(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104307
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】塗料組成物およびシート成形物
(51)【国際特許分類】
C09K 21/02 20060101AFI20240729BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240729BHJP
C09K 21/14 20060101ALI20240729BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20240729BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240729BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240729BHJP
【FI】
C09K21/02
E04B1/94 P
C09K21/14
C09D5/18
C09D183/04
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008434
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【テーマコード(参考)】
2E001
4H028
4J038
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA08
2E001FA03
2E001FA14
2E001GA06
2E001GA24
2E001HC01
2E001HE01
2E001HF12
2E001KA01
4H028AA05
4H028AA49
4J038DL031
4J038GA15
4J038HA456
4J038KA04
4J038NA15
4J038PC03
4J038PC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】けい酸ナトリウムと変性シリコーン樹脂とを含有する塗料組成物またはシート成形物の吸湿による変形を防止する。
【解決手段】木目を視認できる状態で木材1を難燃化する塗料組成物2であって、塗料組成物2は、けい酸ナトリウムと変性シリコーン樹脂とを含有し、けい酸ナトリウムのJIS K 1408:1966に規定されるSiO2/Na2Oのモル比が1.8~3.0である。木目を視認できる状態で木材1を難燃化するシート状成形物2であって、シート状成形物2は、けい酸ナトリウムと変性シリコーン樹脂とを含有し、けい酸ナトリウムのJIS K 1408:1966に規定されるSiO2/Na2Oのモル比が1.8~3.0である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を難燃化する透明な塗料組成物であって、
前記塗料組成物は、けい酸ナトリウムと変性シリコーン樹脂とを含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
透明なシート状成形物であって、
前記シート状成形物は、けい酸ナトリウムと変性シリコーン樹脂とを含有することを特徴とするシート状成形物。
【請求項3】
少なくとも一方の面に透明樹脂層を備えることを特徴とする請求項2に記載のシート状成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は塗料組成物およびシート成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を木目が視認できる状態で難燃化する方法として、難燃剤を木材に浸透させる方法がある(例えば、特許文献1参照。)。また、水溶性ケイ酸ナトリウムと水溶性バイオマスナノファイバーとを含侵させて木材を難燃化する方法(例えば、特許文献2参照。)、ケイ酸ナトリウム又はフェノール樹脂を基材とし、ガラスバルーン、シラスバルーン、不燃性木粉、アルミ粉を1種類又は数種類混練した組成物を塗付する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
しかし、難燃剤を木材に浸透させる方法は特殊な装置が必要であり、多くの時間とエネルギーとを要するという課題があり、木目を視認することができるとともに、充分な難燃性を有し、かつ、簡易に製造できるものとして本願出願人は、けい酸ナトリウムを含有する塗料組成物またはシート成形物があるが、空気中の水分を吸湿して変形するおそれがあるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-137805号公報
【特許文献2】特開2021-179127号公報
【特許文献3】特開2021-66859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
けい酸ナトリウムと変性シリコーン樹脂とを含有する塗料組成物またはシート成形物の吸湿による変形を防止する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面は、木材を難燃化する透明な塗料組成物であって、前記塗料組成物は、けい酸ナトリウムと変性シリコーン樹脂とを含有することを特徴とする塗料組成物である。
【0007】
本開示の別の局面は、透明なシート状成形物であって、前記シート状成形物は、けい酸ナトリウムと変性シリコーン樹脂とを含有することを特徴とするシート状成形物である。
【0008】
本開示の別の局面は、前記シート状成形物の少なくとも一方の面に透明樹脂層を備えることを特徴とするシート状成形物である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の塗料組成物の塗膜またはシート状成形物を木材表面に設けた構成を表す断面図である。
