(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104333
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/13 20060101AFI20240729BHJP
G01N 21/00 20060101ALI20240729BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A61B8/13
G01N21/00 A
G01N21/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008476
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山岡 禎久
(72)【発明者】
【氏名】安倉(恒原) 由佳
【テーマコード(参考)】
2G059
4C601
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059EE16
2G059GG01
2G059GG05
2G059GG08
2G059GG10
2G059JJ11
2G059KK08
4C601DE16
4C601EE11
(57)【要約】
【課題】周囲の生体組織の光音響波を抑えることで、皮膚表面より内部の毛や毛根の光音響波の検出を容易にして測定する。
【解決手段】この測定装置は、光源101、光学系102、センサ103を備える。光源101は、測定対象の生体151を構成する物質が吸収する波長の光141を出射する。光源101は、所定のビーム径の光141を出射する。光学系102は、光源101から出射した光を、生体151内の測定部位152に集光する。光学系102は、アキシコンレンズ102aから構成されている。センサ103は、光学系102を通過した光を照射した測定部位152から発生する光音響波を検出する。センサ103は、超音波である光音響波を検出して電気信号(光音響信号)に変換して出力する。さらに、光学系102の集光位置を測定部位152の領域に制限する遮光部材104を備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の物質が吸収する波長の光を出射する光源と、
前記光源から出射した光を測定部位に集光するアキシコンレンズから構成された光学系と、
前記アキシコンレンズを通過する光の内縁部を遮光する遮光部材と、
前記光学系を通過した光を照射した前記測定部位から発生する光音響波を検出するセンサと
を備える測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、
前記光学系の集光位置は、前記アキシコンレンズによって形成されるベッセルゾーンであることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の測定装置において、
前記光学系は、前記アキシコンレンズの出射側に配置され、前記アキシコンレンズを通過してベッセルゾーンを形成した後のリングビームを前記測定部位に集光する集光レンズをさらに備えることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の測定装置において、
前記遮光部材は、前記アキシコンレンズの入射側および出射側の少なくとも一方に配置されることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の測定装置において、
前記光源は、パルスレーザを出射することを特徴とする測定装置。
【請求項6】
測定対象の物質が吸収する波長の光を出射する光源と、
前記光源から出射した光を測定部位に集光する光学系と、
前記光学系を通過した光を照射した前記測定部位から発生する光音響波を検出するセンサと
を備え、
前記光学系は、アキシコンレンズと、前記アキシコンレンズを通過して第1ベッセルゾーンを形成した後のリングビームを前記測定部位に集光して第2ベッセルゾーンを形成する集光レンズとを備える測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の測定装置において、
前記光学系は、前記アキシコンレンズと前記集光レンズとの間に前記第1ベッセルゾーンを形成するためのベッセルゾーン制御レンズをさらに備えることを特徴とする測定装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の測定装置において、
前記光源は、パルスレーザを出射することを特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲に生体内部の状態を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非侵襲に生体内部を測定・観察する技術として、光音響法による測定がある(特許文献1、非特許文献1)。生体にある量の光(電磁波)を照射した場合、照射した光は生体に含有される分子に吸収される。光が照射された部分における測定対象の分子は、照射された光を吸収することで局所的に加熱されて膨張を起こし、音波を発生する。この音波の圧力は、光を吸収する分子の量に依存する。光音響法は、この音波を測定することにより生体内を測定する技術である。
