(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104326
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20240729BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240729BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240729BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240729BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C08F2/50
C09D4/02
C09D7/63
C08F290/06
B32B27/16 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008467
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大房 一樹
【テーマコード(参考)】
4F100
4J011
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
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4J127FA41
(57)【要約】
【課題】薄い塗工層の暗部硬化性に優れ、かつ、冷蔵保存時の安定性にも優れる暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物の提供。
【解決手段】下記(A)、(B)及び(C)成分を含み、
(A)成分の合計100重量部に対して、(B)成分を0.001~5重量部、及び(C)成分を0.01~15重量部の割合で含む、暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)成分:エチレン性不飽和基を有する化合物(但し、置換基を有しない炭素数1~7の直鎖状又は分岐状飽和炭化水素基を有し、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を除く)
(B)成分:430~460nmの波長間で発光スペクトルの極大を示す、クマリン系化合物、及びピラン系化合物からなる群から選択される1種以上の蛍光剤。
(C)成分:430nmにおける吸光係数が10以上である光ラジカル重合開始剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)成分を含み、
(A)成分の合計100重量部に対して、(B)成分を0.001~5重量部、及び(C)成分を0.01~15重量部の割合で含む、暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)成分:エチレン性不飽和基を有する化合物(但し、置換基を有しない炭素数1~7の直鎖状又は分岐状飽和炭化水素基を有し、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を除く)
(B)成分:430~460nmの波長間で発光スペクトルの極大を示す、クマリン系化合物、及びピラン系化合物からなる群から選択される1種以上の蛍光剤。
(C)成分:430nmにおける吸光係数が10以上である光ラジカル重合開始剤
【請求項2】
(B)成分が、2-(3-フェニルクマリン-7-イルアミノ)-4-クロロ-6-ジエチルアミノ-1,3,5-トリアジンである、請求項1に記載の暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
さらに、(D)成分として還元剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
(D)成分が、チオール化合物、2価のスズ化合物、及び3価のリン化合物からなる群から選択される1種以上の化合物であり、
(A)成分の合計100重量部に対して、(D)成分を0.1~20重量部の割合で含む、請求項3に記載の暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
暗部を有しない基材、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物、及び暗部を有する基材から構成されてなる積層体。
【請求項6】
暗部を有する基材に、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物を塗工した後、塗工部の側から活性エネルギー線を照射する硬化物を有する基材の製造方法。
【請求項7】
下記工程1及び工程2を順次実施する暗部を有する積層体の製造方法。
工程1:暗部を有しない基材に、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物を塗工し、暗部を有する基材と貼合するか、
又は、暗部を有する基材に、請求項1~請求項4のいずれか1項に暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物を塗工し、暗部を有しない基材と貼合する。
工程2:工程1の後、暗部を有しない基材の側か、又は暗部を有する基材の側から活性エネルギー線を照射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、活性エネルギー線が直接照射されない部位も硬化することができる暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物に関し、当該技術分野に属する。
尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型組成物は、硬化時間が短く生産性に優れ、かつ省エネルギーであるため、印刷インキ、塗料、電子部品、光学部材、及び建築材料等の様々な用途で使用されている。
しかし、活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線が当たっていない部分を硬化させることは困難であるため、立体形状の部品の裏及び遮光性を有する部分等の、いわゆる「暗部」において、活性エネルギー線硬化型組成物が未硬化になってしまい、その結果発生する不具合が大きな問題となっている。
【0003】
この問題を解決するため、暗部を硬化させることのできる活性エネルギー線硬化型組成物が従来から熱望されている。この性能は「暗部硬化性」、「影部硬化性」、「陰影部硬化性」、「暗反応硬化性」、「遮光部硬化性」及び「ダークキュア性」等と呼ばれており、これまで以下のような提案がなされている。
以下、本明細書では、これらをまとめて「暗部」及び「暗部硬化性」という。
【0004】
特許文献1には、光硬化性に優れ、且つ空気中の湿気によっても硬化することから、従来適応できなかった間隙の大きな影部(暗部)硬化が可能な組成物として、分子内にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートモノマーを主成分とし、これに光重合開始剤及びエラストマー成分を配合した硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0005】
特許文献2には、優れた影部(暗部)硬化性をもつ光硬化性組成物として、ビスフェノール型エポキシ樹脂にヒドロキシル基含有有機化合物及び光重合開始剤を配合してなる光硬化性組成物に、さらにアルコキシシランを配合した組成物が提案されている。
【0006】
特許文献3には、光の到達しない陰影部(暗部)でも十分な硬化性を示す組成物として、分子両末端にプロペニルオキシシリル基を有し、主鎖がポリシロキサン又はポリエーテルである重合体と、カチオン重合性光重合開始剤と、縮合重合促進剤とを含む光硬化性ゴム弾性組成物が提案されている。
【0007】
特許文献4には、光が到達しない陰影部(暗部)でも十分な硬化性を示す組成物として、アクリル・トリアルコキシシリル官能基又はアクリル・トリアリルオキシシリル官能基を末端基として有する特定の反応性ポリオルガノシロキサンと、トリメチルシリル基を末端基として有するシリコーンオイルと、触媒量のシリコーン湿分硬化触媒と光増感剤とを含む紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物が提案されている。
【0008】
特許文献5には、光の届きにくい乾電池ケースの開口部の端面及びその周縁部と正極と負極の間隙部の絶縁信頼性を向上させるため、可視光又は近赤外光硬化樹脂含む光硬化性組成物で被覆し、硬化・絶縁をする組成物として、a)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物、及びb)可視光又は近赤外光領域に吸収帯を有し可視光又は近赤外光を照射することによりラジカルを発生する光硬化触媒を含む光硬化性組成物が提案されており、従来の紫外線硬化型組成物と比べ硬化性に優れ、剥がれ等がないことが記載されている。
【0009】
特許文献6には、光照射により硬化反応が開始し、その後被着体の貼り合わせ等により酸素を遮断することにより硬化反応が進行する暗反応硬化組成物として、(A)重合可能不飽和二重結合を有する化合物、(B)スルフィミド化合物及びアミン化合物からなる重合促進剤、並びに(C)メタロセン錯体、β-ジケトン金属錯体、及びフタロシアニン金属錯体から選ばれる金属錯体であり、かつ、配位結合される金属がVIII属、Ib属、IIb属から選ばれる遷移金属である金属錯体を含む暗反応硬化性組成物が提案されている。
【0010】
特許文献7には、陰影部(暗部)の箇所でも異方導電接着剤が完全硬化するようにするため、(a)1分子中にグリシジル基を少なくとも2つ以上含むエポキシ樹脂化合物と、(b)光活性オニウム塩と、(c)導電性微粒子と、(d)アルコキシシラン化合物を少なくとも必須成分とする紫外線硬化性異方導電接着剤に、紫外線を照射して光活性オニウム塩からカチオン種を生成させて、異方導電接着剤がリビング重合するようにして、低い硬化温度でも完全硬化させる方法が提案されている。
【0011】
特許文献8には、遮光部(暗部)を有する透光性保護材料を画像表示ユニットに接着する際に、液状接着剤を完全に硬化させるため、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第1ベース剤と重合開始剤とを含有する第1組成物と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む第2ベース剤と重合開始剤を分解することが可能な還元剤とを含有する第2組成物とから構成される2液レドックス型接着剤が提案されている。
【0012】
特許文献9には、エネルギー線が当たらない影部(暗部)を硬化させることのできるようにするため、(A)成分:アクリルオリゴマー、(B)成分:アクリルモノマー、(C)成分:光開始剤、(D)成分:N-フェニルモルフォリン骨格を有する化合物、からなる光硬化性組成物が提案されている。
【0013】
特許文献10には、光照射により硬化する際に遮光部(暗部)も十分に硬化することができる組成物として、エタノール中10ppm溶液の光路長10mmにおける吸光度が390~420nmの範囲で0.01以上である光開始剤と、アセトニトリル中1ppm溶液の光路長10mmにおける蛍光発光強度が390~450nmの範囲で20以上である蛍光剤を含む、光硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0014】
特許文献11には、光学基材に遮光部が形成されていた場合でも、遮光領域に位置する接着剤を十分に硬化させることができる紫外線硬化型接着剤として、テトラヒドロフラン中で測定した吸光スペクトルの極大波長が250~400nmの範囲であり、且つ発光スペクトルの極大波長が350~430nmの範囲である、紫外線硬化型接着剤中で溶解している紫外線を吸収して発光する有機化合物、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型接着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平05-097963号公報
