(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104318
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】スプリングシート
(51)【国際特許分類】
F16F 1/12 20060101AFI20240729BHJP
B60G 11/16 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F16F1/12 N
B60G11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008451
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】今枝 健一郎
【テーマコード(参考)】
3D301
3J059
【Fターム(参考)】
3D301AA76
3D301AA89
3D301DA08
3D301DB02
3J059AB20
3J059BA02
3J059BB01
3J059BD01
3J059CA01
3J059CB16
3J059CC03
3J059EA13
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】シートラバーと樹脂シートとの組み合わせからなる新規な構造のスプリングシートを対象とし、かかる新規な構造のスプリングシートにおいて、更に、異音発生を抑えることのできるスプリングシートを提供する。
【解決手段】コイルスプリング12の下端14とサスペンション部材16のコイル受部18との間に装着されるスプリングシート10であって、コイルスプリング12の下端14が重ね合わされる受座部20を有するシートラバー22と、サスペンション部材16のコイル受部18に載置されてシートラバー22の受座部20を支持することでコイル受部18と受座部20との重ね合わせ面間に配される環状の支持部24を有する樹脂シート26とを、備えており、樹脂シート26の支持部24には、厚さ方向に貫通する水抜孔84が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルスプリングの下端とサスペンション部材のコイル受部との間に装着されるスプリングシートであって、
前記コイルスプリングの下端が重ね合わされる受座部を有するシートラバーと、
前記サスペンション部材の前記コイル受部に載置されて該シートラバーの該受座部を支持することで該コイル受部と該受座部との重ね合わせ面間に配される環状の支持部を有する樹脂シートと
を、備えており、
該樹脂シートの該支持部には、厚さ方向に貫通する水抜孔が形成されているスプリングシート。
【請求項2】
前記樹脂シートには、前記支持部の内周側から上方に突出して周方向に延びる内周壁部と、該支持部の外周側から上方に突出して周方向に延びる外周壁部とが設けられており、
該支持部に支持された前記受座部が該樹脂シートの該内周壁部と該外周壁部との径方向間に配されている請求項1に記載のスプリングシート。
【請求項3】
前記シートラバーにおいて、前記受座部の上面には前記コイルスプリングの巻線端に対応する周方向位置に段差状部が設けられていると共に、該受座部の上面が該段差状部の上側から該段差状部と反対の周方向で該段差状部の下側に向かって次第に下方へ傾斜する傾斜面とされている一方、
前記樹脂シートにおいて、前記支持部の上面には該受座部の上面における該段差状部及び該傾斜面と対応する段差状部及び傾斜面が設定されており、
該シートラバーの該受座部の下面には、該樹脂シートの上面における該段差状部及び該傾斜面に重ね合わされる下段差状部及び下傾斜面が設定されている請求項1又は2に記載のスプリングシート。
【請求項4】
前記受座部の上面には、前記段差状部の下側において該受座部の径方向に延びて外周端に開放された径方向溝が形成されている請求項3に記載のスプリングシート。
【請求項5】
前記受座部の内周部分には、前記段差状部の上側から該段差状部と反対の周方向で該段差状部の下側に向かって傾斜して延びる周方向溝が形成されており、前記径方向溝が該周方向溝に繋がっている請求項4に記載のスプリングシート。
【請求項6】
前記シートラバーには、前記受座部の内周側から前記コイルスプリングの内側に向けて突出する中央突部が設けられており、該中央突部の外周面には、突出方向に延びる縦リブが、周方向の複数箇所に設けられている請求項1又は2に記載のスプリングシート。
【請求項7】
前記シートラバーにおける前記受座部の下面には、周方向で相互に離れて複数の弾性突部が設けられていると共に、該弾性突部の周方向間に対応する位置に開口して前記樹脂シートにおける前記水抜孔が形成されている請求項1又は2に記載のスプリングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両におけるサスペンション装置を構成するコイルスプリングを支持するスプリングシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルスプリングの下側の取付構造として、特開2022-117637号公報(特許文献1)に示されているようなシートラバーが採用されている。かかるシートラバーは、一般に、自動車等の車両のサスペンション装置におけるコイルスプリングの下端とサスペンションアーム等との間に介装されており、コイルスプリングの下端部がシートラバーにおける受座部上に支持されるようになっている。これにより、コイルスプリングとサスペンションアーム等との直接の接触を回避して、異音の発生を防止したり、荷重入力時における損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなシートラバーを用いたコイルスプリングの支持構造では、コイルスプリング下端から及ぼされる大きな荷重による耐久性を充分に確保しがたい場合があったり、コイルスプリングを支持するシートラバーのばね特性や支持安定性などについて、要求特性を満足しがたい場合があり、未だ改善の余地のあることが判った。