【0003】
光音響法を用いることで、例えば、皮膚の表面より内部の毛の状態を観察することが可能となる。例えば、毛や毛根の周辺組織は、毛周期に伴ってmmの大きなオーダーで形態・位置関係の変化を起こす。毛や毛根の周辺組織の細胞は、形態・位置関係の変化とともに分泌物を変化させる。毛や毛根の周辺組織は、構造や分泌物で相互に関連しながら大きな形態変化を繰り返す。これら現象の詳細な観察は、皮膚の病理・生理の更なる理解につながるものと考えられる。光音響測定によれば、毛を摘出すること無く、生体同部位の反復測定で経時的変化の追跡を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社アドバンテスト 製品情報 新規事業製品、「光超音波顕微鏡 HadatomoTM Z WEL5200」、[令和4年12月19日検索]、(https://www.advantest.com/ja/products/leading-edge-products/hadatomo/wel5200.html)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば皮膚表面より内部の毛の光音響測定では、従来、毛とその周囲の生体組織それぞれからの光音響波を入射光の波長や光音響波の強度の違いに基づき識別することによって毛の形態を特定している。しかしながら、皮膚表面より内部の毛を検出するために使用する励起光と同じ波長の光に対して光音響波を発する対象が光軸上に存在する場合には、光が深部まで届かず、特に毛そのものが細い場合には深部からの信号が弱くなってしまう。このように、従来技術では、皮膚表面より内部の毛や毛根の光音響波を、検出できず、測定することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、周囲の生体組織の光音響波を抑えることで、皮膚表面より内部の毛や毛根の光音響波の検出を容易にして測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る測定装置は、測定対象の物質が吸収する波長の光を出射する光源と、光源から出射した光を測定部位に集光するアキシコンレンズから構成された光学系と、アキシコンレンズを通過する光の内縁部を遮光する遮光部材と、光学系を通過した光を照射した測定部位から発生する光音響波を検出するセンサとを備える。
【0009】
上記測定装置の一構成例において、光学系の集光位置は、アキシコンレンズのベッセルゾーンである。
【0010】
上記測定装置の一構成例において、光学系は、アキシコンレンズの出射側に配置され、アキシコンレンズを通過してベッセルゾーンを形成した後のリングビームを測定部位に集光する集光レンズをさらに備える。
【0011】
上記測定装置の一構成例において、遮光部材は、アキシコンレンズの入射側および出射側の少なくとも一方に配置される。
【0012】
上記測定装置の一構成例において、光源は、パルスレーザを出射する。
【0013】
本発明に係る測定装置は、測定対象の物質が吸収する波長の光を出射する光源と、光源から出射した光を測定部位に集光する光学系と、光学系を通過した光を照射した測定部位から発生する光音響波を検出するセンサとを備え、光学系は、アキシコンレンズと、アキシコンレンズを通過して第1ベッセルゾーンを形成した後のリングビームを測定部位に集光して第2ベッセルゾーンを形成する集光レンズとを備える。
【0014】
上記測定装置の一構成例において、光学系は、アキシコンレンズと集光レンズとの間に第1ベッセルゾーンを形成するためのベッセルゾーン制御レンズを備える。
【0015】
上記測定装置の一構成例において、光源は、パルスレーザを出射する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、光を測定部位に集光するアキシコンレンズを通過する光の内縁部を遮光する遮光部材を設けたので、皮膚表面より内部の毛の光音響波の検出を容易にして測定できる。また、本発明によれば、光を測定部位に集光する光学系が、アキシコンレンズと、アキシコンレンズを通過してベッセルゾーンを形成した後のリングビームを測定部位に集光する集光レンズとを備えるので、皮膚表面より内部の毛の光音響波の検出を容易にして測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態1に係る測定装置の構成を示す構成図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態1に係る測定装置の一部構成を示す構成図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態2に係る測定装置の構成を示す構成図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態2に係る測定装置の一部構成を示す構成図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施の形態2に係る測定装置のより詳細な構成を示す構成図である。
【
図3B】
