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特開2024-104295浸透接合CVDダイヤモンドと接合ダイヤモンド+SiC複合体の反応
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104295
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】浸透接合CVDダイヤモンドと接合ダイヤモンド+SiC複合体の反応
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
C04B37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006544
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】18/158,333
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー,マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】グレン,エヴァンス
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル,サラモーネ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル,アガジャニアン
【テーマコード(参考)】
4G026
【Fターム(参考)】
4G026BA13
4G026BB13
4G026BF07
4G026BG05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来技術のものと比較して有利な熱的特性を設ける接合ダイヤモンド複合材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック複合層、ダイヤモンド膜層、及び前記ダイヤモンド膜層を前記セラミック複合層に接合する炭化ケイ素接合層を含む、接合ダイヤモンド複合材であり、その製造方法は、ダイヤモンド膜層をセラミックプリフォーム上に配置することであって、前記セラミックプリフォームは、ダイヤモンド粒子と炭素含有バインダとを含む、前記配置すること、前記セラミックプリフォームを溶融シリコンに曝すこと、及びセラミック複合層、及び前記セラミック複合層に前記ダイヤモンド膜を接合する炭化ケイ素接合層を形成するために、前記溶融シリコンを、前記ダイヤモンド膜及び前記セラミックプリフォームと反応させることを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合ダイヤモンド複合材であって、
セラミック複合層、
ダイヤモンド膜層、及び
前記ダイヤモンド膜層を前記セラミック複合層に接合する炭化ケイ素接合層、
を含む、前記接合ダイヤモンド複合材。
【請求項2】
前記セラミック複合層が、炭化ケイ素を含むマトリックスと共に接合された複数のダイヤモンド粒子を含む、請求項1に記載の接合ダイヤモンド複合材。
【請求項3】
前記マトリックスが前記炭化ケイ素接合層に接続されている、請求項2に記載の接合ダイヤモンド複合材。
【請求項4】
前記マトリックスの前記炭化ケイ素が前記炭化ケイ素接合層に接合されている、請求項2に記載の接合ダイヤモンド複合材。
【請求項5】
前記ダイヤモンド粒子が、約10ミクロン~約120ミクロンの中央粒径(D50)を有する、請求項1に記載の接合ダイヤモンド複合材。
【請求項6】
前記セラミック複合層が、約50体積%~約75体積%の前記ダイヤモンド粒子を含む、請求項2に記載の接合ダイヤモンド複合材。
【請求項7】
前記炭化ケイ素接合層が、前記セラミック複合層と前記ダイヤモンド膜層との間で測定して、約20ミクロン~約200ミクロンという平均の厚さである、請求項1に記載の接合ダイヤモンド複合材。
【請求項8】
前記炭化ケイ素接合層が10体積%未満という残留元素のケイ素を含む、請求項1に記載の接合ダイヤモンド複合材。
【請求項9】
ダイヤモンド膜層をセラミック複合層に接合する方法であって、
ダイヤモンド膜層をセラミックプリフォーム上に配置することであって、前記セラミックプリフォームは、ダイヤモンド粒子と炭素含有バインダとを含む、前記配置すること、
