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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104275
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/557 20210101AFI20240726BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 50/516 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20240726BHJP
【FI】
H01M50/557
H01M50/55 101
H01M50/566
H01M50/516
H01M50/505
H01M50/184 A
H01M50/188
H01M50/15
H01M50/564
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172417
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2023007804
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 智基
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011BB03
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG00
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA05
5H043DA16
5H043DA20
5H043FA04
5H043HA04D
5H043HA17D
5H043JA01D
5H043JA09D
(57)【要約】
【課題】品質の良い電池を提供すること。
【解決手段】電池1は、電極体3を内部に収容した外装体2と、外装体2に設けられた負極端子部7とを有する。電極体3は、正極板3Aおよび負極板3Bを含んで構成されている。負極端子部7は、第1の端子部材100と第2の端子部材150とを有する。第1の端子部材100は、外装体2の外部に露出する露出面34を有する。第2の端子部材150は、第1の端子部材100よりも外装体2の内部側に設けられている。第1の端子部材100は、露出面34に凹部110が設けられている。さらに、第1の端子部材100は、凹部110の底面112とは反対側の裏面116に、第2の端子部材150が超音波接合されている。そして、凹部110の開口111は、底面側範囲113と比べて狭い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板を内部に収容した外装体と、
前記外装体に設けられた端子部とを有する電池であって、
前記端子部は、前記外装体の外部に露出する露出面を有する第1の端子部材と、前記第1の端子部材よりも前記外装体の内部側に設けられた第2の端子部材とを有し、
前記第1の端子部材は、
前記露出面に凹部が設けられており、
前記凹部の底面とは反対側の裏面に、前記第2の端子部材が超音波接合されており、
前記凹部の開口は、前記凹部の深さ方向における前記開口よりも前記底面側の範囲である底面側範囲と比べて狭い電池。
【請求項2】
請求項1に記載された電池であって、
前記露出面は、前記端子部を外部と電気的に接続するバスバーが接続される面である電池。
【請求項3】
請求項2に記載された電池であって、
前記第2の端子部材は、前記外装体の外部から、前記外装体に設けられた貫通孔を通って前記外装体の内部まで延びる部材であり、
前記第2の端子部材と前記外装体との間には、これらの隙間を塞いでいるシール部材が設けられている電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載された電池であって、
前記凹部の前記底面には、超音波接合時に形成された圧接痕と、前記圧接痕から、前記凹部の前記底面側範囲における前記開口よりも広がる空間内に向けて延びる線状の残留物とが形成されている電池。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載された電池であって、
前記凹部の前記開口には、前記露出面側ほど広がる面取り加工が施されている電池。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載された電池であって、
