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特開2024-104299化学組成物を同定するための方法、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104299
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】化学組成物を同定するための方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/624 20210101AFI20240726BHJP
【FI】
G01N27/624
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024007747
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】63/440,454
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500107762
【氏名又は名称】ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100140361
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 幸二
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ディー.ガードナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー エー.アイスマン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ファウラー
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA02
2G041GA13
2G041KA01
(57)【要約】
【課題】 化学組成物を同定するための方法、およびシステムを提供する。
【解決手段】 本開示の少なくとも1つの態様によれば、化学組成物を同定するための方法は、化学的試料を収集すること、化学的試料を検出システムに導入すること、示差移動度分光計を用いて、化学的試料の中のイオンを第1の分析特性に基づいて第1の成分群に分離するために、化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することを含む。化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することは、イオン化された流れの中のイオンをフィルタリングして、所望の移動度を有するイオンのみがフラグメンタへと通過するようにすること、及びフィルタリングされた試料を断片化して、フィルタリングされた試料の中のイオンをさらに解離して、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを生成することをさらに含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成物を同定するための方法であって、
化学的試料を収集し、前記化学的試料を検出システムに導入すること、
示差移動度分光計を用いて、第1の分析特性に基づいて前記化学的試料の中のイオンを第1の成分群に分離するために、前記化学的試料に示差移動度分光測定を実行することであって、前記化学的試料に示差移動度分光測定を実行することは、
所望の移動度を有するイオンのみがフラグメンタへと通過するように、前記イオン化された流れの中の前記イオンをフィルタリングすること、をさらに含む、前記実行すること、
前記フィルタリングされた試料を断片化して、前記フィルタリングされた試料の中のイオンをさらに解離させて、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを生成すること、
イオン移動度分光計を用いて、第2の分析特性に基づいて前記第1の成分群の中のイオンを第2の成分群に分離するために、前記第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行すること、及び
前記第2の成分群の中に存在するイオンに基づいて前記化学的試料の同一性を判定すること、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記化学的試料に示差移動度分光測定を実行する前に、イオン化源を使用して前記化学的試料をイオン化して、イオン化された流れを生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することが、
前記イオン化された流れを第1の高周波場に曝して、前記イオン化された流れの中のイオンを振動させること、及び
前記第1の高周波場にわたって第1の電圧差を加えて、前記イオン化された流れの中の陽イオンを負電荷に向かってドリフトさせ、陰イオンを正電荷に向かってドリフトさせて、前記イオン化された流れの中の前記陰イオンから前記陽イオンを分離することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することが、
前記第1の成分群のみが前記検出システムのイオン移動度分光計へと通過するように、前記断片化されたイオン化された流れの中の前記イオンをフィルタリングして前記第1の成分群を生成することであって、
前記第1の電圧差を加えることが、前記第1の電圧差を漸進的に修正して、前記イオン化された流れ及び/または前記断片化されたイオン化された流れの中の選択されたイオンが、前記第1の成分群として前記イオン移動度分光計に通過して入ることを可能にすることをさらに含む、前記生成すること、及び
前記第1の分析特性に基づいて前記第1の成分群に対する第1のデータセットを生成することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することが、
