(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104317
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】シートラバー
(51)【国際特許分類】
B60G 11/16 20060101AFI20240729BHJP
F16F 1/12 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B60G11/16
F16F1/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008450
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】今枝 健一郎
【テーマコード(参考)】
3D301
3J059
【Fターム(参考)】
3D301AA76
3D301AA89
3D301DA08
3D301DB02
3J059AB11
3J059AE10
3J059CB02
3J059CC03
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】コイルスプリングの支持機能を損なうことなく、異音発生をより高度に抑えることのできる、新規な構造のシートラバーを提供する。
【解決手段】シートラバー10において、中央部分にはコイルスプリング12の内側に向けて突出する中央突部24が設けられており、中央突部24の基端側の外周側に広がってコイルスプリング12の下端14が重ね合わされる受座部26が周方向へ連続的に延びて設けられており、受座部26の上面36には、コイルスプリング12の巻線端32に対応する周方向位置に段差状部34が設けられており、受座部26の上面36は、段差状部34の上側から段差状部34と反対の周方向で段差状部34の下側に向かって次第に下方へ傾斜する傾斜面とされており、受座部26の上面36には、段差状部34の下側において受座部26の径方向に延びて外周端に開放された径方向溝54が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルスプリングの下端とサスペンション部材のコイル受部との間に装着されるシートラバーにおいて、
中央部分には前記コイルスプリングの内側に向けて突出する中央突部が設けられており、
該中央突部の基端側の外周側に広がって前記コイルスプリングの下端が重ね合わされる受座部が周方向へ連続的に延びて設けられており、
該受座部の上面には、前記コイルスプリングの巻線端に対応する周方向位置に段差状部が設けられており、
該受座部の上面は、該段差状部の上側から該段差状部と反対の周方向で該段差状部の下側に向かって次第に下方へ傾斜する傾斜面とされており、
該受座部の上面には、前記段差状部の下側において該受座部の径方向に延びて外周端に開放された径方向溝が形成されているシートラバー。
【請求項2】
前記受座部の上面には、該受座部の内周部分を前記段差状部の上側から該段差状部と反対の周方向で該段差状部の下側に向かって傾斜して延びる周方向溝が形成されており、
前記径方向溝が該周方向溝に繋がっている請求項1に記載のシートラバー。
【請求項3】
前記周方向溝が、周方向の全周にわたって連続して環状に形成されている請求項2に記載のシートラバー。
【請求項4】
前記中央突部の外周面には、突出方向に延びる縦リブが、周方向の複数箇所に設けられている請求項1~3の何れか一項に記載のシートラバー。
【請求項5】
前記受座部の下面には、周方向で相互に離れて複数の弾性突部が設けられている請求項1~3の何れか一項に記載のシートラバー。
【請求項6】
前記受座部の下面に重ね合わされる別体の樹脂シートが組み合わされており、該樹脂シートを介して、該受座部が前記サスペンション部材の前記コイル受部へ重ね合わせ状態で装着されるようになっている請求項1~3の何れか一項に記載のシートラバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両におけるサスペンション装置を構成するコイルスプリングを支持するシートラバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルスプリングの下側の取付構造として、特開2022-117637号公報(特許文献1)に示されているようなシートラバーが採用されている。かかるシートラバーは、一般に、自動車等の車両のサスペンション装置におけるコイルスプリングの下端とサスペンションアーム等との間に介装されており、コイルスプリングの下端部がシートラバーにおける受座部上に支持されるようになっている。これにより、コイルスプリングとサスペンションアーム等との直接の接触を回避して、異音の発生を防止したり、荷重入力時における損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような従来構造のシートラバーを用いたコイルスプリングの支持構造では、車両走行時におけるサスペンション部材の作動時に未だ異音発生が問題となることがあった。