前記凹部の前記底面側範囲における側壁面は、前記開口側ほど狭まるように前記深さ方向に対して傾斜している電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、電極板を内部に収容した外装体と、外装体に設けられた端子部とを有する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池は、充放電のため、外装体に設けられた端子部を有している。また、端子部は、複数の端子部材を接続することで構成されていることがある。例えば、特許文献1には、いずれも導電性の高い金属製の第1部材と第2部材とを備えた端子部を有する電池が開示されている。第2部材は、第1部材よりも外装体の内部側に設けられている。第1部材と第2部材とは、超音波接合されている。そして、第1部材における第2部材との接合面とは反対側の表面には、凹部が形成されている。これにより、超音波接合の接合痕や、超音波接合時に形成される溶接残渣を、凹部内に生じさせることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-049726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような構成では、超音波接合時に凹部内にて生じた線状のバリが、凹部の外へと出てきてしまう可能性があった。このようなバリが意図せず凹部の外へと出てきてしまうと、電池の他の構成に影響を及ぼしてしまう可能性がある。例えば、第1部材における凹部の開口が形成されている表面にバスバーを接続する構成の電池である場合には、バスバーと端子部との間に凹部から出てきたバリが挟まってしまう可能性がある。すなわち、より品質の良い電池とするためには、改良の余地があった。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、品質の良い電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術における電池は、電極板を内部に収容した外装体と、外装体に設けられた端子部とを有する電池であって、端子部は、外装体の外部に露出する露出面を有する第1の端子部材と、第1の端子部材よりも外装体の内部側に設けられた第2の端子部材とを有し、第1の端子部材は、露出面に凹部が設けられており、凹部の底面とは反対側の裏面に、第2の端子部材が超音波接合されており、凹部の開口は、凹部の深さ方向における開口よりも底面側の範囲である底面側範囲と比べて狭い電池である。
【0007】
上記態様における電池は、超音波接合時に底面にバリが形成されたとしても、そのバリが凹部の内部に収まるようにすることができる。このため、凹部の内部にて発生したバリが、意図せず電池等へと混入してしまうことが防止されている。よって、品質の良い電池である。
【0008】
上記態様の電池ではさらに、露出面は、端子部を外部と電気的に接続するバスバーが接続される面であることが望ましい。バリ等の飛び出しのない露出面は、バスバーを接続する面として適しているからである。そして、露出面にバスバーを接続する際には、露出面にバスバーを密着させつつ適切に接続できるからである。
【0009】
上記態様の電池ではさらに、第2の端子部材は、外装体の外部から、外装体に設けられた貫通孔を通って外装体の内部まで延びる部材であり、第2の端子部材と外装体との間には、これらの隙間を塞いでいるシール部材が設けられていることが望ましい。このようにすることで、電池における外装体と第2の端子部材との隙間を密閉できる。そして、露出面にバスバーを接続する際に端子部の温度が上昇したとしても、表面積の広い凹部にて放熱させ、シール部材が高温になってしまうことを抑制できる。これにより、シール部材の劣化を抑制でき、電池の外装体の密閉性を高く維持できる。
【0010】
上記態様の電池ではさらに、凹部の底面には、超音波接合時に形成された圧接痕と、圧接痕から、凹部の底面側範囲における開口よりも広がる空間内に向けて延びる線状の残留物とが形成されていることが望ましい。このようにすることで、線状の残留物を除去する工程を削減できるからである。そして、線状の残留物が残っていたとしても、凹部の内部に収まっているため、これによって電池の品質を低下させることはない。
【0011】
上記態様の電池ではさらに、凹部の開口には、露出面側ほど広がる面取り加工が施されていることが望ましい。このようにすることで、超音波接合時に凹部へと挿入する治具と凹部との位置合わせを容易にできる。また、超音波接合時に凹部へと挿入する治具として、凹部の開口との隙間の小さいものを用いることができる。そして、凹部の内部にて発生したバリが、凹部の外側へと飛び出すことをより抑制できる。
【0012】
上記態様の電池ではさらに、凹部の底面側範囲における側壁面は、開口側ほど狭まるように深さ方向に対して傾斜していることが望ましい。このようにすることで、例えば、露出面における、バスバーとの接合に用いることのできる範囲をより広く確保できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示技術によれば、品質の良い電池が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る電池の外観斜視図である。
