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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104276
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20240726BHJP
   B21D 5/01 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D5/01 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173983
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2023007763
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【テーマコード(参考)】
4E063
4E137
【Fターム(参考)】
4E063AA01
4E063BA01
4E063CA04
4E063CA05
4E063DA02
4E063DA03
4E063MA18
4E137AA06
4E137AA08
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA24
4E137CB01
4E137EA01
4E137EA03
4E137GA03
4E137GB01
(57)【要約】
【課題】天板部に天板谷線が形成され、天板谷線を挟んで第1天板部及び第2天板部を備えてなるプレス成形品を製造するにあたり、縦壁部先端やフランジ部先端における伸びフランジ成形部位の割れを抑制し、かつ、天板谷線が縦壁部に接続する稜線部の部位に発生しやすい座屈を抑制する。
【解決手段】本発明に係るプレス成形品1の製造方法は、中間天板谷線19cと中間天板谷線19cを挟んで設けられた第1中間天板部19a及び第2中間天板部19bと、稜線部5に相当する部位に形成された中間稜線部21、中間稜線部21に連続する中間縦壁部20、及び中間縦壁部に連続する中間段差谷部22を含む段差からなるステップ形状部23と、ステップ形状部23に連続して外方に延出する外方面部25と、を有する中間成形品17をプレス成形する第1成形工程と、中間成形品17をプレス成形品1にプレス成形する第2成形工程と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部とを有し、前記天板部には稜線部に交差する天板谷線が形成され、該天板谷線を挟んで第1天板部及び第2天板部を備えてなるプレス成形品の製造方法であって、
中間天板谷線と該中間天板谷線を挟んで設けられた第1中間天板部及び第2中間天板部と、前記稜線部に相当する部位に形成された中間稜線部、該中間稜線部に連続する中間縦壁部、及び該中間縦壁部に連続する中間段差谷部を含む段差からなるステップ形状部と、該ステップ形状部に連続して外方に延出する外方面部と、を有する中間成形品をプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品を前記プレス成形品にプレス成形する第2成形工程と、を備えたことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項2】
プレス成形によって製造されるプレス成形品が、前記天板部と、該天板部から前記稜線部を介して連続する前記縦壁部と、該縦壁部から連続するフランジ部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項3】
前記中間成形品の前記中間稜線部の曲率半径が、前記プレス成形品の稜線部の曲率半径と同じかそれ以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部とを有し、前記天板部には稜線部に交差する天板谷線が形成され、該天板谷線を挟んで第1天板部及び第2天板部を備えてなるプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突安全性基準の厳格化により、車体の衝突安全性の向上が進む中で、二酸化炭素排出規制を受けて、燃費向上やEV化のために車体の軽量化も必要とされている。これら車体の衝突安全性向上と軽量化を両立させるために、車体構造部品への590MPa級以上の高強度鋼板(ハイテン材とも称する)の適用が進んでいる。