前記セラミックプリフォームを溶融シリコンに曝すこと、及び
セラミック複合層、及び前記セラミック複合層に前記ダイヤモンド膜を接合する炭化ケイ素接合層を形成するために、前記溶融シリコンを、前記ダイヤモンド膜及び前記セラミックプリフォームと反応させること、
を含む、前記方法。
【請求項10】
前記セラミック複合層が、炭化ケイ素を含むマトリックスと共に接合された複数のダイヤモンド粒子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応させるステップが、前記ダイヤモンド膜層の少なくとも一部を前記炭化ケイ素接合層に変換する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記セラミックプリフォームが、炭素含有バインダを含み、前記反応させるステップが、前記炭素含有バインダの少なくとも一部を炭化ケイ素に変換する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記セラミックプリフォームが、曝すステップ及び反応させるステップよりも前に、炭化ケイ素をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記反応させるステップが、真空下の高温で行われ、前記圧力が絶対圧で約110パスカル未満であり、前記高温が約1680Kより高い、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
毛管作用により、前記ダイヤモンドプリフォームを通して前記ダイヤモンド膜に向かって前記溶融シリコンを引き込むことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記曝すステップは、前記セラミックプリフォームをプリフォームフィーダ媒体に配置し、前記プリフォームフィーダ媒体を前記溶融シリコンと接触させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記反応させるステップが、実質的にすべての前記炭素バインダを炭化ケイ素に変換するのに十分な期間の間に完了する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記期間が約30分~約10時間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ダイヤモンド粒子が、約10ミクロン~約120ミクロンの中央粒径(D50)を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミック複合層が、約50体積%~約75体積%の前記ダイヤモンド粒子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記炭化ケイ素接合層が、前記セラミック複合層と前記ダイヤモンド膜層との間で測定して、約20ミクロン~約200ミクロンという平均の厚さである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記セラミック複合層及び前記炭化ケイ素接合層の各々が、約10体積%未満という残留元素のケイ素を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記ダイヤモンド膜層は、約500ミクロン~約2300ミクロンの厚さを有する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ダイヤモンドは、公知の最も硬い材料の1つであり、工業的な環境及び光学的な環境で使用するための優れた特性を有する。しかしながら、そのような環境においてダイヤモンド材料を成功裏に使用するためには、ダイヤモンド粒子及びダイヤモンド膜を表面に取り付け、接合しなければならない。
【0002】
ダイヤモンド膜を表面に接着する1つの従来公知の方法は、ろう付け化合物、例えば4047-F Temper Aluminumを利用することである。そのようなろう付け化合物は、ダイヤモンド膜の間で溶融及び再凝固して、膜を表面に保持することができる。残念ながら、典型的なろう付け化合物は、典型的にはダイヤモンド膜及び/または取付け表面からの異なる熱膨張係数を有するか、またはより高い温度で液化するので、それらの熱サイクルの範囲が限定される。そのような特性は、応力を受けた接合及び/または不具合をもたらす。
