(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104256
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】凹凸計測装置及び車両走行ガイダンスシステム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008416
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】515219067
【氏名又は名称】株式会社中部EEN
(74)【代理人】
【識別番号】100161975
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 貢司
(72)【発明者】
【氏名】原田 真治
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF32
(57)【要約】
【課題】幅が広い路面における凹凸を効率的に計測できる凹凸計測装置及び車両走行ガイダンスシステムを提供する。
【解決手段】車両走行ガイダンスシステムSは、車両1から路面に向けてラインLを投影する墨出し器7と、路面に投影されたラインLを含む領域を車両1から撮影する下方カメラ9と、下方カメラ9で撮影された撮影画像に基づいて路面の凹凸を計測する計測端末3とを備える凹凸計測装置と、車両1の現在位置を測定するGNSS受信機Rと、車両1が走行する理想進路IR1と車両1の現在位置PPとのずれを検出するガイダンス端末4と、そのずれが予め定めされた値より広がると、ずれを少なくするように報知するスピーカーSP、ディスプレイDPを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を走行する車両を用いて前記路面の凹凸を計測するための凹凸計測装置であって、
前記車両から前記路面に向けて光を照射し、前記車両の幅方向の一方の外側から前記幅方向の他方の外側まで延びるラインを前記路面に投影する投影部と、
前記路面に投影された前記ラインが前記路面を通過する領域を撮影領域として撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された前記領域の撮影画像に基づいて前記路面の前記凹凸を計測する計測部と、
を備え、
前記撮影部は、
前記車両の前記幅方向において前記車両から前記一方の外側に突出する第1突出位置に位置して、前記一方の外側に位置する前記ラインが前記路面を通過する前記領域を少なくとも撮影する第1撮影部と、
前記幅方向において前記車両から前記他方の外側に突出する第2突出位置に位置して、前記他方の外側に位置する前記ラインが前記路面を通過する前記領域を少なくとも撮影する第2撮影部と、
前記第1撮影部及び前記第2撮影部の間に位置して、前記ラインに沿う方向において、前記第1撮影部及び前記第2撮影部と前記撮影領域の一部が重複して撮影をする第3撮影部と、
を有し、
前記計測部は、前記第1撮影部、前記第2撮影部、及び前記第3撮影部における各前記撮影画像の前記ラインと、各前記撮影画面の前記路面に前記凹凸が存在しない場合に前記ラインが形成されると仮想される仮想ラインと、の間のライン間幅方向のピクセル数と、各前記撮影画像における前記ピクセル数に相当する長さと、に基づいて前記路面における深さ方向の前記凹凸を算出する算出部を備える、凹凸計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の凹凸計測装置と、
前記車両の現在位置を測定する測定部と、
前記凹凸計測装置が前記凹凸を計測するために前記車両が走行する理想的な進路である予め定められた理想進路と、走行中の前記車両の前記現在位置とのずれを検出する検出部と、
前記ずれが予め定めされた値より広がると報知する報知部と、を備える、車両走行ガイダンスシステム。
【請求項3】
前記報知部は、
前記測定部により測定された前記車両の前記現在位置と、前記理想進路と、前記現在位置と前記理想進路との前記ずれと、を表示する表示部を備える、請求項2に記載の車両走行ガイダンスシステム。
【請求項4】
前記理想進路は、第1理想進路と、前記第1理想進路に隣接して前記第1理想進路に沿って位置する第2理想進路と、を有し、
前記第1理想進路を前記車両が進行した場合における前記第1撮影部と前記第2撮影部が前記路面を撮影する第1撮影領域と、前記第2理想進路を前記車両が進行した場合における前記第1撮影部と前記第2撮影部が前記路面を撮影する第2撮影領域と、が前記幅方向において一部が重複する、請求項3に記載の車両走行ガイダンスシステム。
【請求項5】
前記報知部は、
前記第1理想進路が進行方向である走行中の前記車両における前記第1撮影領域と、前記第2理想進路を前記車両が進行した場合における前記第1撮影部と前記第2撮影部が前記路面を撮影する前記第2撮影領域と、が前記幅方向において一部が重複する前記幅方向の重複距離が一定の距離以下になると、前記ずれが予め定められた前記値より広がったとして報知する、請求項4に記載の車両走行ガイダンスシステム。
【請求項6】
路面を走行する車両を用いて前記路面の凹凸を計測するための計測方法であって、
前記車両から前記路面に向けて光を照射し、前記車両の幅方向の一方の外側から前記幅方向の他方の外側まで延びるラインを前記路面に投影する投影工程と、
前記路面に投影された前記ラインが前記路面を通過する領域を撮影領域として撮影する撮影工程と、
前記撮影工程により撮影された前記領域の撮影画像に基づいて前記路面の前記凹凸を計測する計測工程と、
を備え、
前記撮影工程は、
前記車両の前記幅方向において前記車両から前記一方の外側に突出する第1突出位置から、前記一方の外側に位置する前記ラインが前記路面を通過する前記領域を少なくとも撮影する第1撮影工程と、
前記車両の前記幅方向において前記車両から前記他方の外側に突出する第2突出位置から、前記他方の外側に位置する前記ラインが前記路面を通過する前記領域を少なくとも撮影する第2撮影工程と、
前記第1突出位置及び前記第2突出位置の間の位置から、前記ラインに沿う方向において、前記第1撮影工程及び前記第2撮影工程と前記撮影領域の一部が重複して撮影をする第3撮影工程と、
を有し、
前記計測工程は、前記第1撮影工程、前記第2撮影工程、及び前記第3撮影工程における各前記撮影画像の前記ラインと、各前記撮影画像の前記路面に前記凹凸が存在しない場合に前記ラインが形成されると仮想される仮想ラインと、の間のライン間幅方向のピクセル数と、各前記撮影画像における前記ピクセル数に相当する長さと、に基づいて前記路面における深さ方向の前記凹凸を算出する算出工程を備える、凹凸測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸計測装置及び車両走行ガイダンスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、光切断法により路面の凹凸を計測するシステムが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、一般道のような道幅がさほど広くない路面の凹凸を計測するものである。
