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特開2024-104264左官材料、塗工方法及び塗工物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104264
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】左官材料、塗工方法及び塗工物
(51)【国際特許分類】
E04F 13/02 20060101AFI20240726BHJP
C04B 26/06 20060101ALI20240726BHJP
C04B 16/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
E04F13/02 A
E04F13/02 C
E04F13/02 F
C04B26/06
C04B16/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023018750
(22)【出願日】2023-01-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月29日にウェブサイトに掲載 〔刊行物等〕 令和4年7月2日に伊勢丹プロパティ・デザインに提供 〔刊行物等〕 令和4年7月3日にウェブサイトに掲載 〔刊行物等〕 令和4年7月4日~同年7月7日に「大川夏の彩展2022」にテーブルを搬入・出展 〔刊行物等〕 令和4年7月10日に有限会社フジモト工業のショールームにサイドテーブルを展示 〔刊行物等〕 令和4年10月27日に一般社団法人MIKATAプロフェショナルズにデニム額縁のサンプルを提供
(71)【出願人】
【識別番号】522097681
【氏名又は名称】有限会社フジモト工業
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祐之
(57)【要約】
【課題】従来の左官材料と同様にして使うことができ、得られる塗工物は、表面が平滑で緻密な濃淡模様を有し、新規な意匠性を有する。そのため、内外装の壁、床、天井等の建築部位をはじめ、家具、テーブル、机、椅子等のインテリア用品に好んで適用される。
【解決手段】特定の繊維長の短繊維を特定量含む合成樹脂エマルションを主材とする左官材料を基体上にコテ塗りし、次いで、短繊維を特定量含む合成樹脂エマルションを主材とする左官材料を上塗りすることによって塗工物を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂エマルションを主材とする左官用材料、繊維長が1~30mmの短繊維および着色材料からなり、前記短繊維の固形分当たりの含有量(A)が0.1~9重量%であることを特徴とする左官材料。
【請求項2】
前記短繊維が綿、麻、レーヨンのセルロース系繊維であり、少なくとも一部が着色されていることを特徴とする請求項1記載の左官材料。
【請求項3】
前記短繊維が、織物又は編物を粉砕して得られたものであることを特徴とする請求項2記載の左官材料。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の左官材料をコテ塗りして基体への凹凸を有する下塗り層を形成する工程と、得た下塗り層の上へ合成樹脂エマルション及び着色材料を含み、かつ上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))が0.15以下であり、上塗り層の短繊維の固形分当たりの含有量(B)が1重量%未満である左官材料を1層以上コテ塗りして表面を平滑にする工程を有し、この塗装表面に濃淡模様を形成するようにしたことを特徴とする左官材料の塗工方法。
【請求項5】
下塗り層と上塗り層の間に中間層を含むことを特徴とする請求項4記載の左官材料の塗工方法。
【請求項6】
基体の上に下塗り層と上塗り層が形成された塗工物であって、前記下塗り層が、合成樹脂エマルション硬化物中に繊維長が1~30mmの短繊維および着色材料を含む左官材料硬化物であり、前記上塗り層が合成樹脂エマルジョン硬化物中に着色材料を含み、短繊維の固形分当たりの含有量(B)が1重量%未満である左官材料硬化物であり、かつ前記上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))が0.15以下であり、上塗り層とその下側に隣接する層の界面が凹凸を有し、塗工物の表面は平滑であり、かつ塗工物表面に濃淡模様を有することを特徴とする、塗工物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左官材料、前記左官材料を用いた塗工方法および前記塗工方法によって得られる塗工物に関する。