(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104271
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】金属インク、金属インクの製造方法、焼結体の製造方法、焼結体、及び洗浄液
(51)【国際特許分類】
B22F 9/00 20060101AFI20240726BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240726BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124812
(22)【出願日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2023008196
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植杉 隆二
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA08
4K017CA07
4K017CA08
4K017DA01
4K018AA03
4K018BA02
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC29
4K018BD04
4K018KA32
(57)【要約】
【課題】金属インクとして用いた場合に、金属粒子の凝集を抑制しつつ、焼結性を向上させるとともに、可視光を適切に透過する焼結体を得ることができ、洗浄液として用いた場合に、洗浄性を向上させて、詰まりを抑制又は解消する。
【解決手段】金属インク10は、金属粒子12と、溶媒16と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコール14と、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤17とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と、
溶媒と、
OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、
水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤と、
を含む、
金属インク。
【請求項2】
大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒を更に含む、請求項1に記載の金属インク。
【請求項3】
前記添加剤は、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上10%以下含まれる、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項4】
前記リン酸化合物の分子量が、90以上200以下である、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項5】
前記添加剤は、リン酸、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸二水素2-アミノエチル、亜リン酸ジイソプロピル、及び亜リン酸ジメチルの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の金属インク。
【請求項6】
前記多価アルコールは、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上20%以下含まれる、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項7】
前記多価アルコールは、融点が30℃以上である、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項8】
前記有機溶媒は、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上30%以下含まれる、請求項2に記載の金属インク。
【請求項9】
前記有機溶媒は、グリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒の少なくとも1つを含む、請求項2又は請求項8に記載の金属インク。
【請求項10】
前記金属粒子は、前記金属インクの全量に対して、質量比で1%以上50%以下含まれる、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項11】
前記金属粒子は、銅である、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項12】
前記溶媒は、水を含む、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項13】
前記添加剤に含まれる前記リン酸化合物よりも分子量が高いリン酸エステル化合物を、分散剤として更に含む、請求項12に記載の金属インク。
【請求項14】
前記溶媒は、低級アルコールを含む、請求項12に記載の金属インク。
【請求項15】
前記溶媒は、OH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である高沸点溶媒を含む、請求項14に記載の金属インク。
【請求項16】
前記金属粒子は、銅であり、前記溶媒は、水を含み、前記多価アルコールは、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能であって、且つ、融点が30℃以上である多価アルコールの少なくとも1つを含み、前記添加剤は、前記リン酸化合物の分子量が、90以上200以下である、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項17】
金属粒子と、溶媒と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤と、を混合して、前記金属粒子と前記溶媒と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクを製造する、
金属インクの製造方法。
【請求項18】
前記金属粒子と、前記溶媒としての水と、前記多価アルコールと、前記添加剤とを混合して、前記金属粒子と水と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第1金属インクを製造する、請求項17に記載の金属インクの製造方法。
【請求項19】
大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒も混合して、前記有機溶媒も含む前記第1金属インクを製造する、請求項18に記載の金属インクの製造方法。
【請求項20】
前記第1金属インクと、前記溶媒としての低級アルコールとを混合して、前記金属粒子と水と前記低級アルコールと前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第2金属インクを製造する、請求項17又は請求項18に記載の金属インクの製造方法。
【請求項21】
前記第2金属インクと、OH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である前記溶媒としての高沸点溶媒とを混合して、前記金属粒子と水と前記低級アルコールと前記高沸点溶媒と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第3金属インクを製造する、請求項19に記載の金属インクの製造方法。
【請求項22】
請求項1又は請求項2に記載の金属インクを加熱して焼結体を形成する、
焼結体の製造方法。
【請求項23】
請求項1又は請求項2に記載の金属インクを用いて作られた、
焼結体。
【請求項24】
金属粒子と、
溶媒と、
OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、
水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤と、
を含む、
洗浄液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属インク、金属インクの製造方法、焼結体の製造方法、焼結体、及び洗浄液に関する。
【背景技術】
【0002】
部材に金属層を形成する例として、特許文献1には、部材にはんだ層を形成する旨が記載されている。また例えば特許文献2には、銀ペーストが用いて金属層を形成する旨が記載されている。銀ペーストは、比較的低温条件で焼結することができ、かつ、焼結後に形成される接合層の融点は銀と同等となる。このため、この銀ペーストの焼結体からなる金属層は、耐熱性に優れており、高温環境下や大電流用途においても安定して使用することが可能となる。一方で材料コストの観点から、例えば特許文献3に示すように、銅ペーストが用いられる場合もある。
【0003】
また、このように金属層を形成する場合においては、銅ペーストなどの金属ペーストではなく、金属粒子が液体中に分散した金属インクが用いられることもある。金属インクは、例えばノズルから噴射させることができるため、製造面で有利となる場合がある。
【0004】
さらに、金属層を形成するときに使用されるインクジェット装置などでは、長期間の放置や高温・低湿の環境に曝されることにより、装置内部の配管、流路や吐出口などでインクが乾燥、沈降、凝集や固化等の不具合が生じる。これに対して、たとえば、特許文献4に示すように、有機溶剤や界面活性剤などを含む洗浄液や、特許文献5に示すように、高アルカリ溶液や界面活性剤溶液の洗浄液を用いた洗浄方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-172378号公報
【特許文献2】特許第6531547号公報
【特許文献3】特開2019-67515号公報
【特許文献4】特開平4-115954号公報
【特許文献5】特開平6-8471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような金属インクは、金属粒子が凝集することにより、焼結体の緻密性の低下など、製造物の特性の低下を招くおそれがある。また、上記の洗浄液、洗浄方法のように、洗浄液に高粘度材料が含まれる場合には、洗浄後の残留物が凝集高粘度化して不具合を起こしやすいといった問題がある。また、洗浄液が高アルカリ溶液であると、アルカリが装置部材を腐食するといった問題がある。
従って、金属インクは金属粒子の凝集を抑制することが求められている。また、金属インクの焼結性を向上されることも求められている。また、得られた焼結体が可視光を適切に透過することも求められている。さらに、洗浄性を向上させて、詰まりを抑制又は解消可能な洗浄液も求められている。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、金属インクとして用いた場合に、金属粒子の凝集を抑制しつつ、焼結性を向上させるとともに、可視光を適切に透過する焼結体を得ることができ、洗浄液として用いた場合に、洗浄性を向上させて、詰まりを抑制又は解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の金属インクは、金属粒子と、溶媒と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤と、を含む。
【0009】
本開示の金属インクは、大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒を更に含むことが好ましい。
【0010】
前記添加剤は、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上10%以下含まれることが好ましい。
【0011】
前記リン酸化合物の分子量が、90以上200以下であることが好ましい。
【0012】
前記添加剤は、リン酸、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸二水素2-アミノエチル、亜リン酸ジイソプロピル、及び亜リン酸ジメチルの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0013】
前記多価アルコールは、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上20%以下含まれることが好ましい。
【0014】
前記多価アルコールは、融点が30℃以上であることが好ましい。
【0015】
前記有機溶媒は、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上30%以下含まれることが好ましい。