【0005】
かかる問題に鑑み、本発明者は、シートラバーよりも硬質の樹脂シートを採用し、かかる樹脂シートをシートラバーと車体におけるコイル受部との間に装着することで、樹脂シートによってシートラバーの支持安定性の向上を図ったり、ばね特性の調節自由度の向上を図ったりすることを検討した。
【0006】
ところが、シートラバーと車体との間に樹脂シートを重ね合わせて装着すると、走行時のコイルスプリングの伸縮作動に際して異音が問題になりやすいことが、新たに判った。
【0007】
本発明の解決課題は、シートラバーと樹脂シートとの組み合わせからなる新規な構造のスプリングシートを対象とし、かかる新規な構造のスプリングシートにおいて、更に、異音発生を抑えることのできるスプリングシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の如きコイルスプリングの支持構造における異音について検討したところ、走行時に撥ね上げられる水がシートラバー上に溜まった状態で、荷重の入力によってコイルスプリングやシートラバーが変形するとコイルスプリングとシートラバー、或いはシートラバーと樹脂シートが擦れる等して異音が発生しやすく、特に樹脂シートを採用したことによって水が一層溜まりやすく且つ排水され難いおそれがあり、それによって異音問題が一層大きくなるおそれのあることが判った。
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第一の態様は、コイルスプリングの下端とサスペンション部材のコイル受部との間に装着されるスプリングシートであって、前記コイルスプリングの下端が重ね合わされる受座部を有するシートラバーと、前記サスペンション部材の前記コイル受部に載置されて該シートラバーの該受座部を支持することで該コイル受部と該受座部との重ね合わせ面間に配される環状の支持部を有する樹脂シートとを、備えており、該樹脂シートの該支持部には、厚さ方向に貫通する水抜孔が形成されているものである。
【0011】
本態様によれば、樹脂シートの支持部において厚さ方向に貫通する水抜孔が形成されていることから、樹脂シート上の水が重力作用により水抜孔を通じて速やかに排除され得る。これにより、たとえ水が掛かっても樹脂シートへの水の滞留が軽減乃至は防止されることとなり、例えば水の存在下におけるシートラバーと樹脂シートとの擦れ等に伴う異音の発生を効果的に抑制することができる。その結果、本態様に係るスプリングシートでは、異音等の問題を伴うことなく、シートラバーによるコイルスプリングの支持安定性の向上を図ったり、シートラバーによるコイルスプリングの支持ばね特性の調節自由度の向上を図ったりすることが可能になる等といった技術的効果を享受し得ることとなる。
【0012】
第二の態様は、前記第一の態様に係るスプリングシートにおいて、前記樹脂シートには、前記支持部の内周側から上方に突出して周方向に延びる内周壁部と、該支持部の外周側から上方に突出して周方向に延びる外周壁部とが設けられており、該支持部に支持された前記受座部が該樹脂シートの該内周壁部と該外周壁部との径方向間に配されているものである。
【0013】
本態様によれば、樹脂シートにおける内周壁部と外周壁部によりシートラバーを径方向で位置決めすることができて、樹脂シートとシートラバーとの組付作業において作業効率の向上を図ることができる。また、シートラバーにおける径方向内外に内周壁部と外周壁部が位置していることから、シートラバーに対してコイルスプリングから大きな荷重が入力される場合にもシートラバーの過剰な変形を制限することができて、シートラバーにおけるばね特性を調節したり、耐久性の向上を図ることができる。
【0014】
第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るスプリングシートにおいて、前記シートラバーにおいて、前記受座部の上面には前記コイルスプリングの巻線端に対応する周方向位置に段差状部が設けられていると共に、該受座部の上面が該段差状部の上側から該段差状部と反対の周方向で該段差状部の下側に向かって次第に下方へ傾斜する傾斜面とされている一方、前記樹脂シートにおいて、前記支持部の上面には該受座部の上面における該段差状部及び該傾斜面と対応する段差状部及び傾斜面が設定されており、該シートラバーの該受座部の下面には、該樹脂シートの上面における該段差状部及び該傾斜面に重ね合わされる下段差状部及び下傾斜面が設定されているものである。
【0015】
本態様によれば、シートラバーにおいてコイルスプリングの下端が載置される受座部の上面を周方向の実質的に全体にわたって傾斜面としたことで、受座部の上面上に降り掛かった水が重力作用で速やかに排除され得るようにした。これにより、たとえ水が掛かっても受座部の上面への水の滞留が軽減乃至は防止されることとなり、水の存在に起因して発生するシートラバー上でのコイルスプリングの擦れに伴う異音の発生を効果的に抑制することができる。また、樹脂シートには、シートラバーの受座部の下面における下段差状部及び下傾斜面と対応する段差状部及び傾斜面が設定されていることから、シートラバーを樹脂シートに対して周方向で位置決めすることができる。
【0016】
特に、コイルスプリングの下端がオープンエンドとされる場合に、前記特許文献1に記載の如き従来構造のシートラバーでは、コイルスプリングに初期当たりする当接面が周方向で短くなってしまう。そのためにコイルスプリングの耐久性の確保が難しい場合があった。また、荷重入力によるコイルスプリングの圧縮変形に伴ってシートラバーへの当接領域が周方向に拡大することから、入力荷重の大きさによって当接領域が異なって、支持領域が変化することとなる。それ故、コイルスプリングにおけるシートラバーからの安定した支持状態が発揮され難く、ばね特性を安定して得ることが困難となるおそれもあった。