【0005】
本発明の解決課題は、コイルスプリングの支持機能を損なうことなく、異音発生をより高度に抑えることのできる、新規な構造のシートラバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者が前述の如き従来構造のシートラバーを用いたコイルスプリングの支持構造における異音について検討したところ、走行時に撥ね上げられる水がシートラバー上に溜まった状態で、荷重の入力によってコイルスプリングやシートラバーが変形することで両部材が擦れること等を原因として異音が発生するであろうとの知見を得た。本発明は、かかる新たな知見に基づいて為されたものである。
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、コイルスプリングの下端とサスペンション部材のコイル受部との間に装着されるシートラバーにおいて、中央部分には前記コイルスプリングの内側に向けて突出する中央突部が設けられており、該中央突部の基端側の外周側に広がって前記コイルスプリングの下端が重ね合わされる受座部が周方向へ連続的に延びて設けられており、該受座部の上面には、前記コイルスプリングの巻線端に対応する周方向位置に段差状部が設けられており、該受座部の上面は、該段差状部の上側から該段差状部と反対の周方向で該段差状部の下側に向かって次第に下方へ傾斜する傾斜面とされており、該受座部の上面には、前記段差状部の下側において該受座部の径方向に延びて外周端に開放された径方向溝が形成されているものである。
【0009】
本態様によれば、シートラバーにおいてコイルスプリングの下端が載置される受座部の上面を周方向の実質的に全体にわたって傾斜面としたことで、受座部の上面上に降り掛かった水が重力作用で速やかに排除され得るようにし、それに加えて、傾斜面の重力作用で集められた水が径方向溝によってシートラバーにおける受座部の上面から速やかに取り除かれるようにした。これにより、たとえ水が掛かっても受座部の上面への水の滞留が軽減乃至は防止されることとなり、水の存在に起因して発生するシートラバー上でのコイルスプリングの擦れに伴う異音の発生を効果的に抑制することができる。また、受座部の上面の略全周にわたる傾斜面の構造は、コイルスプリングの下端におけるオープンエンドの形状に対応させることが可能であり、それによって例えば無研削のコイルスプリングの下端に対して安定した支持面を与えることにもなる。
【0010】
第二の態様は、第一の態様に係るシートラバーにおいて、前記受座部の上面には、該受座部の内周部分を前記段差状部の上側から該段差状部と反対の周方向で該段差状部の下側に向かって傾斜して延びる周方向溝が形成されており、前記径方向溝が該周方向溝に繋がっているものである。
【0011】
本態様によれば、受座部の上面上の水を受座部の内周部分に設けられた周方向溝に集約させることができて、周方向溝に繋がる径方向溝から、受座部の上面上の水をより安定して排出することができる。特に、実施形態で説明するように、シートラバー上の排水という観点からするとシートラバーの外周端から直接に排水を促すことが好適なように考えられるが、本態様では、反対に、シートラバーの内周側に設けた周方向溝を用いた排水構造を採用したのであり、それによってシートラバー上の排水をより確実に且つ速やかに実現せしめ得たのである。
【0012】
第三の態様は、前記第二の態様に係るシートラバーにおいて、前記周方向溝が、周方向の全周にわたって連続して環状に形成されているものである。
【0013】
本態様によれば、周方向溝が環状に形成されていることから、受座部の上方部分において周方向溝に集約された水が、周方向溝を通じて受座部の下方部分まで誘導されて、更に受座部の下方部分に設けられた径方向溝を通じて、シートラバーの外部に排出され得る。
【0014】
第四の態様は、前記第一~第三の何れか一つの態様に係るシートラバーにおいて、前記中央突部の外周面には、突出方向に延びる縦リブが、周方向の複数箇所に設けられているものである。
【0015】