【0016】
前記有機溶媒は、グリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0017】
前記金属粒子は、前記金属インクの全量に対して、質量比で1%以上50%以下含まれることが好ましい。
【0018】
前記金属粒子は、銅であることが好ましい。
【0019】
前記溶媒は、水を含むことが好ましい。
【0020】
前記添加剤に含まれる前記リン酸化合物よりも分子量が高いリン酸エステル化合物を、分散剤として更に含むことが好ましい。
【0021】
前記溶媒は、低級アルコールを含むことが好ましい。
【0022】
前記溶媒は、OH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である高沸点溶媒を含むことが好ましい。
【0023】
前記金属粒子は、銅であり、前記溶媒は、水を含み、前記多価アルコールは、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能であって、且つ、融点が30℃以上である多価アルコールの少なくとも1つを含み、前記添加剤は、前記リン酸化合物の分子量が、90以上200以下であることが好ましい。
【0024】
本開示の金属インクの製造方法は、金属粒子と、溶媒と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤と、を混合して、前記金属粒子と前記溶媒と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクを製造する。
【0025】
本開示の金属インクの製造方法は、前記金属粒子と、前記溶媒としての水と、前記多価アルコールと、前記添加剤とを混合して、前記金属粒子と水と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第1金属インクを製造することが好ましい。
【0026】
本開示の金属インクの製造方法は、大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒も混合して、前記有機溶媒も含む前記第1金属インクを製造することが好ましい。
【0027】
本開示の金属インクの製造方法は、前記第1金属インクと、前記溶媒としての低級アルコールとを混合して、前記金属粒子と水と前記低級アルコールと前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第2金属インクを製造することが好ましい。
【0028】
本開示の金属インクの製造方法は、前記第2金属インクと、OH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である前記溶媒としての高沸点溶媒とを混合して、前記金属粒子と水と前記低級アルコールと前記高沸点溶媒と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第3金属インクを製造することが好ましい。
【0029】
本開示の焼結体の製造方法は、前記金属インクを加熱して焼結体を形成することが好ましい。
【0030】
本開示の焼結体は、前記金属インクを用いて作られることが好ましい。
【0031】
本開示の洗浄液は、金属粒子と、溶媒と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤と、を含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、金属インクとして用いた場合に、金属粒子の凝集を抑制しつつ、焼結性を向上させるとともに、可視光を適切に透過する焼結体を得ることができ、洗浄液として用いた場合に、洗浄性を向上させて、詰まりを抑制又は解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る金属インクの模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る金属インクの製造方法を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図4】
図4は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図5】
図5は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図6】
図6は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図7】
図7は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図8】
図8は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図9】
図9は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図10】
図10は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図11】
図11は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図12】
図12は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図13】
図13は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図14】
図14は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図15】
図15は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図16】
図16は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図17】
図17は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図18】
図18は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図19】
図19は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図20】
図20は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図21】
図21は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図22】
図22は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図23】
図23は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図24】
図24は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図25】
図25は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図26】
図26は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図27】
図27は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図28】
図28は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図29】
図29は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図30】
図30は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図31】
図31は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図32】
図32は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図33】
図33は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図34】
図34は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図35】
図35は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図36】
図36は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図37】
図37は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図38】
図38は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図39】
図39は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図40】
図40は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図41】
図41は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図42】
図42は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図43】
図43は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図44】
図44は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図45】
図45は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図46】
図46は、各例における洗浄液の成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図47】
図47は、各例における洗浄液の成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図48】
図48は、各例における洗浄液の成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図49】
図49は、各例における洗浄液の成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【
図50】
図50は、各例における洗浄液の成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0035】
図1は、本実施形態に係る金属インクの模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る金属インク10は、金属粒子12と、多価アルコール14と、溶媒16と、添加剤17と、有機溶媒18とを含む。金属インク10は、液体である溶媒16中に金属粒子12が溶解せずに、固体状の金属粒子12が溶媒16中に存在しているインク状の物質を指す。金属インク10においては、溶媒16中に金属粒子12が沈降していてもよいし、金属粒子12が分散していてもよい。なお、金属インク10は、有機溶媒18を含まなくてよい。
【0036】
金属インク10は、焼結体(金属層)の形成(例えば配線の形成)に用いられる。例えば、金属インク10をノズルから基材(樹脂、金属等のフィルムや樹脂、金属、セラミック等もしくはこれら複合された基板)へ噴射・乾燥後、更に、不活性ガス雰囲気や還元性ガス雰囲気の下で加熱することで、金属粒子12を焼結もしくは溶融させつつ他の成分を除去し、その後冷却することで、金属粒子12の金属成分で形成される焼結体(金属層)が基材上に形成される。また、金属インク10をノズルから基材(樹脂、金属等のフィルムや樹脂、金属、セラミック等もしくはこれら複合された基板)へ噴射・乾燥後、更に、酸化性ガス雰囲気の下で加熱することで、金属粒子12を酸化・焼結させつつ他の成分を除去し、その後冷却することで、金属粒子12が酸化した金属酸化物成分で形成される焼結体(金属酸化物層)が基材上に形成される。金属インク10により形成される焼結体の用途は任意でよいが、例えば金属粒子12の金属成分で形成される配線や、金属粒子12の金属酸化物成分で形成される、例えば亜酸化銅などの層などが挙げられる。ただし、金属インク10の用途はこれらに限られず任意であってよい。
【0037】
(金属粒子)
金属粒子12は、金属の粒子である。本実施形態では、金属粒子12は、銅の粒子であることが好ましいといえる。
【0038】