【0017】
かかる課題に鑑み、本発明者はシートラバーにおける受座部の上面を傾斜面として、オープンエンドのコイルスプリングの下端を広い領域で当初から略当接状態で支持せしめる構造を検討した。しかし、シートラバーにおける受座部の上面を傾斜面とするためには、車体におけるコイル受部に対してシートラバーにおける受座部の上面の高さを周方向で変化させる必要があり、例えばコイルスプリングの支持をシートラバーのみで行おうとすると、例えばシートラバーの受座部における厚さ寸法を周方向で大きく異ならせることが考えられた。その場合、シートラバーによるコイルスプリングの支持特性が周方向の位置によって異なってしまって、コイルスプリングを充分に安定して支持することが難しかったり、コイルスプリングの下端に対するばね特性を全周にわたって発揮することが難しい場合があった。
【0018】
ここにおいて、本発明では、スプリングシートとしてシートラバーと樹脂シートを組み合わせた構成を採用し、特に本態様において樹脂シートにおける支持部の上面を傾斜面とすることで、シートラバーの受座部における厚さ寸法を周方向で大きく異ならせることなく、受座部の上面の高さを周方向で変化させることをなし得た。これにより、シートラバーに対してコイルスプリングからの荷重が入力される際にも、過度に歪な変形や局所的に過大となる変形が抑えられて、シートラバーの形状ひいてはコイルスプリング下端の支持状態の安定化が図られる。また、シートラバーの耐久性の向上も図られ得る。
【0019】
第四の態様は、前記第三の態様に係るスプリングシートにおいて、前記受座部の上面には、前記段差状部の下側において該受座部の径方向に延びて外周端に開放された径方向溝が形成されているものである。
【0020】
本態様によれば、シートラバーにおける傾斜面に従って上側から下側に流動した水を、径方向溝によって、シートラバーにおける受座部の上面から外周側へ速やかに取り除くことができる。
【0021】
第五の態様は、前記第四の態様に係るスプリングシートにおいて、前記受座部の内周部分には、前記段差状部の上側から該段差状部と反対の周方向で該段差状部の下側に向かって傾斜して延びる周方向溝が形成されており、前記径方向溝が該周方向溝に繋がっているものである。
【0022】
本態様によれば、シートラバーにおける受座部の内周部分に周方向溝を設けることで、受座部の上面上の水を周方向溝に集約させることができて、周方向溝に繋がる径方向溝から、受座部の上面上の水をより安定して排出することができる。特に、実施形態で説明するように、シートラバー上の排水という観点からするとシートラバーの外周端から直接に排水を促すことが好適なように考えられるが、本態様では、反対に、シートラバーの内周側に設けた周方向溝を用いた排水構造を採用したのであり、それによってシートラバー上の排水をより確実に且つ速やかに実現せしめ得たのである。
【0023】
第六の態様は、前記第一~第五の何れか一つの態様に係るスプリングシートにおいて、前記シートラバーには、前記受座部の内周側から前記コイルスプリングの内側に向けて突出する中央突部が設けられており、該中央突部の外周面には、突出方向に延びる縦リブが、周方向の複数箇所に設けられているものである。
【0024】
本態様によれば、各縦リブがコイルスプリングの巻線に当接することで、コイルスプリングの巻線が中央突部の外周面に対して広い接触面積で当接することを回避することができる。この結果、シートラバーにおける中央突部の耐久性の向上が図られると共に、擦れ等に起因する異音の発生を防止乃至は回避することができる。
【0025】
第七の態様は、前記第一~第六の何れか一つの態様に係るスプリングシートにおいて、前記シートラバーにおける前記受座部の下面には、周方向で相互に離れて複数の弾性突部が設けられていると共に、該弾性突部の周方向間に対応する位置に開口して前記樹脂シートにおける前記水抜孔が形成されているものである。
【0026】
本態様によれば、樹脂シートに対してシートラバーを重ね合わせた装着状態で、弾性突部を樹脂シートにおける支持部に当接させることで弾性突部間に隙間を設定できる。これらの弾性突部はコイルスプリングからの荷重で潰れることもあるが、かかる隙間が設定され、且つ支持部において弾性突部の周方向間に水抜孔が形成されることで、弾性突部間の隙間及び水抜孔からの排水を達成しつつ、シートラバーのばね特性を柔らかく設定することができる。また、弾性突部の周方向間の隙間は、径方向に延びて外周端に開口することで、シートラバーと樹脂シートとの重ね合わせ面に存在する空気がコイルスプリングからの荷重で瞬間的且つ強制的に押し出されることに起因する破裂音などの回避にも有効となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るスプリングシートによれば、被水した場合にも樹脂シート上の水を安定して排出することができて、例えば樹脂シートとシートラバーとが擦れることに伴う異音の発生を抑制乃至は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態としてのスプリングシートを平面側から示す斜視図
【
図2】
図1に示されたスプリングシートにおける平面図
【
図3】
図1に示されたスプリングシートにおける底面図
【
図6】
図1に示されたスプリングシートを構成するシートラバーを平面側から示す斜視図
【
図7】
図6に示されたシートラバーを底面側から示す斜視図
【
図10】
図6に示されたシートラバーにおける縦断面図であって、
図4に対応する図
【
図11】
図1に示されたスプリングシートを構成する樹脂シートを示す斜視図
【
図12】
図1に示されたスプリングシートを車両に装着した状態を示す縦断面図であって、
図4に対応する図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0030】