詳しくは、合成樹脂エマルションを主材とする左官用材料に特定の長さの短繊維を特定量含む左官材料、前記左官材料をコテ塗りした後に上塗り層を設ける塗工方法、および前記塗工方法によって得られる表面が平滑であって濃淡模様を有する塗工物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、左官材料は建築や土木の分野において広く使われており、施工性、耐久性、耐水性および意匠性を改良するために多くの工夫、発明がなされている。例えば、左官材料中での分散性が良好で、左官工事施工後のひび割れを防止する目的で、特定の単糸繊度、繊維長、伸度および強度のポリアミド繊維からなる左官材料用補強繊維、左官材料および左官施工方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
左官材料を用いた塗工方法としては、特定の模様や化粧面を作るために塗工を多層にする方法が知られている。例えば、骨材入り下地材を調整して基体へ凹凸を有するよう塗布することにより下地層を形成する工程と、この下地層へ凹凸面がほぼ平滑になるよう、半流動性塗料を1層以上しごきながらコテ塗りして模様付けする工程を有し、このコテ塗り層が陰影もしくは濃淡模様を有する化粧面の形成方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-274903号公報
【特許文献2】特開平11-62162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1記載の先行技術には、無機左官材料に特定のポリアミド性の補強繊維を添加した左官材料および左官施工方法が記載されているが、繊維はあくまで補強のために配合されていて、意匠性を高めるためではない。また、前記特許文献2記載の先行技術には、コテ塗り層が陰影もしくは濃淡模様を有する化粧面の形成には、半流動性塗料を1層以上しごきながらコテ塗りして模様付けする工程が必要であり、コテ塗り技量のある左官職人にしか陰影もしくは濃淡模様を有する化粧面を形成することができないという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、合成樹脂エマルションを主材とする左官用材料に、着色材料および特定の繊維長の短繊維を特定量配合した左官材料を、コテ塗りした後に上塗り層を設ける塗工方法によって、前記先行技術の課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の左官材料は、合成樹脂エマルションを主材とする左官用材料、繊維長が1~30mmの短繊維および着色材料からなり、前記短繊維の固形分当たりの含有量(A)が0.1~9重量%であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の左官材料において、前記短繊維が綿、麻、レーヨンのセルロース系繊維であり、少なくとも一部が着色されていることを特徴とするものである。
【0009】
更には、本発明の左官材料において、前記短繊維が、織物又は編物を粉砕して得られたものであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の左官材料の塗工方法は、前記左官材料をコテ塗りして基体への凹凸を有する下地層を形成する工程と、得た下地層の上へ合成樹脂エマルション及び着色材料を含み、かつ上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))が0.15以下であり、上塗り層の短繊維の固形分当たりの含有量(B)が1重量%未満である左官材料を1層以上コテ塗りして表面を平滑にする工程を有し、この塗装表面に濃淡模様を形成するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
更には、本発明の左官材料の塗工方法は、下塗り層と上塗り層の間に中間層を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の塗工物は、基体の上に下塗り層と上塗り層が形成された塗工物であって、前記下塗り層が合成樹脂エマルション硬化物中に繊維長が1~30mmの短繊維および着色材料を含む左官材料硬化物であり、前記上塗り層が合成樹脂エマルジョン硬化物中に着色材料を含み、短繊維の固形分当たりの含有量(B)が1重量%未満である左官材料硬化物であり、かつ前記上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))が0.15以下であり、上塗り層とその下側に隣接する層の界面が凹凸を有し、塗工物の表面は平滑であり、かつ塗工物表面に濃淡模様を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の特定の繊維長の短繊維を含有する塗工用左官材料は、前記左官材料中の短繊維の分散性は良好で左官材料は均一であり、保存性およびコテ塗り性に優れるものであった。