第2の高周波場にわたって第2の電圧差を加えて、前記断片化されたイオン化された流れの中の陽イオンを負電荷に向かってドリフトさせ、陰イオンを正電荷に向かってドリフトさせて、前記断片化されたイオン化された流れの中の前記陰イオンから前記陽イオンを分離すること、及び
前記第1の成分群のみがイオン移動度分光計へと通過するように、前記断片化されたイオン化された流れの中の前記イオンをフィルタリングして前記第1の成分群を生成すること、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電圧差を加えること及び/または前記第2の電圧差を加えることは、前記第1の電圧差及び/または前記第2の電圧差を漸進的に修正して、前記イオン化された流れ及び/または前記断片化されたイオン化された流れの中の選択されたイオンが、前記第1の成分群として前記イオン移動度分光計に通過して入ることを可能にすることをさらに含み、
示差移動度分光測定を実行することが、前記第1の分析特性に基づいて前記第1の成分群に対する第1のデータセットを生成することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することが、
前記第1の成分群のみを含む前記イオン化された流れを前記イオン移動度分光計の分析モジュールへと通過させること、及び
前記イオン移動度分光計の第1の分析モジュールの負電荷に前記第1の成分群の陽イオンを引き込み、前記イオン移動度分光計の第2の分析モジュールの正電荷に前記第1の成分群の中の前記陰イオンを引き込むように、前記分析モジュールにわたって電圧差を加えること、
空間で第1の連続群の前記イオンを分離し、前記第1の成分群の中の前記イオンに対して第1の飛行時間分析を実行して、前記第1の成分群の中の選択されたイオンをフラグメンタへと通過することを可能にすること、及び
前記第1の成分群の中の前記選択されたイオンを断片化して、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプをさらに解離及び生成し、前記第2の成分群を形成するイオンの断片化された流れを生成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することが、
第2の成分群の中の前記イオンの断片化された流れに対して第2の飛行時間分析を実行して、前記第2の分析特性に基づいて前記第2の成分群に対する第2のデータセットを生成すること、
前記第2の成分群に対して生成された前記第2のデータセットを、前記第1の成分群に対して生成された前記第1のデータセットと相関させること、及び
前記第1のデータセットと前記第2のデータセットとの間の前記相関に基づいて、前記化学組成の前記同一性を判定すること、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
システムであって、
化学分析物入口を含む化学検出器、
前記化学分析物を受け取り、前記化学分析物をイオン化して、イオン化された流れを生成するように構成された前記化学分析物入口に流体接続されている、イオン化源を有するイオン化モジュール、及び
前記イオン化された流れを受け取るために前記イオン化モジュールに流体接続され、前記化学分析物の化学的同一性を判定するように構成された分析モジュールであって、前記分析モジュールが、
前記化学分析物入口に流体接続された示差移動度分光計であって、
前記イオン化された流れの中で陰イオンから陽イオンを分離するように構成された第1の正帯電電極及び第1の負帯電電極を含む第1の電極セットであって、所定の移動度特性のイオンのみが、前記第1の電極セットを通過して流れる、前記第1の電極セット、及び
前記フィルタリングされた試料を断片化して、前記フィルタリングされた試料の中のイオンをさらに解離させて、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを有する断片化されたイオン化された流れを生成するように構成された前記第1の電極セットの下流にあるフラグメンタを含む、前記示差移動度分光計、及び
前記示差移動度分光計に流体接続された、イオン移動度分光計、を含む前記分析モジュールを含む、前記システム。
【請求項10】
前記イオン化源は、イオン化領域を通って流れる前記化学分析物をイオン化するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記イオン化源は、電界イオナイザ、放射性イオナイザ、または光イオナイザを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記フラグメンタの出口は、前記断片化されたイオン化された流れが第1の成分群を形成し、前記イオン移動度分光計へと通過するように、前記示差移動度分光計の出口とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記示差移動度分光計は、前記断片化されたイオン化された流れの中の陰イオンから陽イオンを分離するように構成された、前記フラグメンタの下流の第2の正帯電電極と第2の負帯電電極とを含む、第2の電極セットを含み、所定の移動度のイオンは、前記第2の電極セットを通過して流れて第1の成分群を形成し、前記第1の成分群が前記イオン移動度分光計へと通過する、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記示差移動度分光計が、第1の分析特性に基づいて前記第1の成分群に対する第1のデータセットを生成するように構成された計算モジュールをさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記イオン移動度分光計は、
それぞれ前記示差移動度分光計の出口に流体接続されている、第1の陽イオンドリフト管及び第1の陰イオンドリフト管であって、前記第1の陽イオンドリフト管は、前記第1の成分群から陽イオンを受け取るように構成され、前記第1の陰イオンドリフト管は、前記第1の成分群から陰イオンを受け取るように構成されている、前記第1の陽イオンドリフト管及び前記第1の陰イオンドリフト管、を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記イオン移動度分光計は、
