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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104331
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 201N
H01G4/30 513
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008474
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】河崎 淳一
(72)【発明者】
【氏名】福井 章二
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC36
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ13
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】内部電極層の短絡を抑制することができる積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサ1は、複数の誘電体層20と複数の内部電極層30とが積層された積層体10と、積層体10の2つの端面の各々に配置された2つの外部電極40とを備える。長さ方向Lの中央部において、幅方向Wおよび積層方向Zを含む面で見て、複数の内部電極層30のうち、積層方向Zの中央側の90%以上の内部電極層30の各々における幅方向Wの端部は、第2の主面TS2側に湾曲している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層体であって、積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、前記積層方向に交差する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、前記積層方向および前記幅方向に交差する長さ方向に相対する2つの端面とを有した積層体と、
前記積層体の前記2つの端面の各々に配置された2つの外部電極と、
を備え、
前記長さ方向の中央部において、前記幅方向および前記積層方向を含む面で見て、
前記複数の内部電極層のうち、前記積層方向の中央側の90%以上の内部電極層の各々における前記幅方向の端部は、前記第2の主面側に湾曲している、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記複数の内部電極層の前記幅方向の寸法のばらつきは、標準偏差で5%以内である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記複数の内部電極層における前記幅方向の端部は、前記積層方向において3μmの範囲内に位置するように揃っている、請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記複数の内部電極層のうち、前記幅方向の端部が前記第2の主面側に湾曲している、前記積層方向の中央側の90%以上の内部電極層は、前記第2の主面側の最外層の内部電極層を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記積層体は、前記複数の内部電極層の前記第1の側面側の端と前記第1の側面との間に配置された第1のサイドマージン部と、前記複数の内部電極層の前記第2の側面側の端と前記第2の側面との間に配置された第2のサイドマージン部とを有し、
前記第1のサイドマージン部および前記第2のサイドマージン部の各々は、前記幅方向に配置された複数の誘電体層を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記第1のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第1の側面側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きく、
前記第2のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第2の側面側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記第1のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第1の側面側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きく、
前記第2のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第2の側面側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記第1のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第1の側面側の最外層に含まれる空隙は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最内層に含まれる空隙よりも多く、
前記第2のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第2の側面側の最外層に含まれる空隙は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最内層に含まれる空隙よりも多い、
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記第1のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第1の側面側の最内層に含まれる空隙は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最外層に含まれる空隙よりも多く、
前記第2のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第2の側面側の最内層に含まれる空隙は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最外層に含まれる空隙よりも多い、
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
前記積層体は、前記複数の内部電極層の前記第1の側面側の端と前記第1の側面との間に配置された第1のサイドマージン部と、前記複数の内部電極層の前記第2の側面側の端と前記第2の側面との間に配置された第2のサイドマージン部とを有し、
前記第1のサイドマージン部および前記第2のサイドマージン部の各々は、前記幅方向に配置された1つの誘電体層を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項11】
前記第1のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第1の側面側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きく、
前記第2のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第2の側面側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項12】
前記第1のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第1の側面側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きく、