本発明の左官材料の塗工方法によると、塗装表面に平滑な濃淡模様を容易に形成することができる。
本発明の塗工物は、平滑な表面を有し、かつ塗工物表面に意匠性に優れた濃淡模様を有するものであった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の左官材料は、合成樹脂エマルションを主材とする左官用材料、短繊維および着色材料からなる。
【0015】
左官用材料は、コテを駆使した塗りの技術によって、建物の壁、和室等の室内の土壁や床等を作るための材料であり、水や空気との化学反応によって固まる。左官用材料としては、代表的な漆喰、珪藻土、聚楽壁、モルタルおよびセメントモルタルが挙げられ、ポリマーを混和した材料も用いられている。
本発明の左官用材料は、合成樹脂エマルションを主材とするものであれば特に限定されず、何れのものでも使用することができる。
【0016】
合成樹脂エマルションとしては、特に制限はなく公知の市販されているものを使用することができる。具体的には、アクリル酸、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸誘導体、メタアクリル酸、メタアクリル酸2-エチルヘキシル等のメタアクリル酸誘導体、酢酸ビニル、ブタジエン、スチレンブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル、アクリルニトリル等が挙げられる。
【0017】
短繊維は、本発明の効果を発現する点で最も重要な材料であり、繊維長が1~30mmであれば短繊維の材質は特に制限はないが、左官用材料と相性が良く、短繊維の分散のし易さおよび左官用材料との混和性の点から、綿、麻、レーヨン等のセルロース繊維が好ましい。繊維長は1~30mmの範囲であるが、2~20mmの範囲が好ましく、3~15mmの範囲が更に好ましい。繊維長が1mm未満のものは、工業的に安定に作ることができない。一方、30mmを超えると左官用材料中で短繊維の凝集が起こって、均一な左官用材料を得ることができない。
【0018】
左官材料中の短繊維の固形分当たりの含有量(A)は、0.1~9重量%である。0.15~8重量%が好ましく、0.5~5重量%が更に好ましい。左官材料中の短繊維の固形分当たりの含有量が0.1重量%未満のものは、左官用材料中の短繊維の分散性は良好で、左官材料は均一であり、コテ塗り性も良好であるが、得られる塗工物は濃淡模様がなく意匠性に乏しいものであった。一方、9重量%を超えると左官材料は、短繊維は分散しており均一であったが、コテ塗り性は良くなかった。また、得られた塗工物は、短繊維の凝集物のようなものが見られ意匠性は良くないものであった。
【0019】
短繊維の繊度や強度等の繊維物性は特に制限はない。短繊維は少なくとも一部が着色されている方が、本発明の塗工物の意匠性を高くする点から好ましい。
更に、織物や編物から粉砕して得られた短繊維の方が、エコロジーの点から好ましく、アパレル製造時の裁断くずや縫製くずおよび廃棄された服、ズボンやスカート等の織物や編物から得られた短繊維の方が特に好ましいい。
【0020】
着色材料としては、特に制限はなく、染料および顔料を使用することができるが、顔料は粒度が小さいものが好ましい。色も特に制限はなく、好みの色を適宜選定することができる。
【0021】
続いて、本発明の左官材料の塗工方法について説明する。先ずは、合成樹脂エマルションを主材とする左官用材料、短繊維および着色材料からなる左官材料を基体上にコテ塗りした後に一日以上乾燥して、凹凸を有する下塗り層を形成する。その後、得た下塗り層の表面を研磨してから、得た下塗り層の上に合成樹脂エマルション及び着色材料を含み、短繊維含有量が1重量%未満である左官材料をコテ塗りして上塗り層を形成する。その後、一日以上乾燥した後に、上塗り層の表面を研磨する。更に必要に応じて前記と同様にして上塗り層を形成し、乾燥後に研磨して、平滑な表面を得ることができる。
【0022】
上塗り層に使用する左官材料中の短繊維の固形分当たりの含有量(B)は、1重量%未満である。短繊維の固形分当たりの含有量が1重量%以上になると、下塗り層で得られた濃淡模様が損なわれる場合があるため、好ましくない。
