(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010432
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】電源システム、それに含まれる電力変換器を制御するための制御器および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 9/08 20060101AFI20240117BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240117BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H02J9/08
H02J9/06 120
H02J7/34 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111763
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江渡 信一
(72)【発明者】
【氏名】武部 智全
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】堀本 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松尾 高明
【テーマコード(参考)】
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
5G015GA04
5G015GA17
5G015JA26
5G015JA55
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA06
5G503DA19
5G503EA05
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】需要電力が低い状態であっても原動機発電機による電力供給を継続することができる電源システム、それに含まれる電力変換器を制御するための制御器および制御方法を提供する。
【解決手段】電源システムは、負荷が接続される交流配線に接続され、交流配線における需要電力に応じた電力を交流配線に供給する原動機発電機と、交流配線に接続される電力変換器と、電力変換器に接続される蓄電器と、交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、電力変換器を制御する制御器と、を備え、制御器は、交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、原動機発電機が出力する電力で蓄電器を充電するような第1制御モードにより電力変換器を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、
前記交流配線に接続される電力変換器と、
前記電力変換器に接続される蓄電器と、
前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、
前記電力変換器を制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する、電源システム。
【請求項2】
前記制御器は、前記第1制御モードの制御を開始した場合に計時を開始し、
前記第1制御モードの制御開始からの経過時間が第2期間となった場合に、前記第1制御モードを終了する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記蓄電器の充電率を検出する充電率検出器を備え、
前記制御器は、前記第1制御モードの開始前または終了後において、前記蓄電器の充電率を所定の範囲に維持するような第2制御モードにより前記電力変換器を制御する、請求項1または2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記交流配線における周波数を検出する周波数検出器を備え、
前記制御器は、前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器有効電力に対する前記周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、前記電力変換器を制御する、請求項1または2に記載の電源システム。
【請求項5】
前記原動機発電機は、前記交流配線における需要電力が前記第1基準値より小さい第2基準値未満になった場合、運転を停止し、
前記制御器は、前記交流配線における需要電力に応じて前記蓄電器を放電するような第3制御モードにより前記電力変換器を制御する、請求項4に記載の電源システム。
【請求項6】
前記蓄電器の充電率を検出する充電率検出器を備え、
前記原動機発電機は、前記蓄電器の充電率が所定の基準値未満になった場合、運転を再開し、
前記制御器は、前記蓄電器を充電するような第4制御モードにより前記電力変換器を制御する、請求項5に記載の電源システム。
【請求項7】
前記交流配線に外部の電源系統が接続されており、
前記制御器は、前記外部の電源系統との間の授受電力が所定の電力目標値となるように前記電力変換器を制御する、請求項4に記載の電源システム。
【請求項8】
負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、前記交流配線に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される蓄電器と、前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、を備えた電源システムにおいて前記電力変換器を制御するための制御器であって、