【特許文献2】特開平07-109333号公報
【特許文献3】特開平07-224132号公報
【特許文献4】特開平07-224133号公報
【特許文献5】特開平08-287890号公報
【特許文献6】特開平11-050014号公報
【特許文献7】特開2000-169821号公報
【特許文献8】特開2012-219180号公報
【特許文献9】特開2015-117265号公報
【特許文献10】特開2017-145293号公報
【特許文献11】特再公表WO13/105163号公報
【特許文献12】国際公開第WO2022/113953号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、これまで提案されている組成物には、発明者らの検討によれば、以下のような問題点が存在する。
特許文献1~4に記載された活性エネルギー線硬化性組成物は、空気中の湿気によって架橋が進行する、いわゆる「デュアルキュア」と呼ばれる組成物であるが、湿気による硬化は反応速度が低く、活性エネルギー線硬化型組成物の特長である速硬化性のメリットが大きく損なわれる。さらに、硬化時の湿度の影響が大きく、湿度が低いと硬化不良が生じて、絶縁信頼性や硬度等、最終的な性能が低下するという問題もある。
特許文献5に記載された活性エネルギー線硬化型組成物は、従来の紫外線硬化型組成物に比べれば間隙部の絶縁信頼性は向上するが、暗部硬化性は全く不十分である。
特許文献6に記載された活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線を照射してから被着体を貼合するという限られた工程でのみ使用できるものであり、用途が限定される。
特許文献7に記載された活性エネルギー線硬化型組成物は、強酸を発生するオニウム塩を含むため、金属を腐食しやすいという問題がある。又、完全硬化までに時間を要し、速硬化性のメリットが大きく損なわれる。
特許文献8に記載された活性エネルギー線硬化型組成物は、二液型であり、作業性に劣ることと、限られた工程でのみ使用できるものであり、用途が限定される。
特許文献9~11に記載された活性エネルギー線硬化型組成物は、暗部硬化性を特長とする発明であるが、発明者らの検討によれば、被着体として光反射率の低い黒色基材を用いた結果、暗部硬化性は全く不十分であった。
【0017】
本発明者は、前記課題を解決する暗部硬化性に優れる組成物として、エチレン性不飽和基を有する化合物、蛍光剤、及び還元剤を特定割合で含む活性エネルギー線硬化型組成物を見出している(特許文献12)。
特許文献12では、発光する可視光が400~500nmの波長間で極大を示す蛍光剤が、暗部硬化性の上で好ましいことが挙げられている。
特許文献12に記載の組成物は、これまでに提案された組成物の中でも、暗部硬化性に非常に優れている特長があるが、一方で、組成物の塗工層が薄くなると、暗部硬化性が低下するという問題があった。
薄い塗工層に対するの暗部硬化性を向上させるためには蛍光剤を多く配合する必要があるが、一般的に蛍光剤は結晶性が強く溶解性に劣るため、組成物を冷蔵保存すると結晶物が発生しやすいという問題があった。
冷蔵保存は、組成物を長期保管するときに品質を維持するための有効な保存方法であり、特に組成物を海外等に輸出しようとする際に用いられる。そのため、冷蔵保存での安定性は重要な品質である。
本発明者は、薄い塗工層の暗部硬化性に優れ、かつ、冷蔵保存時の安定性にも優れる暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、種々の検討の結果、エチレン性不飽和基を有する化合物、特定の発光スペクトルを有する蛍光剤、及び特定の吸光係数を有する光ラジカル開始剤を特定割合で含む活性エネルギー線硬化型組成物が、薄い塗工層の暗部硬化性に優れ、かつ、冷蔵保存時の安定性にも優れることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
本発明は、下記(A)、(B)及び(C)成分を含み、
(A)成分の合計100重量部に対して、(B)成分を0.001~5重量部、及び(C)成分を0.01~15重量部の割合で含む、暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
(A)成分:エチレン性不飽和基を有する化合物(但し、置換基を有しない炭素数1~7の直鎖状又は分岐状飽和炭化水素基を有し、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を除く)
(B)成分:430~460nmの波長間で発光スペクトルの極大を示す、クマリン系化合物、及びピラン系化合物からなる群から選択される1種以上の蛍光剤。
(C)成分:430nmにおける吸光係数が10以上である光ラジカル重合開始剤
【0020】
(B)成分としては、2-(3-フェニルクマリン-7-イルアミノ)-4-クロロ-6-ジエチルアミノ-1,3,5-トリアジンが好ましい。
【0021】
本発明の組成物としては、さらに、(D)成分として還元剤を含むものが好ましい。
さらに、(D)成分としては、チオール化合物、2価のスズ化合物、及び3価のリン化合物からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、
(A)成分の合計100重量部に対して、(D)成分を0.1~20重量部の割合で含むものが好ましい。
【0022】
本発明は、暗部を有しない基材、前記した暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物、及び暗部を有する基材から構成されてなる積層体にも関する。
【0023】
本発明は、暗部を有する基材に、前記した暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物を塗工した後、塗工部の側から活性エネルギー線を照射する硬化物を有する基材の製造方法にも関する。
【0024】
又、本発明は、下記工程1及び工程2を順次実施する暗部を有する積層体の製造方法にも関する。
工程1:暗部を有しない基材に、前記した暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物を塗工し、暗部を有する基材と貼合するか、
又は、暗部を有する基材に、前記した暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物を塗工し、暗部を有しない基材と貼合する。
工程2:工程1の後、暗部を有しない基材の側か、又は暗部を有する基材の側から活性エネルギー線を照射する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、薄い塗工層の暗部硬化性に優れ、かつ冷蔵保存時の安定性に優れる暗部硬化性に優れる活性エネルギー線硬化型組成物が提供される。
このため、本発明によれば、暗部ができやすい立体形状を有する被着体、さらに、その中でも光反射率の低い有色のプラスチック、光反射率の低い塗料等で着色されたプラスチック及び金属、並びに電子部品等に用いられる接着剤、封止剤及びコーティング剤等として好ましく用いることができる活性エネルギー線硬化型組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、暗部硬化性試験で使用した試験体の上面図を模式的に表したものである。
【
図2】
図2は、暗部硬化性試験で使用した試験体の側面図を模式的に表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
尚、本発明において、数値範囲を表す「a~b」とは、特に断りのない限り、「a以上、b以下」を意味する。
本発明に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。又、本発明に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
又、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本発明において、各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計含有量を意味する。
【0028】
本発明は、下記(A)、(B)及び(C)成分を含み、
(A)成分の合計100重量部に対して、(B)成分を0.001~5重量部、及び(C)成分を0.01~15重量部の割合で含む、暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)に関する。
(A)成分:エチレン性不飽和基を有する化合物(但し、置換基を有しない炭素数1~7の直鎖状又は分岐状飽和炭化水素基を有し、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を除く)
(B)成分:430~460nmの波長間で発光スペクトルの極大を示す、クマリン系化合物、及びピラン系化合物からなる群から選択される1種以上の蛍光剤。
(C)成分:430nmにおける吸光係数が10以上である光ラジカル重合開始剤
以下、本発明の組成物の必須成分である(A)~(C)成分及び、必要に応じて配合するその他成分、使用方法及び用途について説明する。
【0029】
1.(A)成分
(A)成分は、エチレン性不飽和基を有する化合物である。但し、(A)成分は、置換基を有しない炭素数1~7の飽和炭化水素基を有し、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「(AX)成分」という〕を除く化合物である。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、組成物の硬化性に優れることから、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がさらに好ましい。
【0030】
(A)成分としては、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であればよく、具体的には1個のエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「単官能不飽和化合物」という)、及び2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「多官能不飽和化合物」という)が挙げられる。
【0031】
1-1.単官能不飽和化合物
(A)成分において、単官能不飽和化合物の具体例としては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「単官能(メタ)アクリレート」という)、1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルアミド(以下、「単官能(メタ)アクリルアミド」という)、1個のビニル基を有する化合物、及び1個のアリル基を有する化合物が挙げられる。
但し、(A)成分としては、単官能不飽和化合物として、(AX)成分、即ち置換基を有しない炭素数1~7の直鎖状又は分岐状飽和炭化水素基を有し、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含まないものとする。
(AX)成分は、空気下でのラジカル重合性が低いため、活性エネルギー線硬化型組成物として用いると、硬化後も未反応モノマーとして硬化物中に残存しやすい。その結果、当該化合物は分子量が小さく沸点が低いため、臭気が問題となったり、硬化膜表面にべたつきが残るなど、不具合が発生するため好ましくない。
【0032】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、
オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等の炭化水素基の炭素数8が以上のアルキル(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等のポリオールのモノ(メタ)アクリレート;
イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメチロール(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する単官能(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、及びo-フェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等の芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート;
エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブチルカルビトール(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等のカルビトール(メタ)アクリレート等のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0033】
単官能(メタ)アクリレートとしては、種々の官能基を有する化合物であっても良い。官能基としては、水酸基、カルボキシ基、環状エーテル基、複素環等が挙げられる。
水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、並びに2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のマイケル付加型のダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、及びフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
環状エーテル基を有する化合物の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
複素環を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリロイルモルホリン、並びにN-(2-(メタ)アクリロキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、及びN-(2-(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミド等のイミド基を有する単官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記した化合物の中には、炭素数1~7の飽和炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートの例があるが、これら化合物は、飽和炭化水素基に置換基を有するため、(AX)成分を使用した場合の様な前記した問題はない。
【0034】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-sec-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN-n-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;
N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;並びに
N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジヘキシル(メタ)アクリルアミドのN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
ビニル系化合物としては、ビニル基を1個有する化合物が挙げられる。具体例としては、スチレン、ビニルトルエン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、及び2-エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルモノマー等が挙げられる。
【0036】
1個のアリル基を有する化合物の具体例としては、アリルアルコール等が挙げられる。
【0037】
1-2.多官能不飽和化合物
多官能不飽和化合物としては、2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「2官能(メタ)アクリレート」という〕及び3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「3官能以上(メタ)アクリレート」という〕が挙げられる。
【0038】
2官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート等の脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート;
グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の3価以上ポリオールのジ(メタ)アクリレート;
これらポリオールアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸エチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のイソシアヌル酸骨格を有するジ(メタ)アクリレート;並びに
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、及びビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート
等を挙げることができる。
この場合アルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの組み合わせ等を挙げることができる。
【0039】
3官能以上(メタ)アクリレートとしては、例えば、
グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ及びテトラアクリレートの混合物、ジトリメチロールプロパンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;並びに
これらポリオールのアルキレンオキサイド付加物のトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート;並びに
イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌル酸骨格を有するトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
前記したアルキレンオキサイド付加物の例としては、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0040】
2官能(メタ)アクリレートと3官能以上(メタ)アクリレートを併用することもできる。例えば、イソシアヌル酸エチレンオキサイド付加物のジ及びトリアクリレートの混合物等が挙げられる。
【0041】
2官能(メタ)アクリレートと3官能以上(メタ)アクリレートを併用することもできる。例えば、イソシアヌル酸エチレンオキサイド付加物のジ及びトリアクリレートの混合物等が挙げられる。
【0042】
多官能不飽和化合物としては、上述の2官能(メタ)アクリレート及び3官能以上(メタ)アクリレート以外にも、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びポリエーテル(メタ)アクリレート、多官能ポリマー、多官能ビニル化合物、及び多官能アリル化合物等が挙げられる。
以下、これらの化合物について説明する。
【0043】
1-2-1.ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートとは、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物である。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物〔以下、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」という〕、並びに、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物〔以下、「ウレタンアダクト」という〕が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートの原料化合物及び製造方法について、以下に説明する。
【0044】
(原料化合物)
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの場合は、ウレタン(メタ)アクリレートの原料化合物としてポリオール、有機ポリイソシアネート、及び水酸基含有(メタ)アクリレートを用い、ウレタンアダクトの場合は、有機ポリイソシアネート、及び水酸基含有(メタ)アクリレートを用いる。
【0045】
ポリオールの具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエン骨格を有するジオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、オキシアルキレン単位を2個以上有するポリアルキレングリコールが挙げられ、具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、カーボネートとジオールとの反応生成物が挙げられる。カーボネートの具体例としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、並びにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。又、ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びヒドロキシピバリン酸ネオペンチグリコールエステル(「以下、低分子量ジオール」という。)等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、前記の低分子量ジオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種と、酸成分との反応物が挙げられる。酸成分の具体例としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等、ポリカーボネートジオールとカプロラクトンの開環反応物等が挙げられる。
ポリエン骨格を有するジオールとしては、ポリブタジエン骨格を有するジオール、ポリイソプレン骨格を有するジオール、水素添加型ポリブタジエン骨格を有するジオール及び水素添加型ポリイソプレン骨格を有するジオール等が挙げられる。
上記ポリオールは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0046】
有機ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート及びトリイソシアネート等が挙げられる。
ジイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート及び水添キシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。
トリイソシアネートの具体例としては、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート及びビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
上記有機ポリイソシアネートは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0047】
水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単官能(メタ)アクリレート;並びに、
トリメチロールプロパンのモノ又はジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0048】
(製造方法)
ウレタン(メタ)アクリレートのうち、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの場合は、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを、ウレタン化触媒の存在下、必要に応じ反応溶媒の存在下に加熱・攪拌してウレタン化して製造することができる。
