(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104284
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】からくり時計
(51)【国際特許分類】
G04B 45/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
G04B45/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206587
(22)【出願日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2023008391
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115773
【氏名又は名称】リズム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長竹 健樹
(72)【発明者】
【氏名】西 清和
(57)【要約】
【課題】中心部分のスペースを確保して、動きのある模様を呈する装飾部分を設けることができるからくり時計を提供する。
【解決手段】からくり時計10は、内歯車113を備えるベース部材110と、分割文字板20が接続されて内歯車113と歯合する複数の歯車140が回転可能に環状に配置され、透光性を有する材料により形成されて、ベース部材110に相対的に軸心CL周りに回転可能に設けられる回転部材120と、第1の模様202-1が設けられ、ベース部材110と回転部材120との間におけるベース部材110に固定して設けられる第1模様シート210と、第2の模様202-2が設けられ、ベース部材110と回転部材120との間における回転部材120に固定して設けられる第2模様シート220と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心周りに形成される内歯車を備えるベース部材と、
分割文字板が接続されて前記内歯車と歯合する複数の歯車が回転可能に環状に配置され、透光性を有する材料により形成されて、前記軸心周りに回転可能に設けられる回転部材と、
第1の模様が設けられ、前記ベース部材と前記回転部材との間における前記ベース部材に固定して設けられる第1模様シートと、
第2の模様が設けられ、前記ベース部材と前記回転部材との間における前記回転部材に固定して設けられる第2模様シートと、
を有するからくり時計。
【請求項2】
前記第1の模様と前記第2の模様は、略同一である、請求項1に記載のからくり時計。
【請求項3】
前記第1の模様と前記第2の模様は、異なる、請求項1に記載のからくり時計。
【請求項4】
前記第1模様シートと前記第2模様シートは、同径の円形に形成されると共に、前記軸心と同心に配置される、請求項1に記載のからくり時計。
【請求項5】
前記第1模様シートと前記第2模様シートは、前記軸心と同心に配置され、
前記ベース部材は、前記軸心周りにボスが設けられ、
前記回転部材は、前記ボスに固定される固定軸により回転可能に支持されて、
前記第1模様シートは、前記軸心に合わせて設けられる円形の第1開口を有し、
前記ボスの外周面には、前記第1開口の周縁と係止する係止突起が設けられる、請求項1に記載のからくり時計。
【請求項6】
前記第1模様シートと前記第2模様シートは、前記軸心と同心に配置され、
前記ベース部材は、前記軸心周りにボスが設けられ、
前記回転部材は、前記ボスに固定される固定軸により回転可能に支持されて、
前記第2模様シートは、前記軸心に合わせて設けられる円形の第2開口を有し、前記第2開口の直径は、前記固定軸よりも大きく、前記ボスの外形よりも小さい、請求項1に記載のからくり時計。
【請求項7】
前記第2模様シートは、複数の係止開口を備え、 前記回転部材は、各前記係止開口に対応して設けられる複数の係止部を備え、
前記係止部は、一端を自由端として他端を前記回転部材に固定されることで弾発性を備える円弧状の板バネ部の前記一端側に設けられ、前記係止開口に挿入して係止する係止突起を有する、請求項1に記載のからくり時計。
【請求項8】
前記第1模様シートの後側における前記ベース部材には、発光部が設けられる、請求項1乃至請求項8の何れかに記載のからくり時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、からくり時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、文字板を複数に分割した分割文字板や装飾部材を備えて、各分割文字板や装飾部材を所定時刻等で回転させ、その動きを楽しむことができるからくり時計が開示されている。例えば、特許文献1には、複数の歯車に、それぞれ装飾部材や分割文字板が設けられ、分割文字板のみを回転させたり装飾部材のみを回転させたりすることができるからくり時計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