【0003】
自動車部品には、例えば図5に示すプレス成形品1がある。プレス成形品1は、天板部3と、天板部3から稜線部5を介して連続する縦壁部7とを有し、天板部3に天板谷線3cが形成され、天板谷線3cを挟んで第1天板部3a及び第2天板部3bを備えてなる。
このようなプレス成形品1をプレス成形した場合、天板谷線3cの延長上に位置する(縦壁部7の先端やフランジ部の先端)に伸びフランジ変形が加わって、割れが発生しやすくなる。また、天板谷線3cが縦壁部7に接続する稜線部5の部位に座屈(しわ、折れ込み)が発生しやすい。
特にハイテン材の場合、高強度化によって、前記先端の伸びフランジ成形部位の割れや前記稜線部5の座屈(しわ、折れ込み)が発生しやすくなり問題である。
【0004】
この点、従来は、平坦かつ上面視で凹状外周縁を有する天板部と、該天板部から該凹状外周縁に沿って連続する縦壁部を有するプレス成形品の伸びフランジ変形に伴う割れ対策について、例えば特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/097745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載されるプレス成形方法は、天板部が平坦であり、上面視で該天板部の外周縁が凹状であるプレス成形品を対象としている。
一方、本発明が対象とするプレス成形品は、天板部に天板谷線が形成され、該天板谷線を挟んで第1天板部及び第2天板部を備えてなるプレス成形品である。
このように、特許文献1が対象としているプレス成形品と本願発明が対象としているプレス成形品とは、形状が異なっている。
【0007】
このため、特許文献1のプレス成形方法を、本願発明が対象としているプレス成形品に適用しても、天板谷線の延長上に位置する先端の割れや、天板谷線が縦壁部に接続する稜線部の部位の座屈(しわ、折れ込み)を防止することはできない。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、天板部から稜線部を介して連続する縦壁部を有し、天板部に天板谷線が形成され、天板谷線を挟んで第1天板部及び第2天板部を備えてなるプレス成形品を製造するにあたり、縦壁部先端やフランジ部先端における伸びフランジ成形部位の割れを抑制し、かつ、天板谷線が縦壁部に接続する稜線部の部位に発生しやすい座屈の部位(しわ、折れ込み)を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るプレス成形品の製造方法は、天板部と、該天板部から稜線部を介して連続する縦壁部とを有し、前記天板部には稜線部に交差する天板谷線が形成され、該天板谷線を挟んで第1天板部及び第2天板部を備えてなるプレス成形品の製造方法であって、
中間天板谷線と該中間天板谷線を挟んで設けられた第1中間天板部及び第2中間天板部と、前記稜線部に相当する部位に形成された中間稜線部、該中間稜線部に連続する中間縦壁部、及び該中間縦壁部に連続する中間段差谷部を含む段差からなるステップ形状部と、該ステップ形状部に連続して外方に延出する外方面部と、を有する中間成形品をプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品を前記プレス成形品にプレス成形する第2成形工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、プレス成形によって製造されるプレス成形品が、前記天板部と、該天板部から前記稜線部を介して連続する前記縦壁部と、該縦壁部から連続するフランジ部と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記中間成形品の前記中間稜線部の曲率半径が、前記プレス成形品の稜線部の曲率半径と同じかそれ以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天板谷線の延長上に位置する縦壁部先端又はフランジ部先端における伸びフランジ変形による割れを抑制し、かつ、前記天板谷線が縦壁部に接続する稜線部の部位に発生しやすい座屈(しわ、折れ込み)を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係るプレス成形品の製造方法の説明図である。