【
図6】本開示の塗料組成物のシート状成形物を板ガラス表面に設けた構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
1.塗料組成物の構成
本開示の塗料組成物は例えば、以下のような組成である。
塗料組成物の組成例:不揮発分80質量%のけい酸ナトリウム水溶液100質量部、ポリエーテル骨格の変性シリコーン樹脂5質量部、硬化触媒としての金属錯体0.1質量部。
【0012】
前記けい酸ナトリウム水溶液はJIS K 1408:1966に規定されるSiO2/Na2Oのモル比が1.8~3.0であるけい酸ナトリウムを含むことが好ましい。前記モル比は1.8~2.6であることが一層好ましい。モル比が1.8未満であると塗料組成物が不安定になり、逆に3.0を超えると塗料組成物により形成される塗膜の柔軟性が十分でない。
【0013】
本開示の塗料組成物の不揮発分中のけい酸ナトリウムの含有率は好ましくは75~100質量%、より好ましくは85~100質量%である。この範囲にあるとき、木材を難燃化する効果に優れるとともに、木目の視認性に優れる。
【0014】
本開示の塗料組成物の不揮発分は、好ましくは40~65質量%、より好ましくは50~60質量%である。この範囲にあるとき、塗料組成物の塗装作業性に優れる。
【0015】
前記変性シリコーン樹脂は、主骨格にポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の構造を有し、主鎖若しくは側鎖のいずれかに、反応性シリル基を有する化合物をいう。空気中の水分等により反応性シリル基のアルコキシ基が加水分解し、生成したシラノール基が縮合することによって重合する(いわゆる湿気硬化形のシリコーン樹脂)。変性シリコーン樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記変性シリコーン樹脂の主骨格としては、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシブチレンなどのポリエーテル系重合体;ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンなどの脂肪族炭化水素系重合体;ポリ(メタ)アクリル酸、及びポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル系重合体;ポリエステル系重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリエーテル系重合体を用いることが好ましく、ポリオキシアルキレンを用いることがより好ましい。主骨格としてポリエーテル系重合体を用いることにより、けい酸ナトリウム水溶液と混和させることが容易になるとともに、透明な塗膜を形成することができる。
【0017】
前記変性シリコーン樹脂の骨格は、直鎖状であっても、分岐状であってもよいが、直鎖状のものと分岐状のものを混合して用いることが好ましい。直鎖状と分岐状の変性シリコーン樹脂を併用することにより、けい酸ナトリウム水溶液と混和した際の硬化速度を制御することができる。
【0018】
前記反応性シリル基としては、特に制限されないが、例えば、付加反応性シリル基、縮合反応性シリル基、加水分解性シリル基が挙げられる。より具体的には、ケイ素原子に、水素原子、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アミド基、オキシム基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アミノオキシ基等の反応性基が結合した基が挙げられる。
【0019】
前記変性シリコーン樹脂は末端にトリメトキシシリル基またはジメトキシシリル基を有することが好ましい。ジメトキシシリル基を有することによりけい酸ナトリウム水溶液との反応硬化性と混和安定性に優れる。前記変性シリコーン樹脂は市販品を使用することができ、例えば、EST-250、OR110S、MA440、MAX602、S227、SA100S、SAT145、SAX015(カネカ社製)、STP-E10、STP-E15、STP-E30、STP-E35(ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト社製)等が挙げられる。
【0020】
前記変性シリコーン樹脂の粘度は、好ましくは0.1~20Pa・s、より好ましくは0.2~10Pa・sである。この範囲にあるとき、シート成形性に優れる。
【0021】
前記変性シリコーン樹脂のけい酸ナトリウム水溶液の不揮発分80質量部に対する好ましい配合量は1~50質量部であり、より好ましくは2~20質量部である。この範囲にあるとき、塗料組成物により形成された塗膜の耐湿性に優れる。変性シリコーン樹脂の配合量が1質量部未満の場合には得られる塗膜の耐湿性が十分でなく、逆に50質量部を超える場合には木材を基材としたときの難燃性が低下するおそれがある。基材がガラスである場合には、好ましい配合量は1~100質量部であり、より好ましくは2~80質量部である。
【0022】
前記硬化触媒は塗料組成物の硬化を早めるとともに、塗料組成物により得られる塗膜の耐湿性を高める。
【0023】
前記硬化触媒は限定されないが、例えば、有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、有機アルミニウム化合物、金属錯体、有機酸ビスマス等が挙げられる。
【0024】
前記有機スズ化合物としては例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸錫、ジブチル錫メトキシド等が挙げられる。市販品としてはネオスタン(日東化成社製)等が挙げられる。
【0025】
前記有機チタネート化合物としては例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等が挙げられる。