【発明の概要】
【0003】
セラミック複合層と、ダイヤモンド膜層と、ダイヤモンド膜層をセラミック複合層に接合する炭化ケイ素接合層とを含む接合ダイヤモンド複合材が、本明細書に開示される。本開示の一態様では、セラミック複合層は、炭化ケイ素を含むマトリックスと共に接合された複数のダイヤモンド粒子を含む。本開示の別の態様では、マトリックスが炭化ケイ素接合層に接続される。本開示の別の態様では、マトリックスの炭化ケイ素が、炭化ケイ素接合層に接合される。
【0004】
本開示の一態様において、ダイヤモンド粒子は、約10ミクロン~約120ミクロンの中央粒径(D50)を有する。本開示の別の態様では、セラミック複合層は、約50体積%~約75体積%のダイヤモンド粒子を含む。本開示のさらに別の態様では、炭化ケイ素接合層は、セラミック複合層とダイヤモンド膜層との間で測定した場合、約20ミクロン~約200マイクロメートルという平均の厚さである。本開示のさらに別の態様では、炭化ケイ素接合層は、10体積%未満という残留元素のケイ素を含む。
【0005】
ダイヤモンド膜層をセラミック複合層に接合する方法であって、ダイヤモンド膜層をセラミックプリフォーム上に配置することであって、セラミックプリフォームは、ダイヤモンド粒子と炭素含有バインダとを含む、配置すること、セラミックプリフォームを溶融シリコンに曝すこと、及びセラミック複合層、及びセラミック複合層にダイヤモンド膜を接合する炭化ケイ素接合層を形成するために、溶融シリコンを、ダイヤモンド膜及びセラミックプリフォームと反応させること、を含む方法が、本明細書に開示される。本開示の一態様では、セラミック複合層は、炭化ケイ素を含むマトリックスと共に接合された複数のダイヤモンド粒子を含む。本開示の別の態様では、反応させるステップは、ダイヤモンド膜層の少なくとも一部を炭化ケイ素接合層に変換する。本開示のさらに別の態様では、セラミックプリフォームは、炭素含有バインダを含み、反応させるステップは、炭素含有バインダの少なくとも一部を炭化ケイ素に変換する。
【0006】
本開示の一態様では、セラミックプリフォームは、曝すステップ及び反応させるステップよりも前に、炭化ケイ素をさらに含む。本開示の別の態様では、反応させるステップは、真空下の高温で行われ、絶対的な圧力は約110パスカル未満であり、高温は約1680Kより高い。本開示の一態様では、開示される方法は、毛管作用により、ダイヤモンドプリフォームを通してダイヤモンド膜に向かって溶融シリコンを引き込むことを含む。本開示の別の態様では、曝すステップは、セラミックプリフォームをプリフォームフィーダ媒体上に配置し、プリフォームフィーダ媒体を溶融シリコンと接触させることを含む。
【0007】
本開示の一態様では、反応させるステップは、実質的にすべての炭素バインダを炭化ケイ素に変換するのに十分な時間の間に完了する。本開示の別の態様では、期間は約30分~約10時間である。本開示のさらに別の態様では、方法は、約10ミクロン~約120ミクロンの中央粒径(D50)を有するダイヤモンド粒子を利用する。本開示の一態様では、セラミック複合層は、約50体積%~約75体積%のダイヤモンド粒子を含む。本開示の別の態様では、開示の方法は、セラミック複合層とダイヤモンド膜層との間で測定した場合、約20ミクロン~約200マイクロメートルという平均の厚さである炭化ケイ素接合層を生成する。本開示のさらに別の態様では、セラミック複合層及び炭化ケイ素接合層の各々は、約10体積%未満という残留元素のケイ素を含む。本開示の別の態様では、開示される方法で利用されるダイヤモンド膜層は、約500ミクロン~約2300ミクロンの厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、開示の実施形態による、接合ダイヤモンド複合材の概略図を示す。
図2図2は、開示の実施形態による、接合ダイヤモンド複合材の走査型電子顕微鏡による断面図を示す。
図3図3は、開示の実施形態による、接合ダイヤモンド複合材を形成する方法を示す。
図4図4は、開示の実施形態による、図3の方法の中間ステップを概略的に表したものを示す。
図5図5は、開示の実施形態による、図3の方法の中間ステップを概略的に表したものを示す。