先ず、
図1~5には、本発明の第1実施形態としてのスプリングシート10が示されている。このスプリングシート10は、後述する
図12において自動車等の車両への装着状態が示されているように、コイルスプリング12の下端14とサスペンション部材16のコイル受部18との間に装着されるものであり、コイルスプリング12とコイル受部18との直接的な接触を防止するものである。なお、スプリングシート10の配置される向きが限定されるものではないが、以下の説明では、原則として、上下方向及び軸方向とは、スプリングシート10の中心軸方向となる
図4中の上下方向をいう。
【0031】
より詳細には、スプリングシート10は、コイルスプリング12の下端14が重ね合わされると共に周方向へ連続的に延びる受座部20を有するシートラバー22と、サスペンション部材16のコイル受部18に載置されてシートラバー22の受座部20を支持することでコイル受部18と受座部20との重ね合わせ面間に配される環状の支持部24を有する樹脂シート26とを、備えている。
【0032】
本実施形態のシートラバー22は、
図6~10にも示されるように、全体として略円板形状であり、例えばゴムやエラストマー等の弾性体から構成されている。シートラバー22の中央には、上下方向に貫通する中央貫通孔28が形成されており、シートラバー22が全体として略円環板形状又は略円筒形状とされている。
【0033】
中央貫通孔28の周縁部において、即ちシートラバー22の中央部分には、シートラバー22の上方に配置されるコイルスプリング12の内側に向かって上方に突出する中央突部30が設けられている。また、中央突部30の基端側(下端側)には、外周側に広がってコイルスプリング12の下端14が重ね合わされる略環状の受座部20が設けられている。即ち、受座部20の内周側に中央突部30が設けられている。そして、中央突部30を構成する周壁32の内周側において上下方向に貫通する中央貫通孔28が形成されていると共に、周壁32の下方部分において、外周側に突出する受座部20が周方向へ連続的に延びて設けられている。
【0034】
本実施形態では、周壁32の内周面を構成する中央貫通孔28が、下方から上方に向かって次第に内径寸法が小さくなるテーパ形状とされている。それ故、周壁32は、円環形状とされた上端面においてある程度の径方向幅寸法を有しているが、下方になるにつれて径方向幅寸法が次第に小さくされている。なお、中央突部30(周壁32)の外径寸法は上下方向で略一定とされて円筒形状の外周面とされており、かかる中央突部30の外径寸法は、自然状態におけるコイルスプリング12の内径寸法と等しいか、僅かに大きくされている。これにより、コイルスプリング12の下端14に対して中央突部30が略圧入されるように、シートラバー22に対してコイルスプリング12が組み付けられるようになっている。
【0035】
また、本実施形態では、中央突部30(周壁32)の外周面に、中央突部30の突出方向(上下方向)に延びる縦リブ34が、周方向の複数箇所において周方向で相互に離隔して設けられている。特に、本実施形態では、複数(6つ)の縦リブ34が、周方向で略等間隔(略60°毎)に設けられている。これにより、コイルスプリング12の下端14に対して中央突部30が挿入された際には、コイルスプリング12の内周面に対して各縦リブ34の外周面が当接するようになっている。
【0036】
一方、受座部20は略円環形状とされており、ある程度の径方向幅寸法を有していると共に、周方向の全周にわたって略一定の厚さ寸法(上下方向寸法)を有している。さらに、略円環形状の受座部20において、コイルスプリング12の下端14における巻線端36と対応する周方向位置には、段差状部38が設けられている。即ち、受座部20の上面40において段差状部38を挟んだ周方向両側は上下方向で相互に離隔しており、受座部20において段差状部38を挟んだ周方向一端部42が周方向他端部44に対して上方に位置している。また、受座部20における周方向一端部42には、周方向他端部44に向かって下方に広がる鉛直面が形成されており、かかる鉛直面を含んで段差状部38が構成されている。
図8において二点鎖線で示されるように受座部20の上面40上にコイルスプリング12の下端14が重ね合わされる際には、上記鉛直面に対してコイルスプリング12の巻線端36が突き当てられるようになっており、当該鉛直面により巻線端36が突き当てられる突当面46が構成されている。
【0037】
そして、受座部20の上面40は、上側に位置する周方向一端部42から、段差状部38と反対の周方向(
図8における平面視において時計回りの方向)で段差状部38の下側、即ち周方向他端部44に向かって次第に下方に傾斜する傾斜面とされている。なお、シートラバー22により支持されるコイルスプリング12の端部構造は限定されるものではないが、本実施形態のコイルスプリング12はオープンエンド形状とされており、コイルスプリング12の巻線が端部まで略一定の傾斜角度をもって延びている。上記受座部20の上面40における下方への傾斜角度は、コイルスプリング12における巻線の傾斜角度と略等しくされており、巻線端36が受座部20における突当面46に突き当てられたコイルスプリング12は、後述する
図12にも示されるように、コイルスプリング12の下端14の巻線が受座部20の上面40における周方向の略全長にわたって支持されるようになっている。
【0038】
また、受座部20の下面48には、周方向で相互に離れて複数の弾性突部50が設けられている。各弾性突部50は、受座部20の下面48から下方に突出していると共に、下面48における径方向幅寸法の略全長にわたって設けられている。本実施形態では、各弾性突部50の下面における外周部分において、略凹凸のない平坦面52が設けられており、シートラバー22と樹脂シート26とが組み合わされてスプリングシート10が構成された状態において、樹脂シート26上に各弾性突部50の平坦面52が重ね合わされることで、シートラバー22が樹脂シート26に対してがたつくことなく組み付けられるようになっている。