からくり時計は、鑑賞して楽しむものであるため、より一層の装飾効果を追加したい要望がある。特に、時計の中心部分(文字板の中心部分)は、注目される部位であり、この中心部分に動きのある模様を呈する装飾部分を設けたいことがある。しかしながら、従来のからくり時計では、分割文字板や装飾部材を回転させるための機構がからくり時計の中心部分にも配置されるため、中心部分に動きのある模様を呈する装飾部分を設けることが難しいことがあった。
【0005】
本発明は、中心部分のスペースを確保して、動きのある模様を呈する装飾部分を設けることができるからくり時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のからくり時計は、軸心周りに形成される内歯車を備えるベース部材と、分割文字板が接続されて前記内歯車と歯合する複数の歯車が回転可能に環状に配置され、透光性を有する材料により形成されて、前記軸心周りに回転可能に設けられる回転部材と、第1の模様が設けられ、前記ベース部材と前記回転部材との間における前記ベース部材に固定して設けられる第1模様シートと、第2の模様が設けられ、前記ベース部材と前記回転部材との間における前記回転部材に固定して設けられる第2模様シートと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中心部分のスペースを確保して、動きのある模様を呈する装飾部分を設けることができるからくり時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るからくり時計の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るからくり時計の分割文字板が動作している途中の状態を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るからくり時計の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るからくり時計の
図1のIV-IV断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るからくり時計の駆動機構の分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るからくり時計のベース部材のフランジ部を一部切り欠いて減速機構が見えるようにした、ベース部材、回転部材、歯車を組み合わせた状態の正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るからくり時計の
図6の正面図に隠蔽部材を組み付けた状態の正面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るからくり時計の模様シートの例を示す正面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るからくり時計において、模様が
図8のように見える状態から、第2模様シートが3度反時計回りに回転したときの模様を示す正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るからくり時計において、模様が
図9のように見える状態から、第2模様シートが3度反時計回りに回転したときの模様を示す正面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るからくり時計において、模様が
図10のように見える状態から、第2模様シートが3度反時計回りに回転したときの模様を示す正面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るからくり時計において、模様が
図11のように見える状態から、第2模様シートが3度反時計回りに回転したときの模様を示す正面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るからくり時計において、模様が
図12のように見える状態から、第2模様シートが3度反時計回りに回転したときの模様を示す正面図である。
【
図14】本発明の実施形態の変形例に係るからくり時計のベース部材を前側から見た斜視図である。
【
図15】本発明の実施形態の変形例に係るからくり時計のベース部材を後側から見た斜視図である。ムーブメントは二点鎖線で示している。
【
図16】本発明の実施形態の変形例に係るからくり時計の
図15のXVI-XVI断面図である。
【
図17】本発明の実施形態の変形例に係るからくり時計における、第1模様シートが取り付けられた回転部材を後側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1~