金属粒子12は、粒径(粒度分布(個数)のPeak値)が10nm以上1000nm以下であることが好ましい。金属インク10中の金属粒子12の粒径は、粒子径測定装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノシリーズ ZSP)を用いて、金属粒子12の屈折率及び、インク中の溶媒の屈折率、粘度値等の物性値を設定し、測定温度を物性値の温度条件に合わせて、20℃や25℃にて測定を行い、金属粒子12の粒度分布(個数)のPeak値として求めることができる。尚、粒度分布の測定において、金属インク10中の金属粒子12の濃度が高いことにより、十分な測定品質が得られない場合は、金属インク10中の主な溶媒(水、低級アルコールや高沸点溶媒)で10~1000倍程度に希釈・分散させた後に測定してもよい。
【0039】
粒径が10nm以下であると、粒径に反比例して比表面積が大きくなるため、表面酸化の影響が大きくなり、金属粒子12を用いて得られた塗膜の焼結性が低下する恐れがある。一方、金属粒子12の粒径が1000nm以上であると、粒径が大きくなりすぎるため、溶媒中に分散したインクにおいて、金属粒子12が沈降分離し易くなる恐れがある。金属粒子12の粒径は、30nm以上500nm以下の範囲内にあることが好ましく、30nm以上300nm以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0040】
金属粒子12のBET比表面積は、比表面積測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ社製、QUANTACHROME AUTOSORB-iQ2)にて、測定ガスとして窒素又はクリプトンガスを用いて、金属粒子12のガスの吸着量を測定することにより求めることができる。金属粒子12のBET比表面積は、2.0m2/g以上8.0m2/g以下の範囲内にあることが好ましく、3.5m2/g以上8.0m2/g以下の範囲内にあることがより好ましく、4.0m2/g以上8.0m2/g以下の範囲内にあることが特に好ましい。また、金属粒子12の形状は、球状に限らず、針状、扁平な板状でもよい。
【0041】
金属粒子12は、表面が、有機物で一部または全面を被覆されていることが好ましい。有機物で被覆されていることにより、金属粒子12の酸化が抑制され、金属粒子12の酸化による焼結性の低下がさらに起こりにくくなる。なお、金属粒子12を被覆する有機物は、多価アルコール14や溶媒16によって形成されるものでなく、多価アルコール14や溶媒16由来のものでないといえる。また、金属粒子12を被覆する有機物は、金属の酸化により形成される酸化金属(酸化銅)ではないともいえる。
【0042】
金属粒子12が有機物で被覆されていることは、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、金属粒子12の表面を分析することに確認することができる。例えば金属粒子12が銅の場合、金属粒子12は、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、表面を分析することによって検出されるCu+イオンの検出量に対するC3H3O3
-イオンの検出量の比(C3H3O3
-/Cu+比)が0.001以上であることが好ましい。C3H3O3
-/Cu+比は、0.05以上0.2以下の範囲内にあることがさらに好ましい。なお、本分析における金属粒子12の表面とは、金属粒子12から有機物を除去した際の金属粒子12の表面でなく、被覆している有機物を含んだ金属粒子12の表面(すなわち有機物の表面)を指す。
【0043】
金属粒子12は、銅である場合、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、表面を分析することによってC3H4O2
-イオンやC5以上のイオンが検出されてもよい。Cu+イオンの検出量に対するC3H4O2
-イオンの検出量の比(C3H4O2
-/Cu+比)は0.001以上であることが好ましい。また、Cu+イオンの検出量に対するC5以上のイオンの検出量の比(C5以上のイオン/Cu+比)は0.005未満であることが好ましい。
【0044】
飛行時間型二次イオン質量分析法において検出されるC3H3O3
-イオンとC3H4O2
-イオンとC5以上のイオンは、金属粒子12の表面を被覆している有機物に由来する。このためC3H3O3
-/Cu+比とC3H4O2
-/Cu+比のそれぞれが0.001以上であると、金属粒子12の表面が酸化しにくくなり、かつ金属粒子12が凝集しにくくなる。また、C3H3O3
-/Cu+比及びC3H4O2
-/Cu+比が0.2以下であると、金属粒子12の焼結性を過度に低下させずに金属粒子12の酸化と凝集を抑制でき、さらに加熱時における有機物の分解ガスの発生を抑えることができるので、ボイドが少ない接合層を形成することができる。金属粒子12の保存中の耐酸化性をより一層向上し、かつ低温度での焼結性をより一層向上させるために、C3H3O3
-/Cu+比及びC3H4O2
-/Cu+比は0.08以上0.16以下の範囲内にあることが好ましい。また、C5以上のイオン/Cu+比が0.005倍以上であると、粒子表面に脱離温度が比較的高い有機物が多く存在するため、結果として焼結性が十分に発現せず強固な接合層が得られにくい。C5以上のイオン/Cu+比は0.003倍未満であることが好ましい。
【0045】
金属粒子12を被覆する有機物は、金属粒子12を製造する時に用いられるカルボン酸金属に由来するカルボン酸であることが好ましい。カルボン酸由来の有機物で被覆された金属粒子12の製造方法は後述する。金属粒子12の有機物の被覆量は、金属粒子100質量%に対して0.5質量%以上2.0質量%以下の範囲内にあることが好ましく、0.8質量%以上1.8質量%以下の範囲内にあることがより好ましく、0.8質量%以上1.5質量%以下の範囲内にあることがさらに好ましい。有機物の被覆量が0.5質量%以上であることによって、金属粒子12を有機物により均一に被覆することができ、金属粒子12の酸化をより確実に抑制することができる。また、有機物の被覆量が2.0質量%以下であることによって、加熱による有機物の分解によって発生するガスにより、金属粒子の焼結体(接合層)にボイドが発生することを抑制することができる。有機物の被覆量は、市販の装置を用いて測定することができる。例えば、差動型示差熱天秤TG8120-SL(RIGAKU社製)を用いて、被覆量を測定できる。この場合例えば、試料は、凍結乾燥により水分を除去した金属粒子を用いる。金属粒子の酸化を抑制するため窒素(G2グレード)ガス中で測定し、昇温速度は10℃/minとし、250℃から300℃まで加熱したときの重量減少率を、有機物の被覆量と定義できる。すなわち、被覆量=(測定後の試料重量)/(測定前の試料重量)×100(wt%)である。測定は同一ロットの金属粒子で各々3回行い、相加平均値を被覆量としてよい。
【0046】
金属粒子12は、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、300℃の温度で30分加熱したときに、有機物の50質量%以上が分解することが好ましい。カルボン酸由来の有機物は、分解時に二酸化炭素ガス、窒素ガス、アセトンの蒸発ガス及び水蒸気を発生する。
【0047】
(多価アルコール)
多価アルコール14は、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能なアルコールである。また、多価アルコール14は、融点が30℃以上であることが好ましい。低級アルコールとは、C(炭素)の数が5個以下のアルコールを指す。
【0048】
多価アルコール14は、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1-フェニル-1,2-エタンジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、リビトール、レソルシノール、(ピロ)カテコール、5-メチルレソルシノール、ピロガロール、1,2,3-シクロヘキサントリオール、及び1,3,5-シクロヘキサントリオールのうちの、少なくとも1つであってよい。
【0049】
多価アルコール14は、非電解質であり、溶媒16に溶解した状態で(多価アルコール14の分子が溶媒16中に分散した状態で)、金属インク10中に存在している。ただし、多価アルコール14の金属インク10中での存在形態は任意であり、溶媒16に溶解しない状態であってもよい。
【0050】
多価アルコール14が金属インク10に含まれることで、金属粒子12の周囲に多価アルコール14が配位して、金属粒子12の凝集を適切に抑制できる。すなわち、本実施形態においては、多価アルコール14が、金属粒子12の周囲に配位していることが好ましいといえる。
【0051】
(溶媒)
溶媒16は、金属粒子12を分散させるための液体(媒体)である。溶媒16の詳細については後述する。
【0052】
(添加剤)
添加剤17は、リン酸化合物を含む。添加剤17として用いるリン酸化合物は、水溶性であり、溶媒16に溶解した状態で(リン酸化合物の分子が溶媒16中に分散した状態で)、金属インク10中に存在している。リン酸化合物を含む添加剤17を金属インク10に含ませることで、金属粒子12を適切に焼結させつつ、可視光の適切な透過性を有する焼結体を得ることができる。
【0053】
添加剤17として用いるリン酸化合物は、分子量が90以上200以下であることが好ましく、100以上200以下であることがより好ましく、140以上190以下であることがさらに好ましい。リン酸化合物の分子量がこの範囲となることで、溶媒16に適切に溶解しつつ、金属粒子12の凝集を生じさせることなく、また、焼成における有機成分の残存を軽減もしくは無くすことができるため、金属粒子同士の焼結性を阻害することなく、より好適に向上できる。なお、ここで分子量は、例えば蒸気圧降下法,沸点上昇法,凝固点(融点)降下法(ラスト法),等温蒸留法(バージャー法),質量分析法などによって測定できる。また、ここでの分子量は、水和物である場合でも、水の分子量を除いた分子量の値を指し、以降でも同様である。
【0054】
添加剤17として用いるリン酸化合物は、1気圧、20℃の水への溶解度が、100gの水あたりで、10g以上であることが好ましく、20g以上であることがより好ましく、50g以上であることが更に好ましい。溶解度がこの範囲となることで、溶媒16として水を用いた場合に適切に溶解して、焼結性をより好適に向上できる。
【0055】
添加剤17に用いるリン酸化合物は任意のものであってよいが、添加剤17に用いるリン酸化合物としては、例えば、リン酸、リン酸一ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)、リン酸二ナトリウム(リン酸水素二ナトリウム)、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム(リン酸二水素カリウム)、リン酸二カリウム(リン酸水素二カリウム)、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸二水素2-アミノエチル(O-ホスホリルエタノールアミン)、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジメチルなどが挙げられる。添加剤17として、これらのうちの1種を用いてよいし、2種以上を用いてもよい。
【0056】
(有機溶媒)
有機溶媒18は、多価アルコール14及び溶媒16とは異なる成分の有機溶媒である。有機溶媒18は、大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒である。有機溶媒18は、沸点が200℃以上であることがより好ましい。ここでの混和可能とは、有機溶媒18が、あらゆる比率で水に混ぜ合せ可能(すなわち、お互い任意の濃度で完全に溶解可能)であることを指している。本実施形態では、有機溶媒18は、溶媒16と混和可能であることが好ましい。
【0057】
有機溶媒18は、グリコールエーテル又は非プロトン性極性溶媒であることが好ましい。さらに言えば、有機溶媒18は、グリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒の両方を含んでいてよく、言い換えれば、グリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒の少なくとも1つを含むことが好ましいといえる。
有機溶媒18が含むグリコールエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、及びジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。有機溶媒18がグリコールエーテルを含む場合には、これらの列挙したものから選択された少なくとも1つを含んでよい。