イオン移動度に基づいて、前記第1の陽イオンドリフト管に入る前記第1の成分群をフィルタリングするように構成される、前記第1の陽イオンドリフト管の入口における第1のシャッター、
イオン移動度に基づいて、前記第1の陰イオンドリフト管に入る前記第1の成分群をフィルタリングするように構成される、前記第1の陰イオンドリフト管の入口における第2のシャッターであって、
前記第1及び第2のシャッターは、前記第1の成分群から選択されたイオンを前記第1の陽イオンドリフト管及び前記第1の陰イオンドリフト管に供給する、前記第2のシャッター、及び
前記第1の陽イオンドリフト管の出口に配置された第1のフラグメンタと、前記第1の成分群から前記選択されたイオンを断片化して、前記選択されたイオンを、前記第1の成分群からさらに解離して、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプである前記第2の成分群を生成するよう構成される、前記第1の陰イオンドリフト管の出口に配置された第2のフラグメンタとをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記イオン移動度分光計は、
第1のフラグメンタから断片化されたイオンを受け取るように構成された第2の陽イオンドリフト管と、前記第2のフラグメンタから断片化されたイオンを受け取るように構成された第2の負イオンドリフト管、
前記第2の陽イオンドリフト管の端部に、前記陽イオンを前記陽イオン検出器に向かって引き込むように構成され、前記第2の陽イオンドリフト管の内部の前記第2の成分群の前記陽イオンの飛行時間を検出するように構成された陽イオン検出器、
前記第2の陰イオンドリフト管の端部に、前記陰イオンを前記陰イオン検出器に向かって引き込むように構成され、前記第2の陰イオンドリフト管の内部の前記第2の成分群の前記陰イオンの飛行時間を検出するように構成された陰イオン検出器、をさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記分析モジュールは、前記第2の陽イオンドリフト管の内部の前記第2の成分群の前記陽イオンのドリフト時間と、前記第2の陰イオンドライブ管の前記第2の成分群の前記陰イオンのドリフト時間とを判定し、第2の分析特性に基づいて前記第2の成分群に対する第2のデータセットを生成するように構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記分析モジュールは、前記第2の成分群に対して生成された前記第2のデータセットを、前記第1の成分群に対して生成された前記第1のデータセットと相関させ、前記第1のデータセットと前記第2のデータセットとの間の前記相関に基づいて前記化学分析物の前記同一性を判定するように構成された計算モジュールをさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2023年1月23日に出願された米国仮特許出願第63/440,454号の優先権を主張するものであり、その内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、例えば化学的検出のための、示差移動度及びイオン移動度分光測定に関する。
【背景技術】
【0003】
移動度分光測定は、分析物の化学的同一性を判定するための手段である。遠隔の無人化学感知の分野では、従来の技術は、それらの意図された目的に対して満足のいくものであると考えられている。しかしながら、試料のより多くの成分を同定することに関してより高い精度をもたらし、同時に、従来のシステムと比較してより高い分解能の結果をもたらす、化学的検出のための改善されたシステム及び方法に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記の必要性に対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の少なくとも1つの態様によれば、化学組成物を同定するための方法は、化学的試料を収集すること、化学的試料を検出システムに導入すること、示差移動度分光計を用いて、化学的試料の中のイオンを第1の分析特性に基づいて第1の成分群に分離するために、化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することを含む。化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することは、イオン化された流れの中のイオンをフィルタリングして、所望の移動度を有するイオンのみがフラグメンタへと通過するようにすること、及びフィルタリングされた試料を断片化して、フィルタリングされた試料の中のイオンをさらに解離して、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを生成することをさらに含む。方法は、イオン移動度分光計を用いて、第2の分析特性に基づいて第1の成分群の中のイオンを第2の成分群に分離するために、第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行すること、及び第2の成分群の中に存在するイオンに基づいて化学的試料の同一性を判定することをさらに含む。
【0006】
方法は、化学的試料に示差移動度分光測定を行う前に、イオン化源を使用して化学的試料をイオン化して、イオン化された流れを生成することをさらに含むことができる。
【0007】
化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することは、イオン化された流れを第1の高周波場に曝して、イオン化された流れの中のイオンを振動させること、及び第1の高周波場にわたって第1の電圧差を加えて、イオン化された流れの中の陽イオンを負電荷に向かってドリフトさせ、陰イオンを正電荷に向かってドリフトさせて、陽イオンをイオン化された流れの中の陰イオンから分離すること、をさらに含むことができる。
【0008】