図3に示すからくり時計10は、正面視略長円形の筐体15を有する。筐体15の中央より若干上方には、時計部50が設けられている。時計部50は、分針11と、時針12と、秒針13と、円環状の文字板を複数に分割した分割文字板20とを有する。分針11、時針12、秒針13は、指針軸14と接続して駆動される。本実施形態においては、分割文字板20は、3つの数字が記載された3個の第1分割文字板21と、1つの数字が記載された3個の第2分割文字板22とに分割されている。
【0010】
各分割文字板20は、時計部50が備える駆動機構100が動作することで、自転しながら指針軸14周りを公転する。
図2に示す分割文字板20の形態は、動作途中の形態を示す。
【0011】
また、からくり時計10は、時計部50の下方に回転飾り部60が設けられている。回転飾り部60は、装飾部材61が回転する装飾部である。
【0012】
なお、以下の説明においては、からくり時計10の正面側を前、背面側を後とし、からくり時計10を正面側から見て左側を左、右側を右、上側を上、下側を下とする。
【0013】
次に、時計部50及び時計部50が備える駆動機構100について説明する。
図4に示すように、時計部50は、筐体15の内部に設けられている。時計部50は、ムーブメント51を備える。分針11、時針12、秒針13は、ムーブメント51の指針軸14における軸心CL周りに回転する。
【0014】
図4及び
図5に示すように、駆動機構100のベース部材110は、略円板状に形成されている。ベース部材110の前側は、広い範囲で浅い凹部111が形成されている。凹部111の外周は、フランジ状に形成されている。凹部111の軸心CL周りには、ボス112が設けられている。ムーブメント51は、ベース部材110の背面側に設けられ、指針軸14が前側に突出している。
【0015】
ベース部材110は、軸心CL周りに円環状に設けられる内歯車113を備える。内歯車113の後側における、左上部分には、駆動歯車105がベース部材110の内径側に露出している。ベース部材110の左上側の外周部分には、駆動機構100の駆動源となるモータ101が設けられている。モータ101の図示しない駆動軸に設けられるピニオンギヤは、複数の歯車からなる減速機構103(
図6参照)を介して、回転力を伝達可能に駆動歯車105と接続している。
【0016】
ベース部材110の凹部111の外周には、二股状のガイド部材117が4か所に設けられている。ガイド部材117は、後述の回転部材120の円環状の外歯車123を挟み込むようにして配置され、回転部材120の回転時における回転軸心のブレを低減させている。
【0017】
ベース部材110の凹部111には、略円板状の回転部材120が設けられている。回転部材120の前側は、略平坦面状に形成され、軸心CL周りにボス122が設けられている。ボス122には、固定軸130が挿入されている。固定軸130は、前端にフランジ部が設けられる。固定軸130は、フランジ部をボス122の前端に当接した状態で、後側の部分がベース部材110のボス112内に挿入され、固定されている。回転部材120は、ボス122の内周面が固定軸130の外周面を摺接することで、軸心CL周りに回転可能とされている。
【0018】
回転部材120の後側は、広い範囲で浅い凹部121が形成されている。凹部121が後側に開口する開口縁部である回転部材120の外周部には、軸心CL周りに環状に配置される外歯車123が形成されている。外歯車123は、ベース部材110の内歯車113よりも後側に配置され、駆動歯車105と歯合する。
【0019】
回転部材120の前面側には、回転部材120の外縁近傍に、軸心CL周りに等間隔に配置される6本の歯車軸124が設けられている。また、回転部材120の前側には、歯車軸124間に、6個のボス125が設けられている(
図6も参照)。
【0020】
回転部材120の前面には、各歯車軸124に回転可能に設けられる複数である6個の歯車140が設けられている。6個の歯車140のうち、3個の歯車140-1,140-2,140-3の歯部は、他の3個の歯車140-4,140-5,140-6の歯部よりも大径に形成されている。歯車140-1は、歯車軸124-1に回転可能に支持される。同様に、歯車140-2,140-3,140-4,140-5,140-6は、それぞれ、歯車軸124-2,124-3,124-4,124-5,124-6に回転可能に支持される。3個の歯車140-1,140-2,140-3と3個の歯車140-4,140-5,140-6は、軸心CL周りに交互に配置される。
【0021】
各歯車140には、各歯車140の回転軸(歯車軸124の軸心)周りに、軸長の薄い略円柱状に前側に突出する文字板支持部141が設けられている。各歯車140における各文字板支持部141は、略同一の大きさに形成されている。文字板支持部141の直径は、分割文字板20の本体板26の幅よりも小さい。よって、文字板支持部141は、本体板26により隠蔽されている(
図1~