前記第2のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第2の側面側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項13】
前記第1のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第1の側面側の領域に含まれる空隙は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる空隙よりも多く、
前記第2のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第2の側面側の領域に含まれる空隙は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる空隙よりも多い、
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項14】
前記第1のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第1の側面側の領域に含まれる空隙は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる空隙よりも多く、
前記第2のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第2の側面側の領域に含まれる空隙は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる空隙よりも多い、
請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項15】
前記誘電体層の厚さは、0.3μm以上0.5μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料からなる複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層体と、積層体の端面に配置された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサは、積層体の側面において、複数の誘電体層と複数の内部電極層とを挟み込むように配置され、セラミック材料からなる誘電体で構成されたサイドマージン部を備えている。
【0003】
特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサでは、サイドマージン部を形成する際、積層体の主面側の内部電極層の幅方向の端部が主面側に湾曲する。これにより、角部近傍の内部電極層の短絡不良を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-98346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、幅方向の端部が湾曲する現象は、必ずしも積層体の主面側の内部電極層のみに生じるとは限らず、全ての内部電極層に生じる可能性がある。また、それらの湾曲方向は、積層体の主面側に定まるとは限らず、様々な方向にばらつく可能性がある。内部電極層の幅方向の端部の湾曲方向がばらつくと、内部電極層の短絡が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、内部電極層の短絡を抑制することができる積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層体であって、積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、前記積層方向に交差する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、前記積層方向および前記幅方向に交差する長さ方向に相対する2つの端面とを有した積層体と、前記積層体の前記2つの端面の各々に配置された2つの外部電極とを備える。前記長さ方向の中央部において、前記幅方向および前記積層方向を含む面で見て、前記複数の内部電極層のうち、前記積層方向の中央側の90%以上の内部電極層の各々における前記幅方向の端部は、前記第2の主面側に湾曲している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極層の短絡を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサのII-II線断面図(LT断面)である。
図3図1に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線断面図(WT断面)である。
図4】本実施形態の変形例に係る積層セラミックコンデンサの断面図であって、図1に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線断面相当の断面図(WT断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0011】
<積層セラミックコンデンサ>
図1は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図であり、図2は、図1に示す積層セラミックコンデンサのII-II線断面図であり、図3は、図1に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線断面図である。図1図3に示す積層セラミックコンデンサ1は、積層体10と外部電極40とを備える。外部電極40は、第1の外部電極41と第2の外部電極42とを含む。
【0012】
図1図3には、XYZ直交座標系が示されている。X方向は積層セラミックコンデンサ1および積層体10の長さ方向Lであり、Y方向は積層セラミックコンデンサ1および積層体10の幅方向Wであり、Z方向は積層セラミックコンデンサ1および積層体10の積層方向Tである。これにより、図2に示す断面はLT断面とも称され、図3に示す断面はWT断面とも称される。
【0013】
なお、長さ方向L、幅方向Wおよび積層方向Tは、必ずしも互いに直交する関係になるとは限らず、互いに交差する関係であってもよい。
【0014】
積層体10は、略直方体形状であり、積層方向Tに相対する第1の主面TS1および第2の主面TS2と、幅方向Wに相対する第1の側面WS1および第2の側面WS2と、長さ方向Lに相対する第1の端面LS1および第2の端面LS2とを有する。
【0015】
積層体10の角部および稜線部には、丸みがつけられていると好ましい。角部は、積層体10の3面が交る部分であり、稜線部は、積層体10の2面が交る部分である。
【0016】
図2および図3に示すように、積層体10は、積層方向Tに積層された複数の誘電体層20と複数の内部電極層30とを有する。また、積層体10は、積層方向Tにおいて、内層部100と、内層部100を挟み込むように配置された第1の外層部101および第2の外層部102とを有する。
【0017】
内層部100は、複数の誘電体層20の一部と複数の内部電極層30とを含む。内層部100では、複数の内部電極層30が誘電体層20を介して対向して配置されている。内層部100は、静電容量を発生させ実質的にコンデンサとして機能する部分である。
【0018】
第1の外層部101は、積層体10の第1の主面TS1側に配置されており、第2の外層部102は、積層体10の第2の主面TS2側に配置されている。より具体的には、第1の外層部101は、複数の内部電極層30のうち第1の主面TS1に最も近い内部電極層30と第1の主面TS1との間に配置されており、第2の外層部102は、複数の内部電極層30のうち第2の主面TS2に最も近い内部電極層30と第2の主面TS2との間に配置されている。第1の外層部101および第2の外層部102は、内部電極層30を含まず、複数の誘電体層20のうち内層部100のための一部以外の部分をそれぞれ含む。第1の外層部101および第2の外層部102は、内層部100の保護層として機能する部分である。