【0026】
前記有機アルミニウム化合物としては例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等が挙げられる。
【0027】
前記金属錯体としては例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0028】
前記有機酸ビスマスとしては例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスおよびロジン酸ビスマス等が挙げられる。市販品としてはネオスタン(日東化成社製)、Borchi Kat(松尾産業社製)等が挙げられる。
【0029】
前記硬化触媒の添加量は特に限定されないが、硬化物の耐水性の観点から、変性シリコーン樹脂100質量部に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~2質量部であることがより好ましい。これらの硬化触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
本開示の塗料組成物を、例えば木材の表面に塗付し、透明な塗膜を形成することができる。
【0031】
本開示の塗料組成物を、例えばガラスの表面に塗付し、透明な塗膜を形成することができる。
【0032】
なお、本明細書において透明とは木材に塗付した場合には、木目が視認できる状態をいい、ガラスに塗付した場合には、ガラスを通して採光できる状態をいう。いずれも完全な透明には限定されず、例えば、半透明であってもよい。
【0033】
本開示の塗料組成物は、例えば、ガラス繊維をさらに含む。塗料組成物がガラス繊維を含む場合、塗膜のひび割れを抑制する。ガラス繊維の直径は、2μm以上15μm以下であることが好ましい。ガラス繊維の長さは、3μm以上200μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることが一層好ましい。ガラス繊維の長さをガラス繊維の直径で除した値を、ガラス繊維のアスペクト比とする。ガラス繊維のアスペクト比は、1.5以上5.5以下であることが好ましい。
【0034】
本開示の塗料組成物は、例えば、難燃性、塗膜の透明性を著しく損なわない範囲で、通常の塗料に使用される添加剤、顔料等を含むことができる。添加剤として、例えば、増粘剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、染料等、消泡剤、顔料等が挙げられる。
【0035】
増粘剤として、例えば、有機変性スメクタイト等の粘土鉱物、シリカ等が挙げられる。pH調整剤として、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム等が挙げられる。顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。有機顔料として、例えば、キナクリドン、アゾ顔料等が挙げられる。体質顔料として、例えば、硫酸バリウム、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0036】
本開示の塗料組成物には黄変防止の目的で酸化防止剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、リン系、ヒドロキノン系、ビス・トリス・ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤等が挙げられる。
【0037】
本開示の塗料組成物の製造方法は例えば、以下のようである。
【0038】
けい酸ナトリウムを塗料製造容器に収容した後、ミキサーで攪拌しながら前記添加剤、顔料、変性シリコーン樹脂等を添加して均一な溶液とする。粘度調整のために水希釈しても良い。本開示の塗料組成物によれば、水分と変性シリコーン樹脂(湿気硬化)とを混合してもその反応は非常に遅く、数日から数ヶ月程度は流動性を保持することができる。硬化触媒は塗付直前に混合する。硬化触媒を混合しない限り、塗料組成物中の変性シリコーン樹脂の反応速度は遅いため、長期保管が可能となる。
【0039】
本開示の塗料組成物の使用方法は例えば、以下のようである。
【0040】
木材として、例えば、厚さ12mm、幅105mm、長さ2000mmのスギ製材等が挙げられる。塗料組成物を塗付する方法として、例えば、刷毛又はローラーを用いる方法等が挙げられる。塗料組成物の塗付量は、例えば、1.4kg/m2である。
【0041】
1回目の塗付後、室温で16時間放置する。次に、塗料組成物を再度塗付する。この塗付を2回目の塗付とする。2回目の塗付における塗付方法及び塗付量は、1回目の塗付と同じである。2回目の塗付後、室温で16時間放置する。また、1回で2回分の塗付量を塗付しても良い。このようにして得られた塗膜は透明であり、木目を視認することができるとともに、空気中の水分を吸湿しにくいため高湿度下でも塗膜は変形しにくい。
【0042】
次に、透明樹脂層としての塩化ビニリデン樹脂を含有するつや消し塗料を、エアスプレーを用いて塗付しても良い。つや消し塗料の塗付量は、例えば、100g/m2である。室温で16時間放置する。以上の工程により、難燃性の木質建材を得ることができる。
【0043】
木材はスギ製材に限定されず、種々の木質建材を任意に選択できる。木質建材として、例えば、製材、集成材、合板、単板積層材(LVL)、直交集成板(CLT)、中密度繊維板(MDF)、突板等が挙げられる。木材の形態は特に限定されない。木材の形態として、例えば、柱状、板状、シート状、布状等が挙げられる。
【0044】
木材の種類もスギに限定されず、種々の木材を任意に選択できる。例えば、ヒノキ、カラマツ、オウシュウアカマツ、ヒバ等が挙げられる。
【0045】
また、木質建材の用途としては例えば、木質の構造部材が挙げられる。木質の構造部材として、例えば、柱、梁、壁、床等が挙げられる。