この場合、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させることもでき(以下、「1段反応」という)、ポリオール及び有機ポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有プレポリマーを製造した後、水酸基含有(メタ)アクリレートを添加することもできる(以下、「2段反応」という)。
ウレタンアダクトの場合は、有機ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレート及びウレタン化触媒の存在下、必要に応じ反応溶媒の存在下に加熱・攪拌してウレタン化して製造することができる。
【0049】
ウレタン化触媒の例としては、アミン化合物及び金属触媒が挙げられる。
アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン等が挙げられる。
金属触媒の具体例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ビスマスジオクテート、アセチルアセトン酸鉄(III)、アセチルアセトン酸亜鉛、及びアセチルアセトン酸アルミニウム等が挙げられる。
上記ウレタン化触媒は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0050】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの場合、ポリオールと有機ポリイソシアネートの割合は、最終的に得ようとするウレタン(メタ)アクリレートの構造に応じて適宜設定すれば良く、具体的には、ポリオール中の水酸基合計量1モルに対して、有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基合計量1.05~2モルが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレートの割合としては、得られるウレタン(メタ)アクリレート中にイソシアネート基が残存しない様な割合が好ましい。
前記した2段反応で製造する場合には、イソシアネート基含有プレポリマーのイソシアネート基合計量1モルに対して、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基合計量が1.0~1.5モルが好ましい。
前記した1段反応で製造する場合には、最終的に得ようとするウレタン(メタ)アクリレートの構造に基づき計算されたイソシアネート基含有プレポリマー中に残存するイソシアネート基合計量1モルに対して、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基合計量が1.0~1.5モルの割合が好ましい。
又、この場合、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基合計量1モルに対して、ポリオールと水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基合計量が1.0~1.5モルの割合が好ましい。
【0051】
ウレタンアダクトの場合、水酸基含有(メタ)アクリレートの割合は、得られるウレタン(メタ)アクリレート中にイソシアネート基が残存しない様な割合が好ましく、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基合計量1モルに対して、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基合計量が1.0~1.5モルが好ましい。
【0052】
尚、本反応により生成するウレタン(メタ)アクリレートの分子量が高くなると反応混合物が高粘度となり、攪拌が困難となる場合があるため、反応成分中に反応溶媒を配合することもできる。
反応溶媒としては、ウレタン化反応に関与しないものが好ましく、例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶剤、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等の有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒を使用する場合の配合量は、生成するウレタン(メタ)アクリレートの粘度等に応じて適宜設定すれば良いが、反応溶液中に0~70重量%となるように設定することが好ましい。
ここで、反応溶液とは、原料化合物のみを使用する場合には、原料化合物の合計量を意味し、原料化合物に加え反応溶媒等を使用する場合は、これらを含めた合計量を意味する。具体的には、ポリオール、有機ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレート及び必要に応じ用いる反応溶媒等を配合して得られた溶液の意味に用いられる。
【0053】
反応溶媒として、上記有機溶媒とともに又は上記有機溶媒に代えて、組成物の成分として使用され得るウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート化合物(以下、「その他(メタ)アクリレート」という)を配合することもできる。その他(メタ)アクリレートとしては、後述するその他成分として記載されたものを用いることができる。その他(メタ)アクリレートを配合してウレタン化反応を行い、得られたウレタン(メタ)アクリレートを組成物に配合した場合、前記有機溶媒を配合する場合と異なり、当該組成物を塗布した後、乾燥する必要がないため好ましい。
その他(メタ)アクリレートを反応成分に配合する場合の配合量は、最終的に組成物に配合するその他(メタ)アクリレートの割合に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、反応溶液中に10~70重量%、さらに10~50重量%となるように設定することが好ましい。
【0054】
ウレタン化触媒の配合量は、触媒量でよく、例えば、反応溶液の総重量に対して、0.01~1,000wtppmが好ましく、0.1~1,000がwtppmより好ましい。金属化合物の配合量を、0.01wtppm以上とすることで、ウレタン化反応を好ましく進行させることができ、1,000wtppm以下とすることで、得られるウレタン(メタ)アクリレートの着色を抑制することができる。
【0055】
ウレタン化触媒は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの場合、1段反応であれば、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの仕込時に添加し、2段反応であれば、ポリオール及び有機ポリイソシアネートの仕込時に添加することができる。
ウレタンアダクトの場合は、有機ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの仕込時に添加することができる。
【0056】
ウレタン化反応では、分子量調整の目的で、鎖延長剤を少量配合することもできる。
鎖延長剤としては、ウレタン化反応で通常使用されるものを使用することができ、前記した低分子量ポリオールと同様のものを挙げることができる。
【0057】
ウレタン化反応では、原料又は生成物の(メタ)アクリロイル基の重合を防止する目的で、重合禁止剤を使用することが好ましく、さらには含酸素ガスを反応液に導入してもよい。
重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、ベンゾキノン及びフェノチアジン等の有機系重合禁止剤、塩化銅及び硫酸銅等の無機系重合禁止剤、並びに、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の有機塩系重合禁止剤等、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル、ガルビノキシル等の安定ラジカルが挙げられる。
重合禁止剤は、一種を単独で使用しても又は二種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。重合禁止剤の割合としては、反応液の総重量に対して5~20,000wtppmが好ましく、25~3,000wtppmがより好ましい。
含酸素ガスとしては、例えば空気、酸素と窒素の混合ガス、酸素とヘリウムの混合ガス等が挙げられる。
【0058】
反応温度は、使用する原料及び目的とするウレタン(メタ)アクリレートの構造や分子量等に応じて適宜設定すれば良いが、通常25~150℃が好ましく、30~120℃がより好ましい。反応時間も、使用する原料及び目的とするウレタン(メタ)アクリレートの構造や分子量等に応じて適宜設定すれば良いが、通常1~70時間が好ましく、より好ましくは、2~30時間である。
【0059】
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量(以下、「Mw」という)は、組成物の接着力向上の観点から、500~50,000であることが好ましい。
尚、本発明において、Mwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」)という)により測定した分子量をポリスチレン換算した値であり、以下の条件で測定した値を意味する。
・検出器:示差屈折計(RI(Refractive Index)検出器)
・カラムの種類:架橋ポリスチレン系カラム
・カラムの温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン
・分子量標準物質:ポリスチレン
【0060】
上述のもの以外のウレタン(メタ)アクリレートの例としては、文献「UV・EB硬化材料」[(株)シーエムシー、1992年発行]の70~74頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0061】
1-2-2.エポキシ(メタ)アクリレート
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物であり、前記文献「UV・EB硬化材料」の74~75頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0062】
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
芳香族エポキシ樹脂としては、具体的には、レゾルシノールジグリシジルエーテル;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルフタルイミド;o-フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
これら以外にも、文献「エポキシ樹脂-最近の進歩-」(昭晃堂、1990年発行)2章や、文献「高分子加工」別冊9・第22巻増刊号 エポキシ樹脂[高分子刊行会、昭和48年発行]の4~6頁、9~16頁に記載されている様な化合物を挙げることができる。
【0063】
脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル、並びにペンタエリスリトール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ、トリ又はテトラグリジジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル;ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら以外にも、前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の3~6頁に記載されている化合物を挙げることができる。
【0064】