図3参照)。また、歯車140は、内歯車113と歯合している(
図6参照)。
【0022】
回転部材120の前側には、隠蔽部材150が設けられている。
図7も参照して、隠蔽部材150は、軸心CL周りに略円環状に形成されている。隠蔽部材150には、軸心CL周りに、円形に開口する貫通された開口孔151が6個設けられている。隠蔽部材150には、各開口孔151に対応して内径方向に円弧状に突出する円弧部152が形成されている。円弧部152は、歯車140の外形(歯車140の歯先円)に倣って形成される。
【0023】
隣り合う円弧部152は、円弧部152の基端にて、直線状の直線部153により接続している。隠蔽部材150は、複数の円弧部152及び複数の直線部153により、内径部に、略放射状に開口する空間部Sが形成されている。また、隠蔽部材150には、6個の小径の円形に貫通するザグリ付きのねじ孔155が設けられている。
【0024】
図4及び
図7に示すように、隠蔽部材150は、ねじ孔155を介して回転部材120のボス125の雌ねじ(不図示)にねじ部材が螺合して、回転部材120に固定される。各開口孔151は、各歯車140の文字板支持部141に対応している。文字板支持部141は、開口孔151を介して隠蔽部材150から露出している。
【0025】
分割文字板20は、時分を表す数字が記載される本体板26の背面側に複数のボス27(
図4参照)が後側に向けて立設する。ボス27は、雌ねじ部が形成されており、歯車140の文字板支持部141に設けられた複数のねじ孔141aを介してねじ部材が歯車140の後側から螺合する。従って、分割文字板20は、歯車140に固定されている。歯車140は、前側で分割文字板20と接続し、歯車軸124により後側で回転部材120に回転可能に設けられている。
【0026】
分割文字板20のうちの3つの第1分割文字板21のボス27は、3つの第2分割文字板22のボス27よりも長く形成されている。従って、
図3及び
図4に示すように、第1分割文字板21の本体板26は、第2分割文字板22の本体板26よりも前側に位置している。
【0027】
分割文字板20の第1分割文字板21は、本体板26の両端部が略凸円弧状に形成され、第2分割文字板22は、本体板26の両端部が凹円弧状に形成される。分割文字板20は、第1分割文字板21と第2分割文字板22の本体板26における各両端が接続するように並べられると、
図1のように複数の本体板26が略円環状に配置される。
【0028】
分割文字板20の本体板26には、略三角の枠状に突出するトラス部28が設けられている。第1分割文字板21のトラス部28の突端には、ベルの形状を模した装飾部28aが設けられている。分割文字板20の本体板26が
図1に示すように略円環状に配置されるとき、トラス部28は、星形に配置される。
【0029】
駆動機構100は、モータ101が駆動すると、駆動歯車105により回転部材120が軸心CL周りに回転する。回転部材120が軸心CL周りに回転すると、内歯車113に歯合する複数の歯車140が、歯車軸124の軸心周りに回転する。よって、歯車140は、軸心CL周りに公転しながら歯車軸124の軸心周りに自転する。従って、歯車140に固定される分割文字板20は、軸心CL周りに公転しながら歯車軸124の軸心周りに自転する。
【0030】
ここで、回転部材120は、透光性を有する材料により形成される。透光性を有する材料とは、(回転部材120の)後側に配置された物の形状が、前側からは明確に視認できないが、後側からの光は前側から視認できるものである。なお、回転部材120は、透明に形成されていても良い。
【0031】
また、隠蔽部材150は、不透明であって、透光性を有さない材料により形成されている。隠蔽部材150は、前面若しくは後面、又は両面を黒色に塗装されると好ましい。これにより、後述する発光部230からの光を遮蔽することができるからである。
【0032】
隠蔽部材150は、分割文字板20と歯車140の歯部との間に配置され、
図7に示すように、少なくとも歯車140の歯部を覆っている。従って、前側からは、少なくとも歯車140の歯部を視認することができない。本実施形態においては、歯車140の文字板支持部141のみが隠蔽部材150から露出している。歯車140の文字板支持部141は、文字板支持部141に取り付けられる分割文字板20(本体板26)により、前側から視認することができない。
【0033】
また、回転部材120とベース部材110との間には、2枚の模様シート200が設けられている。模様シート200は、透明樹脂製のシートに任意の模様が印刷等により記載されたものである。模様シート200は、中央に円形の開口孔部201が設けられている。開口孔部201は、ベース部材110のボス112の外形よりも若干の大きく形成される。
【0034】
2枚の模様シート200のうち、後側の第1模様シート210は、ベース部材110の凹部111に設けられ、軸心CL周りに形成される円筒部111aの前端に固定されている(