特定の実施形態では、化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することは、第1の成分群のみが検出システムのイオン移動度分光計へと通過するように、断片化されたイオン化された流れの中のイオンをフィルタリングして第1の成分群を生成することをさらに含む。第1の電圧差を加えることは、第1の電圧差を漸進的に修正して、イオン化された流れ及び/または断片化されたイオン化された流れの中の選択されたイオンが、第1の成分群としてイオン移動度分光計に通過して入ることを可能にすることを含むことができる。方法は、第1の分析特性に基づいて第1の成分群に対する第1のデータセットを生成することを含むことができる。
【0009】
特定の実施形態では、化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することは、第2の高周波場にわたって第2の電圧差を加えて、断片化されたイオン化された流れの中の陽イオンを負電荷に向かってドリフトさせ、陰イオンを正電荷に向かってドリフトさせて、断片化されたイオン化された流れの中の陰イオンから陽イオンを分離することをさらに含む。特定のこのような実施形態では、示差移動度分光測定は、第1の成分群のみがイオン移動度分光計へと通過するように、断片化されたイオン化された流れの中のイオンをフィルタリングして第1の成分群を生成することをさらに含むことができる。
【0010】
第1の電圧差を加えること、及び/または第2の電圧差を加えることは、第1の電圧差及び/または第2の電圧差を漸進的に修正して、イオン化された流れ及び/または断片化されたイオン化された流れの中の選択されたイオンが、第1の成分群としてイオン移動度分光計に通過して入ることを可能にすることをさらに含み、示差移動度分光測定を実行することは、第1の分析特性に基づいて、第1の成分群に対する第1のデータセットを生成することをさらに含む。
【0011】
第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することは、第1の成分群のみを含むイオン化された流れをイオン移動度分光計の分析モジュールを通過すること、及び第1の成分群における陽イオンを、イオン移動度分光計の第1の分析モジュールの負電荷に引き込み、第1の成分群の中の陰イオンをイオン移動度分光計の第2の分析モジュールの正電荷に引き込むために、分析モジュールに電圧差を加えることをさらに含むことができる。
【0012】
第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することは、第1の連続群のイオンを空間で分離すること、及び第1の成分群の中のイオンに対して第1の飛行時間分析を実行して、第1の成分群の中の選択されたイオンをフラグメンタへと通過させること、及び第1の成分群の中の選択されたイオンを断片化して、さらに解離し、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを生成し、第2の成分群を形成するイオンの断片化された流れを生成することをさらに含むことができる。
【0013】
第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することは、第2の成分群の中のイオンの断片化された流れに対して第2の飛行時間分析を実行して、第2の分析特性に基づいて第2の成分群に対する第2のデータセットを生成すること、第2の成分群に対して生成された第2のデータセットを、第1の成分群に対して生成された第1のデータセットと相関させること、及び第1のデータセットと第2のデータセットとの間の相関に基づいて、化学組成の同一性を判定すること、をさらに含むことができる。
【0014】
本開示の少なくとも1つの態様によれば、システムは、
化学分析物入口を含む化学検出器と、化学分析物を受け取り、化学分析物をイオン化して、イオン化された流れを生成するように構成された、化学分析物入口に流体接続されたイオン化源を内部に有するイオン化モジュールと、イオン化された流れを受け取るようにイオン化モジュールに流体接続され、化学分析物の化学的同一性を判定するように構成された分析モジュールとを含むことができる。
【0015】
分析モジュールは、化学分析物入口に流体接続された示差移動度分光計を含み得、分析モジュールは、示差移動度分光計に流体接続されたイオン移動度分光計を含むこともできる。
【0016】
示差移動度分光計は、イオン化された流れの中で陰イオンから陽イオンを分離するように構成された第1の正帯電電極及び第1の負帯電電極を含む第1の電極セットであって、所定の移動度特性のイオンのみが、第1の電極セットを通過して流れる、第1の電極セット、及びフィルタリングされた試料を断片化して、フィルタリングされた試料の中のイオンをさらに解離させて、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを有する断片化されたイオン化された流れを生成するように構成された第1の電極セットの下流にあるフラグメンタをさらに含むことができる。
【0017】
イオン化源は、イオン化領域を通って流れる化学分析物をイオン化するように構成することができる。特定の実施形態において、イオン化源は、電界イオナイザ、放射性イオナイザ、または光イオナイザのいずれか1つ以上を含み得る。
【0018】
特定の実施形態では、フラグメンタの出口は、断片化されたイオン化された流れが第1の成分群を形成し、イオン移動度分光計へと通過するように、示差移動度分光計の出口とすることができる。
【0019】
特定の実施形態では、示差移動度分光計は、断片化されたイオン化された流れの中の陰イオンから陽イオンを分離するように構成された、フラグメンタの下流の第2の正帯電電極と第2の負帯電電極とを含む、第2の電極セットを含み得、所定の移動度のイオンは、第2の電極セットを通過して流れて第1の成分群を形成し、第1の成分群がイオン移動度分光計へと通過する。
【0020】
特定の実施形態では、示差移動度分光計が、第1の分析特性に基づいて第1の成分群に対する第1のデータセットを生成するように構成された計算モジュールを備え得る。
【0021】