【0046】
柱として、例えば、角形柱がある。長手方向に直交する断面での角形柱の断面形状は、例えば、正方形である。正方形の一辺の長さは、例えば、90mm以上1100mm以下である。
【0047】
梁として、例えば、角形梁がある。長手方向に直交する断面での角形梁の断面形状は、例えば、長方形である。長方形の一辺の長さは、例えば、90mm以上800mm以下である。前記一辺に隣接する辺の長さは、例えば、90mm以上1200mm以下である。角形梁の長さは特に限定されないが、例えば、3000mm以上10000mm以下である。
【0048】
壁の形状は、例えば、長方形である。長方形の短辺の長さは、例えば、3000mm以下である。長方形の短辺の長さは、例えば、500mm以上である。長方形の長辺の長さは、例えば、12000mm以下である。長方形の長辺の長さは、例えば、2000mm以上である。
【0049】
木材として、例えば、石こうボード等の無機質建材の表面に板状又はシート状の木材を取り付けたものが挙げられる。
【0050】
塗料組成物の塗付に使用する器具はローラー以外の器具であってもよい。塗料組成物の塗付に使用する器具として、通常の塗料を塗付するための器具を使用することができる。塗料組成物の塗付に使用する器具として、例えば、刷毛、ヘラ、スプレー、ロールコータ、ナイフコータ等が挙げられる。
【0051】
塗料組成物の塗付量は、必要とされる難燃性能に応じて任意に設定することができる。例えば、ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により50kW/m2の輻射強度でスギ製材を10分間加熱した場合の総発熱量を8MJ/m2以下にするためには、塗付量が1.5kg/m2~3.0kg/m2であることが好ましく、1.8kg/m2~2.6kg/m2であることがより好ましい。
【0052】
塗料組成物の塗付後、乾燥させるときの乾燥温度は80℃以下であることが好ましい。強制乾燥を行う場合、乾燥温度は35℃~70℃、より好ましくは45~60℃である。この範囲にあるとき、塗料組成物を塗付した木材の変形を抑制することができる。強制乾燥に代えて、自然乾燥を行ってもよい。
【0053】
塗料組成物の塗付後における乾燥時間は必要に応じて短縮又は延長することができる。強制乾燥を行う前の室温での放置時間は好ましくは30分~24時間であり、より好ましくは1時間~16時間である。強制乾燥での乾燥温度が60℃以下である場合は、室温での放置を行わず、塗付後すぐに強制乾燥を行ってもよい。
【0054】
前記透明樹脂層はつや消し塗料に限定されず、透明な合成樹脂であれば任意に設定することができる。例えば、合成樹脂フィルムでも良い。
【0055】
前記透明樹脂層に代えて、ガラス板を貼り合わせても良い。
【0056】
つや消し塗料を塗付する目的は、意匠性を付与することである。意匠性を付与することを目的とする塗装を意匠性塗装とする。意匠性塗装では、つや消し塗料に代えてつやあり塗料を用いてもよい。意匠性塗装では、アクリル樹脂エマルジョンを含有する塗料に限らず、基材の視認性を著しく妨げない塗料を適宜選択して用いることができる。
【0057】
意匠性塗装で使用する塗料は、合成樹脂溶液に代えて、合成樹脂エマルジョンや合成樹脂水溶液を含む塗料であってもよい。意匠性塗装で使用する塗料は、塩化ビニリデン樹脂に限らず、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の任意の合成樹脂を含む塗料であってもよい。意匠性塗装では、市販のクリヤー塗料を用いてもよい。意匠性塗装は行わなくてもよい。
【0058】
本開示の塗料組成物を基材の表面に塗付すると、基材の難燃性が高くなる。その理由は以下のように推測される。
【0059】
本開示の塗料組成物を塗付し、さらに意匠性塗装を行った木材が火災時の燃焼熱を受けると、最表面の意匠性塗装の塗膜が数秒から数十秒で燃焼する。次に、本開示の塗料組成物の塗膜のガラス化が始まり、酸素遮断層を形成する。その結果、木材は燃焼せず、発熱がほとんど起こらない。
【0060】
本開示の別な局面として、ガラスへの塗付が考えられる。ガラスとして、例えば、厚さ6mm、幅800mm、長さ1000mmのフロートガラス板等が挙げられる。塗料組成物を塗付する方法として、例えば、刷毛又はローラーを用いる方法等が挙げられる。塗料組成物の塗付量は、例えば、3.6kg/m2である。塗付方法は木材に塗付する場合と同じであるが、流し込み等によって塗付しても良い。
【0061】
本開示の塗料組成物をガラスの表面に塗付すると、ガラスの耐熱性(火炎貫通抑制効果)が高くなる。その理由は以下のように推測される。
【0062】
本開示の塗料組成物を塗付し、さらに意匠性塗装を行ったガラスが火災時の燃焼熱を受けると、最表面の意匠性塗装の塗膜が数秒から数十秒で燃焼する。次に、本開示の塗料組成物の塗膜のガラス化が始まり、ガラス質の発泡断熱層を形成する。その結果、基材のガラスがひび割れても発泡断熱層はひび割れず、火炎がガラスの反対側に貫通して延焼することを防ぐことができる。
【0063】
2.シート状成形物の構成
本開示のシート状成形物は例えば、以下のような組成である。
シート状成形物の組成例:不揮発分80質量%のけい酸ナトリウム水溶液100質量部、ポリエーテル骨格の変性シリコーン樹脂7質量部、硬化触媒としての金属錯体0.2質量部。
【0064】
本開示のシート状成形物はJIS K 1408:1966に規定されるSiO2/Na2Oのモル比が1.8~3.0であるけい酸ナトリウムを含むことが好ましい。前記SiO2/Na2Oのモル比は2.0~2.6であることが一層好ましい。モル比が1.8未満であるとシート状に成形しにくくなり、逆に3.0を超えるとシート状成形物の柔軟性が十分でない。
【0065】