【0005】
本発明の課題は、幅が広い路面における凹凸を効率的に計測できる凹凸計測装置及び車両走行ガイダンスシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の凹凸計測装置は、
路面を走行する車両を用いて路面の凹凸を計測するための凹凸計測装置であって、
車両から路面に向けて光を照射し、車両の幅方向の一方の外側から幅方向の他方の外側まで延びるラインを路面に投影する投影部と、
路面に投影されたラインが路面を通過する領域を撮影領域として撮影する撮影部と、
撮影部により撮影された領域の撮影画像に基づいて路面の凹凸を計測する計測部と、
を備え、
撮影部は、
車両の幅方向において車両から一方の外側に突出する第1突出位置に位置して、一方の外側に位置するラインが路面を通過する領域を少なくとも撮影する第1撮影部と、
車両の幅方向において車両から他方の外側に突出する第2突出位置に位置して、他方の外側に位置するラインが路面を通過する領域を少なくとも撮影する第2撮影部と、
第1撮影部及び第2撮影部の間に位置して、ラインに沿う方向において、第1撮影部及び第2撮影部と撮影領域の一部が重複して撮影をする第3撮影部と、
を有し、
計測部は、第1撮影部、第2撮影部、及び第3撮影部における各撮影画像のラインと、各撮影画面の路面に凹凸が存在しない場合にラインが形成されると仮想される仮想ラインと、の間のライン間幅方向のピクセル数と、各撮影画像におけるピクセル数に相当する長さと、に基づいて路面における深さ方向の凹凸を算出する算出部を備える。
【0007】
本発明の凹凸計測装置においては、車両から幅方向の両側に突出して第1撮影部と第2撮影部が位置するとともに、第1撮影部と第2撮影部の間に第3撮影部が位置する。そして、第1撮影部と第2撮影部は、車両の幅方向の外側に位置するラインが路面を通過する領域を少なくとも撮影するとともに、第3撮影部は、路面に投影されるラインに沿う方向において、第1撮影部及び第2撮影部と撮影領域の一部が重複する。よって、第1撮影部、第2撮影部及び第3撮影部により車両の全幅を超える範囲の路面を漏れなく一括撮影が可能となる。そのため、撮影した撮影画像に映るラインと、仮想ライン(撮影画像の路面に凹凸が存在しない場合に映るライン)との間のライン間幅方向のピクセル数と、撮影画像におけるピクセル数(例えば、1ピクセル数)に相当する長さと、に基づいて路面における深さ方向の凹凸を算出することが可能になる。したがって、幅が広い路面において、路面に形成される凹凸を効率的に計測することができる。
【0008】
また、本発明の車両走行ガイダンスシステムでは、
上記に記載の凹凸計測装置と、
車両の現在位置を測定する測定部と、
凹凸計測装置が凹凸を計測するために車両が走行する理想的な進路である予め定められた理想進路と、走行中の車両の現在位置とのずれを検出する検出部と、
ずれが予め定めされた値より広がると報知する報知部と、
を備えることができる。
【0009】
これによれば、報知部により車両が理想進路から離れたことが報知されるため、路面の凹凸を測定するのに適した進路を取ることが可能となる。
【0010】
本発明の実施態様では、
理想進路は直線状の進路であり、
検出部は第1検出部であり、
走行する車両の進行方向を検出する方向検出部を有し、
理想進路に沿う方向と、進行方向との方向ずれを検出する第2検出部を有し、
報知部は方向ずれがあると報知することができる。
【0011】
これによれば、車両があらぬ方向を向くのを抑制できる。
【0012】
本発明の実施態様では、
報知部は、
測定部により測定された車両の現在位置と、理想進路と、現在位置と理想進路とのずれと、を表示する表示部を備えることができる。
【0013】
これによれば、路面の凹凸を計測するために、車両が進行する理想進路と現在位置とのずれを表示部に表示するため、表示部をもとに車両が理想進路を走行するように運転することが可能となる。
【0014】
本発明の実態態様では、
理想進路は、第1理想進路と、第1理想進路に隣接して第1理想進路に沿って位置する第2理想進路と、を有し、
第1理想進路を車両が進行した場合における第1撮影部と第2撮影部が路面を撮影する第1撮影領域と、第2理想進路を車両が進行した場合における第1撮影部と第2撮影部が路面を撮影する第2撮影領域と、が幅方向において一部が重複することができる。
【0015】
これによれば、第1理想進路を進行した車両が第2理想進路を進行した場合には、第1撮影領域と第2撮影領域が車両の幅方向において一部重複するため、第1及び第2理想進路を車両が進行すれば、路面の幅方向において路面の撮影漏れがないように撮影できる。
【0016】
本発明の実施態様では、
報知部は、
第1理想進路が進行方向である走行中の車両における第1撮影領域と、第2理想進路を車両が進行した場合における第1撮影部と第2撮影部が路面を撮影する第2撮影領域と、が幅方向において一部が重複する幅方向の重複距離が一定の距離以下になると、ずれが予め定められた値より広がったとして報知することができる。
【0017】
これによれば、第1理想進路に沿うように車両を運転している際に、例えば、運転ミスなどで第1撮影領域と第2撮影領域が重複している距離が一定の距離以下になると報知される。よって、車両が路面を撮影した進路に隣接する進路を走行して路面を撮影する際に路面の撮影漏れがないように車両を運転することが可能となる。
【0018】
また、本発明の凹凸計測方法では、
路面を走行する車両を用いて路面の凹凸を計測するための計測方法であって、
車両から路面に向けて光を照射し、車両の幅方向の一方の外側から幅方向の他方の外側まで延びるラインを路面に投影する投影工程と、
路面に投影されたラインが路面を通過する領域を撮影領域として撮影する撮影工程と、
撮影工程により撮影された領域の撮影画像に基づいて路面の凹凸を計測する計測工程と、
を備え、
撮影工程は、
車両の幅方向において車両から一方の外側に突出する第1突出位置から、一方の外側に位置するラインが路面を通過する領域を少なくとも撮影する第1撮影工程と、
車両の幅方向において車両から他方の外側に突出する第2突出位置から、他方の外側に位置するラインが路面を通過する領域を少なくとも撮影する第2撮影工程と、
第1突出位置及び第2突出位置の間の位置から、ラインに沿う方向において、第1撮影工程及び第2撮影工程と撮影領域の一部が重複して撮影をする第3撮影工程と、