図2】本実施の形態において成形された中間成形品の説明図である。
図3】本実施の形態における第2成形工程の成形過程の説明図である。
図4】本実施の形態における作用効果の説明図である。
図5】本発明が対象としているプレス成形品の説明図である。
図6】従来のプレス成形品の製造方法の説明図である。
図7】従来のプレス成形方法の成形過程の説明図である。
図8】従来のプレス成形方法で製造されたプレス成形品の課題の説明図である。
図9】本発明の他の態様に係るプレス成形品及び中間成形品の説明図である。
図10】実施例で製造対象としたプレス成形品の説明図である。
図11】実施例における従来例のプレス成形方法の説明図である。
図12】実施例における従来例のプレス成形解析結果の説明図である。
図13】実施例における発明例のプレス成形方法の説明図である。
図14】実施例における発明例のプレス成形解析結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が対象とする目標形状であるプレス成形品について、図5のL字断面形状の例に基づいて説明する。
本発明が対象としているプレス成形品1は、少なくとも、天板部3と、天板部3から稜線部5を介して連続する縦壁部7とを有する。天板部3には稜線部5に交差する天板谷線3cが形成され、天板谷線3cを挟んで第1天板部3a及び第2天板部3bを備えている。
【0015】
このようなプレス成形品1をプレス成形した際に生ずる問題点について、板厚1.4mm、引張強度590MPa級鋼板をブランク15としてプレス成形した場合を例に説明する。
図6は、本発明が対象とするプレス成形品1を1工程でプレス成形する場合である。
従来は、天板谷線成形部9bを有するパンチ9と、パッド11と、ダイ13を用いて、金属板であるブランク15をパッド11とパンチ9で押さえて天板部3に天板谷線3cを成形しつつ、ダイ13を相対的に移動させて縦壁部7を成形していた。
なお、ダイ13は稜線部5を成形するダイ顎部13bを有する。
【0016】
図7は、プレス成形中の天板谷線3cの断面(図5のA-A断面)を示したものである。
なお、図7の[3mmup]等の数値は成形下死点までの板厚を考慮したパンチ9のパンチ肩部9aとダイ顎部13bとのプレス成形方向の隙間である。例えば、[3mmup]のときのパンチ9のパンチ肩部9aとダイ顎部13bとの隙間はプレス成形品1の板厚+3mmとなる。
【0017】
図7に示すように、[37mmup]でブランク15がパッド11によりパンチ9の天板谷線成形部9bに押し付けられ、ブランク15に、天板谷線3cとその両側(紙面前後)に第1天板部3aと第2天板部3bが形成される。
[27mmup]でダイ13が天板谷線3cの延長部位となるブランク15に接触するが、天板谷線3cはその両側に2つの天板面が形成されているため剛性が高くなっている。このため、プレス成形が進んで[25mmup]ではダイ13に接触したブランク15がパンチ肩部9aに沿わず接触しないまま腰折れする。
さらに、[21mmup]で腰折れしたブランク15がパンチ9に接触しないまま成形方向に折れ曲がり、[14mmup]、[3mmup]で腰折れしたブランク15がダイ13とパンチ9の隙間で縦壁部7に成形される。
そして、[1mmup]でパンチ肩部9aに接触して、天板谷線3cから縦壁部7に接続する稜線部5が成形され、成形下死点に至る。
【0018】
従来のプレス成形工程をFEM解析した成形下死点での板厚分布を図8に示す。図8におけるA-A点線は、図5と同様に天板谷線3cの位置を示している。
図8から、天板谷線3cの延長上に位置する縦壁部7の先端は伸びフランジ変形となって、最大板厚減少率が21.5%と板厚が大きく減少して割れが発生しやすい。また、天板谷線3cから縦壁部7に接続する稜線部5の部位の板厚が最大板厚増加率42.9%と著しく増加して、しわが発生し折れ込みに至る。
【0019】