図3Bは、遮光部材104の構成を示す平面図である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の実施の形態2に係る測定装置のより詳細な構成を示す構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態3に係る測定装置の構成を示す構成図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態3に係る測定装置のより詳細な構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る測定装置について説明する。
【0019】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る測定装置について、
図1A、
図1Bを参照して説明する。この測定装置は、光源101、光学系102、センサ103を備える。光源101は、測定対象の生体151を構成する物質が吸収する波長の光141を出射する。光源101は、所定のビーム径の光141を出射する。光141は、パルスレーザとすることができる。光学系102は、光源101から出射した光141を、生体151内の測定部位152に集光する。光学系102は、アキシコンレンズ102aから構成されている。アキシコンレンズ102aは、円錐形状の頂点が生体151の側を向く状態とすることができる。また、アキシコンレンズ102aは、円錐形状の頂点が光源101の側を向く状態とすることもできる。
【0020】
センサ103は、光学系102を通過(透過)した光を照射した測定部位152から発生する光音響波を検出する。センサ103は、超音波である光音響波を検出して電気信号(光音響信号)に変換して出力する。図では、光学系102(アキシコンレンズ102a)の光軸から離れた位置にセンサ103を配置しているが、これに限るものではない。光学系102(アキシコンレンズ102a)の光軸上にセンサ103を配置することができる。
【0021】
センサ103は、クリスタルマイクロフォン、セラミックマイクロフォン、セラミック超音波センサや高分子フィルムセンサなどの圧電効果・電歪効果を用いたもの、ダイナミックマイクロフォン、リボンマイクロフォンなどの電磁誘導を用いたもの、コンデンサマイクロフォンなどの静電効果を用いたもの、磁歪振動子などの磁歪を用いたものから構成することができる。また、センサ103は、電界効果トランジスタなどによる増幅器を内蔵するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)素子から構成することもできる。
【0022】
上述した構成に加え、実施の形態1に係る測定装置は、アキシコンレンズ102aによる光学系102の集光位置を測定部位152の領域に制限する遮光部材104を備える。集光位置は、例えば、アキシコンレンズ102aのベッセルゾーン106とすることができる。遮光部材104は、アキシコンレンズ102aを通過した光(リングビーム105)のリング内縁部を遮光する。
【0023】
遮光部材104は、例えば、平面視円形の板状とされている。アキシコンレンズ102aを通過する光141のビーム径が25.4mmの場合、遮光部材104は、外径7mm,厚さ2mmとすることができる。なお、アキシコンレンズ102のレンズ径は、光141のビーム径より大きいものとなっている。例えば、アキシコンレンズ102のレンズ径は、25.4mmとすることができる。
【0024】
また、遮光部材104は、レーザを透過させることのない金属、樹脂、複合材料、セラミックから構成することができる。また、遮光部材104は、金属蒸着膜が形成されたガラスから構成することができる。また、熱による損傷を避けるために、遮光部材104は、タングステンなどの高融点金属から構成することができる。遮光部材104は、アキシコンレンズ102aの入射側に配置することができる。また、遮光部材104は、
図1Bに示すように、アキシコンレンズ102aの出射側に配置することができる。また、遮光部材104は、アキシコンレンズ102aの入射側および出射側に配置することができる。
【0025】
遮光部材104は、リングビーム105のリング状断面形状のリング内縁部を遮光し、ベッセルゾーン106は、リングビーム105のリング外縁部が交差した箇所に形成される。また、遮光部材104を用いてリングビーム105のリング状断面形状のリング内縁部を遮光するので、アキシコンレンズ102aの出射側においては、ベッセルゾーン106(集光位置)を頂点とする円錐状に光が存在しない領域105aを形成する。このため、アキシコンレンズ102aを通過した光が照射される領域は、光の進行方向の一部に制限されるものとなる。
【0026】
上述した実施の形態によれば、遮光部材104により光が存在しない領域105aを形成し、測定部位152の領域に制限された集光位置(ベッセルゾーン106)に光を照射することができ、狙いを定めて光を照射することができる。このため、皮膚表面より内部の毛の部分や毛根の部分に狙いを定めて光を照射することが可能となる。この結果、皮膚表面より内部の毛の周囲の生体組織からの光音響波が発生することが抑制され、皮膚表面より内部の毛の光音響波の検出を容易にして測定することができる。