前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する、制御器。
【請求項9】
負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、前記交流配線に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される蓄電器と、前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、を備えた電源システムにおける前記電力変換器の制御方法であって、
前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システム、それに含まれる電力変換器を制御するための制御器および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害等の緊急事態が発生しても企業または団体等が事業を継続可能とするために、企業または団体等が分散型電源を所有する場合がある。分散型電源には、例えばガスエンジン等の原動機発電機が含まれる。このような分散型電源は、通常時は商用電源系統に接続され、連系運転されている。緊急事態の発生時には、分散型電源は、商用電源系統とは独立して自立運転し、分散型電源が接続される周囲の施設等に電力を供給する。
【0003】
しかし、分散型電源の自立運転時には、需要電力が低い状態が継続することが想定される。分散型電源が原動機発電機である場合、低負荷の状態が継続すると、原動機において不完全燃焼が生じ燃焼室内にスラッジが増加する。スラッジの増加は、原動機の焼き付き等の原動機不調の原因となるため、原動機発電機を低負荷の状態で連続して運転する期間には制限がある。また、燃焼室内に生じたスラッジを除去するために、原動機発電機では、低負荷の状態で所定期間運転した後は、高負荷の状態で運転を行うクリーンアップ運転を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、総発電量目標値に対して複数の発電手段における運転台数を調整することにより、発電手段1台当たりの負荷率を所定値以上に維持することが記載されている。しかし、総発電量目標値が1台の発電手段の負荷率を下回る場合には、運転継続が不可能となるため、特許文献1の構成では、需要電力が低い状態において原動機発電機による電力供給を継続することについて改善の余地がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するものであり、需要電力が低い状態であっても原動機発電機による電力供給を継続することができる電源システム、それに含まれる電力変換器を制御するための制御器および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電源システムは、負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、前記交流配線に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される蓄電器と、前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、前記電力変換器を制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する。
【0008】
本開示の他の態様に係る電力変換器のための制御器は、負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、前記交流配線に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される蓄電器と、前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、を備えた電源システムにおいて前記電力変換器を制御するための制御器であって、前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する。
【0009】
本開示の他の態様に係る電力変換器の制御方法は、負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、前記交流配線に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される蓄電器と、前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、を備えた電源システムにおける前記電力変換器の制御方法であって、前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、需要電力が低い状態であっても原動機発電機による電力供給を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態に係る電源システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電源システムにおける原動機発電機および電力変換器の状態遷移を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す電源システムにおいて状態S3となった場合の電力の流れを示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す電源システムにおいて状態S4となった場合の電力の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す電源システムにおいて状態S5となった場合の電力の流れを示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の変形例に係る電源システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または同じ機能を有する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0013】