図2】第1の形態に係る負極端子部の断面図である。
図3】第1の形態に係る負極端子部を製造する様子を示す図である。
図4】第1の形態に係る負極端子部の凹部の付近の拡大断面図である。
図5】第1の形態に係る負極端子部にバスバーを接続した状態を示す図である。
図6】第2の形態に係る負極端子部の凹部の付近の拡大断面図である。
図7】第3の形態に係る負極端子部の凹部の付近の拡大断面図である。
図8】第3の形態に係る負極端子部にバスバーを接続した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、本開示技術を具体化した実施形態として第1の形態について説明し、その後、その他の実施形態について、前述した実施形態と異なる点を説明する。
【0016】
(第1の形態)
第1の形態は、リチウムイオン二次電池としての電池1に本開示技術を適用したものである。電池1は、概略、図1に示されるように、外装体2の内部に電極体3を収納したものである。電極体3は、正極板3Aと負極板3Bとを積層してなるものである。外装体2は、箱体4と蓋体10とで構成されている。本形態では、外装体2を構成する箱体4および蓋体10はともに、導電性を有する材質のものである。具体的には、箱体4および蓋体10はともに、金属製である。外装体2の内部には、電解液5が収容されている。
【0017】
電池1は全体として平板角形状の外形のものである。その上部の蓋体10の長手方向両端付近にはそれぞれ、正極端子部6、負極端子部7が設けられている。正極端子部6、負極端子部7はどちらも蓋体10に取り付けられている。正極端子部6、負極端子部7はどちらも、導電性を有する材質により構成されている。正極端子部6、負極端子部7はそれぞれ、外装体2の内部の電極体3に電気的に接続されている。具体的には、正極端子部6は正極板3Aに接続されており、負極端子部7は負極板3Bに接続されている。これにより、電池1は、正極端子部6、負極端子部7を介して充電または放電することができる。
【0018】
図2は、負極端子部7の断面図である。図2は、蓋体10の短手方向における断面図である。図2に示すように、本形態の負極端子部7は、第1の端子部材100と、第2の端子部材150とにより構成されている。
【0019】
また図2には、負極端子部7の周辺を構成する部材を示している。図2に示すように、電池1は、負極端子部7の周辺に、集電部材20、ガスケット40、インシュレーター50を有している。蓋体10は板状の部材である。蓋体10は、その厚み方向の端面として、外面11と内面12とを有している。図2において、蓋体10の内面12よりも下側が、外装体2の内部である。蓋体10には、厚み方向に貫通する貫通孔13が形成されている。
【0020】
集電部材20は、外装体2の内部で電極体3と負極端子部7とを接続する部材である。図2には、集電部材20のうち、負極端子部7への接続箇所である端子接続部21を示している。集電部材20は、端子接続部21とは異なる箇所にて、電極体3を構成する負極板3Bに接続されている。集電部材20は、導電性を有する材質のものである。具体的に、負極側の集電部材20の材質として、例えば、銅を用いることができる。
【0021】
集電部材20の端子接続部21は、板状の形状をしている。集電部材20の端子接続部21は、その厚み方向の端面として、外側面22と内側面23とを有している。外側面22は、蓋体10の内面12と対向している。集電部材20の端子接続部21には、厚み方向に貫通する貫通孔24が形成されている。集電部材20の貫通孔24は、蓋体10の貫通孔13と重なる位置に設けられている。つまり、集電部材20の貫通孔24は、蓋体10の貫通孔13と同軸上に設けられている。
【0022】
負極端子部7は、盤状部31、柱状部32、かしめ部33を有している。盤状部31およびかしめ部33はどちらも、柱状部32よりも太い部分である。柱状部32は、蓋体10の貫通孔13および集電部材20の貫通孔24のどちらにも通されている。
【0023】
盤状部31は、外装体2の外側に位置している。盤状部31は、柱状部32における外装体2の外部側に繋がっている。そして、盤状部31は、蓋体10の貫通孔13よりも大径に広がっている。盤状部31の図2における上面は、外装体2の外部に露出している露出面34である。
【0024】
かしめ部33は、外装体2の内側に位置している。かしめ部33は、柱状部32における外装体2の内部側に繋がっている。さらに、かしめ部33は、集電部材20よりも外装体2の内部側に位置している。そして、かしめ部33は、集電部材20の貫通孔24よりも大径に広がっている。負極端子部7は、かしめ部33付近において、集電部材20と接触している。これにより、負極端子部7と集電部材20とは電気的に接続されている。