これら芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂以外にも、トリアジン核を骨格に持つエポキシ化合物、例えばTEPIC[日産化学(株)]、デナコールEX-310[ナガセ化成(株)]等が挙げられ、又前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の289~296頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が好ましい。
【0065】
上述のもの以外にも、文献「最新UV硬化技術」[(株)印刷情報協会、1991年発行]の53~56頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0066】
1-2-3.ポリエステル(メタ)アクリレート
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物等が挙げられる。
ここで、ポリエステルポリオールとしては、前記1-2-1.で例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。
さらに、ポリエステルポリオールとしては、ポリエステルジオールが好ましく、ジオールとジカルボン酸又はその無水物との反応物等が挙げられる。その具体例としては、前記と同様の化合物が挙げられる。
【0067】
1-2-4.ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー
ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられ、より具体的には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
1-2-5.前記以外の多官能不飽和化合物
多官能ポリマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、官能基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したものであり、前記文献「UV・EB硬化材料」の78~79頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0069】
多官能ビニル化合物としては、ビニル基を2個以上有する化合物が挙げられる。具体的には、ジビニルベンゼン、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
【0070】
多官能アリル化合物としては、アリル基を2個以上有する化合物が挙げられる。具体的には、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、及びトリアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0071】
1-2-5.好ましい(A)成分
本発明の(A)成分としては、前記した種々の化合物が挙げられるが、ウレタン(メタ)アクリレートが、組成物の硬化物が伸び率と破断強度が高く、強靭性に優れるものとなる点で好ましい。
又、ウレタン(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートとして、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート等の脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート、並びに、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌル酸骨格を有するジ又はトリ(メタ)アクリレート等が好ましい。
単官能(メタ)アクリレートとしては、イソノニルアクリレート、及びラウリルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、脂環式基を有する単官能(メタ)アクリレート、並びに芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
脂環式基を有する単官能(メタ)アクリレート、及び芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、前記した化合物等が挙げられる。
【0072】
2.(B)成分
(B)成分は、430~460nmの波長間で発光スペクトルの極大を示す、クマリン系化合物、及びピラン系化合物からなる群から選択される1種以上の蛍光剤である。
蛍光剤とは、蛍光性能(フォトルミネセンス)を持つ化合物を意味し、紫外領域の活性エネルギー線を吸収し、可視光領域において蛍光を発する化合物を意味する。
【0073】
(B)成分において、吸収する活性エネルギー線の波長範囲としては、200~450nmが好ましく、より好ましくは250~430nmであり、発光する可視光の波長範囲としては、350~700nmが好ましく、より好ましくは380~600nmである。
尚、(B)成分の吸収波長とは、(B)成分のアセトニトリル溶液(濃度0.008~1重量%、濃度は吸光度が1以下になるよう調整)を使用し、分光光度計を使用して吸収スペクトルを測定して求めた値を意味する。
【0074】
(B)成分は、発光する可視光として、430~460nmの波長間で極大を示すものを使用する。この範囲で極大を示すことで、発光する可視光が(B)成分及び(C)成分によって過剰に吸収されることを抑制できるため、暗部硬化性が向上する。
尚、(B)成分の発光波長とは、(B)成分のテトラヒドロフラン溶液(濃度0.002重量%)を使用し、分光蛍光光度計を使用して、励起光波長365nmにおける発光スペクトルを測定して求めた値を意味する。
【0075】
(B)成分としては、上記の発光波長を満たす化合物として、クマリン系化合物、及びピラン系化合物を使用する。
これら化合物は、蛍光増白剤として知られており、入手が容易で、危険性が低い等の理由で好ましい化合物である。
【0076】
430~460nmの波長間で発光スペクトルの極大を示すクマリン系化合物としては、例えば、2-(3-フェニルクマリン-7-イルアミノ)-4-クロロ-6-ジエチルアミノ-1,3,5-トリアジン(435~500nm間の極大発光波長=438nm)、及び7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸ヘキシル(435~500nm間の極大発光波長=449nm)、及び7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸エチル(435~500nm間の極大発光波長=449nm)等が挙げられる。
当該クマリン系化合物は市販品されており、市販品を使用することが可能である。例えば、昭和化学工業(株)製「HAKKOL PY-1800」、東京化成工業(株)製7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸エチル、7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0077】
430~460nmの波長間で発光スペクトルの極大を示すピラン系化合物としては、例えば、山田化学工業(株)製「EM-016」(435~500nm間の極大発光波長=436nm)等が挙げられる。当該クマリン系化合物は市販品されており、市販品を使用することが可能である。
【0078】
(B)成分としては、前記した化合物の中でも、クマリン系化合物が好ましく、2-(3-フェニルクマリン-7-イルアミノ)-4-クロロ-6-ジエチルアミノ-1,3,5-トリアジンがより好ましい。
【0079】
これら化合物は、1種のみを使用することも、又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0080】
(B)成分の含有割合としては、(A)成分の合計100重量部に対して、0.001~5重量部であり、好ましくは0.005~1重量部、更に好ましくは0.01~0.1重量部である。
(B)成分の含有割合が0.001重量部に満たない場合は、暗部硬化性が改善できず、一方、5重量部を超えると、塗膜の底部の硬化性が悪化する。
【0081】
3.(C)成分
(C)成分は、430nmにおける吸光係数が10以上である光ラジカル重合開始剤である。430nmにおける吸光係数が10に満たない光ラジカル重合開始剤は、暗部硬化性が不十分となってしまう。
尚、(C)成分の吸光係数とは、(C)成分のアセトニトリル溶液(濃度0.04~1g/L、濃度は吸光度が1以下になるよう調整)を使用し、セル長1cmで分光光度計を使用して吸収スペクトルを測定し、430nmの吸光度から下記式(1)で求めた値を意味する。
【0082】
【0083】
(C)成分の具体例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル]オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
カンファーキノン等のジケトン系化合物;
2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体及び2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9-フェニルアクリジン及び1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン化合物、ビス-(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム等のゲルマニウム系光開始剤が挙げられる。
【0084】
これらの中でも、430nmにおける吸光係数(mL/g・cm)が15以上の光重合開始剤が、暗部硬化性を向上するうえで好ましく、50以上がさらに好ましい。
具体的には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(430nmの吸光係数=208)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(430nmの吸光係数=16)等のアシルホスフィンオキサイド化合物、
2,4-ジエチルチオキサントン(430nmの吸光係数=333)等のチオキサントン系化合物;
カンファーキノン(430nmの吸光係数=112)等のジケトン化合物、
ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム(430nmの吸光係数=1027)等のチタノセン化合物、ビス-(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム(430nmの吸光係数=1464)等のゲルマニウム系光重合開始剤が、暗部硬化性が高く好ましい。
【0085】
(C)成分の割合は、(A)成分合計量100重量部に対して0.01~15重量部であり、好ましくは0.1~10重量部である。
(C)成分の割合を0.01重量部に満たないと、組成物の暗部硬化性が低下してしまい、15重量部を超過すると、塗膜の底部の硬化性が低下してしまう。
【0086】
4.暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物
本発明の暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物は、前記(A)~(C)成分を含み、(A)成分の合計100重量部に対して、(B)成分を0.001~5重量部、(C)成分を0.01~150重量部の割合で含む。
【0087】
本発明の組成物の製造方法としては、常法に従えば良く、例えば、(A)~(C)成分、必要に応じて後記するその他の成分を、攪拌及び混合することにより製造することができる。
攪拌速度及び撹拌時の温度等は、製造する組成物及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
攪拌及び混合に際しては、必要に応じて加熱することもできる。この場合の温度としては、30~100℃が好ましく、40~80℃が特に好ましい。
【0088】
本発明の組成物は、前記(A)~(C)成分を必須成分とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
