作を楽に操作できるため、運転者の操作負担を軽減することができる。これらの点などを考慮して、操作レバー3、4の揺動方向とアクセル操作及びブレーキ操作との関係が決定される。
【0033】
また、ステアリングホイール10は、支持プレート20と操作レバー3、4とを連結する右連結部30a及び左連結部30bを備えるため、両者の間の幅が狭い場合、エアバッグ装置90を配置するための空間が確保しにくくなる。これに対して本実施形態では、右連結部30aにおいて、プレート連結部30a1が支持面20aと略直交する方向に延びており、且つ、上下方向から見たときに揺動軸30a3の一部がプレート連結部30a1と重なる位置に配置されている。同様に、左連結部30bにおいて、プレート連結部30b1が支持面20aと略直交する方向に延びており、且つ、上下方向から見たときに揺動軸30b3の一部がプレート連結部30b1と重なる位置に配置されている。ここでいう支持面20aに略直交する方向には、支持面20aに対して直交する方向の他に±5度の範囲でずれた方向も含まれる。
【0034】
このような構成により、右連結部30aと左連結部30bとの間の空間を広げてエアバッグ装置90を配置するための空間を確保しやすくなる。即ち、揺動軸30a3の一部がプレート連結部30a1と重なる位置に配置される場合、揺動軸30a3が必然的にプレート連結部30a1に寄った位置に配置されることになる。この場合、軸支持部30a2の左右方向の長さが短くても揺動軸30a3を支持することができるため、揺動軸30a3がプレート連結部30a1から離れた位置に配置された構成と比較して軸支持部30a2の左右方向の長さを短くすることができる。プレート連結部30a1は支持面20aと略直交する方向に延びているため、操作レバー3の揺動操作時の耐荷重性を高めるために軸支持部30a2の左右方向の長さを短くした場合、操作レバー3を操舵部1近傍に配置するためには、操作レバー3の軸支部3a1の左右方向の長さを長くするか、右連結部30aを全体的に右寄りに配置する必要がある。ここで操作レバー3の軸支部3a1を長くする場合、操作レバー3が操作された際の荷重によって軸支部3a1が折れやすくなるため、軸支部3a1の強度を高める必要が生じ、ステアリングホイール10の大型化や重量化を招来する。一方、本実施形態のように右連結部30aを全体的に右寄りに配置することにより、ステアリングホイール10を大型化や重量化させることなく操作レバー3を操舵部1近傍に配置できるだけでなく、左右方向における右連結部30aと左連結部30bとの間の空間が広がる。同理由で、本実施形態のように左連結部30bを全体的に左寄りに配置することによってステアリングホイール10を大型化や重量化させることなく操作レバー4を操舵部1近傍に配置でき、且つ、右連結部30aと左連結部30bとの間の空間が広がる。このように本実施形態の構成によれば、操作レバー3、4の揺動操作時の耐荷重性を高めつつ、右連結部30aと左連結部30bとの間の空間を広げてエアバッグ装置90を配置するための空間を確保することができる。
【0035】
また、操作レバー3の揺動角度を規制する揺動規制部30a1a、30a1bはプレート連結部30a1に形成されている。このような構成により、右連結部30aの軸支持部30a2に揺動規制部30a1a、30a1bを設ける構成と比較して、軸支持部30a2の左右方向の長さを短くすることができるため、操作レバー3が操作された際の右連結部30aの耐荷重性を高めることができる。同様に、操作レバー4の揺動角度を規制する揺動規制部30b1a、30b1bはプレート連結部30b1に形成されている。このような構成により、左連結部30bの軸支持部30b2に揺動規制部30b1a、30b1bを設ける構成と比較して、軸支持部30b2の左右方向の長さを短くすることができるため、操作レバー4が操作された際の左連結部30bの耐荷重性を高めることができる。
【0036】
次に、操作レバー3の揺動動作と操作レバー4の揺動動作とを同期する動力伝達機構としてのリンク機構50の構成について説明する。
図7は、操作レバー3、4とリンク機構50の斜視図である。
図8は、リンク機構50が有するカムユニット60の斜視図である。
図9は、カムユニット60の分解斜視図である。
【0037】
図7~