【0025】
かしめ部33は、負極端子部7の柱状部32を外装体2の外部側から各部材を貫通させた後、かしめ加工を行うことで形成されたものである。図2には、かしめ加工が行われる前のかしめ部33を、二点鎖線により示している。かしめ部33の中央には、平面35が設けられている。
【0026】
負極端子部7は、第1の端子部材100と第2の端子部材150とが組み合わせられることで構成されている。第1の端子部材100と第2の端子部材150とはともに、導電性を有する材質のものである。ただし、本形態において、第1の端子部材100と第2の端子部材150とは、材質の異なるものである。具体的には、例えば、第1の端子部材100の材質としてアルミニウムを、第2の端子部材150の材質として銅を用いることができる。
【0027】
第1の端子部材100は、負極端子部7の盤状部31における一部を構成している。具体的に、第1の端子部材100は、少なくとも露出面34を含む盤状部31の一部を構成している。
【0028】
第2の端子部材150は、負極端子部7のうちの第1の端子部材100よりも外装体2の内部側を構成している。具体的に、第2の端子部材150は、盤状部31における第1の端子部材100よりも外装体2の内部側と、柱状部32と、かしめ部33とを構成している。つまり、負極端子部7において、第2の端子部材150は、第1の端子部材100よりも外装体2の内部側に設けられている。
【0029】
負極端子部7の露出面34には、凹部110が設けられている。凹部110は、第1の端子部材100に設けられており、第2の端子部材150まで達していない。凹部110は、その開口111と底面112とを比較した場合、開口111の方が狭い形状である。つまり、凹部110の開口111は、凹部110の深さ方向における開口111よりも底面112側の範囲である底面側範囲113と比べて狭い。換言すれば、開口111よりも底面112側の底面側範囲113は、開口111と比べて広い。このため、凹部110の内部における底面側範囲113には、開口111よりも広がる空間114が形成されている。露出面34側から見たときの凹部110(開口111および底面112)の形状は、本形態においては、長方形としている。なお、露出面34側から見たときの凹部110(開口111および底面112)の形状は、円形であってもよい。
【0030】
第1の端子部材100における凹部110の底面112の反対側の裏面116と、第2の端子部材150の主面151とは、超音波接合されている。第2の端子部材150の主面151は、第1の端子部材100の裏面116と対面する面である。超音波接合が施された箇所には、第1の端子部材100と第2の端子部材150とを接合する接合箇所190が形成されている。接合箇所190では、第1の端子部材100の裏面116と第2の端子部材150との境界における他の箇所と比較して、電気抵抗が小さい。つまり、接合箇所190により、第1の端子部材100と第2の端子部材150との間で、損失を低減しつつ電流を流すことができる経路が形成されている。第1の端子部材100と第2の端子部材150との接合については、後に詳述する。
【0031】
ガスケット40およびインシュレーター50はともに、弾性と絶縁性とを有するとともに、電解液5に対する耐性を有する材質のものである。具体的に、ガスケット40の材質として、例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)を用いることができる。インシュレーター50の材質として、例えば、無機フィラーを含まないポリフェニレンサルファイド(PPS)を用いることができる。
【0032】
ガスケット40は、外装体2の外側から配置されており、負極端子部7を蓋体10から絶縁しつつ、負極端子部7と蓋体10との隙間を密閉する外部シール部材である。ガスケット40は、外部板状部41および外部管状部42を有する。また、ガスケット40には、外部管状部42の内周を形成する貫通孔43が設けられている。外部板状部41は、蓋体10の外面11と、負極端子部7の盤状部31との間に挟まれている。これにより、外部板状部41は、蓋体10の外面11および負極端子部7の盤状部31のどちらにも密着している。外部板状部41には、負極端子部7の盤状部31を収容する凹部41Aが設けられている。
【0033】
外部管状部42は、外部板状部41における外装体2の内部側に繋がっている。外部管状部42は、蓋体10の貫通孔13の内側に位置している。負極端子部7の柱状部32は、ガスケット40の貫通孔43の内部に通されている。外部管状部42は、蓋体10の貫通孔13の壁面と、負極端子部7の柱状部32との間に挟まれている。これにより、外部管状部42は、蓋体10の貫通孔13の壁面および負極端子部7の柱状部32のどちらにも密着している。