有機溶媒18が含む非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、2-ピロリドン、及び炭酸プロピレンが挙げられる。有機溶媒18が非プロトン性極性溶媒を含む場合には、これらの列挙したものから選択された少なくとも1つを含んでよい。
【0058】
(不純物)
金属インク10は、以上で挙げた成分以外に、不可避的不純物を含んでいてもよい。不可避的不純物としては、例えば、以上で挙げた成分が、光や熱などによって成分自身もしくは他の成分や酸素などと、分解・重合・付加や酸化・還元などの反応を生じることで、生成した物質などが挙げられる。
【0059】
(金属インク)
金属インク10は、金属粒子12の含有量が、金属インク10の全体に対して、質量比で、1%以上50%以下であることが好ましく、5%以上50%以下であることがより好ましく、5%以上30%以下であることがさらに好ましい。金属粒子12の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、金属インク10の流動性の低下を抑制できるため、例えばノズルによる噴射性を向上させるなど、製造面でも有利となる。
【0060】
金属インク10は、多価アルコール14の含有量が、金属インク10の全体に対して、質量比で、0.01%以上20%以下であることが好ましい。多価アルコール14の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12を適切に分散させつつ、金属粒子12の濃度が低くなり過ぎることを抑制できる。
【0061】
金属インク10は、溶媒16の含有量が、金属インク10の全体に対して、質量比で、50%以上99%以下であることが好ましく、50%以上95%以下であることがより好ましく、60%以上95%以下であることがさらに好ましい。溶媒16の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、金属インク10の流動性の低下を抑制できるため、例えばノズルによる噴射性を向上させるなど、製造面でも有利となる。
【0062】
金属インク10は、添加剤17の含有量が、金属インク10の全体に対して、質量比で、0.01%以上10%以下であることが好ましく、0.1%以上10%以下であることがより好ましく、0.1%以上5%以下であることがさらに好ましい。添加剤17の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、金属粒子12をより好適に焼結できる。
【0063】
金属インク10は、有機溶媒18の含有量が、金属インク10の全体に対して、質量比で、0.01%以上30%以下であることが好ましく、0.1%以上30%以下であることがさらに好ましい。有機溶媒18の含有量がこの範囲となることで、金属インク10を長期間放置した場合でも、防黴性が十分となり、長期間適切に保存できる。
【0064】
金属インク10は、イオン化した金属粒子12(金属粒子12を構成する金属のイオン)を含んでよい。すなわち、金属インク10の液体成分中に、イオン化した金属粒子12が含まれていてもよい。イオン化した金属粒子12は、銅イオンであってよいといえる。
【0065】
以上説明した金属インク10は、溶媒16の成分にバリエーションを持たせることができる。以下、溶媒16の成分が異なるそれぞれの金属インク10について説明する。
【0066】
(第1金属インク)
溶媒16の成分が異なるそれぞれの金属インク10のうちの1つを、第1金属インク10Aとする。第1金属インク10Aは、溶媒16が水である。第1金属インク10Aは、溶媒16である水に多価アルコール14、添加剤17及び有機溶媒18が溶解しつつ、金属粒子12が混合されたものとなる。すなわち、第1金属インク10Aは、多価アルコール14、添加剤17及び有機溶媒18の水溶液に、金属粒子12が含まれたものとなる。なお、第1金属インク10Aは、有機溶媒18が含まれていなくてもよく、この場合、第1金属インク10Aの製造工程においては、有機溶媒18を添加しなくてもよい。
【0067】
第1金属インク10Aは、金属粒子12の含有量が、第1金属インク10Aの全体に対して、質量比で、1%以上50%以下であることが好ましく、5%以上50%以下であることがより好ましく、5%以上30%以下であることがさらに好ましい。金属粒子12の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、第1金属インク10Aの流動性の低下を抑制できるため、例えばノズルによる噴射性を向上させるなど、製造面でも有利となる。
【0068】
第1金属インク10Aは、多価アルコール14の含有量が、第1金属インク10Aの全体に対して、質量比で、0.1%以上20%以下であることが好ましく、0.5%以上20%以下であることがより好ましく、1%以上20%以下であることがさらに好ましい。多価アルコール14の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12を適切に分散させつつ、金属粒子12の濃度が低くなり過ぎることを抑制できる。
【0069】
第1金属インク10Aは、添加剤17の含有量が、第1金属インク10Aの全体に対して、質量比で、0.1%以上10%以下であることが好ましく、0.5%以上10%以下であることがより好ましく、1%以上5%以下であることがさらに好ましい。添加剤17の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、金属粒子12をより好適に焼結できる。
【0070】
第1金属インク10Aは、有機溶媒18の含有量が、第1金属インク10Aの全体に対して、質量比で、0.5%以上30%以下であることが好ましく、1%以上30%以下であることがより好ましく、2%以上30%以下であることがさらに好ましい。有機溶媒18の含有量がこの範囲となることで、長期間適切に保存できる。
【0071】
本実施形態では、第1金属インク10Aは、不可避的不純物を除き、金属粒子12、多価アルコール14、水である溶媒16、添加剤17及び有機溶媒18以外の物質を含まないことが好ましい。ただしそれに限られず、第1金属インク10Aは、金属粒子12、多価アルコール14、水である溶媒16、添加剤17及び有機溶媒18以外の添加剤(分散剤、密着性付与剤、レオロジー調整剤、防錆剤、沈降防止剤等)を含むものであってもよい。
【0072】
例えば、第1金属インク10Aは、金属粒子12、多価アルコール14、水である溶媒16、添加剤17及び有機溶媒18以外の成分である分散剤を含んでもよい。分散剤としては、例えば、カチオン系分散剤、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性分散剤等が挙げられ、中でも、アニオン系分散剤として、カルボン酸系分散剤、スルホン酸系分散剤、リン酸系分散剤が挙げられ、特にリン酸系分散剤として、リン酸エステル化合物が好適に用いられる。分散剤として用いるリン酸エステル化合物は、添加剤17として用いられるリン酸化合物よりも分子量が高いことが好ましい。分散剤として用いるリン酸エステル化合物の分子量としては、200以上3500以下であることが好ましく、300以上3000以下であることがより好ましく、400以上2500以下であることがさらに好ましい。分子量が200以上となることで十分な疎水基を有するため、水への金属粒子の良好な分散性が得られ、分子量が3500以下となることで狙いの加熱温度(200~350℃程度)での分解、反応が可能となるため、金属粒子同士の焼結等を妨げる恐れがない。
更に、分散剤に用いるリン酸エステル化合物は、水への溶解性が良好であれば、モノ・ジ・トリエステルや中和塩などいずれであっても良く、モノ・ジ・トリエステルの場合、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値が6以上20以下であることが好ましく、8以上20以下であることがより好ましく、10以上20以下であることがさらに好ましい。
分散剤に用いるリン酸エステル化合物は、任意のものであってよいが、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(脂肪族)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンフェニル(芳香族)エーテルリン酸エステルやアルキル(脂肪族)リン酸エステル、フェニル(芳香族)リン酸エステルやその中和塩などが挙げられる。分散剤として、これらのうちの1種を用いてよいし、2種以上を用いてもよい。
【0073】
第1金属インク10Aに、分散剤としてのリン酸エステル化合物が含まれる場合、第1金属インク10Aは、リン酸エステル化合物の含有量が、第1金属インク10Aの全体に対して、質量比で、0.001%以上2%以下であることが好ましく、0.001%以上1%以下であることがより好ましく、0.01%以上1%以下であることがさらに好ましい。リン酸エステル化合物の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12同士の凝集をより好適に抑制できる。
【0074】
(第2金属インク)
溶媒16の成分が異なるそれぞれの金属インク10のうちの1つを、第2金属インク10Bとする。第2金属インク10Bは、溶媒16として低級アルコールを含み、さらに言えば、溶媒16として、低級アルコール以外を含んでもよく、本実施形態では、水を含んでよい。第2金属インク10Bは、溶媒16に多価アルコール14、添加剤17及び有機溶媒18が溶解しつつ、金属粒子12が混合されたものとなる。すなわち例えば、第2金属インク10Bは、多価アルコール14、添加剤17、有機溶媒18及び低級アルコールの水溶液に、金属粒子12が含まれたものとなる。なお、第2金属インク10Bは、有機溶媒18が含まれていなくてもよく、この場合、第2金属インク10Bの製造工程においては、有機溶媒18を添加しなくてもよい。
【0075】
ここでの低級アルコールとは、C(炭素)の数が5個以下のアルコールを指す。さらに言えば、溶媒16に用いる低級アルコールは、OH基が1つのアルコールを指すことが好ましく、C(炭素)の数が1個以上4個以下のアルコールであることが好ましい。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec-ブチルアルコールなどが挙げられる。尚、低級アルコールとして、これらのうちの1種を用いてよいし、2種以上を用いてもよい。
【0076】
第2金属インク10Bは、金属粒子12の含有量が、第2金属インク10Bの全体に対して、質量比で、1%以上50%以下であることが好ましく、5%以上50%以下であることがより好ましく、5%以上30%以下であることがさらに好ましい。金属粒子12の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、第2金属インク10Bの流動性の低下を抑制できるため、例えばノズルによる噴射性を向上させるなど、製造面でも有利となる。
【0077】
第2金属インク10Bは、多価アルコール14の含有量が、第2金属インク10Bの全体に対して、質量比で、0.01%以上10%以下であることが好ましく、0.1%以上10%以下であることがより好ましく、0.1%以上5%以下であることがさらに好ましい。多価アルコール14の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12を適切に分散させつつ、金属粒子12の濃度が低くなり過ぎることを抑制できる。
【0078】
第2金属インク10Bは、低級アルコールの含有量が、第2金属インク10Bの全体に対して、質量比で、5%以上99%以下であることが好ましく、5%以上95%以下であることがより好ましく、10%以上95%以下であることがさらに好ましい。低級アルコールの含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、第2金属インク10Bの流動性の低下を抑制できるため、例えばノズルによる噴射性を向上させるなど、製造面でも有利となる。なお、低級アルコールとして複数種類のアルコールを含む場合には、ここでの低級アルコールの含有量とは、それぞれの低級アルコールの合計含有量を指す。他の成分についても同様である。
【0079】
第2金属インク10Bは、添加剤17の含有量が、第2金属インク10Bの全体に対して、質量比で、0.05%以上5%以下であることが好ましく、0.1%以上5%以下であることがより好ましく、0.1%以上2%以下であることがさらに好ましい。添加剤17の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、金属粒子12をより好適に焼結できる。