本開示のシート状成形物中のけい酸ナトリウムの含有率は好ましくは75~99質量%、より好ましくは85~98質量%である。この範囲にあるとき、基材としての木材を難燃化する効果に優れるとともに、木目の視認性に優れる。また、基材としてのガラスに適用した場合には火炎の非貫通性に優れる。
【0066】
本開示のシート状成形物は変性シリコーン樹脂を含む。変性シリコーン樹脂はシート成形物の耐湿性を高める。変性シリコーン樹脂としては上記「1.塗料組成物の構成」の項で挙げたものと同じものを使用することができる。
【0067】
前記シート状成形物に使用する変性シリコーン樹脂の、けい酸ナトリウム水溶液の不揮発分80質量部に対する好ましい配合量は1~25質量部であり、より好ましくは2~10質量部である。この範囲にあるとき、シート状成形物の耐湿性に優れるとともに成形性に優れる。変性シリコーン樹脂の配合量が1質量部未満の場合には得られる塗膜の耐湿性が十分でなく、逆に25質量部を超える場合にはシート状に成形する際の可使時間が短くなるおそれがある。
【0068】
シート状成形物に使用する変性シリコーン樹脂の粘度は、好ましくは0.1~20Pa・s、より好ましくは0.2~10Pa・sである。この範囲にあるとき、シート成形性に優れる。
【0069】
本開示のシート状成形物は硬化触媒を含むことができる。前記硬化触媒はシート成形後の硬化を早めるとともに、シート成形物の耐湿性を高める。硬化触媒としては上記「1.塗料組成物の構成」の項で挙げたものと同じものを使用することができる。
【0070】
本開示のシート状成形物は、例えば、ガラス繊維をさらに含む。シート状成形物がガラス繊維を含む場合、シート状成形物のひび割れを抑制するとともに製造過程または建築現場等でシートを取り扱う際にちぎれにくくなる。ガラス繊維の直径は、2μm以上15μm以下であることが好ましい。ガラス繊維の長さは、3μm以上200μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることが一層好ましい。ガラス繊維の長さをガラス繊維の直径で除した値を、ガラス繊維のアスペクト比とする。ガラス繊維のアスペクト比は、1.5以上5.5以下であることが好ましい。
【0071】
本開示のシート状成形物は、例えば、難燃性、塗膜の透明性を著しく損なわない範囲で、通常の添加剤、顔料等を含むことができる。添加剤として、例えば、増粘剤、紫外線吸収剤、分散剤、湿潤剤、染料等、消泡剤、顔料等が挙げられる。
【0072】
増粘剤として、例えば、有機変性スメクタイト等の粘土鉱物、シリカ等が挙げられる。顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。有機顔料として、例えば、キナクリドン、アゾ顔料等が挙げられる。体質顔料として、例えば、硫酸バリウム、タルク、マイカ、三酸化アンチモン等が挙げられる。
【0073】
本開示のシート状成形物の製造方法は例えば、以下のようである。
【0074】
けい酸ナトリウムをミキサーで混練しながら前記変性シリコーン樹脂、添加剤、顔料、硬化触媒等を添加して均一な粘土状または粘調溶液状とする(このようなシート形状に成形する前の粘土状または粘調溶液状のけい酸ナトリウム含有組成物を以下、「シート中間体」という。)。粘度調整のために加水しても良い。
【0075】
本開示のシート中間体によれば、水分と変性シリコーン樹脂(湿気硬化)とを混合してもその反応は非常に遅く、数日から数週間程度は流動性を保持することができる。
【0076】
前記シート中間体は成形直前に硬化触媒を混合しても良い。このように構成した場合、硬化触媒を含有しないシート中間体の流動性の保持期間をさらに延長することができる。
【0077】
続いて、シート中間体をナイフコータで所定の幅及び厚さの金型を介して透明樹脂層としてのPET製合成樹脂フィルムの上に塗付し、乾燥させた後に、さらに透明樹脂層としてのPET製合成樹脂フィルムで挟み込んで透明なシート状成形物を得る。このようにして得られたシート状成形物は、空気中の水分を吸湿しにくいため高湿度下でも変形しにくい。
【0078】
前記シート中間体は加温してから成形しても良い。シート中間体を加温することにより、乾燥時間を短縮することができるとともに、シート成形物に内包する気泡を低減することができる。
【0079】
前記シート中間体の加温は、好ましくは30~80℃、より好ましくは40~60℃である。
【0080】
前記シート中間体の乾燥は重量減少が10~15質量%になった状態でPET製合成樹脂フィルムにより挟み込むことが好ましい。このように構成することで高い透明性を得ることができる。
【0081】
前記シート中間体に用いるけい酸ナトリウムはJIS K 1408:1966に規定される15℃における重ボーメ度が45~80であることが好ましい。重ボーメ度がこの範囲にあるとき、シート状成形物の成形性に優れる。
【0082】
前記シート中間体は粘土状であることが好ましい。液状でも構わないが粘度が高く流動性が低いことが好ましい。シート中間体が粘土状であることにより、成形性に優れる。
【0083】
前記シート中間体の不揮発分は75~99質量%であることが好ましく、80~95質量%であることが一層好ましい。不揮発分がこの範囲にあるとき、シート状成形物の成形性に優れる。
【0084】
前記シート状組成物の幅は、例えば、1000mmである。また、厚さは例えば、1.5mmである。
【0085】
前記成形方法はナイフコータに限定されず、例えば、押出機を用いて成形しても良いし、シート中間体を型枠に流し込んで成形しても良い。また、シート中間体をプレスして成形しても良い。
【0086】
前記成形方法は巻取りの形態に限定されず、枚葉の形態でも良い。
【0087】
前記合成樹脂フィルムはPET、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等の透明な合成樹脂フィルムを使用することができる。また、合成樹脂フィルムの表面にシリコーン樹脂等で離型処理を行ったセパレータを用いても良い。成形方法によっては離型剤等を用いることで製造設備へのシート中間体の付着を抑制することができ、このような場合には合成樹脂フィルムを用いなくても良い。