【0034】
ガスケット40の外部板状部41が接触している蓋体10の外面11には、凸部15が設けられている。凸部15は、外部板状部41に食い込んでいる。これにより、外部板状部41は、凸部15の形状に沿って変形している。この外部板状部41の変形によって、ガスケット40の他の部材への密着がより強いものとされている。
【0035】
インシュレーター50は、外装体2の内側に配置されており、集電部材20を蓋体10から絶縁しつつ、集電部材20と蓋体10との隙間を密閉する内部シール部材である。インシュレーター50は、板状の部材である。また、インシュレーター50には貫通孔52が設けられている。インシュレーター50は、蓋体10の内面12と、集電部材20の端子接続部21との間に挟まれている。これにより、インシュレーター50は、蓋体10の内面12および集電部材20のどちらにも密着している。インシュレーター50には、集電部材20の端子接続部21を収容する凹部51が設けられている。また、インシュレーター50は、蓋体10の貫通孔13の内側にて、ガスケット40の外部管状部42と密着している。
【0036】
このような構成であることで、電池1では、負極端子部7の位置にて適切に密閉されている。また、蓋体10と負極端子部7との接触、蓋体10と集電部材20との接触がともに防止されている。さらには、電解液5がガスケット40とインシュレーター50との隙間に入り込むことも防止されている。つまり、蓋体10と負極端子部7とが、電解液5を介して通電してしまうことについても適切に防止されている。
【0037】
上記では、負極端子部7側の構成について説明しているが、正極端子部6側の構成についても同様にすることができる。正極端子部6については、負極端子部7とは異なる材質を採用してもよい。なお、正極端子部6については、負極端子部7のように2つの部材ではなく、1つの部材によって構成することとしてもよい。この場合には、正極端子部6には凹部がなくてもよい。
【0038】
次に、電池1の製造方法について説明する。本形態の電池1は、箱体4に蓋体10を組み付けることで外装体2を構成し、外装体2の内部に電解液5を注入することで製造できる。また、蓋体10には、箱体4に組み付けられる前に、正極端子部6、負極端子部7等が設けられるとともに、電極体3が組み付けられる。すなわち、電池1の製造工程において、蓋体10には、負極端子部7、集電部材20、ガスケット40、インシュレーター50の組み付けが行われる。負極端子部7、集電部材20、ガスケット40、インシュレーター50の蓋体10への組み付けは、これら各部材を組み合わせつつ、負極端子部7のかしめ加工を行うことで行う。正極端子部6側の構成についても同様にすることができる。
【0039】
前述したように、負極端子部7は、第1の端子部材100、第2の端子部材150の2つの部材により構成されている。負極端子部7は、電池1への組み付け前に予め、第1の端子部材100と第2の端子部材150とを組み合わせることで構成されている。すなわち、負極端子部7は、電池1への組み付け前に予め、第1の端子部材100と第2の端子部材150とを接合する接合箇所190を形成する超音波接合を行うことで製造されたものである。
【0040】
図3は、第1の端子部材100と第2の端子部材150とを超音波接合し、負極端子部7を製造する様子を示す図である。図3に示す負極端子部7においては、かしめ加工が行われる前のかしめ部33の形状を示している。第1の端子部材100と第2の端子部材150との超音波接合は、第1の端子部材100の裏面116と、第2の端子部材150の主面151とを合わせた状態にて行われる。
【0041】
超音波接合には、ホーン200とアンビル210とを用いる。ホーン200は、接合の対象物に超音波振動を付与することができる治具である。アンビル210は、ホーン200との間で接合の対象物を挟み込む治具である。本形態においては、ホーン200の先端201に複数の突起が設けられている。
【0042】
ホーン200とアンビル210とは、これらの間に第1の端子部材100と第2の端子部材150との接合箇所190となる部分を挟み込むように配置される。具体的に、ホーン200を第1の端子部材100の凹部110の開口111からその内部へと挿入し、ホーン200の先端201を、凹部110の底面112に接触させる。また、アンビル210の先端201を、第2の端子部材150の平面35に接触させる。そして、ホーン200とアンビル210とをそれぞれ底面112と平面35とに押し付けつつ、ホーン200に超音波振動を付与する。これにより、第1の端子部材100と第2の端子部材150との接合箇所190を形成することができる。
【0043】