本態様によれば、各縦リブがコイルスプリングの巻線に当接することで、コイルスプリングの巻線が中央突部の外周面に対して広い接触面積で当接することを回避することができる。この結果、シートラバーにおける中央突部の耐久性の向上が図られると共に、擦れ等に起因する異音の発生を防止乃至は回避することができる。
【0016】
第五の態様は、前記第一~第四の何れか一つの態様に係るシートラバーにおいて、前記受座部の下面には、周方向で相互に離れて複数の弾性突部が設けられているものである。
【0017】
本態様によれば、コイル受部に対してシートラバーを重ね合わせた装着状態で、弾性突部をコイル受部に当接状態として弾性突部間に隙間を設定できる。これらの弾性突部はコイルスプリングからの荷重で潰れることもあるが、かかる隙間が設定されていることによりシートラバーのばね特性を柔らかく設定することができる。また、弾性突部の周方向間の隙間は径方向に延びて外周端に開口することで、シートラバーとコイル受部との重ね合わせ面に存在する空気がコイルスプリングからの荷重で瞬間的且つ強制的に押し出されることに起因する破裂音などの回避にも有効となる。
【0018】
第六の態様は、前記第一~第五の何れか一つの態様に係るシートラバーにおいて、前記受座部の下面に重ね合わされる別体の樹脂シートが組み合わされており、該樹脂シートを介して、該受座部が前記サスペンション部材の前記コイル受部へ重ね合わせ状態で装着されるようになっているものである。
【0019】
本態様によれば、例えばコイル受部においてシートラバーが重ね合わされる平坦な領域を樹脂シートによって容易に確保することもできる。また、樹脂シートを設けることでコイルスプリングの支持特性の調節自由度の向上を図ることも可能になる。或いは、樹脂シートによって大荷重入力時のシートラバーの撓み量(変位量)を抑制して、耐久性の向上等を図ることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るシートラバーによれば、コイルスプリングの支持機能を損なうことなく、コイルスプリングとの間の異音の発生をより高度に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態としてのシートラバーを平面側から示す斜視図
【
図2】
図1に示されたシートラバーを底面側から示す斜視図
【
図6】
図1に示されたシートラバーに組み合わされる樹脂シートの具体的な一例を示す斜視図
【
図7】
図1に示されたシートラバーと
図6に示された樹脂シートとを組み合わせた状態を示す斜視図
【
図8】
図7に示されたシートラバーと樹脂シートの組み合わせ状態における底面図
【
図9】
図7に示されたシートラバーと樹脂シートとの組み合わせ状態における縦断面図であって、
図5に対応する図
【
図10】
図7に示されたシートラバーと樹脂シートとの組み合わせ状態における縦断面図であって、
図3におけるX-X断面に相当する図
【
図11】
図1に示されたシートラバーを
図6に示された樹脂シートと共に車両に装着した状態を示す縦断面図であって、
図5に対応する図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0023】
先ず、
図1~5には、本発明の第1実施形態としてのシートラバー10が示されている。このシートラバー10は、後述する
図11において自動車等の車両への装着状態が示されているように、コイルスプリング12の下端14とサスペンション部材16のコイル受部18との間に装着されるものであり、コイルスプリング12とコイル受部18との直接的な接触を防止するものである。本実施形態では、シートラバー10が後述する別体の樹脂シート20と組み合わされて、コイルスプリング12の下端14とコイル受部18との間に装着されている。なお、シートラバー10の配置される向きが限定されるものではないが、以下の説明では、原則として、上下方向及び軸方向とは、シートラバー10の中心軸方向となる
図5中の上下方向をいう。
【0024】
より詳細には、シートラバー10は全体として略円板形状であり、例えばゴムやエラストマー等の弾性体から構成されている。本実施形態では、シートラバー10の中央において、上下方向に貫通する中央貫通孔22が形成されており、シートラバー10が全体として略円環板形状又は略円筒形状とされている。
【0025】
中央貫通孔22の周縁部において、即ちシートラバー10の中央部分には、シートラバー10の上方に配置されるコイルスプリング12の内側に向かって上方に突出する中央突部24が設けられている。また、中央突部24の基端側(下端側)には、外周側に広がってコイルスプリング12の下端14が重ね合わされる略環状の受座部26が設けられている。即ち、中央突部24を構成する周壁28の内周側において上下方向に貫通する中央貫通孔22が形成されていると共に、周壁28の下方部分において、外周側に突出する受座部26が周方向へ連続的に延びて設けられている。