[システム構成]
以下、本開示の一実施の形態について説明する。
図1は、本開示の一実施の形態に係る電源システムの概略構成を示すブロック図である。本実施の形態における電源システム1は、負荷2が接続される交流配線3に接続される原動機発電機4を備えている。原動機発電機4は、例えばガスエンジン、ディーゼルエンジン等の原動機の回転動力に基づいて発電を行う発電機である。原動機発電機4は、交流配線3における需要電力に応じた電力を交流配線3に供給する同時同量制御により制御される。すなわち、原動機発電機4は、交流配線3における電圧が減少するに従って出力する発電機有効電力を増加する特性を有している。例えば、負荷2の消費電力が増大して当該負荷2が接続される交流配線3における電圧が減少すると、原動機発電機4の出力電力が増加し、交流配線3における電圧が所定の原動機垂下特性に応じた値でバランスするように制御される。
【0014】
さらに、電源システム1は、交流配線3に接続される電力変換器5と、電力変換器5に接続される蓄電器6と、を備えている。電力変換器5と蓄電器6とは直流配線13を介して接続されている。電力変換器5は、複数のパワー半導体素子を備え、当該パワー半導体素子のオンまたはオフを高速に切り替えることにより、交流配線3の交流電力を直流電力に変換して直流配線13に出力する、または、直流配線13の直流電力を交流電力に変換して交流配線3に出力する。電力変換器5は、蓄電器6のパワーコンディショナまたはPCSとも称される。本実施の形態においては、交流配線3と電力変換器5との間に変圧器12が介装されている。蓄電器6は、二次電池、電気二重層キャパシタ等を含む。
【0015】
電力変換器5は、制御器8によって制御される。制御器8は、交流配線3における需要電力に基づいて電力変換器5を制御する。このために、電源システム1は、交流配線3における需要電力を検出する需要検出器7を備えている。以下では、交流配線3における需要電力を配線需要電力Ptと称する場合がある。さらに、電源システム1は、交流配線3における周波数を検出する周波数検出器9を備えている。なお、
図1には、需要検出器7および周波数検出器9が互いに別の構成として示されているが、本実施の形態においては、需要検出器7および周波数検出器9は、交流配線3における電圧および電流から配線需要電力Ptが算出される過程で周波数が算出されるため、一体的に構成されている。
【0016】
本実施の形態において、原動機発電機4も、制御器8により制御される。制御器8は、原動機発電機4に対して、上述した同時同量制御だけでなく、後述するような運転または停止の切り替え制御も行い得る。
【0017】
本実施の形態において、制御器8は、原動機発電機4を制御する第1制御器81と、電力変換器5を制御する第2制御器82と、第1制御器81および第2制御器82に制御指令を出力する上位制御器80と、を含む。上位制御器80は、各検出器7,9,10等から原動機発電機4および電力変換器5に必要な情報を取得する。また、上位制御器80は、外部から電力目標値等の指令信号を受信してもよい。
【0018】
上位制御器80は、取得した情報または指令信号等に基づいて原動機発電機4および電力変換器5のそれぞれに対する制御指令を生成する。第1制御器81は、上位制御器80からの制御指令に基づいて原動機発電機4を制御する。第2制御器82は、上位制御器80からの制御指令に基づいて電力変換器5を制御する。以下では、第1制御器81が上位制御器80で生成された制御指令に基づいて原動機発電機4を制御することを、制御器8が原動機発電機4を制御すると称する。同様に、第2制御器82が上位制御器80で生成された制御指令に基づいて電力変換器5を制御することを、制御器8が電力変換器5を制御すると称する。
【0019】
なお、原動機発電機4の運転または停止の切り替え制御が電力変換器5の後述する制御モードに応じて実行可能であれば、電力変換器5の制御を行う第2制御器82により原動機発電機4が制御されてもよいし、上位制御器80、第1制御器81および第2制御器82が1つの制御器として構成されてもよい。
【0020】
本実施の形態において、交流配線3の接続点14には、商用系統等の外部の電源系統11が接続されている。接続点14と外部の電源系統11との間には、ガス遮断器等の遮断器15が介装される。遮断器15は、電源システム1と外部の電源系統11との解列点となる。需要検出器7は、接続点14における需要電力を検出する。
【0021】
制御器8を構成する上位制御器80、第1制御器81および第2制御器82は、それぞれ、例えばマイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを備えている。例えば、上位制御器80、第1制御器81および第2制御器82は、それぞれ、CPU、RAM等のメインメモリ、通信インターフェイス等を備えている。
【0022】