超音波接合の際には、第1の端子部材100の凹部110の底面112に圧接痕191が形成される。圧接痕191は、凹部110の底面112に押し付けられたホーン200の先端201に対応した形状のものである。つまり、圧接痕191は、凹部110の底面112のうち、ホーン200の先端201の圧接箇所に形成される。
【0044】
図4は、負極端子部7の凹部110の付近の拡大断面図である。図4に示すように、超音波接合の際には、第1の端子部材100の凹部110の底面112に、線状のバリ192が形成される。バリ192は、ホーン200の先端201が振動しつつ押し付けられた底面112の部分が、元の箇所から徐々に押し出されたことによって形成されたものである。このため、バリ192を構成する材質は、第1の端子部材100と同じである。バリ192は、圧接箇所から延びるように形成されている。
【0045】
ここで、本形態の凹部110の開口111は、底面側範囲113よりも狭い。このため、形成されたバリ192は、開口111よりも広がっている空間114へと収まるように形成される。つまり、バリ192が、開口111から外側へと飛び出すことが防止されている。よって、バリ192が、電池1や、電池1の製造装置に意図せず混入されてしまうことなどが防止できる。
【0046】
なお、バリ192は、負極端子部7の製造過程において、または、電池1の製造過程において、負極端子部7の凹部110の内側から除去しておいてもよい。バリ192を除去する際にも、バリ192は凹部110の内部に存在しているため、除去が容易である。また、バリ192は、製造後の電池1においても、凹部110の内部に残留物193として残っていても良い。電池1における負極端子部7の凹部110内に残留物193が存在していたとしても、これが露出面34よりも外側に飛び出すことは抑制されている。すなわち、線状の残留物193が残っていたとしても、電池1の負極端子部7の露出面34に、バスバー300を適切に接続できる。そしてこの場合、バリ192を除去する手間を削減することができる。すなわち、露出面34を、例えば、負極端子部7を外部へと電気的に接続する面として適した面として用いることができる。
【0047】
図5は、負極端子部7にバスバー300を接続した状態を示す図である。バスバー300は、電池1を、外部と電気的に接続する部材である。電池1の負極端子部7においては、その露出面34にバスバー300が接続される。
【0048】
図5に示すように、バスバー300は、負極端子部7の露出面34の凹部110の開口111を塞ぐように設けられている。前述したように、電池1では、線状の残留物193が凹部110の開口111から飛び出してしまうことが防止されている。このため、線状の残留物193が残っていたとしても、バスバー300を、負極端子部7の露出面34に密着させることができる。よって、バスバー300を、露出面34との間に隙間等が形成されてしまうことなく、適切に接続できる。なお、電池1においては、正極端子部6にも適宜、バスバー300が接続される。
【0049】
さらに、図5の例では、バスバー300と負極端子部7とがレーザー溶接によって接合されている。このため、バスバー300と負極端子部7との接合箇所には、接合痕310が形成されている。接合痕310は、レーザー溶接の際に溶融した部分が、その後に硬化して形成されたものである。なお、溶接によってバスバー300と負極端子部7とを接合する場合、バスバー300の材質は、第1の端子部材100と同じ材質であることが好ましい。
【0050】
レーザー溶接等の溶接によってバスバー300を接続する際には、バスバー300や負極端子部7の一部を溶融させるため、その溶融箇所の付近が高温になりがちである。負極端子部7が高温になった場合、負極端子部7の付近の部材に影響をおよぼす可能性がある。具体的には、例えば、シール部材であるガスケット40やインシュレーター50が高温になった場合、これらの劣化が促進される可能性がある。そして、ガスケット40やインシュレーター50が劣化した場合には、その箇所での電池1の外装体2の密閉性が低下する可能性がある。本形態の構成では特に、負極端子部7の第2の端子部材150と接触しているシール部材であるガスケット40が劣化してしまう可能性が高い。
【0051】
本形態の負極端子部7は、露出面34に凹部110が形成されており、その凹部110の底面側範囲113は開口111よりも広い。このため、本形態に係る凹部110の内側における表面積は、開口と底面との大きさが同じであり、かつ、側壁が開口から底面まで深さ方向に真っすぐに形成されている一般的な形状の凹部と比べて広い。これにより、溶接時に負極端子部7の溶接箇所付近の温度が上昇した際には、凹部110の内側にて適切に放熱させ、負極端子部7の温度を低下させることができる。よって、負極端子部7の温度上昇を抑制できる。つまり、シール部材であるガスケット40やインシュレーター50の劣化を抑制できる。すなわち、電池1の外装体2の密閉性を高く維持することができる。