【0026】
本実施形態では、周壁28の内周面を構成する中央貫通孔22が、下方から上方に向かって次第に内径寸法が小さくなるテーパ形状とされている。それ故、周壁28は、円環形状とされた上端面においてある程度の径方向幅寸法を有しているが、下方になるにつれて径方向幅寸法が次第に小さくされている。なお、中央突部24(周壁28)の外径寸法は上下方向で略一定とされて円筒形状の外周面とされており、かかる中央突部24の外径寸法は、自然状態におけるコイルスプリング12の内径寸法と等しいか、僅かに大きくされている。これにより、コイルスプリング12の下端14に対して中央突部24が略圧入されるように、シートラバー10に対してコイルスプリング12が組み付けられるようになっている。
【0027】
また、本実施形態では、中央突部24(周壁28)の外周面には、中央突部24の突出方向(上下方向)に延びる縦リブ30が、周方向の複数箇所において周方向で相互に離隔して設けられている。特に、本実施形態では、複数(6つ)の縦リブ30が、周方向で略等間隔(略60°毎)に設けられている。これにより、コイルスプリング12の下端14に対して中央突部24が挿入された際には、コイルスプリング12の内周面に対して各縦リブ30の外周面が当接するようになっている。
【0028】
一方、受座部26は略円環形状とされており、ある程度の径方向幅寸法を有していると共に、周方向の全周にわたって略一定の厚さ寸法(上下方向寸法)を有している。さらに、略円環形状の受座部26において、コイルスプリング12の下端14における巻線端32と対応する周方向位置には、段差状部34が設けられている。即ち、受座部26の上面36において段差状部34を挟んだ周方向両側は上下方向で相互に離隔しており、受座部26において段差状部34を挟んだ周方向一端部38が周方向他端部40に対して上方に位置している。また、受座部26における周方向一端部38には、周方向他端部40に向かって下方に広がる鉛直面が形成されており、かかる鉛直面を含んで段差状部34が構成されている。
図3において二点鎖線で示されるように受座部26の上面36上にコイルスプリング12の下端14が重ね合わされる際には、上記鉛直面に対してコイルスプリング12の巻線端32が突き当てられるようになっており、当該鉛直面により巻線端32が突き当てられる突当面42が構成されている。
【0029】
そして、受座部26の上面36は、上側に位置する周方向一端部38から、段差状部34と反対の周方向(
図3における平面視において時計回りの方向)で段差状部34の下側、即ち周方向他端部40に向かって次第に下方に傾斜する傾斜面とされている。なお、シートラバー10により支持されるコイルスプリング12の端部構造は限定されるものではないが、本実施形態のコイルスプリング12はオープンエンド形状とされており、コイルスプリング12の巻線が端部まで略一定の傾斜角度をもって延びている。上記受座部26の上面36における下方への傾斜角度は、コイルスプリング12における巻線の傾斜角度と略等しくされており、巻線端32が受座部26における突当面42に突き当てられたコイルスプリング12は、後述する
図11にも示されるように、コイルスプリング12の下端14の巻線が受座部26の上面36における周方向の略全長にわたって支持されるようになっている。
【0030】
また、受座部26の下面44には、周方向で相互に離れて複数の弾性突部46が設けられている。各弾性突部46は、受座部26の下面44から下方に突出していると共に、下面44における径方向幅寸法の略全長にわたって設けられている。本実施形態では、各弾性突部46の下面における外周部分において、略凹凸のない平坦面48が設けられており、後述するシートラバー10と樹脂シート20との組み合わせ時において、樹脂シート20上に各弾性突部46の平坦面48が重ね合わされることで、シートラバー10が樹脂シート20に対してがたつくことなく組み付けられるようになっている。
【0031】
なお、受座部26は、周方向の全周にわたって略一定の厚さ寸法を有していることから、受座部26の下面44は上面36と同様の形状を有しており、周方向一端部38から周方向他端部40に向かって周方向で次第に下方に傾斜する形状とされている。本実施形態では、受座部26の下面44において周方向で段差状部34と対応する位置において下段差状部50が設けられており、下段差状部50の下面が、受座部26の下面44において上下方向で最も下方に位置するようになっている。