【0039】
なお、受座部20は、周方向の全周にわたって略一定の厚さ寸法を有していることから、受座部20の下面48は上面40と同様の形状を有しており、周方向一端部42から周方向他端部44に向かって周方向で次第に下方に傾斜する形状とされている。本実施形態では、受座部20の下面48において周方向で段差状部38と対応する位置において下段差状部54が設けられており、下段差状部54の下面が、受座部20の下面48において上下方向で最も下方に位置するようになっている。
【0040】
特に、本実施形態では、各弾性突部50において受座部20の下面48からの下方への突出寸法が略等しくされている。これにより、各弾性突部50の平坦面52は、周方向一端部42から周方向他端部44へ向かって周方向で段階的に下方に位置するように設けられている。この結果、受座部20の下面48において、後述するように樹脂シート26に重ね合わされる下傾斜面56が、各弾性突部50の平坦面52を含んで構成されている。
【0041】
ここで、受座部20の上面40には、段差状部38の下側(周方向他端部44)において受座部20の径方向(
図8中の上下方向)に延びて外周端に開放された径方向溝58が形成されている。本実施形態では、径方向溝58が、受座部20における径方向の全長にわたって設けられている。
【0042】
特に、本実施形態では、受座部20の上面40における内周部分(即ち、受座部20と中央突部30との接続部分)において、上方に開口して周方向に延びる周方向溝60が形成されている。周方向溝60は、受座部20の上面40において中央突部30の周囲を、周方向の全周にわたって連続して略環状に形成されている。これにより、周方向溝60は、段差状部38の上側(周方向一端部42)から段差状部38と反対の周方向(
図8における平面視において時計回りの方向)で段差状部38の下側(周方向他端部44)に向かって傾斜して延びている。そして、かかる周方向溝60が、段差状部38の下側(周方向他端部44)において、径方向溝58と繋がっている。特に、本実施形態では、上下方向に広がる突当面46の内周部分にも周方向溝60が設けられており、周方向溝60の上端部分と下端部分が上下方向に延びる部分で連続して、周方向溝60が周方向の全周にわたって連続して環状に形成されている。
【0043】
また、本実施形態の樹脂シート26は、例えばシートラバー22よりも硬質な合成樹脂により形成されており、シートラバー22が組み付けられる前の単品状態が
図11に示されるように、前述の環状の支持部24を有すると共に、支持部24の内周側から上方に突出して周方向に延びる内周壁部62と、支持部24の外周側から上方に突出して周方向に延びる外周壁部64とを備えている。本実施形態では、これら内周壁部62及び外周壁部64が、それぞれ周方向の全周にわたって延びる円筒形状とされている。特に、内周壁部62は、シートラバー22における中央貫通孔28(周壁32の内周面)の形状と対応する形状とされており、上方に向かって外径寸法及び内径寸法が次第に小さくなるテーパ筒形状とされている。一方、外周壁部64は、上方に真っ直ぐ突出する略ストレートな円筒形状とされている。
【0044】
また、シートラバー22における受座部20が重ね合わされる支持部24の上面は、受座部20における下面48及び下傾斜面56と対応する形状とされている。即ち、支持部24の上面には、受座部20の下面48における下段差状部54と対応する段差状部66が形成されていると共に、支持部24の上面は、段差状部66の上側から段差状部66の下側に向かって、段差状部66と反対の周方向で次第に下方へと傾斜する傾斜面68とされている。要するに、受座部20の下面48は、受座部20の上面40と対応する形状であることから、支持部24の上面も受座部20の上面40と対応する形状とされており、段差状部66が上下方向に広がる鉛直面70を含んで構成されている。特に、支持部24の上面における傾斜面68は、シートラバー22における各弾性突部50の平坦面52から構成される下傾斜面56と対応する形状とされている。同様に、支持部24の下面も、支持部24の上面(傾斜面68)と対応する傾斜面72(
図4等参照)とされている。これにより、支持部24は厚さ寸法が周方向で略一定な円環板形状とされている。
【0045】
さらに、
図1,3~5にも示されるように、支持部24の下面(傾斜面72)には、内周部分及び外周部分をそれぞれ周方向に略環状に延びる各突条74a,74bからなる脚部76が設けられていると共に、これら各突条74a,74bが周方向の複数箇所において径方向に延びる仕切壁部78により接続されている。これにより、脚部76は、
図3に示されるように、底面視(軸方向の投影)において各突条74a,74b及び仕切壁部78によって囲まれた領域80が周方向で複数設けられた形状とされている。なお、かかる領域80の内周部分及び外周部分を構成する各突条74a,74bにおける下端には、下方に開口すると共に径方向で貫通する切欠状の凹部82が形成されており、後述する水抜孔84を通じて流下した水が各凹部82を通じて外部に排水されるようになっている。また、各領域80では、荷重入力時における変形に伴う空気の給排が水抜孔84を通じて許容されることで異音発生が防止され得る。
【0046】
かかる脚部76を構成する各突条74a,74b及び仕切壁部78は、支持部24の下面(傾斜面72)に対応して周方向で上下方向寸法が異ならされており、脚部76の下端が水平方向に広がる同一平面上に位置するようになっている。樹脂シート26において、このような脚部76が設けられることにより、支持部24の下面が傾斜面72とされている場合にも、コイル受部18上において樹脂シート26が傾くことなく配置されると共に、後述する各水抜孔84の開口部がコイル受部18により閉塞されることなく、各水抜孔84及び各凹部82を通じた水の排水がより確実に達成され得る。