特定の実施形態では、イオン移動度分光計は、それぞれ示差移動度分光計の出口に流体接続されている、第1の陽イオンドリフト管及び第1の陰イオンドリフト管であって、第1の陽イオンドリフト管は、第1の成分群から陽イオンを受け取るように構成され、第1の陰イオンドリフト管は、第1の成分群から陰イオンを受け取るように構成されている、第1の陽イオンドリフト管及び第1の陰イオンドリフト管、を含むことができる。
【0022】
イオン移動度分光計は、イオン移動度に基づいて第1の陽イオンドリフト管に入る第1の成分群をフィルタリングするように構成された第1の陽イオンドリフト管の入口における第1のシャッターと、イオン移動度に基づいて第1の陰イオンドリフト管に入る第1の成分群をフィルタリングするように構成された第1の陰イオンドリフト管の入口における第2のシャッターとをさらに含むことができ、第1及び第2のシャッターは、第1の成分群から第1の陽イオンドリフト管及び第1の陰イオンドリフト管に選択されたイオンを供給する。
【0023】
イオン移動度分光計はまた、第1の陽イオンドリフト管の出口に配置された第1のフラグメンタと、第1の成分群から選択されたイオンを断片化して、選択されたイオンを、第1の成分群からさらに解離して、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプである第2の成分群を生成するよう構成される、第1の陰イオンドリフト管の出口に配置された第2のフラグメンタとを含み得る。
【0024】
イオン移動度分光計は、第2の陽イオンドリフト管の端部に、陽イオンを陽イオン検出器に向かって引き込むように構成され、第2の陽イオンドリフト管の内部の第2の成分群の陽イオンの飛行時間を検出するように構成された陽イオン検出器、第2の陰イオンドリフト管の端部に、陰イオンを陰イオン検出器に向かって引き込むように構成され、第2の陰イオンドリフト管の内部の第2の成分群の陰イオンの飛行時間を検出するように構成された陰イオン検出器をさらに含むことができる。
【0025】
特定の実施形態では、イオン移動度分光計は、直列に接続された2つのイオン移動度分光計であり得る。
【0026】
分析モジュールは、第2の陽イオンドリフト管の内部の第2の成分群の陽イオンのドリフト時間と、第2の陰イオンドライブ管の第2の成分群の陰イオンのドリフト時間とを判定し、第2の分析特性に基づいて第2の成分群に対する第2のデータセットを生成するように構成され得る。
【0027】
分析モジュールは、第2の成分群に対して生成された第2のデータセットを、第1の成分群に対して生成された第1のデータセットと相関させ、第1のデータセットと第2のデータセットとの間の相関に基づいて、化学分析物の同一性を判定するように構成された計算モジュールを含むことができる。
【0028】
主題の開示のシステム及び方法のこれらの特徴及び他の特徴は、図面と併せて得られる以下の詳細な説明から当業者にとってより容易に明らかとなるであろう。
【0029】
本開示が属する技術分野の当業者が、不要な実験をすることなく本開示のデバイス及び方法の作り方及び使い方を容易に理解できるように、他のその実施形態が、特定の図面を参照して本明細書に詳しく後述される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】化学検出システムを示す、本開示によるシステムの概略図である。
図2図1の化学検出システムの示差移動度分光計の拡大された概略図である。
図3図1の化学検出システムのイオン移動度分光計の一部の拡大された概略図である。
図4】(A)は、図1の化学検出器において分析された例示的な分析物の化学組成を同定する例示的なデータセットであり、(B)は、図3のイオン移動度分光計による分析後に生成されたデータセットの例であり、(C)は、図2の示差移動度分光計による分析後に生成されたデータセットの例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで図面を参照するが、同様の参照符号は、本開示の同様の構造的特徴または態様を特定する。限定ではなく説明及び例示の目的で、本開示によるシステムの実施形態の実例図が図1に示され、参照符号100で概して呼称される。本開示の別の実施形態及び/または態様は、図2図4に示される。
【0032】
本開示の少なくともオンの態様によれば、図1に示すように、システム100は、化学分析物入口104を含む化学検出器102と、化学分析物を受け取り、化学分析物をイオン化して、イオン化された流れ108を生成するように構成された、化学分析物入口に流体接続されたイオン化源107を内部に有するイオン化モジュール106と、イオン化された流れ108を受け取るようにイオン化モジュール106に流体接続され、化学分析物の化学的同一性を判定するように構成された分析モジュール110とを含むことができる。イオン化源107は、イオン化領域106を通って流れる化学分析物をイオン化するように構成することができる。特定の実施形態において、イオン化源107は、電界イオナイザ、放射性イオナイザ、または光イオナイザのいずれか1つ以上を含み得る。
【0033】
分析モジュール110は、化学分析物入口104に流体接続された示差移動度分光計112を含み得、分析モジュール110は、示差移動度分光計112に流体接続されたイオン移動度分光計114を含むこともできる。
【0034】
図1及び図2に示すように、示差移動度分光計112は、イオン化された流れの中で陰イオンから陽イオンを分離するように構成された第1の正帯電電極118及び第1の負帯電電極120を含む第1の電極セット116をさらに含むことができ、所定の移動度特性のイオンのみが、第1の電極セット116(例えば、帯電プレート)を通過して流れる。第1の電極セット116の下流には、フィルタリングされた試料を断片化して、フィルタリングされた試料の中のイオンをさらに解離させて、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを有する断片化されたイオン化された流れを生成するように構成されたフラグメンタ122を含むことができる。
【0035】