上記のとおり、従来のプレス成形工程においては、成形当初にパンチ9とパッド11により2つの天板面が成形され、これら2つの天板面に挟まれた天板谷線3c及びその近傍は天板谷線3cが成形されることで曲げ方向に対する剛性が高くなる。そのため、剛性の高い天板谷線3cの延長部位及びその近傍をダイ13により成形すると、天板谷線3cがパンチ肩部9aに沿わず接触しないまま縦壁部7に接続する稜線部5近傍の部位に腰折れが生じ、板厚が増加して、しわや折れ込みが発生しやすい。
また、2つの天板面が略V字状に形成されるため、ブランク15の先端を縦壁部7に成形しようとすると、互いに拡がる方向に曲げられる。このため、天板谷線3cの延長線上に位置する縦壁部7の先端に伸びフランジ変形が加わり、大きな張力が作用して板厚が減少して割れやすくなる。
【0020】
このような一連の成形過程における板厚増加や板厚減少を抑制するため、本発明者は、図7の[25mmup]から[21mmup]のブランク15の変形に着目した。
そして、[25mmup]で発生した腰折れがパンチ肩部9aに接触しないまま成形される点に問題があることを知見した。
【0021】
そこで、予め、天板部3から縦壁部7に接続する稜線部5のR(アール)に沿って曲げ成形された中間成形品(図2)を成形し、中間成形品を目標形状にプレス成形することを考えた。これにより、中間成形品を目標形状にプレス成形する過程では、中間稜線部21がプレス成形当初からパンチ肩部9aに接触して、それ以上に変形が進展しなくなるため、従来のような腰折れを抑制できると考えた。
【0022】
また、上記の中間成形品について、図2に示す中間天板部19と中間稜線部21と中間縦壁部20に加えて、中間段差谷部22から外方に延出する外方面部25を設けて段差形状とすることを考えた。これにより、中間成形品を目標形状にプレス成形する過程で、段差形状の中間縦壁部20の高さだけ先に成形されているため、外方面部25が縦壁部7にプレス成形される際に、中間縦壁部20から延出する外方面部25の伸びフランジ変形量が少なくなって割れが発生しにくくなる。
【0023】
本発明はかかる考えに基づくものであり、図1に示すように、プレス成形工程を、中間成形品17を成形する第1成形工程と、中間成形品17を目標形状であるプレス成形品1に成形する第2成形工程の2工程に分けて成形する。
中間成形品17は、図2に示すように、中間天板部19として、中間天板谷線19cを挟んで設けられた第1中間天板部19a及び第2中間天板部19bを有している。
また、中間成形品17は、稜線部5に相当する部位に形成された中間稜線部21、該中間稜線部21に連続する中間縦壁部20、及び該中間縦壁部20に連続する中間段差谷部22を含む段差からなるステップ形状部23を有している。
すなわち、本願明細書では、中間天板部19と中間稜線部21とが接続する部分から、中間稜線部21、中間縦壁部20、中間段差谷部22、および中間段差谷部22と外方面部25とが接続する部分までの段差部を、ステップ形状部23と称している。
さらに、中間成形品17は、ステップ形状部23に連続して外方に延出する外方面部25を有している。
外方面部25は第2成形工程で縦壁部7に成形される。
【0024】
図2は、外方面部25が第1中間天板部19a及び第2中間天板部19bと平行になっている例であるが、第1中間天板部19a及び第2中間天板部19bとが平行である必要はない。
また、第1中間天板部19a及び第2中間天板部19bは、第2成形工程でプレス成形品1の第1天板部3a及び第2天板部3bとなれば良いため、目標形状であるプレス成形品1の第1天板部3a及び第2天板部3bの形状と完全に一致する必要はない。
中間天板谷線19cは、第2成形工程でプレス成形品1の天板谷線3cとなる部分である。中間天板谷線19cは、目標形状であるプレス成形品1の天板谷線3cと長手方向(図2のX方向)の位置が合っていればよく、プレス成形品1の天板谷線3cの形状と完全に一致する必要はない。
以下、中間成形品17が図2に示す形状の場合を例に挙げて、図1に基づいて第1成形工程と第2成形工程を詳細に説明する。
【0025】
<第1成形工程>
第1成形工程では、図1(a)に示すように、ステップ成形パンチ27とステップ成形ダイ29を用い、ブランク15を中間成形品17にプレス成形する。
なお、中間成形品17の中間稜線部21の曲率半径は、プレス成形品1の稜線部5の曲率半径と同じかそれ以上であることが好ましい。これによって、第2成形工程において、中間稜線部21がパンチ9のパンチ肩部9aに接触しやすくなるからである。