を有し、
計測工程は、第1撮影工程、第2撮影工程、及び第3撮影工程における各撮影画像のラインと、各撮影画像の路面に凹凸が存在しない場合にラインが形成されると仮想される仮想ラインと、の間のライン間幅方向のピクセル数と、各撮影画像におけるピクセル数に相当する長さと、に基づいて路面における深さ方向の凹凸を算出する算出工程を備える。
【0019】
これによれば、幅が広い路面において、路面に形成される凹凸を効率的に計測することができる。
【0020】
本発明の実施態様では、
上記凹凸測定方法の各工程と、
車両の現在位置を測定する測定工程と、
計測工程で凹凸を計測するために車両が走行する理想的な進路である予め定められた理想進路と、走行中の車両の現在位置とのずれを検出する検出工程と、
ずれが予め定めされた値より広がると報知する報知工程と、を備える、車両走行ガイダンス方法としても良い。
【0021】
理想進路は直線状の進路であり、
検出工程は第1検出工程であり、
走行する車両の進行方向を検出する方向検出工程を有し、
理想進路に沿う方向と、進行方向との方向ずれを検出する第2検出工程を有し、
報知工程は方向ずれがあると報知することができる。
【0022】
また、報知工程は、
測定工程により測定された車両の現在位置と、理想進路と、現在位置と理想進路とのずれと、を表示する表示工程を備えることができる。
【0023】
理想進路は、第1理想進路と、第1理想進路に隣接して第1理想進路に沿って位置する第2理想進路と、を有し、
第1理想進路を車両が進行した場合における第1撮影工程と第2撮影工程が路面を撮影する第1撮影領域と、第2理想進路を車両が進行した場合における第1撮影工程と第2撮影工程が路面を撮影する第2撮影領域と、が幅方向において一部が重複しても良い。
【0024】
報知工程は、
第1理想進路が進行方向である走行中の車両における第1撮影領域と、第2理想進路を車両が進行した場合における第1撮影工程と第2撮影工程が路面を撮影する第2撮影領域と、が幅方向において一部が重複する幅方向の重複距離が一定の距離以下になると、ずれが予め定められた値より広がったとして報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一例の車両走行ガイダンスシステムを示すブロック図。
【
図2】
図1のガイダンスシステムが適用された車両の外観の一例を示す模式斜視図。
【
図3】
図2の車両の一部のカメラとそのカメラの撮影領域の一例を示す模式斜視図。
【
図4】
図1の計測端末において、撮影画像から凹凸を計測する原理を示す概念図。
【
図5】墨出し器で投影されたラインと、仮想ラインとが表示された撮影画像の一例を示す模式図。
【
図6】路面の凹凸を計測する際に車両が進行する理想進路の一例を示す模式図。
【
図7】
図6の理想進路をもとに実際に走行した車両の軌跡の一部を示す模式図。
【
図8】理想進路を進行する車両の撮影領域が重複する例を示す模式図。
【
図9】
図1のガイダンス端末における案内プログラムや表示プログラムなどの処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】ディスプレイに表示される理想進路と車両の現在位置などの一例を示す模式図。
【
図11】
図6における理想進路の変形例の一例を示す模式図。
【
図12】
図6の理想進路に通過点を追加した一例を示す模式図。
【
図13】
図12の通過点を利用したガイダンス処理の一例を示すフローチャート。
【
図14】ディスプレイに表示される車両の進行方向と通過点に向かう方向などの一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明の一例の車両走行ガイダンスシステムSを示す。車両走行ガイダンスシステムSは、路面の凹凸(例えば、路面のくぼみの深さなどの距離)を計測する車両1が、路面の凹凸を計測するのに適した走行をできるように案内するシステムである。車両走行ガイダンスシステムSは、車両1と、車両1に設置されて車両1が走行した路面を撮影するための撮影ユニット2と、撮影ユニット2が取得した撮影データに基づき路面の凹凸を計測する計測端末3と、路面の凹凸を計測するのに適した走行ができるように車両1(車両1の運転者)を案内するガイダンス端末4と、車両1の現在位置を特定するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機Rと、を備える。
【0027】
図2に示すように車両1は、後方に荷台と、荷台から荷物が落下するのを防止する囲いG(アオリ)と、が備わるトラックとして構成される。車両1の荷台には、路面を撮影するための撮影ユニット2が設置される。また、車両1の運転席と助手席が備わる車室内には、ガイダンス端末4(
図2では図示省略)が配置される。また、車両1のルーフにはGNSS受信機Rが取り付けられる。GNSS受信機Rは、GNSSの各衛星から発信される信号を受信し、各衛星が信号を発信した時間と、各衛星の信号をGNSS受信機Rが受信した時間差に基づいて、自身の位置を特定する機器である。
【0028】
次に、撮影ユニット2について説明する。撮影ユニット2は、車両1の荷台に設置されて荷台から上方に突出するように位置する枠組み5と、枠組み5の各部に設置される各機器と、各機器に電源を供給する電源ユニット6と、を備える。枠組み5の各部に設置される機器としては、車両1が通過した路面に向けてレーザーを照射する墨出し器7と、複数の上方カメラ8と、複数の下方カメラ9と、複数の照明10と、が備わる。
【0029】
枠組み5は、車両1の荷台に立体格子状に形成された骨組み状の本体部5aと、本体部5aの上部を基点として車両1の後方に等角度間隔で3本に分かれるように水平又は略水平に延び、先端部が上方カメラ8を取り付ける取付部として機能する3本の棒状部材5bと、車両1の荷台の囲いGの後部(後アオリ)の外側に沿い、かつ、車両1の幅方向の両側に突出して延び、両端部及び中央部が下方カメラ9を取り付ける取付部として機能する水平又は略水平に延びる棒状の突出部材5cと、を備える。また、図示省略してあるが、本体部5aが取り付けられる荷台には、緩衝シートが設けられ、走行中の車両1の振動が枠組み5に伝わるのを抑制する。
【0030】
本体部5aの後部には、本体部5aから車両1後方に位置する路面に向けてレーザーを照射して路面上にラインL(基準線)を投影する墨出し器7が取り付けられる。墨出し器7は、本体部5a側から斜め下方に位置する路面(車両1後方に位置する路面)に向けてレーザーを照射し、路面にラインLを投影する機械である。墨出し器7により、車両1の進行方向に対して直行(交差)するラインL(基準線)が路面に投影される。ラインLは、車両1の幅方向の一方の外側から車両1の幅方向の他方の外側まで延びるように路面に投影される。