【0047】
ここで、支持部24において、段差状部66を周方向で外れた位置には、厚さ方向(上下方向)に貫通する水抜孔84が形成されている。本実施形態では、支持部24の下面において各突条74a,74b及び仕切壁部78によって囲まれる領域80の上側の壁部を構成する部分に水抜孔84が形成されている。
【0048】
上記仕切壁部78は、シートラバー22と樹脂シート26とが組み合わせられた状態において、シートラバー22における各弾性突部50と周方向で対応する位置に形成されており、換言すれば、各水抜孔84は、シートラバー22における各弾性突部50の周方向間に対応する位置に開口して設けられている。特に、本実施形態では、支持部24において下側となる領域(支持部24において内周壁部62を挟んで段差状部66と径方向で反対側の領域から段差状部66の下側にかけての周方向に延びる領域)に、複数の水抜孔84が形成されている。即ち、後述するように、例えばシートラバー22の径方向溝58を通じて排出された水は、樹脂シート26における支持部24上を流動することになるが、当該支持部24において下側となる領域のみに各水抜孔84を設けることで、不必要な水抜孔が形成されることがないようにされている。
【0049】
上記のような形状とされたシートラバー22と樹脂シート26とが組み合わされることで、
図1~5に示されるように、本実施形態のスプリングシート10が構成されるようになっている。即ち、樹脂シート26に対して上方からシートラバー22が重ね合わされており、樹脂シート26における内周壁部62と外周壁部64との径方向間にシートラバー22における受座部20が差し入れられて、支持部24上に配置されて支持されている。これにより、中央貫通孔28に内周壁部62が挿入されると共に、受座部20の外周側が外周壁部64により覆われて、シートラバー22が樹脂シート26に対して径方向で位置決めされるようになっている。なお、外周壁部64における内径寸法は、受座部20の外径寸法より大きくされており、シートラバー22と樹脂シート26とが組み付けられた状態において、受座部20と外周壁部64との径方向間には隙間が形成されるようになっている。これにより、シートラバー22において外周端に開放された径方向溝58が、樹脂シート26に組み付けられた際に外周壁部64により閉塞されないようになっている。
【0050】
また、支持部24の上面(傾斜面68)は、受座部20における上面40及び下面48と対応する形状とされており、段差状部38及び下段差状部54と対応する段差状部66を有している。そして、段差状部66(特に鉛直面70)と下段差状部54とが周方向で重ね合わされて当接することにより、シートラバー22が樹脂シート26に対して周方向で位置決めされるようになっている。
【0051】
以上の如き構造とされたスプリングシート10が、
図12に示されるように、コイルスプリング12の下端14とサスペンション部材16のコイル受部18との間に装着されている。サスペンション部材16におけるコイル受部18の形状は限定されるものではないが、
図12に示される態様では、コイル受部18は水平方向に広がる環状部分により構成されており、コイル受部18の中央には上方に突出する位置決め突部86が設けられている。この位置決め突部86は、上方に向かって次第に外径寸法が小さくなるテーパ筒形状とされており、樹脂シート26における内周壁部62と略対応する形状とされている。これにより、コイル受部18に対してスプリングシート10(樹脂シート26)が載置された際に、位置決め突部86が内周壁部62に挿入されて、スプリングシート10(樹脂シート26)がコイル受部18に対して径方向で位置決めされるようになっている。
【0052】
なお、スプリングシート10を構成するシートラバー22と樹脂シート26とは、相互に重ね合わされた状態で、接着等により固着されてもよいし、固着されなくてもよい。上述のように、サスペンション部材16におけるコイル受部18に対してスプリングシート10が配置された状態で、シートラバー22における受座部20に対して上方からコイルスプリング12の下端14が重ね合わされることで、スプリングシート10が、コイルスプリング12の下端14とサスペンション部材16のコイル受部18との間に装着されている。
【0053】
以上の如き構造とされた本実施形態のスプリングシート10によれば、下方部分を構成する樹脂シート26において、シートラバー22の受座部20が載置されて支持される支持部24には、厚さ方向に貫通する水抜孔84が形成されている。これにより、車両の走行等によってスプリングシート10上に撥ね上げられた水が、樹脂シート26上に溜まることがなく、重力作用等によって水抜孔84を通じて排出される。特に、シートラバー22と樹脂シート26とが組み付けられた状態において、シートラバー22の受座部20と樹脂シート26の外周壁部64との径方向間には隙間が設けられていることから、シートラバー22上の水は外周側の隙間を通じて下方へと、即ち樹脂シート26上へと流動して、水抜孔84を通じて排水され得る。このように、スプリングシート10上の水を排出することで、シートラバー22とコイルスプリング12との間や、シートラバー22と樹脂シート26との間における異音(スティックスリップ異音)の発生を、抑制又は防止することができる。
【0054】
また、樹脂シート26には、支持部24の内周側及び外周側にそれぞれ内周壁部62及び外周壁部64が設けられており、シートラバー22における受座部20がこれら内周壁部62と外周壁部64の径方向間に配されている。即ち、これら内周壁部62及び外周壁部64により、樹脂シート26に対してシートラバー22が径方向で位置決めされるようになっており、シートラバー22を樹脂シート26に組み付ける際の組付作業における作業効率の向上が図られる。更に、シートラバー22の受座部20に対してコイルスプリング12から大きな荷重が入力される際にも、受座部20が径方向内外の内周壁部62及び外周壁部64に当接することで、径方向に広がるような変形が抑制される。このように受座部20の径方向内外に内周壁部62及び外周壁部64を設けることで、シートラバー22のばね特性を調節したり、耐久性の向上を図ることができる。