図6図6は、開示の実施形態による、図3の方法の中間ステップを概略的に表したものを示す。
図7図7は、開示の実施形態による、接合ダイヤモンド複合材の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細に開示されるのは、従来技術のものと比較して有利な熱的特性を設ける接合ダイヤモンド複合材及びその製造方法である。
【0010】
図1及び図2は、例示的な接合ダイヤモンド複合材100を示す。図1は、拡大縮小して描かれたものではない例示的な接合ダイヤモンド複合材100を概略的に表したものを示す。図2は、例示的な接合ダイヤモンド複合材100の断面の走査型電子顕微鏡画像(拡大縮小)を示すが、図2は、例示的な接合ダイヤモンド複合材100全体の拡大部分のみを示す。接合ダイヤモンド複合材100は、例えば、セラミック複合層110と、ダイヤモンド膜層130と、ダイヤモンド膜層130とセラミック複合層110とを接合する接合層120とを有する。
【0011】
ダイヤモンド膜層130は、当技術分野で公知の任意のダイヤモンド膜、例えば、化学気相成長(CVD)プロセスを用いて成長させたダイヤモンド膜であってもよい。しかしながら、他のプロセスを使用することもできる。さらに、膜内部のダイヤモンド格子の配向、及びダイヤモンド膜の厚さは、接合ダイヤモンド複合材100の意図された用途に基づいて変えることができる。例えば、高エネルギーレーザーなどのいくつかの用途は、より低い出力密度要件の用途と比較して、より厚いダイヤモンド膜を必要とし得る。ダイヤモンド膜層は(接合ダイヤモンド複合材100の形成前に、また以下で非接合ダイヤモンド膜530として論じる)、ダイヤモンド複合材100の形成後に残るダイヤモンド膜層130が、意図される用途に対して十分に厚くなるように、形成前に十分に厚くすることだけが必要である。
【0012】
セラミック複合層110は、例えば、セラミックマトリックス114の内部に複数のダイヤモンド粒子112を含むことができる。セラミック複合層110は、ダイヤモンド強化セラミックマトリックスとも呼ばれ得る。セラミックマトリックス114は、例えば、大部分が炭化ケイ素、または別の例では、実質的にすべてが炭化ケイ素であってもよい。シリコン元素及び共通シリコン不純物のようないくつかの追加の追跡材料が、不純物及び/または未反応のシリコンから生じ得るセラミックマトリックス114に含まれ得る。ダイヤモンド粒子112は、例えば、約65ミクロンの中央粒径(D50)を有するダイヤモンド粒子を含み得る。すなわち、いくつかのダイヤモンド粒子112は、65ミクロンより大きいまたは65ミクロンより小さい直径であってもよいが、約65ミクロンのD50に対するこれらのダイヤモンド粒子の中央値は、約65ミクロンであろう。他のダイヤモンド粒子のサイズも使用され得る。例えば、ダイヤモンド粒子112は、約10ミクロン~約120ミクロンのD50を有する。セラミック複合層110は、約30体積%~約70体積%のダイヤモンド粒子112を含むことができる。例では、セラミック複合層110は、約50体積%のダイヤモンド粒子112を含むことができる。
【0013】
接合層120は、ダイヤモンド膜層130とセラミック複合層110とを接合するセラミック接合層である。接合層120は、ダイヤモンド膜層130及びセラミック複合層110の両方に接合され、したがってダイヤモンド膜層130をダイヤモンド粒子112及び/またはセラミックマトリックス114に取り付ける。接合層120は、セラミックマトリックス114と同じ材料で形成されてもよい。接合層120は、例えば、炭化ケイ素で形成することができ、セラミックマトリックス114の内部に含まれる炭化ケイ素と一体化及び/または接合して、セラミック複合層110に対して強力な接着を形成することができる。接合層120はまた、セラミック-ダイヤモンド接合、例えば炭化ケイ素-炭素接合を介してダイヤモンド膜層130に接合される。接合層120は、例えば、大部分が炭化ケイ素、または別の例では実質的にすべてが炭化ケイ素であってもよい。残留シリコン122のようないくつかの追加の追跡材料が接合層120に含まれてもよく、これは不純物及び/または未反応のシリコンから生じ得る。一例では、接合層は、10体積%未満の残留シリコンを含む。別の例では、接合層は、5体積%未満の残留シリコンを含む。別の例では、接合層は、3体積%未満の残留シリコンを含む。別の例では、接合層は、1体積%未満の残留シリコンを含む。