【0031】
本体部5aの上部から車両1の後方に延びる各棒状部材5bの先端部の下面には、上方カメラ8が取り付けられる。3つの棒状部材5bのうち両側の棒状部材5bの先端部には、複数(2つの)の上方カメラ8が取り付けられ、3つの棒状部材5bのうち真ん中の棒状部材5bの先端部には1つの上方カメラ8が取り付けられる。
【0032】
また、車両1の後方に位置して車両1の全幅を横断するように延びる突出部材5cの両端部及び中央部には、それぞれL字状の板状部材が固定され、各板状部材に下方カメラ9がそれぞれ取り付けられる。
【0033】
下方カメラ9は、突出部材5cの両側に位置する下方カメラ9a、9b及び下方カメラ9a、9bの間に位置する下方カメラ9cを備える。下方カメラ9a、9b、9cは、それぞれ車両1の後方に位置する路面を撮影するように取り付けられる。
図3には、下方カメラ9a、9b、9cが撮影する撮影領域Fа、Fb、Fcの一例が示され、撮影領域Fа、Fb、Fcは、矩形状の枠として図示される。撮影領域Faが下方カメラ9aの、撮影領域Fbが下方カメラ9bの、撮影領域Fcが下方カメラ9cの撮影領域に相当する。撮影領域Faは、車両1の幅方向の一方の外側に位置するラインLと車両1の幅方向の内側に位置するラインLが路面を通過する領域に相当する。撮影領域Fbは、車両1の幅方向の他方の外側に位置するラインLと車両1の幅方向の内側に位置するラインLが路面を通過する領域に相当する。撮影領域Fcは、車両1の幅方向の一方の外側に位置するラインLと車両1の幅方向の内側に位置するラインLと車両1の幅方向の他方の外側に位置するラインLが路面を通過する領域に相当する。車両1の幅方向(ラインLに沿う方向)において、下方カメラ9cの撮影領域Fcは、下方カメラ9bの撮影領域Fb及び下方カメラ9aの撮影領域Faと一部が重複するように各下方カメラ9の撮影領域Fa、Fb、Fcが設定される。撮影領域Fcと撮影領域Faとは、車両1の幅方向において、例えば、少なくとも30cm~40cm以上重複するように設定される。同様に、撮影領域Fcと撮影領域Fbとは、車両1の幅方向において、例えば、少なくとも30cm~40cm以上重複するように設定される。また、各下方カメラ9a、9b、9cは、路面に投影されたラインLが撮影領域Fa、Fb、Fcを横断するアングルになるように撮影領域Fa、Fb、Fcが設定され、各下方カメラ9a、9b、9cは、ラインLを含む領域の路面を撮影するように画角や各下方カメラ9a、9b、9cの向きなどが設定される。下方カメラ9a、9b、9cにより、車両1の幅方向において、車両1の全幅を超える範囲の領域を一括して撮影することが可能となる。
【0034】
図示省略しているが、
図2の上方カメラ8についても、下方カメラ9と同様に路面を撮影する。各上方カメラ8は、下方カメラ9の撮影領域Fa、Fb、Fcに隣接する車両1後方(撮影領域Fa、Fb、Fcよりも車両後方)の路面を撮影領域とする。各上方カメラ8によって、例えば、撮影領域Fa、Fb、Fcと同じ幅の路面を撮影するように設定される。上方カメラ8及び下方カメラ9は、静止画及び動画の撮影が可能であり、例えば、上方カメラ8は動画を撮影するものと静止画を撮影するものがある一方で、下方カメラ9は動画を撮影する。上方カメラ8は、棒状部材5bに2つの上方カメラ8が配置されたものは、棒状部材5bの先端側に位置するものが動画を撮影する一方で、棒状部材5bの基端側に位置するものは静止画を撮影する。また、棒状部材5bに1つの上方カメラ8が配置されたものは動画を撮影する。
図1に示すように、上方カメラ8及び下方カメラ9は、それぞれ無線又は有線での通信を介して、計測端末3により制御可能とされる。例えば、計測端末3を介して操作された上方カメラ8及び下方カメラ9が取得した撮影データは、上方カメラ8や下方カメラ9から計測端末3に送信される。
【0035】
また、
図2に示すように、撮影ユニット2の枠組み5である本体部5aの後部には、上方カメラ8及び下方カメラ9が撮影する路面を照らす複数(5つ)の照明10が備わる。
【0036】
図2においては配線などが図示省略してあるが、撮影ユニット2における墨出し器7、上方カメラ8、下方カメラ9、照明10は、それぞれ電源ユニット6に接続され、電力が供給される。
【0037】
上方カメラ8及び下方カメラ9が取得した撮影データは、
図1に示すように、例えば、インターネットなどを通じて計測端末3に送信され、計測端末3において路面の凹凸計測(路面の深さの距離の計測)などの処理が行わる。また、
図1には、路面の凹凸を計測するのに適した(撮影ユニット2が路面を撮影するのに適した)走行をするように車両1を案内するガイダンス端末4が示される。次に、計測端末3及びガイダンス端末4について説明する。最初に、計測端末3及びガイダンス端末4に共通する部分をまとめて説明する。計測端末3及びガイダンス端末4は、例えば、コンピュータとして構成され、それぞれ通信部11、12と制御部13、14を備える。計測端末3の通信部11と撮影ユニット2の上方カメラ8及び下方カメラ9は、インターネットなどの無線又は有線通信などの通信技術を介して相互に通信可能に接続され、計測端末3の通信部11と上方カメラ8及び下方カメラ9は相互に通信をする。また、ガイダンス端末4の通信部12とGNSS受信機Rはインターネットなどの無線又は有線通信などの通信技術を介して相互に通信可能に接続され、ガイダンス端末4の通信部12とGNSS受信機Rは相互に通信をする。各制御部13、14は、それぞれCPU3a、4a、RAM3b、4b及び、ストレージ3c、4cを備え、それらがバスで接続される。
【0038】
CPU3aは、制御部13におけるデータ通信等の情報処理の全般を司り、RAM3bは、CPU3aの作業領域として機能する揮発性の記憶部である。ストレージ3cは、制御部13で必要な処理をするためのデータ及びソフトウェア(プログラム)を記憶する記憶部である。制御部14のCPU4a、RAM4b及びストレージ4cについても同様である。以下、計測端末3及びガイダンス端末4の詳細を説明する。
【0039】
計測端末3は、上方カメラ8及び下方カメラ9を遠隔で制御するとともに、例えば、下方カメラ9が撮影した動画から複数(多数)の静止画を切り出し、切り出した各静止画から路面の凹凸を計測する端末である。制御部13は、上方カメラ8及び下方カメラ9を遠隔で操作したり、下方カメラ9が撮影した動画を静止画に切り出したり、切り出した静止画から路面の凹凸(くぼみの深さ)を計測したりする主体となる。制御部13のストレージ3cには、通信プログラム3c1、制御プログラム3c2、変換プログラム3c3、算出プログラム3c4等のプログラムと、下方カメラ9から送信される動画のデータや下方カメラ9から送信された動画を静止画に切り出した静止画のデータなどが格納される。通信プログラム3c1は、計測端末3がインターネットなどを介して上方カメラ8や下方カメラ9などと通信するために用いるプログラムである。制御プログラム3c2は、計測端末3の制御部13により遠隔で上方カメラ8や下方カメラ9を制御するために用いるプログラムである。変換プログラム3c3は、下方カメラ9から送信された動画を切り出して静止画に変換するために用いるプログラムである。算出プログラム3c4は、変換プログラム3c3により変換された静止画から路面の凹凸(くぼみの深さ)を計測するためのプログラムである。