【0080】
第2金属インク10Bは、有機溶媒18の含有量が、第2金属インク10Bの全体に対して、質量比で、0.01%以上30%以下であることが好ましく、0.1%以上20%以下であることがより好ましく、0.5%以上20%以下であることがさらに好ましい。有機溶媒18の含有量がこの範囲となることで、長期間適切に保存できる。
【0081】
本実施形態では、第2金属インク10Bは、不可避的不純物を除き、金属粒子12、多価アルコール14、溶媒16(ここでは水及び低級アルコール)、添加剤17及び有機溶媒18以外の物質を含まなくてよい。ただしそれに限られず、第2金属インク10Bは、金属粒子12、多価アルコール14、溶媒16、添加剤17及び有機溶媒18以外の添加剤(分散剤、密着性付与剤、レオロジー調整剤、防錆剤、沈降防止剤等)を含むものであってもよい。
【0082】
例えば、第2金属インク10Bは、金属粒子12、多価アルコール14、溶媒16、添加剤17及び有機溶媒18以外の成分である分散剤を含んでもよい。分散剤としては、例えば、カチオン系分散剤、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性分散剤等が挙げられ、中でも、アニオン系分散剤として、カルボン酸系分散剤、スルホン酸系分散剤、リン酸系分散剤が挙げられ、特にリン酸系分散剤として、リン酸エステル化合物が好適に用いられる。分散剤として用いるリン酸エステル化合物は、添加剤17として用いられるリン酸化合物よりも分子量が高いことが好ましい。分散剤として用いるリン酸エステル化合物の分子量としては、200以上3500以下であることが好ましく、300以上3000以下であることがより好ましく、400以上2500以下であることがさらに好ましい。分子量が200以上となることで十分な疎水基を有するため、低級アルコール中への金属粒子の良好な分散性が得られ、分子量が3500以下となることで狙いの加熱温度(200~350℃程度)での分解、反応が可能となるため、金属粒子同士の焼結等を妨げる恐れがない。
更に、分散剤に用いるリン酸エステル化合物は、低級アルコールへの溶解性が良好であれば、モノ・ジ・トリエステルや中和塩などいずれであっても良く、モノ・ジ・トリエステルの場合、HLB値が4以上15以下であることが好ましく、5以上15以下であることがより好ましく、5以上13以下であることがさらに好ましい。
分散剤に用いるリン酸エステル化合物は、任意のものであってよいが、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(脂肪族)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンフェニル(芳香族)エーテルリン酸エステルやアルキル(脂肪族)リン酸エステル、フェニル(芳香族)リン酸エステルやその中和塩などが挙げられる。分散剤として、これらのうちの1種を用いてよいし、2種以上を用いてもよい。
【0083】
第2金属インク10Bに、分散剤としてのリン酸エステル化合物が含まれる場合、第2金属インク10Bは、リン酸エステル化合物の含有量が、第2金属インク10Bの全体に対して、質量比で、0.001%以上2%以下であることが好ましく、0.001%以上1%以下であることがより好ましく、0.01%以上1%以下であることがさらに好ましい。リン酸エステル化合物の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12同士の凝集をより好適に抑制できる。
【0084】
低級アルコールを主溶媒とする金属インクは、低級アルコールにより金属粒子が凝集するおそれがある。それに対し、第2金属インク10Bは、多価アルコール14が混合されることで、例えば金属粒子12の周囲に多価アルコール14が配位して、金属粒子12同士の凝集を抑制できる。
【0085】
(第3金属インク)
溶媒16の成分が異なるそれぞれの金属インク10のうちの1つを、第3金属インク10Cとする。第3金属インク10Cは、溶媒16として高沸点溶媒を含み、さらに言えば、溶媒16のうちの主要成分である主溶媒が高沸点溶媒である。例えば、第3金属インク10Cは、溶媒16に多価アルコール14、添加剤17及び有機溶媒18が溶解しつつ、金属粒子12が含まれたものとなる。なお、第3金属インク10Cは、溶媒16として、主溶媒である高沸点溶媒以外を含んでもよい。第3金属インク10Cは、水及び低級アルコールの少なくとも1つを含んでよく、本実施形態では水及び低級アルコールの両方を含む。なお、第3金属インク10Cは、有機溶媒18が含まれていなくてもよく、この場合、第3金属インク10Cの製造工程においては、有機溶媒18を添加しなくてもよい。
【0086】
高沸点溶媒は、OH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である。水に難溶又は不溶な高沸点溶媒とは、消防法における危険物の規制に関する政令、別表3において、非水溶性液体に分類される溶媒であることが好ましい。高沸点溶媒は、いわゆる有機溶媒であることが好ましく、例えば、α-テルピネオール、及び、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールのうちの、少なくとも1つであってよい。なお、いずれの溶媒も、異性体を含んでよい。
【0087】
第3金属インク10Cは、金属粒子12の含有量が、第3金属インク10Cの全体に対して、質量比で、1%以上50%以下であることが好ましく、5%以上50%以下であることがより好ましく、5%以上30%以下であることがさらに好ましい。金属粒子12の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、第2金属インク10Bの流動性の低下を抑制できるため、例えばノズルによる噴射性を向上させるなど、製造面でも有利となる。
【0088】
第3金属インク10Cは、多価アルコール14の含有量が、第3金属インク10Cの全体に対して、質量比で、0.01%以上5%以下であることが好ましく、0.01%以上5%以下であることがより好ましく、0.01%以上3%以下であることがさらに好ましい。多価アルコール14の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12を適切に分散させつつ、金属粒子12の濃度が低くなり過ぎることを抑制できる。
【0089】
第3金属インク10Cは、高沸点溶媒の含有量が、第3金属インク10Cの全体に対して、質量比で、50%以上99%以下であることが好ましく、50%以上95%以下であることがより好ましく、60%以上95%以下であることがさらに好ましい。高沸点溶媒の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、第3金属インク10Cの流動性の低下を抑制できるため、例えばノズルによる噴射性を向上させるなど、製造面でも有利となる。
【0090】
第3金属インク10Cは、添加剤17の含有量が、第3金属インク10Cの全体に対して、質量比で、0.01%以上2%以下であることが好ましく、0.1%以上2%以下であることがより好ましく、0.1%以上1%以下であることがさらに好ましい。添加剤17の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、金属粒子12をより好適に焼結できる。
【0091】
第3金属インク10Cは、有機溶媒18の含有量が、第3金属インク10Cの全体に対して、質量比で、0.01%以上30%以下であることが好ましく、0.01%以上10%以下であることがより好ましく、0.1%以上10%以下であることがさらに好ましい。有機溶媒18の含有量がこの範囲となることで、長期間適切に保存できる。
【0092】
第3金属インク10Cは、金属粒子12、多価アルコール14、溶媒16、添加剤17及び有機溶媒18以外の成分である分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては、例えば、カチオン系分散剤、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性分散剤等が挙げられ、中でも、アニオン系分散剤として、カルボン酸系分散剤、スルホン酸系分散剤、リン酸系分散剤が挙げられ、特にリン酸系分散剤として、リン酸エステル化合物が好適に用いられる。分散剤として用いるリン酸エステル化合物は、添加剤17として用いられるリン酸化合物よりも分子量が高いことが好ましい。分散剤として用いるリン酸エステル化合物の分子量としては、200以上3500以下であることが好ましく、300以上3000以下であることがより好ましく、400以上2500以下であることがさらに好ましい。分子量が200以上となることで十分な疎水基を有するため、高沸点溶媒中への金属粒子の良好な分散性が得られ、分子量が3500以下となることで狙いの加熱温度(200~350℃程度)での分解、反応が可能となるため、金属粒子同士の焼結等を妨げる恐れがない。
更に、分散剤に用いるリン酸エステル化合物は、低級アルコールへの溶解性が良好であれば、モノ・ジ・トリエステルや中和塩などいずれであっても良く、モノ・ジ・トリエステルの場合、HLB値が2以上15以下であることが好ましく、3以上15以下であることがより好ましく、4以上13以下であることがさらに好ましい。
分散剤に用いるリン酸エステル化合物は任意のものであってよいが、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(脂肪族)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンフェニル(芳香族)エーテルリン酸エステルやアルキル(脂肪族)リン酸エステル、フェニル(芳香族)リン酸エステルやポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルとして、ラウレス-nリン酸、オレス-nリン酸、ステアレス-nリン酸(n=2~10)などやアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。分散剤として、これらのうちの1種を用いてよいし、2種以上を用いてもよい。
【0093】
第3金属インク10Cは、分散剤の含有量が、第3金属インク10Cの全体に対して、質量比で、0.01%以上5%以下であることが好ましく、0.1%以上5%以下であることがより好ましく、0.1%以上3%以下であることがさらに好ましい。分散剤の含有量がこの範囲となることで、金属粒子12の凝集を適切に抑制できる。
【0094】
本実施形態では、第3金属インク10Cは、不可避的不純物を除き、金属粒子12、多価アルコール14、溶媒16(ここでは水、低級アルコール及び高沸点溶媒)、添加剤17、有機溶媒18及び分散剤以外の物質を含まないことが好ましい。ただしそれに限られず、第3金属インク10Cは、分散剤を含まなくてもよいし、金属粒子12、多価アルコール14、溶媒16、添加剤17、有機溶媒18及び分散剤以外の添加剤(密着性付与剤、レオロジー調整剤、防錆剤、沈降防止剤等)を含むものであってもよい。
【0095】
高沸点溶媒を主溶媒とする金属インクは、高沸点溶媒により、金属粒子12が凝集するおそれがある。それに対し、第3金属インク10Cは、多価アルコール14が混合されることで、例えば金属粒子12の周囲に多価アルコール14が配位して、金属粒子12同士の凝集を抑制できる。
【0096】
(金属インクの製造方法)
次に、以上説明した金属インク10の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る金属インクの製造方法を説明するフローチャートである。
【0097】
(金属粒子の製造)
図2に示すように、本製造方法においては、カルボン酸金属水分散液と還元剤とを混合して、金属粒子12を生成する(ステップS10)。具体的には、先ず、カルボン酸金属(例えばカルボン酸銅)の水分散液を用意し、このカルボン酸金属水分散液にpH調整剤を加えてpHを2.0以上7.5以下に調整する。次に、不活性ガス雰囲気下でこのpH調整したカルボン酸金属水分散液に、還元剤として、金属イオンを還元できる1.0倍当量分以上1.2倍当量分以下のヒドラジン化合物を添加して混合する。得られた混合液を、不活性ガス雰囲気下で、得られた混合液を60℃以上80℃以下の温度に加熱し1.5時間以上2.5時間以下保持する。これにより、カルボン酸金属から溶出した金属イオンを還元して金属粒子12を生成させると共に、この金属粒子12の表面に金属酸由来の有機物を形成させる。なお、ここでのカルボン酸としては、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、フタル酸、安息香酸およびこれらの塩などが用いられる。また、還元剤としては、ヒドラジン化合物を用いたが、それに限られず、ヒドラジン、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸及びこれらの塩などを用いてよい。