【0019】
また、図3に示すように、積層体10は、幅方向Wにおいて、内層部100、第1の外層部101および第2の外層部102、すなわち複数の誘電体層20および複数の内部電極層30、を挟み込むように配置された第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12を有する。なお、第1のサイドマージン部W11と第2のサイドマージン部W12とに挟まれた部分であって、複数の誘電体層20および複数の内部電極層30を含む部分を、電極対向部W10ともいう。
【0020】
第1のサイドマージン部W11は、積層体10の第1の側面WS1側に配置されており、第2のサイドマージン部W12は、積層体10の第2の側面WS2側に配置されている。より具体的には、第1のサイドマージン部W11は、内部電極層30の第1の側面WS1側の端と第1の側面WS1との間に位置し、第2のサイドマージン部W12は、内部電極層30の第2の側面WS2側の端と第2の側面WS2との間に位置する。
第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12は、誘電体で構成される。第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12は、内部電極層30の保護層として機能する部分である。なお、第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12は、サイドギャップまたはWギャップともいう。
【0021】
誘電体層20の材料としては、例えば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、またはCaZrO等を主成分として含む誘電体セラミックを用いることができる。また、誘電体層20の材料としては、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、またはNi化合物等を副成分として添加されてもよい。
より具体的には、誘電体層20は、複数の誘電体グレインを含む。誘電体グレインは、Ba、Tiを含むペロブスカイト型化合物などのチタン酸バリウム系セラミックである。誘電体グレインは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうち少なくとも1種を副成分として含んでいてもよい。
【0022】
誘電体層20の厚さは、特に限定されないが、例えば0.3μm以上0.5μm以下であると好ましく、0.35μm以上0.45μm以下であると更に好ましい。誘電体層20の枚数は、特に限定されないが、例えば100枚以上1000枚以下であると好ましい。なお、この誘電体層20の枚数は、内層部の誘電体層の枚数と外層部の誘電体層の枚数との総数である。
また、第1の外層部101および第2の外層部102の各々の幅方向Wの厚さは、特に限定されないが、例えば5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0023】
第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12を構成する誘電体の材料としては、同様に、例えば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、またはCaZrO等を主成分として含む誘電体セラミックを用いることができる。また、第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12を構成する誘電体の材料としては、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、またはNi化合物等を副成分として添加されてもよい。
より具体的には、第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12を構成する誘電体は、複数の誘電体グレインを含む。誘電体グレインは、Ba、Tiを含むペロブスカイト型化合物などのチタン酸バリウム系セラミックである。誘電体グレインは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうち少なくとも1種を副成分として含んでいてもよい。
【0024】
第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12の各々の厚さは、特に限定されないが、例えば3μm以上30μm以下であると好ましい。第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12の各々における誘電体は、特に限定されないが、1層構造であってもよいし、2層以上の複数層構造であってもよい。なお、サイドマージン部内で極端に誘電体グレインの粒径が異なり、複数層構造ではあるが、その境界があいまいで実質的に光学顕微鏡では1層に見える場合があるが、この場合も複数層構造として扱う。
【0025】
図2および図3に示すように、複数の内部電極層30は、複数の第1の内部電極層31および複数の第2の内部電極層32を含む。複数の第1の内部電極層31および複数の第2の内部電極層32は、積層体10の積層方向Tに交互に配置されている。
【0026】
第1の内部電極層31は、対向電極部311と引出電極部312とを含み、第2の内部電極層32は、対向電極部321と引出電極部322とを含む。
【0027】
対向電極部311と対向電極部321とは、積層体10の積層方向Tにおいて誘電体層20を介して互いに対向している。対向電極部311および対向電極部321の形状は、特に限定されず、例えば略矩形状であればよい。対向電極部311および対向電極部321の幅方向Wの寸法Dwのばらつきは、標準偏差で5%以内である。対向電極部311および対向電極部321における幅方向Wの端部Pw1またはPw2は、幅方向において3μmの範囲に位置するように揃っている。対向電極部311と対向電極部321とは、静電容量を発生させ実質的にコンデンサとして機能する部分である。
【0028】
引出電極部312は、対向電極部311から積層体10の第1の端面LS1に向けて延在し、第1の端面LS1において露出している。引出電極部322は、対向電極部321から積層体10の第2の端面LS2に向けて延在し、第2の端面LS2において露出している。引出電極部312および引出電極部322の形状は、特に限定されず、例えば略矩形状であればよい。
【0029】
これにより、第1の内部電極層31は第1の外部電極41に接続され、第1の内部電極層31と、積層体10の第2の端面LS2、すなわち第2の外部電極42、との間にはギャップが存在する。また、第2の内部電極層32は第2の外部電極42に接続され、第2の内部電極層32と、積層体10の第1の端面LS1、すなわち第1の外部電極41、との間にはギャップが存在する。
【0030】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、金属Niを主成分として含む。また、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、例えば、Cu、Ag、Pd、またはAu等の金属、またはAg-Pd合金等の、それらの金属の少なくとも一種を含む合金、から選ばれる少なくとも1つを主成分として含んでもよいし、主成分以外の成分として含んでもよい。更に、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、誘電体層20に含まれるセラミックと同一組成系の誘電体の粒子を主成分以外の成分として含んでいてもよい。なお、本明細書において、主成分の金属とは、EDX分析にて、最も広範に検出される金属成分であると定める。