【0040】
また、ガイダンス端末4は、ディスプレイDSとスピーカーSPを備える。ディスプレイDSは、車両1の運転者が運転時にディスプレイDSを視認できる位置に配置される。ガイダンス端末4は、ディスプレイDSやスピーカーSPを通じて路面の凹凸を計測するのに適した車両1の走行を案内するための端末である。制御部14は、GNSS受信機Rから送信される車両1の現在位置をもとにディスプレイDSやスピーカーSPなどにより車両1の走行案内をする主体である。制御部14のストレージ4cには、通信プログラム4c1、案内プログラム4c2、表示プログラム4c3等のプログラムと、対象となる路面を計測する際に車両1が進む理想的な進路(効率よく路面を撮影できる車両1の進路)である理想進路データや撮影対象の路面上に存在する障害物の位置データなどが格納される。通信プログラム4c1は、ガイダンス端末4がGNSS受信機Rなどと通信するために用いるプログラムである。案内プログラム4c2は、GNSS受信機Rから送信された車両1の現在位置データなどに基づき、車両1の走行を案内するために用いるプログラムである。表示プログラム4c3は、GNSS受信機Rから送信された車両1の現在位置データなどに基づき、車両1の走行を案内するための画像をディスプレイDPに表示するプログラムである。なお、理想進路データ及び障害物の位置データについては、撮影対象の路面毎に作成(予め設定)される。
【0041】
次に、前述の各種プログラムの処理や、各種プログラムを実行する際に使用するデータなどについて説明する。
【0042】
図4は、算出プログラム3c4において、路面の凹凸(くぼみの深さ)を計測するための原理を示す概念図である。
図4では、路面に形成されたくぼみDIを下方カメラ9が撮影する例が示される。また、
図5には、
図4のようにして下方カメラ9で撮影された路面(墨出し器7によるラインLが投影された凸凹の路面)の画像が示される。
図5において、二点鎖線で表示されるのが、仮想ラインIL(仮想基準線)である。仮想ラインILは、路面に凹凸がない場合に墨出し器7により路面に投影されるラインLを仮想的に表示したものである。仮想ラインILの位置は、下方カメラ9で設定された画角や下方カメラ9の向き及び墨出し器7がラインLを投影する位置などによって、画一的に定められ、仮想ラインILに関するデータは、例えばストレージ3cに格納される。
図4のくぼみDIにおいて、計測するくぼみDIの深さは深さDEであり、
図4では図示されていないが深さDEの底にはラインLが投影される。
図4に示すように深さDEが下方カメラ9で撮影されると、投影された深さIDEとして
図5の撮影画像には表示される。
図4において、cоsθ=深さIDE/深さDEであるため、計測するくぼみDIの深さDEは、深さIDE/cоsθとなる。そのため、
図5の撮影画像における投影された深さIDEのピクセル数(仮想ラインILとラインLの幅方向のピクセル数)を撮影画像から計測し、撮影画像における1ピクセルあたりの実際の距離を深さIDEのピクセル数に乗じることで深さIDEを算出できる。そして、
図4に示すcоsθの角度θや1ピクセルあたりの実際の距離については、下方カメラ9の撮影条件により定まるため(路面に対するカメラの角度等による定まるため)、下方カメラ9による撮影画像と
図5の深さIDEのピクセル数と1ピクセル数に相当する長さから
図4のくぼみDIにおける深さDEを算出できる。以上、
図5の撮影画像における1地点の深さIDEを計測する例を示した。算出プログラム3c4では、
図5の撮影画像における仮想ラインILとラインLとの幅方向の距離からくぼみDIの各地点の深さを計測する。そして、変換プログラム3c3により変換された全ての撮影画像についても同様にくぼみDIの深さを計測する。
【0043】
図6は、案内プログラム4c2や表示プログラム4c3を実行する際に使用される理想進路データに相当する理想進路の一例を示すマップデータである。
図6は、飛行場などのように路幅が広大な路面を車両1が走行して路面の凹凸を計測する際に、車両1が進行する理想的な進路(理想進路)を示すマップデータである。理想進路は凹凸を計測する路面に応じて作成される。
図6においては、路面の凹凸を計測する矩形状の区間である撮影区間SE1と、撮影区間SE1を挟んで位置する撮影準備区間SE2が表示される。撮影準備区間SE2は、撮影区間SE1で路面を撮影するのに適するように車両1の現在位置や車両1の速度や向きを整える区間である。撮影区間SE1には、複数の理想進路IR1~IR12が表示される。理想進路IR1~IR12は、それぞれ直線状に表示され、各理想進路IR1~IR12は等間隔かつ互いに平行に設定される。また、撮影準備区間SE2においても、撮影準備用の理想進路PIRが表示され、理想進路IR1~IR12と撮影準備用の理想進路PIRは、
図6においては、全体で略渦巻き状になるように経路が設定される。具体的には、撮影のスタート地点である第1スタート地点S1を皮切りに、第1スタート地点S1→第1ゴール地点G1、第2スタート地点S2→第2ゴール地点G2、第3スタート地点S3→第3ゴール地点G3・・・第11スタート地点S11→第11ゴール地点G11、第12スタート地点S12→第12ゴール地点G12のように理想進路IR1~IR12が設定され、第12ゴール地点G12に到達するとすべての撮影が終了したことになる。
図7には、
図6のマップをもとに、撮影のスタート地点である第1スタート地点S1に向かった車両1の軌跡T1と、第1ゴール地点G1に到着後に第2スタート地点S2に向けて進んだ車両1の軌跡T2が表示される。
図7に示すように、撮影準備区間SE2では、各スタート地点S1~S12に向けて車両1の位置や速度や向きを整え、車両1が撮影に適した状態になるように運転者は車両1を操作する。
【0044】
図8には、理想進路IR1~IR3に位置する車両1が下方カメラ9a、9bで路面を撮影する撮影領域の一例が示される。
図8においては、理想進路IR1における下方カメラ9aの撮影領域をFa1、理想進路IR1における下方カメラ9bの撮影領域をFb1、理想進路IR2における下方カメラ9aの撮影領域をFa2、理想進路IR2における下方カメラ9bの撮影領域をFb2、理想進路IR3における下方カメラ9aの撮影領域をFa3、理想進路IR3における下方カメラ9bの撮影領域をFb3として図示される。