図4も参照)。前側の第2模様シート220は、回転部材120の後面である凹部121に固定されている。第1模様シート210の前面と第2模様シート220の後面は近接して配置され、開口孔部201によりボス122や固定軸130との干渉が回避されている。模様シート200は、軸心CLと同心に配置される。
【0035】
模様シート200の模様は、光を通す透光部と、光を通さない遮蔽部とにより形成することができる。透光部は、印刷しない又は薄い印刷により、透明樹脂シートの機材を透過するように形成することができる。遮蔽部は、黒塗り等の印刷を施すことで、形成することができる。
【0036】
ここで、第1模様シート210に設けられる模様を第1の模様202-1といい、第2模様シート220に設けられる模様を第2の模様202-2という。本実施形態においては、第1の模様202-1と第2の模様202-2は同じ模様とされている。すなわち、第1模様シート210と第2模様シート220は、同じ模様シート200とされている。
【0037】
例えば、
図8に模様シート200の例を示す。模様202は、白塗りで示す部分が光を透過することができる透光部202aであり、黒塗りで示す部分が光を通さずに遮蔽する遮蔽部202bである。模様202は、12個の三角形状部203と、12個のダイヤ形状部204とを有する。三角形状部203は、透光部202a及び遮蔽部202bにより、細い三角形状に形成される。12個の三角形状部203は、軸心CL周りに放射状となるように軸心周りに等間隔で配置されている。ダイヤ形状部204は、三角形状部203の間に軸心周りに等間隔で配置されている。ダイヤ形状部204は、ダイヤ形状とされる透光部202aの内側に、当該ダイヤ形状の略半分を遮蔽部202bとするよう形成されている。
【0038】
本実施形態においては、
図8の模様シート200を2枚用意して、第1模様シート210、第2模様シート220とすることができる。第1の模様202-1と第2の模様202-2は同じとなる。また、本実施形態においては、
図5に示すように、ベース部材110の凹部111における円筒部111a内に、青色発光ダイオード(LED)等からなる発光部230が設けられている。からくり時計10は、正面側から見たときに、隠蔽部材150の空間部Sで露出される回転部材120を介して、発光部230からの光が模様シート200の透光部202aを透過して視認可能とされている。そうすると、模様シート200の透光部202a及び遮蔽部202bにより形成される模様が前側から視認することができる。
【0039】
回転部材120は、ベース部材110に対して軸心CL周りに回転する。回転部材120に設けられる第1模様シート210の第1の模様202-1が第2の模様202-2と合致する位置では、
図8のように、第1の模様202-1(第2の模様202-2)と同様に視認される。
【0040】
ここで、例えば、回転部材120が正面から見て反時計回りに3度回転した場合には、
図9のように視認される、
図10は更に3度、以降同様に、
図11、
図12、
図13のように模様が変化して視認される。回転部材120の回転が連続的に行われることにより、模様が連続的に変化しているように見ることができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、第1の模様202-1と第2の模様202-2は、同一の模様としたが、例えば線状に見える透光部202aの線幅を第1の模様202-1と第2の模様202-2で若干異ならせる等、両者に若干の変更を加えて略同一とすることで、2枚の模様シート200を介して見える光の模様が更に綺麗に見えるようにすることもできる。
【0042】
また、第1の模様202-1と第2の模様202-2を全く異なるものとすることもできる。例えば、固定側の第1の模様202-1に多数のビルが建つ都市をイメージする模様を施して、可動側の第2の模様202-2は第1の模様202-1であるビル群の周囲に星をちりばめた模様を施すことで、都会の星空をイメージした模様とすることができる。
【0043】
上記の実施形態におけるベース部材110の変形例に係るベース部材110Aを
図14、
図15に示す。なお、以下の説明においては、上記の実施形態と同じ部材や部位については同じ符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
【0044】
ベース部材110Aの凹部111の円筒部111aの内径側には、円筒部111aの内周面に接続し、略半円形状に前側に突出するシート台座111bが6個設けられている。複数のシート台座111bは、軸心CL周りに放射状に等間隔で設けられている。
図15に示すように、複数のシート台座111bは、ベース部材110Aの後側では凹状に形成されている。第1模様シート210は、ベース部材110Aの前側において、6個のシート台座111b上に配置される。円筒部111aの上側内周面には、略V字状に突出するV字突起111a1が設けられ、第1模様シート210に形成されるV字状の切欠き(不図示)と係合する。これにより、第1模様シート210は、ベース部材110Aに対して位置決めされる。