なお、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本明細書において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、手段、または部は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0023】
[仮想同期発電機モデル制御]
本実施の形態において、電力変換器5は、電力変換器5の代わりに仮想の原動機発電機が接続されたと仮定した場合に、当該仮想の原動機発電機が交流配線3に出力する電力を模擬して、電力変換器5が出力する交流配線3に出力する電力を制御する仮想同期発電機モデル制御によって制御される。このために、制御器8は、交流配線3に電力変換器5が出力する電力変換器有効電力に対する周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、電力変換器5を制御する。
【0024】
仮想同期発電機モデル制御は、公知の態様が採用されるが、一般的に以下の特徴を有する。
(1)電圧と周波数との間で垂下特性を有することにより、自律的な需給調整が可能である。
(2)模擬的な慣性モーメントを有し、慣性力を調整可能である。
(3)模擬的なインピーダンスを有し、同期化力を調整可能である。
これらの特徴を有する仮想同期発電機モデル制御を用いて電力変換器5が制御されることにより、蓄電器8に蓄えられた電力による電力変換器5の自立運転、外部の電源系統11との系統連系運転、および原動機発電機4との並列運転が実行可能であり、かつ、これらの運転をシームレスに切り替えることができる。
【0025】
[原動機発電機の状態に応じた制御モード]
上記の通り、制御器8は、交流配線3に電力変換器5が出力する電力変換器有効電力に対する周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、電力変換器5を制御する。さらに、制御器8は、これに並行して、電源システム1の状態、特に原動機発電機4および蓄電器6の状態に応じて複数の制御モードの中から1つの制御モードを選択して実行する。特に、制御器8は、交流配線3における需要電力Ptが第1基準値L未満となっている状態で原動機発電機4が運転している期間が第1期間T1以上となった場合、原動機発電機4が出力する電力で蓄電器6を充電するような第1制御モードにより電力変換器5を制御する。
【0026】
図2は、
図1に示す電源システムにおける原動機発電機および電力変換器の状態遷移を示す図である。
図2において、各状態における「G」は原動機発電機4の状態を表し、「B」は蓄電器6の状態を表す。
【0027】
状態S1は、定常状態である。また、
図1は状態S1の場合を示している。
図1において状態S1における電力の流れは矢印で示される。状態S1において、負荷2には、第1基準値L以上の電力が供給される。第1基準値Lは、原動機発電機4が連続運転可能な負荷の程度に設定される。また、状態S1において、制御器8は、蓄電器6の充電率を所定の範囲に維持するようなSOC一定制御を行う第2制御モードにより電力変換器5を制御する。なお、充電率は、充電状態(State Of Charge)と称され、SOCと略記される。
【0028】
第2制御モードを行うために、電源システム1は、蓄電器6の充電率を検出する充電率検出器10を備えている。充電率検出器10は、例えば、蓄電器6の電圧、電流または温度等を検出し、検出した値に基づいて充電率を算出する。
【0029】
制御器8は、蓄電器6の充電率が所定の範囲内にある場合、負荷2の変動、すなわち、需要電力の変動に応じて仮想同期発電機モデル制御が実行される。この際、原動機発電機4も需要電力の変動に応じて出力が制御される。電力変換器5から交流配線3へ出力される電力変化の応答速度が原動機発電機4から交流配線3へ出力される電力変化の応答速度に比べて速いため、過渡的には、電力変換器5が配線需要電力Ptの変化に対応した後、原動機発電機4が遅れて配線需要電力Ptの変化に対応することになる。
【0030】
このような蓄電器6と原動機発電機4との特性の違いにより、スパイク状の負荷変動等の短期間の負荷変動は、蓄電器6が負担し、長期間の負荷変動は、原動機発電機4が負担することにより、原動機発電機4による発電効率を高くすることができる。
【0031】
制御器8は、蓄電器6の充電率が所定の範囲の上限値を超えた場合、または上限値に基づいて上限値より低い値に設定される基準値を超えた場合、蓄電器6を放電するまたは放電し易くするように電力変換器5を制御する。また、制御器8は、蓄電器6の充電率が所定の範囲の下限値より低くなった場合、または下限値に基づいて下限値より高い値に設定される基準値より低くなった場合、蓄電器6を充電するまたは充電し易くするように電力変換器5を制御する。
【0032】
状態S1においては、電源システム1と外部の電源系統11とが連系接続され得る。この場合、制御器8は、外部の電源系統11との間の授受電力Peが所定の電力目標値となるように電力変換器5を制御する。例えば、電源システム1が外部の電源系統11から電力供給を受ける場合の授受電力Peを正の値とすると、接続点14における配線需要電力Ptは、負荷2における需要電力を示す負荷需要電力Plを用いて、Pt=Pl-Peと表せる。この際、原動機発電機4においても、外部の電源系統11との間の授受電力Peが所定の電力目標値となるように、出力電力Pgが制御される。なお、
図1において授受電力Peを示す矢印の向きは、外部の電源系統11から電源システム1を向くように示されているが、電源システム1から外部の電源系統11へ電力を送る場合には、授受電力Peは負の値となり、当該矢印の向きも反対向きとなる。