図8に示すように、理想進路IR1を車両1が進行した場合に車両1の下方カメラ9a、9bが路面を撮影する領域(撮影領域Fa1)と、理想進路IR1に隣接する理想進路IR2を車両1が進行した場合における車両1の下方カメラ9aが路面を撮影する領域(撮影領域Fa2)が車両1の幅方向において一部重複するように理想進路IR1、IR2の幅が設定される(
図8の斜線部分が重複している領域)。同様に、理想進路IR1を車両1が進行した場合における車両1の下方カメラ9bが路面を撮影する領域(撮影領域Fb1)と、理想進路IR1に隣接する理想進路IR3を車両1が進行した場合における車両1の下方カメラ9aが路面を撮影する領域(撮影領域Fa3)が車両1の幅方向において一部重複するように理想進路IR1、IR3の幅が設定される(
図8の斜線部分が重複している領域)。
図6における理想進路IR1~IR12は、理想進路IR1~IR12を走行する車両1の撮影領域Fa、Fbと、走行する理想進路IR1~IR12に隣接する理想進路IR1~IR12を車両1が走行する場合の撮影領域Fa、Fbが一部重複するように各理想進路IR1~IR12が設定される。
【0045】
図9は、ガイダンス端末4の案内プログラム4c2、表示プログラム4c3及び理想進路データなどに基づいて、車両1の走行を案内する処理である。以下、この処理の詳細を
図9のフローチャートをもとに説明する。ガイダンス端末4は、案内プログラム4c2が実行されると、GNSS受信機Rから車両1の現在位置を取得し(S101)、車両1の現在位置が、例えば、
図6に示す撮影区間SE1のスタート地点(例えば、第1スタート地点S1)まで距離がある(所定の距離離れている)ならば(S102:No)、車両1の現在位置が、撮影区間SE1のスタート地点に接近していないとして、S101に戻る。一方、車両1の現在位置が撮影区間SE1のスタート地点まで距離がない(例えば、100mを切ったならば)(S102:Yes)、撮影区間SE1のスタート地点が接近している旨をガイダンス端末4のスピーカーSPやディスプレイDPを通じて車両1の運転手などに報知する(S103)。そして、GNSS受信機Rから車両1の現在位置を取得する(S104)。車両1が撮影区間SE1のスタート地点(例えば、
図6の第1スタート地点S1)に到達していないならば(S105:No)、S104に戻る。一方、車両1が撮影区間SE1のスタート地点に到達すると(S105:Yes)、スピーカーSPやディスプレイDPを通じて撮影区間SE1に到達した旨を報知し(S106)、S107に進む。S107では、GNSS受信機Rから車両1の現在位置を取得し、車両1が撮影区間SE1のゴール地点(例えば、
図6の第1ゴール地点G1)に到達していないならば(S108:No)、理想進路データに基づいて車両1の現在位置と理想進路とのずれを算出する(S109)。車両1の現在位置と理想進路とのずれとしては、例えば、理想進路に直行する方向における車両1の現在位置と理想進路のずれが算出される。算出したずれが所定距離以上(例えば、2m以上)ならば(S110:Yes)、車両1の現在位置と理想進路とのずれを抑えるための案内をスピーカーSPやディスプレイDPを通じて報知する。
図10には、車両1の現在位置PPが理想進路IR1から所定距離以上、左側にずれた場合にディスプレイDPに表示される報知内容の一例が示される(S111)。
図10では、車両1の現在位置PPと理想進路IR1とのずれを抑えるように「右によれ」との案内が表示される。S111で報知処理が行わると、S107に戻る。また、S110において、現在位置と理想進路のずれが所定距離に満たないならば(例えば、2m未満ならば)、S107に戻り、車両1の現在位置を取得する。そして、車両1が撮影区間SE1のゴール地点(例えば、
図6の第1ゴール地点G1)に到達すると(S108:Yes)、スピーカーSPやディスプレイDPを通じて撮影区間SE1のゴール地点(例えば、
図6の第1ゴール地点G1)に到達した旨を報知し(S112)、処理を終える。例えば、
図6に示す理想進路の場合には、第1ゴール地点G1に到達すると、次は、第2スタート地点S2から第2ゴール地点G2までの走行案内が行われ、同様に、第3スタート地点S3から第3ゴール地点G3、・・・、第12スタート地点S12から第12ゴール地点G12のように、全理想進路IR1~IR12の走行案内が終了するまで同様の処理が実行される。なお、案内プログラム4c2が実行されると、ディスプレイDPには、表示プログラム4c3により、例えば、
図10に示すように車両1の現在位置PPと理想進路IR1~IR12や準備理想進路PIR(
図10では不図示)が表示され、車両1の現在位置PPと理想進路IR1~IR12や準備理想進路PIRとのずれを車両1の走行中に把握することが可能となる。なお、車両1が撮影区間SE1から離れた撮影準備区間SE2に位置する場合には、準備理想進路PIRのみが表示される。同様に、車両1が撮影準備区間SE2から離れた撮影区間SE1に位置する場合には、理想進路IR1~IR12のみが表示される。
【0046】
次に、車両走行ガイダンスシステムSを用いて、例えば、飛行場の滑走路などの路面(直線状の路面)の凹凸を計測する方法について説明する。計測をするに先立って、撮影ユニット2の各機器(墨出し器7、上方カメラ8、下方カメラ9、照明10)の電源を入れ、撮影可能な状態にする。この時点で、下方カメラ9などによる撮影を開始しても良い。そして、案内プログラム4c2及び表示プログラム4c3などを起動し、撮影区間SE1のスタート地点に向けて車両1を運転する。具体的には、ディスプレイDPに表示される準備理想進路PIRやスピーカーSPの案内に従って、車両1を運転する。車両1がスタート地点(例えば、
図6の第1スタート地点S1)に接近すると、車両1の速度を一定にする旨やスタート地点が接近している旨がスピーカーSPやディスプレイDPにより報知される。スピーカーSPやディスプレイDPにより報知される案内に従って車両1を運転すると、撮影区間SE1の第1スタート地点S1を車両1が通過する。すると、第1スタート地点S1を通過したことを示す効果音がスピーカーSPから報知されるとともに、撮影区間SE1に入った旨がディスプレイDPに表示される。車両1が撮影区間SE1に入ると、
図10に示すようにディスプレイDPには、車両1の現在位置PPと理想進路IR1とが表示され、運転者はディスプレイDPを参考に、車両1が理想進路IR1に沿って走行するように運転する。撮影区間SE1を走行する車両1の現在位置PPが理想進路IR1から所定距離以上離れると、理想進路IR1からのずれを抑制するように、ディスプレイDPには、例えば、