【0032】
特に、本実施形態では、各弾性突部46において受座部26の下面44からの下方への突出寸法が略等しくされている。これにより、各弾性突部46の平坦面48は、周方向一端部38から周方向他端部40へ向かって周方向で段階的に下方に位置するように設けられている。この結果、受座部26の下面44において、後述するように樹脂シート20に重ね合わされる下傾斜面52が、各弾性突部46の平坦面48を含んで構成されている。
【0033】
ここで、受座部26の上面36には、段差状部34の下側(周方向他端部40)において受座部26の径方向(
図3中の上下方向)に延びて外周端に開放された径方向溝54が形成されている。本実施形態では、径方向溝54が、受座部26における径方向の全長にわたって設けられている。
【0034】
特に、本実施形態では、受座部26の上面36における内周部分(即ち、受座部26と中央突部24との接続部分)において、上方に開口して周方向に延びる周方向溝56が形成されている。周方向溝56は、受座部26の上面36において中央突部24の周囲を、周方向の全周にわたって連続して略環状に形成されている。これにより、周方向溝56は、段差状部34の上側(周方向一端部38)から段差状部34と反対の周方向(
図3における平面視において時計回りの方向)で段差状部34の下側(周方向他端部40)に向かって傾斜して延びている。そして、かかる周方向溝56が、段差状部34の下側(周方向他端部40)において、径方向溝54と繋がっている。特に、本実施形態では、上下方向に広がる突当面42の内周部分にも周方向溝56が設けられており、周方向溝56の上端部分と下端部分が上下方向に延びる部分で連続して、周方向溝56が周方向の全周にわたって連続して環状に形成されている。
【0035】
かかるシートラバー10は、例えば別体の樹脂シート20と組み合わされて、樹脂シート20を介して、受座部26がサスペンション部材16のコイル受部18へ重ね合わせ状態で装着されるようになっている。樹脂シート20の形状は限定されるものではないが、シートラバー10に対して組み合わせられる樹脂シート20の具体的な一例を、
図6に示す。
【0036】
樹脂シート20は、サスペンション部材16のコイル受部18に載置されると共に、下方からシートラバー10における受座部26を支持することで、コイル受部18と受座部26との重ね合わせ面間に配される環状の支持部58を有している。また、樹脂シート20は、支持部58の内周側から上方に突出して周方向に延びる内周壁部60と、支持部58の外周側から上方に突出して周方向に延びる外周壁部62とを備えている。本実施形態では、これら内周壁部60及び外周壁部62が、それぞれ周方向の全周にわたって延びる円筒形状とされている。特に、内周壁部60は、シートラバー10における中央貫通孔22(周壁28の内周面)の形状と対応する形状とされており、上方に向かって外径寸法及び内径寸法が次第に小さくなるテーパ筒形状とされている。一方、外周壁部62は、上方に真っ直ぐ突出する略ストレートな円筒形状とされている。
【0037】
また、シートラバー10における受座部26が重ね合わされる支持部58の上面は、受座部26における下面44と対応する形状とされている。即ち、支持部58の上面には、受座部26の下面44における下段差状部50と対応する段差状部64が形成されていると共に、支持部58の上面は、段差状部64の上側から段差状部64の下側に向かって、段差状部64と反対の周方向で次第に下方へと傾斜する傾斜面66とされている。要するに、受座部26の下面44は、受座部26の上面36と対応する形状であることから、支持部58の上面も受座部26の上面36と対応する形状とされており、段差状部64が上下方向に広がる鉛直面67を含んで構成されている。特に、支持部58の上面における傾斜面66は、シートラバー10における各弾性突部46の平坦面48から構成される下傾斜面52と対応する形状とされている。同様に、支持部58の下面も、支持部58の上面(傾斜面66)と対応する傾斜面68(
図9等参照)とされている。
【0038】
ここで、支持部58において、段差状部64を周方向で外れた位置には、厚さ方向(上下方向)に貫通する水抜孔70が形成されている。具体的には、後述する
図7~10にも示されるように、支持部58の下面(傾斜面68)において、内周部分及び外周部分をそれぞれ周方向に略環状に延びる各突条72a,72bからなる脚部74が設けられていると共に、これら各突条72a,72bが周方向の複数箇所において径方向に延びる仕切壁部76により接続されている。これにより、脚部74は、