【0014】
接合層120の厚さ、すなわちセラミック複合層110とダイヤモンド膜層130との間の距離は、用途の必要性に応じて変化し得る。例えば、より薄い接合層120は、ダイヤモンド膜層130及びセラミック複合層110からのより高い熱伝達が好ましい場合に使用することができ、一方、より厚い接合層120は、ダイヤモンド膜層130とセラミック複合層110との間のより高い接合強度が必要な場合に使用することができる。一例では、接合層120は、炭化ケイ素を含み、セラミック複合層110とダイヤモンド膜層130との間で測定して約20ミクロン~約200ミクロンの平均の厚さを有する。例えば、接合層120は、約40ミクロン~約140ミクロン、約60ミクロン~約120ミクロン、または約80ミクロン~約100ミクロンの厚さを有し得る。
【0015】
図3には、図4図6をさらに参照して説明される、接合ダイヤモンド複合材600(図6)を形成する方法600、またはダイヤモンド膜層430をセラミック複合層410(図4)に接合する方法が示されている。接合ダイヤモンド複合材600は、図1及び図2を参照して説明した接合ダイヤモンド複合材100と同じまたは類似のものとすることができ、接合ダイヤモンド複合材100を参照して説明した特性は、接合ダイヤモンド複合材600に等しく適用可能である。
【0016】
ステップ300で、ダイヤモンド膜430が、図4に示すように、セラミックプリフォーム410と共に設けられている。ダイヤモンド膜430は、ダイヤモンド膜430がまだセラミック複合層110に反応/接合されておらず、したがって、ダイヤモンド膜130(図1及び図2)または得られるダイヤモンド膜630(図6)よりも徐々に厚くなり得ることを除いて、ダイヤモンド膜130と同様であり得る。上述したように、ダイヤモンド膜430は、CVD成長ダイヤモンド膜であってもよい。一例では、ダイヤモンド膜430の成長側の表面は、セラミックプリフォーム410に向かって配向され、これは、CVD成長ダイヤモンド膜の反対(基材)側と比較して、典型的には成長側の相対的な粗さが増加するのに有利であり得、これは、接合層のより良好な接着及び形成に寄与し得る。ダイヤモンド膜430の成長側の表面はまた、さらなる処理の前に研磨またはラッピングし得る。
【0017】
セラミックプリフォーム410は、当技術分野で公知のセラミックプリフォーム、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,474,362号(特許第362号)に記載のセラミックプリフォームであり得る。セラミックプリフォーム410は、例えば、炭素含有バインダと共に保持された複数のダイヤモンド粒子(例えば、ダイヤモンド粒子112(図1~2))を含むことができる。複数のダイヤモンド粒子は、セラミックプリフォーム410内部のダイヤモンド粒子が最終的に接合ダイヤモンド複合材600内部のダイヤモンド粒子になるが、さらなる処理の前にセラミックプリフォーム410内に存在するので、図1及び図2を参照して説明した同じまたは類似の複数のダイヤモンド粒子112とすることができる。
【0018】
セラミックプリフォーム410内部のダイヤモンド粒子は、例えば、約75ミクロンのD50を有するダイヤモンド粒子を含むことができる。他の例では、セラミックプリフォーム410は、約10ミクロン~約120ミクロンのD50を有するダイヤモンド粒子を含むことができる。セラミックプリフォーム410は、約0体積%~約75体積%のダイヤモンド粒子112を含むことができる。例えば、セラミックプリフォーム410は、約50体積%のダイヤモンド粒子を含み得る。残部は多孔質の空隙の性質でバインダ及び空気を含む炭素である。多孔度は、溶融シリコンの適切な毛管の延伸をもたらす任意の多孔度である。一例では、セラミックプリフォーム410は、約20%~約25%の多孔度を有する。炭素含有バインダは、セラミックプリフォームを製造するための当技術分野で公知の任意の炭素系バインダであってもよい。しかしながら、バインダは、さらなる処理、例えば後述する反応させるステップの際に、炭素が溶融シリコンと反応してセラミックマトリックス114内部に炭化ケイ素を形成するように、十分な炭素含有量を有するべきである。セラミックプリフォーム410は、一例では、反応させるステップの前に炭化ケイ素をさらに含むことができる。すなわち、セラミックプリフォーム410を形成する際に、ある量の炭化ケイ素が含まれ得る。例えば、セラミックプリフォーム410の約0~約75体積%の炭化ケイ素である。