中間稜線部21の曲率半径の上限には特に規制はないが、曲率半径が大きすぎると第2成形工程において、中間稜線部21がパンチ9のパンチ肩部9aに接触する範囲が小さくなる可能性もある。したがって、中間稜線部21の曲率半径はプレス成形品1の稜線部5の曲率半径の5倍以下であることが好ましい。
【0026】
<第2成形工程>
第2成形工程では、図1(b)に示すように、目標形状であるプレス成形品1(図5)を成形するパンチ9とパッド11とダイ13を用いる。図1(b)に示す金型は、従来例として図6に示したものと同様である。
パンチ9の上に中間成形品17を載せ、パッド11で押さえて、ダイ13をパンチ9側に相対移動させることにより、外方面部25を縦壁部7に成形し、目標形状であるプレス成形品1に成形する。
【0027】
図3は、図2に示す矢印B-B方向に切断した切断面について、第2成形工程におけるパンチ9とダイ13の動き、及び中間成形品17の変形過程を示したものである。
なお、[3mmup]等の数値は、前述した図7の場合と同様である。
【0028】
図3に示すように、第2成形工程では、中間成形品17がパンチ9に載せられて、パッド11で押さえられる。成形が始まると中間成形品17は、[37mmup]の図に示されるように、パンチ9の天板谷線成形部9bに押し付けられ、[27mmup]でステップ形状部23の中間稜線部21がパンチ9のパンチ肩部9aに接触する。
このように、中間成形品17のステップ形状部23における中間稜線部21がパンチ肩部9aに沿うことで、これ以降の成形過程での中間稜線部21の変形量が抑えられ、板厚増加が抑制されて腰折れが防止される。
【0029】
その後、ダイ13により[24mmup]から[15mmup]で中間成形品17の中間段差谷部22が曲げ戻され、[3mmup]でダイ13とパンチ9の隙間で縦壁部7に成形され、[1mmup]でダイ顎部13bが中間成形品17の中間稜線部21に接触して、成形下死点に至る。
この間、従来例を示した図7の[27mmup]から[1mmup]に至る過程で腰折れは発生しない。
【0030】
また、中間成形品17にはステップ形状部23が形成されていることから、第2成形工程で縦壁部7に成形する成形高さは、ステップ形状部23の中間段差谷部22から外方面部25の端部に至る距離となる。このため、従来例のように、天板部3の稜線部5のR開始位置からブランク15の先端までの距離に比べて短くなっており、伸びフランジ変形による板厚減少が抑制され、割れ発生を防止できる。
【0031】
本実施の形態のプレス成形過程をFEM解析し、第1成形工程と第2成形工程の成形下死点での板厚分布を図4に示す。図4(a)が第1成形工程の成形下死点での板厚分布、図4(b)が第2成形工程の成形下死点での板厚分布である。
図4(a)に示すように、第1成形工程では、中間天板谷線19cが中間縦壁部20に接続する中間稜線部21の部位で最大板厚増加率が8.5%となる。
また、図4(b)に示すように、第2成形工程では、天板谷線3cが縦壁部7に接続する稜線部5の部位の最大板厚増加率は28.1%であり、天板谷線3cの延長上に位置する縦壁部7先端の最大板厚減少率は19.7%である。
【0032】
図4(b)の本発明の場合と、図8の従来例の場合を比較すると、天板谷線3cが縦壁部7に接続する稜線部5の部位の最大板厚増加率は、従来の場合が42.9%であったのに対して、本発明の場合は28.1%と低減し、しわや折れ込みが抑制できることがわかる。また、天板谷線3cの延長上に位置する縦壁部7先端の最大板厚減少率は、従来の場合が21.5%であったのに対して、本発明の場合は19.7%と低減し、伸びフランジ変形に伴う割れが抑制できることがわかる。
【0033】
なお、上記の説明では、目標形状であるプレス成形品1の第1天板部3a及び第2天板部3b、中間成形品17の第1中間天板部19a及び第2中間天板部19bが湾曲するものであったが、これらは図9に示すように、平坦面であってもよい。
なお、外方面部25は、天板部3と同方向に凹形状となるようにするとよい。
外方面部25を縦壁部7から外方に向けて凸状となる山形部に折り曲げられた中間形状部品とすると、凸状山形部頂上の縦壁高さに比較して、凸状山形部の両側の裾の縦壁高さが高くなる。その結果、凸状山形部の裾となる左右の方向に大きな張力が作用して、凸状山形部頂上となる外方面部25の先端に割れが生じやすくなる場合がある。