特定の実施形態では、フラグメンタの出口は、断片化されたイオン化された流れが第1の成分群を形成し、イオン移動度分光計114へと通過するように、示差移動度分光計112の出口とすることができる。
【0036】
特定の実施形態では、図示しているように、示差移動度分光計112は、断片化されたイオン化された流れの中の陰イオンから陽イオンを分離するように構成された、フラグメンタ122の下流の第2の正帯電電極126と第2の負帯電電極128とを含む、第2の電極セット124を含むことができ、所定の移動度のイオンは、第2の電極セットを通過して第1の成分群を形成する。第1の成分群は、示差移動度分光計112の検出器130に送られ、次いで、第1の成分群は、イオン移動度分光計114に送られる。
【0037】
示されるように、示差移動度分光計は、第1の分析特性(例えば、各イオンに対する以下の変数、サイズ、質量、形状、及び大気に対するイオンのそれぞれの応答、のうちの1つ以上を考慮して判定され得る移動度定数)に基づいて、第1の成分群に対する第1のデータセットを生成するように構成される、計算モジュール132を含むことができる。第1のデータセットの例は、図4Cに見ることができる。
【0038】
次に図1及び図3を参照すると、イオン移動度分光計114は、示差移動度分光計112から第1の成分群を受け取るように構成されたソース領域134を含むことができる。イオン移動度分光計は、第1の陽イオンドリフト管136及び第1の陰イオンドリフト管138を含み、それぞれソース領域134を介して示差移動度分光計112の出口に流体接続され、第1の陽イオンドリフト管136は、第1の成分群から陽イオンを受け取るように構成され、第1の陰イオンドリフト管138は、第1の成分群から陰イオンを受け取るように構成されている。
【0039】
イオン移動度分光計114は、イオン移動度に基づいて第1の陽イオンドリフト管136に入る第1の成分群をフィルタリングするように構成された第1の陽イオンドリフト管136の入口における第1のシャッター140と、イオン移動度に基づいて第1の陰イオンドリフト管に入る第1の成分群をフィルタリングするように構成された第1の陰イオンドリフト管138の入口における第2のシャッター142とをさらに含むことができ、第1及び第2のシャッターは、第1の成分群から第1の陽イオンドリフト管136及び第1の陰イオンドリフト管138に選択されたイオンを供給する。
【0040】
イオン移動度分光計114はまた、第1の陽イオンドリフト管136の出口に配置された第1のフラグメンタ144と、第1の成分群から選択されたイオンを断片化して、選択されたイオンを、第1の成分群からさらに解離して、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプである第2の成分群を生成するよう構成される、第1の陰イオンドリフト管138の出口に配置された第2のフラグメンタ146とを含み得る。
【0041】
第2の陽イオンドリフト管148は、第1のフラグメンタ144から断片化されたイオンを受け取るように流体接続され、第2の陰イオンドリフト管150は、第2のフラグメンタ146から断片化されたイオンを受け取るように流体接続される。イオン移動度分光計114は、第2の陽イオンドリフト管148の端部に、陽イオンを陽イオン検出器に向かって引き込むように構成され、第2の陽イオンドリフト管148の内部の第2の成分群の陽イオンの飛行時間を検出するように構成された陽イオン検出器152をさらに含むことができる。陰イオン検出器154は、陰イオン検出器154に向かって陰イオンを引き込むように構成され、第2の陰イオンドリフト管の内部の第2の成分群の陰イオンの飛行時間を検出するように構成された第2の陰イオンドリフト管150の端部に含まれ得る。イオン移動度分光計114は、陽のドリフトのみについて図3に概略的に示される、直列に接続された2つのイオン移動度分光計と同様に機能するように構成され得る。
【0042】
分析モジュール102は、第2の陽イオンドリフト管148の内部の第2の成分群の陽イオンのドリフト時間と、第2の陰イオンドライブ管150における第2の成分群の陰イオンのドリフト時間とを判定し、第2の分析特性に基づいて第2の成分群に対する第2のデータセット(例えば、第2の成分群の中の断片化されたイオンの飛行時間)を生成するように構成することができる。第2のデータセットの例は、図4Bに見ることができる。
【0043】
分析モジュール102は、第2の成分群に対して生成された第2のデータセットを、第1の成分群に対して生成された第1のデータセットと相関させ、第1のデータセットと第2のデータセットとの間の相関に基づいて、化学分析物の同一性を判定するように構成された計算モジュール156を含むことができる。結合され相関されたデータセットの例を図4Aに示す。
【0044】
本開示の少なくとも1つの態様によれば、例えばシステム100を使用して化学組成物を同定するための方法は、化学的試料を収集すること、及び化学的試料を検出システム(例えば、システム100)に導入することを含むことができる。方法は、化学的試料に示差移動度分光測定を行う前に、イオン化源(例えば、モジュール106及び源107)を使用して化学的試料をイオン化して、イオン化された流れ(例えば、流れ108)を生成することをさらに含むことができる。
【0045】
方法は、示差移動度分光計(例えば、分光計112)を用いて、第1の分析特性に基づいて化学的試料の中のイオンを第1の成分群に分離するために、化学的試料に示差移動度分光測定を実行することを含むことができる。方法は、イオン移動度分光計(例えば、分光計114)を用いて、第2の分析特性に基づいて第1の成分群の中のイオンを第2の成分群に分離するために、第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することをさらに含む。方法は、第2の成分群の中に存在するイオンに基づいて化学的試料の同一性を判定することを含むことができる。
【0046】