【0031】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の厚さは、特に限定されないが、例えば0.35μm以上0.42μm以下であると好ましい。第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の枚数は、特に限定されないが、例えば100枚以上1000枚以下であると好ましい。
【0032】
図2に示すように、積層体10は、長さ方向Lにおいて、内部電極層30の第1の内部電極層31と第2の内部電極層32とが対向する電極対向部L10と、第1のエンドマージン部L11と、第2のエンドマージン部L12とを有する。第1のエンドマージン部L11は、電極対向部L10と第1の端面LS1との間に位置し、第2のエンドマージン部L12は、電極対向部L10と第2の端面LS2との間に位置する。より具体的には、第1のエンドマージン部L11は、第2の内部電極層32の第1の端面LS1側の端と第1の端面LS1との間に位置し、第2のエンドマージン部L12は、第1の内部電極層31の第2の端面LS2側の端と第2の端面LS2との間に位置する。第1のエンドマージン部L11は、第2の内部電極層32を含まず、第1の内部電極層31および誘電体層20を含み、第2のエンドマージン部L12は、第1の内部電極層31を含まず、第2の内部電極層32および誘電体層20を含む。第1のエンドマージン部L11は、第1の内部電極層31の第1の端面LS1への引出電極部として機能する部分であり、第2のエンドマージン部L12は、第2の内部電極層32の第2の端面LS2への引出電極部として機能する部分である。第1のエンドマージン部L11および第2のエンドマージン部L12は、エンドギャップまたはLギャップともいう。
【0033】
なお、電極対向部L10には、上述した第1の内部電極層31の対向電極部311および第2の内部電極層32の対向電極部321が位置する。また、第1のエンドマージン部L11には、上述した第1の内部電極層31の引出電極部312が位置し、第2のエンドマージン部L12には、上述した第2の内部電極層32の引出電極部322が位置する。
第1のエンドマージン部L11および第2のエンドマージン部L12の各々の長さ方向Lの寸法は、特に限定されないが、例えば10μm以上60μm以下であると好ましい。
【0034】
上述した積層体10の寸法は、特に限定されないが、例えば長さ方向Lの長さが0.1mm以上0.6mm以下であり、幅方向Wの幅が0.05mm以上0.3mm以下であり、積層方向Tの厚さが0.05mm以上0.3mm以下であると好ましい。
また、後述する外部電極40を含む積層セラミックコンデンサ1の寸法は、特に限定されないが、例えば長さ方向Lの長さが0.1mm以上0.6mm以下であり、幅方向Wの幅が0.05mm以上0.3mm以下であり、積層方向Tの厚さが0.05mm以上0.3mm以下であると好ましい(EIA規格に準拠したサイズ0201、0402、0603、1005に対応し、公差を含むものとする)。
【0035】
なお、誘電体層20および内部電極層30の平均厚さは、以下のように測定される。まず、研磨により露出させた積層体の長さ方向に直交する断面を走査型電子顕微鏡にて観察する。次に、積層体の断面の中心を通る積層方向に沿った中心線、およびこの中心線から両側に等間隔に2本ずつ引いた線の合計5本の線上における厚さを測定する。この5つの測定値の平均値とする。より正確な平均厚さを求めるには、積層方向における上部、中央部、下部のそれぞれについて上記5つの測定値を求め、これら測定値の平均値を平均厚さとする。
【0036】
また、積層体10または積層セラミックコンデンサ1の平均厚さは、以下のように測定される。まず、研磨により露出させた積層体または積層セラミックコンデンサの長さ方向に直交する断面を走査型電子顕微鏡にて観察する。次に、積層体または積層セラミックコンデンサの断面の中心を通る積層方向に沿った中心線、およびこの中心線から両側に等間隔に2本ずつ引いた線の合計5本の線上における厚さを測定する。この5つの測定値の平均値とする。
また、積層体10または積層セラミックコンデンサ1の平均長さは、以下のように測定される。まず、研磨により露出させた積層体または積層セラミックコンデンサの長さ方向に直交する断面を走査型電子顕微鏡にて観察する。次に、積層体または積層セラミックコンデンサの断面の中心を通る長さ方向に沿った中心線、およびこの中心線から両側に等間隔に2本ずつ引いた線の合計5本の線上における長さを測定する。この5つの測定値の平均値とする。
また、積層体10または積層セラミックコンデンサ1の平均幅は、以下のように測定される。まず、研磨により露出させた積層体または積層セラミックコンデンサの幅方向に直交する断面を走査型電子顕微鏡にて観察する。次に、積層体または積層セラミックコンデンサの断面の中心を通る幅方向に沿った中心線、およびこの中心線から両側に等間隔に2本ずつ引いた線の合計5本の線上における幅を測定する。この5つの測定値の平均値とする。
【0037】
外部電極40は、第1の外部電極41と第2の外部電極42とを含む。
【0038】
第1の外部電極41は、積層体10の第1の端面LS1に配置されており、第1の内部電極層31に接続されている。第1の外部電極41は、第1の端面LS1から、第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部に延びていてもよい。また、第1の外部電極41は、第1の端面LS1から、第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部に延びていてもよい。
【0039】
第2の外部電極42は、積層体10の第2の端面LS2に配置されており、第2の内部電極層32に接続されている。第2の外部電極42は、第2の端面LS2から、第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部に延びていてもよい。また、第2の外部電極42は、第2の端面LS2から、第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部に延びていてもよい。
【0040】
第1の外部電極41は、第1の下地電極層415と第1のめっき層416とを有し、第2の外部電極42は、第2の下地電極層425と第2のめっき層426とを有する。なお、第1の外部電極41は第1のめっき層416のみから構成されていてもよいし、第2の外部電極42は第2のめっき層426のみから構成されていてもよい。
【0041】
第1の下地電極層415および第2の下地電極層425は、金属とガラスとを含む焼成層であってもよい。ガラスとしては、B、Si、Ba、Mg、Al、またはLi等から選ばれる少なくとも1つを含むガラス成分が挙げられる。具体例として、ホウケイ酸ガラスを用いることができる。金属としては、Cuを主成分として含む。また、金属としては、例えばNi、Ag、Pd、またはAu等の金属、またはAg-Pd合金等の合金、から選ばれる少なくとも1つを主成分として含んでもよいし、主成分以外の成分として含んでもよい。
【0042】
焼成層は、金属およびガラスを含む導電性ペーストをディップ法によって積層体に塗布して焼成した層である。なお、誘電体層および内部電極層の焼成後に焼成されてもよく、誘電体層および内部電極層と同時に焼成されてもよい。また、焼成層は、複数層であってもよい。
【0043】