【0045】
図14のP1部囲み図に示すように、ベース部材110Aの軸心CL周りの前側に設けられるボス112Aの外周には、補強用のリブ301が放射状に4カ所設けられている。また、ボス112Aの外周前端には、2つの係止突起302が設けられている。2つの係止突起302は、軸心CL周りにおけるリブ301間である上側と下側の2カ所にそれぞれ設けられている。
図16に示すように、第1模様シート210の開口孔部201-1(第1開口)の内径は、ボス112Aの外径D1が挿通する程度にボス112Aの外径D1と略同一とされている。そして、開口孔部201-1の周縁は、係止突起302の後側に位置することで、開口孔部201-1と係止突起302とが係止する。これにより、第1模様シート210の中央部分が浮き難くされている。
【0046】
図14のP1囲み図及び
図17を参照して、ボス112Aの内径側において、軸心CLに同軸で設けられる丸孔303は、ムーブメント51の指針軸14が挿通される。丸孔303の上下には、それぞれ、ねじ孔304が設けられている。固定軸130は、ベース部材110Aの後側からねじ孔304を介してねじ部材305が挿入され、固定軸130のねじ部と螺合することで、ベース部材110Aのボス112Aに固定される。なお、丸孔303の左側及び右下側には、固定軸130から後方に突出するピン(不図示)が挿入されるピン孔306が設けられて、固定軸130がベース部材110Aに対して位置決めされている。
【0047】
ベース部材110Aには、複数のLED311を、ベース部材110Aの前側に露出させる複数の開口310a,310b,310cが設けられている。開口310aは、ボス112Aの左上側に円形の貫通孔として設けられる。開口310bは、ボス112Aの右上に円形の貫通孔として設けられる。開口310cは、LED311が露出するように、2つの略矩形の貫通孔が接続して形成されている。
【0048】
図15に示すように、ベース部材110Aの後面の略中央部には、発光回路基板312が設けられている。発光回路基板312の後側には、所定間隔の隙間を空けてムーブメント51が取り付けられている(
図16参照)。発光回路基板312は、発光回路基板312の前面側に複数の半導体発光素子からなる発光部としての複数のLED311が設けられている。発光回路基板312は、上側で左方(正面から見て左方)に突出する左突出部312aと、右方(正面から見て右方)に突出する右突出部312bが設けられている。発光回路基板312の中央には、丸孔303、ねじ孔304に対応して開口する上下に長い中央開口312cが設けられている。発光回路基板312には、中央開口312cの上方に、上側に突出する第1係止部312dが設けられている。また、発光回路基板312には、中央開口312cの下方に、下側に突出する第2係止部312eが設けられている。
【0049】
なお、第1係止部312dの左右には、ムーブメント51の前面と当接するボス315が設けられている。また、中央開口312cの左右には、ムーブメント51とベース部材110Aの位置決めをするためのピン316が設けられている。発光回路基板312は、ボス315及びピン316との干渉が回避される形状や丸孔の開口を備えている。また、左突出部312aの下方のピン316の下方及び右突出部312bの下方には、他のボス315等より若干高さが高いボス317が設けられている。ボス317には、雌ねじ部が設けられている。ボス317は、ムーブメント51の孔部(不図示)に挿入され突き当てられて、ムーブメント51の後面からねじ部材(不図示)がボス317の雌ねじ部に螺合し、ムーブメント51がベース部材110Aに固定される。
【0050】
ベース部材110Aには、発光回路基板312の第1係止部312dと凹凸嵌合により第1係止部312dを係止する第1被係止部321と、発光回路基板312の第2係止部312eと係止する第2被係止部322とが設けられている。第1被係止部321は、左右方向に長い略長矩形に突出している。
図16に示すように、第1被係止部321の内部には、上側に凹状の係止凹部321aが設けられている。第1被係止部321は、係止凹部321aと連通するように下側が開放されている。なお、ベース部材110Aを前側から見てボス112Aの上方には(
図14参照)、第1被係止部321の係止凹部321aに対応する長矩形孔321bが設けられている。長矩形孔321bは、第2被係止部322(係止凹部321a)を射出成形により形成するために利用される孔である。
【0051】
第2被係止部322は、
図14及び
図15に示すように、左方に開放側を向けた略U字状の板バネ部322aが設けられている。板バネ部322aは、一端を自由端として他端をベース部材110Aに接続している。板バネ部322aの一端側(自由端側)には、略直方体状の摘み部322bが設けられている。