化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することは、イオン化された流れを第1の高周波(RF)場に曝して、イオン化された流れの中のイオンを振動させること、及び第1の高周波場に第1の電圧差を加えて、イオン化された流れの中の陽イオンを負電荷に向かってドリフトさせ、陰イオンを正電荷に向かってドリフトさせて、陽イオンをイオン化された流れの中の陰イオンから分離すること、をさらに含むことができる。
【0047】
化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することは、所望の移動度を有するイオンのみがフラグメンタ(例えば、フラグメンタ122)へと通過するように、イオン化された流れの中のイオンをフィルタリングすることを含み得る。方法は、フィルタリングされた試料を断片化して、フィルタリングされた試料の中のイオンをさらに解離させて、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを生成すること、及び断片化されたイオン化された流れの中のイオンをフィルタリングして、第1の成分群のみが検出システムのイオン移動度分光計へと通過するように、第1の成分群を生成することをさらに含むことができる。特定の実施形態では、断片化は、RF場(第1のRF場とは異なる)をフラグメンタの中のイオンに適用することによって達成することができる。
【0048】
特定の実施形態では、第1の電圧差を加えることは、第1の電圧差を漸進的に修正して、イオン化された流れ及び/または断片化されたイオン化された流れの中の選択されたイオンが、第1の成分群としてイオン移動度分光計に通過して入ることを可能にすることを含むことができる。方法は、第1の分析特性に基づいて第1の成分群に対する第1のデータセットを生成することを含むことができる(例えば、図4Cに示すように)。
【0049】
特定の実施形態では、化学的試料に対して示差移動度分光測定を実行することは、第2の高周波場にわたって第2の電圧差を加えて、断片化されたイオン化された流れの中の陽イオンを負電荷に向かってドリフトさせ、陰イオンを正電荷に向かってドリフトさせて、断片化されたイオン化された流れの中の陰イオンから陽イオンを分離することをさらに含む。特定のこのような実施形態では、示差移動度分光測定は、第1の成分群のみがイオン移動度分光計へと通過するように、断片化されたイオン化された流れの中のイオンをフィルタリングして第1の成分群を生成することをさらに含むことができる。
【0050】
第1の電圧差を加えること、及び/または第2の電圧差を加えることは、第1の電圧差及び/または第2の電圧差を漸進的に修正して、イオン化された流れ及び/または断片化されたイオン化された流れの中の選択されたイオンが、第1の成分群としてイオン移動度分光計に通過して入ることを可能にすることを含み得、示差移動度分光測定を実行することは、第1の分析特性に基づいて、第1の成分群に対する第1のデータセットを生成することをさらに含む。
【0051】
第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することは、第1の成分群のみを含むイオン化された流れをイオン移動度分光計の分析モジュールへと通過させること、及び第1の成分群における陽イオンを、イオン移動度分光計の(例えば、第1の陽ドリフト管136の)第1の分析モジュールの負電荷に引き込み、第1の成分群の中の陰イオンをイオン移動度分光計の(例えば、第1の陰ドリフト管138の)第2の分析モジュールの正電荷に引き込むために、分析モジュールに電圧差を加えることをさらに含むことができる。
【0052】
第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することは、第1の連続群のイオンを空間で分離すること、及び第1の成分群の中のイオンに対して第1の飛行時間分析を実行して、第1の成分群の中の選択されたイオン(例えば、それぞれのシャッター140、142を通過するもの)をフラグメンタ(例えば、それぞれのフラグメンタ144、146)へと通過させること、及び第1の成分群の中の選択されたイオンを断片化して、さらに解離し、特有の移動度特性を有する追加のイオンのタイプを生成し、第2の成分群を形成するイオンの断片化された流れを生成することをさらに含むことができる。
【0053】
第1の成分群に対してイオン移動度分光測定を実行することは、第2の成分群の中のイオンの断片化された流れに対して第2の飛行時間分析を実行して、第2の分析特性に基づいて第2の成分群に対する第2のデータセットを生成することをさらに含むことができる(例えば、図4Bに示すように)。方法は、第2の成分群に対して生成された第2のデータセットを、第1の成分群に対して生成された第1のデータセットと相関させること(例えば、図4Aに示すように)、及び第1のデータセットと第2のデータセットとの間の相関に基づいて、化学組成の同一性を判定することを含み、これは、計算モジュールによって実行され得る。
【0054】
化学分析を行って化学物質を同定する1つの方法は、単一イオン移動度分光測定である。この方法で、第1のステップでは、第1のイオン分離のために、イオン化領域を通して分析物を送る。第2のステップでは、分離されたイオンをフラグメンタを通して送り、さらなる分離の前にイオンを分離する。第1のステップと第2のステップとの間に、所定のピークの高さを有するイオンのみがフラグメンタに入ることを可能にするために、シャッターが含まれる。次いで、フラグメンタに入るイオンのみが、飛行時間を使用して分析され、分析物の化学成分を判定し、最終的に分析物の化学的同一性を判定する。第1の分離ステップ及び第2の分離ステップにおいてイオンを分離するために、電圧勾配を加えて、イオン化領域を通して陽イオンを引き込み、次いで、電圧勾配を逆にして、イオン化領域を通して陰イオンを引き込む。しかしながら、この技術は、陽イオン及び陰イオンを別々に処理することを必要とし得(より多くのエネルギーを必要とし得る)、大きな分解能をもたらさない。
【0055】