【0033】
状態S1において、災害等が発生すると、外部の電源系統11が電源システム1から解列することが考えられる。例えば、遮断器15が遮断状態となる。すなわち、電源システム1と外部の電源系統11との間の授受電力Peが0になる。本実施の形態において、制御器8は、仮想同期発電機モデル制御を行っているため、外部の電源系統11が電源システム1から解列しても、制御モードを変更することなく電力変換器5の制御を継続することができる。これにより、事業継続を要する負荷2への電力供給を継続して行うことができる。
【0034】
ただし、災害発生時等において、負荷2における需要電力Plは、事業継続を行うための必要最低限の電力となることが考えられる。すなわち、負荷需要電力Plは、状態S1である定常状態に比べて低くなる。状態S2は、負荷需要電力Plが第1基準値L未満かつ後述する第2基準値LL以上の状態を表す。状態S2において、原動機発電機4および電力変換器5の制御態様自体は、
図1に示す状態S1と同じである。
【0035】
このように、状態S2においても状態S1と同様の制御が継続されるが、需要電力が第1基準値L未満かつ第2基準値LL以上の低負荷状態は、原動機発電機4において連続運転期間が制限される運転状態である。そのため、制御器8は、交流配線3における需要電力Ptが第1基準値L未満となった場合に内蔵のタイマ等で計時を開始し、経過時間を監視する。低負荷状態が継続したまま経過時間が第1期間T1以上となった場合、制御器8は、第2制御モードから第1制御モードに遷移する。状態S3は、電力変換器5が第1制御モードにより制御される状態を表す。第1期間T1は、原動機発電機4の低負荷状態における連続運転可能期間に基づいて設定される。なお、原動機発電機4の負荷状態は、原動機発電機4の出力を検出することによっても検出可能である。すなわち、需要検出器7は、原動機発電機4の出力を検出してもよい。
【0036】
状態S2における経過時間は、連続であってもよいし、不連続でもよい。状態S2において負荷2における需要電力が第1基準値L以上になると、電源システム1は、状態S1に復帰する。負荷2の需要電力が第1基準値L付近である場合、状態S1と状態S2との間を行き来する可能性がある。したがって、第1期間T1より長い監視期間のうちに状態S2である期間の合計が不連続でも第1期間T1になった場合には、経過時間が第1期間T1以上になったと判定されてもよい。あるいは、状態S2になってから所定の監視期間を経過するまでは途中で状態S1に復帰しても第1期間T1のための計時を止めないようにしてもよい。
【0037】
図3は、
図1に示す電源システムにおいて状態S3となった場合の電力の流れを示す図である。制御器8は、第1制御モードにおいて、原動機発電機4が出力する電力で蓄電器6を充電するように制御する。これにより、交流配線3における需要電力Ptは、負荷2における需要電力Plに電力変換器5を介して蓄電器6を充電する電力を加えたものとなる。すなわち、電力変換器5を介して蓄電器6を充電する電力を充電需要電力Pcとすると、Pt=Pl+Pcとなる。そのため、状態S3における原動機発電機4の出力電力Pgは、配線需要電力Ptの増大に応じて増大する。蓄電器6を充電するための電力変換器5への指令値は、低負荷状態である負荷2における負荷需要電力Plと蓄電器6を充電するための充電需要電力Pcとの合計が第1基準値L以上の値である第3基準値H以上となるように設定される。第3基準値Hは、原動機発電機4のクリーンアップ運転に必要な出力に基づいて設定される。
【0038】
このように、状態S3において、電力変換器5が第1制御モードにより制御されることにより、原動機発電機4は高負荷状態で運転される。原動機発電機4においてこのような運転が行われることにより、状態S2において低負荷状態で運転することにより原動機発電機4の燃焼室内に生じたスラッジが除去される。
【0039】
制御器8は、第1制御モードの制御を開始した場合に計時を開始する。制御器8は、第1制御モードの制御開始からの経過時間が第2期間T2となった場合に、第1制御モードを終了する。例えば、制御器8は、第2期間T2の経過後、第1制御モードから第2制御モードに遷移する。このとき、需要検出器7で検出される需要電力、すなわち、負荷2における需要電力Plが第1基準値L以上であれば、状態S3から状態S1に遷移する。需要電力が第1基準値L未満かつ第2基準値LL以上であれば、状態S3から状態S2に遷移する。この場合、制御器8は、再度第1期間T1の経過を検出するための計時を開始する。
【0040】
なお、クリーンアップ運転中に蓄電器6の充電率が所定の第2充電基準値HS以上となった場合、後述する状態S4に遷移する。状態S4においては、原動機発電機4が停止するとともに、制御器8は、第1制御モードから蓄電器6を放電するような第3制御モードに遷移する。
【0041】
また、クリーンアップ運転中に負荷需要電力Plが第1基準値L以上になった場合には、制御器8は、第2期間T2の経過を待たずに電力変換器5の制御モードを第1制御モードから第2制御モードへ遷移させてもよい。この場合には、電源システム1は、負荷需要電力Plを別途検出する負荷需要検出器を別途備え得る。この場合、状態S3における経過時間も状態S2における経過時間と同様に、連続であってもよいし、不連続でもよい。
【0042】
図4は、