【0052】
以上詳細に説明したように本実施の形態に係る電池1は、電極体3を内部に収容した外装体2と、外装体2に設けられた負極端子部7とを有する。電極体3は、正極板3Aおよび負極板3Bを含んで構成されている。負極端子部7は、第1の端子部材100と第2の端子部材150とを有する。第1の端子部材100は、外装体2の外部に露出する露出面34を有する。第2の端子部材150は、第1の端子部材100よりも外装体2の内部側に設けられている。第1の端子部材100は、露出面34に凹部110が設けられている。さらに、第1の端子部材100は、凹部110の底面112とは反対側の裏面116に、第2の端子部材150が超音波接合されている。そして、凹部110の開口111は、底面側範囲113と比べて狭い。このため、超音波接合時にバリ192が形成されたとしても、バリ192が凹部110の外側へと出てきてしまうことを抑制できる。これにより、品質の良い電池1が実現されている。
【0053】
(第2の形態)
次に、第2の形態について説明する。本形態の電池は、負極端子部の露出面に形成された凹部の形状が、第1の形態と異なる。第1の形態と同様の構成については、第1の形態と同じ符号を付して説明する。
【0054】
図6は、本形態の負極端子部8の凹部120の付近の拡大断面図である。本形態の負極端子部8は、上記の形態とは異なる形状の第1の端子部材101を有している。その他の構成については、上記の形態に係る電池1と同様である。
【0055】
負極端子部8を構成する第1の端子部材101にも、露出面34に凹部120が形成されている。そして、本形態の凹部120の開口121には、露出面34側ほど広がる面取り加工が施されている。これにより、本形態の凹部120の開口121には、露出面34側ほど広がる傾斜面122が形成されている。
【0056】
このため、本形態では、凹部120に対し、凹部120の深さ方向と直行する方向にホーン200がズレている場合にも、ホーン200を凹部120の内側へと適切に案内できる。図6には、凹部120に対してズレた状態で負極端子部8側へと移動してきたホーン200を、二点鎖線により示している。しかし、二点鎖線により示すホーン200は、凹部120の開口121の傾斜面122に接触している。よって、その後、さらにホーン200を負極端子部8側へと移動させると、ホーン200を傾斜面122に沿って凹部120の内側へと適切に挿入することができる。
【0057】
また、ホーン200の側面202と開口121との隙間Gが大きいほど、超音波接合時に底面112から発生したバリ192が、凹部120の外側へと出てきてしまう可能性が高くなる。つまり、ホーン200と開口121との隙間Gは、小さい方が好ましい傾向にある。一方、ホーン200と開口121との隙間Gが小さいほど、ホーン200を凹部120へと挿入する際に、ホーン200が負極端子部8の開口121よりも外側に接触してしまう可能性が高くなる。
【0058】
しかし、本形態では、ホーン200が負極端子部8の開口121よりも外側に接触したとしても、傾斜面122により、ホーン200を凹部120の内側へと適切に案内することができる。すなわち、開口121に面取り加工が施された本形態においては、ホーン200と開口121との隙間Gを小さくしたとしても、超音波接合時にホーン200を凹部120へと適切に挿入することができる。よって、バリ192が凹部120の外側へと飛び出てしまうことをさらに抑制できる。
【0059】
(第3の形態)
次に、第3の形態について説明する。本形態の電池は、負極端子部の露出面に形成された凹部の形状が、第1の形態と異なる。第1の形態と同様の構成については、第1の形態と同じ符号を付して説明する。
【0060】
図7は、本形態の負極端子部9の凹部130の付近の拡大断面図である。本形態の負極端子部9は、上記の形態とは異なる形状の第1の端子部材102を有している。その他の構成については、上記の形態に係る電池1と同様である。
【0061】
負極端子部9を構成する第1の端子部材102には、露出面34に凹部130が形成されている。そして、本形態の凹部130は、開口131よりも底面112側の底面側範囲133の形状が、第1の形態と異なる。すなわち、本形態に係る凹部130の底面側範囲133における側壁面135は、開口131側ほど狭まるように、凹部130の深さ方向に対して傾斜した傾斜面である。
【0062】
このような形状の凹部130であっても、底面側範囲133よりも開口131が狭いことにより、第1の形態の凹部110と同様の効果を奏することが可能である。具体的には、例えば、本形態においても、超音波接合時に凹部130内にて形成されたバリ192は、開口131よりも広がっている底面側範囲133の空間134へと収まるように形成される。