【0023】
上塗り層中の短繊維の重量部(D)は、下塗り層に含まれる短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))が0.15以下であり、((D)/(C))は0.1以下が好ましい。((D)/(C))が0.15を超えると、下塗り層で得られた濃淡模様が損なわれる場合があり、意匠性の点から好ましくない。
【0024】
また、必要に応じて下塗り層と上塗り層の間に中間層を設けることができる。具体的には、下塗り層の上に左官材料をコテ塗りした後に一日以上乾燥して、中間層を形成した後に中間層の表面を研磨する。次いで、前記上塗り層を形成する。中間層に使用する左官材料は、短繊維を含んでいても含んでいなくても構わない。
【0025】
前記左官材料を用いて前記塗工方法によって得られる塗工物は、平滑な表面を有し、かつ塗工物表面には濃淡模様を有している。
【0026】
係る塗工物は、従来の左官材料の用途である内外装の壁、床、天井等の建築部位に適用されるが、本発明の塗工物は意匠性に優れることから、家具、テーブル、机、椅子、額縁等のインテリア用品に好んで適用される。
【実施例0027】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【実施例の評価基準】
【0028】
以下、表に実施例と比較例の諸物性結果を示すが、その判定の評価基準は次のようにした。
評価基準:◎=非常に優れている、○=優れている、△=やや悪い、×=悪い
【0029】
実施例1
樹脂固形分約50重量%のアクリル樹脂エマルション50重量部、ひまわりオイル20重量部、石英30重量部を混合した左官材に、ジーンズから粉砕され約5mmにカットされた綿の青色の短繊維1重量部およびインディゴ染料(浦上染料店)0.1重量部を加えて撹拌して均一にした塗工用左官材料を調整した。調整した塗工用左官材料中の短繊維の分散性は良好で左官材料は均一であり、塗工用左官材料中の固形分当たりの短繊維含有量は0.99重量%であった。
【0030】
これを基体上にコテ塗りした後に1日乾燥させて下塗り層を得た。塗工した塗工用左官材料のコテ塗り性は非常に良好であった。得た下塗り層の塗布量は2kg/m2であった。
【0031】
次いで、得た下塗り層をランダムサンダーに装着した木用120番手のサンドペーパーを用いて研磨した後に、上記で用いた樹脂固形分約50重量%のアクリル樹脂エマルション50重量部、ひまわりオイル20重量部を混合した左官材に、インディゴ染料0.4重量部を加えて撹拌して均一にして調整した塗工用左官材料を、上記で作製した下塗り層の上にコテ塗りした後に1日乾燥させた上塗り層1を得た。得た上塗り層1の塗布量は0.5kg/m2であった。
【0032】
続いて、得た上塗り層1を前記と同様にして研磨した後に、上記で上塗り層1に用いた塗工用左官材料を、上記で作製した上塗り層1の上にコテ塗りした後に1日乾燥させた上塗り層2を得た。得た上塗り層2の塗布量は0.2kg/m2であった。その後、得た上塗り層2を同様にして研磨した後に、水性コーティング剤エコピコ(オルトレマテリアル社)を2回塗工して、塗工物を得た。
【0033】
得た塗工物の前記上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と、前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))は0であった。前記塗工物は短繊維に由来すると思われる緻密で均一な濃淡模様があって意匠性に非常に優れるものであった。試験結果を表1に示す。
【0034】
実施例2
実施例1で使用したインディゴ染料および綿の短繊維の使用重量を変更する以外は、実施例1と同様にして下塗り層を得た。塗工用左官材料の分散性は良好で均一であり、短繊維含有量(固形分当たり)は0.2重量%であった。塗工した塗工用左官材料のコテ塗り性は非常に良好であった。
【0035】
次いで、上記で用いた樹脂固形分約50重量%のアクリル樹脂エマルション50重量部、ひまわりオイル20重量部、石英30重量部を混合した左官材に、実施例1で使用した綿の短繊維1重量部およびインディゴ染料0.4重量部を加えて撹拌して均一にした塗工用左官材料を調整した。上記で得た下塗り層を前記と同様にして研磨した後に、前記の研磨した下塗り層の上に調整した塗工用左官材料をコテ塗りした後に1日乾燥させて中間層を得た。塗工した中間層用左官材料のコテ塗り性は非常に良好であった。得た中間層の塗布量は0.5kg/m2であった。
【0036】