上述のイオン移動度分光測定の改良は、タンデム型移動度分光測定を含み、これは、陽イオン及び陰イオンを同時に処理することを可能にする。タンデムシステムでは、分析物はシステムに入り、イオン化源、例えば金属を用いてイオン化される。イオン化後、イオンは、タンデム型分光計に向けられ、1つは、陽イオンを分析するための高い負の電圧を有し、1つは、陰イオンを分析するための高い正の電圧を有する。それぞれの分光計の中で、化学成分の同一性は、上記の単一のシステムよりも高い分解能で同定することができるが、断片化の追加の利益はない。
【0056】
したがって、タンデム型示差移動度分光計(「DMS」)(例えば、第1の成分群を断片化する前及び後に示差移動度分光測定を実行することを含む)を用いることができる、本明細書に開示されるシステム及び方法は、タンデム型イオン移動度分光計(「IMS」)(例えば、第2の成分群を断片化する前及び後にイオン移動度分光測定を実行することを含む)と併せて、特定の非タンデム型システムよりも優れた能力を達成することができる。例えば、特許請求されているシステム及び方法の利点は、少なくとも、DMSイオンフラグメンタの添加が、タンデム型移動度分光測定に利用可能な第2のレベルの情報について促進すること、組み合わされたDMS及びIMSデータが、移動度分光測定による化学的同定に対する前例のない分解能をもたらすこと(例えば、類似のK値を有するイオンの分化を助けること、及びフラグメンタの単純な形状が、IMS/IMSシステムに対して具体的に設計されたイオンフラグメンタの工学的制限を克服することを含み得る。
【0057】
本明細書で使用する場合、分解能は、イオンを区別する能力を指すために使用される。本明細書に開示されるシステム及び方法は、よりロバストなデータセット(例えば、図4Aの、組み合わされ、相関されたデータセット)を得るために、より大きな分析的な分解能をもたらす。両方のタンデムシステムでイオンを断片化することにより、結果として解離したイオンが、元の試料を同定するために利用可能な情報の量を増加させる。
【0058】
本明細書に開示される任意の数値は、正確な値であり得、または範囲内の値であり得ることが、当業者には理解されよう。さらに、本開示で使用される近似を表すいずれの用語(例えば「約」、「ほぼ」、「およそ」)も、範囲内の記載された値を意味し得る。例えば、特定の実施形態では、範囲は、(例えば既知の許容限界または誤差範囲に関して)当業者により認識されるように、(プラスまたはマイナス)20%以内、または10%以内、または5%以内、または2%以内、または任意の他の適切なパーセンテージもしくは数値以内にすることができる。
【0059】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、冠詞の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(つまり、少なくとも1つ)を指すように、本明細書で使用されている。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0060】
本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、語句「及び/または」は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には連合的に存在し、他の場合には離合的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「及び/または」で列挙された複数の要素は、同じ様式、すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つ以上」で解釈されるべきである。「及び/または」という節により具体的に特定される要素以外、他の要素は、具体的に特定される要素と関連するか否かにかかわらず、任意選択で存在し得る。よって、非限定的な例として、「A及び/またはB」への言及は、「備える(comprising)」などの非制限型言語と併せて使用される場合、一実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみ(任意選択でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではAとBの両方(任意選択で他の要素を含む)などを指し得る。
【0061】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「または」は、上記で定義された「及び/または」と同じ意味を有すると、理解されるべきである。例えば、「または」または「及び/または」は、リスト内の項目を区切る場合、包括的であるように解釈されるべきであり、すなわち、複数の要素または要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、任意選択で追加の列挙されていない項目も含む。「1つのみ」または「正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」などの、明らかに対照的に示される用語のみが、要素の数または列挙の正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される用語「または(or)」は、「いずれか(either)」、「~のうちの1つ(one of)」、「~のうちの1つのみ(only one of)」または「まさに~のうちの1つ(exactly one of)」などの排他的な用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。
【0062】
本開示に照らして当業者には理解されるように、本明細書では、開示される任意の実施形態及び/またはその任意の適切な部分(複数可)の任意の適切な組み合わせ(複数可)が企図される。
【0063】
上記で説明され、図面で示されたように、本開示の実施形態は、それらが属する技術分野の向上をもたらす。本開示の装置及び方法が図示及び説明されたが、本開示の範囲から逸脱することなく、変更及び/または修正を行うことができることを、当業者は容易に理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】