【0055】
さらに、受座部20の上面40には段差状部38が設けられており、受座部20の上面は、段差状部38の上側(周方向一端部42)から下側(周方向他端部44)に向かって周方向で次第に下方へと傾斜する傾斜面とされている。これにより、車両の走行等によって受座部20の上面40上に撥ね上げられた水を、傾斜面(上面40)に従って下方へと流動させることができて、上述のように受座部20の外周側の隙間を通じて樹脂シート26上へと排水することができる。
【0056】
特に、受座部20の上面40が傾斜面とされると共に、段差状部38が鉛直方向に広がる突当面46を有することで、オープンエンド形状のコイルスプリング12の下端14を、特別な加工を行うことなく、上面40上に載置して、且つ巻線端36を突当面46に周方向で突き当てることができる。これにより、スプリングシート10におけるシートラバー22において、コイルスプリング12の下端14を安定して支持することができる。
【0057】
なお、このように受座部20の上面40を傾斜面とする場合、受座部の厚さ寸法を周方向で異ならせることも考えられるが、受座部の厚さ寸法を周方向で異ならせると、シートラバーにおける所望のばね特性が発揮されなかったり、局所的な歪等によりシートラバーの耐久性が悪化するおそれがあった。それに対して、本実施形態のスプリングシート10では、シートラバー22と樹脂シート26とを組み合わせて採用することで、上述のような問題を回避しつつ、受座部20の上面40を傾斜面とすることをなし得た。特に、本実施形態では、樹脂シート26における支持部24の上面と下面はそれぞれ傾斜面68,72としつつも、支持部24の下面において周方向で高さ寸法が異なる脚部76を設けることで、支持部24を傾斜させつつ、樹脂シート26(スプリングシート10)を平坦なサスペンション部材16のコイル受部18上に傾くことなく載置することも可能としたのである。
【0058】
また、本実施形態では、段差状部38の下側(周方向他端部44)において、受座部20の径方向に延びて外周端に開放された径方向溝58を形成した。これにより、受座部20の上面40上を傾斜面に沿って下方へと流れた水が径方向溝58を通じてシートラバー22の外部へと排出されるようになっている。
【0059】
ここで、本実施形態では、受座部20の外周側は縦壁等のない比較的薄肉の自由端構造であることから、コイルスプリング12からの受け荷重が大きくなると変形量が大きくなって、例えば外周側が持ち上がり排水不良になる不具合も懸念される。加えて、コイルスプリング12の下端14は略一周近くにわたってシートラバー22における受座部20に支持されて押し付けられていることから、コイルスプリング12の内周側に入ってしまった水は、コイルスプリング12が邪魔になって外周側へ排水され難い。このような理由から、シートラバー22の外周側への排水を前提として検討しても有効な排水機構の実現が難しくなる場合があった。
【0060】
そこで、本発明者は発想を転換して、受座部20上の水を内周側に流すことを考えた。すなわち、受座部20の内周側には中央突部30が設けられており変形剛性が高くされていると共に、コイルスプリング12が中央突部30の外周面へ接触したり近接したりすることによる表面張力も利用することで、コイルスプリング12の内周側に水を導き易くする効果が期待される。
【0061】
さらに、本発明者は、受座部20上に載置されたコイルスプリング12の下端14と中央突部30の外周面との間には、受座部20の内周部分において隙間が存在しやすいことに着眼した。そして、受座部20の内周部分を利用して周方向溝60を設けることで、上述のように、内周側に集めた水を、段差状部38の上側から下側に向かって傾斜する傾斜面(上面40)によって段差状部38の下側に集め、かかる水を径方向溝58を通じて排出することで、排水効率の更なる向上を図り得たのである。
【0062】
したがって、本実施形態では、受座部20の上面40における内周部分において、段差状部38の上側から下側に向かって周方向で次第に下方へと傾斜する周方向溝60を設けていると共に、当該周方向溝60は、段差状部38の下側において径方向溝58へ繋がっている。これにより、周方向溝60内へ流動した受座部20の上面40上の水が、周方向溝60及び径方向溝58を通じて外部へと排出されるようになっている。特に、本実施形態では、かかる周方向溝60が周方向の全周にわたって形成されていることから、受座部20の上面40上の水が効率良く集約されて径方向溝58から排出され得る。
【0063】
さらに、シートラバー22における中央突部30の外周面には、突出方向である上下方向に延びる縦リブ34が、周方向の複数箇所に設けられている。これにより、中央突部30の外周側に配されるコイルスプリング12の下端14に対して、中央突部30を各縦リブ34において当接させることができて、シートラバー22とコイルスプリング12との接触面積が大きくなることが回避される。この結果、シートラバー22とコイルスプリング12との間での異音の発生が、より効果的に抑制され得る。また、中央突部30の外周面に各縦リブ34を設けることで、コイルスプリング12と中央突部30の外周面との間に周方向の広い領域で隙間ができて、コイルスプリング12と中央突部30との近接部分における水も速やかに下方へ排水され得る。
【0064】