或いは、第1の下地電極層415および第2の下地電極層425は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む樹脂層であってもよい。樹脂層は、上述した焼成層上に形成されてもよいし、焼成層を形成せずに積層体に直接形成されてもよい。
【0044】
樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む導電性ペーストを塗布法によって積層体に塗布して加熱硬化した層である。なお、誘電体層および内部電極層の焼成後に加熱硬化されてもよく、誘電体層および内部電極層と同時に加熱硬化されてもよい。また、樹脂層は、複数層であってもよい。
【0045】
焼成層または樹脂層としての第1の下地電極層415および第2の下地電極層425の各々の一層あたりの厚さとしては、特に限定されず、1μm以上10μm以下であってもよい。焼成層としての第1の下地電極層415および第2の下地電極層425の各々の総厚さ、例えば最も厚い部分は、10μm以上30μm以下であると好ましい。また、樹脂層としての第1の下地電極層415および第2の下地電極層425の各々の総厚さ、例えば最も厚い部分は、20μm以上40μm以下であると好ましい。
【0046】
或いは、第1の下地電極層415および第2の下地電極層425は、スパッタ法または蒸着法等の薄膜形成法により形成され、金属粒子が堆積された1μm以下の薄膜層であってもよい。
【0047】
第1のめっき層416は、第1の下地電極層415の少なくとも一部を覆い、第2のめっき層426は、第2の下地電極層425の少なくとも一部を覆う。第1のめっき層416および第2のめっき層426としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、またはAu等の金属、またはAg-Pd合金等の合金から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0048】
第1のめっき層416および第2のめっき層426の各々は複数層により形成されていてもよい。好ましくは、NiめっきおよびSnめっきの2層構造である。Niめっき層は、下地電極層がセラミック電子部品を実装する際のはんだによって侵食されることを防止することができ、Snめっき層は、セラミック電子部品を実装する際のはんだの濡れ性を向上させ、容易に実装することができる。
【0049】
第1のめっき層416および第2のめっき層426の各々の一層あたりの厚さとしては、特に限定されず、5μm以上10μm以下であってもよい。
【0050】
<<内部電極層>>
次に、内部電極層30、すなわち第1の内部電極層31および第2の内部電極層32、について更に説明する。第1の内部電極層31および第2の内部電極層32のうち、積層方向Tの中央側の90%以上の第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の各々における幅方向Wの端部は、第2の主面TS2側に湾曲している。
より具体的には、長さ方向Lの中央部におけるWT断面において、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32のうち積層方向Tにおける中央部を含む90%以上の第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の各々における幅方向Wの端部は、第2の主面TS2側の方向に向かって湾曲している。
【0051】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32のうち、幅方向Wの端部が第2の主面TS2側に湾曲している積層方向Tの中央側の90%以上の第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、図3に示すように、第1の主面TS1側の最外層の第1の内部電極層31または第2の内部電極層32、および、第2の主面TS2側の最外層の第1の内部電極層31または第2の内部電極層32を含まなくてもよいし、図4に示すように、第2の主面TS2側の最外層の第1の内部電極層31または第2の内部電極層32を含んでいてもよい。
【0052】
積層ブロックを所定のサイズの積層チップにカットする際、例えば押切刃などで押切られる際、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32における幅方向Wの端部が湾曲する。この際、押切刃の挿入角度および挿入速度を調整することにより、押し切る方向に90%以上の第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の端部を湾曲させることができる。
【0053】
また、第1の内部電極層31と誘電体層20との界面、および、第2の内部電極層32と誘電体層20との界面には、Snが配置されていてもよい。Snは、層状であってもよく、点在していてもよい。Snは、第1の内部電極層31側および第2の内部電極層32側に固溶していてもよいし、誘電体層20側の誘電体グレインに固溶していてもよい。
内部電極層30と誘電体層20との界面に、Snが偏析し固溶していると、この界面において、絶縁性が向上し、電界強度の増大を抑制することができる。そのため、積層セラミックコンデンサ1の寿命、すなわち信頼性の低下を抑制することができる。
【0054】
<<サイドマージン部>>
次に、第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12について更に説明する。
第1のサイドマージン部W11の誘電体が複数層構造である場合、第1のサイドマージン部W11において、第1の側面WS1側の最外層の誘電体の厚さは、内部電極層30側の最内層の誘電体の厚さよりも厚くてもよい。例えば、最内層から最外層に向けて、誘電体の厚さが次第に厚くなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12の誘電体が複数層構造である場合、第2のサイドマージン部W12において、第2の側面WS2側の最外層の誘電体の厚さは、内部電極層30側の最内層の誘電体の厚さよりも大きくてもよい。例えば、最内層から最外層に向けて、誘電体の厚さが次第に厚くなっていてもよい。
これにより、耐湿性向上という効果が得られる。
【0055】
第1のサイドマージン部W11の誘電体が複数層構造である場合、第1のサイドマージン部W11において、複数の誘電体の層のうち第1の側面WS1側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、複数の誘電体の層のうち内部電極層30側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、最内層から最外層に向けて、誘電体グレインの平均粒径が次第に大きくなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12の誘電体が複数層構造である場合、第2のサイドマージン部W12において、複数の誘電体の層のうち第2の側面WS2側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、複数の誘電体の層のうち内部電極層30側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、最内層から最外層に向けて、誘電体グレインの平均粒径が次第に大きくなっていてもよい。
これにより、耐湿性向上という効果が得られる。
【0056】