続いて、実施例1を同様にして上塗り層1を得た後に、水性コーティング剤エコピコを2回塗工して、塗工物を得た。得た塗工物の前記上塗り層の短繊維の重量部(D)と、前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))は0であった。前記塗工物は均一な濃淡模様があって意匠性は良好であった。試験結果を表1に示す。
【0037】
実施例3
実施例で使用したアクリル樹脂エマルションを樹脂固形分約50重量%のスチレンブタジエン樹脂エマルションに、インディゴ染料をマイン青色顔料((株)ヤブ原製)に変え、さらに実施例1のひまわりオイル、石英及び綿の短繊維の使用重量を変更する以外は、実施例1と同様にして塗工物を得た。
【0038】
下塗り層に使用した塗工用左官材料中の短繊維の分散性は良好であり、左官材料は均一であった。コテ塗り性は非常に良好であり、短繊維含有量(固形分当たり)は4.16重量%であった。また、塗工物の模様は緻密で均一な濃淡状であり、意匠性は非常に優れるものであった。試験結果を表1に示す。
【0039】
実施例4
実施例1で使用したひまわりオイル、石英及び綿の短繊維の重量を変更する以外は、実施例1と同様にして塗工物を得た。
【0040】
下塗り層に使用した塗工用左官材料中の短繊維の分散性は良好であり、左官材料は均一であり、コテ塗り性は非常に良好であり、短繊維含有量(固形分当たり)は8.59重量%であった。また、塗工物の模様は均一な濃淡状であり、塗工物の意匠性は良好なものであった。試験結果を表1に示す。
【0041】
実施例5
実施例1と同様にして下塗り層を得た後に、実施例2で使用した中間層用の塗工用左官材料の短繊維を除く以外は、実施例2と同様にして中間層を得た。塗工した中間層用左官材料のコテ塗り性は非常に良好であった。次いで、実施例1と同様にして塗工物を得た。塗工物の模様は均一な濃淡状であり、塗工物の意匠性は非常に優れたものであった。試験結果を表1に示す。
【0042】
比較例1
実施例1で下塗り層に使用した塗工用左官材料の綿の短繊維の使用重量を変更する以外は、実施例1と同様にして塗工物を得た。
【0043】
下塗り層に使用した塗工用左官材料の分散性は良好で均一であり、コテ塗り性は非常に良好であり、短繊維含有量(固形分当たり)は0.06重量%であった。得た塗工物は、染料の濃淡がなく意匠性に欠けるものであった。試験結果を表1に示す。
【0044】
比較例2
実施例2で使用した綿の短繊維の使用重量を変更する以外は、実施例2と同様にして塗工物を得た。
【0045】
下塗り層に使用した塗工用左官材料は、短繊維は分散しており均一であったが、コテ塗り性は良くなかった。短繊維含有量(固形分当たり)は9.08重量%であった。得た塗工物は、短繊維の凝集物のようなものが見られ意匠性は良くないものであった。試験結果を表1に示す。
【0046】
比較例3
実施例1で使用した綿の短繊維の使用重量を変更する以外は、実施例1と同様にして塗工物を得た。
【0047】
下塗り層に使用した塗工用左官材料は、短繊維は分散しており均一であったが、左官材料を均一に延ばすことができずコテ塗り性は不良であった。短繊維含有量(固形分当たり)は10.7重量%であった。得た塗工物は、短繊維の凝集物のようなものが見られ、また模様には斑が見られ意匠性は悪かった。試験結果を表1に示す。
【0048】
実施例6
実施例1と同様にして下塗り層を得た後に、実施例1で使用した上塗り層1用の塗工用左官材料に約5mmにカットされた綿の短繊維0.1重量部を加えた左官材料を前記下塗り層の上にコテ塗りした。上塗り層1の短繊維含有量(固形分当たり)は0.14重量%であった。その後は実施例1と同様にして塗工物を得た。得た塗工物の前記上塗り層1の短繊維の重量部(D)と、前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))は0.042であった。前記塗工物は実施例1と同様な緻密で均一な濃淡模様があって意匠性は非常に優れるものであった。試験結果を表2に示す。
【0049】
実施例7
実施例1と同様にして下塗り層を得た後に、実施例2で使用した中間層用の塗工用左官材料の短繊維量を0.3重量部に変更する以外は、実施例2と同様にして中間層を得た。塗工した中間層用左官材料のコテ塗り性は非常に良好であった。次いで、実施例1で使用した上塗り層1および上塗り層2用の左官材料の短繊維量を変更する以外は、実施例1と同様にして塗工物を得た。上塗り層1の短繊維含有量(固形分当たり)は0.42重量%であった。上塗り層2の短繊維含有量(固形分当たり)は0.14重量%であった。得た塗工物の前記下塗り層の短繊維の重量部(C)は0.026kg/m2、前記上塗り層の短繊維の合計重量部(D)は0.004kg/m2であり、得た塗工物の前記上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と、前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))は0.142であった。前記塗工物は均一な濃淡模様があって意匠性は良好であった。試験結果を表2に示す。