図10に示すような案内が表示されるとともに、スピーカーSPからも車両1の現在位置PPが理想進路IR1から離れている旨の警告音などを報知する。このように理想進路IR1を参考に車両1を運転し、車両1が第1ゴール地点G1を通過すると、撮影区間SE1が終了したことを示す効果音などがスピーカーSPから報知されるとともに、撮影区間SE1が終了した旨がディスプレイDPに表示される。そして、撮影準備区間SE2においても、準備理想進路PIRに沿うように車両1を運転し、第2スタート地点S2である撮影区間SE1に到達するまでに、車両1の現在位置や走行速度などを調整する。後は、上記と同様に車両1を運転し、撮影区間SE1の運転、撮影準備区間SE2の運転を繰り返し、撮影対象の路面を漏れなく撮影するまで車両1を走行させ、すべての走行が終了すると撮影が終了する。
【0047】
以上のようにして、撮影対象である滑走路の撮影(下方カメラ9による動画撮影)が行われると、計測端末3の変換プログラム3c3により、下方カメラ9が撮影した各動画から、墨出し器7により路面にラインLが投影された、例えば、
図5に示すような静止画が多数切り出される。そして、切り出された静止画をもとに、
図4に示す原理により路面のくぼみDIの深さDEが計測される。
【0048】
車両走行ガイダンスシステムSにおいては、路面の凹凸を計測するために車両1が走行する際に、車両1が進行する理想進路IR1~IR12や車両1の現在位置PP、理想進路IR1~IR12と現在位置PPとのずれがディスプレイDPに表示されるため、ディスプレイDPをもとに車両1が理想進路IR1~IR12に沿って進むように運転することが可能となる。また、理想進路IR1~IR12と車両1の現在位置PPとのずれが、予め定めされた距離より広がると、ずれを少なくするようにディスプレイDPやスピーカーSPにより報知されるため、路面の凹凸を計測するのに理想的な進路に沿うように車両1を運転することが可能となる。
【0049】
車両1を運転する際に参照される理想進路IR1~IR12としては、例えば、
図8に示すように、理想進路IR1を車両1が進行した場合に車両1の下方カメラ9a、9bが路面を撮影する領域(撮影領域Fa1)と、理想進路IR1に隣接する理想進路IR2を車両1が進行した場合における車両1の下方カメラ9aが路面を撮影する領域(撮影領域Fa2)が車両1の幅方向において一部重複するように理想進路IR1、IR2の幅が設定される。すなわち、
図6の理想進路IR1~IR12においては、理想進路IR1~IR12を走行する車両1の撮影領域Fa、Fbと、走行する理想進路IR1~IR12に隣接する理想進路IR1~IR12を車両1が走行する場合の撮影領域Fa、Fbが一部重複するように各理想進路IR1~IR12が設定される。そのため、車両1が理想進路IR1~IR12を進行すれば、飛行場のような幅が広い路面であっても、撮影漏れがないように路面を撮影できる。また、例えば、
図8の理想進路IR1が進行方向である車両1における下方カメラ9aの撮影領域Fa1と、理想進路IR2を車両1が進行した場合における車両1の下方カメラ9aが路面を撮影する領域(撮影領域Fa2)が車両1の幅方向において一部重複する距離が、一定距離以下になると、スピーカーSPやディスプレイDPにより、車両1の現在位置PPが理想進路IR1からずれており、ずれを抑制するように報知することで、飛行場のような路幅が広い路面であっても、路面の撮影漏れがないように車両1を運転することが可能となる。
【0050】
ガイダンス端末4により車両1の走行が案内され、車両1の荷台に設置された撮影ユニット2により路面の撮影がされることで、
図5に示すような撮影画像が取得される。
図5の撮影画像のくぼみDIの深さIDEは、
図4に示すように実際のくぼみDIの深さDEを下方カメラ9に対して投影されたものである。そのため、
図5の撮影画像における投影された深さIDEのピクセル数(仮想ラインILとラインLの幅方向のピクセル数)を撮影画像から計測し、撮影画像における1ピクセルあたりの実際の距離を深さIDEのピクセル数に乗じることで深さIDEを算出し、
図4における深さIDEをもとに実際のくぼみの深さDEを算出できる。したがって、
図5の撮影画像における仮想ラインILとラインLとの幅方向の距離に基づいて、くぼみDIの各地点の深さが計測することができる。
【0051】
滑走路などの飛行場の路面の凹凸を計測する場合には、飛行機の離着陸が頻繁に行われるため、計測できる時間が極めて短く、短時間で漏れなく路面の凹凸を計測することが求められる。撮影ユニット2においては、
図3に示すように車両1の全幅から車両1の幅方向の外側に突出する位置に下方カメラ9a、9bが位置するため、下方カメラ9により車両1の全幅を超える範囲の路面を撮影することができ、
図3に示す撮影領域Fa、Fb、Fcの範囲を撮影できる。それ故、飛行場のように短時間で広大な路面の凹凸を計測する場合において、広範囲を漏れなく撮影できる。また、路面に対してラインLを投影して、投影したラインLを撮影することで、簡単に路面の深さを計測できる。よって、複雑な機器を用いることなく、汎用的な部品の組み合わせで路面の凹凸の計測ができる。したがって、計測時間や計測機会が限られている飛行場のような路面を計測する場合において、仮に機械トラブルが生じても、汎用品の組み合わせで路面の計測がされるため、簡易に部品交換ができ、機械トラブルに対するリスクマネジメントが容易となる。更に、ガイダンス端末4により車両1の進路が案内されることで、同じ路面を無駄に何度も撮影するのを回避でき、効率的な撮影が可能となる。そして、車両1が路面を撮影する場合に、車両1が撮影区間SE1に接近すると、車両1の位置を整えたり、車両1が一定速度になるように報知されたりするため、撮影に適した車両1の走行が可能となる。
【0052】
ここで、本実施形態と特許請求の範囲に記載の文言との対応関係を説明する。本実施形態の墨出し器7が「投影部」に、「下方カメラ9」が「撮影部」に相当する。計測端末3において制御部13が撮影画像から路面の凹凸を計測する機能が「計測部」及び「算出部」に相当する。また、GNSS受信機Rが「測定部」に相当し、ガイダンス端末4において制御部14が車両1の現在位置PPと理想進路IR1~IR12とのずれを検出する機能が「検出部」に相当する。ガイダンス端末4におけるディスプレイDPやスピーカーSPが「報知部」に相当する。
【0053】
以上、本発明の実施の態様を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
【0054】
上記において、
図6に示すように直線の路面を計測する例を示したが、
図11に示すようにカーブの路面を計測することもできる。カーブの路面を計測する場合には、カーブの曲率や半径に応じて、理想進路IR13~IR20を設定すればよい。なお、