【0063】
図8は、負極端子部9にバスバー300を接続した状態を示す図である。本形態においても、第1の形態と同様、負極端子部9の露出面34が、バスバー300の接続面である。そして、本形態の負極端子部9は、開口131から離れるほど、露出面34と空間134との距離が遠くなる形状の凹部130を有している。すなわち、本形態では、露出面34の下側の厚みが、開口131から離れるほど厚い。
【0064】
図8には、バスバー300と負極端子部9との接合痕310を示している。また、図8には、凹部130が第1の形態に係る凹部110であった場合の接合痕310の位置を二点鎖線により示している。二点鎖線の接合痕310は、第1の形態の係る凹部110における開口111および底面112の大きさが、本形態の凹部130と同じ大きさであった場合のものである。二点鎖線の接合痕310は、凹部110の底面側範囲113の空間114を避けるように、開口111から離れて形成されている。これは、第1の形態の係る凹部110においては、露出面34の下側の厚みが薄い場合には、接合箇所の強度を十分に確保するため、凹部110を避けて接合痕310を形成する必要があるからである。
【0065】
一方、本形態では、接合痕310を、二点鎖線で示す場合と比較して、開口131側に近い位置に形成できている。本形態では、露出面34の下側の厚みが、開口131から離れるほど厚い。このため、接合痕310を開口131側へとある程度近づけても、接合箇所の強度を十分に確保できるからである。すなわち、本形態の負極端子部9においては、第1の形態に係る負極端子部7と比較して、露出面34におけるバスバー300との接合痕310を形成できる範囲が、広く確保されていることがわかる。
【0066】
また図8には、第1の形態に係る接合範囲H1と、本形態に係る接合範囲H2とを示している。接合範囲H1は、第1の形態に係る凹部110を採用した場合に、開口111に最も近い接合痕310が形成されているところから、開口111に最も遠い接合痕310が形成されているところまでの範囲である。接合範囲H2は、本形態に係る凹部130を採用した場合に、開口131に最も近い接合痕310が形成されているところから、開口131に最も遠い接合痕310が形成されているところまでの範囲である。
【0067】
そして、本形態に係る接合範囲H2は、第1の形態に係る接合範囲H1よりも広い。本形態では、接合痕310を、開口131の近くに形成できるからである。これにより、本形態では、バスバー300と負極端子部9との接合を、第1の形態に係る負極端子部7を採用した場合と比較して、より強固なものとすることができる。
【0068】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、第2の形態と第3の形態とを合わせて採用することもできる。具体的には、底面側範囲における側壁面を、開口側ほど狭まるように深さ方向に対して傾斜する凹部について、その開口に面取り加工を施しても良い。
【0069】
また上記の形態では、超音波接合により接合箇所を形成して予め第1の端子部材と第2の端子部材とを有する負極端子部を製造し、その製造した負極端子部を用いて電池を製造する例について説明した。しかし、例えば、超音波接合は、電池の外装体へと組み付けた第2の端子部材の主面上に第1の端子部材が配置された状態で行うこととすることもできる。また上記の実施形態では、本開示技術を負極端子部に適用した例について具体的に説明した。本開示技術は、正極または負極に関係なく、端子部であれば適用することができる。すなわち、本開示技術を正極端子部のみに適用することもできる。また上記の実施形態では、正極端子部、負極端子部を、外装体のうちの蓋体に設けた構成について具体的に説明した。しかし、例えば、正極端子部、負極端子部は、外装体に設けられていればよい。すなわち、正極端子部、負極端子部は、例えば、箱体に設けることもできる。また例えば、上記の実施形態では、平板角形状の外形をした電池について説明した。しかし、例えば、円柱形上の外径をした電池にも適用可能である。また上記形態の適用対象は、電池種(ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池等の種別)については特段の限定はない。また、上記形態で示した具体的な材質等は、単なる一例であり、適宜、変更できる。
【符号の説明】
【0070】
1 電池
2 外装体
3B 負極板
7、8、9 負極端子部
34 露出面
111、121、131 開口
112 底面
113、133 底面側範囲
116 裏面
100、101、102 第1の端子部材
110、120、130 凹部
150 第2の端子部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8