【0027】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る測定装置について、
図2A、
図2Bを参照して説明する。この測定装置は、光源101、光学系102、センサ103を備える。光源101は、測定対象の生体151を構成する物質が吸収する波長の光141を出射する。光源101は、所定のビーム径の光141を出射する。光141は、パルスレーザとすることができる。光学系102は、光源101から出射した光141を、生体151内の測定部位152に集光する。光学系102は、アキシコンレンズ102aから構成されている。アキシコンレンズ102aは、円錐形状の頂点が生体151の側を向く状態とすることができる。また、アキシコンレンズ102aは、円錐形状の頂点が光源101の側を向く状態とすることもできる。
【0028】
センサ103は、光学系102を通過した光を照射した測定部位152から発生する光音響波を検出する。センサ103は、超音波である光音響波を検出して電気信号(光音響信号)に変換して出力する。図では、光学系102(アキシコンレンズ102a)の光軸から離れた位置にセンサ103を配置しているが、これに限るものではない。光学系102(アキシコンレンズ102a)の光軸上にセンサ103を配置することができる。
【0029】
センサ103は、クリスタルマイクロフォン、セラミックマイクロフォン、セラミック超音波センサや高分子フィルムセンサなどの圧電効果・電歪効果を用いたもの、ダイナミックマイクロフォン、リボンマイクロフォンなどの電磁誘導を用いたもの、コンデンサマイクロフォンなどの静電効果を用いたもの、磁歪振動子などの磁歪を用いたものから構成することができる。また、センサ103は、電界効果トランジスタなどによる増幅器を内蔵するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)素子から構成することもできる。
【0030】
上述した構成に加え、実施の形態2に係る測定装置は、アキシコンレンズ102aによる光学系102の集光位置を測定部位152の領域に制限する遮光部材104と、集光レンズ107とを備える。集光レンズ107は、アキシコンレンズ102aの出射側に配置され、アキシコンレンズ102aを通過してベッセルゾーン106を形成した後のリングビームを測定部位152に集光する。遮光部材104は、アキシコンレンズ102aを通過した光(リングビーム105)のリング内縁部を遮光する。
【0031】
遮光部材104は、例えば、平面視円形の板状とされている。アキシコンレンズ102aを通過する光141のビーム径が25.4mmの場合、遮光部材104は、外径7mm,厚さ2mmとすることができる。なお、アキシコンレンズ102のレンズ径は、光141のビーム径より大きいものとなっている。例えば、アキシコンレンズ102のレンズ径は、25.4mmとすることができる。
【0032】
また、遮光部材104は、レーザを透過させることのない金属、樹脂、複合材料、セラミックから構成することができる。また、遮光部材104は、金属蒸着膜が形成されたガラスから構成することができる。また、熱による損傷を避けるために、遮光部材104は、タングステンなどの高融点金属から構成することができる。
【0033】
遮光部材104は、アキシコンレンズ102aの入射側に配置することができる(
図2A)。また、遮光部材104は、アキシコンレンズ102aの出射側に配置することができる(
図2B)。また、遮光部材104は、アキシコンレンズ102aの入射側および出射側に配置することができる。
【0034】
遮光部材104は、リングビーム105のリング状断面形状のリング内縁部を遮光し、ベッセルゾーン106は、リングビーム105のリング外縁部が交差した箇所に形成される。また、遮光部材104を用いてリングビーム105のリング状断面形状のリング内縁部を遮光するので、アキシコンレンズ102aの出射側においては、ベッセルゾーン106(集光位置)を頂点とする円錐状に光が存在しない領域105aを形成する。
【0035】
さらに、アキシコンレンズ102aを通過したリングビーム105は、光の進行方向においてベッセルゾーン106を形成した後、集光レンズ107の外縁部を通過して測定部位152に集光される。このため、集光レンズ107の出射側においては、集光位置を頂点とする円錐状に光が存在しない領域105bを形成し、集光レンズ107を通過した光が照射される領域は、光の進行方向の一部に制限されるものとなる。上述した測定部位152に形成される集光領域は、ベッセルゾーンということができる。
【0036】
上述した実施の形態によれば、集光レンズ107の出射側において光が存在しない領域105bを形成し、測定部位152の領域に制限された集光位置に光を照射することができ、狙いを定めて光を照射することができる。このため、皮膚表面より内部の毛の部分や毛根の部分に狙いを定めて光を照射することが可能となる。この結果、皮膚表面より内部の毛の周囲の生体組織からの光音響波が発生することが抑制され、皮膚表面より内部の毛の光音響波を周囲の生体組織の光音響波の検出を容易にして測定することができる。
【0037】
以下、測定装置について、