図6に示す理想進路を設定できる路面であれば、直線状やカーブ状の路面に限らず、種々の路面の凹凸を計測できる。
【0055】
なお、滑走路などの路面上においては、滑走路灯火及び誘導路灯火などの設備(車両1の走行時に障害となる障害物)が配置される。そのため、
図6に示すマップデータにおいて、障害物の位置情報を入力し、車両1の現在位置PPと障害物までの距離が一定距離以下になると、障害物の接近をスピーカーSPやディスプレイDPで報知してもよい。
【0056】
下方カメラ9が撮影した動画から切り出す静止画の枚数は、動画のフレームレートなどに応じて変更しても良いし、計測する凹凸の精度に応じて切り出す静止画の枚数を変更させてもよい。また、下方カメラ9a、9b、9cが撮影した動画から切り出した静止画については、車両1の全幅を超える撮影領域となる1枚の静止画に合成した上で、路面の凹凸を計測しても良い。また、上記では、路面のくぼみDIを計測する例について説明したが、路面にくぼみDI以外にも、路面が隆起している場合であっても、くぼみDIの場合と同様に計測することができる。なお、多数の各静止画から路面における凹凸を計測した後は、撮影対象である全路面の凹凸を示すマップなどを生成することも可能である。
【0057】
上記では、計測端末3とガイダンス端末4を異なる端末である例を説明したが、計測端末3とガイダンス端末4を1つの端末にして車両1に配置してもよい。また、計測端末3及びガイダンス端末4をクラウド上のサーバーとし、計測端末3及びガイダンス端末4の制御部13、14の処理をクラウド上で実行してもよい。
【0058】
図6に示す理想進路IR1~IR12のように、隣接する理想進路IR1~IR12は、同じ方向であっても、反対方向であってもよい。また、理想進路IR1~IR12と準備理想進路PIRを合成した進路を一筆書き状のように設定することで、効率的に撮影できる進路となる。
【0059】
上記において、上方カメラ8が撮影した静止画については、下方カメラ9が撮影した動画に不具合がある場合に、不具合箇所に対応する上方カメラ8の静止画をもとに路面の凹凸を計測しても良い。
【0060】
上記では、車両1の現在位置と理想進路IR1~IR112とのずれが一定の範囲を超えると報知する例を説明したが、ずれが大きくなるにつれて、報知内容を変更しても良い。例えば、ずれが大きくなるにつれて、警告音の回数や音を大きくしたり、表示内容を大きくしたりする等の変更を加えても良い。また、ディスプレイDPに表示されるずれとしては、車両1の現在位置PPと理想進路IR1~IR112とのずれを描画するとともに、実際にずれている距離をリアルタイムで表示しても良い。
【0061】
上記では、車両1の現在位置と準備理想進路PIRがずれても報知などはしなかったが、車両1の現在位置と準備理想進路PIRとのずれが一定の範囲を超えると、車両1の現在位置と理想進路IR1~IR112とのずれの場合と同様に報知処理をしても良い。
【0062】
上記においては、車両1が撮影準備区間SE2を走行する際に、
図6に示す撮影準備用の準備理想進路PIRをもとに車両1の走行をガイダンスする例を説明した。車両1が撮影準備区間SE2などを走行する際には、
図12に示すように、
図6のマップに車両1が通過すべき通過点P1~P12を追加してもよい。通過点P1は、第1ゴール地点G1及び第1スタート地点S1と同一直線状に位置し、第1ゴール地点G1、第1スタート地点S1、第1通過点P1の順に配置される。第2~第12通過点P2~P12についても同様である。
図12に示すマップを用いて車両1の走行をガイダンスする処理の一例が
図13に示される。以下、この処理の詳細を
図13のフローチャートをもとに説明する。具体的には、車両1が撮影準備区間SE2に到達し、第1スタート地点S1から第1ゴール地点G1の撮影を行うために車両1が第1スタート地点S1に向かうケースについて説明する。車両1が撮影準備区間SE2に到達すると、ガイダンス端末4は、GNSS受信機Rから車両1の現在位置を、例えば継続的に取得し、車両1の進行方向を算出する。また、車両1の現在位置と
図12のマップデータにおいて予め設定された第1通過点P1及び第1スタート地点S1の位置情報に基づいて第1通過点P1から第1スタート地点S1に向かう方向を(方角)を算出し、第1通過点P1から第1スタート地点S1に向かう方向を車両1が進むべき方向とする。そして、車両1の進行方向と車両1が進むべき方向が一致するか否かを判定する(S201)。例えば、車両1の進行方向と車両1が進むべき方向が平行の場合も両者が一致しているとする。車両1が進むべき方向が車両1の進行方向と一致しない場合は(S201:No)は、例えば、
図14に示すように、ディスプレイDPに車両1の進行方向を示す矢印AR(先端が車両1の現在位置PPを示す矢印AR)と、矢印ARの先端を基点に車両1が進むべき方向を示す直線DLが表示され(S202)、S201に戻る。そして、車両1の進行方向が車両1の進むべき方向に一致するまでS201とS202の処理が繰り返され(ディスプレイDP上には車両1の進行方向を示す矢印ARと直線DLが表示され)、車両1の進行方向が車両1の進むべき方向に一致すると処理を終える(ディスプレイDPから直線DLの表示を消し、車両1の進行方向を示す矢印ARのみが表示される)。そのため、撮影準備区間SE2を走行する際には、運転者はディスプレイDPを参考に車両1の向きを制御することで車両1があらぬ方向を向いてしまうのを防ぐことができる。このような車両1の向きの報知と同時に、上述のように車両1の位置が理想経路PIRからずれた場合の報知も併せてすることで、準備理想進路PIRに沿った車両1の走行が容易となる。以上のように、車両1の方向についてディスプレイDPで報知されることで、より適切な走行が可能となる。この説明では、車両1が第1通過点P1に向かう例を説明したが、車両1が第1スタート地点S1から第1ゴール地点G1に向かう際にも同様の処理をしてもよい。また、車両1の向きの報知をディスプレイDPで行う例を説明したが、スピーカーSPを用いて報知してもよい。上記では、第1通過点P1を例にして説明したが、その他の通過点P2~P12でも同様である。
【0063】
上記では、下方カメラ9として、複数(3つ)のカメラを配置する例を説明したが、4つ以上の下方カメラ9を設けても良い。上記では、墨出し器7を本体部5aに配置する例を説明したが、車両1に取り付けても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 車両 2 撮影ユニット
3 計測端末 4 ガイダンス端末
7 墨出し器 S 車両走行ガイダンスシステム
R GNSS受信機 SP スピーカー
DP ディスプレイ L ライン
IR1~11 理想進路