或いは、逆に、第1のサイドマージン部W11において、複数の誘電体の層のうち内部電極層30側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、複数の誘電体の層のうち第1の側面WS1側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、最外層から最内層に向けて、誘電体グレインの平均粒径が次第に大きくなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12において、複数の誘電体の層のうち内部電極層30側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、複数の誘電体の層のうち第2の側面WS2側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、最外層から最内層に向けて、誘電体グレインの平均粒径が次第に大きくなっていてもよい。
これにより、上述同様の効果が得られる。
【0057】
第1のサイドマージン部W11の誘電体が1層構造である場合、第1のサイドマージン部W11において、誘電体における第1の側面WS1側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、誘電体における内部電極層30側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、内部電極層30側から第1の側面WS1側に向けて、誘電体グレインの平均粒径が次第に大きくなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12の誘電体が1層構造である場合、第2のサイドマージン部W12において、誘電体における第2の側面WS2側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、誘電体における内部電極層30側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、内部電極層30側から第1の側面WS1側に向けて、誘電体グレインの平均粒径が次第に大きくなっていてもよい。
これにより、上述同様の効果が得られる。
【0058】
或いは、逆に、第1のサイドマージン部W11において、誘電体における内部電極層30側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、誘電体における第1の側面WS1側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、第1の側面WS1側から内部電極層30側に向けて、誘電体グレインの平均粒径が次第に大きくなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12において、誘電体における内部電極層30側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、誘電体における第2の側面WS2側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きくてもよい。例えば、第1の側面WS1側から内部電極層30側に向けて、誘電体グレインの平均粒径が次第に大きくなっていてもよい。
これにより、上述同様の効果が得られる。
【0059】
なお、サイドマージン部W11,W12の誘電体に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、例えば以下の手順により算出される。まず、積層セラミックコンデンサ1を長さ方向Lの中央部まで研磨する。次いで、積層方向Tの中段近傍におけるサイドマージン部W11,W12の断面を10000倍の倍率でそれぞれ3箇所撮像することにより得られた画像から、結晶粒を15個以上選択する。そして、選択した結晶粒の粒径を画像解析により計測し、平均値を算出することによって平均結晶粒径が得られる。
【0060】
サイドマージン部W11,W12の誘電体に含まれる誘電体グレインの平均粒径を異ならせる方法としては、例えば、サイドマージン部W11,W12のセラミック材料にMgまたはMnを副成分として添加し、MgまたはMnの添加量を調整すればよい。MgまたはMnの添加量を調整することにより、誘電体グレインの平均粒径を異ならせることができる。なお、Siを添加することによって調整してもいい。
【0061】
第1のサイドマージン部W11の誘電体が複数層構造である場合、第1のサイドマージン部W11において、複数の誘電体の層のうち第1の側面WS1側の最外層に含まれる空隙は、複数の誘電体の層のうち内部電極層30側の最内層に含まれる空隙よりも多くてもよい。例えば、最内層から最外層に向けて、空隙が次第に多くなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12の誘電体が複数層構造である場合、第2のサイドマージン部W12において、複数の誘電体の層のうち第2の側面WS2側の最外層に含まれる空隙は、複数の誘電体の層のうち内部電極層30側の最内層に含まれる空隙よりも多くてもよい。例えば、最内層から最外層に向けて、空隙が次第に多くなっていてもよい。
これにより、耐湿性向上という効果が得られる。
【0062】
或いは、逆に、第1のサイドマージン部W11において、複数の誘電体の層のうち第1の側面WS1側の最内層に含まれる空隙は、複数の誘電体の層のうち内部電極層30側の最外層に含まれる空隙よりも多くてもよい。例えば、最外層から最内層に向けて、空隙が次第に多くなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12において、複数の誘電体の層のうち第2の側面WS2側の最内層に含まれる空隙は、複数の誘電体の層のうち内部電極層30側の最外層に含まれる空隙よりも多くてもよい。例えば、最外層から最内層に向けて、空隙が次第に多くなっていてもよい。
これにより、上述同様の効果が得られる。
【0063】
第1のサイドマージン部W11の誘電体が1層構造である場合、第1のサイドマージン部W11において、誘電体における第1の側面WS1側の領域に含まれる空隙は、誘電体における内部電極層30側の領域に含まれる空隙よりも多くてもよい。例えば、内部電極層30側から第1の側面WS1側に向けて、空隙が次第に多くなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12の誘電体が1層構造である場合、第2のサイドマージン部W12において、誘電体における第2の側面WS2側の領域に含まれる空隙は、誘電体における内部電極層30側の領域に含まれる空隙よりも多くてもよい。例えば、内部電極層30側から第1の側面WS1側に向けて、空隙が次第に多くなっていてもよい。
これにより、上述同様の効果が得られる。
【0064】
或いは、逆に、第1のサイドマージン部W11において、誘電体における内部電極層30側の領域に含まれる空隙は、誘電体における第1の側面WS1側の領域に含まれる空隙よりも多くてもよい。例えば、第1の側面WS1側から内部電極層30側に向けて、空隙が次第に多くなっていてもよい。
また、第2のサイドマージン部W12において、誘電体における内部電極層30側の領域に含まれる空隙は、誘電体における第2の側面WS2側の領域に含まれる空隙よりも多くてもよい。例えば、第1の側面WS1側から内部電極層30側に向けて、空隙が次第に多くなっていてもよい。
これにより、上述同様の効果が得られる。
【0065】
なお、サイドマージン部W11,W12の誘電体に含まれる空隙率(ポア率)は、例えば以下の手順により算出される。まず、サイドマージン部W11,W12の断面の所定領域をSEM(Scanning Electron Microscope)によって視野角が30μm×30μmの版に収まる程度の倍率で撮像する。次いで、サイドマージン部W11,W12の断面の所定領域を撮像した画像に写っている空隙(ポア)を複数個選択して空隙率(ポア率)の断面積を測定し、その平均値を算出する。そして、撮像されたサイドマージン部W11,W12の断面の所定領域の断面積に対する当該平均値の割合を算出する。