図8に示されるように、底面視(軸方向の投影)において各突条72a,72b及び仕切壁部76によって囲まれた領域78が周方向で複数設けられた形状とされており、支持部58において領域78の上側の壁部を構成する部分に水抜孔70が形成されている。
【0039】
上記仕切壁部76は、シートラバー10と樹脂シート20とが組み合わせられた状態において、シートラバー10における各弾性突部46と周方向で対応する位置に形成されており、換言すれば、各水抜孔70は、シートラバー10における各弾性突部46の周方向間に対応する位置に開口して設けられている。特に、本実施形態では、支持部58において下側となる領域(支持部58において内周壁部60を挟んで段差状部64と径方向で反対側の領域から段差状部64の下側にかけての周方向に延びる領域)に、複数の水抜孔70が形成されている。即ち、後述するように、例えばシートラバー10の径方向溝54を通じて排出された水は、樹脂シート20における支持部58上を流動することになるが、当該支持部58において下側となる領域のみに各水抜孔70を設けることで、不必要な水抜孔が形成されることがないようにされている。
【0040】
かかる脚部74を構成する各突条72a,72b及び仕切壁部76は、支持部58の下面(傾斜面68)に対応して周方向で上下方向寸法が異ならされており、脚部74の下端が水平方向に広がる同一平面上に位置するようになっている。樹脂シート20において、このような脚部74が設けられることにより、支持部58の下面が傾斜面68とされている場合にも、コイル受部18上において樹脂シート20が傾くことなく配置されると共に、各水抜孔70の開口部がコイル受部18により閉塞されることなく、各水抜孔70を通じた水の排水がより確実に達成され得る。
【0041】
上記のような形状とされたシートラバー10と樹脂シート20とが組み合わされることで、
図7~10に示されるようなスプリングシート80が構成されるようになっている。即ち、樹脂シート20に対して上方からシートラバー10が重ね合わされており、樹脂シート20における内周壁部60と外周壁部62との径方向間にシートラバー10における受座部26が差し入れられて、支持部58上に配置されている。これにより、中央貫通孔22に内周壁部60が挿入されると共に、受座部26の外周側が外周壁部62により覆われて、シートラバー10が樹脂シート20に対して径方向で位置決めされるようになっている。なお、外周壁部62における内径寸法は、受座部26の外径寸法より大きくされており、シートラバー10と樹脂シート20とが組み付けられた状態において、受座部26と外周壁部62との径方向間には隙間が形成されるようになっている。これにより、シートラバー10において外周端に開放された径方向溝54が、樹脂シート20に組み付けられた際に外周壁部62により閉塞されないようになっている。
【0042】
また、支持部58の上面(傾斜面66)は、受座部26における上面36及び下面44と対応する形状とされており、段差状部34及び下段差状部50と対応する段差状部64を有している。そして、段差状部64(特に鉛直面67)と下段差状部50とが周方向で重ね合わされて当接することにより、シートラバー10が樹脂シート20に対して周方向で位置決めされるようになっている。
【0043】
以上の如き構造とされたスプリングシート80が、
図11に示されるように、コイルスプリング12の下端14とサスペンション部材16のコイル受部18との間に装着されている。サスペンション部材16におけるコイル受部18の形状は限定されるものではないが、
図11に示される態様では、コイル受部18は水平方向に広がる環状部分により構成されており、コイル受部18の中央には上方に突出する位置決め突部82が設けられている。この位置決め突部82は、上方に向かって次第に外径寸法が小さくなるテーパ筒形状とされており、樹脂シート20における内周壁部60と略対応する形状とされている。これにより、コイル受部18に対してスプリングシート80(樹脂シート20)が載置された際に、位置決め突部82が内周壁部60に挿入されて、スプリングシート80(樹脂シート20)がコイル受部18に対して径方向で位置決めされるようになっている。
【0044】
なお、スプリングシート80を構成するシートラバー10と樹脂シート20とは、相互に重ね合わされた状態で、接着等により固着されてもよいし、固着されなくてもよい。上述のように、サスペンション部材16におけるコイル受部18に対してスプリングシート80が配置された状態で、シートラバー10における受座部26に対して上方からコイルスプリング12の下端14が重ね合わされることで、スプリングシート80が、コイルスプリング12の下端14とサスペンション部材16のコイル受部18との間に装着されている。