図1に示す電源システムにおいて状態S4となった場合の電力の流れを示す図である。状態S1または状態S2において、交流配線3における需要電力Ptが第1基準値Lより小さい第2基準値LL未満になった場合、状態S4に遷移する。状態S4において、原動機発電機4は、運転を停止する。第2基準値LLは、原動機発電機4の運転時における最低出力に基づいて設定される。
【0043】
すなわち、配線需要電力Ptが第2基準値LL未満になった場合には、原動機発電機4のみの運転では同時同量制御が担保できない状態となる。この際、制御器8は、交流配線3における需要電力Ptに応じて蓄電器6を放電するような第3制御モードにより電力変換器5を制御する。状態S4は、原動機発電機4が運転を停止し、かつ電力変換器5が第3制御モードにより制御される状態を表す。状態S4では、蓄電器6が放電する電力Pdにより配線需要電力Ptすなわち負荷需要電力Plが賄われる。
【0044】
本実施の形態において、制御器8は、仮想同期発電機モデル制御を行っているため、原動機発電機4が停止しても、制御モードを変更することなく電力変換器5の制御を継続することができる。これにより、事業継続を要する負荷2への電力供給を継続して行うことができる。
【0045】
第3制御モードは、蓄電器6の充電率が所定の第1充電基準値LS以上である場合、配線需要電力Ptが第2基準値LL以上になるまで継続される。一方、蓄電器6の充電率が所定の第1充電基準値LS未満となった場合、制御器8は、第3制御モードから蓄電器6を充電するような第4制御モードに遷移する。これに伴って、原動機発電機4は、運転を再開する。状態S5は、原動機発電機4が運転し、かつ電力変換器5が第4制御モードにより制御される状態を表す。
【0046】
図5は、
図1に示す電源システムにおいて状態S5となった場合の電力の流れを示す図である。状態S4から状態S5への遷移においても、制御器8は、仮想同期発電機モデル制御を行っているため、原動機発電機4が停止状態から再起動しても、制御モードを変更することなく電力変換器5の制御を継続することができる。これにより、事業継続を要する負荷2への電力供給を継続して行うことができる。
【0047】
状態S4においては、蓄電器6が放電することにより、配線需要電力Ptが賄われる。そのため、状態S4が継続すると、蓄電器6の充電率は、低下する。蓄電器6の充電率が低下すると蓄電器6から放電することができなくなるため、充電率が第1充電基準値LS未満となった場合には、制御器8は、蓄電器6を充電させるように制御することで充電率を上昇させる。その代わりに、原動機発電機4が運転を再開することで原動機発電機4の出力で配線需要電力Ptが賄われる。
【0048】
状態S5における配線需要電力Ptは、状態S3と同様に、負荷需要電力Plと充電需要電力Pcとの合計となる。したがって、負荷需要電力Plだけでは原動機発電機4の同時同量制御が担保できないほど低くても、充電需要電力Pcの分が加えられるため、結果として原動機発電機4の出力は、低負荷状態以上、すなわち、第2基準値LL以上となる。これにより、原動機発電機4の運転および蓄電器6の充電が可能となる。
【0049】
状態S5において蓄電器6が充電されることにより、蓄電器6の充電率が第1充電基準値LSより大きい第2充電基準値HS以上になった場合、状態S4に復帰する。すなわち、原動機発電機4が停止し、制御器8は、蓄電器6を放電させる第3制御モードにより電力変換器5を制御する。
【0050】
第4制御モードは、蓄電器6を充電させるように電力変換器5が制御される点で第1制御モードと同じである。しかし、第1制御モードは、その終了が、第2期間T2の経過または充電率が所定の値以上になることであるのに対して、第4制御モードは、その終了が、充電率が第2充電基準値HS以上になることである点で相違する。第1制御モードと第4制御モードとで充電速度が互いに異なってもよい。
【0051】
なお、状態S5において負荷需要電力Plが第1基準値L以上になった場合には、制御器8は、蓄電器6の充電率にかかわらず電力変換器5の制御モードを第4制御モードから第1制御モードへ遷移させてもよい。この場合には、電源システム1は、負荷需要電力Plを別途検出する負荷需要検出器を別途備え得る。状態S1においては、蓄電器6の充電率が所定の範囲内になるように電力変換器5が制御されるため、第1制御モードへの遷移後も、蓄電器6の充電率に応じて蓄電器6が充電され得る。
【0052】
また、状態S3におけるクリーンアップ運転から蓄電器6の充電率の上昇により状態S4に遷移した場合は、状態S4において、蓄電器6の充電率が所定の値、例えばSOC一定制御における所定範囲内になった場合に、再度状態S3に遷移してもよい。この場合、制御器8は、状態S3から状態S4へ遷移した際に計時をリセットして、状態S3に復帰したときから計時を改めて0から開始してもよい。
【0053】
[効果]
以上のように、本実施の形態によれば、原動機発電機4が、配線需要電力Ptが第1基準値L未満となっている低負荷状態となってから第1期間T1以上経過すると、蓄電器6が充電するように電力変換器5が制御される。そのため、配線需要電力Ptが蓄電器6を充電するための充電需要電力Pcにより増大し、原動機発電機4の出力が増大する。これにより、原動機発電機4を低負荷状態から原動機のクリーンアップを行うためのクリーンアップ運転に必要な出力状態とすることができるため、負荷2が低負荷であっても原動機発電機4の運転を継続することができる。
【0054】