【0066】
上述したように、MgまたはMnの添加量を調整したり、添加するバインダの量を調整することにより、誘電体グレインの平均粒径を異ならせると、サイドマージン部W11,W12の誘電体に含まれる空隙の数が異なることとなる。
【0067】
<製造方法>
次に、上述した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。まず、誘電体層20用の誘電体シートおよび内部電極層30用の導電性ペーストを準備する。誘電体シートおよび導電性ペーストには、バインダおよび溶剤が含まれる。バインダおよび溶剤としては公知の材料を用いることができる。
【0068】
次に、誘電体シート上に導電性ペーストを、例えば所定のパターンで印刷することにより、誘電体シート上に内部電極パターンを形成する。内部電極パターンの形成方法としては、スクリーン印刷またはグラビア印刷等を用いることができる。
【0069】
次に、内部電極パターンが印刷されていない第2の外層部102用の誘電体シートを所定枚数積層する。その上に、内部電極パターンが印刷された内層部100用の誘電体シートを順次積層する。その上に、内部電極パターンが印刷されていない第1の外層部101用の誘電体シートを所定枚数積層する。これにより、積層シートが作製される。
【0070】
次に、静水圧プレス等の手段により、積層シートを積層方向にプレスし、積層ブロックを作製する。次に、積層ブロックを所定のサイズにカットし、積層チップを切り出す。このとき、内部電極層の幅方向Wの寸法Dwのばらつきが、標準偏差で5%以内となる。また、内部電極層の幅方向Wの両側の端部が、幅方向において3μmの範囲に位置するように揃う。
【0071】
また、このとき、例えば押切刃などで押切られる際、内部電極層のうち、積層方向Tの中央側の90%以上の内部電極層の各々における幅方向Wの端部が、第2の主面TS2側に湾曲する。
【0072】
次に、積層チップの側面に第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12用の誘電体シートを貼り付ける。
また、このとき、バレル研磨等により積層チップの角部および稜線部に丸みをつける。
【0073】
次に、積層チップを焼成し、積層体10を作製する。焼成温度は、誘電体や内部電極の材料にもよるが、900℃以上1400℃以下であることが好ましい。
【0074】
次に、ディップ法を用いて、積層体10の第1の端面LS1を下地電極層用の電極材料である導電性ペーストに浸漬することによって、第1の端面LS1に第1の下地電極層415用の導電性ペーストを塗布する。同様に、ディップ法を用いて、積層体10の第2の端面LS2を下地電極層用の電極材料である導電性ペーストに浸漬することによって、第2の端面LS2に第2の下地電極層425用の導電性ペーストを塗布する。その後、これらの導電性ペーストを焼成することにより、焼成層である第1の下地電極層415および第2の下地電極層425が形成される。焼成温度は、600℃以上1000℃以下であることが好ましい。
【0075】
このとき、サイドマージン部W11,W12のセラミック材料にMgまたはMnが添加されていると、MgまたはMnの作用により、セラミックグレインの粒成長が抑制される。そして、MgまたはMnの添加量が調整されていることにより、サイドマージン部W11,W12において、内部電極層側から側面WS1側に向けて、或いは側面側から内部電極層側に向けて、誘電体の誘電体グレインの平均粒径が大きくなる。また、サイドマージン部W11,W12において、内部電極層側から側面WS1側に向けて、或いは側面側から内部電極層側に向けて、誘電体の空隙が多くなる。
また、このとき、誘電体層20用の誘電体シートまたは内部電極層30用の導電性ペーストにSnが添加されていると、内部電極層30と誘電体層20との界面もしくは内部電極内の誘電体層20側に、Snが配置される。
【0076】
なお、上述したように、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む導電性ペーストを塗布法によって塗布して加熱硬化することによって、樹脂層である第1の下地電極層415および第2の下地電極層425を形成してもよいし、スパッタ法または蒸着法等の薄膜形成法により、薄膜である第1の下地電極層415および第2の下地電極層425を形成してもよい。
【0077】
また、上述では、積層チップを焼成した後に下地電極層を形成して焼成した、すなわち積層体と外部電極とを別々に焼成した。しかし、積層チップを焼成する前に下地電極層を形成して焼成してもよい、すなわち、積層体と外部電極とを同時に焼成してもよい。
【0078】
その後、第1の下地電極層415の表面に第1のめっき層416を形成して第1の外部電極41を形成し、第2の下地電極層425の表面に第2のめっき層426を形成して第2の外部電極42を形成する。以上の工程により、上述した積層セラミックコンデンサ1が得られる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1によれば、複数の内部電極層30のうち90%以上の内部電極層30の各々における幅方向Wの端部は、第2の主面TS2側に湾曲している、すなわち一方向/同一方向に湾曲している。
これにより、内部電極層30の短絡を抑制することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【0081】
また、本発明は以下のような形態であってもよい。
<1> 複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層体であって、積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、前記積層方向に交差する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、前記積層方向および前記幅方向に交差する長さ方向に相対する2つの端面とを有した積層体と、
前記積層体の前記2つの端面の各々に配置された2つの外部電極と、
を備え、
前記長さ方向の中央部において、前記幅方向および前記積層方向を含む面で見て、
前記複数の内部電極層のうち、前記積層方向の中央側の90%以上の内部電極層の各々における前記幅方向の端部は、前記第2の主面側に湾曲している、
積層セラミックコンデンサ。
【0082】
<2> 前記複数の内部電極層の前記幅方向の寸法のばらつきは、標準偏差で5%以内である、<1>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0083】
<3> 前記複数の内部電極層における前記幅方向の端部は、前記積層方向において3μmの範囲内に位置するように揃っている、<1>または<2>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0084】
<4> 前記複数の内部電極層のうち、前記幅方向の端部が前記第2の主面側に湾曲している、前記積層方向の中央側の90%以上の内部電極層は、前記第2の主面側の最外層の内部電極層を含む、<1>から<3>のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0085】
<5> 前記積層体は、前記複数の内部電極層の前記第1の側面側の端と前記第1の側面との間に配置された第1のサイドマージン部と、前記複数の内部電極層の前記第2の側面側の端と前記第2の側面との間に配置された第2のサイドマージン部とを有し、
前記第1のサイドマージン部および前記第2のサイドマージン部の各々は、前記幅方向に配置された複数の誘電体層を含む、