図9に示す様に、リンク機構50は、操作レバー3、4の下方、且つ、後方に配置されており、リンク52~55とカムユニット60から構成されている。カムユニット60は、プッシャ62、カム部材63、圧縮ばね64、取付板66、及び軸部材67から構成されており、レバー連結部材30の中央連結部30cに固定されている。具体的には、レバー連結部材30の中央連結部30cに不図示のビスによって取付板66が固定されている。その状態で、プッシャ62、カム部材63、圧縮ばね64、及び取付板66に軸部材67が挿通されてナット68が締結されることにより、カムユニット60がレバー連結部材30の中央連結部30cに固定されている。なお、軸部材67は、左右方向において操作レバー3の揺動軸30a3及び操作レバー4の揺動軸30b3と略等間隔となる位置で揺動軸30a3、30b3と略平行となるように配置される。
【0038】
リンク52は、その一端部52aが操作レバー3の接続部3a3に形成された穴部3a3aに挿通され、操作レバー3と不図示のビスによって連結されており、他端部52bがリンク53に締結されて連結されている。リンク52は、操作レバー3に連結されていることから、操作レバー3の揺動に伴って操作レバー3と一体的に揺動する。リンク53は、その一端部53aがリンク52に締結されて連結されており、他端部53bがカムユニット60のプッシャ62のリンク連結部62bに締結されて連結されている。リンク53は、リンク52の矢印R1方向への揺動に伴って左方へ直線的に移動し、リンク52の矢印R2方向への揺動に伴って右方へ直線的に移動する。
【0039】
リンク54は、その一端部54aが操作レバー4の接続部4a3に形成された穴部4a3aに挿通され、操作レバー4と不図示のビスによって連結されており、他端部54bがリンク55に締結されて連結されている。リンク54は、操作レバー4に連結されていることから、操作レバー4の揺動に伴って操作レバー4と一体的に揺動する。リンク55は、その一端部55aがリンク54に締結されて連結されており、他端部55bがカムユニット60のプッシャ62のリンク連結部62cに締結されて連結されている。リンク55は、リンク54の矢印R3方向への揺動に伴って右方へ直線的に移動し、リンク54の矢印R4方向への揺動に伴って左方へ直線的に移動する。
【0040】
プッシャ62(回転部材)は、内部にベアリング85を有し、ベアリング85を介して軸部材67に対して
図8に示す矢印W1方向(第1回転方向)、及びその反対の方向である矢印W2方向(第2回転方向)に回転可能に取り付けられている。プッシャ62の前面には、リンク53が嵌合して連結されるリンク連結部62bと、リンク55が嵌合して連結されるリンク連結部62cが設けられている。リンク連結部62bとリンク連結部62cは、軸部材67を基準として点対称となる位置に配置されている。また、プッシャ62の前面には、カム部材63の位置を制御するための二つの突起部62aが設けられている。二つの突起部62aは、プッシャ62の回転軸線Lに沿って前方に突出しており、プッシャ62の回転軸線Lを基準として互いに対称となる位置に配置されている。
【0041】
カム部材63(移動部材)は、プッシャ62の回転に伴い、プッシャ62の回転軸線Lに沿って取付板66に接近する方向と離間する方向とに直線的に移動する部材である。カム部材63の後面には、プッシャ62の突起部62aに接触するカム面63aが設けられている。カム面63aは、中立点63a3と、矢印W1方向において中立点63a3の下流側に配置され、プッシャ62の回転軸線Lに直交する平面に対して傾斜した二つの傾斜面63a1と、矢印W2方向において中立点63a3の下流側に配置され、プッシャ62の回転軸線に直交する平面に対して傾斜した二つの傾斜面63a2を有する。中立点63a3は、前後方向において傾斜面63a1、63a2に対して前方に配置されており、換言すれば中立点63a3は傾斜面63a1、63a2によって形成される谷形状の最深部となっている。軸部材67を基準として、二つの傾斜面63a1は対称位置に配置され、二つの傾斜面63a2は対称位置に配置され、二つの中立点63a3は対称位置に配置されている。操作レバー3、4が揺動操作されていない自由状態において、プッシャ62の突起部62aは中立点63a3に位置する。
【0042】