また、負荷需要電力Pl、低負荷状態における経過時間、蓄電器6の充電率等に応じて、電力変換器5において実行される制御モードが複数の制御モードの中から選択的に切り替えられる。したがって、これらの制約条件に従いつつ低負荷状態における原動機発電機4の運転を継続することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態によれば、電力変換器5が仮想同期発電機モデル制御により制御されるため、電源システム1における外部の電源系統11との接続または解列あるいは原動機発電機4の起動または停止を、電力変換器5の制御を継続した状態でシームレスに行うことができる。
【0056】
[変形例]
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0057】
例えば、上記実施の形態においては、電源システムが適用される交流配線3が三相系統である場合について説明したが、これに限られない。例えば、交流配線3が単相二線系統または単相三線系統の場合であっても、各種演算の方法が系統の方式に応じて異なることを除いて同様の電源システムを構築可能である。
【0058】
また、上記実施の形態においては、1つの交流配線3に1つの原動機発電機4が接続された例について説明したが、1つの交流配線3に2以上の原動機発電機4が接続されてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態においては、状態S2から状態S5の何れについても外部の電源系統11と解列した状態である例を示したが、状態S2から状態S5において外部の電源系統11と連系した状態であっても、本開示の制御態様は適用可能である。
【0060】
図6は、本開示の変形例に係る電源システムの概略構成を示すブロック図である。なお、
図6においては状態S3における電力の流れを矢印で示している。本変形例における電源システム1Bは、交流配線3に太陽光発電設備または風力発電設備等の再生可能エネルギー発電設備16が接続されている以外、上記実施の形態における電源システム1と同様の構成を有している。
【0061】
再生可能エネルギー発電設備16は、交流配線3に発電電力Prを供給する。本変形例においても、外部の電源系統11との間の授受電力Peが所定の電力目標値となるように、原動機発電機4の出力電力Pgが制御される。すなわち、定常状態である状態S1では、再生可能エネルギー発電設備16からの出力がない上記実施の形態に比べて、当該発電電力Prの分だけ原動機発電機4の出力電力Pgが低く出力される。
【0062】
ここで、再生可能エネルギー発電設備16における発電電力Prは、天候等の自然状況に影響を受けて変動する。このため、負荷2における需要電力Plが変動しなくても、発電電力Prが大きい状態では、原動機発電機4の出力電力Pgをより小さくする必要がある。このとき、原動機発電機4は、相対的な配線需要電力(Pl-Pr-Pe)が小さくなり、低負荷状態となる。すなわち、原動機発電機4において上記実施の形態における状態S2と同様の状態となる。
【0063】
このため、本変形例においても、相対的な配線需要電力(Pl-Pr-Pe)が第1基準値L未満となっている状態で原動機発電機4が運転している期間が第1期間T1以上となった場合、制御器8は、原動機発電機4が出力する電力で蓄電器6を充電するような第1制御モードにより電力変換器5を制御する。すなわち、状態S3においては、原動機発電機4の出力電力Pgと再生可能エネルギー発電設備16の発電電力Prと外部の電源系統11から受ける電力Peの和が負荷需要電力Plと充電需要電力Pcとの和に一致する、すなわち、Pg+Pr+Pe=Pl+Pcとなるように、原動機発電機4および電力変換器5が制御される。
【0064】
変形例におけるその他の状態S4および状態S5についても、外部の電源系統11と連系していることを除き、上記実施の形態と同様に説明できる。
【0065】
なお、本変形例においては再生可能エネルギー発電設備16が交流配線3に接続される例を示したが、これの代わりに、電源システム1でその出力電力が制御できない発電設備または蓄電設備が接続されてもよい。また、他の発電設備または蓄電設備が交流配線3に接続されていなくても、すなわち、
図1に示す上記実施の形態と同様の構成でも、外部の電源系統11との連系時において負荷2における需要電力Plが低下した場合に、第1制御モードが実行され得る。例えば、電源システム1から外部の電源系統11に送る電力(Pe<0)が制限されている場合に、負荷需要電力Plが低下した場合等においては、外部の電源系統11と電源システム1とが連系していても、原動機発電機4の出力を低下させる必要が生じ、低負荷状態になり得る。
【0066】
また、上記実施の形態においては、蓄電器6を充電する電力は交流配線3を介して供給される態様を示したが、これに加えて、電源システム1は、例えば再生可能エネルギー発電設備等の蓄電器6を別途充電可能な充電設備を備えてもよい。この場合、制御器8は、第4制御モードによる電力変換器5の制御を行わなくてもよい。すなわち、状態S4において蓄電器6が放電して交流配線3に電力供給することにより充電率が低下した場合には、充電設備により蓄電器6を充電してもよい。
【0067】
また、蓄電器6を他の用途に利用してもよい。例えば、定常状態において、ピークカット用の電力として蓄電器6から出力される電力を交流配線3に供給してもよい。また、例えば、原動機発電機4を起動するための電源として蓄電器6を利用してもよい。
【0068】
[本開示のまとめ]
[項目1]
本開示の一態様に係る電源システムは、負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、前記交流配線に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される蓄電器と、前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、前記電力変換器を制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する。