図16に示すように、摘み部322bの上側には、係止突起322cが設けられている。第2被係止部322は、板バネ部322aにより、上下方向に弾発自在に設けられている。
【0052】
発光回路基板312は、以下のようにしてベース部材110Aに取り付けられる。まず、発光回路基板312の第1係止部312dを、開放される第1被係止部321の下側から係止凹部321aに挿入する。これにより、第1係止部312dが第1被係止部321(係止凹部321a)に係止される。この状態で、第2係止部312eを第2被係止部322の摘み部322bの上面を滑らすように前側に押し込む。摘み部322bは、前側に向かって傾斜するテーパー状に形成されるので、スムーズに第2係止部312eが押し込まれる。そして、板バネ部322aが圧縮されることで、第2係止部312eの突端は、係止突起322cを乗り越えて係止突起322cの前側に配置される。
【0053】
第2係止部312eが第2被係止部322に係止されている状態では、板バネ部322aにより、発光回路基板312は上方に付勢されている。よって、第1係止部312dと第1被係止部321は確実に係止されている。ここで、発光回路基板312を取り外す際には、摘み部322bを押し下げることで、第2係止部312eの突端が容易に係止突起322cを乗り越えて係止突起322cの後側に位置する。すると、発光回路基板312は、上方への付勢力が解除されるので、第1係止部312dが第1被係止部321から抜け出すことができ、凹凸嵌合による係止が解除される。このように、容易に発光回路基板312を取り外すことができるので、メンテナンス性が向上されている。
【0054】
図17には、本実施形態の変形例に係る回転部材120Aを示す。ここで、第2模様シート220の外周縁近傍に、軸心CL周りに複数の係止開口323が設けられている。一方、回転部材120Aには、係止開口323に対応して設けられる複数の係止部324が設けられている。係止部324は、板バネ部324aを備える。板バネ部324aは、一端を自由端として他端を回転部材120Aに固定されて略円弧状に形成されている。板バネ部324aの一端側の突端部には、後方に向けて突出し、鉤状に形成される係止突起324bが設けられている(
図17のP2部囲み図も参照)。係止突起324bは、係止開口323に挿入して係止開口323と係止する。具体的には、係止突起324bの顎部分が係止開口323の縁部に対応する位置に配置され、係止突起324bと係止開口323が係止される。係止突起324bと係止開口323の係止により、第2模様シート220は回転部材120Aから容易に脱落することなく取り付けることができる。
【0055】
第2模様シート220の中心に開口される第2開口201-2は、軸心CLと同心に配置される。
図17に示す第2開口201-2の直径D2は、
図16に示す固定軸130の外径D3よりも大きく、ボス112Aの外径D1よりも小さい直径とされている。これにより、経時的な寸法の変化や組立誤差が生じた場合であっても、回転部材120Aのボス122の後側は、ベース部材110Aのボス112Aの突端と直接接触することがなく、樹脂製の第2模様シート220の第2開口201-2縁部の後側がボス122Aの突端と接触し摺接する。よって、別途の摺動部材を設けていなくても、回転部材120Aの回転により回転部材120Aの軸心CL周りの開口縁部分とボス112Aの突端との擦れを低減することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態によれば、からくり時計10は、軸心CL周りに形成される内歯車113を備えるベース部材110と、分割文字板20が接続されて内歯車113と歯合する複数の歯車140が回転可能に環状に配置され、透光性を有する材料により形成されて、ベース部材110に相対的に軸心CL周りに回転可能に設けられる回転部材120と、第1の模様202-1が設けられ、ベース部材110と回転部材120との間におけるベース部材110に固定して設けられる第1模様シート210と、第2の模様202-2が設けられ、ベース部材110と回転部材120との間における回転部材120に固定して設けられる第2模様シート220と、を有する。
【0057】
これにより、分割文字板20を駆動する複数の歯車140や、歯車140と歯合する内歯車113を軸心CLから径外方向に配置することができるので、軸心CLの周辺である中心部分のスペースを確保することができる。そして、ベース部材110と、ベース部材110に相対的に回転する回転部材120のそれぞれに模様シート200(第1模様シート210、第2模様シート220)を設けたので、スペースを確保した中心部分に、第1模様シート210に対して第2模様シート220が動くことで連続的に変化する模様等の動きのある模様を呈する装飾部分を設けることができる。
【0058】