【0045】
以上の如き構造とされたシートラバー10によれば、受座部26の上面36には段差状部34が設けられており、受座部26の上面は、段差状部34の上側(周方向一端部38)から下側(周方向他端部40)に向かって周方向で次第に下方へと傾斜する傾斜面とされている。これにより、車両の走行等によって受座部26の上面36上に撥ね上げられた水が、受座部26上を傾斜面(上面36)に従って下方へと流動する。そして、段差状部34の下側(周方向他端部40)には、受座部26の径方向に延びて外周端に開放された径方向溝54が形成されていることから、受座部26の上面36上を下方へと流れた水が径方向溝54を通じてシートラバー10の外部へと排出されるようになっている。この結果、シートラバー10とコイルスプリング12との間の異音(スティックスリップ異音)を、受座部26の上面36上の水を排出することによって、その発生を抑制又は防止することができる。
【0046】
特に、受座部26の上面36が傾斜面とされると共に、段差状部34が鉛直方向に広がる突当面42を有することで、オープンエンド形状のコイルスプリング12の下端14を、特別な加工を行うことなく、上面36上に載置して、且つ巻線端32を突当面42に周方向で突き当てることができる。これにより、シートラバー10において、コイルスプリング12の下端14を安定して支持することができる。
【0047】
なお、本発明においては限定されるものではないが、本実施形態のシートラバー10は樹脂シート20と組み合わされた状態でコイルスプリング12の下端14とサスペンション部材16におけるコイル受部18との間に装着される。ここで、シートラバー10に設けられる径方向溝54の外周端は、シートラバー10と樹脂シート20とが組み合わされた状態でも外周壁部62により閉塞されることがなく、受座部26と外周壁部62との径方向間には隙間が設けられている。これにより、径方向溝54を通じて外周側へ排出された水は、樹脂シート20における支持部58の上面(傾斜面66)上を下方へと流動して、各水抜孔70から下方へと排出される。尤も、受座部26と外周壁部62との径方向間には隙間が設けられていることから、受座部26から外周側に流動した水が、受座部26と外周壁部62との隙間を通じて樹脂シート20の支持部58上に流れ落ちて、各水抜孔70から排出される場合もあり、必ずしも径方向溝54を通じて排出される必要はない。
【0048】
ここで、本実施形態では、受座部26の外周側は縦壁等のない比較的薄肉の自由端構造であることから、コイルスプリング12からの受け荷重が大きくなると変形量が大きくなって、例えば外周側が持ち上がり排水不良になる不具合も懸念される。加えて、コイルスプリング12の下端14は略一周近くにわたってシートラバー10における受座部26に支持されて押し付けられていることから、コイルスプリング12の内周側に入ってしまった水は、コイルスプリング12が邪魔になって外周側へ排水され難い。このような理由から、シートラバー10の外周側への排水を前提として検討しても有効な排水機構の実現が難しくなる場合があった。
【0049】
そこで、本発明者は発想を転換して、受座部26上の水を内周側に流すことを考えた。すなわち、受座部26の内周側には中央突部24が設けられており変形剛性が高くされていると共に、コイルスプリング12が中央突部24の外周面へ接触したり近接したりすることによる表面張力も利用することで、コイルスプリング12の内周側に水を導き易くする効果が期待される。
【0050】
さらに、本発明者は、受座部26上に載置されたコイルスプリング12の下端14と中央突部24の外周面との間には、受座部26の内周部分において隙間が存在しやすいことに着眼した。そして、受座部26の内周部分を利用して周方向溝56を設けることで、上述のように、内周側に集めた水を、段差状部34の上側から下側に向かって傾斜する傾斜面(上面36)によって段差状部34の下側に集め、かかる水を径方向溝54を通じて排出することで、排水効率の更なる向上を図り得たのである。
【0051】