図3Aを用いてより詳細に説明する。この装置は、上述した基本的な構成に加え、コリメータ121、λ/2波長板122、偏光板123、ミラー124、第1ビームスプリッタ125、音響反射部126、フォトダイオード127、カメラ128、結像レンズ129、第2ビームスプリッタ130、白色光源131を備えることができる。また、この装置は、レンズ108を備えることができる。
【0038】
レーザから構成された光源101より出射したパルスレーザ(ナノパルスレーザ)による光141は、コリメータ121で平行光とされ、λ/2波長板122、偏光板123を通過し、ミラー124により光路を90°変更し、アキシコンレンズ102aに入射する。平行光とされた光141は、アキシコンレンズ102a、遮光部材104によりベッセルゾーンを形成する。アキシコンレンズ102aで作られたベッセルゾーンは、レンズ107、レンズ108により、生体151内部の測定部位152にリレーされる。レンズ107、レンズ108の位置、焦点距離によって、集光位置となるベッセルゾーンの領域、位置を調整することが可能である。
【0039】
リング内縁部が遮光部材104により遮光されたリングビームは、集光レンズ107で集光されたあと、第1ビームスプリッタ125を一部が通過し、一部が反射して光路を90°変更される。第1ビームスプリッタ125を通過した光は、フォトダイオード127で受光される。光源101より出射した光の強度(光量)をフォトダイオード127で受光し、受光した結果を光源101にフィードバックすることで、光源101より出射されるパルスレーザの強度を制御する。あるいは、センサ103により得られる光音響信号を光源101より出射した光の強度(光量)をフォトダイオード127で受光し、光音響信号を規格化する。
【0040】
第1ビームスプリッタ125を反射したリングビームは、レンズ108および音響反射部126を通過して生体151に入射する。音響反射部126は、例えば、2つの三角プリズムと、これらの間に挾んだシリコーンオイルとから構成することができる。2つの三角プリズムの間に挟まれたシリコーンオイルの層は、光を透過し、シリコーンオイルの層と三角プリズムとの界面で音響波を反射する。また、音響反射部126は、薄い板状のガラスから構成することもできる。生体151に入射したリングビームのベッセルゾーンの箇所で発生した光音響波は、音響反射部126で反射して、センサ103で検出される。
【0041】
カメラ128は、生体151の表面を観察する。白色光源131より出射した白色光は、第2ビームスプリッタ130で反射して光路を90°変更し、第1ビームスプリッタ125および音響反射部126を透過して、生体151の表面に照射される。生体151の表面に照射される光は、生体151の表面をカメラ128で撮像するための照明となり、生体151の表面像は、音響反射部126、レンズ108、第1ビームスプリッタ125、第2ビームスプリッタ130を通過し、結像レンズ129を通過してカメラ128で撮像される。
【0042】
ここで、
図3Bに示すように、遮光部材104は、内部遮光部104aと外側遮光部104bを備え、内部遮光部104aと外側遮光部104bとを2つの連結部104cで連結し、内部遮光部104aと外側遮光部104bとの間に環状の開口104dを備える構成とすることができる。2つの連結部104cは、周方向に等間隔に配置することができる。なお、連結部は2箇所に限るものではなく、連結部を3箇所設けることもできる。例えば、周方向に等間隔に3つの連結部を設けることができる。
【0043】
この構成では、遮光部材104(外側遮光部104b)の外径を10mmとし、内部遮光部104aの外径を7mmとすることができる。また、遮光部材104の板厚は2mmとすることができる。なお、これは、アキシコンレンズ102aを通過する光141のビーム径が25.4mmの場合である。
【0044】
上述したように外側遮光部を設けて外縁部を遮光することにより、まず、焦点深度を調節できるようになる。これにより、さらに測定部位152に狙いを定めて集光させることが可能となる。また、外側遮光部の平面視の大きさを調整することで、ビーム径の大きさはアキシコンレンズ102aの大きさに限定されないものとなる。
【0045】
また、
図3Aでは、アキシコンレンズ102aの入射側に遮光部材104が配置されているが、
図3Cに示すように、アキシコンレンズ102aの出射側に遮光部材104を配置することができる。
【0046】
例えば、遮光部材104、アキシコンレンズ102a、レンズ107、第1ビームスプリッタ125、レンズ108、音響反射部126、センサ103、フォトダイオード127、カメラ128、結像レンズ129、第2ビームスプリッタ130、白色光源131を、同一の筐体内に配置することができる。このように構成することで、カメラ128を用いた観察により生体151の表面の観察位置を確認してから、光音響法による測定を実施することができる。また、同一の筐体内に、上述した構成に加えて、光源101、コリメータ121、λ/2板122、偏光板123を配置することができる。
【0047】