<1>から<4>のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0086】
<6> 前記第1のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第1の側面側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きく、
前記第2のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第2の側面側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、
<5>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0087】
<7> 前記第1のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第1の側面側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きく、
前記第2のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第2の側面側の最内層に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最外層に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、
<5>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0088】
<8> 前記第1のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第1の側面側の最外層に含まれる空隙は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最内層に含まれる空隙よりも多く、
前記第2のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第2の側面側の最外層に含まれる空隙は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最内層に含まれる空隙よりも多い、
<5>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0089】
<9> 前記第1のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第1の側面側の最内層に含まれる空隙は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最外層に含まれる空隙よりも多く、
前記第2のサイドマージン部において、前記複数の誘電体層のうち前記第2の側面側の最内層に含まれる空隙は、前記複数の誘電体層のうち前記複数の内部電極層側の最外層に含まれる空隙よりも多い、
<5>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0090】
<10> 前記積層体は、前記複数の内部電極層の前記第1の側面側の端と前記第1の側面との間に配置された第1のサイドマージン部と、前記複数の内部電極層の前記第2の側面側の端と前記第2の側面との間に配置された第2のサイドマージン部とを有し、
前記第1のサイドマージン部および前記第2のサイドマージン部の各々は、前記幅方向に配置された1つの誘電体層を含む、
<1>から<4>のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0091】
<11> 前記第1のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第1の側面側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きく、
前記第2のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第2の側面側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、
<5>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0092】
<12> 前記第1のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第1の側面側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きく、
前記第2のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第2の側面側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる誘電体グレインの平均粒径よりも大きい、
<5>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0093】
<13> 前記第1のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第1の側面側の領域に含まれる空隙は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる空隙よりも多く、
前記第2のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第2の側面側の領域に含まれる空隙は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる空隙よりも多い、
<5>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0094】
<14> 前記第1のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第1の側面側の領域に含まれる空隙は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる空隙よりも多く、
前記第2のサイドマージン部において、前記誘電体層における前記第2の側面側の領域に含まれる空隙は、前記誘電体層における前記複数の内部電極層側の領域に含まれる空隙よりも多い、
<5>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0095】
<15> 前記誘電体層の厚さは、0.3μm以上0.5μm以下である、<1>から<14>のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。
【符号の説明】
【0096】
1 積層セラミックコンデンサ
10 積層体
20 誘電体層
30 内部電極層
31 第1の内部電極層
311 第1の対向電極部
312 第1の引出電極部
32 第2の内部電極層
321 第2の対向電極部
322 第2の引出電極部
40 外部電極
41 第1の外部電極
415 第1の下地電極層
416 第1のめっき層
42 第2の外部電極
425 第2の下地電極層
426 第2のめっき層
100 内層部
101 第1の外層部
102 第2の外層部
L10 電極対向部
L11 第1のエンドマージン部
L12 第2のエンドマージン部
W10 電極対向部
W11 第1のサイドマージン部
W12 第2のサイドマージン部
L 長さ方向
T 積層方向
W 幅方向
LS1 第1の端面
LS2 第2の端面
TS1 第1の主面
TS2 第2の主面
WS1 第1の側面
WS2 第2の側面
図1
図2
図3
図4