また、カム部材63の前面には、プッシャ62の回転軸線Lに沿って前方に突出する二つの突出部63b1、63b2(第1突出部、第2突出部)が設けられている。突出部63b1と突出部63b2は、プッシャ62の回転軸線Lを基準として互いに対称となる位置に配置されている。突出部63b1、63b2は、取付板66に形成された穴部66a1、66a2(第1穴部、第2穴部)にそれぞれ挿入され、穴部66a1、66a2の内周部に接触することによってカム部材63の回転を規制しつつ、カム部材63の前後方向への移動をガイドする。また、カム部材63は、圧縮ばね64(ばね部材)の一端部を保持する。圧縮ばね64の他端部は、取付板66に保持されている。
【0043】
操作レバー3が矢印R1方向に揺動操作された場合、操作レバー3に連結されたリンク52が矢印R1方向に揺動し、リンク52の他端部52bに連結されたリンク53が左方に直線的に移動することにより、リンク53の他端部53bに連結されたプッシャ62が軸部材67を中心に矢印W1方向に回転する。プッシャ62が矢印W1方向に回転すると、プッシャ62に連結されたリンク55が右方に直線的に移動し、リンク55の一端部55aに連結されたリンク54と、リンク54の一端部54aに連結された操作レバー4が揺動軸30b3を中心に矢印R3方向に一体的に揺動する。
【0044】
操作レバー3が矢印R2方向に揺動操作された場合、操作レバー3に連結されたリンク52が矢印R2方向に揺動し、リンク52の他端部52bに連結されたリンク53が右方に直線的に移動することにより、リンク53の他端部53bに連結されたプッシャ62が軸部材67を中心に矢印W2方向に回転する。プッシャ62が矢印W2方向に回転すると、プッシャ62に連結されたリンク55が左方に直線的に移動し、リンク55の一端部55aに連結されたリンク54と、リンク54の一端部54aに連結された操作レバー4が揺動軸30b3を中心に矢印R4方向に一体的に揺動する。
【0045】
操作レバー4が矢印R3方向に揺動操作された場合、操作レバー4に連結されたリンク54が矢印R3方向に揺動し、リンク54の他端部54bに連結されたリンク55が右方に直線的に移動することにより、リンク55の他端部55bに連結されたプッシャ62が軸部材67を中心に矢印W1方向に回転する。プッシャ62が矢印W1方向に回転すると、プッシャ62に連結されたリンク53が左方に直線的に移動し、リンク53の一端部53aに連結されたリンク52と、リンク52の一端部52aに連結された操作レバー3が揺動軸30a3を中心に矢印R1方向に一体的に揺動する。
【0046】
操作レバー4が矢印R4方向に揺動操作された場合、操作レバー4に連結されたリンク54が矢印R4方向に揺動し、リンク54の他端部54bに連結されたリンク55が左方に直線的に移動することにより、リンク55の他端部55bに連結されたプッシャ62が軸部材67を中心に矢印W2方向に回転する。プッシャ62が矢印W2方向に回転すると、プッシャ62に連結されたリンク53が右方に直線的に移動し、リンク53の一端部53aに連結されたリンク52と、リンク52の一端部52aに連結された操作レバー3が揺動軸30a3を中心に矢印R2方向に一体的に揺動する。
【0047】
このようにしてリンク機構50は、操作レバー3の矢印R1方向への揺動動作と操作レバー4の矢印R3方向への揺動動作、及び、操作レバー3の矢印R2方向への揺動動作と操作レバー4の矢印R4方向への揺動動作をそれぞれ同期させる。このような構成により、操作レバー3でアクセル操作が行われ、操作レバー4でブレーキ操作が行われるような誤操作を抑制することができる。
【0048】
また、操作レバー3、4の矢印R1方向、矢印R3方向への揺動操作に伴ってプッシャ62が矢印W1方向に回転すると、カム部材63のカム面63aの中立点63a3に位置していたプッシャ62の突起部62aは傾斜面63a1に移動し、突起部62aに押圧されたカム部材63は圧縮ばね64の付勢力に抗して圧縮ばね64を押圧して弾性変形させながら前方へ移動する。その後、操作レバー3、4の揺動操作が解除されると、圧縮ばね64の復元力によってカム部材63が後方に向かって付勢され、カム部材63のカム面63aを介して付勢力を受けたプッシャ62が矢印W2方向に回転して回転前の位相に戻り、プッシャ62の突起部62aもカム部材63のカム面63aの中立点63a3に戻る。また、このプッシャ62の回転前の位相に戻るための矢印W2方向への回転により、リンク52~55が上述したように移動し、これに伴って操作レバー3、4が矢印R2方向、矢印R4方向にそれぞれ揺動して揺動操作前の初期位置に戻る。