【0019】
ステップ310で、図5に示すように、ダイヤモンド膜層430がセラミックプリフォーム410に配置される。任意選択で、ダイヤモンド膜層430の上部に、すなわち、ダイヤモンド膜層430のセラミックプリフォームとは反対側に圧力を加えて、後続のステップの間にセラミックプリフォームのダイヤモンド膜層430の位置を維持することができる。重り(図示せず)を使用して、そのような圧力を供給することができる。ダイヤモンド膜層430は、セラミックプリフォーム410と共に、炉540に配置されて、以下に説明する後続の反応の温度を制御することができる。
【0020】
ステップ320において、セラミックプリフォーム410は、例えば炉540の内部で、関連する圧力に対するシリコンの融解温度より高い温度、すなわち大気圧で約[1,410°C]より高い温度で、溶融シリコン522に曝される。炉540はまた、大気圧より低い真空を引くことができる真空炉であってもよく、これは、セラミックプリフォームを通して溶融シリコン522を輸送するよう補助することができる。例えば、約110パスカル未満の圧力を炉540に加えることができ、それにおいて約101,325パスカルは大気圧を表し、したがって、110パスカルは大気圧と比較して低減された絶対的な圧力である。
【0021】
反応後の分離を補助するために、多孔質プリフォームフィーダ媒体550を任意選択に使用し、任意選択に完了時に犠牲にし得る。プリフォームフィーダ媒体550は、毛管作用を介して溶融シリコン550をセラミックプリフォームに吸い上げるまたは移送することができる任意の材料で作ることができる。プリフォームフィーダ媒体550は、フィーダ媒体550が、セラミックプリフォーム410及びその上のダイヤモンド膜層430と共に、溶融シリコン槽の温度で静置されるように配置することができる。溶融シリコン522は、プリフォームフィーダ媒体に接触し、毛管作用によってプリフォームフィーダ媒体550を通してセラミックプリフォーム410に吸い上げられる。セラミックプリフォーム410は、同様に、溶融シリコン522を、セラミックプリフォーム410全体に亘って吸い上げ、また、ダイヤモンド膜層430とセラミックプリフォーム410との間の界面432において、ダイヤモンド膜層430に吸い上げる。換言すれば、溶融シリコンは、セラミックプリフォームをダイヤモンド膜層430まで浸透させる。
【0022】
ステップ320において、セラミックプリフォーム410の細孔全体、及び界面432において浸透した溶融シリコン522は、セラミックプリフォーム410内部の炭素、及びダイヤモンド膜層130の界面432の炭素と反応する。溶融シリコン522とプリフォーム410内の炭素とが反応して、例えばセラミックマトリックス114に関して上述したものと同様のセラミックマトリックスを形成し、溶融シリコン522とプリフォーム410の炭素とが反応して、炭化ケイ素を形成する。さらに、溶融シリコン522の一部はまた、セラミックプリフォーム410内部のダイヤモンド粒子の表面と反応して、炭化ケイ素も形成し得る。セラミックプリフォーム410における反応が完了すると、セラミックプリフォームはもはや、ダイヤモンド粒子が埋め込まれたセラミック複合層110と同様のセラミック複合層610(図6)になっている。
【0023】
溶融シリコン522はまた、界面432でダイヤモンド膜層430と反応し、したがって、ダイヤモンド膜層430の表面の炭素の一部を炭化ケイ素に変換する。ダイヤモンドは濃密な炭素の形態であるので、それは浸透のプロセスで使用されるケイ素と反応して、炭化ケイ素界面を形成することができる。図6に示すように、その結果、ダイヤモンド膜層630、セラミック複合層610、及び接合層620を有する接合ダイヤモンド複合材600が得られる。接合ダイヤモンド複合材600、ダイヤモンド膜層630、セラミック複合層610、及び接合層620は、各々、図1~2の接合ダイヤモンド複合材100、ダイヤモンド膜層130、セラミック複合層110、及び接合層120にそれぞれ類似しており、その特徴及び製造方法は、各々、両方に等しく適用可能である。