また、第1の模様202-1と第2の模様202-2は、略同一である。これにより、光が動くような装飾効果を呈することができる。
【0059】
また、第1の模様202-1と第2の模様202-2を異なるようにしてもよく、この場合には、第2の模様202-2に対して第1の模様202-1が動くような模様を呈することができる。
【0060】
また、第1模様シート210と第2模様シート220は、同径の円形に形成されると共に、軸心CLと同心に配置される。これにより、模様シート200により呈される動く模様がより綺麗なものとすることができる。
【0061】
また、第1模様シート210と第2模様シート220は、軸心CLと同心に配置され、ベース部材110Aは、軸心CL周りにボス112Aが設けられ、回転部材120Aは、ボス112Aに固定される固定軸130により回転可能に支持されて、第1模様シート210は、軸心CLに合わせて設けられる円形の第1開口である開口孔部201-1を有し、ボス112Aの外周面には、開口孔部201-1の周縁と係止する係止突起302が設けられる。これにより、樹脂製の薄いシート材からなる第1模様シート210であっても、軸心CL周りの中央部分が浮き上がり難くすることができる。
【0062】
また、第1模様シート210と第2模様シート220は、軸心CLと同心に配置され、ベース部材110Aは、軸心CL周りにボス112Aが設けられ、回転部材120Aは、ボス112Aに固定される固定軸130により回転可能に支持されて、第2模様シート220は、軸心CLに合わせて設けられる円形の第2開口である開口孔部201-2を有し、開口孔部201-2の直径D2は、固定軸130の外径D3よりも大きく、ボス112Aの外径D1よりも小さい。これにより、第2模様シート220の開口孔部201-2をボス112Aの突端と回転部材120Aとの間に配置することができ、摺動擦れを低減することができる。
【0063】
また、第2模様シート220は、複数の係止開口323を備え、回転部材120Aは、各係止開口323に対応して設けられる複数の係止部324を備え、係止部324は、一端を自由端として他端を回転部材120Aに固定されることで弾発性を備える円弧状の板バネ部324aの一端側に設けられ、係止開口323に挿入して係止する係止突起324bを有する。これにより、確実に第2模様シート220を回転部材120Aに固定させることができる。
【0064】
また、第1模様シート210の後側におけるベース部材110には、発光部230が設けられる。これにより、回転部材120の後側から発光部230による強い光を照射することができるので、より鮮明な動く模様を視認することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態により限定されることはなく、種々の変更を加えて実施することができる。例えば、本実施形態においては、ベース部材110は固定されることで、回転部材120はベース部材110に対して回転するよう設けられるが、回転部材120はベース部材110に相対的に軸心CL周りに回転可能に設けられていればよく、例えばベース部材110、回転部材120共に軸心CL周りに回転していても良い。
【符号の説明】
【0066】
10 からくり時計 11 分針
12 時針 13 秒針
14 指針軸 15 筐体
20 分割文字板 21 第1分割文字板
22 第2分割文字板 26 本体板
27 ボス 28 トラス部
28a 装飾部 50 時計部
51 ムーブメント 60 回転飾り部
61 装飾部材 100 駆動機構
101 モータ 103 減速機構
105 駆動歯車 110 ベース部材
111 凹部 111a 円筒部
112 ボス 113 内歯車
117 ガイド部材 120 回転部材
121 凹部 122 ボス
123 外歯車
124,124-1~6 歯車軸
125 ボス 130 固定軸
140,140-1~6 歯車
141 文字板支持部 141a ねじ孔
150 隠蔽部材 151 開口孔
152 円弧部 153 直線部
155 ねじ孔 200 模様シート
201 開口孔部 202 模様
202-1 第1の模様 202-2 第2の模様
202a 透光部 202b 遮蔽部
203 三角形状部 204 ダイヤ形状部
210 第1模様シート 220 第2模様シート
230 発光部
110A ベース部材 112A ボス
120A 回転部材 122A ボス
301 リブ 302 係止突起
303 丸孔 304 ねじ孔
305 ねじ部材 306 ピン孔
310a 開口 310b 開口
310c 開口 311 LED
312 発光回路基板 312a 左突出部
312b 右突出部 312c 中央開口
312d 第1係止部 312e 第2係止部
315 ボス 316 ピン
317 ボス 321 第1被係止部
321a 係止凹部 321b 長矩形孔
322 第2被係止部 322a 板バネ部
322b 摘み部 322c 係止突起
323 係止開口 324 係止部
324a 板バネ部 324b 係止突起