また、走査ステージを用いることで、上述した筐体を3次元的に走査することができる。このように走査して光音響法による測定を実施することで、光音響イメージングを実現することができる。また、生体151の表面に、光学的に透明な容器を配置し、この容器に水を収容し、収容されている水に上述した筐体の音響反射部126の光出射側の部分を浸漬して測定を実施することができる。また、生体151の表面に、底面が光学的かつ音響的に透明な容器を配置し、この容器に水を収容し、収容されている水に上述した筐体の音響反射部126とセンサ103の光出射側の部分を浸漬して測定を実施することもできる。このような構成とすることで、集光位置としてベッセルゾーンが形成されている生体深部の測定部位152より放出される光音響波の減衰を抑制することができる。
【0048】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る測定装置について、
図4を参照して説明する。この測定装置は、光源201、光学系202、センサ203を備える。光源201は、測定対象の生体151を構成する物質が吸収する波長の光241を出射する。光源201は、所定のビーム径の光241を出射する。光241は、パルスレーザとすることができる。
【0049】
光学系202は、光源201から出射した光241を、生体251内の測定部位252に集光する。光学系202は、アキシコンレンズ202aから構成されている。アキシコンレンズ202aは、円錐形状の頂点が生体251の側を向く状態とすることができる。また、アキシコンレンズ202aは、円錐形状の頂点が光源201の側を向く状態とすることもできる。
【0050】
センサ203は、光学系202を通過した光を照射した測定部位252から発生する光音響波を検出する。センサ203は、超音波である光音響波を検出して電気信号(光音響信号)に変換して出力する。図では、光学系202(アキシコンレンズ202a)の光軸から離れた位置にセンサ203を配置しているが、これに限るものではない。光学系202(アキシコンレンズ202a)の光軸上にセンサ203を配置することができる。
【0051】
センサ203は、クリスタルマイクロフォン、セラミックマイクロフォン、セラミック超音波センサや高分子フィルムセンサなどの圧電効果・電歪効果を用いたもの、ダイナミックマイクロフォン、リボンマイクロフォンなどの電磁誘導を用いたもの、コンデンサマイクロフォンなどの静電効果を用いたもの、磁歪振動子などの磁歪を用いたものから構成することができる。また、センサ203は、電界効果トランジスタなどによる増幅器を内蔵するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)素子から構成することもできる。
【0052】
上述した構成に加え、実施の形態3に係る測定装置の光学系202は、アキシコンレンズ202aによる光学系202の集光位置を測定部位252の領域に制限する集光レンズ207を備える。集光レンズ207は、アキシコンレンズ202aの出射側に配置され、アキシコンレンズ202aを通過して第1ベッセルゾーン206aを形成した後のリングビーム205を集光して測定部位252に第2ベッセルゾーン(集光位置)206bを形成する。また、ベッセルゾーン制御レンズ208を備えることができる。ベッセルゾーン制御レンズ208は、第1ベッセルゾーン206aをアキシコンレンズ202aと集光レンズ207との間に形成させる。
【0053】
ベッセルゾーン制御レンズ208は、アキシコンレンズ202aの入射側に配置することができる。また、ベッセルゾーン制御レンズ208は、アキシコンレンズ202aの出射側において、アキシコンレンズ202aと第1ベッセルゾーン206aとの間に配置することができる。アキシコンレンズ202aの出射側に配置されるベッセルゾーン制御レンズ208は、第1ベッセルゾーン206aと重なる位置に配置することもできる。
【0054】
集光レンズ207、ベッセルゾーン制御レンズ208は、各ベッセルゾーンの領域を調整し、各ベッセルゾーンの形成位置を移動させる組み合わせレンズとなる。
【0055】
アキシコンレンズ202aを通過することで形成されるリングビーム205は、光の進行方向において第1ベッセルゾーン206aを形成した後、第1ベッセルゾーン206aを頂点とする円錐状の光が存在しない領域205aを形成する。この状態のリングビーム205は、集光レンズ207の外縁部を通過して集光され、第2ベッセルゾーン206bを形成する。このため、集光レンズ207の出射側においては、測定部位252に形成される第2ベッセルゾーン206bを頂点とする円錐状に光が存在しない領域205bを形成する。集光レンズ207を通過した光が照射される領域(第2ベッセルゾーン206b)は、光の進行方向の一部に制限されるものとなる。
【0056】
上述した実施の形態によれば、集光レンズ207の出射側において光が存在しない領域205bを形成し、測定部位252の領域に第2ベッセルゾーン206bの光を照射することができ、狙いを定めて光を照射することができる。このため、皮膚表面より内部の毛の部分や毛根の部分に狙いを定めて光を照射することが可能となる。この結果、皮膚表面からの光音響波の発生が抑制され、皮膚表面より内部の毛の光音響波を周囲の生体組織の光音響波の検出を容易にして測定することができる。
【0057】
以下、測定装置について、