【0098】
(金属粒子:銅粒子の製造)
以下では、金属粒子12が銅粒子である場合の金属粒子12の製造方法について説明する。カルボン酸銅の水分散液は、蒸留水、イオン交換水のような純水に、粉末状のカルボン酸金属を25質量%以上40質量%以下の濃度となるように添加し、撹拌羽を用いて撹拌し、均一に分散させることによって調製できる。pH調整剤としては、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素アンモニウム、クエン酸などが挙げられる。この中でマイルドにpH調整しやすいことからクエン酸三アンモニウムが好ましい。カルボン酸銅水分散液のpHを2.0以上とするのは、カルボン酸銅から溶出した銅イオンの溶出速度を速くして、銅粒子の生成を速やかに進行させ、目標とする微細な銅粒子を得られるようにするためである。また、pHを7.5以下とするのは、溶出した金属イオンが水酸化銅(II)となることを抑制して、銅粒子の収率を高くするためである。また、pHを7.5以下とすることによって、ヒドラジン化合物の還元力が過度に高くなることを抑制でき、目標とする銅粒子が得られやすくなる。カルボン酸銅水分散液のpHは4以上6以下の範囲内に調整することが好ましい。
【0099】
ヒドラジン化合物によるカルボン酸銅の還元は不活性ガス雰囲気下で行われる。液中に溶出した銅イオンの酸化を防止するためである。不活性ガスの例としては、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。ヒドラジン化合物は、酸性下でカルボン酸銅を還元するときに、還元反応後に残渣を生じないこと、安全性が比較的高いこと及び取扱いが容易であることなどの利点がある。このヒドラジン化合物としては、ヒドラジン一水和物、無水ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどが挙げられる。これらのヒドラジン化合物の中では、硫黄や塩素といった不純物となり得る成分を含まないヒドラジン一水和物、無水ヒドラジンが好ましい。
【0100】
一般的にpH7未満の酸性液中で生成した銅は溶解してしまう。しかし本実施形態では、pH7未満の酸性液に還元剤であるヒドラジン化合物を添加混合し、得られた混合液中に銅粒子を生成させる。このため、カルボン酸銅から生成したカルボン酸由来の成分が銅粒子の表面を速やかに被覆するので、銅粒の溶解が抑制される。pHを調整した後のカルボン酸銅の水分散液は、温度50℃以上70℃以下にして、還元反応を進行しやすくすることが好ましい。
【0101】
不活性ガス雰囲気下でヒドラジン化合物を混合した混合液を60℃以上80℃以下の温度に加熱し1.5時間以上2.5時間以下に保持するのは、銅粒子を生成させると共に、生成した銅粒子の表面に有機物を形成し被覆するためである。不活性ガス雰囲気下で加熱保持するのは、生成した銅粒子の酸化を防止するためである。出発原料であるカルボン酸銅は通常35質量%程度の銅成分を含む。この程度の銅成分を含むカルボン酸水分散液に還元剤であるヒドラジン化合物を添加して、上記の温度で昇温加熱し、上記の時間で保持することにより、銅粒子の生成と、銅粒子の表面での有機物の生成とがバランスよく進行するので、銅粒子100質量%に対して、有機物の被覆量が0.5質量%以上2.0質量%以下の範囲内にある銅粒子を得ることができる。加熱温度が60℃未満で保持時間が1.5時間未満では、カルボン酸金属が完全に還元せずに、銅粒子の生成速度が遅くなりすぎて、銅粒子を被覆する有機物の量が過剰となるおそれがある。また加熱温度が80℃を超えかつ保持時間が2.5時間を超えると、銅粒子の生成速度が速くなりすぎて、銅粒子を被覆する有機物の量が少なりすぎるおそれがある。好ましい加熱温度は65℃以上75℃以下であり、好ましい保持時間は2時間以上2.5時間以下である。
【0102】
混合液で生成された銅粒子を、不活性ガス雰囲気下で混合液から、純水等を用いて洗浄、脱塩等を行ってもよい。さらに、例えば遠心分離機を用いて、脱水することにより一定の割合の固液比(例えば、固液比:50/50[質量%])とした金属粒子12を含む水スラリーを得ることが出来る。また、場合によっては固液分離して、凍結乾燥法、減圧乾燥法で乾燥することにより、表面が有機物で被覆された銅粒子を得ることができる。この銅粒子は、表面が有機物で被覆されているため、大気中に保存しても酸化しにくくなる。
【0103】
(第1金属インクの製造)
次に、金属粒子12と、溶媒16としての水と、多価アルコール14と、添加剤17と、有機溶媒18とを混合して、第1金属インク10Aを生成する(ステップS12)。ここでは、金属粒子12や多価アルコール14や添加剤17や有機溶媒18の含有量が、上述で説明した数値範囲となるように、金属粒子12と多価アルコール14と添加剤17と有機溶媒18と水とを混合して、第1金属インク10Aを製造することが好ましい。なお、金属粒子12と多価アルコール14と添加剤17と有機溶媒18と水との混合方法は任意である。例えば、金属粒子12を含む水スラリーに、多価アルコール14と添加剤17と有機溶媒18と水とを含む多価アルコール14及び有機溶媒18の水溶液を混合してもよいし、水が含まれない金属粒子12に、多価アルコール14、添加剤17及び有機溶媒18の水溶液を混合してもよい。また、必要に応じて、異物や金属粒子12の凝集した粒子を除去するために、所定の目開きのフィルター等でろ過してもよい。なお、このようなろ過は、この後の金属インクの製造工程のいずれ段階で行ってもよい。
【0104】
(第2金属インクの製造)
次に、第1金属インク10Aと溶媒16としての低級アルコールとを混合して、第2金属インク10Bを生成する(ステップS14)。ここでは、金属粒子12や多価アルコール14や添加剤17や低級アルコールや有機溶媒18の含有量が、上述で説明した数値範囲となるように、第1金属インク10Aと低級アルコールとを混合して、第2金属インク10Bを製造することが好ましい。なお、第1金属インク10Aと低級アルコールの混合方法は任意である。例えば、ステップS12で得られた第1金属インク10Aを所定時間(例えば1日程度)静置もしくは所定の条件で遠心分離した後、一部の上澄み液を除去して、上澄み液が除去された第1金属インク10Aに対して、低級アルコールを添加してよい。また、ステップS12を経ることなく、金属粒子12と、溶媒16としての水及び低級アルコールと、多価アルコール14と、添加剤17と、有機溶媒18とを混合して、第2金属インク10Bを製造してもよい。
【0105】
(第3金属インクの製造)
次に、第2金属インク10Bと溶媒16としての高沸点溶媒と分散剤とを混合して、第3金属インク10Cを生成する(ステップS16)。ここでは、金属粒子12や多価アルコール14や添加剤17や高沸点溶媒や分散剤や有機溶媒18の含有量が、上述で説明した数値範囲となるように、第2金属インク10Bと高沸点溶媒と分散剤とを混合して、第3金属インク10Cを製造することが好ましい。なお、第2金属インク10Bと高沸点溶媒と分散剤の混合方法は任意である。例えば、ステップS14で得られた第2金属インク10Bを所定時間(例えば1日程度)静置もしくは所定の条件で遠心分離した後、一部の上澄み液を除去して、上澄み液が除去された第2金属インク10Bに対して、高沸点溶媒を添加してもよい。また、分散剤の添加は必須ではない。
また、第3金属インク10Cから、更に、上述で説明した数値範囲となるように、溶媒(水、低級アルコール、高沸点溶媒等)を除去もしくは添加してもよい。
【0106】
このようにして生成された第3金属インク10Cは、金属インク10として使用される。なお、以上の説明では、第1金属インク10Aを用いて第2金属インク10Bを生成し、第2金属インク10Bを用いて第3金属インク10Cを生成していた。すなわち、第1金属インク10A及び第2金属インク10Bは、第3金属インク10Cを製造するための中間物質であった。ただし、第1金属インク10A及び第2金属インク10Bは、中間物質であることに限られず、第1金属インク10A及び第2金属インク10Bそのものを、金属インク10として使用してもよい。
【0107】
なお、以上説明した金属粒子12及び金属インク10の製造方法は、一例であり、任意の方法で、金属粒子12や金属インク10を製造してよい。
【0108】
(洗浄液)
以上説明した金属インク10は、焼結体の原料として用いるものである。例えば、金属インク10を種々の塗布、パターニング装置内部の流路を通じてノズルから吐出、噴射等させて、金属インク10の塗膜、塗布パターンや成形体を得る。これらを加熱することで、金属インク10を焼結させて焼結膜、焼結パターンや焼結体を得る。このように金属インク10を吐出、噴射等する装置内部の流路やノズルは、例えば長時間噴射を停止していた場合に、金属インク10に含まれる金属粒子12の沈降や金属インク10に含まれる溶媒成分の揮発による乾燥等により流れが悪くなってしまったり、最悪の場合は詰まってしまうおそれがある。このような流路やノズルの詰まりを抑制、解消するためには、洗浄液により流路やノズル内に沈降、乾燥した成分を再分散させたり、溶解することなどが有効である。この場合、洗浄液により沈降、乾燥した固形成分を再分散させることが望ましい。
【0109】
本発明者は、鋭意研究の結果、上述で説明した金属インク10そのものを洗浄液として用いることで、流路やノズルの詰まりを好適に抑制、解消できることを見出した。
すなわち、本実施形態における洗浄液は、金属粒子12と、溶媒14と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコール16と、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤17と、を含むものである。洗浄液の好適な成分は、上述で説明した金属インク10と同様であるため、説明を省略する。例えば、洗浄液としては、上述で説明した第1金属インク10A、第2金属インク10B、又は第3金属インク10Cを用いてよい。
【0110】
ただし、洗浄液の金属粒子12の含有量は、上述で説明した金属インク10の金属粒子12の含有量よりも、少ないことが好ましい。洗浄液に含まれる金属粒子12の含有量は、洗浄液の全体に対して、0.5質量%以上5質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下が更に好ましい。
【0111】
この場合、内部に上述の金属インク10が貯留された流路やノズルの内部に、上述の洗浄液を供給して、洗浄液をノズルから噴射させる。このような洗浄液を用いて流路やノズルを洗浄することで、ノズル内に残留している金属粒子12による流路やノズルの詰まりを、好適に抑制、解消できる。従って、本実施形態に係る金属インク10を洗浄液として用いることで、詰まりを抑制又は解消して、焼結体を適切に得ることが可能となる。
【0112】
(洗浄液の他の例)
洗浄液としては、上述のように、金属インク10と同成分のものを用いることが好ましいが、それに限られない。例えば、金属インク10Aであれば水のみを含むものを、金属インク10Bであれば、水、低級アルコールを含むものを、また、金属インク10Cであれば、低級アルコール及び水に難溶又は不溶な液体である高沸点溶媒を含むものを洗浄液として用いてもよい。この場合、上述の金属インク10A~Cが貯留された流路やノズルの内部に、上述の洗浄液を供給して、ノズルから噴射させる。これにより、上述の洗浄液と共に、流路やノズル内に残留している金属粒子12が再分散されることによりノズルから噴射されて、流路やノズルの詰まりを好適に抑制、解消できる。更に、金属インク10Aであれば水のみを含むものを、金属インク10Bであれば、水、低級アルコールを含むものを、また、金属インク10Cであれば、低級アルコール及び水に難溶又は不溶な液体である高沸点溶媒を含む洗浄液では流路やノズルに金属粒子12を残すことがないので、好ましいと言える。