その他成分としては、具体的には、還元剤〔以下、「(D)成分」という〕、(C)成分以外の光ラジカル重合開始剤〔以下、「(E)成分」という〕、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、表面改質剤及び重合禁止剤等が挙げられる。
以下、これらの成分について説明する。
尚、後記するその他の成分は、例示した化合物の1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0089】
4-1.(D)成分
(D)成分は還元剤である。還元剤とは、酸化還元反応において、他の化学種を還元させる元素又は分子を意味する。
(D)成分の具体例としては、アミン化合物、チオ尿素誘導体、金属塩、有機酸化合物、アルデヒド化合物、フェノール化合物、リン化合物及びチオール化合物等が挙げられる。
【0090】
アミン化合物としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-i-プロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-i-プロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-i-プロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸n-ブトキシエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(2-メタクリロイルオキシ)エチル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、(2-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N-ビス(メタクリロイルオキシエチル)-N-メチルアミン、N,N-ビス(メタクリロイルオキシエチル)-N-エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メタクリロイルオキシエチルアミン、N,N-ビス(メタクリロイルオキシエチル)-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、トリス(メタアクリロイルオキシエチル)アミン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、イソアミル-4-ジメチルアミノベンゾエート、及びジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0091】
チオ尿素誘導体としては、2-イミダゾリジンチオン、2-メルカプトベンズイミダゾール、チオ尿素、メチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジプロピルチオ尿素、N,N’-ジ-n-ブチルチオ尿素、N,N’-ジラウリルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、1-アセチル-2-チオ尿素、及び1-ベンゾイル-2-チオ尿素等が挙げられる。
【0092】
金属塩としては、酢酸鉄(II)、酢酸銅(I)、ギ酸鉄(II)、ギ酸銅(I)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸銅(I)、ステアリン酸鉄(II)、ステアリン酸銅(I)、ビス(2-エチルヘキサン酸)鉄(II)、(2-エチルヘキサン酸)スズ(II)、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅(I)、ナフテン酸鉄(II)、ナフテン酸銅(I)、ナフテン酸コバルト、コバルトアセチルアセトナート、バナジルアセチルアセトネート(IV)、バナジルステアレート、バナジウムナフテネート、バナジウムアセチルアセトネート(III)、バナジウムベンゾイルアセトネート、ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)、ビス(ベンゾイルアセトナト)オキソバナジウム(IV)、ビス(ステアロイルオキシ)オキソバナジウム(IV)、シュウ酸バナジル、及びナフテン酸バナジル等が挙げられる。
又、バナジウム化合物としては、5価のバナジウム化合物、例えば、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸(V)塩、トリ(アルコキシ)オキソバナジウム(V)等であってもよい。5価のバナジウム化合物は、リン酸化合物(例えば、ジブチルリン酸及びトリブチルリン酸等)等の酸性化合物の存在下であれば、組成物中で4価のバナジウム化合物を形成しうる。
【0093】
有機酸化合物としては、アスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸カリウム等のアスコルビン酸塩類;
エリソルビン酸及びエリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム等のエリソルビン酸塩類;酒石酸及び酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウム等の酒石酸塩類;
亜リン酸及び亜リン酸ナトリウム、及び亜リン酸カリウム等の亜リン酸塩類;
亜リン酸水素ナトリウム、及び亜リン酸水素カリウム等の亜リン酸水素塩類;
亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩類;
亜硫酸水素ナトリウム、及び亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸水素塩類;
チオ硫酸ナトリウム、及びチオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩類;
チオ亜硫酸ナトリウム、及びチオ亜硫酸カリウム等のチオ亜硫酸塩類;
ピロ亜硫酸ナトリウム、及びピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸塩類;並びに
ピロ亜硫酸水素ナトリウム、及びピロ亜硫酸水素カリウム等のピロ亜硫酸水素塩類;ピロリン酸ナトリウム、及びピロリン酸カリウム等のピロリン酸塩類
等が挙げられる。
前記以外にも、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム)、スルフィン酸ナトリウム誘導体、ギ酸プロピル、ギ酸イソアミル、及びギ酸ペンチル、ギ酸フェニル等が挙げられる。
【0094】
アルデヒド化合物としては、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、及びp-メトキシアルデヒド等の芳香族アルデヒド、並びにプロピオンアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、及びグリオキサール等の脂肪族アルデヒド等が挙げられ、1級アミンとの縮合物であるアルジミン化合物として用いることが好ましい。
【0095】
フェノール系化合物としては、カテコール、レゾルシノール、p-ハイドロキノン、ピロカテコール、及びカテコールアミン等が挙げられる。
【0096】
リン化合物としては、還元性を有する3価の化合物が好ましい。
3価のリン化合物としては、具体的には、トリエチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン、及びトリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;並びに
トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラ(C12~C15アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシルホスファイト)、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、及びトリイソデシルホスファイト等のホスファイトが挙げられる。
【0097】
チオール化合物は、分子内にチオール基を1個以上含む化合物であり、具体的には下記が挙げられる。
【0098】
分子内にチオール基を1個有する化合物としては、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン及びt-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
【0099】
分子内にチオール基を2個有する化合物としては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、ジチオエリスリトール、2,3-ジメルカプトサクシン酸、1,2-ベンゼンジチオール、1,2-ベンゼンジメタンチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、3,4-ジメルカプトトルエン、4-クロロ-1,3-ベンゼンジチオール、2,4,6-トリメチル-1,3-ベンゼンジメタンチオール、4,4’-チオジフェノール、2-ヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-ジエチルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-シクロヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-3-メルカプトプロポキシフェニルプロパン)及び1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられる。
【0100】
分子内にチオール基を3個有する化合物としては、例えば、1,2,6-ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5-トリチオシアヌル酸、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、及びトリス[(3-メルカプトプロピオニロキシ)-エチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0101】
分子内にチオール基を4個有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等が挙げられる。
【0102】
分子内にチオール基を5個以上有する化合物としては、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートモノマーと(メタ)アクリレートモノマーのラジカル重合反応した後、メルカプト有機酸とのエステル化反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0103】
(D)成分としては、これら化合物の中でも、チオール化合物、金属塩及びリン化合物が暗部硬化性を向上できるため好ましく、それらの中でも、チオール化合物、2価のスズ化合物、及び3価のリン化合物がより好ましい。
これら化合物は、1種のみを使用することも、又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0104】
(D)成分の含有割合としては、(A)成分の合計100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、より好ましくは1~15重量部、特に好ましくは5~10重量部である。
(D)成分の含有割合を0.1重量部以上とすることで、暗部硬化性に優れるものとすることができ、一方、20重量部以下とすることで、組成物の貯蔵安定性に優れ、硬化物の弾性率に優れるものとすることができる。
【0105】
4-2.(E)成分
本発明の組成物は、前記(C)成分を必須成分とするものであるが、活性エネルギー線が照射された部分の表面硬化性をより向上させるため、(E)成分である(C)成分以外の光ラジカル重合開始剤を配合することができる。
又、(E)成分の種類によっては、(E)成分の光分解を促進する増感剤として機能するものもある。
【0106】