【0088】
前記合成樹脂フィルムは表面に粘着層を設けた粘着フィルムを用いても良い。このように構成することでシート状成形物と透明樹脂層との密着性を向上することができる。粘着層としては例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。粘着層の厚さは10~100μmとすることができる。
【0089】
前記合成樹脂フィルムはシート中間体が塗付される面に粘着層を設けても良い。
【0090】
前記透明樹脂層は、シート中間体の両面に設けても良いし、片面だけに設けても良い。
【0091】
前記透明樹脂層の厚さは好ましくは15~150μm、より好ましくは20~50μmである。この範囲にあるとき、発熱量を抑制することができるため、難燃性に優れる。また、傷つき防止性と耐久性に優れる。
【0092】
前記合成樹脂フィルムは剥離せずにシート中間体と密着させても良い。このように構成した場合は、建材へシート組成物を設置する際に透明樹脂層をはがさずに使用することができるため生産性に優れるとともに、耐水性、傷つき防止、美観維持等の役割を持つ保護層として機能する。
【0093】
前記合成樹脂フィルムをシート中間体と密着させる場合には、透明樹脂層とシート中間体とが接触する面にプライマー等を塗付する、またはプラズマ処理を施す等により、透明樹脂層とシート中間体との密着性を向上させることができる。
【0094】
前記合成樹脂フィルムをシート中間体と密着させる場合には、透明樹脂層とシート中間体とが接触しない面に離型処理を行うことができる。このように構成した場合、巻き取ったシート状成形物を建築現場や建材工場で広げることが容易である。
【0095】
前記合成樹脂フィルムをシート中間体と密着させる場合には、透明樹脂層とシート中間体とが接触しない面にエンボスを設ける等により艶消し処理をすることが好ましい。このように構成した場合、屋内照明による光の反射を拡散することができるため、意匠性に優れる。
【0096】
前記合成樹脂フィルムをシート中間体と密着させる場合には、透明樹脂層のシート中間体と接していない面に粘着層を設けても良い。このように構成した場合、建築現場又は建材工場において、シート状成形物の木材、ガラス等の基材表面への固定作業が容易になる。
【0097】
前記合成樹脂フィルムに代えてガラス板を用いても良い。
【0098】
前記シート中間体を乾燥させるときの乾燥温度は150℃以下であることが好ましく、40~60℃であることがより好ましい。強制乾燥を行う場合、乾燥温度に傾斜をつけて乾燥炉の入口から最高温度に達するまでの区間で徐々に水分を揮発させることができるため、水分の急激な揮発による気泡の発生を抑制することができる。強制乾燥に代えて、自然乾燥を行っても良い。
【0099】
前記シート中間体の乾燥時間は必要に応じて短縮又は延長することができる。強制乾燥を行う前に室温での放置時間を設けても良い。
【0100】
前記シート状成形物の含水率は好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~8質量%であることが好ましい。
【0101】
前記実施形態ではシート中間体を塗付することにより成形したが、前記シート中間体を押出し機で成形しても良いし、型枠等に流し込んで乾燥させることによりシート状に成形しても良い。
【0102】
本開示のシート状成形物の使用方法は例えば、以下のようである。
【0103】
本開示のシート状成形物を、木材の表面にビス留め等により設置する。
【0104】
木材として、例えば、厚さ90mm、幅600mm、長さ3500mmのスギCLT等が挙げられる。シート状成形物の厚さは、例えば、1.2mmである。
【0105】
前記シート状成形物の固定方法はビス留めに限定されず、例えば、接着、粘着、金物による把持等でも良い。また、例えば、シート状成形物の透明樹脂層を備えていない面を木材に押圧する方法等が挙げられる。前記押圧はシート状成形物の透明樹脂層を備えていない面を水で濡らしてから行ってしても良い。
【0106】
シート状成形物の幅は、必要とされる建材の大きさに応じて任意に設定することができる。例えば、300mm、303mm、910mm、1000mm、2000mm等が挙げられる。
【0107】
シート状成形物の厚さは、必要とされる難燃性能に応じて任意に設定することができる。例えば、ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により50kW/m2の輻射強度でスギCLTを10分間加熱した場合の総発熱量を8MJ/m2以下にするためには、厚さ0.5~2.0mmであることが好ましく、0.7~1.5mmであることがより好ましい。
【0108】
木材はスギCLTに限定されず、種々の木質建材を任意に選択できる。例えば、上記「1.塗料組成物の構成」の項で挙げたものがある。
【0109】
また、木質建材の用途及びその形状についても上記「1.塗料組成物の構成」の項で挙げたものがある。
【0110】
シート状成形物を木材に固定した後に、該シート状成形物の表面につや消し塗装を行っても良い。また、透明樹脂層をはがさない仕様の場合には、つや消しの合成樹脂フィルムを使用することによっても同様の意匠を実現することができる。つや消し塗装またはつや消し合成樹脂フィルムを用いる理由は意匠性付与である。このような意匠性塗装または意匠性セパレータでは、つや消し塗料またはつや消し合成樹脂フィルムに代えてつやあり塗料またはつや有合成樹脂フィルムを用いてもよい。意匠性塗装または意匠性セパレータでは、基材の視認性を著しく妨げない塗料または合成樹脂フィルムを適宜選択して用いることができる。意匠性塗装または意匠性合成樹脂フィルムを用いることによりシート状成形物の耐水性、傷つき防止性および美観に優れる。
【0111】