更にまた、受座部20の下面48には、周方向で相互に離れて複数の弾性突部50が設けられている。これにより、シートラバー22の上方から、コイルスプリング12を通じて外力が及ぼされる際にも、弾性突部50が変形することで振動が吸収され得る。特に、樹脂シート26の支持部24における各水抜孔84は、これら弾性突部50における周方向間に対応する位置に設けられている。これにより、シートラバー22がサスペンション部材16におけるコイル受部18とコイルスプリング12との間で圧縮されて各弾性突部50が弾性変形した際にも、各弾性突部50の周方向間の隙間がなくならず存在することで、各水抜孔84の上方開口部がシートラバー22の下面48(下傾斜面56)によって閉塞されることがなく、各水抜孔84を通じた排水が安定して実現されると共に、シートラバー22の下方に存在する空気を各弾性突部50の周方向間の隙間を通じて外周側及び/又は内周側へ排出することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0066】
例えば、前記実施形態において、シートラバー22における受座部20の上面40は傾斜面とされていたが、シートラバーを樹脂シートに組み付ける前の単品状態、及びシートラバーと樹脂シートとを組み付けたスプリングシートの状態の何れの状態においても、シートラバーにおける受座部の上面は、上下方向に対して直交する方向に広がる平坦面であってもよい。尤も、受座部の上面における排水という観点によれば、前記実施形態のように、受座部の上面が傾斜面であることが好ましい。なお、受座部の上面を傾斜面とする場合でも、受座部における厚さ寸法を周方向で異ならせることで実現してもよく、シートラバーにおける受座部の上面や下面、樹脂シートにおける支持部の上面や下面は何れも、上下方向に対して直交する方向に広がる平坦面であってもよい。要するに、シートラバーや樹脂シートにおける傾斜面や段差面、鉛直面等の傾斜角度は限定されるものではないし、例えばシートラバーの受座部の上面と下面等は傾斜方向が同じとされて対応していることが好ましいが、これらは相互に同じ傾斜角度である必要はなく、シートラバーの受座部の厚さ寸法が周方向で完全に同一である必要もない。
【0067】
また、シートラバーの形状は、前記実施形態に記載の態様に限定されるものではない。例えば、周方向溝は受座部の径方向中間部分に設けられてもよいし、受座部において中央突部を挟んで段差状部と径方向で反対側の領域から段差状部の下側まで略1/2周の周方向長さをもって、要するに受座部において水が滞留しやすい下方部分のみに形成されてもよい。尤も、本発明に係るシートラバーにおいて周方向溝や径方向溝は必須なものではない。なお、シートラバーにおいて径方向溝が設けられる態様であっても、シートラバー上の水は必ずしも径方向溝を通じて排出される必要はなく、前記実施形態のように受座部20と外周壁部64との径方向間に隙間が設けられて、受座部20から外周側に流動した水が受座部20と外周壁部64との隙間を通じて樹脂シート26の支持部24上に流れ落ちてもよい。更に、前記実施形態では、中央突部30の外周面において複数の縦リブ34が設けられていたが、本発明に係るシートラバーにおいて縦リブは必須なものではない。
【0068】
同様に、樹脂シートの形状は、前記実施形態に記載の態様に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、複数の水抜孔84が形成されていたが、樹脂シートの支持部において、水抜孔は少なくとも1つが設けられればよい。また、かかる水抜孔の周方向長さは限定されるものではなく、例えば支持部の周方向の全長にわたって、或いは支持部の周方向における所定の領域において、連続して又は断続的に、1つ又は複数の水抜孔が設けられてもよい。更に、前述のように水抜孔84は、剛性や重量等の調節などの目的で設けられる領域80に対する空気の給排用孔として機能することを考慮すると、例えば複数の水抜孔が設けられる場合、そのうちの少なくとも1つは排水用の機能を有していなくてもよい。また、樹脂シート26における内外周壁部62,64はシートラバー22の受座部20の内周端面や外周端面が当接して変形を抑える作用をすることでシートラバー22の過度の変形を防止したり、ばね特性を調節したりするのに有効であるが、かかる内外周壁部は、シートラバーの受座部の内周端面や外周端面を全面にわたって覆う必要はなく、例えば高さ寸法を小さくしたり、周方向で部分的に設けたりする態様であってもよい。尤も、樹脂シートにおける内周壁部や外周壁部は必須なものではない。
【0069】
更にまた、前記実施形態では、中央突部30において上下方向に貫通する中央貫通孔28が形成されていたが、中央貫通孔は設けられなくてもよく、中央突部は下方から樹脂シートの内周突部が挿入される有底筒形状とされてもよい。同様に、樹脂シートにおける内周筒部は、サスペンション部材のコイル受部における位置決め突部が下方から挿入される有底筒形状とされてもよい。尤も、これら中央突部や内周突部は、本発明において必須なものではない。
【0070】
前記実施形態においてスプリングシート10(シートラバー22)により支持されたコイルスプリング12の端部形状における記載は単なる例示であり、無研削のオープンエンド形状に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
10 スプリングシート
12 コイルスプリング
14 下端
16 サスペンション部材
18 コイル受部
20 受座部
22 シートラバー
24 支持部
26 樹脂シート
28 中央貫通孔
30 中央突部
32 周壁
34 縦リブ
36 巻線端
38 段差状部
40 上面(傾斜面)
42 周方向一端部
44 周方向他端部
46 突当面
48 下面
50 弾性突部
52 平坦面
54 下段差状部
56 下傾斜面
58 径方向溝
60 周方向溝
62 内周壁部
64 外周壁部
66 段差状部
68 傾斜面
70 鉛直面
72 傾斜面
74a,74b 突条
76 脚部
78 仕切壁部
80 領域
82 凹部
84 水抜孔
86 位置決め突部