(E)成分の具体例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)]フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル-2-ベンゾフェノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフォニル)プロパン-1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;並びに
エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート、及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0107】
これらの中でも、芳香族ケトン化合物が、活性エネルギー線が照射された部分の表面硬化性をより向上させるうえで好ましい。
具体的には、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパンー1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパンー1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)]フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルーフェニル)-ブタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が、表面硬化性が高く好ましい。
【0108】
(E)成分の割合は、(A)成分合計量100重量部に対して0.01~15重量部が好ましく、より好ましくは0.1~10重量部である。
(E)成分の割合を0.01重量部以上にすることで、組成物の表面硬化性を十分改善することができ、15重量部以下することで、塗膜の底部の硬化性を改善することができる。
【0109】
4-3.酸化防止剤
酸化防止剤は、硬化物の耐熱性、耐候性等の耐久性を向上させる目的で配合してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ジt-ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール類を挙げることができる。市販されているものとしては、(株)ADEKA製のAO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-70、AO-80等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、チオエーテル系化合物が挙げられ、市販品としては(株)ADEKA製AO-23、AO-412S、AO-503A等が挙げられる。
これらは1種を用いても2種類以上を用いてもよい。これら酸化防止剤の好ましい組合せとしては、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤の併用が挙げられる。
酸化防止剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、(A)成分合計量100重量部に対して0.01~5重量部が好ましく、より好ましくは0.1~1重量部である。
含有割合を0.1重量部以上とすることで、組成物の耐久性を向上させることができ、一方、5重量部以下とすることで、硬化性や密着性を良好にすることができる。
【0110】
4-4.紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、硬化物の耐光性を向上させる目的で配合してもよい。
紫外線吸収剤としては、BASF社製TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN479等のトリアジン系紫外線吸収剤や、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
紫外線吸収剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、(A)成分合計量100重量部に対して0.01~5重量部が好ましく、より好ましくは0.1~1重量部である。含有割合を0.01重量部以上とすることで、硬化物の耐光性を良好なものとすることができ、一方、5重量部以下とすることで、組成物の硬化性に優れるものとすることができる。
【0111】
4-5.シランカップリング剤
シランカップリング剤は、硬化物と基材との界面接着強度を改善する目的で配合してもよい。
シランカップリング剤としては、基材との接着性向上に寄与できるものであれば特に特に限定されるものではない。
【0112】
シランカップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、前記した化合物の1種のみを使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0113】
シランカップリング剤の配合割合は、目的に応じて適宜設定すれば良く、(A)成分合計量100重量部に対して0.1~10重量部が好ましく、より好ましくは1~5重量部である。
配合割合を0.1重量部以上にすることで、組成物の接着力を向上させることができ、一方、10重量部以下とすることで、接着力の経時変化を防止することができる。
【0114】
4-6.表面改質剤
本発明の組成物は、塗布時のレベリング性を高める目的や、硬化物の滑り性を高めて耐擦傷性を高める目的等のため、表面改質剤を添加してもよい。
表面改質剤としては、表面調整剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、スベリ性付与剤及び防汚性付与剤等が挙げられ、これら公知の表面改質剤を使用することができる。
それらのうち、シリコーン系表面改質剤及びフッ素系表面改質剤が好適に挙げられる。具体例としては、シリコーン鎖とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマー、シリコーン鎖とポリエステル鎖とを有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマー、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー、並びに、パーフルオロアルキルエーテル鎖とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー等が挙げられる。
又、滑り性の持続力を高める等の目的で、分子中にエチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する表面改質剤を使用してもよい。
【0115】
表面改質剤の含有割合は、(A)成分の合計量100重量部に対して、0.01~1.0重量部であることが好ましい。上記範囲であると、硬化膜の表面平滑性に優れる。
【0116】
4-7.重合禁止剤
本発明の組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的等で、重合禁止剤を添加することができる。
重合禁止剤としては、有機系重合禁止剤、無機系重合禁止剤、及び有機塩系重合禁止剤が挙げられる。
有機系重合禁止剤の具体例として、ハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルカテコール等のフェノール化合物、ベンゾキノン等のキノン化合物、ガルビノキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等の安定ラジカル、フェノチアジン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム等が挙げられる。
無機系重合禁止剤の具体例として、塩化銅、硫酸銅及び硫酸鉄が挙げられる。
有機塩系重合禁止剤の具体例として、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン・アルミニウム塩、アンモニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン等のニトロソ化合物、ジブチルジチオカルバミン酸銅が挙げられる。
【0117】
これらの中でも、組成物の着色が小さく、組成物の増粘やゲル化を防止して保存安定性を高くできる点で、安定ラジカル、及びニトロソ化合物が好ましい。
重合禁止剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、(A)成分全量100重量部に対して、0.0005~1重量部が好ましく、より好ましくは0.001~0.5重量部である。含有割合を0.0005重量部以上とすると、組成物の熱安定性や光安定性を高めることができ、1重量部以下とすることで、組成物の光硬化性を優れたものにすることができる。
【0118】
5.使用方法
本発明の組成物の使用方法としては、常法に従えば良い。
本発明の組成物をコーティング剤として使用する場合は、例えば、基材に本発明の組成物を塗工し、塗工面に活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
本発明の組成物を接着剤として使用する場合は、例えば、基材に本発明の組成物を塗工し、他の基材と貼合した後、いずれかの基材の側から活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
【0119】
本発明の組成物は、暗部硬化性を有する活性エネルギー線硬化型組成物として使用する。
当該組成物をコーティング剤として使用する場合は、例えば、暗部を有する基材に本発明の組成物を塗工した後、塗工部の側から活性エネルギー線を照射することを含む、硬化物を有する基材の製造方法等が挙げられる。
当該方法によれば、暗部を有する基材の表面に本発明の組成物の硬化物が形成されてなる基材を製造することができる。
この場合の暗部を有する基材の具体例としては、本発明の組成物を防湿コーティング剤等として使用する場合において、電子部品等が挙げられ、電子部品を構成するIC(集積回路)や抵抗等の裏側が暗部に該当する。
当該組成物を接着剤として使用する場合の使用方法としては、暗部を有する積層体の製造方法が挙げられる。当該製造方法は、例えば、下記工程1及び工程2を順次含むことが好ましい。
工程1:暗部を有しない基材に、本発明の組成物を塗工し、前記暗部を有しない基材の本発明の組成物を塗工した側と暗部を有する基材とを貼合するか、又は、暗部を有する基材に、本発明の組成物を塗工し、前記暗部を有する基材の本発明の組成物を塗工した側と暗部を有しない基材とを貼合する。
工程2:工程1の後、前記暗部を有しない基材の側か、又は前記暗部を有する基材の側から活性エネルギー線を照射する。
当該方法によれば、暗部を有しない基材、本発明の組成物の硬化物、及び暗部を有する基材から構成されてなる暗部を有する積層体を製造することができる。
【0120】
本発明の組成物を硬化させるための活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線及び電子線等が挙げられるが、紫外線が好ましい。
紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線(UV)無電極ランプ、発光ダイオード(LED)等が挙げられる。
照射エネルギーは、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すれば良く、一例として高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、照射エネルギーで50~50,000mJ/cm2が好ましく、200~10,000mJ/cm2がより好ましい。
【0121】
暗部硬化性を向上させるためには、被着体として光反射率の高い基材を用いることが好ましい。具体的には、プラスチック、及び無機材料が挙げられる。
【0122】
プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル系ポリマー、アクリル/スチレン共重合体、脂肪族ポリアミド(ナイロン)、芳香族ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、透明ABS樹脂、塩素化ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、及びトリアセチルセルロース等のセルロースエステルが挙げられる。