シート状成形物を木材に固定する際に、透明樹脂層を木材側にして固定しても良い。
【0112】
前記透明樹脂層はシート状成形物の片面に設けても良いし、両面に設けても良い。透明樹脂層をシート状成形物の少なくとも一方の面に備えることにより、建築現場や建材工場においてシート状成形物の取扱い作業が容易となる。また、透明樹脂層を両面に設けることにより、シート状成形物のひび割れ防止性に優れる。
【0113】
本開示のシート状成形物は高湿度下でも変形しにくい。
【0114】
本開示のシート状成形物を固定した木材が火災時の燃焼熱を受けると、最表面の透明樹脂層が一度に燃焼し、続いてシート状成形物のガラス化が始まり、酸素遮断層を形成する。その結果、木材は燃焼せず、発熱が抑制される。
【0115】
本開示の別な局面として、ガラスへの貼付が考えられる。ガラスとして、例えば、厚さ6mm、幅800mm、長さ1000mmのフロートガラス板等が挙げられる。シート状成形物を貼付する方法として、例えば、合成樹脂フィルムを剥離してそのまま貼り付ける方法がある。また、合成樹脂フィルムを剥離せずに透明な接着剤等によって貼り付けても良い。
【0116】
本開示のシート状成形物をガラスの表面に貼付すると、ガラスの耐熱性(火炎貫通抑制効果)が高くなる。その理由は以下のように推測される。
【0117】
本開示のシート状成形物を貼付し、さらに意匠性塗装を行ったガラスが火災時の燃焼熱を受けると、最表面の合成樹脂フィルムが数秒から数十秒で燃焼する。次に、本開示のシート状成形物のガラス化が始まり、ガラス質の発泡断熱層を形成する。その結果、基材のガラスがひび割れても発泡断熱層はひび割れず、火炎がガラスの反対側に貫通して延焼することを防ぐことができる。
【0118】
以下、実施例及び比較例により本開示の効果を説明する。特に明記しない限り、けい酸ナトリウムのSiO2/Na2Oのモル比はJIS K 1408:1966に規定されるSiO2/Na2Oのモル比である。
【0119】
塗料組成物の実験として、表1における「塗料組成物の組成」の行に記載された成分と、水とを混合することで実施例1~8及び比較例1~2の塗料組成物を製造した。「塗料組成物の組成」の行に記載された成分の配合量の単位は質量部であり、「塗料組成物の組成」の行に記載された成分は不揮発分である。各実施例及び各比較例において、塗料組成物の全質量に対し、不揮発分全体の質量比は60質量%であり、水の質量比は40質量%であった。
【0120】
また、表1における「意匠性塗料の組成」に記載された成分と、水とを混合することで実施例1~8及び比較例1~2の意匠性塗料を製造した。「意匠性塗料の組成」の行に記載された成分の配合量の単位は質量部である。「意匠性塗料の組成」の行に記載された成分は不揮発分である。各実施例及び各比較例において、意匠性塗料の全質量に対し、不揮発分全体の質量比は35質量%であり、水の質量比は65質量%であり、意匠性塗料の塗付量(不揮発分)は30g/m2であった。
【0121】
表1における変性シリコーン樹脂は分岐状シリコーン樹脂(カネカ社製、製品名SAT400、粘度24Pa・s)とした。
【0122】
表1における硬化触媒はジルコニウムテトラアセチルアセトナートを用いた。
【0123】
シート状成形物の実験として、表2における「シート状成形物の組成」の行に記載された成分を混練してナイフコータにより合成樹脂フィルム上に塗工し、乾燥することで実施例9~15及び比較例3~4のシート状成形物を製造した。「シート状成形物の組成」の行に記載された成分の配合量の単位は質量部であり、「シート状成形物の組成」の行に記載された成分は不揮発分である。各実施例及び各比較例において、シート状成形物の含水率は5質量%であった。
【0124】
表2における変性シリコーン樹脂は分岐状シリコーン樹脂(カネカ社製、製品名:EST280、粘度7Pa・s)と直鎖状シリコーン樹脂(カネカ社製、製品名:SAT350、粘度6Pa・s)との1:1混合物(質量比)とした。
【0125】
表2における硬化触媒はトリエタノールアミンチタネートを用いた。
【0126】
また、表2及び表3おける「合成樹脂フィルムの組成」の行に記載された成分を混練して厚さ38μmに成形することで実施例9~22及び比較例3~6のセパレータを製造した。「合成樹脂フィルムの組成」の行に記載された成分の配合量の単位は質量部である。これらの合成樹脂フィルムはいずれも透明である。
【0127】
表2における合成樹脂フィルムの位置は火災時の加熱を受ける側に設置した場合を「最表面」、木材と接する面に設けた場合を「木材面」、いずれにも設けた場合を「両面」とした。
【0128】
表3における合成樹脂フィルムの位置は火災時の加熱を受ける側に設置した場合を「最表面」、ガラス板と接する面に設けた場合を「ガラス面」、いずれにも設けた場合を「両面」とした。
【0129】
各実施例及び各比較例について以下のようにして評価を行った。
【0130】
塗料組成物の安定性試験として、得られた塗料組成物を100mlのポリ容器に密閉して収容し、50℃の恒温槽中で3日間、7日間及び28日間放置して、塗料組成物が固化していないかどうかを確認した。試験結果を表1における「塗料組成物の安定性」の行に示す。「◎」はいずれの放置日数においても固化していないもの、「〇」は3日間及び7日間経過後は固化していなかったものの28日間経過後は固化していたもの、「△」は3日間経過後は固化していなかったものの7日間経過後は固化していたもの、「×」は3日間経過後に固化したもの、を意味する。
【0131】
試験体の基材のサイズは、いずれも縦99mm、横99mm、厚さ30mmであった。塗料組成物の評価にあっては基材の表面に塗料組成物を塗付し23℃50RH%で14日間静置して試験体とした。シート状成形物の評価にあっては、基材が木材である場合、合成樹脂フィルムがない場合及び最表面にある場合には、シート成形物をそのまま木材に貼り付けた。合成樹脂フィルムの位置が両面である場合には木材側の合成樹脂フィルムにエポキシ接着剤を塗付して貼り付けた。基材がガラス板である場合には、シートをそのままガラス板に貼り付けた。