したがって、本実施形態では、受座部26の上面36における内周部分において、段差状部34の上側から下側に向かって周方向で次第に下方へと傾斜する周方向溝56を設けていると共に、当該周方向溝56は、段差状部34の下側において径方向溝54へ繋がっている。これにより、周方向溝56内へ流動した受座部26の上面36上の水が、周方向溝56及び径方向溝54を通じて外部へと排出されるようになっている。特に、本実施形態では、かかる周方向溝56が周方向の全周にわたって形成されていることから、受座部26の上面36上の水が効率良く集約されて径方向溝54から排出され得る。
【0052】
さらに、シートラバー10における中央突部24の外周面には、突出方向である上下方向に延びる縦リブ30が、周方向の複数箇所に設けられている。これにより、中央突部24の外周側に配されるコイルスプリング12の下端14に対して、中央突部24を各縦リブ30において当接させることができて、シートラバー10とコイルスプリング12との接触面積が大きくなることが回避される。この結果、シートラバー10とコイルスプリング12との間での異音の発生が、より効果的に抑制され得る。また、中央突部24の外周面に各縦リブ30を設けることで、コイルスプリング12と中央突部24の外周面との間に周方向の広い領域で隙間ができて、コイルスプリング12と中央突部24との近接部分における水も速やかに下方へ排水され得る。
【0053】
更にまた、受座部26の下面44には、周方向で相互に離れて複数の弾性突部46が設けられている。これにより、シートラバー10の上方から、コイルスプリング12を通じて外力が及ぼされる際にも、弾性突部46が変形することで振動が吸収され得る。特に、シートラバー10がサスペンション部材16におけるコイル受部18とコイルスプリング12との間で圧縮されて各弾性突部46が弾性変形した際にも、各弾性突部46の周方向間の隙間がなくならず存在することで、シートラバー10の下方に存在する水や空気を各弾性突部46の周方向間の隙間を通じて排出することができる。
【0054】
上述のように、本実施形態のシートラバー10は、樹脂シート20と組み合わされてコイル受部18に装着されている。これにより、本実施形態のようにシートラバー10における受座部26が傾斜して設けられる場合にも、樹脂シート20に脚部74を設けることで、コイル受部18に対してシートラバー10が傾くことなく配設され得る。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0056】
例えば、前記実施形態では、受座部26の内周部分において段差状部34の上側から下側に向かって傾斜して延びる周方向溝56が周方向の略全周にわたって設けられていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、周方向溝は受座部の径方向中間部分に設けられてもよいし、受座部において中央突部を挟んで段差状部と径方向で反対側の領域から段差状部の下側まで略1/2周の周方向長さをもって、要するに受座部において水が滞留しやすい下方部分のみに形成されてもよい。尤も、本発明に係るシートラバーにおいて周方向溝は必須なものではない。
【0057】
また、前記実施形態では、中央突部24の外周面において複数の縦リブ30が設けられていたが、本発明に係るシートラバーにおいて縦リブは必須なものではない。
【0058】
さらに、前記実施形態では、中央突部24において上下方向に貫通する中央貫通孔22が形成されていたが、中央貫通孔は設けられなくてもよく、中央突部は下方から樹脂シートの内周突部が挿入される有底筒形状とされてもよい。
【0059】
前記実施形態においてシートラバー10と組み合わされた樹脂シート20の記載は単なる例示であり、樹脂シートの形状は限定されるものではない。なお、本発明に係るシートラバーにおいて樹脂シートは必須なものではない。
【0060】
前記実施形態においてシートラバー10により支持されたコイルスプリング12の端部形状における記載は単なる例示であり、無研削のオープンエンド形状に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
10 シートラバー
12 コイルスプリング
14 下端
16 サスペンション部材
18 コイル受部
20 樹脂シート
22 中央貫通孔
24 中央突部
26 受座部
28 周壁
30 縦リブ
32 巻線端
34 段差状部
36 上面(傾斜面)
38 周方向一端部
40 周方向他端部
42 突当面
44 下面
46 弾性突部
48 平坦面
50 下段差状部
52 下傾斜面
54 径方向溝
56 周方向溝
58 支持部
60 内周壁部
62 外周壁部
64 段差状部
66 傾斜面
67 鉛直面
68 傾斜面
70 水抜孔
72a,72b 突条
74 脚部
76 仕切壁部
78 領域
80 スプリングシート
82 位置決め突部