【0113】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る金属インク10は、金属粒子12と、溶媒16と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコール14と、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤17とを含む。ここで、金属粒子が溶媒中に分散する金属インクは、金属粒子が凝集するおそれがある。金属粒子が凝集した場合、焼結体の緻密性の低下など、製造物の特性の低下を招くおそれがある。それに対し、本実施形態に係る金属インク10は、多価アルコール14を含有するため、多価アルコール14により、金属粒子12の凝集を抑制することができる。本実施形態に係る金属インク10によると、金属粒子12の凝集を抑制できるため、製造物の特性の低下を抑制して、適切な焼結体を得ることができる。また例えば、金属インク10をノズルで噴射する場合には、金属粒子12の凝集を抑制することで、ノズルの詰まりなどの製造不具合についても抑制できる。また、本実施形態に係る金属インク10は、リン酸化合物を含む添加剤17を含むため、金属インク10を加熱して金属インク10中の金属粒子12の焼結体を製造する際に、その焼結体の焼結性を向上させることができる。さらに言えば、本実施形態に係る金属インク10は、リン酸化合物を含む添加剤17を含むため、可視光の適切な透過性を有する焼結体を得ることができる。そのため、本実施形態に係る金属インク10を用いて焼結した焼結体は、結晶Si太陽電池を組み合わせたタンデム型太陽電池に、適切に適用できる。ただし、金属インク10を用いて焼結した焼結体の用途は任意であってよい。
【0114】
金属インク10は、大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒18を更に含むことが好ましい。有機溶媒18を含むことで、長期間放置した場合でも、防黴性が十分となり、金属インク10を長期間適切に保存できる。
【0115】
また、添加剤17は、金属インク10の全量に対して、質量比で0.01%以上10%以下含まれることが好ましい。添加剤17の含有量をこの範囲とすることで、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を向上させることができ、可視光を適切に透過する焼結体を得ることができる。
【0116】
また、添加剤17として用いられるリン酸化合物の分子量は、90以上200以下であることが好ましい。リン酸化合物の分子量をこの範囲とすることで、溶媒16に適切に溶解しつつ、焼結性をより好適に向上できる。
【0117】
また、添加剤17は、リン酸、リン酸一ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)、リン酸二ナトリウム(リン酸水素二ナトリウム)、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム(リン酸二水素カリウム)、リン酸二カリウム(リン酸水素二カリウム)、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸二水素2-アミノエチル(O-ホスホリルエタノールアミン)、亜リン酸ジイソプロピル、及び亜リン酸ジメチルの少なくとも1つを含むことが好ましい。このような添加剤17を用いることで、焼結性をより好適に向上でき、可視光を適切に透過する焼結体を得ることができる。
【0118】
また、多価アルコール14は、金属インク10の全量に対して、質量比で0.01%以上20%以下含まれることが好ましい。これにより、金属粒子12を適切に分散させつつ、金属粒子12の濃度が低くなり過ぎることを抑制できる。
【0119】
また、多価アルコール14は、融点が30℃以上であることが好ましい。これにより、金属粒子12を適切に分散させつつ、金属粒子12の濃度が低くなり過ぎることを抑制できる。
【0120】
また、有機溶媒18は、金属インク10の全量に対して、質量比で0.01%以上30%以下含まれることが好ましい。これにより、金属インク10を長期間放置した場合でも、防黴性が十分となり、長期間適切に保存できる。
【0121】
また、有機溶媒18は、グリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒の少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、金属インク10を長期間放置した場合でも、防黴性が十分となり、長期間適切に保存できる。
【0122】
また、金属粒子12は、金属インク10の全量に対して、質量比で1%以上50%以下含まれることが好ましい。これにより、金属粒子12の濃度を十分に保ちつつ、金属インク10の流動性の低下を抑制できる。
【0123】
また、金属粒子12は、銅であることが好ましい。本実施形態によると、銅の焼結体を適切に製造できる。
【0124】
また、溶媒16は、水を含むことが好ましい。本実施形態によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を向上させることができ、可視光を適切に透過する焼結体を得ることができる。
【0125】
また、溶媒16は、低級アルコールを含むことが好ましい。本実施形態によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を向上させることができ、可視光を適切に透過する焼結体を得ることができる。
【0126】
また、金属インク10は、添加剤17に含まれるリン酸化合物よりも分子量が高いリン酸エステル化合物を、分散剤として更に含むことが好ましい。本実施形態によると、金属粒子12同士の凝集を好適に抑制できる。より詳しくは、金属インク10Aや10Bにおいて乾燥時に、水溶性の多価アルコール14が存在すると、水や低級アルコールなどの溶媒16が揮発していき、多価アルコール14の含有比率が高くなってしまい、膜中の金属粒子12の分散低下するおそれがある。それに対して、分子量の高いリン酸化合物の分散剤を添加することにより、乾燥間際でも分散性を維持することが可能となる。
【0127】
また、溶媒16は、OH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である高沸点溶媒を含むことが好ましい。本実施形態によると、焼結性をより適切に向上できる。
【0128】
また、金属粒子12は、銅であり、溶媒16は、水を含み、多価アルコール14は、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能であって、且つ、融点が30℃以上である多価アルコールの少なくとも1つを含み、添加剤17は、分子量が、90以上200以下であることが好ましい。本実施形態によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を向上させることができ、可視光を適切に透過する焼結体を得ることができる。
【0129】
また、本開示に係る金属インク10の製造方法は、金属粒子12と、溶媒16と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコール14と、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤17と、を混合して、金属粒子12と溶媒16と多価アルコール14と添加剤17とを含む金属インク10を製造する。本開示によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を好適に向上可能な金属インク10を製造でき、また、可視光の適切な透過性を有する焼結体を得ることもできる。
【0130】
また、本開示に係る金属インク10の製造方法は、金属粒子12と、溶媒16である水と、多価アルコール14と、添加剤17を混合して、金属粒子12と水と多価アルコール14と添加剤17とを含む金属インクである第1金属インク10Aを製造することが好ましい。本開示によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を好適に向上可能な第1金属インク10Aを製造できる。
【0131】
また、本開示に係る金属インク10の製造方法は、大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒18も混合して、有機溶媒18も含む第1金属インク10Aを製造することが好ましい。本開示によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を好適に向上可能な第1金属インク10Aを製造できる。また、長期間放置した場合でも、防黴性が十分となり、金属インク10を長期間適切に保存できる。
【0132】
また、本開示に係る金属インク10の製造方法は、第1金属インク10Aと、溶媒16である低級アルコールとを混合して、金属粒子12と水と低級アルコールと多価アルコール14と添加剤17とを含む金属インクである第2金属インク10Bを製造することが好ましい。本開示によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を好適に向上可能な第2金属インク10Bを製造できる。
【0133】
また、本開示に係る金属インク10の製造方法は、第2金属インク10Bと、溶媒16であるOH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である高沸点溶媒とを混合して、金属粒子12と水と低級アルコールと高沸点溶媒と多価アルコール14と添加剤17とを含む金属インクである第3金属インク10Cを製造することが好ましい。本開示によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を好適に向上可能な第3金属インク10Cを製造できる。
【0134】
また、本開示に係る焼結体の製造方法は、金属インク10を加熱して焼結体を形成する。本開示によると、金属粒子12の凝集を抑制しつつ、焼結性を好適に向上できる。
なお、金属インク10による焼結体の製造条件は任意であってよいが、金属インク10を、酸化性ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気の下で、加熱することが好ましい。
【0135】
また、本開示に係る洗浄液は、金属粒子12と、溶媒16と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコール14と、水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤17とを含む。このような洗浄液を用いることで、例えば本実施形態に係る金属インク10が内部に貯留した流路やノズルを適切に洗浄できる。
【0136】
(実施例)
次に、実施例について説明する。
図3~
図45は、各例における金属インクの成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
図46~
図50は、各例における洗浄液の成分の含有量と、評価結果とを示す表である。
なお、各表の「分散剤(リン酸エステル化合物)」の欄における、ステアレス-2-リン酸は、HLB値が4~13であり、分子量範囲が400~2500である。また、オレス-4-リン酸は、HLB値が6~20であり、分子量範囲が500~3000である。また、(C12―C15)パレス-6-リン酸は、HLB値が8~20であり、分子量範囲が500~3000である。また、(C12-C15)パレス―10-リン酸は、HLB値が10~20であり、分子量範囲が700~3000である。また、ポリオキシエチレン(18EO)アルキル(C13)エーテルリン酸エステルは、HLB値が13~20であり、分子量範囲が1000~3500である。また、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩は、HLB値が10~20であり、分子量範囲が500~1500である。また、ポリオキシエチレン(C18不飽和)エーテルリン酸エステル・ナトリウム塩は、HLB値が10~20であり、分子量範囲が700~1500である。また、CRODAFOS O3Aは、HLB値が6~20であり、分子量範囲が400~2500である。
【0137】
(第1実験例)
第1実験例として、金属インクを製造して評価した。
【0138】
(実施例1)
実施例1においては、出発原料であるカルボン酸銅として、フタル酸銅を用意した。フタル酸銅を室温のイオン交換水に入れ、撹拌羽根を用いて撹拌し、濃度30質量%のフタル酸銅の水分散液を調製した。次いで、このフタル酸銅の水分散液にpH調整剤としてのフタル酸アンモニウム水溶液を加えて、上記水分散液のpHが3になるように調整した。次に、pH調整した液を50℃の温度にし、窒素ガス雰囲気下で、pH調整した液に還元剤として、銅イオンを還元できる1.2倍当量分である酸化還元電位が-0.5Vのヒドラジン一水和物水溶液(2倍希釈)を一気に添加し、撹拌羽を用いて均一に混合した。更に、目標とする銅粒子(金属粒子)を合成するために、上記水分散液と上記還元剤との混合液を窒素ガス雰囲気下で保持温度の70℃まで昇温し、70℃で2時間保持した。更に、遠心分離機を用いて、脱水及び脱塩することにより銅粒子の水スラリー(銅粉末濃度:50質量%)を得た。
【0139】