【0132】
塗膜の柔軟性試験としては、塗料組成物を塗付した試験体を23℃50RH%の恒温槽内に16時間静置した後、-20℃(湿度制御なし)の恒温槽内に4時間静置、さらに50℃(湿度制御なし)の恒温槽内に4時間静置するサイクルを1サイクルとして、10サイクル行い、塗膜の外観にひび割れ等の不具合が生じているかどうかを目視により確認した。試験結果を表1における「塗膜の柔軟性」の行に示す。「◎」は異常なし、「〇」は試験体表面から10cm以上離れて観察した場合に目視できる程度のひび割れがなかったもの、「△」は試験体表面から30cm離れて観察した場合に目視できる程度のひび割れがなかったもの、「×」は試験体表面から1m離れて観察した場合に目視できる程度のひび割れがあったことを意味する。
【0133】
木目の視認性試験としては、試験体を目視して確認した。試験結果を表2及び表3の「木目の視認性」の行に示す。「◎」は木目をはっきりと視認することができた、「〇」は木目を視認することができるが塗膜がやや不透明であった、「△」は木目を視認することができたがぼやけていた、「×」は木目を視認することができなかったことを意味する。
【0134】
塗膜の耐湿性試験は、試験体の塗膜面を垂直にして30℃90RH%の恒温槽内に24時間放置し、塗膜の変形状態を確認することにより行った。試験結果を表1における「塗膜の耐湿性」の行に示す。「◎」は異常なし、「〇」はやや変形しているものの試験体表面にとどまっていた、「△」は変形しているが試験体表面から数mmはみ出す程度であった、「×」は変形して試験体表面からずり落ちてしまったことを意味する。
【0135】
シートの成形性試験としては、シート中間体100gを直径100mmの円状のPETフィルムの中心に落とした際の広がり具合を目視観察することにより行った。試験結果を表2における「シートの成形性」の行に示す。「〇」はほとんど広がらない、「△」は広がりはあるがPETフィルムからはみ出ない、「×」はPETフィルムからはみ出てしまったことを意味する。
【0136】
シートの柔軟性試験としては、建築用ステープルで基材にシート状成形物(及び透明樹脂層)を留めた際に、シート状成形物にひび割れが生じるかどうかによって評価した。試験結果を表2における「シートの柔軟性」の行に示す。「◎」は異常なし、「〇」は試験体表面から30cm離れて観察してひび割れを目視できない、「△」は試験体表面から30cm離れて観察してひび割れが目視できた、「×」は試験体表面から2m離れて観察しても目視できる程度のひび割れがあったことを意味する。
【0137】
シートの耐湿性試験としては、基材が木材である場合もガラス板である場合も同じで、試験体のシート貼付面を垂直にして30℃90RH%の恒温槽内に24時間放置し、シートの変形状態を確認することにより行った。試験結果を表2及び表3における「シートの耐湿性」の行に示す。「◎」は異常なし、「〇」はやや変形しているものの試験体表面にとどまっていた、「△」は変形しているが試験体表面から数mmはみ出す程度であった、「×」は変形して試験体表面からずり落ちてしまったことを意味する。
【0138】
ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により、試験体に対して50kW/m2の輻射強度で10分間加熱した場合の総発熱量及び最大発熱速度の測定を行った。総発熱量の測定結果を表1及び表2における「総発熱量」の行に示す。「◎」は総発熱量が2MJ/m2未満であったことを意味する。「〇」は総発熱量が5MJ/m2未満であったことを意味する。「△」は総発熱量が5MJ/m2以上8MJ/m2以下であったことを意味する。「×」は総発熱量が8MJ/m2を超えたことを意味する。
【0139】
最大発熱速度の測定結果を表1及び表2における「最大発熱速度」の行に示す。「〇」は200kW/m2を超える時間が8秒未満であったことを意味する。「△」は200kW/m2を超える時間が8秒以上10秒以下であったことを意味する。「×」は200kW/m2を超える時間が10秒を超えたことを意味する。
【0140】
シートの火炎貫通の試験としては、ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により、試験体に対して50kW/m2の輻射強度で20分間加熱した場合に、試験体に生じたひび割れが試験体裏面(非加熱面)まで達しているかどうかによって評価した。試験結果を表3における「火炎貫通」の行に示す。「〇」は試験体裏面まで達していなかった、「△」は試験体裏面にわずかにひび割れが見られた、「×」は試験体裏面にひび割れが達していたことを意味する。
【0141】
ガラス基板にシート成形物を設置した場合の透明性の試験としては、試験体を新聞紙の上に置いた場合の文字の判読性を確認することにより行った。試験結果を表3の「透明性」の行に示す。「◎」はガラス板を通して文字をはっきりと視認することができた、「〇」は文字を視認することができたがぼやけていた、「△」は文字が書かれていることは分かるが読むことが難しかった、「×」は文字を視認することができなかったことを意味する。
【0142】
各実施例では、耐湿性が良好だった。比較例1~6では、耐湿性が劣った。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
なお、本明細書で参照しているJIS K 1408:1966は本出願の時点で廃止されているが(廃止年月日:2022年1月20日)、その内容は日本産業標準調査会のホームページで閲覧可能である(廃止規格検索)。
【0147】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0148】
1…木材、2…塗膜またはシート状成形物、3…透明樹脂層、4…板ガラス、5…接着剤