【0024】
反応時間の長さは、接合層620の温度、圧力、及び所望の厚さを含む多くの因子に依存する。例えば、より高い温度であると、接合層620を形成するのに必要な反応時間の長さが減少するが、一方で、より低い圧力であると、反応に必要な温度が減少する。さらに、より長い反応は、より厚い接合層620を生じる。一例では、約13パスカルの圧力及び1780Kの温度で、約100μmという平均の厚さを有する接合層620を、約4時間反応させた。反応させるステップ320の完了時に、接合層620は、ダイヤモンド膜層630に接合され、セラミック複合層610のセラミックマトリックスのセラミックマトリックスに接合/一体化され、ダイヤモンド膜層630のセラミック複合層610への強固な接合を形成する。
【0025】
反応させるステップ320が完了すると、いくらかの量の未反応の残留シリコン(例えば、図2に示される残留シリコン122)が、接合層620及び/またはセラミック複合層610のセラミックマトリックスに存在し得る。特定の量の残留シリコンは、結果として得られる接合ダイヤモンド複合材の接合強度に実質的に影響を与えないが、そのような残留シリコンは、初期のセラミックプリフォーム410においてより微細なダイヤモンドを加えることによって、任意選択に低減することができる。
【0026】
ステップ330において、炉540を室温まで冷却し、真空下にある場合は圧力を均等にし、接合ダイヤモンド複合材600をプリフォームフィーダ媒体550から除去することができる。
【0027】
得られる複合材、例えば、接合ダイヤモンド複合材100または接合ダイヤモンド複合材600は、低い熱膨張、高い熱伝導率(熱を急速に放散することができる)、高い硬度、高い耐摩耗性、高い剛性、化学的不活性を有し、多くの工業的摩耗、熱の管理、及び光学産業、並びにその他諸々において利用することができる。例えば、(a)工業用途に対しては、低摩擦/高耐摩耗性シール、乾式シール衝突面、及び切削工具、(b)半導体用途に対しては、乾式ウェハチャック、内部冷却のウェハチャック、及び静電チャック、(c)防衛用途に対しては、傾斜装甲材料、(d)熱の管理に対しては、レーザ用ヒートシンク、ミラー用ヒートシンク、高出力電気ヒートシンクがある。
【0028】
ダイヤモンド膜層130、630はまた、セラミック複合層110、610、及び接合層620、620と同様の熱膨張特性(熱膨張係数)を有する。したがって、熱を受けると、熱膨張の差に起因して、接合部に加わる応力が比較的小さくなる。ダイヤモンド膜層130、630とセラミック複合層110、610との間の接合も気密であり、したがってセラミック複合層110、610及びまたはダイヤモンド膜層130、630の裏面に開いた路及び穴がまた、実現可能である。これは、必要とされる場合に、最大の放熱を可能にする。潜在的な応用には、極端な摩耗面、低摩擦面、ヒートシンクを必要とする構造、及び高い熱安定性を要する構造が含まれる。
【0029】
ろう付け化合物を使用する従来技術の方法と比較して、本明細書に記載の浸透接合プロセス600を使用して作製されたものを含む接合ダイヤモンド複合材100、600は、反応性冷却媒体、例えば脱イオン水を使用することができる用途に対して、より短くてより単純な製造プロセス、より耐熱の低い界面、より温度能力の高い界面、及び化学的に不活性な界面を設ける。例えば、図7に示すように、熱伝導流体を設けるため(ダイヤモンド層130を冷却または加熱するため)、セラミック複合層110に流路150を含む、例示的な接合ダイヤモンド複合材100がある。流路150は、典型的なセラミック形状形成方法に従って形成され得る。例えば、それらは、セラミック複合層110を製造しているときに、任意の数のプリフォーム製造方法、例えば、沈降、スリップ鋳造などを用いて成形することができる。それらはまた、バインダバーンアウト焼成後、例えば第362号の特許に記載された炭化ステップであるが、ステップ320を参照して記載された熱の工程の前に、それらを機械加工することによって追加され得る。そのような構成は、従来技術のろう付け化合物の腐食に関連する欠点なしに、流路150の内部の任意の流体とダイヤモンド層130との間での直接的な接触を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】