【0069】
上記構成によれば、原動機発電機が、配線需要電力が第1基準値未満となっている低負荷状態となってから第1期間以上経過すると、蓄電器が充電するように電力変換器が制御される。そのため、交流配線における需要電力が蓄電器を充電するための充電需要電力により増大し、原動機発電機の出力が増大する。これにより、原動機発電機を低負荷状態から原動機のクリーンアップを行うためのクリーンアップ運転に必要な出力状態とすることができるため、負荷が低負荷状態であっても原動機発電機の運転を継続することができる。
【0070】
[項目2]
項目1の電源システムにおいて、前記制御器は、前記第1制御モードの制御を開始した場合に計時を開始し、前記第1制御モードの制御開始からの経過時間が第2期間となった場合に、前記第1制御モードを終了してもよい。
【0071】
上記構成によれば、原動機発電機におけるクリーンアップ運転の終了を時間経過で決めることにより、原動機発電機の運転を継続させながら蓄電器の充電率が過度に上昇して第1制御モードにおける制御の継続ができなくなることを抑制することができる。
【0072】
[項目3]
項目1または2の電源システムにおいて、前記蓄電器の充電率を検出する充電率検出器を備え、前記制御器は、前記第1制御モードの開始前または終了後において、前記蓄電器の充電率を所定の範囲に維持するような第2制御モードにより前記電力変換器を制御してもよい。
【0073】
[項目4]
項目1から3の何れかの電源システムにおいて、前記交流配線における周波数を検出する周波数検出器を備え、前記制御器は、前記交流配線に前記電力変換器が出力する電力変換器有効電力に対する前記周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、前記電力変換器を制御してもよい。
【0074】
上記構成によれば、交流配線に電力変換器が出力する電力変換器有効電力に対する周波数の関係が所定の第1の垂下特性を有するように、電力変換器が制御されるため、電源システムにおける外部の電源系統との接続または解列あるいは原動機発電機の起動または停止を、電力変換器の制御を継続した状態でシームレスに行うことができる。
【0075】
[項目5]
項目4の電源システムにおいて、前記原動機発電機は、前記交流配線における需要電力が前記第1基準値より小さい第2基準値未満になった場合、運転を停止し、前記制御器は、前記交流配線における需要電力に応じて前記蓄電器を放電するような第3制御モードにより前記電力変換器を制御してもよい。
【0076】
上記構成によれば、交流配線における需要電力が第2基準値未満となり、原動機発電機が運転可能な最低出力を下回った場合でも、原動機発電機が運転を停止し、蓄電器を放電させることで、電源システム全体の運転を継続することができる。
【0077】
[項目6]
項目5の電源システムにおいて、前記蓄電器の充電率を検出する充電率検出器を備え、前記原動機発電機は、前記蓄電器の充電率が所定の基準値未満になった場合、運転を再開し、前記制御器は、前記蓄電器を充電するような第4制御モードにより前記電力変換器を制御してもよい。
【0078】
上記構成によれば、蓄電器の充電率が所定の基準値未満になった場合、原動機発電機の運転が再開し、その出力により蓄電器が充電される。そのため、交流配線における需要電力が、蓄電器を充電するための充電需要電力により増大し、原動機発電機を運転可能な負荷状態としつつ蓄電器の充電率を回復させることができる。
【0079】
[項目7]
項目4から6の何れかの電源システムにおいて、前記交流配線に外部の電源系統が接続されており、前記制御器は、前記外部の電源系統との間の授受電力が所定の電力目標値となるように前記電力変換器を制御してもよい。
【0080】
[項目8]
本開示の他の態様に係る電力変換器を制御するための制御器は、負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、前記交流配線に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される蓄電器と、前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、を備えた電源システムにおいて前記電力変換器を制御するための制御器であって、前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する。
【0081】
[項目9]
本開示の他の態様に係る電力変換器の制御方法は、負荷が接続される交流配線に接続され、前記交流配線における需要電力に応じた電力を前記交流配線に供給する原動機発電機と、前記交流配線に接続される電力変換器と、前記電力変換器に接続される蓄電器と、前記交流配線における需要電力を検出する需要検出器と、を備えた電源システムにおける前記電力変換器の制御方法であって、前記交流配線における需要電力が第1基準値未満となっている状態で前記原動機発電機が運転している期間が第1期間以上となった場合、前記原動機発電機が出力する電力で前記蓄電器を充電するような第1制御モードにより前記電力変換器を制御する。
【符号の説明】
【0082】
1,1B 電源システム
2 負荷
3 交流配線
4 原動機発電機
5 電力変換器
6 蓄電器
7 需要検出器
8 制御器
9 周波数検出器
10 充電率検出器
11 外部の電源系統