図5を用いてより詳細に説明する。この装置は、上述した基本的な構成に加え、コリメータ221、λ/2波長板222、偏光板223、ミラー224、第1ビームスプリッタ225、音響反射部226、フォトダイオード227、カメラ228、結像レンズ229、第2ビームスプリッタ230、白色光源231を備えることができる。また、この装置は、レンズ209を備えることができる。
【0058】
レーザから構成された光源201より出射したパルスレーザ(ナノパルスレーザ)による光241は、コリメータ221で平行光とされ、λ/2波長板222、偏光板223を透過し、ミラー224により光路を90°変更し、ベッセルゾーン制御レンズ208を通過してアキシコンレンズ202aに入射する。光241は、アキシコンレンズ202aによりリングビームとされる。
【0059】
アキシコンレンズ202aにより形成されたリングビームは、集光レンズ207を通過した後、第1ビームスプリッタ225を一部が透過し、一部が反射して光路を90°変更される。第1ビームスプリッタ225を透過した光は、フォトダイオード227で受光される。光源201より出射した光の強度(光量)をフォトダイオード227で受光し、受光した結果を光源201にフィードバックすることで、光源201より出射されるパルスレーザの強度を制御する。あるいは、センサ203により得られる光音響信号を光源201より出射した光の強度(光量)をフォトダイオード227で受光し、光音響信号を規格化する。
【0060】
第1ビームスプリッタ225を反射したリングビームは、レンズ209および音響反射部226を透過して生体251に入射する。音響反射部226は、例えば、2つの三角プリズムと、これらの間に挾んだシリコーンオイルとから構成することができる。2つの三角プリズムの間に挟まれたシリコーンオイルの層は、光を透過し、シリコーンオイルの層と三角プリズムとの界面で音響波を反射する。また、音響反射部226は、薄い板状のガラスから構成することもできる。生体251に入射したリングビームの集光位置で発生した光音響波は、音響反射部226で反射して、センサ203で検出される。
【0061】
カメラ228は、生体251の表面を観察する。白色光源231より出射した白色光は、第2ビームスプリッタ230で反射して光路を90°変更し、第1ビームスプリッタ225および音響反射部226を透過して、生体251の表面に照射される。生体251の表面に照射される光は、生体251の表面をカメラ228で撮像するための照明となり、生体251の表面像は、音響反射部226、第1ビームスプリッタ225、第2ビームスプリッタ230を透過し、結像レンズ229を透過してカメラ228で撮像される。
【0062】
例えば、ベッセルゾーン制御レンズ208、アキシコンレンズ202a、集光レンズ207、第1ビームスプリッタ225、レンズ209、音響反射部226、フォトダイオード227、カメラ228、結像レンズ229、第2ビームスプリッタ230、白色光源231を、同一の筐体内に配置することができる。このように構成することで、カメラ228を用いた観察により生体251の表面の観察位置を確認してから、光音響法による測定を実施することができる。
【0063】
また、走査ステージを用いることで、上述した筐体を3次元的に走査することができる。このように走査して光音響法による測定を実施することで、光音響イメージングを実現することができる。また、生体251の表面に、光学的に透明な容器を配置し、この容器に水を収容し、収容されている水に上述した筐体の音響反射部226の光出射側の部分を浸漬して測定を実施することができる。また、生体251の表面に、底面が光学的かつ音響的に透明な容器を配置し、この容器に水を収容し、収容されている水に上述した筐体の音響反射部226とセンサ203の光出射側の部分を浸漬して測定を実施することもできる。このような構成とすることで、生体251の表面より放出される光音響波の減衰を抑制することができる。
【0064】
以上説明したように、本発明によれば、光を測定部位に集光するアキシコンレンズを通過する光の内縁部を遮光する遮光部材を設けたので、皮膚表面より内部の毛の周囲の生体組織からの光音響波が発生することが抑制され、皮膚表面より内部の毛の光音響波の検出を容易にして測定することができる。また、本発明によれば、光を測定部位に集光する光学系が、アキシコンレンズと、アキシコンレンズを通過してベッセルゾーンを形成した後のリングビームを測定部位に集光する集光レンズとを備えるので、皮膚表面より内部の毛の周囲の生体組織からの光音響波が発生することが抑制され、皮膚表面より内部の毛の光音響波の検出を容易にして測定することができる。
【0065】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0066】
101…光源、102…光学系、102a…アキシコンレンズ、103…センサ、104…遮光部材、105…リングビーム、105a…光が存在しない領域、105b…光が存在しない領域、106…ベッセルゾーン、107…集光レンズ、141…光、151…生体、152…測定部位、201…光源、202…光学系、203…センサ、205…リングビーム、205a…光が存在しない領域、205b…光が存在しない領域、206…ベッセルゾーン、207…集光レンズ、208…ベッセルゾーン制御レンズ、251…生体、252…測定部位。