従って、本発明では、中間成形工程で、天板部3と同方向に凹形状となる外方面部25を有する段差状の中間成形品17を成形し、中間天板谷線19cの谷線の延長上にある縦壁高さと中間天板部19の左右端部からの縦壁高さを近づけて中間天板部19の天板面と同方向に凹形状となるようにするとよい。その結果、外方面部25の先端付近において左右に大きな張力が作用することがなく、安定してプレス成形が可能になる。
【実施例0034】
本発明のプレス成形品の製造方法による効果を確認するため、FEMによるプレス成形解析を行ったので以下に説明する。
板厚1.4mm、590MPa級鋼板を用いて、図10に示すように、天板部3と稜線部5と縦壁部7とフランジ部33を有し、天板部3が第1天板部3aと第2天板部3bの2つの天板部3からなるプレス成形品31のプレス成形解析を行って、板厚分布を求めた。プレス成形品31の各部の寸法は図10に示す通りである。なお、図10において、図5に示したプレス成形品1と同一及び対応する箇所は同一符号を付している。
【0035】
なお、予め実際のプレス成形により、天板谷線3cが縦壁部7に接続する稜線部5の部位は、板厚増加率30%以上でしわが発生し、35%以上で折れ込みが発生することがわかっている。また、天板谷線3cの延長上に位置するフランジ部33の先端は板厚減少率20%を超えると、割れが発生することがわかっている。
【0036】
従来例として、図11に示すように、1工程で、パンチ9とパッド11により天板谷線3cを成形しつつ、ダイ13を相対的に移動させて、図10に示す目標形状にプレス成形するプレス成形工程をFEM解析した。成形下死点での板厚分布を求めた結果を図12に示す。
天板谷線3cが縦壁部7に接続する稜線部5の部位の最大板厚増加率は39.9%であり、しわや折れ込みが発生することがわかった。また、天板谷線3cの延長上に位置するフランジ部33の先端の最大板厚減少率は24.8%であり、割れが発生することがわかった。
【0037】
本発明例として、図13に示すように、中間成形品17を成形する第1成形工程と、中間成形品17を目標形状であるプレス成形品31に成形する第2成形工程の2工程からなるプレス成形工程をFEM解析した。
なお、図13に示す例では、中間成形品17における外方面部25を第1中間天板部19a及び第2中間天板部19bと平行にした。
中間成形品17と目標形状であるプレス成形品31の成形下死点における板厚分布を図14に示す。
中間成形品17における中間天板谷線19cが中間縦壁部20に接続する中間稜線部21の部位の最大板厚増加率は6.8%であった(図14(a)参照)。
また、プレス成形品31における天板谷線3cが縦壁部7に接続する稜線部5の部位の最大板厚増加率は25.3%であり、しわや折れ込みが発生しないことがわかった。また、天板谷線3cの延長上に位置するフランジ部33の先端部位の最大板厚減少率は15.7%であり割れが発生しないことがわかった。(図14(b)参照)。
【0038】
以上のように、従来例に比べて本発明例は、天板谷線3cが縦壁部7に接続する稜線部5の部位の最大板厚増加率が低減し、しわや折れ込みが抑制された。
また、従来例に比べて、本発明例は天板谷線3cの谷線延長上に位置するフランジ部33の先端の最大板厚減少率が低減し、割れが抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0039】
1 プレス成形品
3 天板部
3a 第1天板部
3b 第2天板部
3c 天板谷線
5 稜線部
7 縦壁部
9 パンチ
9a パンチ肩部
9b 天板谷線成形部
11 パッド
13 ダイ
13b ダイ顎部
15 ブランク
17 中間成形品
19 中間天板部
19a 第1中間天板部
19b 第2中間天板部
19c 中間天板谷線
20 中間縦壁部
21 中間稜線部
22 中間段差谷部
23 ステップ形状部
25 外方面部
27 ステップ成形パンチ
29 ステップ成形ダイ
31 プレス成形品(実施例)
33 フランジ部
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