得られた銅粒子(金属粒子)の水スラリー(銅粉末濃度:50質量%)18gと、多価アルコールとしての2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール水溶液(濃度:5質量%)36gと、添加剤としてのリン酸トリメチル(分子量140.08)1.8gと、水34.2gとを混合することにより、溶媒が水の銅インク(金属インク)90gを得た。実施例1の銅インクの各成分の質量、含有比率は、
図3に示したものとなった。実施例1における銅インクは、本実施形態の第1金属インク10Aの一例である。
【0140】
(実施例2~337、比較例1~48)
実施例2~337、比較例1~48は、金属インク用の原料及びその添加量を
図3以降に示したものとした以外は、実施例1と同様の方法で、銅インクを製造した。なお、比較例1~24は、リン酸化合物を含む添加剤を含まない。また、比較例25~48は、多価アルコール(OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコール)を含まない。
【0141】
(評価方法:分散性)
実施例、比較例で得られた銅インク(金属インク)の分散性について、上記、得られた金属インクを超音波洗浄器等で十分に分散させた後、金属インクの内10gを、容量20mlのガラス製サンプル容器に採取し、冷蔵庫内にて1晩放置した。1晩放置後、サンプル容器の底から金属インクの液面までの高さを100としたとき、金属インク中の金属粒子の沈降・分離の界面について、容器の底から高さが50以上であった場合を「○」とし、50未満の場合を「×」とした。
(評価方法:焼結性)
また、実施例で分散性が「○」であった銅インク(金属インク)について、厚さが100μm、サイズが50mm×50mmのポリイミドフィルムの上の中央部に、インクジェット装置にてサイズが10mm×10mmに塗布・乾燥した。その後、窒素雰囲気中、200℃×30秒間加熱し、厚みが1~3μm程度の金属インクの焼成膜を得た。得られた焼成膜の断面のSEM(走査型電子顕微鏡;日立ハイテク社製、観察倍率1万倍)の観察により焼結性を評価した。断面SEM画像において、膜中の空隙の割合が15%以下の場合を焼結性「◎」とし、15%を超えて20%以下の場合を焼結性「○」とし、20%を超えて30%以下の場合を「△」とし、30%を超える場合を「×」とした。
(評価方法:光透過性)
更に、実施例で分散性が「○」であった銅インク(金属インク)について、厚さが0.7mm、サイズが50mm×50mmのソーダガラスの上の中央部に、インクジェット装置にてサイズが20mm×20mmに塗布・乾燥した。その後、高温観察顕微鏡 SMT Scope SK-8000(山陽精工製)にて、大気雰囲気中(酸素濃度が約20%)、上記装置に使用されているウシオ電機製のハロゲンランプヒーター(主に、可視~赤外領域の波長をピークに有する分光分布の光、より詳しくは1μmの波長をピークに有する分光分布の光を放射)を用いて、300℃×30秒間(ピーク温度までの昇温速度が1℃/秒)、加熱することにより、銅粒子が酸化焼結した、厚みが0.5~1μm程度の焼結体を得た。得られた焼結体の可視~赤外領域の光に対する透過度合いを評価した。透過度合いの評価においては、焼結体に対して、可視赤外分光光度計として、日立ハイテクサイエンス社の紫外可視近赤外分光光度計(UH4150)により、データモードを透過率測定(%T)とし、開始波長1200nm、終了波長300nmとし、スキャンスピードを600nm/minとし、サンプリング間隔を1.00nmとして、焼結体の透過率を測定した。このとき、波長が600nm~1200nmにおける平均の透過率が50%以上を、光透過性「〇」とし、透過率が50%未満を、「×」とした。
【0142】
(評価結果)
評価としては、分散性と焼結性および光透過性の評価を行った。多価アルコール及びリン酸化合物を含む添加剤を含む実施例1~337では、いずれも分散性と焼結性および光透過性の評価が「○」もしくは「◎」であるため、金属粒子の凝集を抑制しつつ優れた焼結性が担保されるとともに、大気雰囲気下での加熱により得られた焼結体では光透過性が得られることから、優れた光透過性を有する銅酸化焼結体(膜)の用途として結晶Si太陽電池を組み合わせたタンデム型太陽電池への適用が可能となることが分かる。一方、多価アルコールは含むが、リン酸化合物からなる添加剤を含まない比較例1~24では、分散性及び焼結性は「〇」であるが、光透過性のが「×」となった。また、多価アルコールを含まない比較例25~48では、金属粒子の凝集を抑制することができず、金属粒子が沈降してしまうことが分かる。尚、インク中の金属粒子が凝集し、沈降・分離したことにより、インクジェット装置によるインクの塗布が出来ないため、その後の焼結性や光透過性の評価が出来なかったので、焼結性および光透過性の評価は「-」とした。
更に、低級アルコール、大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒もしくは高沸点溶媒の少なくともいずれか一方を含む実施例52~337については、表の結果には示さないが、金属インクの長期保存性についても、日本工業規格(JIS Z 2911)に記載の「6.塗料の試験」の方法に従って防黴性評価(黴抵抗性試験:試験片の代わりに、金属インクを試料として、培地中心を直径30mmにくりぬいたところに入れ試験)を行ったところ、金属インクに菌糸の発育が認められず、良好な長期保存性を示した。
【0143】
(第2実験例)
第2実験例として、金属インクおよび各々の金属インクに対応する洗浄液を製造して評価した。
【0144】
(実施例1~18、比較例1~18)
実施例1~18、比較例1~18においては、第1実験例と同様にして、評価に使用した金属インクおよび洗浄液を調製した。実施例1~18、比較例1~18の各成分の質量、含有比率は、
図46~
図50に示したものとなった。
【0145】
(評価方法:洗浄性)
第1金属インクA1の洗浄性は、実施例1~3及び比較例1、2の洗浄液を、第1金属インクA2の洗浄性は、実施例4~6及びの比較例3、4の洗浄液を、第1金属インクA3の洗浄性は、実施例7~9及び比較例5、6の洗浄液を、第2金属インクB1の洗浄性は、実施例10~12及び比較例7~10の洗浄液を、第2金属インクB2の洗浄性は、実施例13~15及び比較例11~14の洗浄液を、第3金属インクの洗浄性は、実施例16~18及び比較例15~18の洗浄液を用いて評価した。
実施例、比較例で得られた洗浄液の洗浄性の評価方法については、下記に示すような手順で行った。予め、マイクロピペットで1mlを秤量した洗浄液を入れたガラス瓶(9ml)に、マイクロピペットにて20μlに秤量した金属インクを滴下した。その時に、加えた直後の金属インクおよび金属インク中の粉末成分の分散状態を目視にて確認した。加えた直後に、金属インクおよび金属インク中の粉末成分について沈殿が見られなかったものを「〇:良」、沈殿が見られたものを「×:不良」とした。
【0146】
(評価結果)
金属粒子、溶媒、多価アルコール及びリン酸化合物(添加剤)を含む実施例1~18については、洗浄性の評価が「〇:良」となったのに対して、金属粒子、溶媒、多価アルコール及びリン酸化合物(添加剤)の少なくとも1つを含まない比較例1~18については、いずれも洗浄性の評価が「×:不良」となり、洗浄液として適さないとの結果になった。
【0147】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0148】
10 金属インク
12 金属粒子
14 多価アルコール
16 溶媒
17 添加剤
18 有機溶媒
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅の粒子である金属粒子と、
溶媒と、
OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、
水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤と、
を含み、
前記リン酸化合物の分子量が、100以上200以下である、
金属インク。
【請求項2】
大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒を更に含む、請求項1に記載の金属インク。
【請求項3】
前記添加剤は、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上10%以下含まれる、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項4】
前記添加剤は、リン酸、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸二水素2-アミノエチル、亜リン酸ジイソプロピル、及び亜リン酸ジメチルの少なくとも1つを含む、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項5】
前記多価アルコールは、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上20%以下含まれる、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項6】
前記多価アルコールは、融点が30℃以上である、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項7】
前記有機溶媒は、前記金属インクの全量に対して、質量比で0.01%以上30%以下含まれる、請求項2に記載の金属インク。
【請求項8】
前記有機溶媒は、グリコールエーテル及び非プロトン性極性溶媒の少なくとも1つを含む、請求項2又は請求項7に記載の金属インク。
【請求項9】
前記金属粒子は、前記金属インクの全量に対して、質量比で1%以上50%以下含まれる、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項10】
前記溶媒は、水を含む、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項11】
前記添加剤に含まれる前記リン酸化合物よりも分子量が高いリン酸エステル化合物を、分散剤として更に含む、請求項10に記載の金属インク。
【請求項12】
前記溶媒は、低級アルコールを含む、請求項10に記載の金属インク。
【請求項13】
前記溶媒は、OH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である高沸点溶媒を含む、請求項12に記載の金属インク。
【請求項14】
前記溶媒は、水を含み、前記多価アルコールは、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能であって、且つ、融点が30℃以上である多価アルコールの少なくとも1つを含む、請求項1又は請求項2に記載の金属インク。
【請求項15】
銅の粒子である金属粒子と、溶媒と、OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、水に溶解可能で分子量が100以上200以下であるリン酸化合物を含む添加剤と、を混合して、前記金属粒子と前記溶媒と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクを製造する、
金属インクの製造方法。
【請求項16】
前記金属粒子と、前記溶媒としての水と、前記多価アルコールと、前記添加剤とを混合して、前記金属粒子と水と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第1金属インクを製造する、請求項15に記載の金属インクの製造方法。
【請求項17】
大気圧における沸点が150℃以上であり、水と混和可能な有機溶媒も混合して、前記有機溶媒も含む前記第1金属インクを製造する、請求項16に記載の金属インクの製造方法。
【請求項18】
前記第1金属インクと、前記溶媒としての低級アルコールとを混合して、前記金属粒子と水と前記低級アルコールと前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第2金属インクを製造する、請求項16又は請求項17に記載の金属インクの製造方法。
【請求項19】
前記第2金属インクと、OH基を1つ以上含み、沸点が150℃以上であり、水に難溶又は不溶な液体である前記溶媒としての高沸点溶媒とを混合して、前記金属粒子と水と前記低級アルコールと前記高沸点溶媒と前記多価アルコールと前記添加剤とを含む金属インクである第3金属インクを製造する、請求項18に記載の金属インクの製造方法。
【請求項20】
請求項1又は請求項2に記載の金属インクを加熱して焼結体を形成する、
焼結体の製造方法。
【請求項21】
請求項1又は請求項2に記載の金属インクを用いて作られた、
焼結体。
【請求項22】
金属粒子と、
溶媒と、
OH基を2つ以上含み、水及び低級アルコールに溶解可能な多価アルコールと、
水に溶解可能なリン酸化合物を含む添加剤と、
を含む、
洗浄液。