【0050】
比較例4
実施例1と同様にして下塗り層を得た。得た下塗り層の上には、上塗り層を設けることなく、実施例1と同様にして得た下塗り層を研磨した後に、水性コーティング剤エコピコを2回塗工して、塗工物を得た。得た塗工物は、濃淡模様がなく意匠性は乏しいものであった。試験結果を表2に示す。
【0051】
比較例5
実施例1の下塗り層を設けることなく、基体上に実施例1で使用した上塗り層1の左官材料を塗工し、それ以降は実施例1と同様にして塗工物を得た。得た塗工物は、濃淡模様がなく意匠性は悪いものであった。試験結果を表2に示す。
【0052】
比較例6
実施例7で中間層に使用した左官材料の綿の短繊維の使用重量を0.4重量部に変更し、上塗り層1に使用した左官材料の綿の短繊維の使用重量を0.4重量部に変更し、上塗り層2に使用した左官材料の綿の短繊維を除いた以外は、実施例7と同様にして塗工物を得た。塗工した中間層用左官材料のコテ塗り性は非常に良好であった。上塗り層1の短繊維含有量(固形分当たり)は0.57重量%であった。得た塗工物の前記上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と、前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))は0.166であった。得た塗工物は、模様にやや斑が見られ意匠性は乏しいものであった。試験結果を表2に示す。
【0053】
比較例7
比較例6で中間層に使用した左官材料の綿の短繊維の使用重量を0.6重量部に変更し、上塗り層1に使用した左官材料の綿の短繊維の使用重量を0.6重量部に変更した以外は、比較例6と同様にして塗工物を得た。塗工した中間層用左官材料のコテ塗り性は非常に良好であった。上塗り層1の短繊維含有量(固形分当たり)は0.85重量%であった。得た塗工物の前記上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と、前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))は0.248であった。得た塗工物は、模様にやや斑が見られ意匠性は乏しいものであった。試験結果を表2に示す。
【0054】
比較例8
実施例1で上塗り層1に使用した左官材料の綿の短繊維の使用重量を変更する以外は、実施例1と同様にして塗工物を得た。上塗り層1の短繊維含有量(固形分当たり)は1.12重量%であった。得た塗工物の前記上塗り層の短繊維の合計重量部(D)と、前記下塗り層の短繊維の重量部(C)の比((D)/(C))は0.329であった。得た塗工物は、模様に斑が見られ意匠性は悪いものであった。試験結果を表2に示す。
【0055】
実施例8~10
実施例1で使用した下塗り層用の約5mmにカットされた綿の青色の短繊維を、繊維種、繊維長および着色の色を変えて、実施例1と同様にして塗工物を得た。何れの塗工用左官材料も前記材料中の短繊維の分散性は良好で、左官材料は均一であった。左官材料のコテ塗り性および得た塗工物の意匠性の結果を表3に示す。
【0056】
比較例9
青色に染色した綿から0.5mmの短繊維を製造しようと試みたが、工業用の装置では安定にカットされた短繊維を得ることはできなかった。試験結果を表3に示す。
【0057】
比較例10
実施例1で使用した下塗り層用の約5mmにカットされた綿の青色の短繊維を、繊維長を35mmに変更する以外は実施例1と同様にして塗工物を得た。繊維長が大きいためか前記材料中の短繊維の分散性は不良で、左官材料は不均一であった。そのため、左官材料のコテ塗り性は悪く、また得た塗工物は模様に斑が見られ意匠性は悪いものであった。試験結果を表3に示す。
【0058】
【0059】
【0060】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の左官材料は、従来の左官材料と同様にして使うことができ、コテ塗りが良い。本発明の塗工方法によって得られる塗工物は、表面が平滑で意匠性に優れた緻密な濃淡模様を有する。そのため、内外装の壁、床、天井等の建築部位をはじめ、家具、テーブル、机、椅子等のインテリア用品に好んで適用される。