【0123】
無機材料としては、例えばガラス等の窯業系材料、アルミニウム、ステンレス、銅、銀、鉄、錫、及びクロム等の金属、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物等が挙げられる。
【0124】
本発明の組成物は、光反射率の低い基材を用いた場合の暗部硬化性に優れ、このような材料を使用した場合にも効果的に暗部硬化することができる。
本発明における光反射率の低い基材とは、入射光に対する反射光の割合である光反射率が10%未満の基材を意味する。尚、本発明において、光反射率が1%未満、又はほぼゼロである黒色の基材等の場合は、「非反射性基材」ともいう。
光反射率の低い基材としては、光反射率の低い色で着色されたプラスチック、金属、並びに、表面に光反射率の低い色で着色されたコーティング層を有するプラスチック及び金属等が挙げられる。
【0125】
又、暗部硬化性を向上させるためには、組成物の塗工面に対して、斜め又は横から活性エネルギー線を照射することも効果的である。
【0126】
図1は、暗部硬化性試験で使用した試験体の上面図を模式的に表したものである。試験体は、非反射性基材1及び打抜部(a)を有する。
図2は、暗部硬化性試験で使用した試験体の側面図を模式的に表したものである。試験体は、非反射性基材1、非反射性又は反射性基材2、及び遮光部材3を有する。
非反射性基材1としては、黒色のPET(ポリエチレンテレフタレート)、及びNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)等が挙げられる。非反射性又は反射性基材2としては、非反射性基材の場合は黒色のPET及びNBR等が挙げられ、反射性基材の場合はアルミ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。遮光部材3としては、レジストパターンが挙げられる。
暗部硬化性試験は、例えば下記の手順で行うことができる。
非反射性基材1を、所定の形状の抜型で打ち抜くことで打抜部(a)を設ける。打抜部(a)を有する非反射性基材1の片面に、非反射性又は反射性基材2を貼り付けて、凹形状をもつ試料を作製する。この凹形状の部分に、活性エネルギー線硬化型組成物を流し込み、遮光部材3をラミネートして、暗部硬化性の試験体とする。次に、この試験体に、紫外線照射することで硬化物を作製する。得られた硬化物から未硬化物を除去し、紫外線照射した部分から未照射部に向かって伸びている硬化部分の長さを測定することで、暗部硬化性の指標とする。
【0127】
6.用途
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物、好ましくは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、活性エネルギー線が直接照射されない部位も硬化させられる、いわゆる暗部硬化性に優れた活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
本発明の組成物は、暗部硬化性に優れるため、暗部ができやすい立体形状を有する被着体の接着、封止及びコーティング等に好ましく使用することができる。特に、本発明の組成物は、光反射率の低い基材を用いた場合の暗部硬化性に優れるため、光反射率の低い有色のプラスチック、光反射率の低い塗料等で着色されたプラスチック及び金属、並びに電子部品等を基材とする接着剤、封止剤、及びコーティング剤として好適である。さらに、本発明の組成物は、暗部ができやすい立体形状を有する光反射率の低い被着体の接着、封止及びコーティング等に好ましく使用することができる。
暗部硬化性が要求される用途としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及び有機ELディスプレイ等の表示装置の製造における各種部材の接着及びシール、基板と電子素子の接着、電子部品の防湿絶縁コーティング、並びに、電池ケース製造における開口部、端面及びその周辺部の接着及びシール等が挙げられる。
具体的には、表示装置の製造においては、構成部材の接着において、光が到達しない暗部が生じる。より具体的には、タッチパネルの透明保護板には、表示画像のコントラストを向上させるために最外の縁に帯状の遮光部が形成される。この遮光部は黒色樹脂が用いられることが一般的であり、光反射率は1%未満と非常に低いため、高い暗部硬化性が求められる。
又、他の具体例として、電子部品の防湿絶縁コーティング剤では、電子部品であるICや抵抗等の裏側に液体である組成物が回り込み、光が到達しない暗部が生じる。これらの電子部品は黒色であることが多く、光反射率は1%未満と非常に低いため、高い暗部硬化性が求められる。
【実施例0128】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
尚、以下において「部」とは重量部を意味する。
【0129】
1.実施例1~同17、比較例1~同3
1)活性エネルギー線硬化型組成物の製造
下記表1に示す化合物を表1に示す割合にて60℃で撹拌及び混合し、活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。
【0130】
2)評価方法
得られた組成物を使用し、下記評価を行った。それらの結果を表2に示す。
【0131】
(1)暗部硬化性(非反射性基材)
黒色の0.1mm厚ポリエチレンテレフタレートフィルム〔藤森工業(株)製フィルムバイナHTA、幅20mm×長さ100mm。以下、「PETフィルム」という〕(
図1の1)を、幅5mm×長さ50mmの長方形の抜型で打ち抜いた(
図1の(a))。その後、このPETフィルム〔
図2の1〕を黒色の0.1mm厚PETフィルム(幅100mm×長さ200mm)〔
図2の2〕に両面テープを用いて貼り付け、凹形状をもつプラスチック試料を作製した。
この凹形状の部分に、得られた活性エネルギー線硬化型組成物を流し込み、泡が入らないようにO.D.値(光学濃度)=4以上のレジストパターン(遮光部)(
図2の3)を、端から10mmを残してラミネートして、暗部硬化性の試験体とした。
次に、この試験体に、アイグラフィックス(株)製メタルハライドランプを用い、365nmを中心とする紫外線領域(UV-A)の強度が200mW/cm
2、積算光量1,500mJ/cm
2になるよう調整して紫外線照射した。この作業を5回繰り返し、合計積算光量が7,500mJ/cm
2になるよう硬化物を作製した。
得られた硬化物を、すぐにメタノールで洗浄し、未硬化物を除去した。その後、紫外線照射した部分から未照射部に向かって伸びている硬化部分の長さを測定することで、暗部硬化性の指標とした。
【0132】
(2)冷蔵保存安定性
得られた活性エネルギー線硬化型組成物を、完全に遮光した状態で冷蔵(4℃)保管し、液に異常(増粘、ゲル化、分離、結晶化、白濁)が生じるまでの日数を計測し、保存安定性の指標とした。
【0133】
【0134】
尚、表1における数字は部数を意味し、略号は下記を意味する。
(A)成分
・M-1200:ポリエステル系ウレタンアクリレート、重量平均分子量0.4万、東亞合成(株)製「アロニックスM-1200」
・UN-6305:ポリエーテル系ウレタンアクリレート、重量平均分子量2.7万、根上工業(株)製「アートレジンUN-6305」
・UN-7600:ポリエステル系ウレタンアクリレート、重量平均分子量1.2万、根上工業(株)製「アートレジンUN-7600」
・UN-9200A:ポリカーボネート系ウレタンアクリレート、重量平均分子量1.5万、根上工業(株)製「アートレジンUN-9200A」
・TEAI-1000:水添ポリブタジエン系ウレタンアクリレート、数平均分子量0.2万、日本曹達(株)製「TEAI-1000」
・NDDA:1,9-ノナンジオールジアクリレート、日立化成(株)製「ファンクリルFA-129AS」
・M-313:イソシアヌル酸エチレンオキサイド付加物のジ及びトリアクリレートの混合物、東亞合成(株)製「アロニックスM-313」
・M-101:フェノールエチレンオキサイド付加物のモノアクリレート、東亞合成(株)製「アロニックスM-101A」
・IBXA:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製「IBXA」
・LA:ラウリルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製「LA」
・TMCHA:3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製「ビスコート#196」
【0135】
(B)成分
・PY-1800:2-(3-フェニルクマリン-7-イルアミノ)-4-クロロ-6-ジエチルアミノ-1,3,5-トリアジン、昭和化学工業(株)製「HAKKOL PY-1800」、435~500nm間の極大発光波長=438nm
・EM-016:ピラン系蛍光剤、山田化学工業(株)製「EM-016」、435~500nm間の極大発光波長=436nm
・HDC:7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸ヘキシル、東京化成工業(株)製、435~500nm間の極大発光波長=449nm
【0136】
(B)’成分〔(B)成分以外の蛍光剤〕
・OB:2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)、BASFジャパン社製「Tinopal OB」、435~500nm間の極大発光波長なし(400~500nmの間に432nmの発光極大あり)
尚、(B)成分及び(B)’成分の発光波長は、テトラヒドロフラン溶液(濃度0.002重量%)をそれぞれ調製し、分光蛍光光度計FP-750〔日本分光(株)製〕を使用して、励起光波長365nmで各化合物の発光スペクトルを測定して求めた。
【0137】
(C)成分
・BAPO:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、IGMレジン製「Omnirad 819」、430nmのモル吸光係数=87mL/g・cm
・UV-784:ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、大同化成工業(株)製「DAIDO UV-CURE 784」、430nmのモル吸光係数=549mL/g・cm
・IV:ビス-(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム、IVOCLAR VIVADENT社製「IVOCERIN」、430nmのモル吸光係数=587mL/g・cm
【0138】
(D)成分
・TEH:2-エチルヘキサン酸スズ(II)、東京化成工業(株)製試薬
・BD-1:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、昭和電工(株)製「カレンズBD-1」
・TPP:トリフェニルホスフィン、北興化学工業(株)製「ホクコーTPP」
・TIDP:トリイソデシルホスファイト、(株)ADEKA製「アデカスタブ3010」
【0139】
その他成分
・Q-1301:N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、富士フイルム和光純薬(株)製「クペロンQ-1301」
【0140】
【0141】
3)結果
実施例1~同17の結果から明らかなように、本発明の組成物は、薄い塗工層における暗部硬化性に優れ、かつ冷蔵保存安定性に優れるものであった。
これに対して、(B)成分ではない蛍光剤を含む比較例1の組成物は薄い塗工層における暗部硬化性には優れるものの、冷蔵保存安定性が7日であり、冷蔵保存が困難な組成物であった。又、(B)及び(C)成分を含まない比較例2の組成物は、全く暗部硬化性を示さなかった。
本発明の組成物は、暗部硬化性が要求される種々の用途に使用可能であり、接着剤、封止剤、及びコーティング剤に好ましく使用することができる。具体的には、光学フィルム・部材の接着剤、電子材料の接着剤、封止剤及び防湿コーティング剤等が挙げられる。
光学フィルム・部材の接着剤及び封止剤としては、特に液晶表示素子用シール剤、並びに、表示体とタッチパネル、及びカバーガラスとタッチパネルの貼り合わせ等が挙げられる。