【0049】
同様に、操作レバー3、4の矢印R2方向、矢印R4方向への揺動操作に伴ってプッシャ62が矢印W2方向に回転すると、カム部材63のカム面63aの中立点63a3に位置していたプッシャ62の突起部62aは傾斜面63a2に移動し、突起部62aに押圧されたカム部材63は圧縮ばね64の付勢力に抗して圧縮ばね64を押圧して弾性変形させながら前方へ移動する。その後、操作レバー3、4の揺動操作が解除されると、圧縮ばね64の復元力によってカム部材63が後方に向かって付勢され、カム部材63のカム面63aを介して付勢力を受けたプッシャ62が矢印W1方向に回転して回転前の位相に戻り、プッシャ62の突起部62aもカム部材63のカム面63aの中立点63a3に戻る。また、このプッシャ62の回転前の位相に戻るための矢印W1方向への回転により、リンク52~55が上述したように移動し、これに伴って操作レバー3、4が矢印R1方向、矢印R3方向にそれぞれ揺動して揺動操作前の初期位置に戻る。つまり操作レバー3、4の揺動操作が解除されると、圧縮ばね64の付勢力によってプッシャ62が回転して回転前の位相に戻り、操作レバー3、4が初期位置に戻る。
【0050】
このように本実施形態の構成によれば、アクセル操作やブレーキ操作を入力するための操作レバー3、4の揺動操作が解除された場合、共用のプッシャ62、カム部材63、及び圧縮ばね64によって操作レバー3、4を初期位置に戻すことができ、部品点数を削減して簡易な構成で操作レバー3、4を初期位置に戻すことができる。なお、本実施形態では、プッシャ62に突起部62aを設け、カム部材63にカム面63aを設ける構成について説明したものの、両者の関係を逆転させてもよい。即ち、カム部材63に対してプッシャ62側に突出する突起を設け、プッシャ62にこの突起に接触するカム面を設ける構成としても、上記同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、カム部材63の前後方向の移動は、カム部材63の突出部63b1、63b2によってガイドされている。このように軸部材67から離れた位置にカム部材63の移動をガイドする部位を設けることにより、カム部材63と軸部材67との間のガタを低減してカム部材63を前後方向に円滑に移動させることができる。なお、突出部63b1、63b2の数は任意であり、一つであっても上記効果を得ることができるものの、複数の突出部63b1、63b2を設けることによってカム部材63の回転規制時の荷重を分散させることができるため好ましい。
【0052】
また、
図7に示す様に、本実施形態では操作レバー3、4、レバー連結部材30、及びリンク機構50がユニット化されており、当該ユニットが支持プレート20から取り外し可能に構成されている。このような構成により、当該ユニットとステアリングホイール10の他の部位とを部品の調達場所などに応じて異なる場所で製造することができるため、製造効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…操舵部、2…ボス部、3…操作レバー(右操作部)、4…操作レバー(左操作部)、10…ステアリングホイール、20…支持プレート、20a…支持面、30…レバー連結部材、30a…右連結部、30a1…プレート連結部(右プレート連結部)、30a1a、30a1b…揺動規制部(右規制部)、30a2…軸支持部(右軸支持部)、30a3…揺動軸(右揺動軸)、30b…左連結部、30b1…プレート連結部(左プレート連結部)、30b1a、30b1b…揺動規制部(左規制部)、30b2…軸支持部(左軸支持部)、30b3…揺動軸(左揺動軸)、30c…中央連結部、50…リンク機構(動力伝達機構)、62…プッシャ(回転部材)、63…カム部材(移動部材)、63b1、63b2…突出部(第1突出部、第2突出部)、64…圧縮ばね(ばね部材)、66…取付板、66a1、66a2…穴部(第1穴部、第2穴部)、91…エアバッグ